説明

紡績機及び紡績糸の製造方法

【課題】別途工程を設けることなく糸に機能性を付与する技術を提供することを目的としている。
【解決手段】空気の旋回流により繊維を紡績して紡績糸Yを紡出する紡績機100であって、所定の機能を紡績糸Yに付与する添加剤を空気に供給する添加剤供給装置3を備え、添加剤供給装置3は、抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を紡績糸Yに付与する添加剤を供給するものであり、当該添加剤は、紡出される紡績糸の単位長さあたりの重量の0.01%以上、0.2%以下の重量に設定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の旋回流により繊維を紡績する紡績機及び紡績糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気の旋回気流を利用して繊維束を撚ることで紡績糸を製造する空気紡績装置が知られている。空気紡績装置は、紡績室に空気を供給することによって旋回気流を発生させ、繊維束を構成する各繊維を旋回させることで紡績糸を製造する(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、近年の抗菌防臭性についての認識の高まりから繊維や紡績糸に抗菌防臭機能を付加する製造方法が開発されている。具体的には、殺菌・抗菌作用を有する銀等を含有する無機系抗菌性化合物の水溶液に繊維等を浸漬処理して、当該繊維に抗菌防臭機能を付加する繊維の加工方法が知られている。例えば、特許文献2のごとくである。
【0004】
しかし、特許文献2に記載の技術では、紡績前の繊維や紡績後の糸(紡績糸)を当該水溶液に浸漬処理することで抗菌防臭機能を付加している。つまり、抗菌防臭機能等が付与された糸を製造するために、空気紡績装置による紡績工程の前工程又は後工程に、当該水溶液に繊維や紡績糸を浸漬する工程が別途必要となる。このため、容易に糸に機能性を付与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−1935号公報
【特許文献2】特開2009−270208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、別途工程を設けることなく糸に機能性を付与する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、空気の旋回流により繊維を紡績して紡績糸を紡出(生成)する紡績機であって、所定の機能を前記紡績糸に付与する添加剤を前記空気に供給する添加剤供給装置を備えるものである。
【0009】
第2の発明は、前記添加剤供給装置は、抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を前記紡績糸に付与する添加剤を供給するものである。
【0010】
第3の発明は、前記添加剤供給装置は、紡出された前記紡績糸の単位長さあたりの重量の0.01%以上、0.2%以下の重量の前記添加剤を供給するものである。
【0011】
第4の発明は、前記繊維を紡績室に案内する繊維案内部と、前記紡績室に旋回流を発生させる空気を噴射する空気孔が少なくとも1つ形成されたノズルブロックと、前記旋回室で旋回された前記繊維が通過する中空ガイド軸体と、を有する空気紡績装置を備える。前記添加剤供給装置は、前記空気孔から噴射される空気に前記添加剤を供給するものである。
【0012】
第5の発明は、前記紡績機により紡出された紡績糸をパッケージに巻き取る巻取り装置を備えるものである。
【0013】
第6の発明は、複数の前記紡績装置と、空気を圧送する空気圧送装置と、前記空気圧送装置が圧送した空気を案内する空気配管と、を備える。前記添加剤供給装置は、前記空気配管を流れる空気がそれぞれの前記空気紡績装置に向けて分岐される上流側で該空気配管に添加剤を供給する。
【0014】
第7の発明は、抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を紡績糸に付与する添加剤が混合された空気の旋回流によって繊維を紡績する紡績糸の製造方法である。
【0015】
第8の発明は、紡出された紡績糸の単位長さあたりの重量の0.01%以上、0.2%以下の重量の前記添加剤を供給する紡績糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
第1の発明によれば、機能を付与する添加剤が供給された空気の旋回流によって紡績するので、紡績工程において繊維に添加剤が付着する。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に機能性を付与することができる。
