説明

紙葉類処理装置

【課題】 跳ね上がるような折癖が保留スペースの入出部側に形成された紙葉類であっても、確実に紙葉類の折癖を押えられる紙葉類処理装置の提供。
【解決手段】 入口部から入庫された紙葉類を保留するための保留部と、該保留部内にある紙葉類を押えるスイーパとを備え、前記保留部は、紙葉類を受ける底部材を有し、前記スイーパは、前記入口部にあって保留部に入庫する紙葉類の入庫方向にほぼ直交する方向の軸心回りに回転自在な駆動軸と、該駆動軸の軸心回りの回転に伴って、保留部に保留された紙葉類における入口部側の端部表面を前記底部材側に向けて押える押え片とを有し、該押え片は、駆動軸の外周部に配置されているとともに、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されている紙葉類処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類を取り扱うのに用いられる紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の紙葉類処理装置として、下記特許文献1に記載された技術が提案されている。従来の紙葉類処理装置は、紙幣等の紙葉類を一時的に保留するための保留スペースの入口部に、外部から搬送される紙葉類を保留スペースに入庫するとともに保留スペース内の紙葉類を外部へ向かって出庫する入出庫機構を備えている。入出庫機構は、保留スペースに保留された紙葉類を押えるスイーパ(たたき車)を備える。
【0003】
スイーパは、回転軸(回転胴部)の外周面に、周方向に離間させた押え羽根を備える。押え羽根は、折癖等により変形している紙葉類(紙幣等)を抑えるためのものであり、押え羽根は、回転軸の外周面に、回転軸の半径方向の延長上に沿って突出するよう取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、押え羽根が回転軸の半径方向の延長上に沿って突出するよう取り付けられていると、保留スペースに保留された紙葉類においてその入口部側が跳ね上がるように折癖付けられている(例えば4枚に折られた紙幣による折癖)場合では、紙葉類の入口部側が、折癖の分だけ折癖のない紙葉類に比べて奥に位置することになる。このため紙葉類の折癖の跳ね上がり高さによっては、紙葉類の入口部側の端部に押え羽根が届かず、紙葉類を押えられない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、跳ね上がるような折癖が保留スペースの入口部側に形成された紙葉類であっても、確実に紙葉類の折癖を押えられる紙葉類処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙葉類処理装置は、入口部から入庫された紙葉類を保留するための保留部と、該保留部内にある紙葉類を押えるスイーパとを備え、前記保留部は、紙葉類を受ける底部材を有し、前記スイーパは、前記入口部にあって保留部に入庫する紙葉類の入庫方向にほぼ直交する方向の軸心回りに回転自在な駆動軸と、該駆動軸の軸心回りの回転に伴って、保留部に保留された紙葉類における入口部側の端部表面を前記底部材側に向けて押える押え片とを有し、該押え片は、駆動軸の外周部に配置されているとともに、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、駆動軸の外周部に配置される押え片は、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されているから、入庫されて底部材に受けられた紙葉類の入口部側の端部に跳ね上がるような折癖があっても、保留部の入口部にある駆動軸が軸心回りに回転することで、押え片が駆動軸とともに正方向に回転し、押え片は、駆動軸の外周面に駆動軸の半径方向の延長上に沿って突出する場合に比べて、底部材に対して紙葉類の厚み方向に離れた位置から、紙葉類における入口部側の端部表面に覆い被さるようにして、紙葉類を底部材側に向けて押えることが可能であり、保留部に保留された紙葉類の折癖を押えられる。
【0009】
本発明の紙葉類処理装置では、駆動軸はその外周部に取付部を備え、押え片は前記取付部の外周部に配置され、前記駆動軸は紙葉類の入庫に伴い軸心回りに前記正方向に回転し、紙葉類の出庫に伴い、正方向とは反対の方向の逆方向に軸心回りに回転するようになっており、駆動軸の逆方向への回転に伴って、スイーパの近傍に配置された部材の表面に接触している押え片が撓むことで、該押え片は前記部材の表面を乗越える構成を採用できる。
