説明

紙おむつ

【課題】軟便を速やかに肌から遠ざけるとともに、肌から遠い位置に確実に収容保持しうる紙おむつを提供する。
【解決手段】下層吸収体3Aと、その上に設けられた上層吸収体3Bとを備え、上層吸収体3Bは軟便の通過孔Hを有し、下層吸収体3Aおよび上層吸収体3Bの少なくとも一方が、トウからなる繊維集合体により形成された紙おむつとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟便の吸収保持性能を向上させた紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙おむつでは軟便の吸収保持性能が問題となっている。具体的には、軟便が表面シートを通過せずに表面シート上に残る、あるいは表面シートを透過した軟便が吸収体により保持されずに表面シート上に逆戻りするといった事態が発生し、肌のかぶれや、煩雑な肌の拭き取り作業をもたらしている。
【0003】
このような観点から、軟便を速やかに肌から遠ざけるとともに、肌から遠い位置に収容保持する能力(単に、軟便等の吸収性能ともいう)を向上させるために、表面シートとして孔開きシートを用い、軟便の通過を容易にする技術や、表面シートと吸収体との間に軟便収容空間を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近年の技術競争の激化により、軟便の吸収保持性能に関して更なる改善が要望されているのが現状である。
【特許文献1】特開平2−65861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、軟便の吸収保持性能に優れる紙おむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
下層吸収体と、その上に設けられた上層吸収体とを備えた紙おむつであって、
前記上層吸収体は軟便の通過孔を有し、
前記下層吸収体および上層吸収体の少なくとも一方が、トウからなる繊維集合体により形成されている、
ことを特徴とする紙おむつ。
【0007】
<請求項2記載の発明>
少なくとも前記下層吸収体がトウからなる繊維集合体により形成されている、請求項1記載の紙おむつ。
【0008】
<請求項3記載の発明>
少なくとも前記上層吸収体がトウからなる繊維集合体により形成されている、請求項1または2記載の紙おむつ。
【0009】
(請求項1〜3記載の発明の作用効果)
本発明においては、上層吸収体が繊維間隙よりも大径の通過孔を有するため、軟便はこの通過孔を通り速やかに肌から遠ざけられる。そして、下層吸収体および上層吸収体の少なくとも一方が、トウからなる繊維集合体により形成されていることにより次のような利点がもたらされる。すなわち、下層吸収体がトウからなる繊維集合体である場合、下層吸収体は軟便吸収時の膨張容易性(または復元性)に優れるとともに、液分の吸収速度が速いため、速やかに且つ確実に軟便が吸収され、残留固形分は逆戻りせずに確実に保持される。また、上層吸収体がトウからなる繊維集合体である場合、繊維長が長いため通過孔の形状保持性およびクッション性に優れるため、軟便を吸収保持した下層吸収体を肌から遠い位置に確実に保持できるようになる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
軟便が通過可能な孔開きシートからなる表面シートと、不透液性シートとを有し、これら表面シートおよび不透液性シートとの間に前記上層吸収体および下層吸収体が設けられている、請求項1記載の紙おむつ。
【0011】
(作用効果)
紙おむつは、表面シートと不透液性シートとの間に吸収体を介在させる形態が一般的である。本項記載の発明は、このような形態への応用例であり、軟便が通過可能な孔開きシートにより表面シートを形成することによって、軟便等が速やかに吸収体側に通過し、さらに上層吸収体の通過孔を介して下層吸収体側に速やかに通過し、下層吸収体により吸収保持されるようになるものである。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記トウからなる繊維集合体として、厚さを10mmとしたときの繊維密度が0.0075g/cm3以下であるものを用いた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙おむつ。
【0013】
(作用効果)
繊維集合体の繊度や材質、繊維相互の接合レベルにもよるが、通常の場合、繊維密度が本項記載の範囲内にあると、本発明による吸収性能の改善を図る上で有利である。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によれば、軟便の吸収性能に優れる紙おむつとなる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、使用時(装着時)に背側の左右両側縁を腹側に接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつの例を引いて詳説するが、本発明は、背側両側縁及び腹側両側縁が予め接合されたパンツ型使い捨ておむつ、その他の形態の紙おむつに適用できることはいうまでもない。
【0016】
図1及び図2は、本発明を適用した紙おむつ例を示しており、使用者の肌側に位置する表面シート1と、製品の外面側に位置し、実質的に液を透過させない不透液性シート2と、これらの間に介在された吸収体3A,3Bとを備えているものである。
【0017】
