説明

紙葉類の切断装置

【課題】本発明は、切れ味の良い、精度の高い切断を実施できる紙葉類の切断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ロール紙を切断する紙葉類の切断装置であって、引き出したロール紙を案内する搬送路と、該搬送路に沿って移動するロール紙に対しその厚さ方向両側にロール紙を挟むように配置され、前記ロール紙より幅の広い一対の板状の切断刃と、対向する一対の側壁および両側壁を接続する接続壁からなる中空構造をなし、前記切断刃の一方を取り付ける取付面を前記側壁の表面に有し、前記ロール紙の厚さ方向に移動自在に設けられ、前記取付面に切断刃を取り付けたベースと、該ベースを前記ロール紙の厚さ方向に移動させて前記ベースに備えた切断刃を前記他方の切断刃の刃先前方位置のロール紙に対し押し付けて前記他方の切断刃とともにロール紙を切断する駆動機構とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を積層梱包する際に用いる合紙等の紙葉類を切断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、近年において大型化および薄型化が進められている。例えば、第8世代、G8と称されているガラス基板になると、ガラス基板のサイズは2500mm×2200mm、厚さ0.7mm程度とされる。
この種フラットパネルディスプレイ用のガラス基板を搬送するには、合紙を介しガラス基板を縦置きして複数枚積層し梱包容器に収容するか、合紙を介し積層したガラス基板を横置きに積層した状態で梱包容器に収容し、梱包容器に収容した状態で輸送機械により搬送している。
ガラス基板の間に介在させる合紙は、通常、ロール装置に巻き付けてロール状に収容されているので、このロールから必要な長さの合紙をコンベア等の搬送路上に引き出し、搬送路上で裁断して1枚の合紙とされ、コンベア上を流れてくるガラス基板の上に載置する形でガラス基板に重ねられる。
規模の大きなガラス基板用の梱包容器では100〜200枚ものガラス基板を梱包容器に収容することが知られている。
【0003】
ところで、ロール紙を切断する装置として、以下の特許文献1に記載のように、ロール状記録紙から引き出された記録紙部分を引き出し方向と直交する方向にシート状にカットするカッタ刃を備えたロール紙切断装置が知られている。この装置は、記録紙部分の移動方向と同じ方向に同じ速度でカッタユニットを移動させながらロール状記録紙を引き出し方向と直交する方向に切断できる装置として構成されている。
また、紙葉類を切断する他の例の装置として、以下の特許文献2に記載のようにギロチン式の平板状切断刃を上下移動自在に設けた構造を有し、紙葉類を紙載台上に複数枚積み重ねてセットし、その所定箇所を切断刃で裁断する構成の裁断装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−228893号公報
【特許文献2】特開2009−172743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のフラットパネルディスプレイ用の合紙は長さ、幅、共に極めて大きく、切断する距離も長いので特許文献1に記載の装置のようにカッタユニットを記録紙の移動方向に移動させる構造は採用できない問題がある。
そこで、従来では、図3、図4に示す板状のギロチン式の切断刃を上下方向に移動自在に設けた構造であって、切断刃を上刃100と下刃101の上下2枚構造とした切断装置102が知られている。
【0006】
この切断装置102は、水平に配置した供給ロール103に合紙をロール巻きしておき、この供給ロール103に押し付けた駆動ロール104を回転させることで供給ロール103から水平方向に合紙を引き出すことができる構成とされている。供給ロール103の近傍に水平方向に合紙を搬送できる搬送路105が設けられ、この搬送路105の途中にギロチン方式の上刃100と下刃101が設けられている。上刃100と下刃101は、図4に示すように上下に対向配置され、上刃100が板状のベース106に取り付けられるとともに、ベース106が下向きのエアーシリンダ装置107のシリンダロッド108の下端部にコネクター部材109を介し取り付けられ、シリンダロッド108の上下移動とともに上刃100が上下移動する。
【0007】