【0010】
上記構成において、駆動軸が逆方向へ回転すると、押え片がスイーパの近傍に配置された部材の表面に接触して撓むことで該表面を乗越え、押え片は、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されているから、押え片が駆動軸の半径方向に延長して形成されている場合に比べて、駆動軸の回転を阻止するように働く阻止力を低下させられる。
【0011】
本発明の紙葉類処理装置は、保留部の入口部に配置された入出庫機構と、該入出庫機構により保留部から出庫された紙葉類を貯留する貯留部とを備え、前記入出庫機構は、複数枚の紙葉類を保留部から貯留部へ向けて出庫する際に厚みが増加する搬送経路を備え、スイーパは前記入出庫機構の一部として設けられ、前記部材は、搬送経路の厚みを増加させるのに伴って、スイーパを搬送経路から離れる厚み方向に移動させる移動用駆動軸である構成を採用できる。
【0012】
上記構成において、搬送経路の厚みが増加した状態で、保留部の入口部に配置された入出庫機構により、紙葉類は保留部から貯留部へ複数枚まとめて出庫され、スイーパは移動用駆動軸の駆動により搬送経路の厚み方向へ移動するから、押え片において、搬送経路を搬送される紙葉類に接触する量(面積)が、スイーパを移動させた分だけ小さくなり、その分だけ、駆動軸の回転を阻止するように働く阻止力を低下させられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紙葉類処理装置では、スイーパは保留部の入口部にあって、スイーパの押え片は、駆動軸の外周部に配置されているとともに、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されているから、押え片は、駆動軸の外周面に駆動軸の半径方向の延長上に沿って突出する場合に比べて、底部材に対して紙葉類の厚み方向に離れた位置から紙葉類における入口部側の端部表面を底部材側に向けて押えることが可能であり、したがって、保留部の底部材で受けられた紙葉類をその入口部側の端部において底部材側に向けて押えて、保留部に保留された紙葉類の折癖を確実に押えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置の内部構造を表した全体概略図である。
【図2】同紙葉類処理装置の複数の金庫のうちの一つを表した全体概略図である。
【図3】同紙葉類処理装置の複数の金庫のうちの一つの下部ユニットを実線で表し、保留プレートが下方位置にある入庫状態の側面図である。
【図4】同紙葉類処理装置の複数の金庫のうちの一つの下部ユニットを実線で表し、保留プレートが回動して上方位置にある出庫状態の側面図である。
【図5】同紙葉類処理装置の複数の金庫のうちの一つの下部ユニットを表した上方からの斜視図である。
【図6】同紙葉類処理装置の複数の金庫のうちの一つの下部ユニットの、下部ローラユニットの一部を表した平面図である。
【図7】同紙葉類処理装置の一次側スイーパの羽根が駆動軸の周面に接触して撓んだ状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置を、図1ないし図7に基づいて説明する。本実施形態に係る紙葉類処理装置は、紙葉類としての紙幣Pを集積し、払出す装置である。
【0016】
図1に示すように、紙葉類処理装置1は、筐体2を備えている。筐体2は内部を収納空間3とした直方体形状に形成されている。筐体2内に日本銀行券である紙幣Pを挿入するための一括挿入口4が、筐体2の上部一側に形成されている。一括挿入口4は、何れの種類の紙幣P(1万円、5千円、千円)であるかを問わずに挿入される開口である。
【0017】
筐体2の収納空間3において、一括挿入口4に対応する位置に、挿入口部5が配置されている。挿入口部5は、上下に配置した無端ベルト6,6を備えている。一括挿入口4から挿入された紙幣Pは、無端ベルト6,6の間に挟持され、無端ベルト6,6の駆動により、下流側へ搬送される。
【0018】
挿入口部5の下流側(この場合、後方)に、紙幣識別部7が配置されている。紙幣識別部7は、紙幣Pの種類を特定する機能を備える。紙幣識別部7の下流側(この場合、下方)に、紙幣Pの搬送路8が配置されている。搬送路8のさらに下流側に、紙幣識別部7で識別された紙幣Pごとの収納場所である金庫10A,10B,10Cが別個に配置されている。これら金庫10A,10B,10Cは、順に千円紙幣、五千円紙幣、一万円紙幣の各紙幣に用いられる金庫である。なお、図2は、複数の金庫10A,10B,10Cのうちの一つの金庫(例えば、千円紙幣用の金庫10A)の構成を表している。
