説明

糖の分離

【課題】デオキシ糖及びグリコシドをを含むバイオマスから誘導された溶液から該デオキシ糖及びグリコシドを分離し及び回収する方法の提供。
【解決手段】本発明は、パルプ化プロセスから得られたパルプ廃液のようなバイオマスから誘導された溶液からのフコースのようなデオキシ糖の回収に関する。本発明はまた、バイオマスからのグリコシドの回収に関する。本発明は、溶離剤として水を使用した特定のカラム充填材及びその組み合わせによるクロマトグラフィー分画の使用に基づく。クロマトグラフィー分画から得られたデオキシ糖生成物は、結晶化によりさらに精製され得る。本発明はまた、新規結晶L−フコース生成物及びフコースの結晶化のための新規方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、糖分離技術の分野に関する。とりわけ、本発明は、デオキシ糖及びグリコシドをを含むバイオマスから誘導される溶液から該デオキシ糖及びグリコシドを分離し及び回収する方法に関する。とりわけ、本発明は、フコース及び特にL−フコースの分離に関する。本発明はまた、新規な結晶L−フコース生成物及びフコースの結晶化のための方法に関する。さらに、本発明は、こうして得られた結晶L−フコースの栄養補助食品としての並びに薬物的及び化粧品的用途のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デオキシ糖は、木材資源、海藻、並びに甜菜及びサトウキビのような植物ベースの材料中に少量見られる、いわゆる希少な糖の例である。特定のデオキシ糖は、例えば甘味料用途のために並びに医薬品及び化粧品用途のために有益であることが判っている。
グリコシド、とりわけアルキルグリコシドは、上述のデオキシ糖と同様の植物ベースの材料中に頻繁に見られる糖誘導体である。
デオキシ糖は、L−体で及びD−体で存在することが既知である。例えば、フコースは、L−フコース及びD−フコースとして存在している。
特に興味あるデオキシ糖の一例は、フコース、またの名を6−デオキシガラクトースである。フコースは、D−体及びL−体の両方で、多くの異なった原料からの広く種々の天然物中に見られる。L−フコースに対する興味が、腫瘍、炎症状態及びヒト免疫系に関連した病気のような種々の病気状態を治療する医療分野におけるその可能性のため、最近増加している。L−フコースはまた、化粧品分野における、例えば皮膚保湿剤としての用途を有する。
【0003】
非特許文献1に従うと、結晶L−フコースは、140℃の融点及び−75.6°の旋光度を有する。L−フコースは例えば、幾つかのヒト母乳オリゴ糖中に生じる。
植物材料中において、フコースは典型的に、多糖類鎖の末端に又は該多糖類鎖中のどちらかにおいてL−フコピラノシル単位を有するしばしば非常に枝分れした構造となっている植物多糖類に結合している。幾つかの場合、メチル化されたフコピラノシル単位が植物多糖類中に生じる。
L−フコース又はメチル化されたL−フコピラノシル単位は、例えば、ジャガイモ、キャッサバ塊茎及びキウイフルーツの細胞壁中に、大豆の種子の多糖類中に、及びシカクマメ類及びセイヨウカブラナ中に生じる。
細胞間粘液中に見られる海藻多糖類は複雑な構造を形成し、及びフコイダンと呼ばれる硫酸化L−フコースポリマーからしばしば成る。フコイダンの抽出のために特に重要な海藻は、Ecklonia kurome,Laminaria angustata var longissima,Fucus vesiculosus,Kjellmaniella crassifolia,Pelvetia canaliculata 及び Fucus serratus L である。
さらには、種々のバクテリア、真菌類及びミクロ藻類からの細胞外多糖類がL−フコースを含む。
L−フコースは、種々の抽出法により藻類のような天然原料から得られ得る。これらのフコースの回収のために使用される天然由来の原料は、典型的に多成分混合物である。十分な純度を有するフコースの分離は、従来では問題を有していた。
【0004】
L−フコースは、Phaeophyceae藻類中に生じたフコイダンの加水分解により得られている。ブラック(Black),W.A.P.他は、非特許文献2中において
、最適化されたフコイダン抽出法を開示している。最高の収率は、70℃の温度にて1時間、塩酸を用いた抽出(pH2.0ないし2.5)により得られた。1単位の藻類と10単位の液体の比(w/v)が最適であると示された。この手順は、およそ50%の総フコースを得た。3つのその後に行われた酸抽出で80%を超えるL−フコースを得た。粗フコイダンは、中和により酸抽出液から単離され、そして蒸発されて乾燥される。
特許文献1、ケルコ社(Kelco Co.)(1966年3月15日発行)は、フコイダン、濃塩酸及びメタノールの混合物を、フコイダンが実質的に分解されそして脱硫酸化されるまで加熱する段階、そしてその後の、前記混合物からメチルα−L−フコシドからなる分解生成物を及び続く加水分解の後にL−フコースを回収する段階からなる、α−L−フコシド及びL−フコースの結晶を調製する方法を開示している。
上記引用文献の実施例VIIIは、フコイダン分解生成物を含む前記混合物からα−L−フコシド(メチルα−L−フコシド)を除去し、こうして得られた混合物を1N硫酸を用いて処理し、Ba(OH)2を用いて硫酸を沈澱させ、カチオン交換樹脂(H+形態のアンバーライト(Amberlite) IR−120)及び活性炭素を用いて該溶液を処理し、真空下に該無色の溶液をシロップ状まで濃縮し、及び熱メタノールを用いて該シロップを希釈することにより、結晶L−フコースを得る方法を開示している。前記希釈溶液にエーテルが添加され、そしてL−フコースを用いてシーディングした後、該混合物は8ないし12日間冷凍し続けられた。136ないし138℃の融点を有する結晶L−フコースが得られた。実施例IXに従うと、同様の手順が136ないし139℃の融点を有する結晶L−フコースを与えた。
【0005】
日本国特許出願公開の特許文献2(竹村,M他.,Towa Chem.Ind.)は、コルダリアセアエ(Chordariaceae)又はスペルマトクナセアエ(Spermatochnaceae)の科に属する海藻からのL−フコースの直接抽出を記載している。海藻は、水中で分散され、そして濃硫酸を用いて処理された。得られた加水分解物は冷却され、そして海藻残留物は濾過により除去された。濾過物のpHは5に調節され、濾過物は木炭を用いて処理されそして濾過された。L−フコース以外の糖類を消化するために酵母が濾過物に添加された。混合物は、木炭を用いて処理されそして濾過された。濾過物は、カチオン及びアニオン交換樹脂を用いた脱イオン処理にかけられ、そして濃縮された。濃縮された糖溶液がエタノールと混合され、そして結晶化された。この方法において、98.7%の純度を有するL−フコースが得られた(分析方法に言及することなしに)。L−フコース生成物に対する溶融点データは与えられなかった。
【0006】
F.M.Rombouts及びJ.F.Thibaultは、非特許文献3において、甜菜パルプのエタノール不溶性残留物からのペクチンの単離を記載している。単離されたペクチンは、DEAE−セルロース上のクロマトグラフィーにより、又はCuSO4を用
いた沈澱により精製された。ペクチンは、比較的高い含量の中性糖を有していた。各々のペクチン中の主とした中性糖はアラビノース及びガラクトースであり;他の存在する糖はラムノース、フコース、キシロース、マンノース及びグルコースであった。フコースは糖/ペクチン混合物から分離されなかった。
【0007】
V.A.Derevitskaya他(非特許文献4)は、アニオン交換クロマトグラフィーによるオリゴ糖の複雑な混合物の分離を記載している。その開示に従うと、2−アミノ−2−デオキシグルシトール、グルコサミン、ガラクトース及びフコースが、アニオン交換クロマトグラフィーにより、0.2Mボレートにより緩衝されたオリゴ糖混合物からうまく分離された。
【0008】
M.H.Simatupangは、非特許文献5において、幾つかの中性単糖類及びウロン酸のイオン交換クロマトグラフィーを記載している。該引用文献は、ボレート緩衝液系を利用した、ウロン酸及びフコースを含む単糖類及びマンヌロン酸及びグルロン酸の複
雑な混合物のイオン交換クロマトグラフィーを開示している。前記クロマトグラフィー系は、HA−X4又はBA−X4(ボレート形態)アニオン交換体を含むスチール製カラム及び種々のpH値における種々のボレート濃度の緩衝液系を使用した。分離プロファイルは、デオキシ糖と他の単糖類との間でオーバーラップし、それにより分離結果が満足いくものではないことを示している。
【0009】
S.Honda他(非特許文献6)は、溶離剤としてアセトニトリルを使用した、ナトリウム及びカルシウムの形態にあるカチオン交換樹脂を用いた糖(アルドース)アノマーの分離を記載している。該引用文献は、各々の糖の互いからのアノマーの分離を開示するのみであり、他の糖からの1種の糖の分離を開示していない。デオキシ糖は他の糖と同時に溶離された。
【0010】
McGuire他は、非特許文献7において、単糖類の高pHアニオン交換クロマトグラフィー溶離へのpHの影響を研究した。分離における溶離剤は水酸化ナトリウム溶液であった。結果は、フコースが他の単糖類から分離されたことを示している。しかしながら、他のデオキシ糖は言及されていない。
【0011】
日本国特許出願公開の特許文献3は、クラドシフォン オカムラナス トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida)又はフコイダンを含む抽出物から調製されたフコイダンからL−フコースを製造するための方法を開示している。該方法は、例えば水及び/又は酸を用いた処理、中和、透析及び電気透析処理及び溶離剤としてアルカリを使用したイオン交換処理からなる多段階方法である。L−フコースは、最終的にアルコールから結晶化される。
【0012】
D.Balaghova他は、非特許文献8において、前加水分解過程におけるカエデの木の糖部分の変化を研究した。カエデの木に見られる主たる単糖類は、D−グルコース、D−キシロース、L−ラムノース、L−フコース、L−アラビノース、D−マンノース及びD−ガラクトースであった。L−フコースは糖混合物から分離されなかった。
【0013】
L−フコースはまた、L−アラビノースから(非特許文献9)、D−グルコースから(非特許文献10)、メチル−L−ラムノースから(非特許文献11)、D−マンノースから(非特許文献12)及びD−ガラクトースから(非特許文献13)、化学合成により得られ得る。
【0014】
酵素的及び微生物的合成がまた、L−フコースの製造のために使用されてきた。
C.Wong他は、非特許文献16において、L−フコース及びその類似体の酵素的合成を開示している。L−フコースは、L−フクロース−1−ホスフェートアルドラーゼにより触媒されるジヒドロキシアセトンホスフェート(DHAP)及びDL−ラクトアルデヒドからの酵素的合成、続く酸ホスファターゼ及びL−フコースイソメラーゼとの反応により生成される。L−フコース生成物は、ダウエックス(Dowex) 50W−X8(Ba2+形態)クロマトグラフィーにより、所望によりシリカゲルによる分離と組み合わせて単離された。
【0015】
特許文献4,ヘキストアーゲー(Hoecst AG)(1984年3月14日発行)は、10%を超えるフコース及び/又はラムノースを含む細胞外の多糖類を生成する、アルカリジーンズ(Alcaligenes)、クレブシーラ(Klebsiella)、プソイドモナス(Pseudomonas)又はエンテロバクター(Enterobacter)を使用した発酵によるフコース及びラムノースから選択されるデオキシ糖の生成のための方法を開示している。フコース及び/又はラムノースは、クロマトグラフィー、イオン交換又は吸着(例えばゼオライトを用いた)により、或いは更なる発酵処理により
、発酵生成物の加水分解物から回収され得ると記載されている。欧州特許の実施例において、ラムノース及びフコースは、更なる発酵処理により回収されている。該引用文献は、デオキシ糖の分離又はフコース及びラムノースのクロマトグラフィーによる互いからの分離を開示していない。
【0016】
特許文献5,呉羽化学工業株式会社(1988年9月20日発行)は、アラビアガムから高い純度のラムノースを生成するための方法を開示している。該方法は、アラビアガムの加水分解により形成された単糖類を含む水性溶液を得るために鉱酸の水性溶液中でのアラビアガムの部分加水分解、中和及び極性有機溶媒を用いた処理をし、及びこうして得られた該水性溶液を強酸性カチオン交換クロマトグラフィーに、及びその後に活性炭素を使用した吸着及び分離の方法にかけることからなる。
【0017】