図3、図4に示す従来の切断装置102において、上刃100の幅方向一側端部には下向きに短冊状に延出形成された案内板100aが設けられ、下刃101の幅方向一側端部に案内部101aが形成され、この案内部101aに沿って案内板100aが上下方向にスライド移動自在に挿入されている。切断装置102において、上刃100の案内板100aを下刃101の案内部101aに挿通することで上刃100と下刃101の互いの刃先部分が位置ずれしないように上下動の軌跡が制限されており、上刃100の刃先と下刃101の刃先の位置ずれが抑制されている。なお、上刃100の刃先部100bは図4に示すようにその幅方向一側端部から他側端部にかけて傾斜する刃先部とされ、案内板100aを形成した側の刃先部が反対側の刃先部よりも下側に位置するように傾斜されている。
図3、図4に示す切断装置102において、搬送路105の横に金属製の堅牢なフレーム部材110が立設され、その上端部にシリンダ装置107が設けられ、該シリンダ装置107のシリンダロッド108の下端部に厚い金属製のベース部材111が設けられ、このベース部材111を介し板状の上刃100が支持されている。
切断装置102において上刃100を厚い金属製のベース部材111に取り付けることで刃先の位置ずれを抑制しており、上刃100と下刃101の間に挟んだ合紙112を位置ズレすることなく繰り返し切断することができる。
【0008】
しかし、図3、図4に示す堅牢な構造の切断装置102であっても、上述のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板のような大型のガラス基板対応の合紙112を繰り返し切断している間に上刃100と下刃101の位置ずれが生じることがあった。
例えば、ガラス基板は更なる大型化がなされており、第10世代、G10と称される大型のガラス基板は2880mm×3130mmの大きさに形成される。これに伴い、上述の上刃100も大型化されてきており、例えば、厚さ16mm、幅(長さ)3m以上の大型の上刃100も登場している。
このため、上刃100を取り付けたベース部材111を金属製の剛性が高い厚板構造としても、剛性(ねじれ剛性、曲げ剛性)が十分ではなくなる問題が生じている。
例えば、合紙の切断を繰り返すうちに、ベース部材111に歪みが生じ、上刃100と下刃111との噛み合わせにずれが生じ、切れ味が悪くなる、という問題が生じている。
また、合紙の厚さは約0.08mmと極めて薄いため、上刃100と下刃101とがロール紙112を切断する際の刃先間隔について0〜0.01mm程度の極めて小さな間隔を維持する必要があるが、上述したように上刃100の大型化に伴ない、間隔の正確な維持は困難になってきている。
【0009】
これらの背景に基づき、本発明者は、大型のガラス基板対応の合紙などの紙葉類を切断する装置において、切断刃を支持するベースの剛性を高め、多数の紙葉類を切断する場合であっても切断刃の位置ずれが生じないようにして切断精度を高めた紙葉類の切断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、供給ロールから引き出したロール紙をその幅方向に沿って切断する紙葉類の切断装置であって、引き出したロール紙を案内する搬送路と、該搬送路に沿って移動するロール紙に対しその厚さ方向両側にロール紙を挟むように配置され前記ロール紙より幅の広い一対の板状の切断刃と、対向する一対の側壁およびこれら側壁を接続する接続壁とからなる中空構造をなし、前記切断刃の一方を取り付ける取付面を前記側壁の表面に有し、前記ロール紙の厚さ方向に移動自在に設けられ、前記取付面に切断刃を取り付けたベースと、該ベースを前記ロール紙の厚さ方向に移動させて前記ベースに備えた切断刃を前記他方の切断刃の刃先前方位置のロール紙に対し押し付けて前記他方の切断刃とともにロール紙を切断するための駆動機構とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記ベースが、対向する一対の側壁と両側壁を接続する接続壁とから矩形管状に形成され、前記対向する側壁間に補強材が架設された紙葉類の切断装置とすることができる。
本発明において、前記ベースの側壁の一部に係止部が形成され、該側壁の側方に前記係止部を支持して前記ベースの移動を阻止するストップ機構が設けられた紙葉類の切断装置とすることができる。
【0012】
本発明は、前記搬送路の近傍に支柱部が立設され、該支柱部に前記搬送路に対し接近離間自在にロッドを配置した直動装置が取り付けられ、前記ロッドの先端部に前記ベースが取り付けられて前記ベースが搬送路に対し接近離間自在に支持された構成にできる。
本発明は、前記ロール紙の厚さ方向に対し移動自在に設けられた一方の切断刃の刃先部より基端側に、前記他方の切断刃の刃先部との干渉を避けるための凹型の逃げ部が形成された構成にできる。