【0019】
図2に示すように、金庫10A(他の金庫も同等)は、一次側収納部(保留部に相当する)12と、二次側収納部(貯留部に相当する)13と、金庫10Aの一次側収納部12の一次側入口部E1に配置された入出庫機構と、二次側入口部E2に配置された入出庫機構とから構成されている。そして、金庫10Aにおける両入出庫機構は、タイミングベルト等の適宜の連結手段によって同期駆動するよう構成されている。さらに、図示しないが、各金庫10A,10B,10Cの入出庫機構のそれぞれは、タイミングベルト等の適宜の連結手段によって同期駆動するよう構成されている。
【0020】
なお、入金された紙幣Pが識別されて該紙幣Pが所定の金庫10A(10B,10C)に入庫されるまでは、連結手段による各金庫10A,10B,10Cの入出庫機構は同期駆動するが、紙幣Pが所定の金庫10Aに入庫される時点では、他の金庫10B,10Cにおける入出庫機構との連結は断たれて金庫10Aの入出庫機構のみが駆動する。
【0021】
図2および図3に示すように、一次側収納部12は、下部ユニット121と上部ユニット122との組み合わせから構成されている。同図に示すように、下部ユニット121は、下部ユニットフレーム15と、保留プレート(本発明の底部材に相当する)16と、下部ローラユニット17と、下部排出ローラ18とを具備する。
【0022】
図2ないし図5に示すように、下部ユニットフレーム15は、幅方向の各端部に、鉛直方向に沿う対向片14を具備している。対向片14に支軸14aが渡されている。保留プレート16は、平面視して略矩形に形成されている。保留プレート16の一端部(奥部)側に、下方に延びる被支持片16aが形成されている。各被支持片16aは支軸14aに回動自在に支持されている。したがって、保留プレート16の他端部は自由端とされている。保留プレート16の他端部側の幅方向各端部に、下方に延びる保持片16bが形成されている。
【0023】
両保持片16bに排出ローラ軸19が渡されている。保留プレート16において、支軸14aと排出ローラ軸19の間で、保留プレート16の幅方向両側端部に、下方に延長された受圧部14bが形成されている。各受圧部14bは、下方隣接位置に配置され二次側収納部13(貯留部に相当する)内に配置されたフォークFの上下動(矢印方向UD)の動きに付勢される。
【0024】
下部排出ローラ18は、排出ローラ軸19の幅方向各端部側に回転自在に支持されている。各下部排出ローラ18の外周部は、保留プレート16の表面から露出している。
【0025】
下部ローラユニット17は、前記入出庫機構の構成要素のうちの、下部入出庫機構部である。下部ローラユニット17は、引込ローラ軸171aに支持された一次側下部引込ローラ171と、投入ローラ軸(駆動軸に相当する)172aに支持された一次側下部投入ローラ172と、投入ローラ軸172aに支持された一次側スイーパ(「たたき車」とも称する)173と、移動用駆動軸174とを備える。
【0026】
引込ローラ軸171a、投入ローラ軸172aおよび移動用駆動軸174は水平方向に配置され、且つ互いに平行に配置されている。しかもこれらの軸心は、略同高さに設定されている。これらの軸は、金庫10Aの一次側入口部E1において、引込ローラ軸171a、移動用駆動軸174、および投入ローラ軸172aの順に一端部(奥部)側に位置するよう配置されている。そしてこれらの軸は、金庫10Aの一次側入口部E1において、何れも下部ローラユニット17の側壁17aに軸心回りに回転自在に支持されている。
【0027】
一次側下部引込ローラ171は、引込ローラ軸171aに外嵌固定されている。一次側下部引込ローラ171は、引込ローラ軸171aにその軸方向に離間して複数(本実施形態では、2つ)配置されている。引込ローラ軸171aには、一次側下部引込ローラ171の他に、伝達ギアローラ(符号省略)が外嵌固定されている。
【0028】
一次側下部投入ローラ172は、投入ローラ軸(本発明の駆動軸に相当する)172aに外嵌固定さている。一次側下部投入ローラ172は、投入ローラ軸172aの軸方向に離間して複数(本実施形態では2つ)配置されている。投入ローラ軸172aには、一次側下部投入ローラ172の他に、伝達ギアローラ(符号省略)、複数(本実施形態では2つ)の一次側スイーパ173が外嵌固定されている。
【0029】
