紙葉類繰り出し方式
【目的】 繰り出し制御のセンサ数を減少させる。
【構成】 繰り出しローラF、Pにより、紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す。そして、この繰り出した紙幣を、搬送ローラRにより、搬送路に沿って搬送させる。この場合、繰り出し制御手段Cは、搬送路上の所定箇所に設けられたセンサによる紙幣の先端の検出時に繰り出しローラPを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラRにより搬送させる。その後、繰り出し制御手段Cは、当該センサによる紙幣の後端の検出時に繰り出しローラPを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始する。そして、これらの手順を繰り返して、単一のセンサのみにより紙幣の走行を検出しつつ、搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる。
【構成】 繰り出しローラF、Pにより、紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す。そして、この繰り出した紙幣を、搬送ローラRにより、搬送路に沿って搬送させる。この場合、繰り出し制御手段Cは、搬送路上の所定箇所に設けられたセンサによる紙幣の先端の検出時に繰り出しローラPを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラRにより搬送させる。その後、繰り出し制御手段Cは、当該センサによる紙幣の後端の検出時に繰り出しローラPを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始する。そして、これらの手順を繰り返して、単一のセンサのみにより紙幣の走行を検出しつつ、搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銀行等の金融機関で利用される現金自動取引装置に内蔵され、紙幣を計数管理する装置における紙葉類繰り出し方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】銀行などの金融機関において、銀行のキャッシュカードを持つ利用客がカードで現金を取引する現金自動取引装置が広く普及している。このような現金自動取引装置に組み込まれている紙幣入出金装置には、入金された紙幣を自動的に出金紙幣に循環させる循環式のものが存在する。これは、機器内部に死蔵する現金をできるだけ少なくして資金効率を向上させるものであり、近年広く普及している方式である。この方式の装置では、万円券、千円券等の金種別に種分けしたスタッカを内蔵するとともに、これらのスタッカから、単一の補充回収スタッカヘ紙幣の繰出し及び回収を行なう。そして、オペレータは、この補充回収スタッカのみを取扱うようにしている。
【0003】即ち、近年では、装置への現金の繰填、補充、あるいは回収を行なう際の利便性を向上させるため、1つの補充回収カセットに補充すべき紙幣を繰填し、その補充回収カセットを装置本体にセットするようにしている。これにより、機器内部へ自動的に紙幣を取り込み、あるいは機器内部に収納されている紙幣の一部、あるいは全部を直接係員の手で回収せず、自動的に補充回収カセットに一旦回収するようにしている。
【0004】これは、係員が機器内部に分散する複数の紙幣収納部へそれぞれ繰填したり、回収したりすることの煩雑さからの解放や、係員が直接現金を取り扱うことによる保安上の不安からの解放を目的としたものである。即ち、係員は、直接現金に手を触れることなく鍵付の補充回収カセットを操作することで装置に現金を繰填、補充、あるいは回収を行なうことができるようにしたものである。
【0005】ところで、機器内部に収納する紙幣は、支払を高速に行なうため、一般に金種別に分けて集積して収納し、支払に備えるようにしている。支払の要望が来たときは、この金種別に積み上げられた紙幣から1枚ずつ繰出し、所望の枚数支払うようにしている。入金の場合は、投入された紙幣が1枚ずつ機器内部へ取り込まれ、真偽、金種等が鑑別された後、金種別に、前記収納部へそれぞれ集積収納されるようになっている。このようにして集積収納された紙幣は、1枚ずつ繰り出して入出金処理される。
【0006】ところが、1枚ずつに分離された紙幣は、連続的に搬送されるわけではない。例えば、繰出された紙幣の中に偽券を検出した場合、これを排除するために、その偽券のみを弁別する必要が生じる。また、万円券や千円券の混在した紙幣を金種別に切り分ける必要がある。この場合、通常は、送られてくる紙幣を搬送路に設けた切替弁で弁別する。従って、繰出す紙幣は、弁が動作するに充分な間隔を空けて順次繰出すようにしている。これにより、任意の紙幣を弁別処理することを可能としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術には、次のような問題があった。即ち、上述した装置では、複数のスタッカに対し、それぞれ紙幣の繰り出し機構を備える必要がある。つまり、万円券、千円券を格納するスタッカの他に、補充回収スタッカにも繰り出し機構が必要となる。従って、機器の小型化・簡素化のために紙幣分離機構の小型化・簡素化が重要となっていた。
【0008】本発明は、以上の点に着目してなされたもので、走行検出用のセンサの数を減少させ、単一のセンサのみとし、装置の小型化を図るようにした紙葉類繰り出し方式を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の紙葉類繰り出し方式は、紙幣を集積した紙幣集積部と、当該紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す繰り出しローラと、当該繰り出しローラにより繰り出した紙幣を搬送路に沿って搬送する搬送ローラと、当該搬送路上の所定箇所に設けられ、紙幣の搬送方向の先端と後端とを検出するセンサと、当該センサによる紙幣の先端の検出時に前記繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させ、当該センサによる紙幣の後端の検出時に前記繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始し、これらの手順を繰り返して搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる繰り出し制御手段とから成ることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】本発明の紙葉類繰り出し方式においては、繰り出しローラにより、紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す。そして、この繰り出した紙幣を、搬送ローラにより、搬送路に沿って搬送させる。この場合、繰り出し制御手段は、搬送路上の所定箇所に設けられたセンサによる紙幣の先端の検出時に繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させる。その後、繰り出し制御手段は、当該センサによる紙幣の後端の検出時に繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始する。そして、これらの手順を繰り返して、単一のセンサのみにより紙幣の走行を検出しつつ、搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。銀行等に設置される現金自動取引装置には、内部に堆積した紙幣を繰り出すための分離機構が各所定箇所に設けられている。まず、これらの分離機構について説明する。図1は、本発明に係る紙幣分離機構の概要の説明図である。図示の装置は、繰り出しローラと、繰り出し制御手段とを備えている。繰り出しローラは、ピッカローラPと、フィードローラFとから成る。これらの繰り出しローラは、全周がウレタンゴム等の高摩擦部材により構成されている。
【0012】ピッカローラPは、紙幣押えW上に堆積された紙幣の一方の表面に接するように配置されている。そして、このピッカローラPは、周速V1 で図示の矢印方向へ回転し、紙幣を紙幣集積部25の最上層から1枚ずつ繰り出す。紙幣集積部25は、スタッカ内の紙幣が積み重った部分である。フィードローラFは、ピッカローラPに従い、周速V1 で矢印方向へ回転し、ピッカローラPによって送り出される紙幣を更に前方(図中左方向)へと送り出す。このとき、最上層から繰り出される紙幣に伴なって2枚目以降の紙幣が連れ出されてしまうのを防止するため、紙幣1枚のみが通過可能な僅かなギャップを空けて、フィードローラに対向したゲートローラGを設けている。このゲートローラGは、2枚目以降の紙幣の繰り出しを阻止するとともに、更にそれを貯留部へ戻すように逆方向にV1 よりずっと遅い周速V3 でゆっくりと回転される。
