紙おむつ及び紙おむつの製造方法
【課題】横漏れ防止効果に優れ、しかも肌荒れの生じるおそれが著しく少ない紙おむつとする。
【解決手段】表面シート51の下に吸収体53が備えられた紙おむつ50について、嵩だか部材52A,52Bを、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設ける。
【解決手段】表面シート51の下に吸収体53が備えられた紙おむつ50について、嵩だか部材52A,52Bを、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の紙おむつには、近年、立体ギャザー、防漏ギャザー、横漏れ防止バリヤーなどといわれる横漏れ防止機構(以下、単に立体ギャザーともいう。)が、設けられるようになっている。この立体ギャザーは、通常、製品の長手方向に延在し、かつ幅方向一端部が吸収体の側部に固定され、他端部が長手方向前後端部を除いて自由端とされたギャザーシートと、このギャザーシートの自由端側部分に、長手方向に沿って伸張状態で固定された糸ゴム等からなる弾性伸縮部材(以下、単に糸ゴム等ともいう。)と、から主になる(例えば、特許文献1参照。)。そして、この立体ギャザーは、使用状態において、糸ゴム等の収縮力によって、ギャザーシートの自由端側中間部分が起立し、もって尿や便などの体液の横漏れを防止する。
【0003】
しかしながら、糸ゴム等からなる弾性伸縮部材は、肌荒れの原因ともなり、特に、肌が体液によって濡れていると、かぶれを惹き起こす可能性もある。
【特許文献1】特開62−250201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題は、横漏れ防止効果に優れ、しかも肌荒れが生じるおそれを著しく少なくすることができる紙おむつ及び紙おむつの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつであって、
嵩だか部材が、前記吸収体の両側部上において、前後方向に設けられている、ことを特徴とする紙おむつ。
【0006】
(作用効果)
嵩だか部材が、吸収体の両側部上において、前後方向に設けられているので、体液の横漏れが防止される。したがって、横漏れ防止のために、立体ギャザーを設ける必要がなく、糸ゴム等によって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。
もちろん、本発明においても、立体ギャザーを設けることができるが、この場合においても、糸ゴム等の本数を少なくし、あるいは伸縮強度を弱いものとするなどして、肌との摩擦を低減させることができるため、肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。この他、立体ギャザーを設けるにしても、嵩だか部材を設けると、立体ギャザーの構造(折り形状等)を単純なものとすることができる、との利点もある。
【0007】
〔請求項2記載の発明〕
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接している、請求項1記載の紙おむつ。
【0008】
(作用効果)
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接しているので、排泄された尿と便とが交じり合うことがほとんどない。したがって、便が尿によって拡散され、肌を広範囲に汚染するおそれが著しく少なくなる。また、便が排尿部を汚染し、かぶれや尿路感染を惹き起こすおそれも著しく少なくなる。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
嵩だか部材が、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されている、請求項1又は請求項2記載の紙おむつ。
【0010】
(作用効果)
嵩だか部材が、トウからなる繊維集合体で形成されているので、肌に対するフィット性に優れ、したがって横漏れ防止効果、肌荒れ防止効果にも優れる。そして、かかるトウからなる繊維集合体は、その設けられた方向に沿って繊維が流れるので、嵩だか部材を横切る方向への体液透過性は低く、体液は、嵩だか部材を横切る前に吸収体に吸収されることになるため、横漏れ防止効果が減殺されるおそれもない。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である、請求項3記載の紙おむつ。
【0012】
(作用効果)
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維であるので、空隙率を高くして、通気性を向上させることができる。したがって、蒸れによって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。
【0013】
〔請求項5記載の発明〕
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されている、請求項3又は請求項4記載の紙おむつ。
【0014】
(作用効果)
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されているので、吸収体に吸収された体液が、嵩だか部材に逆戻りして、嵩だか部材がへたってしまうおそれがない。したがって、フィット性は維持され、横漏れするおそれがない。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつの製造方法であって、
嵩だか部材を、前記吸収体の前後方向所定位置で曲げて、前記吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定する、ことを特徴とする紙おむつの製造方法。
【0016】
(作用効果)
嵩だか部材を、吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定するので、得られる紙おむつが、請求項1及び請求項2と同様の作用効果を有するものとなる。
また、かかる嵩だか部材の備え付けは、嵩だか部材を、吸収体の前後方向所定位置で、幅方向に曲げて、固定することによるため、製造容易である。
【0017】
〔請求項7記載の発明〕
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用する、請求項6記載の紙おむつの製造方法。
【0018】
(作用効果)
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用するので、嵩だか部材を、吸収体の前後方向所定位置で幅方向に曲げても、崩れるおそれは少ない。もちろん、得られる紙おむつは、請求項1及び請求項2と同様の作用効果を有するものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、横漏れ防止効果に優れ、しかも肌荒れの生じるおそれが著しく少ない紙おむつ及びその製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下では、止着テープ型の紙おむつを例に説明するが、本発明は、パンツ型や尿採りパッド型の紙おむつにも適用可能である。
【0021】
〔紙おむつの形状(第1の実施の形態)〕
図1に平面図を、図2に図1のI−I線断面図を示すように、第1の実施の形態の紙おむつ50は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材52A,52Bと、から主になる。
【0022】
表面シート51及び裏面シート54は、本物品(本紙おむつ)の平面外形と同じ形状とされており、その前後端部及び両側部が、吸収体53の前後端縁又は両側縁よりも前後方又は側方に延出している。この表面シート51及び裏面シート54の側方への延出は、特に、長手方向前後端部において、大きくなっている。この大きく延出した部位には、例えば、図示しない止着テープ等が取り付けられる。また、この表面シート51及び裏面シート54は、かかる延出部において、接合されている。この接合の方法は、特に限定されない。例えば、ホットメルト接着、超音波シール、ヒートシール(熱融着)、ヒートプレス(熱圧着)又はこれらの組み合わせによることができる。一方、吸収体53は、その全体が、クレープ紙55によって、被覆されている。この被覆によって、吸収体53の形状保持性の向上が図られている。
【0023】
また、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53の両側部上に、前後方向に、特に本形態では一直線に延在するように、設けられている。このように嵩だか部材52A,52Bが、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設けられていると、嵩だか部材52A,52Bが、防漏壁として機能し、体液の横漏れが防止される。したがって、横漏れ防止のために、立体ギャザーを設ける必要がなくなり、糸ゴム等によって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。もちろん、本形態においても、立体ギャザーを設けることができるが、この場合においても、糸ゴム等の本数を少なくし、あるいは伸縮強度を弱いものとするなどして、肌との摩擦を低減させることができるため、肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。この他、嵩だか部材52A,52Bを設けると、立体ギャザーを設けるにしても、立体ギャザーの構造(折り形状等)を単純なものとすることができる、との利点がある。
【0024】
本形態において、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設けられていればよく、必ずしも吸収体53の両側縁に沿って設けられていなければならないものではない。例えば、吸収体53の両側縁から、適宜の距離内側に、例えば、1〜3cm内側に、設けられていてもよい。また、嵩だか部材52A,52Bは、その幅が特に限定されるものではない。横漏れ防止効果やフィット性などを考慮して、適宜設計することができる。本形態では、各嵩だか部材52A,52Bの幅が、1.8〜2.2cmとなっている。
【0025】
ところで、図2に示すように、本形態では、嵩だか部材52A,52Bが、表面シート51と吸収体53(クレープ紙55)との間、に設けられている。ただし、この形態に限定する趣旨ではない。例えば、図3に示すように、表面シート51上に、嵩だか部材52A,52Bを、包み込みシート57,57で包んで、設けることもできる。
【0026】