【0018】
第2の発明によれば、所定の機能を付与する添加剤を供給する。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に所定の機能を付与することができる。
【0019】
第3の発明によれば、添加剤を空気に供給しても旋回流による紡績機能を損なうことがない。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に機能性を付与することができる。
【0020】
第4の発明によれば、繊維案内部と、ノズルブロックと、中空ガイド軸体を具備する空気紡績装置によって機能性を付与しつつ繊維を紡績する。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に機能性を付与することができる。
【0021】
第5の発明によれば、機能性が付与された紡績糸をすぐに巻き取る。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に機能性を付与し、かつ糸の機能性を損なうことなくパッケージを作成することができる。
【0022】
第6の発明によれば、添加剤供給装置が複数の空気紡績装置に対して添加剤を供給する。これにより、別途工程を設けることなく複数の空気紡績装置によって紡績糸に機能性を付与することができる。また、単一の供給装置で複数の空気紡績装置に添加剤を供給することができるので紡績機の構成が複雑にならない。
【0023】
第7の発明によれば、所定の機能を付与する添加剤が供給された空気の旋回流によって繊維を紡績するので、紡績工程において繊維に添加剤が付着する。これにより、別途工程を設けることなく機能性を付与した紡績糸を製造することができる。
【0024】
第8の発明によれば、添加剤を空気に供給しても旋回流による紡績機能を損なうことがない。これにより、別途工程を設けることなく紡績糸に機能性を付与した紡績糸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】紡績機100の全体構成を示す図。
【図2】紡績ユニット1の構成を示す図。
【図3】紡績ユニット1に設けられたドラフト装置5を示す図。
【図4】紡績ユニット1に設けられた空気紡績装置6を示す図。
【図5】紡績ユニット1に設けられた糸欠点検出装置7を示す図。
【図6】紡績ユニット1に設けられた張力安定装置8を示す図。
【図7】空気分配装置2ならびに添加剤供給装置3の構成を示す図。
【図8】添加剤を含む空気が供給された空気紡績装置6を示す図。
【図9】空気紡績装置6の稼動台数に応じて添加剤の供給量を調節する制御態様を示す図。
【図10】空気分配装置2ならびに添加剤供給装置3の構成を示す他の図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を用いて、本発明の実施形態に係る紡績機100について説明する。
【0027】
図1に示すように、紡績機100は、主に複数台の紡績ユニット1によって構成される。紡績機100には、空気分配装置2(図1に図示せず。図7参照。)と、添加剤供給装置3(図1に図示せず。図7参照。)と、が各一台ずつ備えられている。
【0028】
まず、図2を用いて、紡績ユニット1の構成について詳細に説明する。
【0029】
紡績ユニット1は、繊維束Fから紡績糸Yを製造してパッケージPを作成する紡績機である。紡績ユニット1は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向に沿って以下の順に配置された、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、空気紡績装置6と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9と、で構成される。
【0030】
スライバ供給ユニット4は、紡績糸Yの原料となる繊維束Fをドラフト装置5へ供給する。スライバ供給ユニット4は、主にスライバケース41と、スライバガイド42と(図3参照)、で構成される。スライバケース41に貯溜された繊維束Fは、スライバガイド42に案内されてドラフト装置5へ供給される。
【0031】
ドラフト装置5は、繊維束Fを牽伸することで該繊維束Fの太さを均一化する。図3に示すように、ドラフト装置5は、繊維束Fの送り方向に沿って以下の順に配置された、バックローラ対51と、サードローラ対52と、ミドルローラ対53と、フロントローラ対54と、の四組のドラフトローラ対で構成される。なお、図中に示す矢印は、繊維束Fの送り方向を示している。
【0032】
