説明

糖尿病発症を予防または遅延させるためのゾヌリンのペプチドアンタゴニストの使用方法

【課題】ゾヌリンのペプチドアンタゴニストを用いて糖尿病発症を予防または遅延させる方法を提供すること。
【解決手段】糖尿病発症を予防または遅延させる方法であって、該方法は、糖尿病発症を予防または遅延させる必要のある被験体に、薬学的に有効量のゾヌリンのペプチドアンタゴニストを投与する工程を包含し、ここで該ペプチドアンタゴニストは、閉鎖帯毒素レセプターに結合するが、哺乳動物の接着結合の開きを薬学的に修飾しない、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開発は、University of Maryland(Baltimore,Maryland)によってサポートされた。本明細書中に記載される発明は、国立衛生研究所からの資金提供によってサポートされた(DK 48373−05)。合衆国政府は一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、糖尿病(特に、I型糖尿病)の発症を予防するかまたは遅らせるための、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストの使用に関する。ペプチドアンタゴニストは、zonula occludens毒素レセプターに対して結合するが、それにもかかわらず、哺乳動物の固い結合を開くことを生理学的には調節しない。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(I.腸管の固い結合部の機能およびその調節)
腸管の上皮は、外部の環境と内部の環境との間に最も大きな界面(2,000,000cmより多い)を示す。細胞内での固い結合(「tj」)能力の維持は、可能性のある有害な環境因子(例えば、細菌、ウイルス、毒素、食物アレルギー、および腸管のバリアを通過するマクロ分子)の移動を妨げる。この能力は、胃腸管に影響を与える種々の臨床的な状態(食物アレルギー、腸管の感染、吸収不良症候群、および炎症性の腸疾患を含む)において有意に危険に曝される。
【0004】
tjまたはzonula occludens(本明細書中では以後、「ZO」)は、上皮の吸収および分泌の特徴の1つである(Madara,J.Clin.Invest.,83:1089−1094(1989);およびMadara、Textbook of Secretory Diarrhea、Lebenthalら編、第11章、125−138頁(1990))。先端部分の区画と基底側の区画との間のバリアとして、これらは、細胞近辺の(paracellular)経路を通じるイオンおよび水可溶性の溶質の受動的な拡散を選択的に調節する(Gumbiner,Am.J.Physiol.,253(Cell Physiol.22):C749−758(1987))。このバリアは、細胞を通過する通路に関係している経路の活性によって作成される任意の勾配を維持する(Diamond,Physiologist,20:10−18(1977))。
【0005】
上皮を通過する導電率におけるバリエーションは、通常は、細胞近辺の経路の透過性における変化が原因にあると考えられ得る。なぜなら、腸内細胞(enterocyte)の血漿膜の抵抗が、比較的高いからである(Madara(1989,1990)、前出)。ZOは、この細胞近辺の経路において主用なバリアを示し、そして上皮組織の電気的な抵抗は、凍結割断の電子顕微鏡写真によって観察されるように、膜貫通タンパク質の鎖の数、およびZOにおけるそれらの複合性に依存するようである(Madaraら、J.Cell Biol.,101:2124−2133(1985))。
【0006】
ZOは、静力学的な構造として一旦認識されると、実際には、種々の発達の環境に(Magnusonら、Dev.Biol.,67:214−224(1978);Revelら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,40:443−455(1976);およびSchneebergerら、J.Cell Sci.,32:307−324(1978))、生理学的な環境に(Gilulaら、Dev.Biol.,50:142−168(1976);Madaraら、J.Membr.Biol.,100:149−164(1987);Mazariegosら、J.Cell Biol.,98:1865−1877(1984);およびSardetら、J.Cell Biol.,80:96−117(1979))、そして病理学的な環境に(Milksら、J.Cell Biol.,103:2729−2738(1986);Nashら、Lab.Invest.,59:531−537(1988);およびShasbyら、Am.J.Physiol.,255(Cell Physiol.,24:C781−C788(1988))、動的にそして容易に適合するという、豊富な証拠が存在する。この適合の根底にある調節機構は、なお完全には理解されていない。しかし、Ca2+の存在下では、ZOのアセンブリは、最終的にZOエレメントの組織化されたネットワークの形成および調節を導く生化学的な事象の複雑なカスケードを誘発する細胞性の相互作用の結果であることが明らかである。ZOエレメントの組織化されたネットワークの組成は、部分的に特徴付けられているのみである(Diamond、Physiologist,20:10−18(1977))。膜貫通タンパク質の鎖の候補であるoccludenが、最近、同定されている(Furuseら、J.Membr.Biol.,87:141−150(1985))。
【0007】