また、不透液性シート2は、吸収要素より幅広の長方形をなし、その外面には肌触り性向上のために不織布からなる外装シート10が張り合わされている。不透液性シート2は、吸収要素より幅広の長方形をなし、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムにより形成することができる。
【0018】
表面シート1は吸収要素より幅広の長方形をなし、吸収要素の側縁より若干外方に延在し、不透液性シート2とホットメルト接着剤などにより固着されている(この固着部分を含めて本形態に関係する固着部分を符号*で示す)。
【0019】
おむつの両側部には、使用者の肌側に突出する脚周り用起立カフスBが形成されている。この起立カフスBは、実質的に幅方向に連続した不織布からなる起立シート4と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は図示のように複数本の脚周り用弾性伸縮部材5とにより構成されたものである。起立シート4は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましく、例えば不織布に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。
【0020】
おむつの装着時には、おむつが舟形に体に装着されること、そして各弾性伸縮部材5,5…の収縮力が作用することによって、脚周りでは、各弾性伸縮部材5,5…の収縮力により起立カフスBが起立する。起立カフスBの起立部で囲まれる空間は、尿、軟便等の排泄物の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排泄物が排泄されると、その体液は表面シート1を通って吸収体3内に吸収され、この際、起立カフスBの起立部がバリヤーとなり、両脇からの排泄物の漏出が防止される。
【0021】
また、図示形態では、腹側部分および背側部分のいずれか一方(図示例は背側)の部分の両側端部に止着片7をそれぞれ有し、一方の部分の止着片7を他方の部分(図示例は腹側のターゲットテープ20)に止着することにより、胴回り開口部および一対の脚周り開口部が形成されるようになっている。
【0022】
以下、本発明に特に関係する部分について説明する。表面シート1としては、軟便の固形分が十分に通過しうる孔Mを有するシート、例えば不織布等に孔Mを多数開けた孔開きシートが好適である。この場合における孔Mの開口率としては10〜40%、特に15〜20%が好ましい。孔Mの形状には特に限定されず、丸、三角、四角、菱形等、適宜選択することができる。孔Mは吸収体3A,3Bと重なる部分の全体に配することも、また一部分、例えば排泄部位(略中央部)にのみ配することもできる。一つの孔Mの径は0.5〜30mmとするのが好ましく、特に2〜5mmとするのが好ましい。さらに孔Mの数密度は5〜20個/cm2、特に6〜12個/cm2とするのが好ましい。孔Mの数密度は、孔Mを有する部分内で均一であっても、変化させても良い。このような孔Mは打ち抜き加工により形成することができる。
【0023】
表面シート1の素材としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、SMS不織布、ポイントボンド不織布等の各種不織布の他、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムや、プラスチックフィルムと不織布とをラミネートしたラミネート不織布も用いることができる。また、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の糸を平織り等したネット状の素材を用いることもできる。孔の大きさや数等により強度不足が問題となるような場合には、表面シートの目付を18〜50g/m2とするのが好ましい。
【0024】
表面シート1と不透液性シート2との間に配置される吸収体は、本発明では、下層吸収体3Aと、その上に設けられた上層吸収体3Bとからなる2層構造とされるとともに、上層吸収体3Bには軟便が通過しうる通過孔Hが形成される。上層吸収体3Bにおける通過孔Hの開口率としては5〜40%、特に10〜20%が好ましい。この通過孔Hの形状・配置には特に限定されず、図2に示すように、丸、三角、四角、菱形等の小孔Hが規則的または不規則に多数配置された形態、図3(a)に示すように、楕円形等の適宜形状を有する比較的大径の孔Hが排泄部位をカバーするように配置された形態、図3(b)に示すように、長手方向に沿う細長矩形の孔Hが幅方向に複数並設された形態等、適宜選択することができる。一つの通過孔Hの径は3〜30mmとするのが好ましく、特に10〜20mmとするのが好ましい。さらに通過孔Hの数は吸収体一つあたり1〜20個、特に吸収体一つあたり1〜5個とするのが好ましい。このような通過孔Hは上層吸収体3Bの製造時に打ち抜き加工を施すことにより形成することができる。
【0025】
下層吸収体3A及び上層吸収体3Bの厚さは適宜定めることができるが、通常の紙おむつへの適用を考慮すると、下層吸収体3A及び上層吸収体3Bは、吸収体物品をパッケージから取り出し、温度23度、湿度50%の室内で1日放置した時の厚さが3〜20mm、特に5〜15mmとなるように構成するのが好ましい。この場合において、下層吸収体3A及び上層吸収体3Bの厚さは異なるものとすることができ、特に下層吸収体3Aを上層吸収体3Bよりも厚くすることにより、軟便収容量を十分に確保するのが好ましい。
【0026】