特許文献6,キシロフィン オイ(Xyrofin Oy)(2002年4月4日発行)は、炭水化物の互いからのクロマトグラフィー分離のための弱酸性カチオン交換樹脂の使用を開示している。好ましくは、弱酸性カチオン交換樹脂は、デオキシ、メチル及び無水糖のような疎水性単糖類及び糖アルコールのより親水性の糖からの分離のために使用される。
【0018】
特許文献7,キシロフィン オイ(2002年4月4日発行)は、弱酸性カチオン交換樹脂がクロマトグラフィー分離のために使用される少なくとも1段階からなる多段階方法により、ラムノース、アラビノース及びそれらの混合物を含む溶液から、該ラムノース、アラビノース及びそれらの混合物からなる群より選択される単糖類を回収するための方法を開示している。
【0019】
グリコシドの回収は、例えば特許文献8,A.E.スターレー マニュファクチャリング カンパニー(A.E.Staley Manufacturing Company),1982年5月11日発行,において議論されている。この引用文献は、澱粉から得られた粗グリコシド混合物からのメチル−α−D−グルコピラノシドの回収を記載している。該引用文献の実施例においては、メチル−α−D−グルコピラノシドは、メタノールからの結晶化によりグリコシド混合物から回収されている。
【0020】
I.Augestad他は、非特許文献17において、アノマーグリコシド、とりわけL−フコース、D−リボース及びL−ラムノースの結晶メチルフラノシドのクロマトグラフィー分離を、及び、非特許文献18において、ガラクトース、アラビノース及びキシロースの新規結晶メチルフラノシドの分離を議論している。アノマー体のクロマトグラフィー分離は、溶離剤として有機溶媒を使用したセルロースカラムを用いて行われている。
【非特許文献1】メルク インデックス(Merk Index),第12版,1996
【非特許文献2】“Manufacture of algal chemicals.IV.Laboratory−scale isolation of fucoidan from brown marine algae”,J.Sci.Food Agric.3:122−129(1952)
【特許文献1】米国特許第3,240,775号明細書
【特許文献2】特開昭63−027496号公報
【非特許文献3】Carbohydrate Research 1986,第177頁ないし第187頁
【非特許文献4】Dokl.Akad.Nauk.SSSR(1975),223(5)1137−9
【非特許文献5】J.Chromatoger.(1979),178(2),588−91
【非特許文献6】Journal of Chomatography,291(1984)317−325
【非特許文献7】Chromatographia,第49巻,11/12番,1999年6月
【特許文献3】特開平11−035591号公報(1999年2月9日発行)
【非特許文献8】Vybrane Procesy Chem.Spracovani Dreva(1996),187−192(出版者:テクニカ ユニバージタ ズボレン(Technicka Univerzita Zvolen),ズボレン,スロバキア)
【非特許文献9】Tanimura,A.,Synthesis of L−fucose,Chem.Abstr.55:12306(1961)
【非特許文献10】Chiba,T.&Tejima,S.,A new synthesis of α−L−fucose,Chem.Pharm.Bull.27:2838−2840(1979)
【非特許文献11】Defaye,J.,他.,An efficient Synthesis of L−fucose and L−(4−2H)fucose,Carbohydrate Res.126:165−169(1984)
【非特許文献12】Gesson,J−P他.,A short synthesis of L−fucose and analogs from D−mannose,Tetrahedron Lett.33:3637−3640(1992)
【非特許文献13】Dejter−Juszynski,M&Flowers,H−M.,Synthesis of L−fucose,Carbohydrate Res.28:144−146(1973)
【非特許文献14】Kristen,H.,他.,Introduction of a new selective oxidation procedure into carbohydrate chemistry−An efficient conversion of D−galactose into L−fucose,J.Carbohydr.Chem.7:277−281(1988)
【非特許文献15】Sarbajna,S.他.,A novel synthesis of L−fucose from D−galactose,Carbohydr.Res.270:93−96(1965)
【非特許文献16】J.Org.Chem.,60:7360−7363(1995)
【特許文献4】欧州特許第102535号明細書
【特許文献5】米国特許第4,772,344号明細書
【特許文献6】国際公開第02/27038号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/27039号パンフレット
【特許文献8】米国特許第4329449号明細書
【非特許文献17】Acta Chemica Scandinavica(1956),10,911−16
【非特許文献18】Acta Chemica Scandinavica(1954),8,251−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
既知の方法に関連した問題の1つは、それら方法は、所望のデオキシ糖を他の非常に類似した糖と一緒の混合物として提供するということであるか、又は、それら方法は、フコースのようなデオキシ糖を十分な純度では提供しないということである。褐藻類からの直接的な抽出はコスト高であり、及び量及び質の点で季節的な変化を受ける。一方、例えば他の糖からの化学合成を介してのL−フコースの生成はコスト高であり、及び低収率とな
る。さらには、99%を超える純度を有する結晶フコース生成物を得るために、フコースの結晶化のための適する出発フコース溶液を調製することに問題がある。
さらに、デオキシ糖の互いからの回収は、その非常に類似した構造のため現在の技術においては問題を生じている。多くの分離方法において、デオキシ糖は、同様に挙動し、それゆえこれら非常に類似した糖の間では実質的な分離が起きない。むしろ、それらデオキシ糖はしばしば同一の画分中で混合物として回収される。
高純度を有するフコース及び他のデオキシ糖並びにグリコシドは、デオキシ糖及び例えばアルドース及びペントース糖を含むバイオマスから誘導される溶液から、新規なクロマトグラフィー分離法を用いて効率的に回収され得ることが今や見出された。とりわけ重大な不純物の含量が特定の限界値よりも低い範囲内にあるとき、141℃よりも高い、好ましくは145℃よりも高い融点を有する高純度のフコース結晶が、DSとして45%を超えるフコース含量を有する非純粋シロップから得られ得ることも見出された。フコースがアラビノース及びラムノースのような他の糖に対して非常に強い塩析効果を有することが判った。この理由のため、現在の技術においては高純度を有するフコース結晶を調製することが非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の簡単な説明
本発明の目的は、フコースのようなデオキシ糖、並びにグリコシドを含むバイオマスから誘導される溶液から該フコースのようなデオキシ糖、並びにグリコシドを分離し及び回収する方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、デオキシ糖を互いから、及び他の単糖類から分離する方法を提供することである。本発明の他の目的は、デオキシ糖及び単糖類からグリコシドを分離する方法を提供することである。本発明の方法によると、既知の方法に関連した不利さが軽減され得る。本発明の目的は、独立請求項の記載事項により特徴付けられる方法により達成される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に開示される。
本発明に従うと、上記目的はバイオマスから誘導される材料から、1種以上のデオキシ糖及び所望によりグリコシドを分離し及び回収する新規で多用途の方法を提供することにより達成される。本発明において有益なバイオマスから誘導される材料は、典型的に植物ベースのバイオマスから誘導される。それは例えば、ヘミセルロースからの、デオキシ糖及び例えばアルドース及びペントース糖及びグリコシド、とりわけアルキルグリコシドを含むヘミセルロース加水分解物である。例えばシラカバの木から誘導されるヘミセルロース加水分解物中において、フコース及びラムノースはL−形態で存在する。
本発明の方法は、クロマトグラフィー分離における唯一の溶離剤として水を使用して、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン交換樹脂及び弱塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を用いた1種以上のクロマトグラフィー分画の使用をベースとする。驚くべきことに、溶離剤としての水の使用がデオキシ糖及びグリコシドの効率的な分離を与えることが判った。クロマトグラフィー分離後、所望のデオキシ糖又はグリコシドに富む画分は、高純度を有する所望のデオキシ糖又はグリコシドを得るためにさらに結晶化され得る。
本発明のクロマトグラフィー法によると、例えば10ないし90%、典型的に40ないし80%又はそれ以上の純度を有するフコース画分が得られ得る。クロマトグラフィー分離から得られたフコース画分は、結晶化によりさらに精製され得る。該結晶化は、99%まで又は99%を超える純度及び144℃以上の融点を有するフコース生成物を提供する。本発明の典型的な態様において、フコースの結晶化は、不純物として、DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含む溶液から行われる。結晶フコースは典型的に、DSとして、0.01ないし0.1%の範囲の量でラムノース、アラビノース、ガラクトース及びマンノースを含む。
本発明の方法は、従って、フコースのような所望のデオキシ糖が例えば医薬品用途のた
めの十分な純度で得られ得るという利点を提供する。
【0023】
本発明に関する定義
明細書並びに実施例及び請求項全体において、以下の定義が使用される:
“デオキシ糖”は、アルドース又はケトース中の単糖類のヒドロキシル基の脱酸素により形成された単糖類誘導体を指す。本発明に関するデオキシ糖の典型的な例は、ラムノース及びフコースである。
グリコシドは、グリコシドエーテル結合を含む糖誘導体である。本発明に関するグリコシド、とりわけアルキルグリコシドの一例は、メチル−α−D−キシロピラノシド(MAX)である。
MAXは、メチル−α−D−キシロピラノシドを指す。
SACは、強酸性カチオン交換樹脂を指す。
WACは、弱酸性カチオン交換樹脂を指す。
SBAは、強塩基性アニオン交換樹脂を指す。
WBAは、弱塩基性アニオン交換樹脂を指す。
DVBは、ジビニルベンゼンを指す。
ACNは、アセトニトリルを指す。
DSは、質量%として表されるカールフィッシャー(Karl Fischer)測定により測定された乾燥物含量を指す。
RDSは、質量%として表される、屈折率による乾燥物含量を指す。
純度は、乾燥物に対して%として表された化合物の含量を指す。
SMBは、擬似移動床プロセスを指す。
本発明に関連する融点は、示されていない限り、欧州薬局方(European Pharmacopea)の方法により測定される。
【0024】
図面の簡単な説明
以下の図面は、本発明の例示的な態様であり、及びいかなる場合においても本発明の範囲を限定することを意味していない。
図1は、実施例1(Na+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を使用した、デオキシ糖
を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
図2は、実施例2(Zn2+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
図3は、実施例3(Na+形態にある弱酸性カチオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を
含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
図4は、実施例5(HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
図5は、フコースの融点とフコースの純度との間の関係を示すグラフである。