図5に示すように、各一次側スイーパ173は、一次側下部投入ローラ172,172間に配置されている。図7等に示すように、各一次側スイーパ173は、回転胴部1731と、可撓性のある羽根1732とを備える。回転胴部1731は環状に形成され、投入ローラ軸172aに外嵌固定されている。つまり、投入ローラ軸172aが軸心回りに回転することで回転胴部1731も軸心回りに回転する。羽根1732は回転胴部1731に一体的に形成されている。羽根1732は、回転胴部1731の外周部(外周面)に周方向に等間隔で複数、図では8つ配置されている。
【0030】
各羽根1732は、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して傾斜している。各羽根1732は、可撓性に富んだ合成ゴムから板状に形成されている。また各羽根1732の全体が、半径方向に沿う方向に対して傾斜している。具体的には、各羽根1732は、半径方向に沿う方向に対して回転胴部1731の接線方向に向かうよう傾斜している。換言すれば、各羽根1732は、回転胴部1731(投入ローラ軸172a)の外周部に配置されているとともに、紙幣Pを入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されている。紙幣Pの端部表面側とは、保留スペース20に保留された紙幣Pにおいて、金庫10Aの一次側入口部E1側の端部の表面(上面)である。
【0031】
各羽根1732は押え片に相当して、紙幣Pの端部表面側を押えるものである。このため、各羽根1732の回転胴部1731から先端までの長さ(基端から先端までの長さ)は、紙幣Pの端部表面側を押えられる長さに設定されている。
【0032】
移動用駆動軸174は、投入ローラ軸172aを所定方向に移動させる機能を有する。すなわち図5および図6に示すように、移動用駆動軸174と投入ローラ軸172aとを連動させる連動手段22が設けられている。連動手段22は、移動用駆動軸174の軸心回りの回転駆動にともなって、投入ローラ軸172aを移動させる。ここで所定方向とは、後述する一次側搬送経路23から、その厚み方向に離れる方向である。
【0033】
連動手段22は、アーム部材221と、下部ローラユニット17の側壁17aに形成された案内凹部222とを有する。アーム部材221はプレート状に形成され、一端側が移動用駆動軸174の軸心方向途中に外嵌固定され、他端側が投入ローラ軸172aの軸心方向途中に回動自在に外嵌されている。このようなアーム部材221は軸心方向に離間して配置されている。案内凹部222は、側壁17aの一部を切欠いて、移動用駆動軸174の軸心を中心とした円弧状に形成されている。
【0034】
図3および図4に示すように、上部ユニット122は、下部ユニット121の上方を覆う位置に配設される。上部ユニット122は、上部ユニットフレーム20と、一次側下部引込ローラ171に対応する位置に配設される一次側上部引込ローラ1221と、一次側下部投入ローラ172に対応する位置に配設される一次側上部投入ローラ1222と、下部排出ローラ18の対応位置に配置される一次側上部排出ローラ1223とを備える。一次側上部引込ローラ1221および一次側上部投入ローラ1222は、前記入出庫機構を構成する上部入出庫機構部である。
【0035】
一次側上部引込ローラ1221、一次側上部投入ローラ1222および一次側上部排出ローラ1223、一次側下部引込ローラ171、一次側下部投入ローラ172および下部排出ローラ18は、それぞれタイミングベルト等の適宜の手段によって同期駆動可能に構成されている。
【0036】
下部ユニット121と上部ユニット122とを組み合わせた状態で、下部ユニット121の保留プレート16の上側と上部ユニット122の間に形成される空間は保留スペース20となる。また、下部ユニット121と上部ユニット122とを組み合わせた状態で、一次側下部引込ローラ171と一次側上部引込ローラ1221との噛合い部分、および一次側下部投入ローラ172と一次側上部投入ローラ1222との噛合い部分を含めた一次側入口部E1の搬送方向領域が、一次側搬送経路23とされる。
【0037】
二次側収納部13は、図2および図3に示すように、一次側収納部12に保留された紙幣Pを搬送して貯留する部分である。二次側収納部13の一部の部材は、一次側収納部12を構成する下部ローラユニット17に組み込まれている。
【0038】
具体的に、下部ローラユニット17には、一次側下部引込ローラ171、その直下に且つ非接触に配置された二次側上部引込ローラ24、一次側下部引込ローラ171の奥側に配置された一次側下部投入ローラ172、その直下に且つ非接触に配置された二次側上部投入ローラ25、一次側下部投入ローラ172と同軸に設けられた一次側スイーパ173、二次側上部投入ローラ25に同軸に設けられた二次側スイーパ26、二次側上部排出ローラ31を備える。