膜の接触の基礎を形成する細胞質の偽膜性のプラーク中で6個のタンパク質が同定されているが、これらの機能は確立されている状態のままである(Diamond、前出)。ZO−1およびZO−2は、特徴付けられていない130kDのタンパク質(ZO−3)との分解安定性の複合体中でヘテロニ量体として存在する(Gumbinerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:3460−3464(1991))。ほとんどの免疫電子顕微鏡による研究によって、ZO−1は正確に膜の接触の下に局在化された(Stevensonら、Molec.Cell Biochem.,83:129−145(1988))。2つの他のタンパク質である、シングリン(cingulin(Citiら、Nature(London)、333:272−275(1988))および7H6抗原(Zhongら、J.Cell Biol.,120:477−483(1993))は、さらに、膜から局在化され、そしてまだクローン化されていない。Rab 13は小さいGTP結合タンパク質であり、これはまた、最近、結合領域に局在化されている(Zahraouiら、J.Cell Biol.,124:101−115(1994))。他の小さいGTP結合タンパク質は、皮質性の細胞骨格を調節することが公知であり、すなわち、rhoは、局所的な接触においてアクチン−膜の接着を調節し(Ridleyら、Cell 70:389−399(1992))、そしてracは、成長因子によって誘導される膜の波打ち運動を調節する(Ridleyら、Cell 70:401−410(1992))。良好に特徴付けられた細胞の結合部、局所的な接触(Guanら、Nature、358:690−692(1992))、および接着結合部位(Tsukitaら、J.Cell Biol.,123:1049−1053(1993))におけるプラークタンパク質の公知の機能との類似性に基づいて、tjに関係しているプラークタンパク質は、細胞膜の両方の方向の通過、および皮質性のアクチンの細胞骨格に対する連結を調節することにおいて、シグナルを伝達することに関係していると仮定されている。
【0008】
上皮が供される多くの多様な生理学的および病理学的なチャレンジを受けるためには、ZOは、複雑な調節システムの存在を必要とする迅速でありそして調整された応答をし得なければならない。ZOの組立ておよび調節に関係している機構の正確な特徴付けは、現在活発に研究が行われている分野である。
【0009】
tjの構造および機能的な連関が、アクチンの細胞骨格と、吸収性の細胞のtj複合体との間に存在することの証拠の物体が、現在存在する(Gumbinerら、前出;Madaraら、前出;およびDrenchanら、J.Cell Biol.,107:1037−1048(1988))。アクチンの細胞骨格は、その正確な幾何学的配置が、アクチン結合タンパク質の大きな骨子によって調節される、微小繊維の複雑なネットワークから構成される。アクチン結合タンパク質のリン酸化の状態が、細胞の血漿膜に対する細胞骨格の連結を調節する方法の一例は、ミリストイル化されたアラニンを多く含むCキナーゼ基質(本明細書中では以後、「MARCKS」)である。MARCKSは、血漿膜の細胞質表面に会合している特異的なプロテインキナーゼC(本明細書中では、以後「PKC」)基質である(Aderem、Elsevier、Sci.Pub.(UK)、438−443頁(1992))。その非リン酸化形態においては、MARCKSは、膜のアクチンを架橋する。従って、MARCKSを通じて膜と会合しているアクチンのネットワークは、比較的固いようである(Hartwigら、Nature,356:618−622(1992))。活性化されたPKCは、膜から放出されたMARCKSをリン酸化する(Rosenら、J.Exp.Med.,172:1211−1215(1990);およびThelenら、Nature、351:320−322(1991))。MARCKSに連結されたアクチンは、膜から空間的に分離されるようであり、そしてより可塑性となる。MARCKSが脱リン酸化されると、これは、膜に戻され、ここでこれは再び、アクチンを架橋する(Hartwigら、前出;およびThelenら、前出)。これらのデータは、F−アクチンのネットワークが、アクチン結合タンパク質を含むPKC依存性のリン酸化プロセス(MARCKSはそのうちの1つである)によって再度配置され得ることを示唆する。
【0010】
種々の細胞内媒介因子は、tjの機能および/または構造を変更することが示されている。両生類の胆嚢(Duffeyら、Nature,204:451−452(1981))、ならびに、金魚(Bakkerら、Am.J.Physiol.,246:G213−G217(1984))およびヒラメ(Krasneyら、Fed.Proc.,42:1100(1983))の両方の腸管の固い結合は、細胞内のcAMPが増大した場合に、受動的なイオンの流れに対して増強させられた耐性を示す。また、Ca2+イオノフォアに対する両生類の胆嚢の暴露は、tj耐性を増強するようであり、そしてtj構造における変更を誘導するようである(Palantら、Am.J.Physiol.,245:C203−212(1983))。さらに、ホルボールエステルによるPKCの活性化は、腎臓(Ellisら、C.Am.J.Physiol.,263(Renal Fluid Electrolyte Physiol.32):F293−F300(1992))、および腸管(Stensonら、C.Am.J.Physiol.,265(Gastrointest.Liver Physiol.,28):G955−G962(1993))の上皮細胞株の両方において、細胞近辺の透過性を増大させる。
【0011】
(II.Zonula Occludens毒素)
コレラ毒素(CT)をコードするctxA遺伝子を欠失させることによって構築されたほとんどのVibrio choleraeワクチンの候補は、高い抗体応答を誘発し得るが、ワクチンの半分より多くがなお穏やかな下痢を生じる(Levineら、Infect.Immun.,56(1):161−167(1988))。CTの非存在下で誘導される下痢の程度を考慮して、V.choleraeは、他の腸毒性の因子を生じると仮定された。これらはなお、ctxA配列が欠失させられた株中に存在する(Levineら、前出)。結果として、第2の毒素であるzonula occludens毒素(本明細書中以後「ZOT」)が、V.choleraeによって合成され、そしてこれは、残っている下痢に関係することが、発見された(Fasanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8:5242−5246(1991))。zot遺伝子は、ctx遺伝子にすぐ隣接して配置されている。V.cholerae株の中での、zot遺伝子のctx遺伝子との高い割合での共存(Johnsonら、J.Clin.Microb.,31/3:732−733(1993);およびKarasawaら、FE