さらに、本発明では下層吸収体3A及び上層吸収体3Bの少なくとも一方は、トウからなる繊維集合体により形成される。すなわち、本発明では、下層吸収体3Aがトウからなる繊維集合体により形成され、上層吸収体3Bが従来のパルプを積繊してなるパルプ積繊吸収体により形成される構造、反対に、下層吸収体3Aがパルプ積繊吸収体により形成され、上層吸収体3Bがトウからなる繊維集合体により形成される構造、ならびに下層吸収体3A及び上層吸収体3Bの両方がトウからなる繊維集合体により形成される構造のいずれも採用することができる。
【0027】
トウからなる繊維集合体を構成する繊維(以下、単にトウ構成繊維という)としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0028】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0029】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0030】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0031】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0032】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0033】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0034】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0035】
熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0036】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0037】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0039】
トウからなる本発明の繊維集合体は公知の方法により製造でき、その際、本発明では所望のサイズ、嵩となるように開繊される。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する高吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。
【0040】
トウの開繊度合いを調整することにより、繊維集合体の密度を調整することができる。 本発明の繊維集合体としては、厚さを10mmとしたときの繊維密度が0.0075g/cm3以下、特に0.0060〜0.0070g/cm3であるものが好適である。過度に繊維密度が高くなると、トウからなる繊維集合体を用いることによる利点が少なくなり、例えば軽量化や薄型化を図り難くなる。また、本発明の繊維集合体の目付けは、0.0075g/cm2以下、特に0.0060〜0.0070g/cm2であるものが好適である。繊維目付けは、原反となるトウの選択、あるいはその製造条件により調整できる。
【0041】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行に伴なって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0042】
図4は開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ31が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアーを用いる拡幅手段32と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール33,34,35とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス36に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体40として形成されるようになっている。
【0043】
トウからなる繊維集合体40には、高吸収性ポリマーを含有させることができる。この高吸収性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。製品の吸湿によるブロッキング性を抑制するためにブロッキング防止剤が添加されたものも用いることができる。また高吸収性ポリマーとしては、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ゾル状、サスペンジョン状、ゲル状、フィルム状、不織布状等のさまざまな形態をもったものがあるが、これらはいずれも本発明において使用可能であり、特に粒子状のものが好適に使用される。
【0044】
高吸収性ポリマーの含有させる方法としては、トウからなる繊維集合体に対して粉粒状の高吸収性ポリマーを散布する付与する方法、トウからなる繊維集合体にモノマー(高吸収性ポリマーとなるもの)を含浸した後に重合する方法や、未架橋のゲル状高吸収性ポリマーをトウからなる繊維集合体にコートした後に架橋処理を施す方法等を採用することができる。高吸収性ポリマーの目付け量は、当該吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、一般的には0.03g/cm2以下、特に好適には0.01〜0.025g/cm2とすることができる。
【0045】