また、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53(クレープ紙55)の上に直接設けることもできるが、嵩だか部材52A,52Bの裏面側に、体液不透過処理を施しておくのが好ましい。嵩だか部材52A,52Bの裏面側に、体液不透過処理を施しておくと、吸収体53に吸収された体液が、嵩だか部材52A,52Bに逆戻りして、嵩だか部材52A,52Bがへたってしまうおそれがない。したがって、使用状態においても、フィット性は維持され、横漏れが防止される。体液不透過処理をどのように施すかは、特に限定されない。例えば、嵩だか部材52A,52Bの裏面に撥水剤を塗布することや、図2に示すように、嵩だか部材52A,52Bと吸収体53(クレープ紙55)との間に、体液不透過性のシート56,56を介在させることなどができる。
【0027】
以上の嵩だか部材52A,52Bは、その設けられた方向、すなわち延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されているのが好ましい。嵩だか部材52A,52Bが、トウからなる繊維集合体で形成されていると、肌に対するフィット性に優れ、したがって横漏れ防止効果、肌荒れ防止効果にも優れる。また、トウからなる繊維集合体は、繊維の流れ方向には体液が拡散し易いが、繊維の流れ方向と直交する方向には体液が拡散し難いという特性がある。したがって、嵩だか部材52A,52Bの延在方向に沿って繊維が流れると、嵩だが部材52A,52Bを横切る方向への体液透過性は低く、体液は、嵩だか部材52A,52Bを横切る前に吸収体53に吸収されることになるため、横漏れ防止効果がいかんなく発揮される。さらに、トウからなる繊維集合体は、長繊維であるため、嵩だか部材52A,52Bの延在方向に沿って繊維が流れると、嵩だが部材52A,52Bが、延在方向に関して、2つに分離(分割)してしまうおそれがない。したがって、本形態によると、中央部の嵩だか部材52A,52B、つまり脚周り部の嵩だか部材52A,52Bが、着用者の動きによっても、前後端部によった状態となるおそれはなく、この点でも、横漏れ防止効果に優れたものとなる。もちろん、嵩だか部材52A,52Bは、その前後端部が、表面シート51及び裏面シート54によって、保持されているため、全体が一体的に前方又は後方に移動してしまうおそれもない。
【0028】
〔紙おむつの形状(第2の実施の形態)〕
次に、図4を参照しながら、第2の実施の形態の紙おむつ60について、説明する。
本形態の紙おむつ60は、基本的には第1の実施の形態の紙おむつ50と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ60は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材62A,62Bと、から主になる。
【0029】
ただし、本形態においても、この嵩だか部材62A,62Bは、第1の実施の形態と同様に、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられているが、更に中央部、より具体的には、受尿部Fと受便部Bとの間においては、両嵩だか部材62A,62Bが交差している。つまり、本形態においては、各嵩だか部材62A,62Bが、吸収体53の前身頃側又は後身頃側の一側部上を前後方向に延在し、中央部において、弧を描くようにして、他側部上に移り、そこから他身頃側の他側部上を前後方向に延在しており、両嵩だか部材62A,62Bが、いわば平面略X字状、ないしは略H字状になっている。このように、両嵩だか部材62A,62Bが、受尿部Fと受便部Bとの間において、交差していると、排泄された尿と糞便との交じり合いが防止される。したがって、便が尿によって拡散され、肌を広範囲に汚染するおそれが著しく少なくなる。また、便が排尿部を汚染し、かぶれや尿路感染を惹き起こすおそれも著しく少なくなる。
【0030】
なお、本明細書において、受尿部Fとは、尿を受ける部位、すなわち尿が排泄される紙おむつ上の部位を意味し、一般に、紙おむつの前胴周り域又は股下域に位置する。また、受便部Bとは、糞便を受ける部位、すなわち糞便が排泄される紙おむつ上の部位を意味し、一般に、紙おむつの股下域又は後胴周り域に位置する。もちろん、受尿部F及び受便部Bのいずれもが股下域に位置する場合は、受尿部Fは前側に、受便部Bは後側に位置することになる。
【0031】
〔紙おむつの形状(第3の実施の形態)〕
さらに、図5を参照しながら、第3の実施の形態の紙おむつ70について、説明する。
本形態の紙おむつ70も、基本的には、第1及び第2の実施の形態の紙おむつ50,60と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ70は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材72A,72Bと、から主になる。
【0032】
ただし、本形態においても、この嵩だか部材72A,72Bは、第1及び第2の実施の形態と同様に、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられているが、更に中央部、より具体的には、尿が排泄される受尿部Fと糞便が排泄される受便部Bとの間においては、両嵩だか部材72A,72Bが実質的に接している。つまり、本形態においては、各嵩だか部材72A,72Bが、吸収体53の前身頃側又は後身頃側の一側部上を前後方向に延在し、中央部においては、内側に突出して他の嵩だか部材72A,72Bと接するように延在しているが、更に他身頃側においては、同側部上を前後方向に延在しており、これにより、両嵩だか部材72A,72Bが、第2の実施の形態と同様に、平面略X字状、ないしは略H字状になっている。このように、両嵩だか部材72A,72Bが、受尿部Fと受便部Bとの間において、実質的に接していると、排泄された尿と糞便との交じり合いが防止される。したがって、雑菌の繁殖が抑えられ、肌荒れが生じたとしても、そこから雑菌が入るおそれは、著しく少なくなる。また、本形態によると、第2の実施形態のように、両嵩だか部材62A,62Bの交差部が盛り上がるということがないという点で、好ましいものとなる。
【0033】
〔紙おむつの形状(第4の実施の形態)〕
さらに、図6を参照しながら、第4の実施の形態の紙おむつ80について、説明する。
本形態の紙おむつ80は、第3の実施の形態の紙おむつ70を変形させたものであり、基本的には、同形態の紙おむつ70と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ80は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材82A,82Bと、から主になる。また、本紙おむつ80においては、この嵩だか部材82A,82Bが、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられており、更に受尿部Fと受便部Bとの間において、両嵩だか部材82A,82Bが実質的に接しており、これによって第3の実施の形態と同様に、平面略X字状、ないしは略H字状になっている。
【0034】
ただし、本形態においては、前後方向に延在し、かつ幅方向一端部が吸収体53の側部に固定され、他端部が前後方向前後端部を除いて自由端とされたギャザーシート58と、このギャザーシート58の自由端側部分に、前後方向に沿って伸張状態で固定された糸ゴム等からなる弾性伸縮部材59と、から主になる立体ギャザーが、吸収体53の両側縁に沿って、設けられている。したがって、嵩だか部材82A,82Bは、吸収体53の両側縁から、立体ギャザーの幅分だけ内側に設けられた状態となっている。
【0035】
〔紙おむつの製造方法(第1の実施の形態)〕
次に、紙おむつの製造方法について、特に嵩だか部材の設け方について、前述した第3の実施の形態を例に、説明する。なお、嵩だか部材の設け方以外の紙おむつの製造方法については、従来の方法と同様であり、公知の方法によることができる。
【0036】
本実施の形態において、嵩だか部材72Aを設けるにあたっては、図7に示すような、掴み手段90を用いる。この掴み手段90は、嵩だか部材72Aに直交する方向に伸縮するシリンダ91と、このシリンダ91の先端部に取り付けられたフック92と、から主になる。この掴み手段90を用いて嵩だか部材72Aを設けるにあたっては、まず、図7の(1)に示すように、前後方向所定位置において、本形態では、受尿部Fと受便部Bとの間において、フック92を嵩だか部材72Aに引っ掛ける。この引っ掛けがなされたら、次に、図7の(2)に示すように、シリンダ91を収縮させることにより、嵩だか部材72Aを、幅方向に引き、この引いた状態で貼り付ける等して固定する。これにより、嵩だか部材72Aが、吸収体53上に設けられることになる。本形態では、シリンダ91を収縮させ、嵩だか部材72Aを幅方向に引くことによって、嵩だか部材72Aの形状を形作ったが、もちろん、シリンダ91を伸張させ、嵩だか部材72Aを幅方向に押すことによっても、嵩だか部材72Aの形状を形作ることができる。
【0037】
この方法は、嵩だか部材の曲げのみによって、特に本形態では押し又は引きのみによって、嵩だか部材の形状を形作るものであるため、大変簡易な製造方法となる。なお、前述した第2の実施の形態のように、嵩だか部材62A,62Bは、平面視で円弧状となるように設けることもでき、円弧状とした場合は、身体へのフィット性が向上するとの利点があるが、第3及び第4の実施の形態のように、嵩だか部材72A,72B,82A,82Bは、平面視で直線状とすることもでき、いずれの形態による場合も、本方法による製造の簡易化という効果は得られることになる。
【0038】
また、本方法においては、嵩だか部材が、その延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体であるとより好ましいものとなる。トウからなる繊維集合体は、長繊維であるため、嵩だか部材が、延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体であると、押し又は引いても、崩れるおそれが少ないためである。
【0039】
〔紙おむつの製造方法(第2の実施の形態)〕
さらに、もう1例、嵩だか部材の設け方について、説明する。
図10に示すように、本実施の形態において、嵩だか部材42を設けるにあたっては、ベルトコンベア等の搬送手段49によって、前後方向に複数の吸収体が連続してなる連続吸収体43を搬送する。この連続吸収体43の表面には、あらかじめ、例えば、接着剤塗布手段46によって、ホットメルト等の接着剤を塗布しておく。
【0040】