【0013】
本発明は、前記搬送路が前記ロール紙を水平搬送する搬送路であって、前記一方の切断刃が上刃であり、前記他方の切断刃が下刃であり、前記下刃が前記搬送路の下方に固定され、前記上刃が前記ベースの取付面に刃先部を下向きとして前記ベースとともに上下に移動自在に固定され、前記上刃の前記下刃側の内側面に前記下刃との干渉を避けるための逃げ部が形成された構成にできる。
本発明は、前記ベースに複数の被検知体が取り付けられ、前記ベースの近傍に前記被検知体の移動を検知して移動自在とされた前記切断刃の位置を検出するセンサが設けられた構成にできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、側壁の取付面に切断刃を取り付けたベースを側壁と接続壁とからなる中空構造として、従来構造の板状のベースより剛性を向上させたベースとしたので、多数の紙葉類を切断した場合であってもベースが歪むおそれが少なく、切断精度の低下を引き起こすことなく高精度のまま、切れ味の良い切断ができる紙葉類の切断装置を提供できる。
また、本発明の切断装置によれば、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に挟む梱包用の合紙のように、縦横数mに及ぶ巨大な合紙などのような大きな紙葉類を多数枚切断する処理を行ったとしても、ベースの歪みを少なくすることが可能となり、切れ味の低下が生じない、高精度のまま切断のできる紙葉類の切断装置を提供できる。
【0015】
本発明の切断装置において、ベースの側壁に設けた係止部をストップ機構で係止してベースの移動を阻止するならば、切断刃の移動を阻止した状態で紙葉類や搬送路あるいは付帯設備等のメンテナンスを安全に行うことができ、メンテナンス作業時の安全性を向上できる効果がある。
本発明の切断装置において、搬送路を横断するように移動する一方の切断刃の刃先部より基端側に、他方の切断刃の刃先部の逃げ部を設けたので、一方の切断刃と他方の切断刃の接触による摩耗を抑制できる効果がある。また、逃げ部を設けることにより一方の切断刃と他方の切断刃の摩耗粉の発生を抑制できるので、切断対象の紙葉類を摩耗粉で汚してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第一実施形態の切断装置の全体構成を示す概略図。
【図2】同切断装置に設けられる上刃と下刃を示すもので、図2(a)は切断前の上刃と下刃の位置関係を示す構成図、図2(b)は切断後の上刃と下刃の位置関係を示す構成図。
【図3】従来の切断装置の一例を示す構成図。
【図4】図3に示す切断装置に設けられる上刃と下刃の関係を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「第一実施形態」
以下、添付図面を参照して本発明に係る検査装置の第一実施形態について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は本発明に係る第1実施形態の紙葉類の切断装置の全体構成を概略的に示すもので、本実施形態の切断装置1は、水平に配置された紙葉類の供給ロール2と、この供給ロール2の側方に水平に架設されている紙葉類の搬送路3と、この搬送路3の途中において搬送路3の上下に設けられた図2に拡大して示す上刃(切断刃)5及び下刃(切断刃)6と、前記上刃5を上下に移動させる駆動機構(昇降機構)7を主体として構成されている。
【0018】
前記供給ロール2はその上方に設置された駆動ロール8とともにそれらの中心軸周りに回転自在、かつ、水平に架設されている。供給ロール2には紙葉類の1種としての合紙9がロール状に巻き付けられていて、合紙9が構成するロール体にその上方の駆動ロール8が所定のテンションでもって押圧されている。供給ロール2に対し駆動ロール8を押圧しつつ回転させることで供給ロール2に巻き付けられた合紙9を必要長さ搬送路3側に繰り出すことができる。供給ロール2と駆動ロール8はそれぞれ図示略の軸受け等に支持されて回転自在に軸支されているが、図1においては供給ロール2と駆動ロール8の軸受け部分や支持機構等は記載を略し、各ロールの位置のみを簡略化して示している。
前記供給ロール2の側方には、架台10、11等に支持された搬送テーブル12、13、15が水平に設置され、これらの搬送テーブル12、13、15により供給ロール2の側方に水平に延在する搬送路3が形成されている。
【0019】