四組のドラフトローラ対51・52・53・54は、それぞれボトムローラ51A・52A・53A・54Aと、トップローラ51B・52B・53B・54Bと、で構成される。また、ミドルローラ対53を構成するボトムローラ53A及びトップローラ53Bには、皮又は合成ゴム製のエプロンバンド53C・53Cが巻回されている。
【0033】
ボトムローラ51A・52A・53A・54Aは、図示しない駆動装置によって同じ方向に回転される。トップローラ51B・52B・53B・54Bは、ボトムローラ51A・52A・53A・54Aの回転によって従動し、同じ方向に回転される。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54は、繊維束Fの送り方向に沿って順次、回転速度が速くなるように設定されている。
【0034】
このような構成により、ドラフトローラ対51・52・53・54に挟持された繊維束Fは、各ドラフトローラ対51・52・53・54を通過する度に送り速度が増していき、隣接するドラフトローラ対との間で牽伸されることとなる。このようにして、ドラフト装置5は、繊維束Fを牽伸することで該繊維束Fの太さを均一化することを可能としている。
【0035】
空気紡績装置6は、牽伸された繊維束Fを撚ることで紡績糸Yを製造する。図4に示すように、空気紡績装置6は、主にファイバーガイド61と、スピンドル62と、ノズルブロック63と、で構成される。なお、図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。図中に示す白塗りの矢印は、供給された空気の流れ方向を示している。
【0036】
ファイバーガイド61は、紡績室SCの一部を構成する部材である。ファイバーガイド61は、ドラフト装置5によって牽伸された繊維束Fを紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ファイバーガイド61は、紡績室SCに連通された繊維導入路61gによって該紡績室SC内へ繊維束Fを導く。また、ファイバーガイド61には、繊維束Fを沿わせて案内するニードル61nが紡績室SCの内部に突設するように設けられている。
【0037】
スピンドル62は、紡績室SCの一部を構成する部材である。スピンドル62は、紡績室SCで撚られた繊維束F、即ち、紡績糸Yを糸欠点検出装置7へ導く。具体的に説明すると、スピンドル62は、紡績室SCに連通された繊維通過路62sによって送り方向下流側に配置された糸欠点検出装置7へ紡績糸Yを導く。
【0038】
ノズルブロック63は、紡績室SCの一部を構成する部材である。ノズルブロック63は、後述する空気圧送装置21が圧送した空気を紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ノズルブロック63は、紡績室SCに連通された空気孔63aによって該紡績室SC内へ空気を導く。なお、ノズルブロック63に設けられた各空気孔63aは、各空気孔63aから噴出した空気が紡績室SCの中心軸を中心として互いに同じ方向に流れるように連通されているため、該紡績室SCの内部で空気の旋回気流を発生させる(図中白矢印参照)。
【0039】
ここで、紡績室SCについて更に詳しく説明する。紡績室SCは、ファイバーガイド61と、スピンドル62と、ノズルブロック63と、で囲まれた空間である。詳細には、紡績室SCは、ノズルブロック63に設けられた略円錐形状の貫通孔63pに対して、一方から挿入された略円錐形状のスピンドル62と、他方に取り付けられたファイバーガイド61と、で囲まれた空間である。
【0040】
紡績室SCは、ファイバーガイド61とスピンドル62の間に構成される空間SC1と、スピンドル62とノズルブロック63の間に構成される空間SC2と、に分けられる。空間SC1において、繊維束Fを構成する各繊維は、各繊維の後端部が旋回気流によって反転される(図中二点鎖線参照)。また、空間SC2において、反転された各繊維の後端部が旋回気流によって旋回される(図中二点鎖線参照)。
【0041】
このような構成により、ニードル61nに沿って導かれた繊維束Fは、該繊維束Fを構成する各繊維の後端部が旋回されて、次々と中心部の繊維に巻き付いていく。このようにして、空気紡績装置6は、空気の旋回気流を利用して繊維束Fを撚ることができ、紡績糸Yを製造する。なお、空気紡績装置6は、ファイバーガイド61にニードル61nが設けられていない構成であっても良い。この場合ファイバーガイド61は、該ファイバーガイド61の下流端のエッジによってニードル61nの機能を実現する。
【0042】
糸欠点検出装置7は、紡績糸Yに生じた欠点部を検出する。図5に示すように、糸欠点検出装置7は、主に光源部71と、受光部72と、ケーシング73と、で構成される。なお、図中に示す矢印は、光源部71から照射された光の方向を示している。