【0013】また、ピッカローラPから紙幣の進行方向前方に、距離L2 離間して搬送ローラRの対が設けられている。これらの搬送ローラRは、フィードローラFから送られてくる紙幣を挟持してV1 より高速の速度V2 で更に前方へと送り出すようにされる。フィードローラFの軸には、モータMが連結され、当該モータMのオンオフ制御に従い、フィードローラFは回転制御される。ピッカローラPは、このフィードローラFの軸にギアあるいはベルト(図示省略)などで連結されており、フィードローラFと共に回転制御される。
【0014】また、フィードローラF及びピッカローラPの軸にはそれぞれ独立にワンウェイベアリングが組み込まれ、外部より矢印方向(進行方向)へ回転力を加えると自由に回転する構造となっている。ところで、ピッカローラPと搬送ローラRとの距離L2は、繰り出す紙幣の進行方向長L1とほぼ同じかL1+a(aは、若干の距離)に設定されている。そして、ゲートローラGの前方に距離L4離間して紙幣端を検出するセンサが配置されている。搬送路の途中には、走行中の紙幣を弁別するための切換弁が設けられる(図3参照)。この切換弁は、ゲートローラGと搬送ローラRとの間の距離に相当する大きさの領域を占有する。従って、ゲートローラGと搬送ローラR付近の第1センサとの距離L4は、この切換弁が動作するのに充分な距離に設定される。
【0015】次に、このように構成された分離機構の動作について述べる。図2は、本発明による繰り出し制御手順を説明するフローチャートであり、図3は、紙幣の搬送状態の説明図である。堆積された紙幣を繰り出すときは、図1に示す紙幣押えWを紙幣ごと図中上方へ押し上げ(ステップS1)、図示のようにピッカローラPの表面に堆積紙幣の上面が接する位置に持ち上げる。その後、モータMによってピッカローラPを図中矢印方向に駆動する(ステップS2)。すると、堆積した紙幣の最上部のピッカローラPに接している1枚が、当該ピッカローラPの回転に従い、フィードローラF側へと繰り出される。そして、繰り出された紙幣は、ゲートローラGとの僅かな間隙を通過し、更にその通過した紙幣の先端は、搬送ローラRへと進む。
【0016】分離機構により繰り出された紙幣の先端がセンサを通過すると、紙幣の後端がピッカローラPから外れる。このとき、センサによる紙幣の先端の検知により(ステップS3)、モータMが停止される(ステップS4)。ところが、搬送ローラRは、連続的に回転を続けているから、分離紙幣は、搬送ローラRの回転に従い引き抜かれるようにして更に前方へと送り出される。このとき、フィードローラFは、引き出される分離紙幣につられて進行方向に空転する。また、表面から2枚目以降の紙幣は、分離紙幣につられてゲートローラGの近辺まで引き出されるが、逆回転するゲートローラGに収納部側へと戻される。
【0017】分離紙幣の後端がセンサから抜けると(ステップS5)、モータMを再び駆動し(ステップS2)、次の紙幣を繰り出す。このようにして、順次繰り出された紙幣は、図3に示すように、間隔L4離間して1枚ずつ分離給送される。即ち、紙幣は、自動取引装置内部の搬送ルートの途中において、進行方向に二股に分かれる地点にそれぞれ設置されている切替弁(図3における切替弁B)が切替動作をするに充分な距離L4を離間して、分離給送される。
【0018】図4は、自動取引装置の外観を示す斜視図である。硬貨入出金口1は、顧客が硬貨の出し入れをするところである。通帳挿入排出口2は、顧客が通帳を持参した場合に記帳のため挿入し、取引後に受け取るところである。取扱表示パネル3は、この装置で取り扱う預入れ、支払い、振込等の取扱可能科目を表示する。カード挿入排出口4は、取引顧客を特定する取引カードであるキャッシュカードを挿入及び排出するところである。レシート排出口5は、取引結果を印刷したレシートを顧客に渡すところである。
【0019】紙幣入出金口6は、取引にかかる紙幣の受渡しを行なうところである。顧客操作部タッチキー7は、取引の手順や、金額、暗証番号等の数字を入力する置数キー、入金、出金、確認等の顧客の意思を入力する操作キーなどを表示し、表面にタッチキーを備えている。誤投入異物返却口8は、紙幣入出金口6に誤って投入したコインなどの異物を顧客へ返却するところである。本発明に係る補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式は、この自動取引装置の紙幣入出金口7の内部に組み込まれる。以下、図5に従い、紙幣入出金装置の内部構成を説明する。
【0020】図5は、紙幣入出金装置の内部構成図である。また、図6は、接客部の受渡しポジションを示す図であり、図7は、接客部の分離ポジションを示す図であり、図8は、接客部の受取りポジションを示す図である。紙幣入出金装置10の前面上部には、顧客が紙幣を出し入れするための接客部20が設けられている。この接客部20は、図6に示すように基本的に円筒形を成しており、円筒の軸を中心として回動する接客ドラム21と、本体外部よりの接触を断つためのシャッタ22より構成される。接客ドラム21の内部には、紙幣投入室24及び接客紙幣分離機構27が収納されている。紙幣投入室24は、受け入れ取り出し口を上部に向けて設けられている。接客紙幣分離機構27は、紙幣投入室24に投入された紙幣を1枚ずつ分離して繰出し口から送り出す。この接客ドラム21は、図6、図7、図8に示す3つの停止ポジションで、それぞれ次の作用をする。
【0021】受渡しポジションでは、受け入れ取り出し口23を閉塞するシャッタ22を開き、顧客が紙幣の投入や支払紙幣を受け取る。分離ポジションでは、一括して投入された紙幣を1枚ずつ装置内に取り込む。受取りポジションでは、後述する表裏反転部30から集積した紙幣を一括して受け取る。このように、接客ドラム21は、図示しない軸を中心として上述した3つの任意の位置に、処理内容により選択停止できる。再び、図5の説明に戻る。
【0022】接客部20の図中左下部には、送り込まれた紙幣の真偽、正損、表裏、2枚以上の重なり及び斜行等を鑑別、検知する鑑別部11が配設されている。接客部20の左部には表裏反転部30が設けられ、上部左方向より送られてきた紙幣は、反転部30を構成する左ルートと、右ルートのどちらかのルートを通って反転集積部33に表裏を揃えて積み上げられる。即ち、鑑別部11で表と鑑別された紙幣は左ルートへ、裏と鑑別されたものは右ルートへと、それぞれの走行ルートを切替えることにより、反転集積部33に積み上げられたときには、すべての紙幣が表を上にして、即ち裏の紙幣を表側へと反転して、積み上げるようにしたものである。反転集積部33に積み上げられた紙幣は、反転部の底に構成されたベルトコンベアにより集積したままの状態で図に示した受取りポジションにある接客ドラム21へと送り込まれる。
【0023】本体中央部に分離集積部40、その下に一時保留部50を介してスタッカ部が構成される。スタッカ部は金種別に紙幣を貯留しておくもので、この実施例ではAスタッカ、Bスタッカ、Cスタッカの3か所に分けて紙幣を貯留できるものを示しており、各スタッカに対応して分離集積部、一時保留部もそれぞれ3か所構成されている。分離集積部40の上部左から1枚ずつ分離して送られてきた紙幣は集積ルートを通って、分離集積部40の底に構成される一時保留部50の上へ集積される。一時保留部50の上に集積された紙幣を貯留する場合は、一時保留部50を解放し、その上に積み上げられている集積紙幣をスタッカ内へ落し込む。
【0024】逆に、スタッカ内の紙幣を繰り出す場合は、一時保留部50を解放しスタッカ内の紙幣を上方へ持ち上げ、分離機構によって1枚ずつ分離して繰り出しルートを通って分離集積部40の上部右側方向へと送り出す。一時保留部50に積み上げられた紙幣を返却取引などでそのまま繰り出す場合は、詳しくは後述するが、スタッカ内の紙幣の繰り出しと同様に上部より1枚ずつ繰り出すことができる。このような構成はA、B、C3か所すべて同じであるが、この実施例ではAスタッカ及びBスタッカを万円券、Cスタッカを千円券の貯留部として使用している。