【0039】
これら二次側上部引込ローラ24、二次側上部投入ローラ25、二次側スイーパ26、二次側上部排出ローラ31は、下部ローラユニット17に組み込まれていて、しかも二次側収納部13の入出庫機構の一部を構成している。
【0040】
二次側上部引込ローラ24は、引込ローラ軸171aと平行で引込ローラ軸171aの直下に配置された引込ローラ軸24aに外嵌固定されている。引込ローラ軸24aは、下部ローラユニット17の側壁17aに組み込まれている。二次側上部投入ローラ25は、投入ローラ軸172aと平行で投入ローラ軸172aの直下に配置された投入ローラ軸25aに外嵌固定されている。二次側スイーパ26は、投入ローラ軸25aと一体に回転するよう投入ローラ軸25aに取付けられている。二次側スイーパ26は、一次側スイーパ173の下方で軸心方向に位置ずれして配置されている。
【0041】
なお、二次側スイーパ26は羽根261を備え、羽根261は投入ローラ軸25aの外周部に、周方向に等間隔で配置されている。また、各羽根261は、投入ローラ軸25aの径方向の延長に沿う方向に延長されている。二次側上部排出ローラ31は、二次側収納部13に収納された紙幣Pを筐体2の外部へ向けて二次側収納部13から一枚ずつ、出金するためのものである。二次側上部排出ローラ31は、二次側上部投入ローラ25(二次側スイーパ26)よりもさらに奥側に配置されて、排出ローラ軸31aに外嵌固定されている。引込ローラ軸24a、投入ローラ軸25a、排出ローラ軸31aは下部ローラユニット17の側壁17aの下部に、略同一高さに並べて組み込まれている。
【0042】
二次側収納部13は、二次側上部引込ローラ24の直下に配置された二次側下部引込ローラ27を備える。また、二次側収納部13は、二次側上部投入ローラ25の直下に配置された二次側下部投入ローラ28を備える。二次側下部引込ローラ27、二次側下部投入ローラ28は、不図示のユニットの構成部品の一部である。そして、二次側上部引込ローラ24と二次側下部引込ローラ27の噛合い部分、二次側上部投入ローラ25と二次側下部投入ローラ28の噛合い部分を含めた二次側入口部E2の搬送方向領域が、二次側搬送経路29とされる。二次側搬送経路29の後方に、前記フォークFが配置されている。二次側収納部13は、貯留スペース30を有する。貯留スペース30はフォークFと一次側収納部12の間の領域で設定される。貯留スペース30の高さ(深さ)は、フォークFの上下動(矢印方向UD)の動きにより調節される。
【0043】
紙葉類処理装置1において、紙幣Pが一括挿入口4から挿入されると、その紙幣Pは挿入口部5の駆動により下流側へ搬送される。この場合、紙幣Pの種類がまだ検出されていないから、各金庫10A,10B,10Cの各入出庫機構は、連結機構によって同期駆動される。下流側に搬送された紙幣Pは、その種類を紙幣識別部7によって特定される。種類を特定された紙幣Pが千円札であれば、その紙幣Pは搬送路8を移動して、例えば金庫10Aに向けて搬送される。金庫10Aに向けて搬送された紙幣Pは、金庫10Aの入出庫機構の駆動により、金庫10Aの一次側収納部12に入庫される。
【0044】
搬送路8から金庫10Aの一次側入口部E1へ向けて搬送された紙幣Pは、一次側下部引込ローラ171の時計方向への回転、および一次側上部引込ローラ1221の反時計方向への回転により、一次側下部投入ローラ172および一次側上部投入ローラ1222の間の一次側搬送経路23に引き込まれる。一次側下部投入ローラ172は時計方向へ回転しており、一次側上部引込ローラ1221は反時計方向に回転している。
【0045】
一次側収納部12において、紙幣Pを入庫するよう一次側の入出庫機構において入出庫機構の各ローラが回転する方向を正方向の回転方向としている。
【0046】
一次側搬送経路23の高さ方向の厚みは、一枚の紙幣Pが通過可能であれば充分である。あるいは、一次側下部引込ローラ171および一次側上部引込ローラ1221の外周部を紙幣Pの厚み方向にオーバーラップさせ、一次側下部投入ローラ172および一次側上部投入ローラ1222の外周部を紙幣Pの厚み方向にオーバーラップさせるようにしてもよい。この場合では、紙幣Pは、一次側下部引込ローラ171および一次側上部引込ローラ1221、さらに一次側下部投入ローラ172および一次側上部投入ローラ1222によりニップされて、保留スペース20へ向けて投入される。
