説明

紙送り機構

【課題】 本発明は、プラテンローラの上流側と下流側の2箇所に突起を形成した紙送りローラを有する一対の紙送り機構を配設することにより、記録用紙の先端部から後端部まで全面印刷ができて記録用紙のムダを無くすることができると共に、一対の紙送り機構によって印刷中の記録用紙がスリップするのを防止できる紙送り機構を提供すること。
【解決手段】 印刷時における記録用紙11の搬送方向の印刷手段8の上流側と下流側とのそれぞれに紙送りローラ2、5と、この紙送りローラ2、5に圧接する圧接ローラ4、7とが配設され、印刷手段8により印刷中の記録用紙11は、裏面11bに一対の紙送りローラ2、5の突起2a、5aが所定寸法喰い込んで搬送されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに用いられる紙送り機構に係わり、印刷手段に適正に記録用紙を給紙して所望の画像を印刷すると共に、印刷後の記録用紙を適正に排紙可能な紙送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙送り機構30は、図6に示すように、金属製で円柱状の紙送りローラ31が配設され、この紙送りローラ31の外周面の長手方向に、所定の高さとピッチ寸法で先端が鋭角に突出形成された複数の突起32が、所定の幅寸法の突起形成部33が形成されている。
また、突起形成部33と対向する側には、記録用紙34を紙送りローラ31に所定の圧接圧で圧接可能な圧接ローラ35が配設されている。
【0003】
前記圧接ローラ35が記録用紙34を圧接することで、記録用紙34の裏面側に突起形成部33の突起32が喰い込むようになっている。この状態で、紙送りローラ31を回転駆動することで、画像印刷中の厚紙からなる記録用紙35を搬送可能になっている。
また、このような紙送り機構30を用いたプリンタ36は、図7に示すように、紙送りローラ31の図示左側に、プラテンローラ37が配設され、このプラテンローラ37に対してサーマルヘッド38が接離(ヘッドアップ/ダウン)可能になっている。
【0004】
前記従来の紙送り機構30により、印画紙等の厚紙からなる記録用紙34にカラー画像印刷するには、サーマルヘッド38をヘッドアップさせた状態で、矢印A方向に回転する紙送りローラ記録用紙34及び圧接ローラ35との間に矢印B方向に搬送される記録用紙34が圧接挟持される。
その後、サーマルヘッド38をヘッドダウンとヘッドアップとを繰り返すと共に、記録用紙34を矢印B方向及び矢印C方向への搬送を繰り返すことで、記録用紙34に異なる色のインクが重ね印刷されて、所望のカラー画像を印刷することができる。
【特許文献1】特開平10−119374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したような従来の紙送り機構30は、紙送りローラ31と圧接ローラ35との間に記録用紙34の先端部34aが圧接挟持された時点を頭出し位置として、サーマルヘッド38をヘッドダウンして印刷を開始することができる。
そのために、記録用紙34の先端部34aからに少なくとも寸法D印刷できない部分が発生して、記録用紙34がムダとなってコストアップになる問題があった。
【0006】
本発明は、前述したような課題を解決するためになされたもので、プラテンローラの上流側と下流側の2箇所に突起を形成した紙送りローラを有する一対の紙送り機構を配設することにより、記録用紙の先端部から後端部まで全面印刷ができて記録用紙のムダを無くしてコストダウンがすることができる紙送り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための第1の手段として本発明に関する紙送り機構は、記録用紙に所望の画像を印刷可能な印刷手段と、前記記録用紙を前記印刷手段に搬送可能な紙送りローラとを備え、前記紙送りローラの外周面には軸方向と円周方向とに所定のピッチ寸法と高さ寸法で突出形成した複数の突起が形成され、印刷時における前記記録用紙の搬送方向の前記印刷手段の上流側と下流側とのそれぞれに前記紙送りローラと、この紙送りローラに圧接する圧接ローラとが配設され、前記印刷手段により印刷中の前記記録用紙は、裏面に一対の前記紙送りローラの前記突起が所定寸法喰い込んで搬送されるようになっていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第2の手段として、前記紙送りローラは、前記印刷手段の前記上流側に配設した第1紙送りローラと、前記印刷手段の前記下流側に配設した第2紙送りローラからなり、前記第1紙送りローラの前記突起が喰い込んで前記記録用紙に形成される痕跡と、前記第2紙送りローラの前記突起が喰い込んで前記記録用紙に形成される痕跡とが、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする。