【0025】紙幣入出金機の後方上部に補充回収スタッカ70が後方より着脱自在に配設され、その下部に入出金リジェクトスタッカ90が、内部に取り込み紙幣を区分けして貯留する取り込みスタッカを内蔵して配設される。補充回収スタッカ70は、補充ステージ上に乗せられた紙幣を上側から1枚ずつ取り出す補充回収分離部72と、補充紙幣を収容する補充部73と、回収された紙幣を一時的に集積して収容する回収部74と、回収紙幣を一括して補充部73へ移送する回収ステージ75と、補充時に繰り出し不良となった紙幣を補充回収スタッカ70内に回収収納する補充リジェクトスタッカ76とから成る。その動作を図9に従い、説明する。
【0026】図9は、補充回収スタッカの補充動作の説明図である。補充ステージ71上、補充部73に堆積された紙幣は、補充回収分離部72の作用で、補充回収スタッカ70上部右側より本機側へ1枚ずつ分離給送される。この時、繰り出し不良となった紙幣は本機内を通りへ回収収納される。本機のスタッカに収納されている紙幣を補充回収スタッカ70に回収するとき、回収紙幣は回収部74へと送り込まれ図のように集積堆積する。補充時に本機側スタッカが満杯となってあふれるような場合も、オーバフローした紙幣は上記回収部74へ回収収納される。
【0027】補充ステージ71上補充部の紙幣がすべて繰り出されると、図9(b)に示すように、補充ステージ71は、最上部からカセット後方を縦になって下降し、下までくると再び図9(c)に示すように水平状態となる。この時、回収ステージ75は、図の位置にあるが、図9(d)に示すように補充ステージ71の更に下部へと待避して図のようにステージ上に紙幣があれば、補充ステージ上にそれを乗せ替える。その後、それぞれのステージは図9(e)に示す位置へと上昇し、回収部74の紙幣を補充部73へと持ち上げて移し替えて図9(a)の状態へ戻る。次に、回収ステージ75の動作を図10を用いて更に詳しく説明する。
【0028】図10は、補充回収スタッカの回収動作の説明図である。図10(a)に示すように、回収ステージ75の下にある回収部74に回収紙幣が集積される。次に、図10(b)、(c)の順に回収ステージ75が開きながら回収部74の下側へと回り込む。次に、図10(d)のように回収紙幣を補充部へと持ちあげる。以上詳細に述べたように、補充部73にある紙幣は上部より1枚ずつ分離して本機側へと繰り出すとともに、本機側から回収部74への紙幣を集積して受け入れ、これを補充部73へ回す。即ち、補充回収スタッカ70は、このような補充機能を有する回収部74と、補充時のリジェクト紙幣を受け入れ保管する補充リジェクトスタッカ部76とより成っている。
【0029】次に、このような構成の補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式の動作について入金取引、出金取引、取り忘れ・取り込み処理、補充・繰填処理、及び回収処理の順で図11〜図15を用いて説明する。図11は、入金取引時の搬送ルートの説明図である。顧客により入金取引キーが押下され、カードをカード挿入口に挿入させるか、又は通帳を通帳挿入口に挿入させると、処理が開始される。これにより、装置とセンタとの間で更新が行なわれ、問題がないことが確認されると、補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式に入金処理開始の指令がくる。
【0030】紙葉類繰り出し方式は、コマンドを受信すると、内部状態を入金モードに切替えて、顧客が紙幣を投入するのを待つ。図6に示すように、顧客が紙幣を受け入れ取り出し口23に投入したことを検知すると、シャッタ22を閉じ、装置の制御部から定期的に送信している状態センスコマンドに対して受け入れ取り出し口23に紙幣セットありの情報を付加して応答電文(以下、「レスポンス」という)を返信する。次に、制御部は、入金計数コマンドを送信し、受け入れ取り出し口23にセットされた紙幣の計数を指示する。以下、紙幣入出金装置の処理手順を図面に基づいて説明する。
【0031】図6に示すような入金紙幣投入待ちの状態で、紙幣投入室24に紙幣がセットされると、シャッタ22を閉じ、接客ドラム21は図7に示す分離ポジションに回動し、セットされた紙幣を、接客ドラム21内に構成された分離機構により1枚ずつ装置内部へと取り込む。図11において、接客部20から鑑別部11へと紙幣を送り込む。
【0032】鑑別部11では、送られてきた紙幣を順次、真偽鑑別、正損判別及び走行状態を検知して後方へ送る。鑑別部11で偽券、対象外紙幣、搬送異常等で鑑別不能と判断されたものは、表裏反転部に搬送し、堆積一時保留とする。この時、接客部20は、図8に示す受取りポジションに待機しており、堆積一時保留とした紙幣を一括して紙幣投入室24へ送り込む。この接客部20に戻された紙幣は、いわゆる入金リジェクト紙幣であり、この紙幣は図6の受渡しポジションに接客ドラム21を回動し、シャッタ22をあけて顧客に返却する。一方、鑑別部11で真券と判断された紙幣は、搬送ルートを下方にとり、分離集積部40へ送り込まれる。
【0033】ここで、万円券は、Aスタッカ上の一時保留部50の上に、千円券はCスタッカ上の一時保留部50の上に、5千円券及び支払紙幣としてふさわしくないと判断した損券は、Bスタッカ上の一時保留部50の上に、それぞれ堆積一時保留される。以上の動作によって接客部20に顧客がセットした紙幣の入金計数処理が完了する。すると、本体制御部に対して入金計数終了のレスポンスを返送し、そのデータとして、各金種別に計数した枚数を還流紙幣と還流外紙幣とに分けて付加する。制御部は、このデータを受けて、金種別の金額と合計の金額を演算し、顧客操作部に表示するとともに、このデータを入金計数としてカウントし、記憶しておく。
【0034】顧客が顧客操作部に表示された金額を確認し、顧客操作部タッチキーに表示される確認キーを押下すると、紙幣入出金部は、確認済のコマンドを受信して、まず、Aスタッカ及びCスタッカ上の一時保留を解放し、万、千それぞれの紙幣を、それぞれのスタッカへ落下収納させる。次に、Bスタッカ上の一時保留部50に堆積されている5千円券等の非還流紙幣を分離機構により1枚ずつ分離し、図中波線で表示した搬送ルートを通り入出金リジェクトスタッカへ収納する。以上で入金取引が終了する。尚、Bスタッカは、Aスタッカに収納する万円券が溢れた場合に利用する万円予備スタッカとして機能する。
【0035】図12は、出金取引時の搬送ルートの説明図である。顧客により出金取引キーが押下され、カードをカード挿入口に挿入し、暗証番号を入力する。制御部は、出金処理開始のコマンドを送信する。紙幣入出金部は、出金処理開始のコマンドを受信すると、内部状態を出金モードに切替えて放出する紙幣の金種と枚数の指示を待つ。以下、図12を参照して説明する。
【0036】顧客によって、例えば、m万n千円の金額が入力された場合、まず、A、Bスタッカの図示しないエンド検知器及びCスタッカのエンド検知器が、エンドを検知していないかどうか判定する。どちらか一方でもエンドを検知している場合は、出金不可の情報を付加してレスポンスを返送する。エンド検知していない場合は、出金計数の指示が万円券m枚、千円券n枚だとすると、Aスタッカ上あるいはBスタッカ上の分離機構を作動して、万円券をm枚繰り出す。繰り出された紙幣は、図に太線で示した搬送ルートに従い上方へと送られ、鑑別部11を通過する。鑑別部11では、指定通りの紙幣かどうか、表裏、正損を鑑別し、指定通りであれば、更に上方の表裏反転部30に送り込み、表裏判定の結果により、図示しない弁別機構を作動させ、一方を搬送ルート31から、他方を搬送ルート32を通って反転集積部33へと送り込んで、表裏を揃えて集積する。
【0037】尚、鑑別部11で、損券又は搬送異常券と鑑別された紙幣は、後方下部に具備されている入出金リジェクトスタッカ90へと送り込み、収納保管する。その後、所望枚数が反転集積部33に堆積されるまで、この動作を繰り返す。万円券がm枚に達すると、次は千円券をCスタッカからn枚上記と同様に反転集積部33へと分離給送する。所定枚数の繰り出しが終了したら、接客部20を受取りポジションにし、ここへ反転集積部33に堆積されている支払紙幣を束ごと移送し、次に内部に支払紙幣を持った接客ドラム21を、図6に示す受渡しポジションへ回動させ、シャッタ22を開き、顧客に紙幣を渡す。そして、図示しないセンサで紙幣の抜き取りを確認してシャッタ22を閉じる。
【0038】指示枚数の出金が完了すると、制御部へ完了のレスポンスを返送し、そのデータとして放出金種と枚数を付加する。制御部は、これを受信して出金枚数として記憶しておく。以上で出金取引の処理が終了する。図13は、取り忘れ紙幣収納時の搬送ルートの説明図である。上記出金取引で受け入れ取り出し口に放出した紙幣を、顧客が取り忘れた場合は、図13に示した搬送ルートにより鑑別部11を経由して取り込みスタッカ91に取り込み収納する。このとき、鑑別部11で、金種及び枚数を検出し、そのデータを制御部へ送付し、これを記憶しておく。別の実施例として、金種を確定できた紙幣は、それぞれの該当するスタッカへ収納するようにして、次の出金紙幣に当てるようにすることもできる。