【0047】
なお、一括挿入口4からの紙幣Pの投入時には、保留プレート16は、図4→図3のように、支軸14a回りに回動することで、一次側下部投入ローラ172から離れた退避位置(図3参照)に移動して、保留スペース20が拡開されている。そして紙幣Pは、略水平な姿勢を保持している保留プレート16に、順次重なるように載せられ、一次側収納部12の保留スペース20に、一枚ずつ保留される。
【0048】
また、一次側下部投入ローラ172とともに一次側スイーパ173が軸心回りに回転する。一次側スイーパ173において、羽根1732は回転胴部1731に一体的に形成されているから、羽根1732は回転胴部1731とともにその同方向に回転する。
【0049】
そして各羽根1732の全体は、可撓性に富んだ合成ゴムから板状に形成されている。また、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して回転胴部1731の接線方向に向かうよう傾斜(各羽根1732は、回転胴部1731の外周部に配置されているとともに、紙幣Pを入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜)している。
【0050】
このため、各羽根1732を回転胴部1731の外周面に半径方向の延長上に沿って突出させた場合に比べて、各羽根1732は、保留プレート16に対して紙幣Pの厚み方向に離れた位置から、保留スペース20に保留される紙幣Pの端部(一次側入口部E1の端部)表面側に覆い被さるようにして、紙幣Pを保留プレート16側に向けて押えることができる。
【0051】
したがって、仮に保留スペース20に保留された紙幣Pに折癖が形成されていて、該折癖が端部側で跳ね上がっている形状であっても、羽根1732が回転胴部1731回りに回転(下方への移動)することによって、紙幣Pの端部表面側は、上方から下方に向けて押えられる。このようにして紙幣Pの端部表面側が羽根1732によって保留プレート16に向けて押えられれば、順次保留スペース20に送られてくる紙幣Pの搬送方向下流側の端部(先端部)が、すでに保留スペース20に保留されている紙幣Pの端部(一次側入口部E1の端部側である後端部)に当たらない。
【0052】
すなわち、次に入庫される紙幣Pの、搬送方向下流側の端部が、すでに保留スペース20に保留されている紙幣Pの端部に当って入庫できないという紙幣詰まり現象(ジャム)を防止できる。そして、一括挿入口4に挿入された紙幣P(例えば千円札)は、一次側スイーパ173の回転とともに保留スペース20に保留され、一次側スイーパ173の羽根1732によって、紙幣Pの端部表面側が、保留プレート16に向けて押えられる(断続的に叩かれる)。
【0053】
一次側収納部12は、所定枚数(例えば20枚)の紙幣Pを保留スペース20に保留可能である。紙幣Pが保留スペース20に順次保留されると、その分だけ羽根1732における紙幣Pの押え位置が高くなる。しかしながら、羽根1732は、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して回転胴部1731の接線方向に向かうよう傾斜している。このため、紙幣Pの押え位置が高くなったとしても、紙幣Pの押え位置が低い場合(保留スペース20内の紙幣Pの枚数が少ない場合)と同様に、紙幣Pの端部を確実に押えられる。
【0054】
所定枚数の紙幣Pが保留スペース20に保留されたことを、図示しない検出器が検出すると、次には、該所定枚数の紙幣Pがまとめて保留スペース20から出金され、二次側収納部13に向けて排出される。
【0055】
保留プレート16は、紙幣Pの排出時に、図3→図4のように支軸14a回りに回動することで、一次側入口部E1端部(回動端近傍)が一次側下部投入ローラ172に近付いて、下部排出ローラ18等による紙幣Pの排出を可能な排出位置に移動し、保留プレート16上の紙幣Pの排出動作を補助するよう作動する。この場合における、保留プレート16の一次側入口部E1端部の高さ位置は、一次側搬送経路23と略一致する高さである。
【0056】
また、下部ローラユニット17においては、移動用駆動軸174が軸心回りに回動(時計方向に回動)し、アーム部材221が移動用駆動軸174の回転に従動し、アーム部材221に支持されている投入ローラ軸172aが下方へ移動する。すなわち、投入ローラ軸172aに取付けられている一次側スイーパ173も下方へ移動する。下方とは、すなわち羽根1732が、紙幣Pの入庫時における一次側搬送経路23から離れる方向である。投入ローラ軸172aが下方へ移動すると、これに支持されている一次側下部投入ローラ172も下がる。また、一次側下部引込ローラ171および一次側上部引込ローラ1221において、一次側下部引込ローラ171が不図示の接近離間機構により、一次側上部引込ローラ1221から離間する。