BS Microbiology Letters,106:143−146(1993))は、コレラの典型である急性の脱水状態となる下痢の原因における、ZOTの共作用性の役割の可能性を示唆する。最近、zot遺伝子はまた、他の腸病原体においても同定されている(Tschape、2nd Asian−Pacific Symposium on Typhoid fever and other Salmonellosis,47(Abstr.)(1994))。
【0012】
ウサギの回腸の粘膜について試験した場合には、ZOTが細胞内tjの構造を調節することによって腸管の透過性を増大させることが、以前に見出されている(Fasanoら、前出)。細胞近辺の経路の改変の結果として、腸管の粘膜がより透過性になることが見出されている。活性な輸送体に結合させられたNa−グルコースには影響を与えないZOTが細胞毒性ではなく、そして上皮を通過する抵抗を完全に回避することはできないこともまた見出された(Fasanoら、前出)。
【0013】
より最近は、ZOTが腸管の粘膜中で可逆的にtjを開き得ることが見出されている。従って、ZOTは、(例えば、糖尿病の処置において、腸管への薬物送達のための経口投与量の組成物中で使用された場合に)治療薬(例えば、インシュリン)と同時に投与された場合には、治療薬の腸管への送達に影響を与ええることが見出された(第WO96/37196号;米国特許第5,827,534号;米国特許第5,665,389号;およびFasanoら、J.Clin.Invest.,99:1158−1164(1997);これらのそれぞれは、本明細書中でそれらの全体において参考として援用されている)。ZOTが鼻の粘膜中でtjを可逆的に開き得ることもまた見出されている。従って、ZOTは、治療薬と同時に投与された場合には、治療薬の鼻での吸収を増強し得る(米国特許第5,908,825号;これは、その全体において本明細書中で参考として援用されている)。
【0014】
米国特許第5,864,014号(これは、その全体おいて本明細書中で参考として援用されている)においては、ZOTレセプターが同定されており、そして腸管の細胞株から精製されている(すなわち、CaCo2細胞)。さらに、米国特許第5,912,323号(これは、その全体において本明細書中で参考として援用されている)においては、ヒトの腸管、心臓、および脳組織に由来するZOTレセプターが同定されており、そして精製されている。ZOTレセプターは、腸管および鼻の透過性の調節に関係している、細胞近辺の経路の最初の工程を示す。
【0015】
(III.ゾヌリン)
米国特許第5,945,510号および同第5,948,629号(これらは、それらの全体において本明細書中で参考として援用されている)においては、ZOTに免疫学的および機能的に関係しており、そして哺乳動物の固い結合の生理学的な調節因子として作用する、哺乳動物のタンパク質が、同定されそして精製されている。「ゾヌリン(zonulin)」と呼ばれるこれらの哺乳動物のタンパク質は、腸管および鼻の粘膜のtjを通過する、そして血液の脳バリアのtjを通過する治療薬の吸収を増強するために有用である。
【0016】
(IV.ゾヌリンのペプチドアンタゴニスト)
ゾヌリンのペプチドアンタゴニストは、1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号(これは、その全体において本明細書中で参考として援用されており、これは、第WO00/07609号に対応する)において最初に同定され、そして記載された。上記のペプチドアンタゴニストは、ZOTレセプターに結合するが、しかし、哺乳動物の固い結合を開くことを生理学的に調節するようには機能しない。ペプチドアンタゴニストは、ZOTおよびZOTレセプターに対するゾヌリンの結合を競合的に阻害し、それによって哺乳動物の固い結合を開くことを生理学的に調節する、ZOTおよびゾヌリンの能力を阻害する。
【0017】
(V.糖尿病)
糖尿病に関係している罹患率および死亡率は、ひどい。米国の糖尿病の個体の総数は、1570万人である。これらのうちで、I型糖尿病の個体の100%、およびII型糖尿病の個体の40%が、インシュリンの定期的な投与に依存している。1年の基準で、糖尿病に伴う直接的な医薬品のコストは、400億ドルを超える。さらに、140億ドルが、障害、失業、および早産児の死亡率に関係している。
【0018】
経口によるインシュリン薬の送達のストラテジーが、多くの研究の努力の焦点となっているが、これらは、小腸の生理学的な性質が、インシュリンのようなマクロ分子の吸収を妨げるので、大きくは成功していない。
【0019】
糖尿病の処置のために細胞近辺の経路へインシュリンの送達を標的化するためのZOTを含有している経口投与量の組成物が、米国特許第5,827,534号および同第5,665,389号に記載されている。ZOTを使用する細胞近辺の経路を生理学的に調節することによって、現在では、全身的な循環に種々の広範な治療薬を導入することが可能である。この薬物送達システムは、多くの経口の薬学的な試薬の設計を長い間制限していた、標的特異性を付加する。このシステムの有用性は、インシュリンの送達に限定されず、そして経口によって投与される薬学的な試薬の設計の新しい方法を示し得る。
【0020】