この接着剤が塗布された連続吸収体43上には、嵩だか部材42を、幅方向を回転軸とするガイドロール47を用いて、貼り付ける。このガイドロール47は、図11に示すように、その表面に、一周にわたって連続する、ガイド溝47A,47Bが、形成されている。このガイド溝47A,47Bは、幅方向に関して、円弧状に曲がっており、この溝内を、嵩だか部材42,42が案内される。したがって、本ガイドロール47において、嵩だか部材42は、幅方向に曲げられ、図12に示すように、幅方向に関して揺動した状態で、吸収体43に貼り付けられることになる。この方法は、ガイドロール47に沿わせるのみで、嵩だか部材42の形状を形作るものであるため、大変簡易な製造方法となる。
【0041】
嵩だか部材42の固定が終了したら、その上には、例えば、幅方向を回転軸とするロール48を用いて、表面シート41をかぶせることができる。
【0042】
〔各部材の素材等〕
(トウからなる繊維集合体)
本発明のトウからなる繊維集合体とは、繊維で構成されたトウ(繊維束)からなる(トウを原材料として製造された)ものである。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステル及びセルロースが好ましい。
【0043】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0044】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ポリカプロールクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは、単独で、又は二種類以上混合して使用することができる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0045】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0046】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロールアセテートは、空隙率を容易に調節することができるためである。
【0047】
また、セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0048】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0049】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ(2.54cm)当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造することができるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0050】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、通気性に優れるが、へたりが生じるおそれがある。そこで、へたりを防止して、広い空隙を維持する目的で、繊維の接触部分を接着又は融着する作用を有するバインダーを用いるのが好ましい。
【0051】
バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0052】
熱可塑性樹脂は、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性又は水難溶性樹脂、及び水溶性樹脂が含まれる。水不溶性又は水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0053】
水不溶性又は水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0054】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0055】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0056】
繊維集合体は、トウを原材料として、公知の方法により製造することができ、その際、必要に応じて、所望のサイズ、嵩となるように帯状に開繊することができる。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の繊維密度を調節することができる。
【0057】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行にともなって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0058】
図8は、開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ71が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアを用いる拡幅手段77と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール73,74,75とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス76に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体81として形成されるようになっている。
【0059】
(表面シート51)
本実施の形態において、表面シート51は、体液を透過する性質を有する。したがって、表面シート51の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0060】
また、本表面シート51は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート51は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0061】
(吸収体53)
本実施の形態において、吸収体53は、吸収した体液を保持する性質を有する。本吸収体53の素材は、特に限定されない。例えば、綿状パルプや合成パルプなどのパルプ単体からなるものや、フラッフ状パルプ中に、粒状粉などとされた吸収性ポリマーが混入されたものなどの、公知の素材を例示することができる。また、このうちのパルプの原料繊維は、特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、溶解パルプ等の木材から得られるセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維などを例示することができる。ただし、セルロース繊維の原材料となる木材は、広葉樹より針葉樹の方が、繊維長が長いため、機能及び価格の面で好ましい。
【0062】
さらに、本吸収体53は、前述したトウからなる繊維集合体で形成することや、このトウからなる繊維集合体内に吸収性ポリマーを移動させて得た吸収材で形成することもできる。以下、後者の吸収材について、詳しく説明する。
【0063】
図9は、本吸収体53の製造設備例を示しており、所望の幅・密度のトウからなる連続帯状の繊維集合体81が供給されるようになっている。このため、この連続吸収体製造ラインを、前述の繊維集合体製造ラインと直結し、製造した繊維集合体81を、直接に本吸収体製造ラインに送り込むことができる。
【0064】
供給された繊維集合体81は、まず、ポリマー散布ボックス87に通され、上面に吸収性ポリマー、好ましくは高吸収性ポリマーが散布された後、吸引ドラム88に送り込まれる。この吸引ドラム88は、外周壁に吸気孔を有し、その周方向所定範囲(図示例では略左半分の範囲)にわたり内側から図示しない吸引ポンプにより吸引するように構成したものである。高吸収性ポリマーが散布された繊維集合体81は、吸引ドラム88により外周面に接触されつつ案内される。そして、この過程で、吸引ドラム88の吸気孔から吸引を行うことにより、高吸収性ポリマー付与側から繊維集合体内を通り反対側へ雰囲気が通過され、その通過力により高吸収性ポリマーが、繊維集合体81内に移動される。
【0065】
高吸収性ポリマーとしては、自重の、例えば、10倍以上の体液を吸収して保持するものを使用できる。この例として、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマーの形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0066】
高吸収性ポリマーの散布量(目付け量)は、当該吸収材の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、例えば、3〜400g/m2とすることができる。
【0067】
特に好ましい形態では、繊維集合体81上に高吸収性ポリマーを散布した後、更にその上にシート83を被せる。この場合、吸引ドラム88において、繊維集合体81におけるシート83を被せた面の反対側面から吸引がなされる。このように、吸引に先立ってシート83が被されていると、何も被せない場合と比較して、より強力な吸引力が高吸収性ポリマーに作用し、効率良く高吸収性ポリマーを繊維集合体81内部へ移動・分散させることができる。このシート83としては、クレープ紙、不織布、孔開きシート等の液透過性シート、ポリエチレン製フィルム等の液不透過性シートを用いることができる。
【0068】
高吸収性ポリマーを繊維集合体81に固定するために、高吸収性ポリマーを付与する前の繊維集合体81に、接着剤を塗布するのも好ましい形態である。このため、図示のように、ポリマー散布ボックス87の上流側に、接着剤塗布装置84を、配設することができる。
【0069】
また、シート83を被せる場合、シート83を被せるのに先立ち、シート83の繊維集合体81側となる面に接着剤を供給するのも好ましい形態である。このため、図示形態では、吸引ドラム88に対するシート83供給経路に接着剤塗布装置85を備えている。この形態を採用すると、繊維集合体81表面に露出する高吸収性ポリマーは接着剤を介してシート83に固定され、未接着の高吸収性ポリマーは、後の吸引により繊維集合体81内部へ移動されるようになる。
【0070】
さらにまた、吸引後、つまり高吸収性ポリマーを移動させた後の繊維集合体81に対して接着剤を供給するのも好ましい形態である。このため、図示形態では吸引ドラム88の下流側における繊維集合体81の露出側面(シート83側と反対面、図中では上面)に、接着剤塗布装置86を備えている。この形態を採用すると、付与された高吸収性ポリマーのうち繊維集合体81におけるポリマー付与側と反対側に移動した高吸収性ポリマーを繊維集合体81に固定できる。また、繊維集合体81の露出側面に、別途シートを被せる、あるいはシート83の両脇部を繊維集合体81の両端を回りこませて折り返し被覆する場合、繊維集合体81の露出側面に移動した高吸収性ポリマーを、当該シート83に対して固定することができる。