図6は、実施例11(HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の詳細な説明
本発明は、デオキシ糖と、ペントース及びヘキソース糖のような通常の糖、及びグリコシドとを含むバイオマスから誘導された溶液から、1種以上のデオキシ糖及び所望によりグリコシドを分離し及び回収する方法に関する。本発明の方法は、前記バイオマスから誘導された溶液を、溶離剤として水を使用して、1つ以上のクロマトグラフィー分画(1)段階、(2)段階及び(3)段階:
(1)強酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つ
のクロマトグラフィー分画、
(2)弱酸性カチオン交換樹脂及び弱塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つのクロマトグラフィー分画、
(3)強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つのクロマトグラフィー分画、
にかけ、及び(1)段階、(2)段階及び/又は(3)段階から少なくとも1種のデオキシ糖及び所望によりグリコシドに富む1つ以上の画分を回収する、
ことを特徴とする。
本発明の典型的な態様において、本発明の方法は、フコース及びラムノースから選択されるデオキシ糖、及びメチル−α−D−キシロピラノシドから選択されるグリコシドの互いからの、及び他の糖からの分離を含む。
本発明の一態様において、本発明の方法は、前記溶液を、(1)段階、(2)段階及び/又は(3)段階の2つ以上にかけることを含む。本発明のもう1つの態様において、本発明の方法は、前記溶液を、(1)段階、(2)段階及び/又は(3)段階から選択される段階に2回以上かけることを含む。
本発明の方法の他の態様において、該方法は、(1)段階からラムノースに富む画分を回収することを含む。
本発明の方法のさらに他の態様において、該方法は、(2)段階からメチル−α−D−キシロピラノシドに富む画分を回収することを含む。
本発明の方法のさらに他の態様において、該方法は、(3)段階からフコースに富む画分を回収することを含む。
本発明の方法のさらなる態様において、該方法は、(3)段階、すなわち、バイオマスから誘導された前記溶液を、強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてフコースに富む画分を回収することを含む。
本発明の(2)段階において、弱塩基性アニオン交換樹脂の使用は典型的に、弱酸性カチオン交換樹脂と同様の分離結果を与える。本発明において有益な弱塩基性アニオン交換樹脂は、未発行のフィンランド国特許出願第20020592号明細書(国際公開第03/080872号パンフレット)に開示されている。
【0026】
本発明の方法のさらに他の態様において、該方法は、以下の逐次段階:
(1)前記バイオマスから誘導された溶液を、強酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてラムノースに富む画分及び/又はフコースから選択されるデオキシ糖及びメチル−α−D−キシロピラノシドから選択されるグリコシドを含む1つ以上の画分を回収する段階、及び
(2)前記メチル−α−D−キシロピラノシド及びフコースを含む1つ以上の画分を、弱酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてメチル−α−D−キシロピラノシドに富む画分及びフコースを含む画分を回収する段階、
を含む。
上述の方法の一態様において、該方法は、前記フコースを含む画分を、強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてフコースに富む画分を回収することを含む(3)段階をさらに含む。
本発明の一態様において、本発明はまた、以下の分離順序:WAC(1)+WAC(2)+SAC(3)(ここで、WAC(1)はアルドース糖の回収のためであり、WAC(2)はMAXの回収のためであり、及びSAC(3)はラムノース及びフコースの回収のためである)を用いた方法にも関する。
本発明のもう1つの態様において、本発明はまた、以下の分離順序:WAC(1)+SAC(2)+WAC(3)(ここで、WAC(1)はアルドース糖の回収のためであり、SAC(2)はラムノースの回収のためであり、及びWAC(3)はMAX及びフコース
の回収のためである。)を用いた方法にも関する。
本発明の他の態様において、本発明はまた、以下の分離順序:WAC(1)+SBA(2)(ここで、WAC(1)はアルドース糖の回収のためであり、及びSBA(2)はMAX、ラムノース及びフコースの回収のためである。)を用いた方法にも関する。
【0027】
本発明の方法の(1)段階においてカラム充填材として使用される前記強酸性カチオン交換樹脂は、1価カチオン形態又は2価カチオン形態にあり得る。本発明の好ましい態様において、前記強酸性カチオン交換樹脂はNa+形態にある。前記樹脂はまた、例えばH+、Mg2+又はCa2+又はZn2+形態であり得る。
前記強酸性カチオン交換樹脂は、スチレン又はアクリル骨格を有し得る。本発明の好ましい態様において、前記樹脂は、スルホン化されたポリスチレン−コ−ジビニルベンゼン樹脂である。アルキル−置換されたスチレンのようなモノマーをベースとしたもののような他のアルケニル芳香族ポリマー樹脂又はその混合物も適用され得る。前記樹脂はまた、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルベンゼンのような他の適する芳香族架橋性モノマーを用いて、又はイソプレン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビス−アクリルアミド又はそれらの混合物のような脂肪族架橋性モノマーを用いて架橋され得る。前記樹脂の架橋度は、典型的にジビニルベンゼンのような架橋剤のおよそ1ないしおよそ20%、好ましくはおよそ3ないし8%である。前記樹脂の平均粒径は通常、10ないし2000μm、好ましくは100ないし400μmである。
【0028】
本発明の(2)段階においてカラム充填材として使用される前記弱酸性カチオン交換樹脂は、1価又は2価カチオン形態、好ましくはNa+形態にあり得る。前記樹脂はまた、
例えばH+、Mg2+又はCa2+形態にあり得る。
弱酸性カチオン交換樹脂は、好ましくはカルボキシル官能基を有するアクリル系カチオン交換樹脂である。しかしながら、前記樹脂は、アクリル系樹脂以外、例えばスチレン樹脂であり得、及び官能基はカルボキシル基以外、例えば他の弱酸であり得る。そのようなアクリル系樹脂は好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート又はアクリロニトリル又はアクリル酸又はそれらの混合物から誘導される。前記樹脂は、架橋剤、例えばジビニルベンゼンを用いて、又は上述の他の架橋剤を用いて架橋され得る。適する架橋度は、1ないし20質量%、好ましくは3ないし8%質量%である。前記樹脂の平均粒径は通常、10ないし2000μm、好ましくは100ないし400μmである。
【0029】
本発明の(2)段階において択一的に使用され得る前記弱塩基性アニオン交換樹脂は好ましくは、アクリル骨格を有する弱塩基性アニオン交換樹脂である。弱塩基性アニオン交換樹脂は好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリルのような、アクリルエステル(H2=CR−C
OOR’(式中、RはH又はCH3を表し、及びR’はメチル基、エチル基、イソプロピ
ル基、ブチル基等のようなアルキル基を表す。))又はアクリル酸又はそれらの混合物から誘導される。アクリルマトリックスは、例えばジビニルベンゼン(DVB)のような芳香族型の、又はイソプレン、1,7−オクタジエン、トリビニルシクロヘキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−アルキレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート並びに他のジ−、トリ−、テトラ−、ペンタアクリレート及びペンタメタクリレートのような脂肪族型のものであり得る適する架橋剤により架橋される。ジビニルベンゼンによる適する架橋度は、1ないし10質量%DVB、好ましくは3ないし8質量%である。弱塩基性アニオン交換樹脂は、架橋されたポリアクリルポリマーの、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサミン或いは他のポリアミンのような適するアミンによるアミン化により、製造される。例えば、ジメチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、
テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びジメチルアミノプロピルアミンが適するアミンである。
【0030】
他の弱塩基性アニオン交換樹脂構造は、エピクロロヒドリン−ベースの重縮合アニオン交換体である。エピクロロヒドリンのクロロメチル基及びエポキシ基は、ポリアミンと反応して、架橋されたゲル型のアニオン交換体を形成する。例えば、エピクロロヒドリンとトリエチレンテトラミンとの縮合反応は、以下のアニオン樹脂構造を生じる。この型のアニオン樹脂は、弱塩基性(三級アミン)と強塩基性(四級アンモニウム)官能基の両方を含む。
弱塩基性アニオン交換樹脂の他の類は、フェノールとホルムアルデヒドのアミン化された重縮合生成物である。
弱塩基性アニオン交換樹脂を生成するための他の良く知られた方法は、脂肪族アミンとアンモニアの重縮合樹脂である。モノマーアミン又はアンモニアが例えばホルムアルデヒドと反応される場合に、架橋された樹脂構造が形成される。アミンとホルムアルデヒドとの間の反応は、重縮合物を形成するためにさらに反応し得るメチロール及び/又はアゾメチン基を形成する。この型の良く知られた構造は、ホルムアルデヒド、アセトン及びテトラエチレンペンタミンの反応樹脂である。芳香族アミンはまた、ホルムアルデヒドにより架橋されて、弱塩基性アニオン交換体を生じる。
官能基としてピリジン基を有する架橋されたポリビニルピリジン−ベースのイオン交換体の異なる型もまた、弱塩基性アニオン交換体として有益である。
樹脂の平均粒径は通常、10ないし2000マイクロメーター、好ましくは100ないし400マイクロメーターである。
【0031】
本発明の方法の(3)段階におけるカラム充填材として使用される前記強塩基性アニオン樹脂は典型的に、HSO3-形態にある。前記強塩基性アニオン交換樹脂は、スチレン又はアクリル骨格を有し得る。樹脂はジビニルベンゼンにより架橋され得る。アルキル−置換されたスチレン又はその混合物のようなモノマーをベースとしたもののような他のアルケニル芳香族ポリマー樹脂がまた適用され得る。前記樹脂はまた、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルベンゼンのような他の適する芳香族架橋モノマーにより、又はイソプレン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミドのような脂肪族架橋モノマー又はその混合物により、架橋され得る。樹脂の架橋度は典型的に、ジビニルベンゼンのような架橋剤のおよそ1ないしおよそ20%、好ましくはおよそ3ないしおよそ8%である。樹脂の平均粒径は通常、10ないし2000μm、好ましくは100ないし400μmである。
【0032】
本発明の好ましい態様において、(1)段階、(2)段階及び(3)段階において使用される樹脂はゲル型樹脂である。
樹脂の製造業者は例えば、ファイネックス社(Finex Ltd.)、ダウケミカルズ社(Dow Chemicals)、バイエルケミカルズ社(Bayer Chemicals)、プロライト社(Purolite Co.)及びロームアンドハース社(Rohm&Hass Co.)である。
本発明の一態様において、各々の樹脂は、別々のカラム内に存在する。本発明のもう一つの態様において、二つ以上の異なった樹脂(SAC、WAC、SBA及びWBA)が部分的な充填材床として1つのカラム内に含まれ得、それによりカラムは各々異なった樹脂を含む一つ以上の部分的なカラムを含む。
クロマトグラフィー分画操作において、前記樹脂のカチオン性/アニオン性は好ましくは、系の供給溶液のカチオン性/アニオン性と実質的に平衡である。
本発明の方法のクロマトグラフィー分画において使用される溶離剤は水である。
クロマトグラフィー分画の温度は典型的に、20ないし90℃、好ましくは40ないし
65℃の範囲にある。分画される溶液のpHは典型的に2ないし9の範囲にある。
クロマトグラフィー分画は、バッチ式プロセス又は擬似移動床(SMB)プロセスとして行われ得る。SMBプロセスは好ましくは、逐次又は連続プロセスとして行われる。