【0039】図14は、補充動作時の搬送ルートの説明図である。行員(操作者)が図示しない行員操作部の補助キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式に対して、補充動作開始を指示するコマンドを送信する。紙幣入出金装置は補充動作開始のコマンドを受信すると、内部状態を補充モードに切替えて、補充回収スタッカの図示しないエンド検知器がエンド検知していた場合、動作不可の情報を付加してレスポンスを返送し、この処理は中止される。エンド検知していないことを確認すると、補充動作を開始する。以下、紙幣入出金装置の補充動作を図14に基づいて説明する。
【0040】補充回収分離部72を作動して補充部73にセットされている紙幣を上側から順に1枚ずつ繰り出し、図の太線に示したルートを搬送し、鑑別部11へ送り込む。鑑別部11では、送り込まれた紙幣を順次、真偽鑑別、金種鑑別、正損判別、走行状態を検知して更に後方へ送る。鑑別部11で真券で、支払に供するに充分な正券で、しかも処理するに充分良好な走行状態で送られてきたと判定された、千円券及び万円券は、それぞれCスタッカ、Aスタッカ上の一時保留部の上に集積される。この動作は、補充部73にセットされている紙幣がなくなり、エンドが検出されるまで継続されるが、途中、どれかの一時保留部50の許容容量、例えば200枚に達すると、補充回収は一旦動作を中断し、保留容量に達した一時保留部を解放して、該当紙幣を下のスタッカへ落下収納する。その後、一時保留部50を再び閉じて補充動作を再開する。
【0041】補充部73にセットされている紙幣がなくなり、エンドを検出すると、分離動作を停止し、最後の紙幣が一時保留部50に到達すると、搬送動作も停止する。すべての一時保留を一斉に解放したスタッカ内に補充紙幣を取り込み、補充動作を終了する。尚、鑑別部11で出金紙幣として適切ではないと判定された紙幣は、鑑別部11から下方へ下がり、補充回収スタッカ70の最下部に設けられた補充リジェクトスタッカ76へ回収収納する。
【0042】また、万円券を補充中にAカセットに万円券が満杯となった場合は、図示しないフル検出器がこれを検出し、継続する紙幣を自動的にBスタッカに収容するように搬送路を切換える。即ち、Bスタッカは、Aスタッカの容量を増やす予備スタッカとして機能する。補充中にB又はCスタッカがフルとなったことが検出されると、例えば、Bスタッカがフルとなった場合、後続紙幣に万円券が鑑別されたときは、搬送ルートを図に波線で示した回収部へ堆積回収するルートとし、千円券が鑑別されれば、Bスタッカへのルートとする。B、C(当然Aも)両方のスタッカがフルとなった場合は、補充回収分離部、及び搬送の動作を停止し、補充動作を終了する。紙幣入出金装置は、補充終了のレスポンスを制御部に返送し、そのデータとして各金種別に装填した計数枚数を付加する。以上で補充動作の処理が終了する。
【0043】次に、繰填処理について説明する。行員が業務開始に先立って、取引に供する紙幣を一括してセットしてきた補充回収スタッカを紙幣入出金装置に装着し、行員操作部の繰填キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて、紙幣入出金装置に対して繰填動作開始のコマンドを送信する。コマンドを受信した紙幣入出金装置は、内部状態を補充モードと同様に切換えて、補充動作と同様の繰填動作を行なう。
【0044】図15は、回収動作時の搬送ルートの説明図である。行員が、行員操作部の回収キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて紙幣入出金装置に対して回収動作開始のコマンドを送信する。コマンドを受信した紙幣入出金装置は、内部状態を回収モードに切換えて、各スタッカがすべてエンドを検出されていないこと、即ち回収するべき紙幣が金種別スタッカのいずれかに存在することを確認する。金種別スタッカのすべてがエンド検出していた場合には、動作不可の情報を付加してレスポンス動作を開始する。以下、図14を参照して回収動作を説明する。
【0045】まず、Aスタッカ上の分離機構を作動してAスタッカに収納されている万円券を上側から順に1枚ずつ繰り出し、図示のルートを通り、鑑別部11に送り込む。鑑別部11を通過した紙幣は、補充回収スタッカ70の回収部74に堆積収納される。この動作は、Aスタッカの紙幣がなくなれば、Bスタッカ、Cスタッカへと順次すべての紙幣が繰り出されるまで継続される。途中、回収部74の容量に達した場合、例えば、200枚たまると、分離動作を一旦中断し、回収部74の紙幣を補充部73へ持ち上げる動作を行ない、回収部74を空にしてから分離搬送を再開する。また、この動作中、補充部73がフルになったことが検出されると、分離動作を停止し、回収動作を終了する。
【0046】以上の動作を終了した紙幣入出金装置は、回収終了のレスポンスを返送し、そのデータとして各金種別に回収した枚数を付加する。これを受けて、制御部は、回収枚数としてカウントし記憶しておく。以上で回収処理を終了する。以上説明したそれぞれの処理は、実際の運用では、次の処理手順で行なわれる。
【0047】業務開始に先立って補充回収カセット70に一括して前方よりセットしてきた紙幣を、繰填処理を行なうことにより、各金種別スタッカに繰填する。業務に入ってからは、入金取引、出金取引等を随時行ない、各金種スタッカがニアエンド又はエンドになったら、補充回収スタッカ70から当該紙幣を補充し、運用を継続する。また、補充回収カセット70がエンドになれば、装置より補充回収カセット70を取り外し、補充用紙幣を当該補充回収カセット70にセットして装置に装着し、補充処理を行なう。
【0048】上記とは逆に入金額が多く、各金種スタッカがフルとなった場合には、スタッカフルを検出し、補充回収スタッカ70が装備されているときは、自動的に回収処理が行なわれ、装置を止めることなく、取引を継続して行なうことができる。また、図から分かる通り、入金取引(図11)、出金取引(図12)には、補充回収カセット70を使用しない構造、ルートとなっているので、補充回収カセット70の着脱により、取引を行なう顧客の運用を妨げることもなく、継続して使用できる特徴もある。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の紙葉類繰り出し方式によれば、集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す紙幣分離機構の繰り出しローラを、全周に高摩擦部材から成る全周ゴムローラとし、これの駆動を先行する紙幣の通過する1個のセンサのオンオフ情報で直接制御して所定間隔を空けて1枚ずつ規則正しく繰り出し可能とする機構としたので、複雑な回路を必要とすることなく、制御情報は1個のセンサのみにより検出でき、また繰り出しローラは径の小さなものとすることができる。従って、簡単で小型の繰り出し方式を実現することができ、もって、小型で取扱い易い紙幣入出金装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る紙幣分離機構の概要の説明図である。
【図2】本発明による繰り出し制御手順を説明するフローチャートである。
【図3】紙幣の搬送状態の説明図である。
【図4】自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図5】紙幣入出金装置の内部構成図である。
【図6】接客部の受取りポジションの説明図である。
【図7】接客部の分離ポジションの説明図である。
【図8】接客部の受取りポジションの説明図である。
【図9】補充回収スタッカの補充動作の説明図である。
【図10】補充回収スタッカの回収動作の説明図である。
【図11】入金取引時の搬送ルートの説明図である。
【図12】出金取引時の搬送ルートの説明図である。
【図13】取り忘れ紙幣収納時の搬送ルートの説明図である。
【図14】補充動作時の搬送ルートの説明図である。
【図15】回収動作時の搬送ルートの説明図である。
【符号の説明】
C 繰り出し制御手段
F、P 繰り出しローラ
G ゲートローラ
R 搬送ローラ
W 紙幣押え