【0071】
これらの接着剤の供給は、いずれか1つ又は2つ以上を組み合わせて適用することができる。接着剤としては、熱可塑性樹脂(具体例は前述のとおりである)からなる接着剤を好適に用いることができる。
【0072】
そして、かくして高吸収性ポリマーが付与された繊維集合体81は、例えば、別途シートを被せる、あるいは図示のようにセーラーによりシート83の両脇部を繊維集合体81の両端を回りこませて折り返し被覆した後、所定の長さに切断されて個別の吸収体53とされる。
【0073】
他方、繊維集合体81に対する高吸収性ポリマーの量的配置、密度分布、繊維密度は汎用を目的とする場合には均一であるのが好ましいが、特別の吸収特性を発揮させることを目的とした場合、その目的に応じて偏らせるのも好ましい。
【0074】
具体的に図示形態に応用する場合、ポリマー散布ボックス87において、散布量を平面方向に偏らせることができる。
【0075】
また、吸引ドラム88における吸引力を偏らせることにより、吸引力の高い位置ほど、より多くの量の高吸収性ポリマーが吸引ドラム88側に位置するようになるため、高吸収性ポリマーの密度を偏らせることができる。例えば、吸引ドラム88の幅方向中央における吸引力を両脇部よりも高くする(あるいは吸引時間を長くすることでも良い)ことにより、繊維集合体81の幅方向中央部における高吸収性ポリマーの密度を両脇部よりも高くすることができる。
【0076】
さらにまた、トウからなる繊維集合体81は、繊維の連続方向に沿って液が流れ易くなるため、繊維の密度を偏らせることによって特別の吸収特性を付与することができる。このような繊維密度を偏らせる手段としては、繊維集合体81の製造時において偏った開繊を行う、あるいは部分的に複数のトウを束ねて用いる等により達成できる。具体的な偏らせ方としては、例えば、繊維集合体81の幅方向中央部の繊維密度を両脇部よりも高くなるように偏らせることができる。この場合、繊維集合体81の幅方向中央部において、より体液の拡散スピードが速くなる。
【0077】
本実施の形態において、吸収体53の状態は、特に限定されない。例えば、コア状とすることや、1枚のシート状とすることや、2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数枚を積層させた積層シート状とすることなどができる。
【0078】
(裏面シート54)
本実施の形態において、裏面シート54は、体液を透過しない性質を有する。したがって、裏面シート54の素材は、この体液不透過性を発現するものであれば足り、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性の裏面シート54が構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0079】
(嵩だか部材52A〜82B)
本実施の形態において、嵩だか部材52A〜82Bは、例えば、0.8〜3.5cm程度の嵩だかさがあり、体液の防漏壁としての機能を有する。本嵩だか部材52A〜82Bは、例えば、捲縮パルプや、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)で、形成することができる。ただし、本嵩だか部材52A〜82Bは、前述したトウからなる繊維集合体で形成するのが好ましい。また、トウからなる繊維集合体で形成する場合は、その繊維の連続方向(流れ方向)が、本嵩だか部材52A〜82Bの延在方向に向かうようにするのが、好ましい。
【0080】
本実施の形態において、嵩高部材52A〜82Bの状態は、特に限定されない。例えば、1枚のシート状とすることや、2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数枚を積層させた積層シート状とすること、コア状とすることなどができる。
【0081】
嵩だか部材52A〜82Bとしては、圧縮仕事量(Wc)が、2.5以上のものを、好ましくは3.0以上のものを、特に好ましくは4.0以上のものを、使用するとよい。
ここで、圧縮仕事量(Wc)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片(嵩だか部材)の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。したがって、素材が嵩高で柔らかければ、それだけ押すのに時間がかかり、圧縮仕事量(Wc)が大きくなる。
この圧縮仕事量は、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:0.1、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
【0082】
(包み込みシート57)
本実施の形態において、包み込みシート57の素材は、体液を透過する性質を有するものであっても、体液を透過しない性質を有するものであってもよく、その種類は特に限定されない。例えば、表面シート51や裏面シート54として例示したのと同様の素材とすることができる。
【0083】
(体液不透過性シート56)
本実施の形態において、嵩だか部材の裏面側に配される体液不透過性シート56は、体液を透過しない性質を有する。したがって、体液不透過性シート56の素材は、この体液不透過性を発現するものであれば足り、例えば、裏面シート54に例示したのと同様の素材とすることができる。
【0084】
(ギャザーシート58)
本実施の形態において、ギャザーシート58の素材は、体液を透過する性質を有するものであっても、体液を透過しない性質を有するものであってもよく、その種類は特に限定されない。例えば、表面シート51や裏面シート54として例示したのと同様の素材とすることができる。
【0085】
ただし、肌触りや擦れによるカブレ防止等の観点からは、不織布であるのが好ましく、エアスルー不織布等のような嵩だかな不織布であるのがより好ましい。
【0086】
また、重要視する機能に応じて、それぞれ撥水処理不織布又は親水処理不織布が、単独で用いられたもの又は組み合わせて用いられたものであるのが好ましい。具体的には、例えば、体液の浸透防止や、肌触り感の向上などを重要視するのであれば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などがコーティングされた撥水処理不織布であるのが好ましい。一方、体液の吸収性を重要視するのであれば、合成繊維の製造過程で、例えば、ポリエチレングリコールの酸化生成物などの親水基を持つ化合物を、共存させて重合させる方法や、合成繊維表面を、塩化第2スズなどの金属塩で部分溶解して多孔性とし、金属の水酸化物を沈着させる方法などによって、合成繊維を膨潤又は多孔性とした、毛細管現象を応用して親水性が与えられた親水処理不織布であるのが好ましい。
【0087】
もっとも、ギャザーシート58の素材としては、撥水処理不織布よりも親水処理不織布である方が好ましい。親水処理不織布としては、前述したもののほかにも、例えば、天然繊維、合成繊維、再生繊維などを原料として、適宜の加工法によって得られたものや、目付け量を抑えて通気性をもたせたものなどを例示することができる。
【0088】
(弾性伸縮部材59)
本実施の形態において、弾性伸縮部材59の素材は、伸縮性を有するものであればよく、その種類は特に限定されない。例えば、伸縮ホットメルト、伸縮フィルム、糸ゴム、平ゴム等を例示することができる。また、素材としては、例えば、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系のゴムや、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の発泡体などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、止着テープ型の紙おむつやパンツ型、尿採りパッド型の紙おむつ、及びその製造方法として、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】図2の断面図の変形例である。
【図4】第2の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図5】第3の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図6】第4の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図7】嵩だか部材の備え付けを説明するための図である(第1の実施の形態)。
【図8】繊維集合体の製造フローを示す概略図である。
【図9】吸収体の製造フローを示す概略図である。
【図10】嵩だか部材の備え付けを説明するための図である(第2の実施の形態)。
【図11】ガイドロールの正面図である。
【図12】嵩だか部材が貼り付けられた連続吸収体の平面図である。
【符号の説明】
【0091】
51…表面シート、52A,52B,62A,62B,72A,72B,82A,82B…嵩だか部材、53…吸収体、54…裏面シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の紙おむつには、近年、立体ギャザー、防漏ギャザー、横漏れ防止バリヤーなどといわれる横漏れ防止機構(以下、単に立体ギャザーともいう。)が、設けられるようになっている。この立体ギャザーは、通常、製品の長手方向に延在し、かつ幅方向一端部が吸収体の側部に固定され、他端部が長手方向前後端部を除いて自由端とされたギャザーシートと、このギャザーシートの自由端側部分に、長手方向に沿って伸張状態で固定された糸ゴム等からなる弾性伸縮部材(以下、単に糸ゴム等ともいう。)と、から主になる(例えば、特許文献1参照。)。そして、この立体ギャザーは、使用状態において、糸ゴム等の収縮力によって、ギャザーシートの自由端側中間部分が起立し、もって尿や便などの体液の横漏れを防止する。
【0003】
しかしながら、糸ゴム等からなる弾性伸縮部材は、肌荒れの原因ともなり、特に、肌が体液によって濡れていると、かぶれを惹き起こす可能性もある。
【特許文献1】特開62−250201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題は、横漏れ防止効果に優れ、しかも肌荒れが生じるおそれを著しく少なくすることができる紙おむつ及び紙おむつの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつであって、