擬似移動床プロセスにおいて、クロマトグラフィー分画は典型的に、一連に接続され及び少なくとも1つのループを形成した3ないし14個のカラムを使用して行われる。カラムはパイプラインにより接続されている。カラムの流速は典型的に、該カラムの断面積の0.5ないし10m3/(hm2)である。カラムは、上述の樹脂から選択されたカラム充填材により充填される。カラムは、供給溶液及び溶離剤がカラムに供給され得、そして生成物がカラムから収集され得るように、供給ライン及び生成物ラインを備えている。生成物ラインは、生成物流の質/量が操作中に監視され得るように、オンライン装置を備えている。
クロマトグラフィーSMB分離の間、供給溶液はポンプによりループ内のカラムを通して循環される。溶離剤が添加され、そして所望のデオキシ糖、他の付加的な生成物画分及び残留画分を含む生成物画分がカラムから収集される。カラム内の溶離剤の流れは、カラムの頂上から又はカラムの底からもたらされ得る。
クロマトグラフィー分画前に、供給溶液は、例えば、イオン交換処理又は希釈による軟化、例えば蒸発による濃縮、pH調節、濾過及びメンブレン濾過から選択される1つ以上の前処理段階にかけられ得る。カラム内に供給する前に、供給溶液及び溶離剤は上述の分画温度(例えば50ないし85℃の範囲)まで加熱される。
クロマトグラフィー分画は、少なくとも1種のデオキシ糖及び所望によりグリコシドに富む1つ以上の画分を与える。
クロマトグラフィー分画の収率を改善するために、クロマトグラフィー分画の再循環画分がまた使用され得る。
本発明のクロマトグラフィー分画方法はさらに、メンブレン濾過、イオン交換、蒸発及び濾過から選択される1つ以上の精製段階を含み得る。これら精製段階は、前記クロマトグラフィー分画段階の前後又は間に行なわれ得る。
クロマトグラフィー分画から得られた所望のデオキシ糖に富む画分はさらに、結晶デオキシ糖生成物を得るために結晶化によりさらに精製され得る。
結晶化は典型的に、蒸発及び冷却結晶化を使用して行われる。結晶化溶媒は、水、アルコールのような有機溶媒から選択され得、好ましくはエタノール、及びそれらの混合物である。
【0033】
続いて、デオキシ糖の結晶化がフコースの結晶化に関してより詳細に記載される。
フコースの結晶化は典型的に、水、アルコールのような有機溶媒から選択される溶媒、好ましくはエタノール、及び水とエタノールとの混合物のようなそれらの混合物を使用して行われる。本発明の好ましい態様において、結晶化は、水により又は水とエタノールとの混合物により行われる。
結晶化は典型的に、クロマトグラフィー分画から得られるフコースに富む溶液を、適切な乾燥物含量まで(例えば、液体の溶解度及び組成によっておよそ70%ないし90%のRDSまで)蒸発することにより行われる。溶液は、フコースのシード結晶によりシード添加され得る。シードが使用される場合、乾燥形態における微粉砕結晶であるか、又は水、エタノールのようなアルコール、又はそれらの混合物であり得る結晶化溶媒中に懸濁される。典型的な結晶化溶媒は水である。結晶の生長可能性及び粘度が許容する場合は、シーディング後に蒸発が続けられ得る。蒸発後、結晶塊は、その結晶含量又は粘度が十分に高くなるまで同時に混合しながら冷却にかけられ得る。その後、さらなる冷却が収率を高めるために必要とされるか又は低粘度が結晶化の分離のために必要とされる場合に、結晶化溶媒が添加され得る。結晶塊は典型的に、10ないし40℃の温度まで冷却される。結晶塊はその後、最大の結晶化収率に到達するために、一定期間、好ましくは0.5時間ないし6日間、最終温度にて混合され得、そしてその後、結晶は例えば濾過により分離される。濾過は慣用の遠心分離又はフィルタにより行なわれ得る。濾過ケークは結晶化溶媒に
より洗浄され、そして乾燥される。乾燥は、例えば慣用の方法により、30ないし90℃の温度にて行なわれ得る。高純度を有するフコースの結晶が得られる。結晶化は典型的に、DSとして99%を超える純度、及び142.5℃よりも高い、好ましくは144℃よりも高い融点を有する結晶フコースを与える。
フコースの分別結晶化において、結晶化は、60%を超える、好ましくは90%を超える、及び最も好ましくは99%を超える純度を有する結晶フコースを与える。
【0034】
本発明の一態様において、フコースの結晶化は、DSとして45%を超えるフコースを含む溶液から行われる。本発明のもう1つの態様において、フコースの結晶化は、DSとして80%を超えるフコースを含む溶液から行われる。本発明の好ましい態様において、フコースの結晶化は、以下の不純物プロファイル:DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースをさらに含む溶液から行われる。
本発明の一態様において、フコースの結晶化は、以下の不純物プロファイル:DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースの存在下に45%を超えるフコースを含む溶液から行われる。結晶化は典型的に、水とエタノールとの混合物から行われ、塊の粘度は典型的に5ないし500Pasの範囲にあり、及び滞留時間は0.5ないし10日間であり、及び温度は0ないし100℃、好ましくは20ないし70℃の範囲内にある。
本発明のもう1つの態様において、フコースの結晶化は、上述の不純物プロファイルの存在下に80%を超えるフコースを含む溶液から行われる。結晶化は、結晶化は、0ないし100℃、好ましくは20ないし70℃の範囲の温度において6ないし80時間の期間で行われ、及び有機溶媒なしに行なわれ得る。
本発明のさらなる局面において、本発明はまた、フコースの結晶化が、DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含む不純物プロファイルの存在下に45%を超えるフコースを含むバイオマスから誘導された溶液から行われるところの、フコースの結晶化のための方法を提供する。
本発明のまたさらなる局面において、本発明はまた、フコースの結晶化が、DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含む不純物プロファイルの存在下に80%を超えるフコースを含むバイオマスから誘導された溶液から行われるところの、フコースの結晶化のための方法を提供する。
上述の結晶化供給物の所望の不純物プロファイルは、例えばクロマトグラフィー分画、バイオマス加水分解物の分別結晶化により又は好ましくは上述の(1)段階ないし(3)段階により調製された異なった組成を有する液の混合により達成され得る。
【0035】
本発明の方法は典型的に、結晶化から得られた結晶を洗浄するさらなる段階を含む。洗浄剤は典型的に、水及びエタノールのような有機溶媒、又はそれらの混合物から選択される。
結晶化供給物の典型的な乾燥物含量は、30ないし70質量%の範囲にある。フコース結晶化塊の適する粘度は50ないし300Pasである。
本発明のさらに他の局面において、本発明はまた、144℃よりも高い及び最も好ましくは145℃よりも高い融点、並びに、DSとして99%を超える純度を有する新規な結晶フコース生成物を提供する。前記新規結晶フコース生成物は、45%を超えるフコース、典型的に80%を超えるフコースを含む溶液から、及び上述の不純物プロファイルの存在下に、上述された方法により、とりわけフコースを結晶化することにより得られ得る。
デオキシ糖の回収のための出発物質は典型的に、前記デオキシ糖、グリコシド、他の単糖類及び他の炭水化物を含む混合物である。本発明の典型的な態様において、前記デオキシ糖はラムノース及びフコースを含み、及びグリコシドはメチル−α−D−キシロピラノ
シドを含む。混合物はまた、二糖類及びそれ以上の多糖類を含み得る。
【0036】
デオキシ糖の回収のための出発物質は、バイオマスから、好ましくは植物ベースのバイオマスから、及び典型的には、軟木又は堅木、籾わら又は籾殻、トウモロコシの皮、トウモロコシの穂軸、トウモロコシ繊維、バガス及び甜菜のような、ヘミセルロース含有の植物ベースの材料から誘導される。シラカバ又はブナのような堅木から誘導されたヘミセルロース含有のバイオマスが、本発明における出発物質としての使用のためにとりわけ好ましい。
上述の出発物質中のデオキシ糖の含量は典型的に非常に低い。例えば、フコースの含量は0.01質量%位であり得る。
デオキシ糖の回収のための出発物質は典型的に、上述のヘミセルロース含有のバイオマスの加水分解物である。該加水分解物は典型的に、バイオマスの弱酸加水分解又は酵素的加水分解から得られる。本発明の好ましい態様において、出発物質は、ヘミセルロース加水分解物又はヘミセルロース加水分解物から誘導された溶液である。
本発明に従うデオキシ糖の回収のためのバイオマス加水分解物は典型的に、パルプ化プロセスから得られたパルプ廃液である。パルプ廃液はとりわけ、酸性、塩基性又は中性亜硫酸パルプ化、好ましくは酸性亜硫酸パルプ化により得られ得る、亜硫酸パルプ廃液である。パルプ廃液は、0.01ないし0.05質量%の典型的なフコース含量を有する。クロマトグライー分画段階におけるパルプ廃液画分の典型的なフコース含量は、4ないし6質量%の範囲にある。フコースの前濃縮は、パルプ廃液からのキシロースのクロマトグラフィー分離により及び/又は結晶化により行なわれ得る。
本発明において有益な典型的なパルプ廃液は、好ましくは酸性亜硫酸パルプ化から得られたパルプ廃液である。パルプ廃液は亜硫酸パルプ化から直接的に得られ得る。パルプ廃液はまた、濃縮された亜硫酸パルプ廃液又は亜硫酸蒸解から得られた副生成物であり得る。パルプ廃液はまた、亜硫酸パルプ廃液からクロマトグラフィー的に得られ及びデオキシ糖を含む画分であり得る。
デオキシ糖を含む出発溶液は例えば、キシロース、ラムノース及び/又はマンノースの大部分が分離された、例えば亜硫酸パルプ廃液、例えば国際公開第02/27039号パンフレット(米国特許出願公開第02/0120135号明細書)に開示される液である。
【0037】
本発明の1つの典型的な態様において、出発溶液は、デオキシ糖の他に、典型的にバイオマスのヘミセルロースから誘導されたアルドース糖のような普通の糖を含む。
本発明のもう1つの典型的な態様において、出発溶液は、キシロースの回収後のキシロース回収プロセス、或いは、ラムノースの回収後のラムノース回収プロセスから分離されるところの、及びデオキシ糖に富むところの側流である。そのような側流は例えば、結晶化プロセス段階からの母液又はクロマトグラフィー分離プロセス段階等からの副生成物画分であり得る。上述のラムノース回収プロセスは、例えばキシロースの回収後の亜硫酸パルプ廃液からラムノースを回収する方法を指す(国際公開第02/270039号パンフレット)。カラム充填材として弱酸性カチオン交換樹脂を使用して、ラムノースのようなデオキシ糖がヘキソース及びペントース糖から分離され得る。上昇されたpHにおいてNa+形態にある弱酸性カチオン交換樹脂を使用することにより、ラムノースはヘキソース
及びペントース糖の前に溶離される。
出発物質はまた、甜菜又はサトウキビから誘導された溶液であり得る。
デオキシ糖及びグリコシドの回収のための他の原料としては、海藻中に見られるフコイダン並びにジャガイモ、キャッサバ塊茎、キウイフルーツ、シカクマメ類及びセイヨウカブラナ等の細胞壁中に見られる植物性多糖類が言及され得る。
本発明はまた、144℃よりも高い融点、DSとして99%を超える純度を有するバイオマスをベースとした結晶L−フコースに関する。本発明のL−フコース結晶は典型的に、50μmの最小長及び20μmの最小幅を有する100ないし250μmの平均粒径を
有する。本発明の好ましい態様において、本発明は、植物ベースのバイオマスをベースとした結晶L−フコースに関する。本発明のさらに好ましい態様において、結晶L−フコースは145℃よりも高い融点及びDSとして99.5%を超える純度を有する。
本発明のさらに他の態様において、本発明は、上述の結晶化方法により、とりわけ水からの結晶化、続く洗浄により、得られ得る結晶L−フコースに関する。
本発明はまた、栄養補助食品、医薬品及び化粧品のための成分としての本発明の結晶L−フコースの使用に関する。
【0038】
以下の実施例は、いかなる場合であっても本発明を限定することなしに本発明の例示的な態様を示す。
以下の実施例において、ラムノース及びフコースはL−形態にある。
【実施例】
【0039】
実施例1
Na+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液のクロマトグ
ラフィー分画
クロマトグラフィー分画のための供給物として使用したデオキシ糖を含む溶液は、キシロースの大部分の回収後に、Ca2+をベースとした亜硫酸パルプ廃液から分離された側流であった(国際公開第02/27039号パンフレット;米国特許出願公開第02/0120135号明細書)。亜硫酸蒸解のための原料としてシラカバを使用した。供給溶液は以下の組成を有していた:
【表1】