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銀行等の金融機関で利用される現金自動取引装置に内蔵され、紙幣を計数管理する装置における紙葉類繰り出し方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】銀行などの金融機関において、銀行のキャッシュカードを持つ利用客がカードで現金を取引する現金自動取引装置が広く普及している。このような現金自動取引装置に組み込まれている紙幣入出金装置には、入金された紙幣を自動的に出金紙幣に循環させる循環式のものが存在する。これは、機器内部に死蔵する現金をできるだけ少なくして資金効率を向上させるものであり、近年広く普及している方式である。この方式の装置では、万円券、千円券等の金種別に種分けしたスタッカを内蔵するとともに、これらのスタッカから、単一の補充回収スタッカヘ紙幣の繰出し及び回収を行なう。そして、オペレータは、この補充回収スタッカのみを取扱うようにしている。
【0003】即ち、近年では、装置への現金の繰填、補充、あるいは回収を行なう際の利便性を向上させるため、1つの補充回収カセットに補充すべき紙幣を繰填し、その補充回収カセットを装置本体にセットするようにしている。これにより、機器内部へ自動的に紙幣を取り込み、あるいは機器内部に収納されている紙幣の一部、あるいは全部を直接係員の手で回収せず、自動的に補充回収カセットに一旦回収するようにしている。
【0004】これは、係員が機器内部に分散する複数の紙幣収納部へそれぞれ繰填したり、回収したりすることの煩雑さからの解放や、係員が直接現金を取り扱うことによる保安上の不安からの解放を目的としたものである。即ち、係員は、直接現金に手を触れることなく鍵付の補充回収カセットを操作することで装置に現金を繰填、補充、あるいは回収を行なうことができるようにしたものである。
【0005】ところで、機器内部に収納する紙幣は、支払を高速に行なうため、一般に金種別に分けて集積して収納し、支払に備えるようにしている。支払の要望が来たときは、この金種別に積み上げられた紙幣から1枚ずつ繰出し、所望の枚数支払うようにしている。入金の場合は、投入された紙幣が1枚ずつ機器内部へ取り込まれ、真偽、金種等が鑑別された後、金種別に、前記収納部へそれぞれ集積収納されるようになっている。このようにして集積収納された紙幣は、1枚ずつ繰り出して入出金処理される。
【0006】ところが、1枚ずつに分離された紙幣は、連続的に搬送されるわけではない。例えば、繰出された紙幣の中に偽券を検出した場合、これを排除するために、その偽券のみを弁別する必要が生じる。また、万円券や千円券の混在した紙幣を金種別に切り分ける必要がある。この場合、通常は、送られてくる紙幣を搬送路に設けた切替弁で弁別する。従って、繰出す紙幣は、弁が動作するに充分な間隔を空けて順次繰出すようにしている。これにより、任意の紙幣を弁別処理することを可能としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術には、次のような問題があった。即ち、上述した装置では、複数のスタッカに対し、それぞれ紙幣の繰り出し機構を備える必要がある。つまり、万円券、千円券を格納するスタッカの他に、補充回収スタッカにも繰り出し機構が必要となる。従って、機器の小型化・簡素化のために紙幣分離機構の小型化・簡素化が重要となっていた。
【0008】本発明は、以上の点に着目してなされたもので、走行検出用のセンサの数を減少させ、単一のセンサのみとし、装置の小型化を図るようにした紙葉類繰り出し方式を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の紙葉類繰り出し方式は、紙幣を集積した紙幣集積部と、当該紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す繰り出しローラと、当該繰り出しローラにより繰り出した紙幣を搬送路に沿って搬送する搬送ローラと、当該搬送路上の所定箇所に設けられ、紙幣の搬送方向の先端と後端とを検出するセンサと、当該センサによる紙幣の先端の検出時に前記繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させ、当該センサによる紙幣の後端の検出時に前記繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始し、これらの手順を繰り返して搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる繰り出し制御手段とから成ることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】本発明の紙葉類繰り出し方式においては、繰り出しローラにより、紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す。そして、この繰り出した紙幣を、搬送ローラにより、搬送路に沿って搬送させる。この場合、繰り出し制御手段は、搬送路上の所定箇所に設けられたセンサによる紙幣の先端の検出時に繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させる。その後、繰り出し制御手段は、当該センサによる紙幣の後端の検出時に繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始する。そして、これらの手順を繰り返して、単一のセンサのみにより紙幣の走行を検出しつつ、搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。銀行等に設置される現金自動取引装置には、内部に堆積した紙幣を繰り出すための分離機構が各所定箇所に設けられている。まず、これらの分離機構について説明する。図1は、本発明に係る紙幣分離機構の概要の説明図である。図示の装置は、繰り出しローラと、繰り出し制御手段とを備えている。繰り出しローラは、ピッカローラPと、フィードローラFとから成る。これらの繰り出しローラは、全周がウレタンゴム等の高摩擦部材により構成されている。
【0012】ピッカローラPは、紙幣押えW上に堆積された紙幣の一方の表面に接するように配置されている。そして、このピッカローラPは、周速V1 で図示の矢印方向へ回転し、紙幣を紙幣集積部25の最上層から1枚ずつ繰り出す。紙幣集積部25は、スタッカ内の紙幣が積み重った部分である。フィードローラFは、ピッカローラPに従い、周速V1 で矢印方向へ回転し、ピッカローラPによって送り出される紙幣を更に前方(図中左方向)へと送り出す。このとき、最上層から繰り出される紙幣に伴なって2枚目以降の紙幣が連れ出されてしまうのを防止するため、紙幣1枚のみが通過可能な僅かなギャップを空けて、フィードローラに対向したゲートローラGを設けている。このゲートローラGは、2枚目以降の紙幣の繰り出しを阻止するとともに、更にそれを貯留部へ戻すように逆方向にV1 よりずっと遅い周速V3 でゆっくりと回転される。
【0013】また、ピッカローラPから紙幣の進行方向前方に、距離L2 離間して搬送ローラRの対が設けられている。これらの搬送ローラRは、フィードローラFから送られてくる紙幣を挟持してV1 より高速の速度V2 で更に前方へと送り出すようにされる。フィードローラFの軸には、モータMが連結され、当該モータMのオンオフ制御に従い、フィードローラFは回転制御される。ピッカローラPは、このフィードローラFの軸にギアあるいはベルト(図示省略)などで連結されており、フィードローラFと共に回転制御される。
【0014】また、フィードローラF及びピッカローラPの軸にはそれぞれ独立にワンウェイベアリングが組み込まれ、外部より矢印方向(進行方向)へ回転力を加えると自由に回転する構造となっている。ところで、ピッカローラPと搬送ローラRとの距離L2は、繰り出す紙幣の進行方向長L1とほぼ同じかL1+a(aは、若干の距離)に設定されている。そして、ゲートローラGの前方に距離L4離間して紙幣端を検出するセンサが配置されている。搬送路の途中には、走行中の紙幣を弁別するための切換弁が設けられる(図3参照)。この切換弁は、ゲートローラGと搬送ローラRとの間の距離に相当する大きさの領域を占有する。従って、ゲートローラGと搬送ローラR付近の第1センサとの距離L4は、この切換弁が動作するのに充分な距離に設定される。
【0015】次に、このように構成された分離機構の動作について述べる。図2は、本発明による繰り出し制御手順を説明するフローチャートであり、図3は、紙幣の搬送状態の説明図である。堆積された紙幣を繰り出すときは、図1に示す紙幣押えWを紙幣ごと図中上方へ押し上げ(ステップS1)、図示のようにピッカローラPの表面に堆積紙幣の上面が接する位置に持ち上げる。その後、モータMによってピッカローラPを図中矢印方向に駆動する(ステップS2)。すると、堆積した紙幣の最上部のピッカローラPに接している1枚が、当該ピッカローラPの回転に従い、フィードローラF側へと繰り出される。そして、繰り出された紙幣は、ゲートローラGとの僅かな間隙を通過し、更にその通過した紙幣の先端は、搬送ローラRへと進む。