嵩だか部材が、前記吸収体の両側部上において、前後方向に設けられている、ことを特徴とする紙おむつ。
【0006】
(作用効果)
嵩だか部材が、吸収体の両側部上において、前後方向に設けられているので、体液の横漏れが防止される。したがって、横漏れ防止のために、立体ギャザーを設ける必要がなく、糸ゴム等によって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。
もちろん、本発明においても、立体ギャザーを設けることができるが、この場合においても、糸ゴム等の本数を少なくし、あるいは伸縮強度を弱いものとするなどして、肌との摩擦を低減させることができるため、肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。この他、立体ギャザーを設けるにしても、嵩だか部材を設けると、立体ギャザーの構造(折り形状等)を単純なものとすることができる、との利点もある。
【0007】
〔請求項2記載の発明〕
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接している、請求項1記載の紙おむつ。
【0008】
(作用効果)
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接しているので、排泄された尿と便とが交じり合うことがほとんどない。したがって、便が尿によって拡散され、肌を広範囲に汚染するおそれが著しく少なくなる。また、便が排尿部を汚染し、かぶれや尿路感染を惹き起こすおそれも著しく少なくなる。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
嵩だか部材が、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されている、請求項1又は請求項2記載の紙おむつ。
【0010】
(作用効果)
嵩だか部材が、トウからなる繊維集合体で形成されているので、肌に対するフィット性に優れ、したがって横漏れ防止効果、肌荒れ防止効果にも優れる。そして、かかるトウからなる繊維集合体は、その設けられた方向に沿って繊維が流れるので、嵩だか部材を横切る方向への体液透過性は低く、体液は、嵩だか部材を横切る前に吸収体に吸収されることになるため、横漏れ防止効果が減殺されるおそれもない。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である、請求項3記載の紙おむつ。
【0012】
(作用効果)
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維であるので、空隙率を高くして、通気性を向上させることができる。したがって、蒸れによって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。
【0013】
〔請求項5記載の発明〕
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されている、請求項3又は請求項4記載の紙おむつ。
【0014】
(作用効果)
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されているので、吸収体に吸収された体液が、嵩だか部材に逆戻りして、嵩だか部材がへたってしまうおそれがない。したがって、フィット性は維持され、横漏れするおそれがない。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつの製造方法であって、
嵩だか部材を、前記吸収体の前後方向所定位置で曲げて、前記吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定する、ことを特徴とする紙おむつの製造方法。
【0016】
(作用効果)
嵩だか部材を、吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定するので、得られる紙おむつが、請求項1及び請求項2と同様の作用効果を有するものとなる。
また、かかる嵩だか部材の備え付けは、嵩だか部材を、吸収体の前後方向所定位置で、幅方向に曲げて、固定することによるため、製造容易である。
【0017】
〔請求項7記載の発明〕
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用する、請求項6記載の紙おむつの製造方法。
【0018】
(作用効果)
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用するので、嵩だか部材を、吸収体の前後方向所定位置で幅方向に曲げても、崩れるおそれは少ない。もちろん、得られる紙おむつは、請求項1及び請求項2と同様の作用効果を有するものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、横漏れ防止効果に優れ、しかも肌荒れの生じるおそれが著しく少ない紙おむつ及びその製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下では、止着テープ型の紙おむつを例に説明するが、本発明は、パンツ型や尿採りパッド型の紙おむつにも適用可能である。
【0021】
〔紙おむつの形状(第1の実施の形態)〕
図1に平面図を、図2に図1のI−I線断面図を示すように、第1の実施の形態の紙おむつ50は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材52A,52Bと、から主になる。
【0022】
表面シート51及び裏面シート54は、本物品(本紙おむつ)の平面外形と同じ形状とされており、その前後端部及び両側部が、吸収体53の前後端縁又は両側縁よりも前後方又は側方に延出している。この表面シート51及び裏面シート54の側方への延出は、特に、長手方向前後端部において、大きくなっている。この大きく延出した部位には、例えば、図示しない止着テープ等が取り付けられる。また、この表面シート51及び裏面シート54は、かかる延出部において、接合されている。この接合の方法は、特に限定されない。例えば、ホットメルト接着、超音波シール、ヒートシール(熱融着)、ヒートプレス(熱圧着)又はこれらの組み合わせによることができる。一方、吸収体53は、その全体が、クレープ紙55によって、被覆されている。この被覆によって、吸収体53の形状保持性の向上が図られている。
【0023】
また、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53の両側部上に、前後方向に、特に本形態では一直線に延在するように、設けられている。このように嵩だか部材52A,52Bが、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設けられていると、嵩だか部材52A,52Bが、防漏壁として機能し、体液の横漏れが防止される。したがって、横漏れ防止のために、立体ギャザーを設ける必要がなくなり、糸ゴム等によって肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。もちろん、本形態においても、立体ギャザーを設けることができるが、この場合においても、糸ゴム等の本数を少なくし、あるいは伸縮強度を弱いものとするなどして、肌との摩擦を低減させることができるため、肌荒れが生じるおそれを、著しく少なくすることができる。この他、嵩だか部材52A,52Bを設けると、立体ギャザーを設けるにしても、立体ギャザーの構造(折り形状等)を単純なものとすることができる、との利点がある。
【0024】
本形態において、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53の両側部上において、前後方向に延在するように設けられていればよく、必ずしも吸収体53の両側縁に沿って設けられていなければならないものではない。例えば、吸収体53の両側縁から、適宜の距離内側に、例えば、1〜3cm内側に、設けられていてもよい。また、嵩だか部材52A,52Bは、その幅が特に限定されるものではない。横漏れ防止効果やフィット性などを考慮して、適宜設計することができる。本形態では、各嵩だか部材52A,52Bの幅が、1.8〜2.2cmとなっている。
【0025】
ところで、図2に示すように、本形態では、嵩だか部材52A,52Bが、表面シート51と吸収体53(クレープ紙55)との間、に設けられている。ただし、この形態に限定する趣旨ではない。例えば、図3に示すように、表面シート51上に、嵩だか部材52A,52Bを、包み込みシート57,57で包んで、設けることもできる。
【0026】
また、嵩だか部材52A,52Bは、吸収体53(クレープ紙55)の上に直接設けることもできるが、嵩だか部材52A,52Bの裏面側に、体液不透過処理を施しておくのが好ましい。嵩だか部材52A,52Bの裏面側に、体液不透過処理を施しておくと、吸収体53に吸収された体液が、嵩だか部材52A,52Bに逆戻りして、嵩だか部材52A,52Bがへたってしまうおそれがない。したがって、使用状態においても、フィット性は維持され、横漏れが防止される。体液不透過処理をどのように施すかは、特に限定されない。例えば、嵩だか部材52A,52Bの裏面に撥水剤を塗布することや、図2に示すように、嵩だか部材52A,52Bと吸収体53(クレープ紙55)との間に、体液不透過性のシート56,56を介在させることなどができる。
【0027】
以上の嵩だか部材52A,52Bは、その設けられた方向、すなわち延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されているのが好ましい。嵩だか部材52A,52Bが、トウからなる繊維集合体で形成されていると、肌に対するフィット性に優れ、したがって横漏れ防止効果、肌荒れ防止効果にも優れる。また、トウからなる繊維集合体は、繊維の流れ方向には体液が拡散し易いが、繊維の流れ方向と直交する方向には体液が拡散し難いという特性がある。したがって、嵩だか部材52A,52Bの延在方向に沿って繊維が流れると、嵩だが部材52A,52Bを横切る方向への体液透過性は低く、体液は、嵩だか部材52A,52Bを横切る前に吸収体53に吸収されることになるため、横漏れ防止効果がいかんなく発揮される。さらに、トウからなる繊維集合体は、長繊維であるため、嵩だか部材52A,52Bの延在方向に沿って繊維が流れると、嵩だが部材52A,52Bが、延在方向に関して、2つに分離(分割)してしまうおそれがない。したがって、本形態によると、中央部の嵩だか部材52A,52B、つまり脚周り部の嵩だか部材52A,52Bが、着用者の動きによっても、前後端部によった状態となるおそれはなく、この点でも、横漏れ防止効果に優れたものとなる。もちろん、嵩だか部材52A,52Bは、その前後端部が、表面シート51及び裏面シート54によって、保持されているため、全体が一体的に前方又は後方に移動してしまうおそれもない。