糖尿病のような衰弱していく疾患についての革新的な処置ストラテジーが提供されつつあるが、疾患の発症を予防するかまたはそれを遅らせることが、広範囲に関係している。任意の疾患プロセスの病因を理解することは、困難な作業である。従って、糖尿病の発症を予防するかまたは遅らせる能力を有している薬学的な試薬の証拠は、以前には存在していない。本発明においては、新たな注目が、疾患の進行において重要かつ初期の工程が、細胞近辺の透過性における変更を残すことを実証することによって、糖尿病の病因、その発症の予防および遅延に注がれている。本発明においては、細胞近辺の透過性の増大が、糖尿病に進行するために必須であることが実証されている。この内因性の経路をブロックするゾヌリンのペプチドアンタゴニストは、糖尿病への進行を妨げることが、本発明において見出されている。従って、本発明は、糖尿病の長期間の合併症を予防するために有用であると考えられる。さらに自己免疫疾患に関係する透過性の変化は、長い間放置されており、そして本発明の初期の発明は、糖尿病患者に対して数えきれない利点を与えると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明の1つの目的は、糖尿病の発症を予防するかまたは遅らせるための方法を提供することである。
【0022】
本明細書中で以後に提供される発明の詳細な記載から明らかである本発明のこの目的および他の目的は、1つの実施態様においては、糖尿病(特に、I型糖尿病)の発症を予防するかまたは遅延させるための方法によって、達成されている。この方法は、このような発症の予防または遅延を必要としている被験体に対して、薬学的有効量のゾヌリンのペプチドアンタゴニストを投与する工程を包含する。ここでは、上記のペプチドアンタゴニストは、ZOTレセプターに結合するが、哺乳動物の接着結合の孔を生理学的には調節しない。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 糖尿病発症を予防または遅延させる方法であって、該方法は、糖尿病発症を予防または遅延させる必要のある被験体に、薬学的に有効量のゾヌリンのペプチドアンタゴニストを投与する工程を包含し、ここで該ペプチドアンタゴニストは、閉鎖帯毒素レセプターに結合するが、哺乳動物の接着結合の開きを薬学的に修飾しない、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24
を含む、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが8〜110個のアミノ酸の大きさである、方法。
(項目4) 項目3に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが8〜40個のアミノ酸の大きさである、方法。
(項目5) 項目1に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目6) 項目1に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが配列番号15に記載のアミノ酸配列から成る、方法。
(項目7) 項目1に記載の方法であって、ここで前記糖尿病が、I型糖尿病である、方法。
(項目8) 項目1に記載の方法であって、ここで前記ペプチドアンタゴニストが、腸管送達のためのの経口投与組成物として投与される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、種々のヒト組織から精製されたゾヌリンのN末端の配列およびZOTの生物学的に活性なフラグメントのN末端の配列(アミノ酸288〜399)を有するIgM重鎖のN末端配列との比較を示す。
【図2】図2は、Ussingチャンバー中に固定したウサギの回腸の組織抵抗性(Rt)に対する、ZOT、ゾヌリン、ゾヌリン(いずれも単独で(黒バー))またはペプチドアンタゴニストFZI/0と組合せて(白バー)、またはFZI/1と組合せて(影をつけたバー)の効果を、ネガティブコントロールと比較して示す。Nは、3〜5に等しく、そしては、p<0.01に等しい。
【図3】図3は、糖尿病の傾向があるラットおよび糖尿病耐性のラットの両方における、管内のゾヌリン濃度(ng/ml)を示す。これは、サンドイッチELISAアッセイを使用して決定された。サンプルは、通常の生理食塩水中での腸管の洗浄によって得られた。それぞれの場合の最初のバーは、糖尿病耐性(DR)のラットを示す。第2のバーは、糖尿病の傾向がある(DP)動物を示し、そして第3のバーは、慢性的な糖尿病(CD)を有するラットを示す。糖尿病の傾向があるラットの<9%は、糖尿病にはならず、そして糖尿病耐性のラットの<9%が糖尿病を発症する。
【図4】図4は、本研究で使用したラットの糖尿病を発症した割合を示す。
【図5】図5は、サンドイッチELISAアッセイを使用して決定された、糖尿病のラットにおける管内のゾヌリン濃度(ng/ml)を示す。
【図6】図6は、糖尿病耐性(DR)のラット、Ussingチャンバー中で決定された糖尿病の傾向がある処置されていないラット(DP未処置;第2のバー)、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストで処置された糖尿病の傾向があるラット(DP処置;第3のバー)における、エキソビボでの腸管の透過性を示す。はp<0.05に等しい;**はp<0.05に等しく、そしてDPで処置されたものと比較される場合にはp<0.0001に等しい。
【図7】図7は、糖尿病を発症したかまたは糖尿病を発症しなかったかのいずれかである、糖尿病の傾向がある未処置のラットの小腸の中の、エキソビボでの腸管の透過性を示す。はp<0.04に等しい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
上記で議論されているように、1つの実施態様においては、本発明の上記の目的は、糖尿病(特に、I型糖尿病)の発症を予防するかまたは遅延させるための方法によって達成されている。この方法は、そのような発症の予防または遅延を必要としている被験体に対して、薬学的に有効量のゾヌリンのペプチドアンタゴニストを投与する工程を包含する。ここでは、上記のペプチドアンタゴニストは、ZOTレセプターに結合するが、しかし、哺乳動物の接着結合の孔を生理学的には調節しない。
【0025】