前記搬送テーブル12、13は搬送路3に沿って所定の間隔をあけて配置され、搬送テーブル12、13の間に、架台10に支持された下刃6が水平に固定されている。この下刃6は搬送路3の幅方向に細長い水平向きの平板状の本体部6aを有し、搬送路3の下流側に位置する本体部6aの一側端縁上部に刃先部6bが形成されている。この刃先部6bは、一例として、図2(c)に示すように鋼材からなる本体部6aの一側端縁に超硬合金チップや刃物合金チップを固定し構成されている。
【0020】
下刃6の刃先部6bの先端位置より若干搬送路3に沿って下流側であって、搬送テーブル13との間に上刃5を導入するための隙間Dが形成され、この隙間Dの上方にほぼ垂直向きに上刃5が上下に移動自在に設けられている。この上刃5は、搬送路3の幅方向に細長い上下方向向きの板状の本体部5aからなり、この本体部5aの下端縁に刃先部5bが形成されている。この上刃5の幅方向一側端縁部には図4を基に先に説明した案内板100aと同等構造の案内板5cが下向きに突出形成されている。また、下刃6の幅方向端縁部にも図4を基に先に説明した案内部101aと同等形状の案内部(図示略)が形成されていて、下刃6の案内部に沿って上刃5の案内板5cを挿通することで上刃6の上下移動の軌跡を制限し、下刃6に対して上刃5を位置ズレすることなく、正確に移動できるように上刃5の上下動が規制されている。なお、本実施形態の上刃6において先に説明した上刃100と同様、上刃5の刃先部5bは傾斜されていて、案内板5cを設けた側の刃先部5bの位置がその反対側の端部の位置よりも低い位置となるように傾斜されている。
【0021】
前記上刃5の刃先部5bと下刃6の刃先部6bは、上刃5の刃先部5bを下降させて下刃6の刃先部6bと同等高さとした場合、若干の間隙(0.01mm以下)をあけて対向するように配置されている。即ち、下刃6の刃先部6bの若干前方位置(搬送路3に沿って若干下流側の位置)を上刃5の刃先部5bが鉛直方向に上下移動できるように上刃5が設置されている。
より詳細には、図2(a)(b)に示すように、水平に設置されている下刃6において図2(a)の右端縁の上面側(搬送路3の下流側端縁の上面側)に超硬合金チップあるいは刃物合金チップを固定して刃先部6bが構成されている。また、垂直に設置されている上刃5の本体部5aにおいて下刃6側(下端縁左側)の端縁部に刃物金属あるいは超硬合金などからなるチップを固定して刃先部5bが構成されている。上刃5において刃先部5bを形成した位置の若干上側の部分(基端側部分)に本体部5aを部分的に薄くするように凹溝型の逃げ部5cが形成されている。この逃げ部5cは、図2(b)に示すように上刃5を下降させて下刃6の刃先部6bの前方を通過させた場合、下刃6の刃先部6bが上刃5の本体部5aと擦れないように、本体部5aを部分的に摩耗することを防止するために形成されている。従って、逃げ部5cの上端位置5cは、上刃5が下端位置まで移動した場合であっても下刃6の刃先部6bが逃げ部5cの内側に存在するように形成されていることが好ましく、逃げ部5cの下端部5cは刃先部5bの若干上側に形成されていることが好ましい。
【0022】
前記下刃6の上方側であって、上刃5の側面側には、鋼材からなる中空構造のベース本体17を主体として構成されたベース19が設けられている。前記ベース本体17は、上刃5側に取付面17aを向けた一側の側壁17Aと、この側壁17Aに距離をあけて対向配置された他側の側壁17Bと、これら側壁17A、17Bの上端部に連続一体化された接続壁(上部壁)17Cと、側壁17A、17Bの下端部に連続一体化された接続壁(底部壁)17Dとからなる中空構造(略矩形管構造)とされている。また、ベース本体17の内底部側に側壁17A、17Bを貫通するようにパイプ状の補強材18が架設されている。この補強材18は、ベース本体17の幅方向(搬送路3の幅方向)に10数本〜10数本程度、等間隔に溶接により架設され、補強材18によりベース本体17が補強され、歪みが生じないように強化されている。
なお、補強材18の設置本数はベース本体17の横幅の大小に応じて必要数設けることができる。例えば、G10クラス(第10世代クラス)の大きさのガラス基板に対応するための合紙の場合、例えば、幅3mを超えるベース本体17の大きさとなるので、その場合は20数本程度、補強材18を設けることができる。
また、ベース本体17の形状は側面視矩形管に限らず、横断面井桁状や田型、♯型等の中空構造でも良く、対向する側壁とそれらを一体化する接続壁を備えた剛性の高い中空形状であれば任意の形状でよい。また、管状に限らず、ボックス型であってもよい。
【0023】