【0028】
〔紙おむつの形状(第2の実施の形態)〕
次に、図4を参照しながら、第2の実施の形態の紙おむつ60について、説明する。
本形態の紙おむつ60は、基本的には第1の実施の形態の紙おむつ50と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ60は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材62A,62Bと、から主になる。
【0029】
ただし、本形態においても、この嵩だか部材62A,62Bは、第1の実施の形態と同様に、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられているが、更に中央部、より具体的には、受尿部Fと受便部Bとの間においては、両嵩だか部材62A,62Bが交差している。つまり、本形態においては、各嵩だか部材62A,62Bが、吸収体53の前身頃側又は後身頃側の一側部上を前後方向に延在し、中央部において、弧を描くようにして、他側部上に移り、そこから他身頃側の他側部上を前後方向に延在しており、両嵩だか部材62A,62Bが、いわば平面略X字状、ないしは略H字状になっている。このように、両嵩だか部材62A,62Bが、受尿部Fと受便部Bとの間において、交差していると、排泄された尿と糞便との交じり合いが防止される。したがって、便が尿によって拡散され、肌を広範囲に汚染するおそれが著しく少なくなる。また、便が排尿部を汚染し、かぶれや尿路感染を惹き起こすおそれも著しく少なくなる。
【0030】
なお、本明細書において、受尿部Fとは、尿を受ける部位、すなわち尿が排泄される紙おむつ上の部位を意味し、一般に、紙おむつの前胴周り域又は股下域に位置する。また、受便部Bとは、糞便を受ける部位、すなわち糞便が排泄される紙おむつ上の部位を意味し、一般に、紙おむつの股下域又は後胴周り域に位置する。もちろん、受尿部F及び受便部Bのいずれもが股下域に位置する場合は、受尿部Fは前側に、受便部Bは後側に位置することになる。
【0031】
〔紙おむつの形状(第3の実施の形態)〕
さらに、図5を参照しながら、第3の実施の形態の紙おむつ70について、説明する。
本形態の紙おむつ70も、基本的には、第1及び第2の実施の形態の紙おむつ50,60と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ70は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材72A,72Bと、から主になる。
【0032】
ただし、本形態においても、この嵩だか部材72A,72Bは、第1及び第2の実施の形態と同様に、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられているが、更に中央部、より具体的には、尿が排泄される受尿部Fと糞便が排泄される受便部Bとの間においては、両嵩だか部材72A,72Bが実質的に接している。つまり、本形態においては、各嵩だか部材72A,72Bが、吸収体53の前身頃側又は後身頃側の一側部上を前後方向に延在し、中央部においては、内側に突出して他の嵩だか部材72A,72Bと接するように延在しているが、更に他身頃側においては、同側部上を前後方向に延在しており、これにより、両嵩だか部材72A,72Bが、第2の実施の形態と同様に、平面略X字状、ないしは略H字状になっている。このように、両嵩だか部材72A,72Bが、受尿部Fと受便部Bとの間において、実質的に接していると、排泄された尿と糞便との交じり合いが防止される。したがって、雑菌の繁殖が抑えられ、肌荒れが生じたとしても、そこから雑菌が入るおそれは、著しく少なくなる。また、本形態によると、第2の実施形態のように、両嵩だか部材62A,62Bの交差部が盛り上がるということがないという点で、好ましいものとなる。
【0033】
〔紙おむつの形状(第4の実施の形態)〕
さらに、図6を参照しながら、第4の実施の形態の紙おむつ80について、説明する。
本形態の紙おむつ80は、第3の実施の形態の紙おむつ70を変形させたものであり、基本的には、同形態の紙おむつ70と同様の構造となっている。
すなわち、本紙おむつ80は、表面シート51と、裏面シート54と、これらのシート51,54の間に介在された吸収体53と、この吸収体53と表面シート51との間に介在された嵩だか部材82A,82Bと、から主になる。また、本紙おむつ80においては、この嵩だか部材82A,82Bが、吸収体53の両側部上に、前後方向に延在するように、設けられており、更に受尿部Fと受便部Bとの間において、両嵩だか部材82A,82Bが実質的に接しており、これによって第3の実施の形態と同様に、平面略X字状、ないしは略H字状になっている。
【0034】
ただし、本形態においては、前後方向に延在し、かつ幅方向一端部が吸収体53の側部に固定され、他端部が前後方向前後端部を除いて自由端とされたギャザーシート58と、このギャザーシート58の自由端側部分に、前後方向に沿って伸張状態で固定された糸ゴム等からなる弾性伸縮部材59と、から主になる立体ギャザーが、吸収体53の両側縁に沿って、設けられている。したがって、嵩だか部材82A,82Bは、吸収体53の両側縁から、立体ギャザーの幅分だけ内側に設けられた状態となっている。
【0035】
〔紙おむつの製造方法(第1の実施の形態)〕
次に、紙おむつの製造方法について、特に嵩だか部材の設け方について、前述した第3の実施の形態を例に、説明する。なお、嵩だか部材の設け方以外の紙おむつの製造方法については、従来の方法と同様であり、公知の方法によることができる。
【0036】
本実施の形態において、嵩だか部材72Aを設けるにあたっては、図7に示すような、掴み手段90を用いる。この掴み手段90は、嵩だか部材72Aに直交する方向に伸縮するシリンダ91と、このシリンダ91の先端部に取り付けられたフック92と、から主になる。この掴み手段90を用いて嵩だか部材72Aを設けるにあたっては、まず、図7の(1)に示すように、前後方向所定位置において、本形態では、受尿部Fと受便部Bとの間において、フック92を嵩だか部材72Aに引っ掛ける。この引っ掛けがなされたら、次に、図7の(2)に示すように、シリンダ91を収縮させることにより、嵩だか部材72Aを、幅方向に引き、この引いた状態で貼り付ける等して固定する。これにより、嵩だか部材72Aが、吸収体53上に設けられることになる。本形態では、シリンダ91を収縮させ、嵩だか部材72Aを幅方向に引くことによって、嵩だか部材72Aの形状を形作ったが、もちろん、シリンダ91を伸張させ、嵩だか部材72Aを幅方向に押すことによっても、嵩だか部材72Aの形状を形作ることができる。
【0037】
この方法は、嵩だか部材の曲げのみによって、特に本形態では押し又は引きのみによって、嵩だか部材の形状を形作るものであるため、大変簡易な製造方法となる。なお、前述した第2の実施の形態のように、嵩だか部材62A,62Bは、平面視で円弧状となるように設けることもでき、円弧状とした場合は、身体へのフィット性が向上するとの利点があるが、第3及び第4の実施の形態のように、嵩だか部材72A,72B,82A,82Bは、平面視で直線状とすることもでき、いずれの形態による場合も、本方法による製造の簡易化という効果は得られることになる。
【0038】
また、本方法においては、嵩だか部材が、その延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体であるとより好ましいものとなる。トウからなる繊維集合体は、長繊維であるため、嵩だか部材が、延在方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体であると、押し又は引いても、崩れるおそれが少ないためである。
【0039】
〔紙おむつの製造方法(第2の実施の形態)〕
さらに、もう1例、嵩だか部材の設け方について、説明する。
図10に示すように、本実施の形態において、嵩だか部材42を設けるにあたっては、ベルトコンベア等の搬送手段49によって、前後方向に複数の吸収体が連続してなる連続吸収体43を搬送する。この連続吸収体43の表面には、あらかじめ、例えば、接着剤塗布手段46によって、ホットメルト等の接着剤を塗布しておく。
【0040】
この接着剤が塗布された連続吸収体43上には、嵩だか部材42を、幅方向を回転軸とするガイドロール47を用いて、貼り付ける。このガイドロール47は、図11に示すように、その表面に、一周にわたって連続する、ガイド溝47A,47Bが、形成されている。このガイド溝47A,47Bは、幅方向に関して、円弧状に曲がっており、この溝内を、嵩だか部材42,42が案内される。したがって、本ガイドロール47において、嵩だか部材42は、幅方向に曲げられ、図12に示すように、幅方向に関して揺動した状態で、吸収体43に貼り付けられることになる。この方法は、ガイドロール47に沿わせるのみで、嵩だか部材42の形状を形作るものであるため、大変簡易な製造方法となる。
【0041】
嵩だか部材42の固定が終了したら、その上には、例えば、幅方向を回転軸とするロール48を用いて、表面シート41をかぶせることができる。
【0042】
〔各部材の素材等〕
(トウからなる繊維集合体)
本発明のトウからなる繊維集合体とは、繊維で構成されたトウ(繊維束)からなる(トウを原材料として製造された)ものである。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステル及びセルロースが好ましい。
【0043】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0044】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ポリカプロールクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは、単独で、又は二種類以上混合して使用することができる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0045】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0046】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロールアセテートは、空隙率を容易に調節することができるためである。