本発明において使用されるゾヌリンの特定のペプチドアンタゴニストは、ここでは重要ではない。上記のペプチドアンタゴニストの例として、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有しているペプチドが挙げられる:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24。
【0026】
ペプチドアンタゴニストの大きさは、本発明にとっては重要ではない。一般的には、ペプチドアンタゴニストの大きさは、8〜110アミノ酸まで、好ましくは、8〜40アミノ酸の範囲であり、より好ましくは、8アミノ酸である。
【0027】
このペプチドアンタゴニストは、High Perfiemance Liquid Chromatography of Peptides and Proteins:Separetion Analysis and Conformation、Mantら編、C.R.C.Press(1991)に記載されているような周知の技術、およびペプチド合成装置(例えば、Symphony(Protein Technologies,Inc))を使用して、または組換えDNA技術を使用することによって(すなわち、ここでは、ペプチドをコードするヌクレオチド配列が適切な発現ベクター(例えば、E.coliまたは酵母の発現ベクター)中に挿入され、それぞれの宿主細胞中で発現され、そして周知の技術を使用してそれらから精製される)化学的に合成され、かつ精製され得る。
【0028】
ペプチドアンタゴニストは、小腸への送達のための経口投与組成物として投与され得る。このような、小腸への送達のための経口投与組成物は当該分野で周知であり、そして一般的には、胃腸管耐性の錠剤またはカプセル剤を含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版、Osol編、Mack Publishing Co.,第89章(1980);Digenisら、J.Pharm.Sci.,83:915−921(1994);Vantiniら、Clinica Terapeutica,145:445−451(1993);Yoshitomiら、Chem.Pharm.Bull.,40:1902−1905(1992);Thomaら、Pharmazie,46:331−336(1991);Morishitaら、Drug Design and Delivery,7:309−319(1991);およびLinら、Pharmaceutical Res.,8:919−924(1991);これらは各々、これら全体が本明細書中で参考として援用される)。
【0029】
錠剤は、例えば、セルロース酢酸フタレートまたはセルロース酢酸テレフタレートのいずれかの添加によって、胃腸管耐性にされる。
【0030】
カプセルは、ペプチドアンタゴニスト(単数または複数)が、固いかまたは軟らかい、可溶性のゼラチンの容器または殻のいずれかの中に封入された、固体の投与量形態である。カプセルの製造で使用されるゼラチンは、加水分解によってコラーゲン様の材料から得られる。2つのタイプのゼラチンが存在する。タイプAは、酸処理によってブタの皮膚から誘導され、そしてタイプBは、アルカリ処理によって骨および動物の皮膚から得られる。固いゼラチンカプセルの使用によって、単一のペプチドアンタゴニストまたは、個々の被験体について最良と考えられる厳密な投与量レベルでそれらの組合せを処方することにおける選択を可能にする。固いゼラチンのカプセルは、2つの部分から構成される。一方が他方の中に滑り込み、それによってペプチドアンタゴニストを完全に取り囲む。これらのカプセルは、カプセルのより長いほうの端部にペプチドアンタゴニストまたはペプチドアンタゴニストを含有している胃腸管耐性のビーズを導入することによって充填され、そして次いで、キャップに滑り込ませる。固いゼラチンのカプセルは、ゼラチン、FD&C着色料、およびしばしば、乳白剤(例えば、ニ酸化チタン)から大部分が作製される。USPは、製造の間の分解を防ぐという目的のために、ゼラチンが0.15%(w/v)のニ酸化イオウを含有することを認可している。
【0031】
本発明の状況においては、小腸への送達のための経口投与組成物はまた、ペプチドアンタゴニストが、胃の中の胃液によって有意に不活化されるのを妨ぐ水性の緩衝剤を含む液体の組成物を含み、それによってペプチドアンタゴニストが活性な形態で小腸に到達することを可能にする。本発明において使用され得るこのような水性の緩衝剤の例として、重炭酸塩緩衝液(pH 5.5から8.7、好ましくは、約pH 7.4)が挙げられる。
【0032】
経口投与組成物が液体組成物である場合には、安定性の問題を最少にするために、組成物が投与の直前に調製されることが好ましい。この場合には、液体の組成物は、水性の緩衝剤中で凍結乾燥されたペプチドアンタゴニストを溶解させることによって調製され得る。
【0033】
使用されるペプチドアンタゴニストの薬学的有効量は、本発明にとっては重要ではなく、そして処置される被験体の年齢、体重および性別に依存して変化する。一般的には、糖尿病の発送を妨げるかまたは遅延させるために本発明において使用されるペプチドアンタゴニストの量は、約7.5×10−6Mから7.5×10−3Mの範囲、好ましくは、約7.5×10−6Mから7.5×10−4Mの範囲である。このような最終濃度を、例えば、腸管または血液中で達成するためには、本発明の単一の経口投与組成物中のペプチドアンタゴニストの量は、一般的には、約1.0μg〜1000μg、好ましくは、約1.0μg〜100μgである。
【0034】
以下の実施例は、例示的目的のためのみに提供され、そしていかなる場合においても本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
(ゾヌリンのペプチドアンタゴニスト)