クロマトグラフィー分画を、バッチ式プロセスとして試験的規模のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。1mの径を有するカラムを、ファイネックス社製のスチレン骨格を有する強酸性カチオン交換樹脂(Finex CS11GC)により充填した。該樹脂はNa+形態であった。樹脂床の高さはおよそ4.8mであった。該樹脂のDVB含量は
5.5質量%であり、及び該樹脂の平均粒径は0.31mmであった。カラム、供給溶液及び溶離剤の温度は65℃であった。カラム内の流速は550L/時間に調節した。
クロマトグラフィー分画を以下のとおりに行った:
1段階:供給溶液の乾燥物を、溶液の屈折率(RI)に従い、溶液100g中の乾燥物37gに調節した。
2段階:前加熱した溶液60Lを樹脂床の頂上にポンプ供給した。
3段階:前加熱したイオン交換水をカラムの頂上に供給することにより、供給溶液をカラムの下流に溶離した。
4段階:流出溶液の50mL試料を5分間隔にて収集した。試料の組成を、屈折率検出器及び2倍のアミノカラム(75%ACNを溶離剤として使用した。)付きHPLC装置を用いて解析した。
ラムノースがフコース及びMAXの前にカラムから溶離され、そしてフコース及びMAXは殆ど同時に溶離された。ラムノースに富む画分並びにフコース及びMAXに富む画分が、以下の表に示された純度及び収率で分離され得た。画分中の成分の収率は、再循環画
分及び残留画分をまた含むすべての流出画分中の該成分の総量に関して与えられる。
【表2】