また、繊維集合体中に高吸収性ポリマーを含有させるのに代えて、あるいは繊維集合体中に高吸収性ポリマーを含有させるのとともに、トウからなる繊維集合体の表面側および裏面側の少なくとも一方に高吸収性ポリマーを層状に設けることもできる。特に繊維集合体の裏面側に高吸収性ポリマー層を設けるのは好ましい。これらの場合において、高吸収性ポリマーは繊維集合体を包むシートに接着剤により接着することができる。この場合の接着剤としては前述の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0046】
また、トウからなる繊維集合体は、クレープ紙、不織布、孔開きシート等の液透過性シートにより包むことができる。特に、クレープ紙のように吸収性を有するシートが好適に用いられる。
【0047】
さらにまた、図5(a)に示すように、トウからなる繊維集合体からなる吸収体3A(または3B)は、そのトウの繊維連続方向がおむつDPの長手方向(前後方向)に沿うように形成し、配置するのが望ましいが、図5(b)に示すようにトウの繊維連続方向がおむつDPの幅方向に沿うように形成し、配置することもできる。いずれにせよ、繊維集合体の形状保持性を高めるために吸収体3A(または3B)の厚さ方向と直交する横方向に沿って繊維が連続するように構成するのが好ましい。
【0048】
一方、パルプ積繊吸収体としては、パルプを公知の方法により積繊し、空気や水流等により交絡処理することにより製造できる。パルプ繊維としては、木材から得られる化学パルプ 、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものを用いることができ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0049】
パルプ積繊吸収体においても、高吸収性ポリマーを含有させることができる。高吸収性ポリマーとしては、トウからなる繊維集合体の項で述べたものと同様のものを用いることができ、エアレイ法や重合法等の公知の方法により吸収体内に含有させることができる。
【0050】
他方、かくして構成された紙おむつにおいては、排泄された軟便は表面シート1の孔Mを通過して速やかに上層吸収体3B側に移行し、さらに上層吸収体3Bの通過孔Hを介して下層吸収体側に速やかに通過する。この過程で、一部の液分は上層吸収体3Bに吸収されるが、多くは下層吸収体3Aに至り、下層吸収体3Aにより吸収保持される。つまり、両吸収体3A,3Bはいずれも排泄物を吸収保持する機能を有するものであるが、特徴的には、下層吸収体3Aは主に軟便を保持する機能を果たし、上層吸収体3Bは軟便を保持する下層吸収体3Aを肌から遠い位置に保持する間隔保持機能を果たす。
【0051】
そして、下層吸収体3Aがトウからなる繊維集合体により形成されていると、下層吸収体3Aは軟便吸収に伴い膨張して固形分をも確実に取り込み保持する。そして、軟便を保持した下層吸収体3Aは上層吸収体3Bにより表面シート1から離間される。よって、軟便は速やかに肌から遠ざけられるとともに、肌から遠い位置に収容保持されるようになる。
【0052】
また、上層吸収体3Bがトウからなる繊維集合体により形成されている場合、繊維長の長さにより上層吸収体3Bは形状保持性およびクッション性に優れるため、軟便を吸収保持した下層吸収体3Aを肌から遠い位置に確実に保持できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、パンツタイプ等、各種形態の紙おむつに適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る紙おむつ例の展開状態における平面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】上層吸収体における軟便通過孔の配置例を示す平面図である。
【図4】繊維集合体の製造フローを示す概略図である。
【図5】トウからなる繊維集合体の配置例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…表面シート、M…表面シートの孔、2…不透液性シート、3A…下層吸収体、3B…上層吸収体、H…上層吸収体の通過孔、4…起立シート、5…弾性伸縮部材、7…止着片、10…外装シート、20…被着要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層吸収体と、その上に設けられた上層吸収体とを備えた紙おむつであって、
前記上層吸収体は軟便の通過孔を有し、
前記下層吸収体および上層吸収体の少なくとも一方が、トウからなる繊維集合体により形成されている、
ことを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
少なくとも前記下層吸収体がトウからなる繊維集合体により形成されている、請求項1記載の紙おむつ。
【請求項3】
少なくとも前記上層吸収体がトウからなる繊維集合体により形成されている、請求項1または2記載の紙おむつ。
【請求項4】
軟便が通過可能な孔開きシートからなる表面シートと、不透液性シートとを有し、これら表面シートおよび不透液性シートとの間に前記上層吸収体および下層吸収体が設けられている、請求項1記載の紙おむつ。
【請求項5】
前記トウからなる繊維集合体として、厚さを10mmとしたときの繊維密度が0.0075g/cm3以下であるものを用いた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙おむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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