ZOT(ヒトの腸管のゾヌリン(ゾヌリン)およびヒトの心臓のゾヌリン(ゾヌリン)は全て腸管(Fasanoら、Gastroenterology,112:839(1997);Fasanoら、J.Clin.Invest.,96:710(1995))および内皮のtjに対して作用し、そして3個全てが、腸管内でのZOTレセプターの分布と一致する(Fasanoら(1997)前出;およびFasanoら(1995)前出))同様の局所的な効果を有する(Fasanoら(1997)前出)ので、1998年8月3日に出願された米国特許出願番号第09/127,815号においては、これらの3個分子は、同じレセプター結合部位と相互作用すると仮定された。従って、腸管のtjの調節に関係するレセプター−リガンド相互作用の絶対的な構造要件に関する知見を提供するために、ZOTおよびヒトのゾヌリンの一次アミノ酸構造の比較を、本明細書中で行った。これらの分子のN末端の分析によって、以下の共通のモチーフ(図1中で四角で囲んだアミノ酸残基8〜15)を明らかにした:非極性(腸管についてはGly、脳についてはVal)、可変、非極性、可変、非極性、極性、可変、極性(Gly)。8位のGly、12位のVal、および13位のGlnは、全て、ZOT、ゾヌリン、およびゾヌリンにおいて高度に保存されている(図1を参照のこと)。これは、腸管内でのレセプター結合機能について重要であると考えられる。これらを確認するために、合成の8ペプチドである、Gly Gly Val Leu Val Gln Pro Gly(配列番号15)(FZI/0と命名し、そしてヒトの胎児のゾヌリンのアミノ酸残基8〜15に対応している)を化学的に合成した。
【0036】
次に、上記のようにUssingチャンバー中に固定したウサギの回腸を、100μgのFZI/0(配列番号15)、100μgのFZI/1(配列番号29)、1.0μgの6×His−ZOT(1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号の実施例1に記載されているように得た)、1.0μgのゾヌリン(1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号の実施例3に記載されているように得た)、または1.0μgのゾヌリン(1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号の実施例3に記載されているように得た)の単独で暴露したか;あるいは、100μgのFZI/0またはFZI/1に20分間予め暴露し、その時点で、1.0μgの6×His−ZOT、1.0μgのゾヌリン、または1.0μgのゾヌリンを添加した。次いで、ΔRtを、上記ように算出した。結果を、図2に示す。
【0037】
図2に示すように、FZI/0は、Rtにおいてはいかなる有意な変化をも誘導しなかった(ネガティブコントロールと比較して、0.5%)(黒バーを参照のこと)。対照的に、ZFI/0での20分間の予備処理は、Rtに対するZOT、ゾヌリン、およびゾヌリンの効果を、それぞれ、75%、97%、および100%減少させた(白バーを参照のこと)。また図2に示されるように、この阻害効果は、8位のGly、12位のVal、および13位のGly(ゾヌリンに対して言及されるような)をゾヌリンの対応するアミノ酸残基(それぞれ、Val、Gly、およびArg、配列番号30を参照のこと)で変更することによって化学的に合成された第二の合成ペプチド(FZI/配列番号29)が使用される場合には、完全に除去された(影をつけたバーを参照のこと)。
【0038】
上記の結果は、ZOTのN末端の残基8〜15間にわたる領域および標的レセプターに結合のために重要なゾヌリンのファミリーでが存在すること、および8位、12位、および13位のアミノ酸残基がこの結合の組織特異性を決定することを実証する。
【0039】
(実施例2)
(糖尿病のラットのモデル)
腸管の透過性における変化は、糖尿病の発症に関係している事前の生理学的な変化の1つであることが示されている(Meddings,Am.J.Physiol.,276:G951−957(1999))。傍細胞輸送の輸送および腸管の透過性は、完全には解明されていない機構を通じて細胞内tjによって調節される。
【0040】
ゾヌリンおよびその原核生物のアナログであるZOTは両方とも、tjを調節することによって腸管の透過性を変更する。この実施例においては、最初に、tjのゾヌリンに関係している障害が、糖尿病の病因に関係していること、およびゾヌリンのペプチドアンタゴニストの投与によって糖尿病が予防され得るかまたは発症が遅延され得ることが、実証されている。
【0041】
最初に、2つの遺伝的な交配品種(すなわち、BB/Wor糖尿病の傾向がある(DP)ラットおよび糖尿病耐性の(DR)ラット(Haberら、J.Clin.Invest.,95:832−837(1993))を、それらがゾヌリンの管内分泌および腸管の透過性に有意な変化を示すかどうかを決定するために評価した。
【0042】
より詳細には、年齢が適合するDPおよびDRラット(20、50、75、および>100日齢)を屠殺した。ラットを屠殺した後、25Gの針を回腸の内腔に配置し、そしてRingerの溶液を用いて腸管の洗浄を行って、管内のゾヌリンの存在を決定した。ゾヌリンの濃度を、以下のようなサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して評価した:
プラスチックのマイクロタイタープレート(Costar、Cambridge、MA)を、ポリクローナルウサギ抗ZOT抗体(1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号の実施例2に記載されているように得た)(1:100希釈)を用いて4℃で一晩コーティングし、0.05%(v/v)のTween 20を含有しているPBSで3回洗浄し、次いで、0.1%(v/v)のTween 20を含有している300μlのPBSを用いて、室温で15分間のインキュベーションすることによってブロックした。次に、精製したヒトの腸管のゾヌリン(1998年8月3日に出願された、米国特許出願番号第09/127,815号の実施例3に記載されているように得た)を、プレート上にコーティングした。
【0043】
標準曲線を、0.05%のTween 20を含有しているPBS中で、以下の種々の濃度でゾヌリンを稀釈することによって得た:0.78ng/ml、1.56ng/ml、3.125ng/ml、6.25ng/ml、12.5ng/ml、25ng/ml、および50ng/ml。