【0008】
また、前記課題を解決するための第3の手段として、前記第1、第2紙送りローラは、互いに軸方向に位置ズレして配設され、前記記録用紙に形成される前記痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第4の手段として、前記第1、第2紙送りローラの前記軸方向への前記位置ズレは、前記突起のピッチ寸法の1/2となっていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第5の手段として、前記第1、第2紙送りローラの前記それぞれの突起は、円周方向に位置ズレして、前記記録用紙に形成される前記痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紙送り機構は、紙送りローラの外周面には軸方向と円周方向とに所定のピッチ寸法と高さ寸法で突出形成した複数の突起が形成され、印刷時における記録用紙の搬送方向の印刷手段の上流側と下流側とのそれぞれに紙送りローラと、この紙送りローラに圧接する圧接ローラとが配設され、印刷手段により印刷中の記録用紙は、裏面に一対の紙送りローラの突起が所定寸法喰い込んで搬送されるようになっているので、印刷中の記録用紙を高精度に搬送して、高印字品質の画像印刷が可能な紙送り機構を提供できる。
また、紙送りローラは、印刷手段の上流側に配設した第1紙送りローラと、印刷手段の下流側に配設した第2紙送りローラからなり、第1紙送りローラの突起が喰い込んで記録用紙に形成される痕跡と、第2紙送りローラの突起が喰い込んで記録用紙に形成される痕跡とが、互いに重ならないように位置ズレして形成されるので、第1、第2紙送りローラの突起が位置ズレしていても、第1、第2紙送りローラの突起で形成される痕跡が重なることが無く、高精度な紙送りを行うことができる。
【0010】
また、第1、第2紙送りローラは、互いに軸方向に位置ズレして配設され、記録用紙に形成される痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されるので、印刷中の記録用紙を高精度に搬送することができる。
また、第1、第2紙送りローラの軸方向への位置ズレは、突起のピッチ寸法の1/2となっているので、突起によって形成される痕跡が重なることがない。
また、第1、第2紙送りローラのそれぞれの突起は、円周方向に位置ズレして、記録用紙に形成される痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されるので、印刷中の記録用紙を高精度に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の紙送り機構を図面に基づいて説明する。図1は本発明の紙送り機構を用いたプリンタの概略図であり、図2は、本発明に係わる第1、第2紙送りローラの位置関係を説明する概略図であり、図3、図4は、紙送りローラに形成した突起により発生した痕跡を説明する概略図であり、図5は本発明のその他の実施の形態を説明する概略図である。
まず、本発明の紙送り機構1は、後述する記録用紙11の矢印Eの搬送方向における印刷手段8の上流側(図示右側)に、金属からなり円柱状の第1紙送りローラ2が、左右両方向に回転駆動可能に配設されている。
【0012】
また、第1紙送りローラ2の外周面には、軸方向にピッチ寸法pで円周方向にピッチ寸法tの複数の突起2aが等間隔で、所定の幅寸法の突起形成部3、3の範囲に設けられている。
前記突起2aは、ピッチ寸法pが0.2〜1.0mmに形成され、その高さが、第1紙送りローラ2の外周面から40〜100μmに突出形成されている。
更に、突起2aの円周方向のピッチ寸法tも、0.4〜1.0mmに形成されている。また、第1紙送りローラ2の上部には、第1紙送りローラ2に圧接可能な硬質ゴム等からなる第1圧接ローラ4が配設されている。
前記第1圧接ローラ4は、第1紙送りローラ2の回転に追従して回転自在になっている。
【0013】