前記一側の側壁17Aの表面はフライス加工などにより平滑な平面状に加工されていて、この加工面が取付面17aとされている。この取付面17aの下部側に上下3本の対になる取付ボルト(固定具)20、21、22により上刃5が鉛直向きに取り付けられている。なお、上刃5をベース本体17の側壁17Aに取り付けるために上刃5と側壁17Aを複数の取付ボルト20、21、22が貫通するので、これらのボルト20、21、22が貫通することによりベース本体17の剛性が低下する分をこれらの補強材18が補っている。
前記ベース本体17は搬送路3の幅方向長さに対応するように形成され、図1の例ではコーナ部に若干Rを持たせた矩形管として描かれている。
【0024】
ベース本体17の側壁17Aに配置された取付面17aに沿って上刃5の上端部が沿わせられ、上刃5の上端部において上部側を貫通する取付ボルト20と、上刃5の上端部において下部側を貫通する取付ボルト21と、それらの間に介在されて上刃5を貫通する取付ボルト22により上刃5がベース本体17の取付面17aの底部側に固定されている。なお、取付ボルト20、21、22は上刃5の幅方向(搬送路3の幅方向)に沿って複数形成されている。図1では上下3つの取付ボルト20、21、22のみが描かれているが、図1の紙面垂直方向、即ち、上刃5の幅方向に複数、例えば、数10個程度の取付ボルト20、21、22が設けられている。
【0025】
前記搬送路3の幅方向両側端部の側方にそれぞれ架台11に支持されて支柱部25が立設され、これらの支柱部25の上端部に横方向に延出されたフレーム部材26を介しエアーシリンダなどのシリンダ装置(伸縮装置)27が取り付けられている。このシリンダ装置27は下向きのピストンロッド27aを上下方向に移動自在に備えていて、ピストンロッド27aの下端部に接合部材28を介し前述のベース本体17の接続壁17Cが接合されている。
シリンダ装置27がピストンロッド27aを上下移動させると、この上下移動に連動してベース本体17を上下移動させることができ、ベース本体17の取付面17aに固定されている上刃5が搬送路3に対し鉛直下向きに向いたまま上下移動する。
【0026】
前記支柱部25の上部側に水平方向に移動自在にストップピン30aを備えたストップ機構30が設けられている。このストップ機構30は小型シリンダ装置あるいはストップピン30aを水平方向に移動自在に送る送りねじ機構などを備えた直動型のアクチュエータからなる。ストップ機構30はストップピン30aの先端部を支柱25に近い位置の側壁17Aに向けて水平に取り付けられている。ストップピン30aの前方に位置する側壁17Aの一部にはストップピン30aの先端部と対向する位置にストップピン30aの先端部を挿通可能な大きさの係止孔(係止部)17eが形成されている。
【0027】
前記ストップ機構30はストップピン30aを側壁17A側に伸長させた場合にその先端部を係止孔17eに挿入してベース本体17の上下移動を阻止することができ、この挿入状態でベース本体17の下降を阻止するストッパーとして機能する。
なお、ストップ機構30について本実施形態においては係止孔17eにストップピン30aの先端部を挿入してベース本体17の下降を阻止した構成としたが、ベース本体17の下降を阻止できる構造として、ストップ機構の構成は本実施形態の構成に限らない。例えば、係止孔17eの代わりに、係止片や係止突起、係止凹部などをベース本体17に形成し、これらにストップピン30aの先端部を係合させてベース本体17の下降を阻止できる構造等、種々変更が可能である。
【0028】
前記支柱部25に近いベース本体17の端部側における側壁17Aの一部であって、前記取付ボルト20、21を設けた位置より若干上方に板状の被検知体17fが突出形成されている。なお、ベース本体17は上刃5よりも幅が大きく形成され、上刃5の端部よりも側方に突出した部分に他の部品と干渉しないように被検知体17fが取り付けられている。
また、前記支柱部25の側部に前記被検知体17fの先端位置を検出できる第1のセンサ31が設けられ、前記支柱部25において前記第1のセンサ31の下方に、前記被検知体17fの先端位置を検出できる第2のセンサ32が設けられている。
【0029】
第1の被検知体17fの取付位置高さと第1のセンサ31の取付位置高さ、第2のセンサ32の取付位置高さは、ベース19の上下移動により上下する上刃5の上端位置(上死点位置)と下端位置(下死点位置)を検出するために設けられている。例えば、図1に示すようにベース19をシリンダ装置27により一番高い位置に引き上げた場合、上刃5は刃先部5aを搬送路3の上方に所定の距離をあけて停止する。この位置が上刃5の上死点であり、上刃5がこの位置であることを第1のセンサ31が被検知体17fの位置を検出することで把握することができる。