【0057】
このように、一次側下部投入ローラ172、一次側下部引込ローラ171が下方に位置ずれすることで、その分だけ一次側搬送経路23の厚み(上下方向の厚み)が広げられ、所定枚数(例えば20枚)の紙幣Pをまとめて二次側入口部E2へ向けて出庫(搬送)することが可能になる。
【0058】
また、一次側収納部12(保留スペース20)から所定枚数の紙幣Pが二次側入口部E2に向けて搬送される際は、一次側下部投入ローラ172、一次側上部投入ローラ1222、一次側下部引込ローラ171、一次側上部引込ローラ1221は、紙幣Pの入庫時とは逆方向に回転する。
【0059】
そして、所定枚数の紙幣Pは、二次側上部引込ローラ24と二次側下部引込ローラ27の回転、二次側上部投入ローラ25、二次側下部投入ローラ28の回転により、二次側収納部13に入庫される。紙幣Pは、二次側収納部13に入庫されると、二次側スイーパ26の回転により、その羽根261によって上方から下方(フォークF)に向けて押えられる。
【0060】
二次側収納部13に所定枚数だけ載置された紙幣Pは、二次側上部排出ローラ31の回転により、二次側搬送経路29へ戻され、筐体2における出金方向へ送られる。このとき、載置された紙幣Pを上から1枚ずつ捌くために、二次側上部排出ローラ31には大きな回転トルクが働く。また、上述したように金庫10Aは、一次側収納部12の一次側入口部E1に備えた入出庫機構と、二次側入口部E2に配置された入出庫機構とを備え、両入出庫機構は、タイミングベルト等の適宜の手段によって同期駆動するよう構成されている。このため、二次側収納部13から紙幣Pが出金される場合では、一次側スイーパ173は逆方向に回転している。そして、一次側スイーパ173は回転することで、羽根1732がその近傍にある移動用駆動軸174の外周面(表面)に接触する。
【0061】
しかしながら、各羽根1732の全体は、可撓性に富んだ合成ゴムから板状に形成され、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して回転胴部1731の接線方向に向かうよう傾斜している。そして、上述したように、入金された紙幣Pが決定して該紙幣Pが所定の金庫10Aに入庫されるまでは、連結手段による各金庫10A,10B,10Cの入出庫機構は同期駆動するが、紙幣Pが検出されて所定の金庫10Aに入庫される時点では、他の金庫10B,10Cにおける入出庫機構との連結は断たれて金庫10Aの入出庫機構のみが駆動する。このため、入金時において入出庫機構を駆動させるのに必要な駆動力は、出金時における駆動力に比べて充分に小さくて済む。
【0062】
そして、図7(a)〜(d)に示すように、一次側スイーパ173が回転して、羽根1732はその近傍にある移動用駆動軸174の外周面に接触するが、各羽根1732の全体は、可撓性に富んだ合成ゴムから板状に形成され、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して回転胴部1731の接線方向に向かうよう傾斜している。このため、各羽根1732は移動用駆動軸174の外周面に接触しても容易に撓み易く、羽根1732は移動用駆動軸174の表面を、極めて小さい抵抗で乗越えることができ、金庫10Aの入出庫機構(投入ローラ軸172a)に働く負荷の上昇を抑えることができる。
【0063】
一次側スイーパ173の羽根1732が、移動用駆動軸174の外周面にのみ接触する場合に限らず、一次側上部投入ローラ1222の図示しない支軸にも接触する場合、あるいは紙幣Pに接触する場合等、一次側スイーパ173の近傍にある部材や紙幣Pに接触する場合であっても同様である。この場合でも、回転胴部1731に対して羽根1732が傾斜していることで、投入ローラ軸172aに働く負荷が大きくなるのを抑えられる。
【0064】
本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、羽根1732は全体を回転胴部1731の径方向に対して傾斜させたが、この構成に限定されない。羽根1732は、回転胴部1731の半径方向に沿う方向に対して、逆方向への傾斜を有さず正方向へ傾斜した部分を備えることを条件とする。