また、本発明の紙送り機構1は、後述する印刷手段8の下流側(図示左側)に、第2紙送りローラ5が回転駆動可能に配設されている。
前記第2紙送りローラ5の軸方向、及び円周方向には、第1紙送りローラ2の突起2aと同寸法に形成された突起5aが、ピッチ寸法p及びピッチ寸法tで、所定の幅寸法の突起形成部6、6の範囲に設けられている。
また、第2紙送りローラ5の上部には、第2紙送りローラ5に圧接可能な硬質ゴム等からなる第2圧接ローラ7が配設されている。
前記第2圧接ローラ7は、第2紙送りローラ5の回転に追従して回転自在になっている。
【0014】
また、本発明の紙送り機構1を用いたプリンタは、第1、第2紙送りローラ2、5の間に、印刷手段8が配設され、この印刷手段8には、円柱状のプラテンローラ9と、このプラテンローラ9の上部に配設されて、プラテンローラ9の外周面に発熱部10aが接離(ヘッドアップ/ダウン)可能なサーマルヘッド10が配設されている。
また、プラテンローラ9とサーマルヘッド10との間には、カラー画像等を印刷可能な印画紙等の厚紙からなる記録用紙11が矢印E、F方向に搬送可能になっている。
前記記録用紙11は、図示上面がカラー画像等を印刷可能な印画面11aとなっており、図示下面の裏面11bに、第1、第2紙送りローラ2、5に形成した複数の突起2a、5aが所定深さで喰い込み可能となっている。
【0015】
また、本発明の紙送り機構1の第1、第2紙送りローラ2、5の、それぞれの突起2a、5aの位置関係を図2に基づいて説明すると、第1、第2紙送りローラ2、5は、互いに軸方向に位置ズレしている。
そのために、図3に示すように、印刷時に搬送される記録用紙11は、第1、第2紙送りローラ2、5の突起2a、5aが、裏面11bに喰い込むことにより痕跡2b、5bが形成されるようになっている。
前記第1、第2紙送りローラ2、5は、図2に示すように、それぞれの突起2a、5aが、p/2位置ズレしているので、記録用紙11の裏面11bに喰い込んで形成される痕跡2b、5bが、互いに重ならないようになっている。
【0016】
このような構成の紙送り機構1を用いたプリンタを、例えば熱転写プリンタで図1に基づいて説明すると、サーマルヘッド10をヘッドダウンした状態で、記録用紙11を第1の紙送りローラ2と圧接ローラ4との間に圧接挟持し、課題1紙送りローラ2を反時計回り方向に回転させて記録用紙11を矢印Eの下流側に搬送する。すると、記録用紙11が、第1紙送りローラ2の搬送力で、記録用紙11の先端部が、ヘッドダウンしているサーマルヘッド10を上方に押し上げる。
このことにより、記録用紙11の先端部からインクリボンの1色目のインクが昇華印刷等される。
この時のプラテンローラ9は、反時計方向に回転駆動されているので、サーマルヘッド8に圧接される記録用紙11を、無理なく矢印Eの下流側に搬送することができる。そのために、搬送される厚紙からなる記録用紙11が、第1紙送りローラ2とプラテンローラ2との間で、湾曲したりすることがない。
【0017】
そして、先端部から印刷された記録用紙11は、第2の紙送りローラ5と圧接ローラ7とに圧接挟持され、第2紙送りローラ5の反時計回り方向への回転駆動で、印刷後の記録用紙11が下流側に搬送される。
この時、図3、図4に示すように、第1紙送りローラ2の突起2aが喰い込んで記録用紙11に形成される痕跡2bと、第2紙送りローラ5の突起5aが喰い込んで記録用紙11に形成される痕跡5bとが、互いに重ならないように位置ズレして形成されるようになっている。
【0018】
その後、記録用紙11の後端部まで1色目のインクが全面印刷されると、サーマルヘッド10をヘッドアップすると共に、第1、第2紙送りローラ2、5を時計回り方向に反転させる。すると、1色目の色の印刷が終了した記録用紙11が矢印F方向の上流側にバックフィードされる。
前記矢印F方向にバックフィードされる記録用紙11は、1色目の印刷を行うときに第1紙送りローラ2の突起2aが形成した痕跡2bに突起2aが再度喰い込み、第2紙送りローラ5の突起5aが形成した痕跡5bに突起5aが再度喰い込むので、記録用紙11位置ズレ無く高精度にバックフィードできる。
即ち、第1、第2紙送りローラ2、5の突起2a、5aのそれぞれのピッチp、tに寸法ズレがあったとしても、この寸法ズレに影響なく、同じ痕跡2b、5b突起2a、5aを繰り返し喰い込ませることができ、記録用紙11を高精度に搬送できる。
【0019】