ラムノースに富む画分は、ラムノースの更なる加工に添加され得る。
流出物(流出溶液)のpHは4ないし6であった。分離プロファイルを図1に示す。
【0040】
実施例2
Zn2+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画
クロマトグラフィー分画のために使用した供給溶液は、国際公開第02/0120135号パンフレット(米国特許出願公開第02/0120135号明細書)に開示されたラムノース回収プロセスから得た。供給溶液は以下の組成を有していた:
【表3】

クロマトグラフィー分画を、バッチ式プロセスとして実験室用のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。0.09mの径を有するカラムを、ファイネックス社製のスチレン骨格を有する強酸性カチオン交換樹脂(Finex CS11GC)により充填した。樹脂床の高さはおよそ1.5mであった。該樹脂のDVB含量は5.5質量%であり、及び該樹脂の平均粒径は0.31mmであった。該樹脂をZn2+形態に再生した。カラム及び供給溶液及び溶離水の温度は65℃であった。カラム内の流速は50mL/分に調節した。
クロマトグラフィー分画を以下のとおりに行った:
1段階:供給溶液の乾燥物を、溶液の屈折率(RI)に従い、溶液100g中の乾燥物25gに調節した。
2段階:前加熱した溶液800mLを樹脂床の頂上にポンプ供給した。
3段階:前加熱したイオン交換水をカラムの頂上に供給することにより、供給溶液をカラムの下流に溶離した。
4段階:流出溶液の10mL試料を3分間隔にて収集した。試料の組成を、パルス電気化学検出器及びカルボパックPA1(CarboPac PA1)(登録商標)アニオン交換カラム(水及び0.2M NaOHを溶離剤として使用した。)付きダイオネックス(Dionex)HPLC装置を用いて解析した。
ラムノースがフコース及びMAXの前に溶離され、そしてフコース及びMAXは殆ど同時に溶離された。ラムノースに富む画分並びにフコース及びMAXに富む画分が、以下の表に示された純度及び収率で分離され得た。
【表4】

流出物(例えば、流出溶液)のpHは3ないし4であった。分離プロファイルを図2に示す。
【0041】
実施例3
Na+形態にある弱酸性カチオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液のクロマトグ
ラフィー分画
クロマトグラフィー分画のための供給物は、実施例1(Na+形態にあるSACにより
分離)に従い得られたフコース、MAX、ラムノース及びその他の単糖類を含む画分であった。供給溶液は以下の組成を有していた:
【表5】

クロマトグラフィー分画を、バッチ式プロセスとして試験的規模のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。0.60mの径を有するカラムを、ファイネックス社製のアクリ
ル骨格を有する弱酸性カチオン交換樹脂(Finex CS16GC)により充填した。該樹脂はNa+形態に再生された。樹脂床の高さはおよそ5.2mであった。該樹脂のD
VB含量は8質量%であり、及び該樹脂の平均粒径は0.33mmであった。カラム、供給溶液及び溶離剤の温度は65℃であった。カラム内の流速は150L/時間に調節した。
クロマトグラフィー分画を以下のとおりに行った:
1段階:供給溶液の乾燥物を、溶液の屈折率(RI)に従い、溶液100g中の乾燥物33gに調節した。
2段階:前加熱した溶液150Lを樹脂床の頂上にポンプ供給した。
3段階:前加熱したイオン交換水をカラムの頂上に供給することにより、供給溶液をカラムの下流に溶離した。
4段階:流出溶液の画分試料を8分間隔にて収集した。試料の組成を、屈折率検出器及び2倍のアミノカラム(75%ACNを溶離剤として使用した。)付きHPLC装置を用いて解析した。
溶出の順序は、メチル−α−D−キシロース(MAX)、ラムノース及びフコースであり、そしてそれらは部分的に重複した。他の単糖類の幾分かが、フコースの後に別のピークとして溶出された。Na+形態にあるWAC樹脂により、上述の成分の各々に富む画分
が、下記の表に与えたとおりに分離され得た。
【表6】

流出物のpHは9.2ないし9.7であった。分離プロファイルを図3に示す
【0042】
実施例4
HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液の前処理
前処理段階は、バッチ式プロセスとして試験的規模のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。0.225mの径を有するカラムを、アクリル骨格を有する強塩基性アニオン交換樹脂(デュオライト(Duolite)A101D)により充填した。平均ビーズ径は0.35mmであった。樹脂床の高さはおよそ3.5mであった。該樹脂を亜硫酸水素(HSO3-)形態に再生し、そして供給装置を樹脂床の頂上に設置した。カラム及び供給溶液の温度は25℃であった。カラム内の流速は最大20L/時間となるように調節した。供給溶液のpHは4ないし4.5の範囲であった。
供給物として、実施例3からのシロップ(WAC(Na+))を使用し、そしてこの前
処理の目的は、クロマログラフィー分離樹脂からHSO3-イオンを置換し得る化合物を取り除くことであった。
前処理段階を以下のとおりに行った:
1段階:水の薄層が樹脂表面上に見られ得るまでの溶離水の量を滴下した。
2段階:供給溶液の1500ないし2000リットルをカラムに通した。
3段階:供給溶液の薄層が樹脂表面上に見られ得るまで該供給溶液の量を滴下した。
4段階:乾燥物が流出物中に測定され得なくなるまで溶離水を流した。
前処理段階は、デオキシ糖の純度を高めなかった上に、いずれの分解も見られなかった。続く分離におけるフコース画分からの脱色及び安定効果は大きかった。流出溶液のpHはおよそ4であった。
【0043】
実施例5
HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画
クロマトグラフィー分画のために使用した供給溶液は、実施例3(Na+形態にあるW
ACによる分離)に従い得られたデオキシ糖を含む画分であった。供給溶液は以下の組成を有していた:
【表7】

クロマトグラフィー分画を、バッチ式プロセスとして試験的規模のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。0.6mの径を有するカラムを、アクリル骨格を有する強塩基性アニオン交換樹脂(Finex As532GC、3.5%DVB)により充填した。樹脂床の高さはおよそ4.8mであった。該樹脂の平均粒径は0.35mmであった。該樹脂を亜硫酸水素(HSO3-)形態に再生した。カラム、供給溶液及び溶離水の温度は40℃であった。カラム内の流速は283L/時間に調節した。
クロマトグラフィー分画を以下のとおりに行った:
1段階:供給溶液の乾燥物を、溶液の屈折率(RI)に従い、溶液100g中の乾燥物37gに調節した。
2段階:前加熱した溶液800mLを樹脂床の頂上にポンプ供給した。
3段階:前加熱したイオン交換水をカラムの頂上に供給することにより、供給溶液をカラムの下流に溶離した。
4段階:流出した溶液の50mL試料を10分間隔にて収集した。試料の組成を、ACN(79%)を溶離剤として使用したアミノカラム付きHPLC装置を用いて解析した。
フコース及びラムノースの前に、MAXを含む他の単糖類の殆どが別のピークとしてカラムから溶離された。ラムノースがフコースの後に溶離されたが、それらは部分的に重複した。亜硫酸形態の強塩基性アニオン交換樹脂によって、フコース及びラムノースに富む画分が、以下の表に与えられたとおりに分離され得た。
【表8】

流出物(例えば、流出溶液)のpHは4.0ないし4.3であった。分離プロファイルを図4に示す。
【0044】
実施例6
フコースの冷却結晶化
(EtOHと水の混合物中での結晶化により続いた水性結晶化)
冷却結晶化を、DSとして、71.8%フコース、1.4%キシロース。0.9%アラビノース、5.3%ラムノース及び0.2%未満のガラクトースを含む、クロマトグラフィーにより富んだフコースシロップから行った。供給シロップの総量55kgの乾燥物を、減圧下にて蒸発させることにより濃縮し、そして100リットルの冷却結晶化器内に移した。89.3質量%乾燥物含量を有するシロップを50℃にて混合した。混合の間にシーディングが自発的に生じた。50℃におけるおよそ20時間の混合後、母液は、29%のフコース結晶化率に対応する85.3質量%の乾燥物濃度を有していた。その後、粘度を低下させるために25リットルのエタノールを添加し、そして塊を40時間で20℃まで冷却した。結晶化塊を、最大のフコース結晶化率を得るためにおよそ20℃にて3日間混合した。結晶をその後、慣用のバスケット式遠心器を使用して母液から分離した。総量26.5kgの湿った結晶を得た。該結晶を、20リットルのエタノールと混合することにより洗浄し、遠心分離しそして乾燥した。99%を超える純度を有する総量24.5kgのフコース結晶を得た。フコースの収率は、供給シロップ中のフコースの62%であった。フコース生成物は145.1℃の融点を有していた。
3つの融点測定値を、粉砕の前後に欧州薬局方の方法により行った。乾燥した結晶から得られた融点は、145.0、145.0及び144.6℃であり、そして微粉砕した試料から得られた融点は、145.2、145.4及び145.4℃であった。すべての測定値の平均は145.1℃であった。さらに、熱的挙動を、示差走査熱量計(Mettler FP84HT)により、2℃/分の加熱速度を使用して、40℃ないし160℃まで測定した。サーモグラム中に1つのピークがあり、そして該ピークの温度は143.5℃であった。
【0045】
実施例7
溶媒としての水による結晶化
(水性煮沸結晶化(Aqueous boiling crystallization)と、続く水中での冷却結晶化)
結晶化のための出発物質は、実施例5に従い、すなわち3つの逐次クロマトグラフィー分画(Na+形態にあるSAC、Na+形態にあるWAC及びHSO3-形態にあるSBA)から得られたフコースに富む画分であった。出発フコース溶液は、DSとして、86.3%のフコース、0.8%のキシロース、0.3%のアラビノース、4.5%のラムノース
及び0.2%未満のガラクトースを含んでいた。先の結晶化からの幾分かの低純度の中間フコース結晶を溶解し、そして前記出発溶液と混合して、結晶化供給液を得た。こうして得られた供給液の組成は、HPLC(アミノ形態にある樹脂、+55℃、50%H3PO46mL/Lを有する79%ACN)により測定した、DSとして、88.3%のフコース、1.1%のキシロース、0.3%のアラビノース及び4.1%のラムノース、0.2%のガラクトース及び0.5%未満のMAXであった。供給溶液のpHは4.3であり、及び乾燥物含量(DS)は34.1質量%であった。供給シロップの総量280kgDSを、減圧下にて蒸発結晶器により濃縮した。シーディングは、乾燥した微粉砕フコースのシード結晶の40グラムを用いて、54.5℃にて行った。シード結晶は、先の結晶化の生成物から粉砕により調製した。シーディング後、煮沸結晶化塊は、シロップの残りを供給することにより、及び該結晶化塊を減圧下にて濃縮することにより、調製した。煮沸結晶化塊の総量240リットルを、慣用の冷却結晶化器内に移した。該塊を40時間にて55ないし23.5℃まで段階的に冷却した。23.5℃におけるおよそ9時間の混合後、結晶化率は、フコースのおよそ59%であった。結晶化の手順は以下のとおりであった:

Time T DS,mL
時間 ℃ 質量%
0 54.5 80.4 40gのシード結晶を用いて蒸発結晶化器内にシ
ーディング
2 55.0 82.1 冷却結晶化の開始(DS,塊83.0)
22 40.7 75.3
42 23.0 70.8 冷却終了
51 23.5 70.7 遠心分離、結晶の洗浄及び乾燥試験

1回の遠心分離試験を、実験室用のバスケット式遠心器 ロト サイレンタ(Roto
Silenta)II(7分/3350rpm、50mLの洗浄水)を用いて行った。湿った結晶の総量483グラムが、結晶化塊の1155グラムから得られた。遠心分離の結果は以下のとおりである:

総量 DS フコース% DS
グラム % DSとして グラム
結晶化塊 1155 83.0 86.3 958.7
遠心分離された結晶 483 97.6 98 471.4

乾燥(40℃にておよそ6時間)は、乾燥の2.4%損失を生じた。結晶純度はDSとして98%あり、及び融点は136.6℃であった。フコース収率は、入手可能なフコース量に基づき54.6%であった。遠心分離された結晶の幾分かを、99.5%エタノールと混合することにより洗浄し、遠心分離しそして乾燥した。結果として、99%よりも高い純度、146.1℃の融点及び長さ50μmを超え且つ幅20μmを超える粒径を有する結晶生成物が得られた。99%を超える純度を有するフコース結晶の生成率は、およそ50%であった。本実施例は、高純度のフコース結晶が、供給液の組成が特定範囲にあり、及び不純物は沈澱しないが母液を用いて該結晶から洗浄除去され得る場合に、水溶液からの結晶化により得られ得ることを示している。
【0046】
実施例8
溶媒として水とエタノールの混合物を用いたフコースの結晶化
(水性煮沸結晶化と、続くEtOHと水の混合物中での冷却結晶化)
結晶化のための供給シロップは、実施例7と同様のフコース溶液であった。結晶化の開始は実施例7と同様の方法により行った。実施例6に記載された煮沸結晶化を、結晶含量が粘度を高くするまで水溶媒中の冷却結晶化により続けた。その後、99.5%エタノー
ルの30リットルを、粘度を低下させるために結晶化塊に混合し、そして、結晶化を、15時間で23.5から15.5℃への冷却により続けた。その後、結晶を、慣用のバスケット式遠心器を使用することにより、母液から分離した。総量154.5kgの湿った結晶が得られた。該結晶を99.5%エタノールの100リットルと混合することにより洗浄し、遠心分離しそして乾燥した。99%を超える純度及び145.5℃の融点を有する結晶生成物の総量121.5kgが得られた。特定旋光度は、[α]D20−74.7°で
あった。フコース生成物の収率はおよそ50%であった。本実施例は、高いフコース結晶が、供給液の組成が特定範囲にある場合に、EtOHと水の混合物からの結晶化により得られ得ることを示している。
【0047】
実施例9
溶媒として水とエタノールの混合物を用いたフコースの結晶化
(水性煮沸結晶化と、続くEtOHと水の混合物中での冷却結晶化)
結晶化のための出発材料は、実施例7及び8の結晶化からの母液と洗浄液を組み合わせることにより得た。供給溶液は、DSとして、78%のフコース、1.8%のキシロース、0.6%のアラビノース、7.8%のラムノース、0.5%のガラクトース及び0.5%未満のMAXを含んでいた(HPLCにより測定:アミノ形態にある樹脂、+55℃、50%H3PO46mL/Lによる79%ACN)。43質量%のDS含量を有する供給シロップの総量138kgDSを、減圧下にて慣用の蒸発結晶器により濃縮した。シーディングは、フコースのシード結晶の40グラムを用いて、54.6℃にて行った。シーディング後、煮沸結晶化塊は、シロップの残りを供給することにより、及び該結晶化塊を減圧下にて濃縮することにより、調製した。煮沸結晶化塊の総量115リットルを、慣用の冷却結晶化器内に移した。該塊を48時間にて56から36℃に段階的に冷却し、それにより粘度が高まり、そして該塊は水溶媒からの結晶分離に適していた。この段階において、結晶化率は50%フコースであった。しかしながら、粘度を低下させるために99.5%エタノールの27リットルを添加することにより、及び20時間で36から15.5℃に冷却することにより、結晶化を続けた。その後、結晶を分離し及び乾燥した。結晶化の手順は以下のとおりであった:

Time T DS,mL
時間 ℃ 質量%
0 54.6 83.3 40gのシード結晶を用いて蒸発結晶化器内にシ
ーディング
1 56.0 82.1 冷却結晶化の開始,DS,塊85.0
20 51.3 79.6
48 36.0 77.8 該塊は厚く、そしてEtOH添加を開始
67 15.5 − 遠心分離、結晶の洗浄及び乾燥

結晶は、慣用のバスケット式遠心器を使用することにより、母液から分離した。総量59.9kgの湿った結晶が得られた。結晶を、99.5%エタノール30Lと混合することにより洗浄し、遠心分離しそして乾燥した。99%を超える純度及び143.7℃の融点を有する結晶生成物48.4kgが得られた。特定旋光度は、[α]D20−72.2°
であった。フコース生成物の収率はおよそ48%であった。本実施例は、高純度のフコース結晶が、供給液の組成が特定範囲にある場合に、水とエタノールの混合物から、及び比較的低純度を有する供給シロップ(最初の結晶化の母液)から直接に結晶化することにより得られ得ることを示している。
【0048】
実施例10
フコース結晶化試験の結果の結論
融点がフコース結晶の純度の良好な指標であることが判った。結果を以下の表に示す。
結果の直線状の適合性(図5を参照のこと。)は、以下の式:結晶の純度(DS%)=0.177×mp(℃)+73.71(R2=0.978) を与える。
【表9】

上記表中の試験試料27052及び17052は、本発明に従い調製された他のL−フコース試料を指す。
さらに、本発明のL−フコース試料と市販のL−フコース試料(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.))との間の対比試験は、以下の結果を与えた。
【表10】

【0049】
実施例11
HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いたデオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画
クロマトグラフィー分画のための供給物として使用したデオキシ糖を含む溶液は、キシロースの殆どの回収後にCa2+ベースの亜硫酸パルプ廃液から分離された側流であった。シラカバが亜硫酸蒸解のための原料として使用された。供給溶液は以下の組成を有していた:
【表11】

クロマトグラフィー分画を、バッチ式プロセスとして試験的規模のクロマトグラフィー分離カラム内で行った。0.1mの径を有するカラムを、アクリル骨格を有する強塩基性アニオン交換樹脂(Finex As532GC、3.5%DVB)により充填した。樹脂床の高さはおよそ1.2mであった。該樹脂の平均粒径は0.35mmであった。該樹脂を亜硫酸水素(HSO3-)形態に再生した。カラム、供給溶液及び溶離水の温度は40℃であった。カラム内の流速は100mL/分に調節した。供給液のpHは6.0であった。
クロマトグラフィー分画を以下のとおりに行った:
1段階:供給溶液の乾燥物を、溶液の屈折率(RI)に従い、溶液100g中の乾燥物31.5gに調節した。
2段階:前加熱した溶液800mLを樹脂床の頂上にポンプ供給した。
3段階:前加熱したイオン交換水をカラムの頂上に供給することにより、供給溶液をカラムの下流に溶離した。
4段階:流出した溶液の5mL試料を5分間隔にて収集した。試料の組成を、水及びACN(79%)を溶離剤として使用したアミノカラム付きHPLC装置を用いて解析した。
フコース及びラムノースの前に、MAXを含む他の単糖類の殆どが分離ピークとしてカラムから溶出された。ラムノースがフコースの後に部分的に溶出された。こうして亜硫酸水素形態の強塩基性アニオン交換樹脂によって、フコースに富む画分が、他の単糖類及び他の成分から良好に分離され得た。流出物(例えば、流出溶液)のpHは1.9ないし3.8であった。分離プロファイルを図6に示す。
【0050】
実施例12
SMBプロセスを用いたフコースを含むシロップのクロマトグラフィー分画
クロマトグラフィー分画のためのSMB試験装置は、直列に接続された6つのカラム、供給ポンプ、再生ポンプ、溶離水ポンプ並びに種々のプロセス流のための流入及び生成物バルブを含んでいた。各々のカラムの高さは3.4mであり、及び各々のカラムは0.2mの径を有していた。カラムを、Na+形態にある強酸性ゲル型のカチオン交換樹脂(フ
ァイネックスCS11GC)により充填した。平均ビーズ径は0.33mmであり、及びジビニルベンゼン含量は5.5%であった。
クロマトグラフィー分画のための供給物は、国際公開第02/27039号パンフレット(=米国特許出願公開第2002/120135号明細書)に開示されるラムノース回収プロセスからのシロップであった。クロマトグラフィー分画の目的は、該シロップ中に含まれるフコース及びラムノースを分離することであった。
供給物のpHを、50質量%NaOH溶液を用いて6.2に調節した。溶液をその後、濾過の補助剤としてのケナイト(Kenite)300(プレコート1kg/m2、DS
ベースで正味0.5%)を使用したサイツ(Seitz)圧力フィルタにより濾過し、そして供給物濃度を55g/100mLに調節した。供給物の組成は以下の表に記載するが
、パーセンテージは乾燥物質量に基づき与えられる。
【表12】