【0016】分離機構により繰り出された紙幣の先端がセンサを通過すると、紙幣の後端がピッカローラPから外れる。このとき、センサによる紙幣の先端の検知により(ステップS3)、モータMが停止される(ステップS4)。ところが、搬送ローラRは、連続的に回転を続けているから、分離紙幣は、搬送ローラRの回転に従い引き抜かれるようにして更に前方へと送り出される。このとき、フィードローラFは、引き出される分離紙幣につられて進行方向に空転する。また、表面から2枚目以降の紙幣は、分離紙幣につられてゲートローラGの近辺まで引き出されるが、逆回転するゲートローラGに収納部側へと戻される。
【0017】分離紙幣の後端がセンサから抜けると(ステップS5)、モータMを再び駆動し(ステップS2)、次の紙幣を繰り出す。このようにして、順次繰り出された紙幣は、図3に示すように、間隔L4離間して1枚ずつ分離給送される。即ち、紙幣は、自動取引装置内部の搬送ルートの途中において、進行方向に二股に分かれる地点にそれぞれ設置されている切替弁(図3における切替弁B)が切替動作をするに充分な距離L4を離間して、分離給送される。
【0018】図4は、自動取引装置の外観を示す斜視図である。硬貨入出金口1は、顧客が硬貨の出し入れをするところである。通帳挿入排出口2は、顧客が通帳を持参した場合に記帳のため挿入し、取引後に受け取るところである。取扱表示パネル3は、この装置で取り扱う預入れ、支払い、振込等の取扱可能科目を表示する。カード挿入排出口4は、取引顧客を特定する取引カードであるキャッシュカードを挿入及び排出するところである。レシート排出口5は、取引結果を印刷したレシートを顧客に渡すところである。
【0019】紙幣入出金口6は、取引にかかる紙幣の受渡しを行なうところである。顧客操作部タッチキー7は、取引の手順や、金額、暗証番号等の数字を入力する置数キー、入金、出金、確認等の顧客の意思を入力する操作キーなどを表示し、表面にタッチキーを備えている。誤投入異物返却口8は、紙幣入出金口6に誤って投入したコインなどの異物を顧客へ返却するところである。本発明に係る補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式は、この自動取引装置の紙幣入出金口7の内部に組み込まれる。以下、図5に従い、紙幣入出金装置の内部構成を説明する。
【0020】図5は、紙幣入出金装置の内部構成図である。また、図6は、接客部の受渡しポジションを示す図であり、図7は、接客部の分離ポジションを示す図であり、図8は、接客部の受取りポジションを示す図である。紙幣入出金装置10の前面上部には、顧客が紙幣を出し入れするための接客部20が設けられている。この接客部20は、図6に示すように基本的に円筒形を成しており、円筒の軸を中心として回動する接客ドラム21と、本体外部よりの接触を断つためのシャッタ22より構成される。接客ドラム21の内部には、紙幣投入室24及び接客紙幣分離機構27が収納されている。紙幣投入室24は、受け入れ取り出し口を上部に向けて設けられている。接客紙幣分離機構27は、紙幣投入室24に投入された紙幣を1枚ずつ分離して繰出し口から送り出す。この接客ドラム21は、図6、図7、図8に示す3つの停止ポジションで、それぞれ次の作用をする。
【0021】受渡しポジションでは、受け入れ取り出し口23を閉塞するシャッタ22を開き、顧客が紙幣の投入や支払紙幣を受け取る。分離ポジションでは、一括して投入された紙幣を1枚ずつ装置内に取り込む。受取りポジションでは、後述する表裏反転部30から集積した紙幣を一括して受け取る。このように、接客ドラム21は、図示しない軸を中心として上述した3つの任意の位置に、処理内容により選択停止できる。再び、図5の説明に戻る。
【0022】接客部20の図中左下部には、送り込まれた紙幣の真偽、正損、表裏、2枚以上の重なり及び斜行等を鑑別、検知する鑑別部11が配設されている。接客部20の左部には表裏反転部30が設けられ、上部左方向より送られてきた紙幣は、反転部30を構成する左ルートと、右ルートのどちらかのルートを通って反転集積部33に表裏を揃えて積み上げられる。即ち、鑑別部11で表と鑑別された紙幣は左ルートへ、裏と鑑別されたものは右ルートへと、それぞれの走行ルートを切替えることにより、反転集積部33に積み上げられたときには、すべての紙幣が表を上にして、即ち裏の紙幣を表側へと反転して、積み上げるようにしたものである。反転集積部33に積み上げられた紙幣は、反転部の底に構成されたベルトコンベアにより集積したままの状態で図に示した受取りポジションにある接客ドラム21へと送り込まれる。
【0023】本体中央部に分離集積部40、その下に一時保留部50を介してスタッカ部が構成される。スタッカ部は金種別に紙幣を貯留しておくもので、この実施例ではAスタッカ、Bスタッカ、Cスタッカの3か所に分けて紙幣を貯留できるものを示しており、各スタッカに対応して分離集積部、一時保留部もそれぞれ3か所構成されている。分離集積部40の上部左から1枚ずつ分離して送られてきた紙幣は集積ルートを通って、分離集積部40の底に構成される一時保留部50の上へ集積される。一時保留部50の上に集積された紙幣を貯留する場合は、一時保留部50を解放し、その上に積み上げられている集積紙幣をスタッカ内へ落し込む。
【0024】逆に、スタッカ内の紙幣を繰り出す場合は、一時保留部50を解放しスタッカ内の紙幣を上方へ持ち上げ、分離機構によって1枚ずつ分離して繰り出しルートを通って分離集積部40の上部右側方向へと送り出す。一時保留部50に積み上げられた紙幣を返却取引などでそのまま繰り出す場合は、詳しくは後述するが、スタッカ内の紙幣の繰り出しと同様に上部より1枚ずつ繰り出すことができる。このような構成はA、B、C3か所すべて同じであるが、この実施例ではAスタッカ及びBスタッカを万円券、Cスタッカを千円券の貯留部として使用している。
【0025】紙幣入出金機の後方上部に補充回収スタッカ70が後方より着脱自在に配設され、その下部に入出金リジェクトスタッカ90が、内部に取り込み紙幣を区分けして貯留する取り込みスタッカを内蔵して配設される。補充回収スタッカ70は、補充ステージ上に乗せられた紙幣を上側から1枚ずつ取り出す補充回収分離部72と、補充紙幣を収容する補充部73と、回収された紙幣を一時的に集積して収容する回収部74と、回収紙幣を一括して補充部73へ移送する回収ステージ75と、補充時に繰り出し不良となった紙幣を補充回収スタッカ70内に回収収納する補充リジェクトスタッカ76とから成る。その動作を図9に従い、説明する。
【0026】図9は、補充回収スタッカの補充動作の説明図である。補充ステージ71上、補充部73に堆積された紙幣は、補充回収分離部72の作用で、補充回収スタッカ70上部右側より本機側へ1枚ずつ分離給送される。この時、繰り出し不良となった紙幣は本機内を通りへ回収収納される。本機のスタッカに収納されている紙幣を補充回収スタッカ70に回収するとき、回収紙幣は回収部74へと送り込まれ図のように集積堆積する。補充時に本機側スタッカが満杯となってあふれるような場合も、オーバフローした紙幣は上記回収部74へ回収収納される。
【0027】補充ステージ71上補充部の紙幣がすべて繰り出されると、図9(b)に示すように、補充ステージ71は、最上部からカセット後方を縦になって下降し、下までくると再び図9(c)に示すように水平状態となる。この時、回収ステージ75は、図の位置にあるが、図9(d)に示すように補充ステージ71の更に下部へと待避して図のようにステージ上に紙幣があれば、補充ステージ上にそれを乗せ替える。その後、それぞれのステージは図9(e)に示す位置へと上昇し、回収部74の紙幣を補充部73へと持ち上げて移し替えて図9(a)の状態へ戻る。次に、回収ステージ75の動作を図10を用いて更に詳しく説明する。
【0028】図10は、補充回収スタッカの回収動作の説明図である。図10(a)に示すように、回収ステージ75の下にある回収部74に回収紙幣が集積される。次に、図10(b)、(c)の順に回収ステージ75が開きながら回収部74の下側へと回り込む。次に、図10(d)のように回収紙幣を補充部へと持ちあげる。以上詳細に述べたように、補充部73にある紙幣は上部より1枚ずつ分離して本機側へと繰り出すとともに、本機側から回収部74への紙幣を集積して受け入れ、これを補充部73へ回す。即ち、補充回収スタッカ70は、このような補充機能を有する回収部74と、補充時のリジェクト紙幣を受け入れ保管する補充リジェクトスタッカ部76とより成っている。