【0044】
100μlのそれぞれの標準濃度または100μlの腸管の洗浄サンプルをウェル中にピペッティングし、そしてプレート振盪装置を使用して室温で1時間インキュベートした。結合していないゾヌリンをPBSを使用して洗浄し、そしてウェルを、振盪させながら室温で1時間の間アルカリホスフェートと結合させた100μlの抗ZOT抗体とともにインキュベートした。結合していない結合体を、PBSを用いて洗い流し、そして、最初に、1/20000に稀釈した100μlのExtra−Avidin(SIGMA,St.Louis,MO)を、0.1MのTris−HCl(pH7.3)、1.0mMのMgCl、1.0%(w/v)のBSAに、15分間かけて添加し、そして次いで、1.0mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート基質(SIGMA,St Louis、MO)を含有している100μlの溶液とともに37℃で30分間、それぞれのウェルをインキュベートすることによって、着色反応を起こさせた。吸光度を、405nmでの酵素免疫アッセイリーダー上で読み取った。
【0045】
ELISA−サンドイッチ方法のアッセイ内およびアッセイ間での精度を評価するために、係数偏差(CV)を、連続3日間、種々の濃度のゾヌリンを用いて2つのサンプルに由来する3個の複製物を使用して計算した。ELISA−サンドイッチ方法のアッセイ内試験によって、9.8%のCV値を得た。アッセイ間試験のCVは、1日目は4.2%、2日目は3.3%、そして3日目は2.9%であった。
【0046】
ゾヌリンの濃度を、腸管の洗浄液中で検出したng/mgのタンパク質として表現し、そして暴露された表面積(mmで)によって較正した。結果を図3に示す。
【0047】
図3に示すように、管腔内のゾヌリンの4倍の増大を、最初に、糖尿病の傾向にあるラット(50日齢)において観察した(第2番目の棒)。この管腔内のゾヌリンの増大は、腸管の透過性における増大と相関していることを見出した。管腔内のゾヌリンの増大は、これらの糖尿病の傾向にあるラットにおいては高いままであり、そして完全に発症した(blown)糖尿病への進行と相関することを見出した。注:糖尿病の傾向のあるラット(>100日齢)は、管腔内のゾヌリンの増大はなかった。これは、驚くべきである。なぜなら、このラットは、糖尿病に進行しなかったからである。このラットについての血液グルコースは正常であった。従って、ゾヌリンは、I型糖尿病の病因に関係している透過性の変化の原因である。ゾヌリンの分泌の増大は年齢に関係し、そして糖尿病の発症を進行させる。
【0048】
次に、糖尿病がゾヌリンのペプチドアンタゴニストの投与によって予防され得るかどうかを決定するために、BB/Worラット(21〜26日齢)を、Biomedical Research Models,Inc.(Rutland,MA)から入手し、そして2つのグループ(すなわち、処置したグループおよびコントロールのグループ)にランダマイズした(1つのグループあたりn=5)。両方のグループを、ラットの固形飼料(Harlan Teklab Diet #7012)の標準的な食餌で維持した。全ての食物および水を、あらかじめオートクレーブした。毎日、一日の水の摂取量を測定し、そして100mlの新しい水を与えた。処置したグループには、飲料水中に補充した10μg/mlのゾヌリンのペプチドアンタゴニスト(配列番号15)を受容させた。ラットを、ヘパフィルターケージの中に収容した。
【0049】
ラットの糖尿病を、以下のように診断した:ラットを、1週間に2回秤量した。血液グルコールを、OneTouch(登録商標)グルコースモニタリングシステム(Johnson & Johnson)を使用して1週間に1回決定した。毎週、尿検査のための試薬の小片を、グルコース(Diastix(登録商標))およびケトン(Ketositx(登録商標))(Bayer)をモニターするために使用した。>250mg/dlの血液グルコースを有するラットを一晩断食させ、そして>200mg/dlの血液グルコースレベルを糖尿病と考えた。これらの指針は、Biomedical Research Models,Inc.によって供給されたデータに従う。結果を、図4に示す。
【0050】
図4に示すように、コントロールのラットの80%(4/5)、そしてゾヌリンのペプチドアンタゴニストで処置したラットの40%(2/5)が、80日齢までに糖尿病を発症した。ゾヌリンの分泌における変化は、糖尿病の発症と平行していた。
【0051】
糖尿病の臨床的な所見の後、ラットを以下のように屠殺した:ラットに、ケタミン麻酔を使用して麻酔し、そして中線切開を行って心臓に接触できるようにした。18Gの針を、心臓の内部に配置し、そして全採血によって死を生じさせた。次いで、ゾヌリンアッセイを、上記に記載するように行った。糖尿病が存在しなかったこれらのラットについては、研究の終わりを80日齢とした。Biomedical Research Model,Inc.,に従うと、糖尿病の傾向にあるラットのうちの80%が、80日齢までに糖尿病を有して存在した。ゾヌリンアッセイの結果を、図5に示す。
【0052】
図5に示すように、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストで処置しなかった糖尿病のラットが、図3に示す結果と一致して、管腔内ゾヌリンの増大を有することを観察した。さらに、管腔内のゾヌリンは、糖尿病を発症しなかった糖尿病の傾向にあるラット(DP−処置)およびコントロールのラット(DP−未処置)の両方と比較して、糖尿病のラット(DR)において2から4倍増大した。糖尿病を発症しなかった糖尿病ではないコントロールラットは、無視できるレベルのゾヌリンを有し、これは、図3に示すゾヌリンのレベルと一致した。さらに、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストでの処置にもかかわらず糖尿病を発症した2匹の糖尿病の傾向にあるラットは、良好に処置されたラット、および未処置のコントロールのラットよりも有意に高い、管腔内ゾヌリンのレベルを示した。ゾヌリンのこのレベルは、糖尿病の進行に必須の透過性の変化を開始するために十分であるが、ZOT/ゾヌリンレセプターは、ペプチドアンタゴニストによって効率良くブロックされた。