【0065】
例えば、一次側スイーパ173の羽根1732は、長さ方向途中までを回転胴部1731の外周面から回転胴部1731の径方向に沿うようにし、長さ方向途中から所定角度で回転胴部1731に向けて傾斜するよう傾斜させる構成でもよい。あるいは羽根1732は、回転胴部1731に取付けた基端部から回転胴部1731に向けて全体が湾曲した形状であってもよい。また、上記実施形態では、羽根1732は回転胴部1731の外周面に合計八個設けたが、それ以上でもいいし、場合によっては一個あるいは二個以上であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、駆動軸は投入ローラ軸172aとし、一次側スイーパ173は投入ローラ軸172aと、これに外嵌固定された回転胴部1731と、これに固定された羽根1732から構成した。しかしながら、駆動軸を紙幣Pの入庫方向に離間させて一対で配置し、各駆動軸にローラを外嵌固定し、両ローラにエンドレスベルトを巻回し、このエンドレスベルトに、上記各実施形態の羽根を取付ける構成とすることも可能である。
【0067】
上記実施形態では、紙葉類の一例として紙幣を挙げたが、紙幣のほかに紙製の有価証券(折癖が形成され易い紙類)であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…紙葉類処理装置、2…筐体、4…一括挿入口、5…挿入口部、7…紙幣識別部、8…搬送路、10A,10B,10C…金庫、12…一次側収納部、13…二次側収納部、14b…受圧部、15…下部ユニットフレーム、16…保留プレート、17…下部ローラユニット、17a…側壁、20…保留スペース、22…連動手段、23…一次側搬送経路、29…二次側搬送経路、30…貯留スペース、121…下部ユニット、122…上部ユニット、171…一次側下部引込ローラ、171a…引込ローラ軸、172…一次側下部投入ローラ、172a…投入ローラ軸、173…一次側スイーパ、174…移動用駆動軸、221…アーム部材、222…案内凹部、261…羽根、1221…一次側上部引込ローラ、1222…一次側上部投入ローラ、1223…一次側上部排出ローラ、1731…回転胴部、1732…羽根、E1…一次側入口部、E2…二次側入口部、P…紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部から入庫された紙葉類を保留するための保留部と、該保留部内にある紙葉類を押えるスイーパとを備え、
前記保留部は、紙葉類を受ける底部材を有し、
前記スイーパは、前記入口部にあって保留部に入庫する紙葉類の入庫方向にほぼ直交する方向の軸心回りに回転自在な駆動軸と、該駆動軸の軸心回りの回転に伴って、保留部に保留された紙葉類における入口部側の端部表面を前記底部材側に向けて押える押え片とを有し、
該押え片は、駆動軸の外周部に配置されているとともに、紙葉類を入庫方向に導入する正方向の回転方向である前方側に傾斜されていることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
駆動軸はその外周部に取付部を備え、押え片は前記取付部の外周部に配置され、前記駆動軸は紙葉類の入庫に伴い軸心回りに前記正方向に回転し、紙葉類の出庫に伴い、正方向とは反対の方向の逆方向に軸心回りに回転するようになっており、
駆動軸の逆方向への回転に伴って、スイーパの近傍に配置された部材の表面に接触している押え片が撓むことで、該押え片は前記部材の表面を乗越えることを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
保留部の入口部に配置された入出庫機構と、該入出庫機構により保留部から出庫された紙葉類を貯留する貯留部とを備え、
前記入出庫機構は、複数枚の紙葉類を保留部から貯留部へ向けて出庫する際に厚みが増加する搬送経路を備え、
スイーパは前記入出庫機構の一部として設けられ、
前記部材は、搬送経路の厚みを増加させるのに伴って、スイーパを搬送経路から離れる厚み方向に移動させる移動用駆動軸であることを特徴とする請求項2記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107737(P2013−107737A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253899(P2011−253899)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】