【0029】次に、このような構成の補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式の動作について入金取引、出金取引、取り忘れ・取り込み処理、補充・繰填処理、及び回収処理の順で図11〜図15を用いて説明する。図11は、入金取引時の搬送ルートの説明図である。顧客により入金取引キーが押下され、カードをカード挿入口に挿入させるか、又は通帳を通帳挿入口に挿入させると、処理が開始される。これにより、装置とセンタとの間で更新が行なわれ、問題がないことが確認されると、補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式に入金処理開始の指令がくる。
【0030】紙葉類繰り出し方式は、コマンドを受信すると、内部状態を入金モードに切替えて、顧客が紙幣を投入するのを待つ。図6に示すように、顧客が紙幣を受け入れ取り出し口23に投入したことを検知すると、シャッタ22を閉じ、装置の制御部から定期的に送信している状態センスコマンドに対して受け入れ取り出し口23に紙幣セットありの情報を付加して応答電文(以下、「レスポンス」という)を返信する。次に、制御部は、入金計数コマンドを送信し、受け入れ取り出し口23にセットされた紙幣の計数を指示する。以下、紙幣入出金装置の処理手順を図面に基づいて説明する。
【0031】図6に示すような入金紙幣投入待ちの状態で、紙幣投入室24に紙幣がセットされると、シャッタ22を閉じ、接客ドラム21は図7に示す分離ポジションに回動し、セットされた紙幣を、接客ドラム21内に構成された分離機構により1枚ずつ装置内部へと取り込む。図11において、接客部20から鑑別部11へと紙幣を送り込む。
【0032】鑑別部11では、送られてきた紙幣を順次、真偽鑑別、正損判別及び走行状態を検知して後方へ送る。鑑別部11で偽券、対象外紙幣、搬送異常等で鑑別不能と判断されたものは、表裏反転部に搬送し、堆積一時保留とする。この時、接客部20は、図8に示す受取りポジションに待機しており、堆積一時保留とした紙幣を一括して紙幣投入室24へ送り込む。この接客部20に戻された紙幣は、いわゆる入金リジェクト紙幣であり、この紙幣は図6の受渡しポジションに接客ドラム21を回動し、シャッタ22をあけて顧客に返却する。一方、鑑別部11で真券と判断された紙幣は、搬送ルートを下方にとり、分離集積部40へ送り込まれる。
【0033】ここで、万円券は、Aスタッカ上の一時保留部50の上に、千円券はCスタッカ上の一時保留部50の上に、5千円券及び支払紙幣としてふさわしくないと判断した損券は、Bスタッカ上の一時保留部50の上に、それぞれ堆積一時保留される。以上の動作によって接客部20に顧客がセットした紙幣の入金計数処理が完了する。すると、本体制御部に対して入金計数終了のレスポンスを返送し、そのデータとして、各金種別に計数した枚数を還流紙幣と還流外紙幣とに分けて付加する。制御部は、このデータを受けて、金種別の金額と合計の金額を演算し、顧客操作部に表示するとともに、このデータを入金計数としてカウントし、記憶しておく。
【0034】顧客が顧客操作部に表示された金額を確認し、顧客操作部タッチキーに表示される確認キーを押下すると、紙幣入出金部は、確認済のコマンドを受信して、まず、Aスタッカ及びCスタッカ上の一時保留を解放し、万、千それぞれの紙幣を、それぞれのスタッカへ落下収納させる。次に、Bスタッカ上の一時保留部50に堆積されている5千円券等の非還流紙幣を分離機構により1枚ずつ分離し、図中波線で表示した搬送ルートを通り入出金リジェクトスタッカへ収納する。以上で入金取引が終了する。尚、Bスタッカは、Aスタッカに収納する万円券が溢れた場合に利用する万円予備スタッカとして機能する。
【0035】図12は、出金取引時の搬送ルートの説明図である。顧客により出金取引キーが押下され、カードをカード挿入口に挿入し、暗証番号を入力する。制御部は、出金処理開始のコマンドを送信する。紙幣入出金部は、出金処理開始のコマンドを受信すると、内部状態を出金モードに切替えて放出する紙幣の金種と枚数の指示を待つ。以下、図12を参照して説明する。
【0036】顧客によって、例えば、m万n千円の金額が入力された場合、まず、A、Bスタッカの図示しないエンド検知器及びCスタッカのエンド検知器が、エンドを検知していないかどうか判定する。どちらか一方でもエンドを検知している場合は、出金不可の情報を付加してレスポンスを返送する。エンド検知していない場合は、出金計数の指示が万円券m枚、千円券n枚だとすると、Aスタッカ上あるいはBスタッカ上の分離機構を作動して、万円券をm枚繰り出す。繰り出された紙幣は、図に太線で示した搬送ルートに従い上方へと送られ、鑑別部11を通過する。鑑別部11では、指定通りの紙幣かどうか、表裏、正損を鑑別し、指定通りであれば、更に上方の表裏反転部30に送り込み、表裏判定の結果により、図示しない弁別機構を作動させ、一方を搬送ルート31から、他方を搬送ルート32を通って反転集積部33へと送り込んで、表裏を揃えて集積する。
【0037】尚、鑑別部11で、損券又は搬送異常券と鑑別された紙幣は、後方下部に具備されている入出金リジェクトスタッカ90へと送り込み、収納保管する。その後、所望枚数が反転集積部33に堆積されるまで、この動作を繰り返す。万円券がm枚に達すると、次は千円券をCスタッカからn枚上記と同様に反転集積部33へと分離給送する。所定枚数の繰り出しが終了したら、接客部20を受取りポジションにし、ここへ反転集積部33に堆積されている支払紙幣を束ごと移送し、次に内部に支払紙幣を持った接客ドラム21を、図6に示す受渡しポジションへ回動させ、シャッタ22を開き、顧客に紙幣を渡す。そして、図示しないセンサで紙幣の抜き取りを確認してシャッタ22を閉じる。
【0038】指示枚数の出金が完了すると、制御部へ完了のレスポンスを返送し、そのデータとして放出金種と枚数を付加する。制御部は、これを受信して出金枚数として記憶しておく。以上で出金取引の処理が終了する。図13は、取り忘れ紙幣収納時の搬送ルートの説明図である。上記出金取引で受け入れ取り出し口に放出した紙幣を、顧客が取り忘れた場合は、図13に示した搬送ルートにより鑑別部11を経由して取り込みスタッカ91に取り込み収納する。このとき、鑑別部11で、金種及び枚数を検出し、そのデータを制御部へ送付し、これを記憶しておく。別の実施例として、金種を確定できた紙幣は、それぞれの該当するスタッカへ収納するようにして、次の出金紙幣に当てるようにすることもできる。
【0039】図14は、補充動作時の搬送ルートの説明図である。行員(操作者)が図示しない行員操作部の補助キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて補充回収スタッカ付紙葉類繰り出し方式に対して、補充動作開始を指示するコマンドを送信する。紙幣入出金装置は補充動作開始のコマンドを受信すると、内部状態を補充モードに切替えて、補充回収スタッカの図示しないエンド検知器がエンド検知していた場合、動作不可の情報を付加してレスポンスを返送し、この処理は中止される。エンド検知していないことを確認すると、補充動作を開始する。以下、紙幣入出金装置の補充動作を図14に基づいて説明する。
【0040】補充回収分離部72を作動して補充部73にセットされている紙幣を上側から順に1枚ずつ繰り出し、図の太線に示したルートを搬送し、鑑別部11へ送り込む。鑑別部11では、送り込まれた紙幣を順次、真偽鑑別、金種鑑別、正損判別、走行状態を検知して更に後方へ送る。鑑別部11で真券で、支払に供するに充分な正券で、しかも処理するに充分良好な走行状態で送られてきたと判定された、千円券及び万円券は、それぞれCスタッカ、Aスタッカ上の一時保留部の上に集積される。この動作は、補充部73にセットされている紙幣がなくなり、エンドが検出されるまで継続されるが、途中、どれかの一時保留部50の許容容量、例えば200枚に達すると、補充回収は一旦動作を中断し、保留容量に達した一時保留部を解放して、該当紙幣を下のスタッカへ落下収納する。その後、一時保留部50を再び閉じて補充動作を再開する。
【0041】補充部73にセットされている紙幣がなくなり、エンドを検出すると、分離動作を停止し、最後の紙幣が一時保留部50に到達すると、搬送動作も停止する。すべての一時保留を一斉に解放したスタッカ内に補充紙幣を取り込み、補充動作を終了する。尚、鑑別部11で出金紙幣として適切ではないと判定された紙幣は、鑑別部11から下方へ下がり、補充回収スタッカ70の最下部に設けられた補充リジェクトスタッカ76へ回収収納する。