【0053】
また、糖尿病の臨床的な所見の後、屠殺したラットの腸管組織を、エキソビボでの透過性における変化を評価するために、Ussingチャンバー中に固定した。
【0054】
より詳細には、空腸および回腸の切片を屠殺したラットから単離し、そして腸管の内容物をリンスして除いた。それぞれの腸管のセグメントの6個の切片を調製し、そしてLucite Ussingチャンバー(0.33cmの開口部)に固定し、電圧クランプ装置(EVC 4000;World Precision Instruments、Saratosa、FL)に接続し、そして53mMのNaCl、5.0mMのKCl、30.5mMのNaSO、30.5mMのマンニトール、1.69mMのNaPO、0.3mMのNaHPO、1.25mMのCaCl、1.1mMのMgClおよび25mMのNaHCO(pH 7.4)を含有している新しく調製した緩衝液に浸した。浸す溶液を、一定温度の循環ポンプに接続し、そして95%のOおよび5%のCOでガス処理した水のカバーをかけたレザーバーを用いて37℃で維持した。電位差を測定し、そして短い循環電流および組織抵抗を、Fasanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5242−5246(1991)に記載されているように計算した。結果を、図6〜7に示す。
【0055】
エキソビボでのUssingチャンバーの透過性の研究において実証され、そして図6に示すように、糖尿病に進行した全てのラットが、それらの腸管の透過性を増大させた。糖尿病耐性の(DR)ラットは、細胞付近の透過性のにおいて感知できる程度の変更は有さなかった(第1の棒)。未処置の糖尿病の傾向にあるラット(DP−未処置;第2の棒)は、空腸および回腸の細胞付近の透過性の有意な増大を有した。より重要なことは、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストで処置した糖尿病の傾向にあるラット(DP−処置;第3の棒)が、空腸に制限された小腸の細胞付近の透過性において有意な増大を有したことである。しかし、図6に示すように、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストでの予備処置は、遠位の回腸においてこれらの変化を妨害した。結果として、病因に関係する細胞付近の透過性における変更は、回腸に限定される。また、図6に示すように、結腸の透過性においては有意な変化は存在しなかった。これは、ゾヌリンレセプターの分布の局所的な分布と一致する。
【0056】
これらの結果を、さらに、糖尿病を発症したラット(DP−D)または糖尿病を発症していないラット(DP−N)のいずれかである、未処置の糖尿病の傾向にあるラットの小腸中での、エキソビボでの腸管の透過性の比較によって確認した(図7)。回腸のRtにおいては、DP−DラットとDP−Nラットとの間で有意な変化は観察されなかったが、DP−Nラットと比較して、DP−Dラットの回腸の粘膜の有意に低いRtが観察された(図7)。
【0057】
従って、以下の結論を作成し得る:(1)ペプチドアンタゴニストは、糖尿病の発症のために必要とされる透過性の変化を効率良くブロックすることが可能であった;そして(2)ペプチドアンタゴニストで処置したこれらのラットにおいては、管腔内のゾヌリンのレベルは、糖尿病を発症していない処置したラットよりも3倍高い。糖尿病を発症した処置したラットのこの集団においては、ペプチドアンタゴニストの量は、糖尿病を予防するために必要な十分な数のZOT/ゾヌリンレセプターをブロックするためには十分ではない場合がある。
【0058】
処置したラットの60%は、糖尿病を発症しなかった。ラットのこの集団においては、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストは、糖尿病の発症に必要な腸管の透過性の増大を効率良く妨げた。図5に示すように、処置したラットは、未処置のコントロールに匹敵する管腔内ゾヌリンのレベルを有したが、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストの存在に起因して、小腸の全体的な透過性は、糖尿病の進行に必要な生理学的な変化を開始するために十分には変更されなかった。興味深いことに、図5に示すように、糖尿病を発症しなかった1匹のコントロールの動物は、無視できるゾヌリンのレベルを有し、このことはさらに、糖尿病の病因におけるゾヌリンの役割をサポートする。
【0059】
従って、BB/Worラットにおける糖尿病の病因の初期の事象は、ゾヌリンによって媒介される腸管の細胞付近の透過性の変化を含む。さらに、ゾヌリンのペプチドアンタゴニストの使用を用いたゾヌリンのシグナル伝達システムの阻害は、糖尿病の発症を妨げるか、または少なくとも一部遅延させる。
【0060】
本発明は、詳細に、そしてその特異的な実施態様を参照して記載されているが、種々の変更および改変が、本発明の精神および範囲を逸脱することなくその中で行われ得ることが、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−213742(P2011−213742A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−169654(P2011−169654)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【分割の表示】特願2001−585794(P2001−585794)の分割
【原出願日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願人】(502399237)ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモア (5)
【Fターム(参考)】