分画を、以下の記載のとおりに9段階のSMB順序により行った。供給物及び溶離剤の温度は65℃であった。水を溶離剤として使用した。
1段階:供給溶液の16Lを、80L/時間の流速にて第一カラムにポンプ供給し、そして残留画分を該カラムから収集した。同時に水27Lを135L/時間の流速にて第二カラムに押出し、そして残留画分をカラム4から収集した。同時にまた、水16Lを80L/時間の流速にてカラム5に押出し、そしてフコースを含む画分を最後のカラムから収集した。
2段階:供給溶液の10Lを、80L/時間の流速にて第一カラムにポンプ供給し、そしてラムノースを含む画分を該カラムから収集した。同時に水19Lを150L/時間の流速にて第二カラムに押出し、そしてもう1つのラムノースを含む画分をカラム4から収集した。同時にまた、水16Lを80L/時間の流速にてカラム5に押出し、そしてフコースを含む画分を最後のカラムから収集した。
3段階:供給物の30Lを、80L/時間の流速にて第一カラムにポンプ供給し、そしてフコースを含む画分を最後のカラムから収集した。
4段階:水27Lを、80L/時間の流速にて最後のカラムにポンプ供給し、そして残留画分を第二カラムから収集した。同時に水27Lを80L/時間の流速にて第三カラムに押出し、そして残留画分をカラム5から収集した。
5段階:水20Lを、80L/時間の流速にて最後のカラムにポンプ供給し、そしてラムノースを含む画分を第二カラムから収集した。同時に水20Lを80L/時間の流速にて第三カラムに押出し、そしてもう1つのラムノースを含む画分をカラム5から収集した。
6段階:29Lを、80L/時間の流速にてすべてのカラムで形成したカラムセットのループに循環させた。
7段階:水28Lを、80L/時間の流速にて最後のカラムにポンプ供給し、そして残留画分を第三カラムから収集した。同時に水28Lを80L/時間の流速にてカラム4に押出し、そして残留画分を最後のカラムから収集した。
8段階:水20Lを、80L/時間の流速にて第一カラムにポンプ供給し、そしてラムノースを含む画分を第三カラムから収集した。同時に水20Lを80L/時間の流速にてカラム4に押出し、そしてもう1つのラムノースを含む画分を最後のカラムから収集した。
9段階:29Lを、80L/時間の流速にてすべてのカラムで形成したカラムセットのループに循環させた。
系の平衡化後、以下の画分:すべてのカラムから1つの残留画分、すべてのカラムから1つのラムノースを含む画分及び最後のカラムから3つのフコースを含む画分を、系から引出した。組み合わせた画分に対するHPLC解析を含む結果を以下の表に記載する。
【表13】

生成物画分から計算された総収率は、フコースに対して94.4%であり、そしてラムノースに対して76%であった。
【0051】
技術的な進歩につれ、本発明の概念が種々の方法にて改良され得ることが当業者に明らかである。本発明及びその態様は、上述の実施例に限定されず、請求項の範囲内で変化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1(Na+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を使用した、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
【図2】実施例2(Zn2+形態にある強酸性カチオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
【図3】実施例3(Na+形態にある弱酸性カチオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
【図4】実施例5(HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。
【図5】フコースの融点とフコースの純度との間の関係を示すグラフである。
【図6】実施例11(HSO3-形態にある強塩基性アニオン交換樹脂を用いた、デオキシ糖を含む溶液のクロマトグラフィー分画)から得られた分離プロファイルのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のデオキシ糖及び所望によりグリコシドを含むバイオマスから誘導された溶液から1種以上のデオキシ糖及び所望によりグリコシドを分離し及び回収する方法であって、
前記溶液を、溶離剤として水を使用して、1つ以上のクロマトグラフィー分画(1)段階、(2)段階及び(3)段階:
(1)強酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つのクロマトグラフィー分画、
(2)弱酸性カチオン交換樹脂及び弱塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つのクロマトグラフィー分画、
(3)強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用した少なくとも1つのクロマトグラフィー分画、
にかけ、続いて分画(1)及び/又は(2)及び/又は(3)から少なくとも1種のデオキシ糖及び所望によりグリコシドに富む1つ以上の画分を回収する、
ことからなる方法。
【請求項2】
前記デオキシ糖はフコース及びラムノースから選択され、及び前記グリコシドはメチル−α−D−キシロピラノシドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液を、(1)段階、(2)段階及び/又は(3)段階の2つ以上にかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液を、(1)段階、(2)段階及び/又は(3)段階から選択される段階に2回以上かけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、(1)段階からラムノースに富む画分を回収することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、(2)段階からメチル−α−D−キシロピラノシドに富む画分を回収することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、(3)段階からフコースに富む画分を回収することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、(1)段階、(2)段階又は(3)段階の1つにおいてラムノース、フコース又はメチル−α−D−キシロピラノシドに富む画分を回収することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記バイオマスから誘導された溶液を、強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてフコースに富む画分を回収することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、以下の逐次段階:
(1)前記バイオマスから誘導された溶液を、強酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてラムノースに富む画分及び/又はフコースから選択されるデオキシ糖及びメチル−α−D−キシロピラノシドから選択されるグリコシドを含む1つ以上の画分を回収する段階、及び
(2)前記メチル−α−D−キシロピラノシド及びフコースを含む1つ以上の画分を、弱酸性カチオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてメチル−α−D−キシロピラノシドに富む画分及びフコースを含む画分を
回収する段階、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記フコースを含む画分を、強塩基性アニオン交換樹脂から選択されるカラム充填材を使用したクロマトグラフィー分画にかけ、そしてフコースに富む画分を回収することを含む(3)段階をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記強酸性カチオン交換樹脂は、Na+形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記強酸性カチオン交換樹脂は、Zn2+形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記弱酸性カチオン交換樹脂は、Na+形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記強塩基性アニオン交換樹脂は、HSO3-形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記クロマトグラフィー分画は、SMB分離を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマスから誘導された溶液は、植物ベースのバイオマスから誘導されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオマスから誘導された溶液は、1種以上のデオキシ糖及びグリコシドを含むバイオマス加水分解物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上のデオキシ糖及びグリコシドを含むバイオマス加水分解物は、パルプ化プロセスから得られたパルプ廃液である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記パルプ廃液は、堅木のパルプ化から得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1種以上のデオキシ糖及びグリコシドを含むバイオマス加水分解物は、甜菜から誘導された溶液及びサトウキビから誘導された溶液から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記少なくとも1種のデオキシ糖及び所望によりグリコシドに富む1種以上の画分を結晶化にかけることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記結晶化は、蒸発及び冷却結晶化を用いて行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1種以上のデオキシ糖は、フコースから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
フコースは、水、アルコール、好ましくはエタノール、及び水とアルコールとの混合物から選択される溶媒、好ましくは水とアルコールとの混合物から結晶化される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結晶化の溶媒は、水である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フコースの結晶化は、DSとして45%を超えるフコースを含む溶液から行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記フコースの結晶化は、DSとして80%を超えるフコースを含む溶液から行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フコースの結晶化は、DSとして、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含む溶液から行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記フコースの結晶化は、DSとして、45%を超えるフコース、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含む溶液から行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
フコースの結晶化が、45%を超えるフコース、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含むバイオマスから誘導された溶液から行われる、フコースの結晶化のための方法。
【請求項32】
前記結晶化は、0ないし100℃の範囲の温度にて行われる、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
生じた結晶塊の粘度は、5ないし500Pasの範囲にある、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項34】
前記結晶化は、溶媒として水とエタノールとの混合物を使用して行われる、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項35】
前記結晶化は、0.5ないし10日間の滞留時間により行われる、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項36】
前記フコースの結晶化は、DSとして、80%を超えるフコース、20%未満のラムノース、15%未満のキシロース、3%未満のアラビノース及び1%未満のガラクトースを含むバイオマスから誘導された溶液から行われる、請求項31に記載のフコースの結晶化のための方法。
【請求項37】
前記フコースの結晶化は、0ないし100℃の範囲の温度において行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記フコースの結晶化は、6ないし80時間の滞留時間により行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記フコースの結晶化は、分別結晶化により行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記方法は、DSとして60%を超える純度を有する結晶フコースを与える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結晶フコースの純度は、DSとして90%を超える、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記結晶フコースの純度は、DSとして99%を超える、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記方法は、前記結晶化から得られた結晶を洗浄することを含む、請求項22又は31に記載の方法。
【請求項44】
洗浄剤は、水、有機溶媒又はそれらの混合物から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記フコースは、L−フコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記ラムノースは、L−ラムノースである、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
144℃よりも高い融点及びDSとして99%を超える純度を有する、バイオマスをベースとした結晶L−フコース。
【請求項48】
145℃よりも高い融点及びDSとして99.5%を超える純度を有する、請求項47に記載のバイオマスをベースとした結晶L−フコース。
【請求項49】
植物ベースのバイオマスをベースとした、請求項47に記載の結晶L−フコース。
【請求項50】
請求項24及び31に従う方法により得られ得る、請求項47に記載の結晶L−フコース。
【請求項51】
水からの結晶化により得られ得、続いて洗浄される、請求項50に記載の結晶L−フコース。
【請求項52】
栄養補助食品中の成分としての、請求項47ないし51のうちいずれか1項に記載の結晶L−フコースの使用。
【請求項53】
医薬品中の成分としての、請求項47ないし51のうちいずれか1項に記載の結晶L−フコースの使用。
【請求項54】
化粧品中の成分としての、請求項47ないし51のうちいずれか1項に記載の結晶L−フコースの使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−506711(P2007−506711A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527434(P2006−527434)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000557
【国際公開番号】WO2005/040430
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(505211640)
【Fターム(参考)】