【0042】また、万円券を補充中にAカセットに万円券が満杯となった場合は、図示しないフル検出器がこれを検出し、継続する紙幣を自動的にBスタッカに収容するように搬送路を切換える。即ち、Bスタッカは、Aスタッカの容量を増やす予備スタッカとして機能する。補充中にB又はCスタッカがフルとなったことが検出されると、例えば、Bスタッカがフルとなった場合、後続紙幣に万円券が鑑別されたときは、搬送ルートを図に波線で示した回収部へ堆積回収するルートとし、千円券が鑑別されれば、Bスタッカへのルートとする。B、C(当然Aも)両方のスタッカがフルとなった場合は、補充回収分離部、及び搬送の動作を停止し、補充動作を終了する。紙幣入出金装置は、補充終了のレスポンスを制御部に返送し、そのデータとして各金種別に装填した計数枚数を付加する。以上で補充動作の処理が終了する。
【0043】次に、繰填処理について説明する。行員が業務開始に先立って、取引に供する紙幣を一括してセットしてきた補充回収スタッカを紙幣入出金装置に装着し、行員操作部の繰填キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて、紙幣入出金装置に対して繰填動作開始のコマンドを送信する。コマンドを受信した紙幣入出金装置は、内部状態を補充モードと同様に切換えて、補充動作と同様の繰填動作を行なう。
【0044】図15は、回収動作時の搬送ルートの説明図である。行員が、行員操作部の回収キーを押下すると、制御部は、この入力を受けて紙幣入出金装置に対して回収動作開始のコマンドを送信する。コマンドを受信した紙幣入出金装置は、内部状態を回収モードに切換えて、各スタッカがすべてエンドを検出されていないこと、即ち回収するべき紙幣が金種別スタッカのいずれかに存在することを確認する。金種別スタッカのすべてがエンド検出していた場合には、動作不可の情報を付加してレスポンス動作を開始する。以下、図14を参照して回収動作を説明する。
【0045】まず、Aスタッカ上の分離機構を作動してAスタッカに収納されている万円券を上側から順に1枚ずつ繰り出し、図示のルートを通り、鑑別部11に送り込む。鑑別部11を通過した紙幣は、補充回収スタッカ70の回収部74に堆積収納される。この動作は、Aスタッカの紙幣がなくなれば、Bスタッカ、Cスタッカへと順次すべての紙幣が繰り出されるまで継続される。途中、回収部74の容量に達した場合、例えば、200枚たまると、分離動作を一旦中断し、回収部74の紙幣を補充部73へ持ち上げる動作を行ない、回収部74を空にしてから分離搬送を再開する。また、この動作中、補充部73がフルになったことが検出されると、分離動作を停止し、回収動作を終了する。
【0046】以上の動作を終了した紙幣入出金装置は、回収終了のレスポンスを返送し、そのデータとして各金種別に回収した枚数を付加する。これを受けて、制御部は、回収枚数としてカウントし記憶しておく。以上で回収処理を終了する。以上説明したそれぞれの処理は、実際の運用では、次の処理手順で行なわれる。
【0047】業務開始に先立って補充回収カセット70に一括して前方よりセットしてきた紙幣を、繰填処理を行なうことにより、各金種別スタッカに繰填する。業務に入ってからは、入金取引、出金取引等を随時行ない、各金種スタッカがニアエンド又はエンドになったら、補充回収スタッカ70から当該紙幣を補充し、運用を継続する。また、補充回収カセット70がエンドになれば、装置より補充回収カセット70を取り外し、補充用紙幣を当該補充回収カセット70にセットして装置に装着し、補充処理を行なう。
【0048】上記とは逆に入金額が多く、各金種スタッカがフルとなった場合には、スタッカフルを検出し、補充回収スタッカ70が装備されているときは、自動的に回収処理が行なわれ、装置を止めることなく、取引を継続して行なうことができる。また、図から分かる通り、入金取引(図11)、出金取引(図12)には、補充回収カセット70を使用しない構造、ルートとなっているので、補充回収カセット70の着脱により、取引を行なう顧客の運用を妨げることもなく、継続して使用できる特徴もある。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の紙葉類繰り出し方式によれば、集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す紙幣分離機構の繰り出しローラを、全周に高摩擦部材から成る全周ゴムローラとし、これの駆動を先行する紙幣の通過する1個のセンサのオンオフ情報で直接制御して所定間隔を空けて1枚ずつ規則正しく繰り出し可能とする機構としたので、複雑な回路を必要とすることなく、制御情報は1個のセンサのみにより検出でき、また繰り出しローラは径の小さなものとすることができる。従って、簡単で小型の繰り出し方式を実現することができ、もって、小型で取扱い易い紙幣入出金装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る紙幣分離機構の概要の説明図である。
【図2】本発明による繰り出し制御手順を説明するフローチャートである。
【図3】紙幣の搬送状態の説明図である。
【図4】自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図5】紙幣入出金装置の内部構成図である。
【図6】接客部の受取りポジションの説明図である。
【図7】接客部の分離ポジションの説明図である。
【図8】接客部の受取りポジションの説明図である。
【図9】補充回収スタッカの補充動作の説明図である。
【図10】補充回収スタッカの回収動作の説明図である。
【図11】入金取引時の搬送ルートの説明図である。
【図12】出金取引時の搬送ルートの説明図である。
【図13】取り忘れ紙幣収納時の搬送ルートの説明図である。
【図14】補充動作時の搬送ルートの説明図である。
【図15】回収動作時の搬送ルートの説明図である。
【符号の説明】
C 繰り出し制御手段
F、P 繰り出しローラ
G ゲートローラ
R 搬送ローラ
W 紙幣押え
【特許請求の範囲】
【請求項1】 紙幣を集積した紙幣集積部と、当該紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す繰り出しローラと、当該繰り出しローラにより繰り出した紙幣を搬送路に沿って搬送する搬送ローラと、当該搬送路上の所定箇所に設けられ、紙幣の搬送方向の先端と後端とを検出するセンサと、当該センサによる紙幣の先端の検出時に前記繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させ、当該センサによる紙幣の後端の検出時に前記繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始し、これらの手順を繰り返して搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる繰り出し制御手段とから成ることを特徴とする紙葉類繰り出し方式。
【請求項1】 紙幣を集積した紙幣集積部と、当該紙幣集積部に集積した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す繰り出しローラと、当該繰り出しローラにより繰り出した紙幣を搬送路に沿って搬送する搬送ローラと、当該搬送路上の所定箇所に設けられ、紙幣の搬送方向の先端と後端とを検出するセンサと、当該センサによる紙幣の先端の検出時に前記繰り出しローラを停止することにより1枚の紙幣の繰り出しを完了し、この紙幣を前記搬送ローラにより搬送させ、当該センサによる紙幣の後端の検出時に前記繰り出しローラを起動することにより次の1枚の紙幣の繰り出しを開始し、これらの手順を繰り返して搬送路上に等間隔に紙幣を搬送させる繰り出し制御手段とから成ることを特徴とする紙葉類繰り出し方式。
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開平5−54224
【公開日】平成5年(1993)3月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−238749
【出願日】平成3年(1991)8月26日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【公開日】平成5年(1993)3月5日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)8月26日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
[ Back to top ]