また、シリンダ装置27によりベース19を一番下まで下降させると、上刃5の刃先部5aは搬送路3を横切って下刃6の刃先部6aより下方の位置まで下降する。この位置が上刃5の下死点であり、上刃5がこの位置であることを第2のセンサ32が被検知体17fの接近で検知する。
【0030】
前記搬送路3において搬送テーブル13の下流側には搬送テーブル15との間に幅広の間隙dが形成され、この間隙dの下側に紙葉類の送り出しのための送出装置35が設けられている。この送出装置35は案内ローラ36と補助ローラ37を有し、搬送路3の上に水平に載置された合紙9をこれらのローラ36、37で挟んでローラ36、37を回転させることで搬送路3の下流側(図1の右側に)に切断後の合紙9を送り出すことができる。なお、送出装置35は搬送路3の間隙dの下方に斜め上向きに設置されている。送出装置35は図示略の上下移動機構によりローラ36、37を上下に移動自在に設けられており、必要に応じてローラ36、37の上下位置を調整して搬送路3上の合紙9を送り出すことができるが、図1では送出装置35の上下移動機構については記載を略している。
【0031】
以上説明の切断装置1を用いて合紙9を切断するには、シリンダ装置27のピストンロッド27aを上昇させて図1に示すように上刃5を上死点位置まで上昇させ、搬送路3の上方に間隔をあけて支持しておく。
この状態において、駆動ロール8とともに供給ロール2を回転させ、供給ロール2から合紙9を必要長さ搬送路3上に引き出し、引き出した合紙9を搬送路3に沿って水平に設置する。
合紙9を必要長さ引き出した時点で合紙9の引き出しを停止し、シリンダ装置27のピストンロッド27aを下降させ、ベース本体17と上刃5を下降させる。
【0032】
ここで上刃5はその刃先部5bを下にして下刃6の刃先部6bの先端前方の間隙Dを上から下に通過するので、下刃6の刃先部6bと上刃5の刃先部5bとで合紙9を挟んで合紙9を幅方向に切断できる。上刃5が下刃6とともに合紙9を挟んで切断する際、図2(a)〜図2(b)に示すように刃先部6bの前方を合紙9を挟んで狭い間隔(0〜0.01mm程度)で刃先部5bが通過するので、上刃5の刃先部5bより上側(基端側)の側面を刃先部6bの先端が擦り付けて摩耗させるおそれがある。しかし、上刃5において刃先部5bより上側には凹溝型の逃げ部5cが形成されているので、刃先部6の先端が上刃5の側面を摩耗させるおそれが少なく、摩耗粉の発生を抑制できる。このため、切断した合紙9の上面に上刃5からの摩耗粉を落下させることがない。
なお、上述の合紙9をフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の梱包用として用いた場合、合紙9の上に摩耗粉が存在すると、ガラス基板側に摩耗粉を付着させてしまうおそれがあるが、本実施形態の切断装置1を用いて合紙9を切断することにより、摩耗粉の付着を無くすることができる。
【0033】
合紙9を上刃5と下刃6とで切断すると、シリンダ装置27がピストンロッド28を上昇させて上刃5を上端位置まで上昇させるとともに、送出装置35が案内ローラ36と補助ローラ37で合紙9を挟んで搬送路3の下流側に送るので、上刃5と下刃6の間の搬送路3が空いた状態となる。ここで、再び供給ロール2から合紙9を搬送路3に必要長さ送り出すことができ、上刃5の上述と同じ作動により合紙9を切断できる。
以上の操作の繰り返しにより合紙9を多数枚切断した場合、上刃5を支持しているベース本体17が側壁17A、17Bと接続壁17C、17Dからなる堅牢な鋼材からなる中空構造とされていて、従来の単板状のベースよりも剛性を向上させた、ベース19とされているので、ベース19が歪むおそれは少なく、上刃5の位置ずれを起こすおそれが少ない。このため、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の梱包用などのような大型の合紙9を多数切断したとしても、切断刃5、6の切れ味が鈍るおそれが少なく、切断精度が低下することもない。
また、ベース本体17はその底部を貫通している複数本の補強材18により更に強化されているので、ベース19の剛性を更に高くできており、切断精度に狂いが生じ難い切断装置1を提供できる。
【0034】