【0047】
また、セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0048】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0049】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ(2.54cm)当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造することができるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0050】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、通気性に優れるが、へたりが生じるおそれがある。そこで、へたりを防止して、広い空隙を維持する目的で、繊維の接触部分を接着又は融着する作用を有するバインダーを用いるのが好ましい。
【0051】
バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0052】
熱可塑性樹脂は、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性又は水難溶性樹脂、及び水溶性樹脂が含まれる。水不溶性又は水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0053】
水不溶性又は水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0054】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0055】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0056】
繊維集合体は、トウを原材料として、公知の方法により製造することができ、その際、必要に応じて、所望のサイズ、嵩となるように帯状に開繊することができる。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の繊維密度を調節することができる。
【0057】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行にともなって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0058】
図8は、開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ71が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアを用いる拡幅手段77と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール73,74,75とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス76に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体81として形成されるようになっている。
【0059】
(表面シート51)
本実施の形態において、表面シート51は、体液を透過する性質を有する。したがって、表面シート51の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0060】
また、本表面シート51は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート51は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0061】
(吸収体53)
本実施の形態において、吸収体53は、吸収した体液を保持する性質を有する。本吸収体53の素材は、特に限定されない。例えば、綿状パルプや合成パルプなどのパルプ単体からなるものや、フラッフ状パルプ中に、粒状粉などとされた吸収性ポリマーが混入されたものなどの、公知の素材を例示することができる。また、このうちのパルプの原料繊維は、特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、溶解パルプ等の木材から得られるセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維などを例示することができる。ただし、セルロース繊維の原材料となる木材は、広葉樹より針葉樹の方が、繊維長が長いため、機能及び価格の面で好ましい。
【0062】
さらに、本吸収体53は、前述したトウからなる繊維集合体で形成することや、このトウからなる繊維集合体内に吸収性ポリマーを移動させて得た吸収材で形成することもできる。以下、後者の吸収材について、詳しく説明する。
【0063】
図9は、本吸収体53の製造設備例を示しており、所望の幅・密度のトウからなる連続帯状の繊維集合体81が供給されるようになっている。このため、この連続吸収体製造ラインを、前述の繊維集合体製造ラインと直結し、製造した繊維集合体81を、直接に本吸収体製造ラインに送り込むことができる。
【0064】
供給された繊維集合体81は、まず、ポリマー散布ボックス87に通され、上面に吸収性ポリマー、好ましくは高吸収性ポリマーが散布された後、吸引ドラム88に送り込まれる。この吸引ドラム88は、外周壁に吸気孔を有し、その周方向所定範囲(図示例では略左半分の範囲)にわたり内側から図示しない吸引ポンプにより吸引するように構成したものである。高吸収性ポリマーが散布された繊維集合体81は、吸引ドラム88により外周面に接触されつつ案内される。そして、この過程で、吸引ドラム88の吸気孔から吸引を行うことにより、高吸収性ポリマー付与側から繊維集合体内を通り反対側へ雰囲気が通過され、その通過力により高吸収性ポリマーが、繊維集合体81内に移動される。
【0065】
高吸収性ポリマーとしては、自重の、例えば、10倍以上の体液を吸収して保持するものを使用できる。この例として、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマーの形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0066】
高吸収性ポリマーの散布量(目付け量)は、当該吸収材の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、例えば、3〜400g/m2とすることができる。
【0067】
特に好ましい形態では、繊維集合体81上に高吸収性ポリマーを散布した後、更にその上にシート83を被せる。この場合、吸引ドラム88において、繊維集合体81におけるシート83を被せた面の反対側面から吸引がなされる。このように、吸引に先立ってシート83が被されていると、何も被せない場合と比較して、より強力な吸引力が高吸収性ポリマーに作用し、効率良く高吸収性ポリマーを繊維集合体81内部へ移動・分散させることができる。このシート83としては、クレープ紙、不織布、孔開きシート等の液透過性シート、ポリエチレン製フィルム等の液不透過性シートを用いることができる。
【0068】
高吸収性ポリマーを繊維集合体81に固定するために、高吸収性ポリマーを付与する前の繊維集合体81に、接着剤を塗布するのも好ましい形態である。このため、図示のように、ポリマー散布ボックス87の上流側に、接着剤塗布装置84を、配設することができる。
【0069】
また、シート83を被せる場合、シート83を被せるのに先立ち、シート83の繊維集合体81側となる面に接着剤を供給するのも好ましい形態である。このため、図示形態では、吸引ドラム88に対するシート83供給経路に接着剤塗布装置85を備えている。この形態を採用すると、繊維集合体81表面に露出する高吸収性ポリマーは接着剤を介してシート83に固定され、未接着の高吸収性ポリマーは、後の吸引により繊維集合体81内部へ移動されるようになる。
【0070】
さらにまた、吸引後、つまり高吸収性ポリマーを移動させた後の繊維集合体81に対して接着剤を供給するのも好ましい形態である。このため、図示形態では吸引ドラム88の下流側における繊維集合体81の露出側面(シート83側と反対面、図中では上面)に、接着剤塗布装置86を備えている。この形態を採用すると、付与された高吸収性ポリマーのうち繊維集合体81におけるポリマー付与側と反対側に移動した高吸収性ポリマーを繊維集合体81に固定できる。また、繊維集合体81の露出側面に、別途シートを被せる、あるいはシート83の両脇部を繊維集合体81の両端を回りこませて折り返し被覆する場合、繊維集合体81の露出側面に移動した高吸収性ポリマーを、当該シート83に対して固定することができる。
【0071】
これらの接着剤の供給は、いずれか1つ又は2つ以上を組み合わせて適用することができる。接着剤としては、熱可塑性樹脂(具体例は前述のとおりである)からなる接着剤を好適に用いることができる。
【0072】
そして、かくして高吸収性ポリマーが付与された繊維集合体81は、例えば、別途シートを被せる、あるいは図示のようにセーラーによりシート83の両脇部を繊維集合体81の両端を回りこませて折り返し被覆した後、所定の長さに切断されて個別の吸収体53とされる。
【0073】
他方、繊維集合体81に対する高吸収性ポリマーの量的配置、密度分布、繊維密度は汎用を目的とする場合には均一であるのが好ましいが、特別の吸収特性を発揮させることを目的とした場合、その目的に応じて偏らせるのも好ましい。
【0074】
具体的に図示形態に応用する場合、ポリマー散布ボックス87において、散布量を平面方向に偏らせることができる。
【0075】
また、吸引ドラム88における吸引力を偏らせることにより、吸引力の高い位置ほど、より多くの量の高吸収性ポリマーが吸引ドラム88側に位置するようになるため、高吸収性ポリマーの密度を偏らせることができる。例えば、吸引ドラム88の幅方向中央における吸引力を両脇部よりも高くする(あるいは吸引時間を長くすることでも良い)ことにより、繊維集合体81の幅方向中央部における高吸収性ポリマーの密度を両脇部よりも高くすることができる。
【0076】
さらにまた、トウからなる繊維集合体81は、繊維の連続方向に沿って液が流れ易くなるため、繊維の密度を偏らせることによって特別の吸収特性を付与することができる。このような繊維密度を偏らせる手段としては、繊維集合体81の製造時において偏った開繊を行う、あるいは部分的に複数のトウを束ねて用いる等により達成できる。具体的な偏らせ方としては、例えば、繊維集合体81の幅方向中央部の繊維密度を両脇部よりも高くなるように偏らせることができる。この場合、繊維集合体81の幅方向中央部において、より体液の拡散スピードが速くなる。