そして、記録用紙11の前端部がサーマルヘッド10の発熱部10aまでバックフィードされると、第1、第2紙送りローラ2、5の時計回り方向への回転が停止すると共に、サーマルヘッド10がヘッドダウンする。
そして、第1、第2紙送りローラ2、5を反時計回り方向に回転駆動すると共にプラテンローラ9を回転駆動することで、記録用紙11の先端部から後端部の全面にインクリボンの2色目のインクが1色目の画像の上に重ね印刷される。
このような動作を繰り返すことで、1枚の記録用紙の先端部から後端部までの全面に所望のカラー画像を印刷することができる。
【0020】
尚、本発明の実施の形態では、第1、第2紙送りローラ2、5のそれぞれの突起2a、5aをP/2ずらした物で説明したが、図5に示すように、第1、第2形成部3、6を寸法h挟んで互いに重ならない位置に形成したものでも良い。
また、本発明の実施の形態では、第1、第2紙送りローラ2、5の、第1、第2突起形成部3、6を2ヶ所形成したもので説明したが、3ヶ所でも良い。
また、それぞれの突起2a、5aの数は、一定でなくても良く、記録用紙11の大きさにもよって変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の紙送り機構を用いたプリンタの概略図である。
【図2】本発明に係わる第1、第2紙送りローラの位置関係を説明する概略図である。
【図3】紙送りローラに形成した突起により発生した痕跡を説明する概略図である。
【図4】紙送りローラに形成した突起により発生した痕跡を説明する概略図である。
【図5】その他の実施の形態を説明する概略図。
【図6】従来の紙送り機構の側面図である。
【図7】従来の紙送り機構を用いたプリンタの概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1 本発明の紙送り機構
2 第1紙送りローラ
2a 突起
2b 痕跡
3 第1突起形成部
4 第1圧接ローラ
5 第2紙送りローラ
5a 突起
6 第2突起形成部
7 第2圧接ローラ
8 印刷手段
9 プラテンローラ
10 サーマルヘッド
10a 発熱部
11 記録用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙に所望の画像を印刷可能な印刷手段と、前記記録用紙を前記印刷手段に搬送可能な紙送りローラとを備え、前記紙送りローラの外周面には軸方向と円周方向とに所定のピッチ寸法と高さ寸法で突出形成した複数の突起が形成され、印刷時における前記記録用紙の搬送方向の前記印刷手段の上流側と下流側とのそれぞれに前記紙送りローラと、この紙送りローラに圧接する圧接ローラとが配設され、前記印刷手段により印刷中の前記記録用紙は、裏面に一対の前記紙送りローラの前記突起が所定寸法喰い込んで搬送されるようになっていることを特徴とする紙送り機構。
【請求項2】
前記紙送りローラは、前記印刷手段の前記上流側に配設した第1紙送りローラと、前記印刷手段の前記下流側に配設した第2紙送りローラからなり、前記第1紙送りローラの前記突起が喰い込んで前記記録用紙に形成される痕跡と、前記第2紙送りローラの前記突起が喰い込んで前記記録用紙に形成される痕跡とが、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする請求項1記載の紙送り機構。
【請求項3】
前記第1、第2紙送りローラは、互いに軸方向に位置ズレして配設され、前記記録用紙に形成される前記痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする請求項2記載の紙送り機構。
【請求項4】
前記第1、第2紙送りローラの前記軸方向への前記位置ズレは、前記突起のピッチ寸法の1/2となっていることを特徴とする請求項3記載の紙送り機構。
【請求項5】
前記第1、第2紙送りローラの前記それぞれの突起は、円周方向に位置ズレして、前記記録用紙に形成される前記痕跡が、互いに重ならないように位置ズレして形成されることを特徴とする請求項2記載の紙送り機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−22771(P2007−22771A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209491(P2005−209491)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】