また、シリンダ装置27のピストンロッド28を上昇させてベース19を上端位置まで上昇させた場合、必要に応じてストップ機構30を動作させてストップピン30aをベース本体17の係止孔17eに挿通することにより、ベース本体17の下降を阻止できる。このため、上刃5の下降を阻止した状態とすることが確実にできるので、装置のメンテナンス時に上刃5を上昇させたまま安全にメンテナンス作業ができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の技術は、フラットパネル用ガラス基板の梱包等に用いる合紙などの紙葉類を切断できる装置に関し、フラットパネル用ガラス基板梱包用に限らず、種々の紙葉類を切断する装置一般に広く適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1…切断装置、2…供給ロール、3…搬送路、5…上刃(切断刃)、5a…本体部、5b…刃先部、5c…逃げ部、6…下刃(切断刃)、6a…本体部、6b…刃先部、7…駆動機構(昇降機構)、8…駆動ロール、9…合紙(紙葉類)、12、13、15…搬送テーブル、17…ベース本体、17A、17B…側壁、17A、17B…側壁、17a…取付面、17C、17D…接続壁、17e…係止孔(係止部)、17f、17g…被検知体、18…補強材、19…ベース、25…支柱部、27…直動装置(シリンダ装置)、28…ピストンロッド、30…ストップ機構、30a…ストップピン、31…第1のセンサ、32…第2のセンサ、35…送出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ロールから引き出したロール紙をその幅方向に沿って切断する紙葉類の切断装置であって、
引き出したロール紙を案内する搬送路と、
該搬送路に沿って移動するロール紙に対しその厚さ方向両側にロール紙を挟むように配置され、前記ロール紙より幅の広い一対の板状の切断刃と、
対向する一対の側壁およびこれら側壁を接続する接続壁とからなる中空構造をなし、前記切断刃の一方を取り付ける取付面を前記側壁の表面に有し、前記ロール紙の厚さ方向に移動自在に設けられ、前記取付面に切断刃を取り付けたベースと、
該ベースを前記ロール紙の厚さ方向に移動させて前記ベースに備えた切断刃を前記他方の切断刃の刃先前方位置のロール紙に対し押し付けて前記他方の切断刃とともにロール紙を切断するための駆動機構とを備えた紙葉類の切断装置。
【請求項2】
前記ベースが、対向する一対の側壁と両側壁を接続する接続壁とから矩形管状に形成され、前記対向する側壁間に補強材が架設された請求項1に記載の紙葉類の切断装置。
【請求項3】
前記ベースの側壁の一部に係止部が形成され、該側壁の側方に前記係止部を支持して前記ベースの移動を阻止するストップ機構が設けられた請求項1または請求項2に記載の紙葉類の切断装置。
【請求項4】
前記搬送路の近傍に支柱部が立設され、該支柱部に前記搬送路に対し接近離間自在にロッドを配置した直動装置が取り付けられ、前記ロッドの先端部に前記ベースが取り付けられて前記ベースが搬送路に対し接近離間自在に支持された請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の紙葉類の切断装置。
【請求項5】
前記ロール紙の厚さ方向に対し移動自在に設けられた一方の切断刃の刃先部より基端側に、前記他方の切断刃の刃先部との干渉を避けるための凹型の逃げ部が形成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紙葉類の切断装置。
【請求項6】
前記搬送路が前記ロール紙を水平搬送する搬送路であって、前記一方の切断刃が上刃であり、前記他方の切断刃が下刃であり、前記下刃が前記搬送路の下方に固定され、前記上刃が前記ベースの取付面に刃先部を下向きとして前記ベースとともに上下に移動自在に固定され、前記上刃の前記下刃側の内側面に前記下刃との干渉を避けるための逃げ部が形成された請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の紙葉類の切断装置。
【請求項7】
前記ベースに複数の被検知体が取り付けられ、前記ベースの近傍に前記被検知体の移動を検知して移動自在とされた前記切断刃の位置を検出するセンサが設けられた請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の紙葉類の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18104(P2013−18104A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155566(P2011−155566)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】