【0077】
本実施の形態において、吸収体53の状態は、特に限定されない。例えば、コア状とすることや、1枚のシート状とすることや、2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数枚を積層させた積層シート状とすることなどができる。
【0078】
(裏面シート54)
本実施の形態において、裏面シート54は、体液を透過しない性質を有する。したがって、裏面シート54の素材は、この体液不透過性を発現するものであれば足り、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性の裏面シート54が構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0079】
(嵩だか部材52A〜82B)
本実施の形態において、嵩だか部材52A〜82Bは、例えば、0.8〜3.5cm程度の嵩だかさがあり、体液の防漏壁としての機能を有する。本嵩だか部材52A〜82Bは、例えば、捲縮パルプや、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)で、形成することができる。ただし、本嵩だか部材52A〜82Bは、前述したトウからなる繊維集合体で形成するのが好ましい。また、トウからなる繊維集合体で形成する場合は、その繊維の連続方向(流れ方向)が、本嵩だか部材52A〜82Bの延在方向に向かうようにするのが、好ましい。
【0080】
本実施の形態において、嵩高部材52A〜82Bの状態は、特に限定されない。例えば、1枚のシート状とすることや、2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数枚を積層させた積層シート状とすること、コア状とすることなどができる。
【0081】
嵩だか部材52A〜82Bとしては、圧縮仕事量(Wc)が、2.5以上のものを、好ましくは3.0以上のものを、特に好ましくは4.0以上のものを、使用するとよい。
ここで、圧縮仕事量(Wc)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片(嵩だか部材)の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。したがって、素材が嵩高で柔らかければ、それだけ押すのに時間がかかり、圧縮仕事量(Wc)が大きくなる。
この圧縮仕事量は、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:0.1、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
【0082】
(包み込みシート57)
本実施の形態において、包み込みシート57の素材は、体液を透過する性質を有するものであっても、体液を透過しない性質を有するものであってもよく、その種類は特に限定されない。例えば、表面シート51や裏面シート54として例示したのと同様の素材とすることができる。
【0083】
(体液不透過性シート56)
本実施の形態において、嵩だか部材の裏面側に配される体液不透過性シート56は、体液を透過しない性質を有する。したがって、体液不透過性シート56の素材は、この体液不透過性を発現するものであれば足り、例えば、裏面シート54に例示したのと同様の素材とすることができる。
【0084】
(ギャザーシート58)
本実施の形態において、ギャザーシート58の素材は、体液を透過する性質を有するものであっても、体液を透過しない性質を有するものであってもよく、その種類は特に限定されない。例えば、表面シート51や裏面シート54として例示したのと同様の素材とすることができる。
【0085】
ただし、肌触りや擦れによるカブレ防止等の観点からは、不織布であるのが好ましく、エアスルー不織布等のような嵩だかな不織布であるのがより好ましい。
【0086】
また、重要視する機能に応じて、それぞれ撥水処理不織布又は親水処理不織布が、単独で用いられたもの又は組み合わせて用いられたものであるのが好ましい。具体的には、例えば、体液の浸透防止や、肌触り感の向上などを重要視するのであれば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などがコーティングされた撥水処理不織布であるのが好ましい。一方、体液の吸収性を重要視するのであれば、合成繊維の製造過程で、例えば、ポリエチレングリコールの酸化生成物などの親水基を持つ化合物を、共存させて重合させる方法や、合成繊維表面を、塩化第2スズなどの金属塩で部分溶解して多孔性とし、金属の水酸化物を沈着させる方法などによって、合成繊維を膨潤又は多孔性とした、毛細管現象を応用して親水性が与えられた親水処理不織布であるのが好ましい。
【0087】
もっとも、ギャザーシート58の素材としては、撥水処理不織布よりも親水処理不織布である方が好ましい。親水処理不織布としては、前述したもののほかにも、例えば、天然繊維、合成繊維、再生繊維などを原料として、適宜の加工法によって得られたものや、目付け量を抑えて通気性をもたせたものなどを例示することができる。
【0088】
(弾性伸縮部材59)
本実施の形態において、弾性伸縮部材59の素材は、伸縮性を有するものであればよく、その種類は特に限定されない。例えば、伸縮ホットメルト、伸縮フィルム、糸ゴム、平ゴム等を例示することができる。また、素材としては、例えば、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系のゴムや、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の発泡体などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、止着テープ型の紙おむつやパンツ型、尿採りパッド型の紙おむつ、及びその製造方法として、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】図2の断面図の変形例である。
【図4】第2の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図5】第3の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図6】第4の実施の形態の紙おむつの平面図である。
【図7】嵩だか部材の備え付けを説明するための図である(第1の実施の形態)。
【図8】繊維集合体の製造フローを示す概略図である。
【図9】吸収体の製造フローを示す概略図である。
【図10】嵩だか部材の備え付けを説明するための図である(第2の実施の形態)。
【図11】ガイドロールの正面図である。
【図12】嵩だか部材が貼り付けられた連続吸収体の平面図である。
【符号の説明】
【0091】
51…表面シート、52A,52B,62A,62B,72A,72B,82A,82B…嵩だか部材、53…吸収体、54…裏面シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつであって、
嵩だか部材が、前記吸収体の両側部上において、前後方向に設けられている、ことを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接している、請求項1記載の紙おむつ。
【請求項3】
嵩だか部材が、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されている、請求項1又は請求項2記載の紙おむつ。
【請求項4】
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である、請求項3記載の紙おむつ。
【請求項5】
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されている、請求項3又は請求項4記載の紙おむつ。
【請求項6】
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつの製造方法であって、
嵩だか部材を、前記吸収体の前後方向所定位置で曲げて、前記吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定する、ことを特徴とする紙おむつの製造方法。
【請求項7】
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用する、請求項6記載の紙おむつの製造方法。
【請求項1】
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつであって、
嵩だか部材が、前記吸収体の両側部上において、前後方向に設けられている、ことを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
両嵩だか部材が、受尿部と受便部との間において、交差し、又は実質的に接している、請求項1記載の紙おむつ。
【請求項3】
嵩だか部材が、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体で形成されている、請求項1又は請求項2記載の紙おむつ。
【請求項4】
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である、請求項3記載の紙おむつ。
【請求項5】
嵩だか部材の裏面側に、体液不透過処理が施されている、請求項3又は請求項4記載の紙おむつ。
【請求項6】
表面シートの下に吸収体が備えられた紙おむつの製造方法であって、
嵩だか部材を、前記吸収体の前後方向所定位置で曲げて、前記吸収体の両側部上においては、前後方向に固定し、かつ受尿部と受便部との間においては、交差し、又は実質的に接するように固定する、ことを特徴とする紙おむつの製造方法。
【請求項7】
嵩だか部材として、その設けられた方向に沿って繊維が流れるトウからなる繊維集合体を使用する、請求項6記載の紙おむつの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−101894(P2006−101894A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288302(P2004−288302)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]