【0043】
光源部71は、順方向に電圧を印加することによって発光する半導体素子、即ち、発光ダイオードである。光源部71は、該光源部71からの光を紡績糸Yに照射できるように配置されている。
【0044】
受光部72は、光信号によって電流の制御を可能とする半導体素子、即ち、フォトトランジスタである。受光部72は、光源部71によって照射された光を受光できるように配置されている。
【0045】
ケーシング73は、光源部71ならびに受光部72を所定の位置に保持する部材である。ケーシング73には、紡績糸Yが通過する糸通路73aが設けられている。ケーシング73は、紡績糸Yを挟んで対向するように光源部71ならびに受光部72を保持している。
【0046】
このような構成により、受光部72が受光する光量は、光源部71から紡績糸Yへ照射された光のうち紡績糸Yによって遮光された光量を除く値となる。なお、糸欠点検出装置7は、電気回線を介して制御装置Cと接続されている(図7参照)。制御装置Cは、糸欠点検出装置7からの検出信号を受信することによって、紡績糸Yに生じた欠点部を把握する。
【0047】
なお、糸欠点検出装置7が検出できる欠点部には、紡績糸Yの一部が太過ぎたり細過ぎたりする異常の他、紡績糸Yにポリプロピレン等の異物が介在する場合も含まれる。また、糸欠点検出装置7は、上記のような光学式のセンサ以外にも、静電容量式のセンサを採用することも可能である。
【0048】
張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。図6に示すように、張力安定装置8は、主にローラ81と、動力部82と、解舒部材83と、で構成される。なお、図中に示す矢印は、紡績糸Yの送り方向を示している。
【0049】
ローラ81は、紡績糸Yを空気紡績装置6から引き出して該紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。ローラ81は、動力部82の回転軸82aに取り付けられて該動力部82によって回転される。そして、空気紡績装置6から引き出された紡績糸Yは、該ローラ81の外周面に巻回される。
【0050】
動力部82は、電力を供給されることによって駆動する電動モータである。動力部82は、ローラ81を回転させるとともに、該ローラ81の回転速度を所定の値で一定に維持する。これにより、ローラ81に巻回される紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができる。
【0051】
解舒部材83は、ローラ81と一体又は独立して回転することで巻回された紡績糸Yの解舒を補助する糸掛け部材である。解舒部材83の一端部は、ローラ81の回転軸84に取り付けられている。解舒部材83の他端部は、ローラ81の外周面に向かって湾曲するように形成されている。そして、解舒部材83は、湾曲した部位に紡績糸Yが掛けられることによって該紡績糸Yをローラ81から解舒することを可能としている。なお、解舒部材83が取り付けられた回転軸84の基部には、解舒部材83の回転に抗するように抵抗力を生じる永久磁石(不図示)が配置されている。
【0052】
このような構成により、解舒部材83は、紡績糸Yに掛かる張力が低く、上述した抵抗力に打ち負ける場合、ローラ81と一体となって回転する。一方、解舒部材83は、紡績糸Yに掛かる張力が高く、上述した抵抗力に打ち勝つ場合、ローラ81から独立して回転する。このようにして、張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力に応じて解舒部材83をローラ81と一体又は独立して回転させることができ、該紡績糸Yの解舒速度を調節することを可能としている。これにより、張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。
【0053】
なお、上述したように、張力安定装置8は、空気紡績装置6から紡績糸Yを引き出す役割を有している。しかし、例えば空気紡績装置6の下流側にデリベリローラとニップローラを配置して、該デリベリローラとニップローラによって紡績糸Yを引き出すようにしても良い。更に、デリベリローラとニップローラの下流側に張力安定装置8を配置して紡績糸Yを巻回して貯溜する構成としても良い。或いは、張力安定装置8を省略し、巻取装置9によって紡績糸Yを引き出す構成としても良い。
【0054】
巻取装置9は、紡績糸Yを巻回することで略円筒形状(チーズ形状)のパッケージPを作成する。巻取装置9は、主に駆動ローラ91と、図示しないクレードルと、で構成される。クレードルは、ボビン92を回転自在に保持する。
【0055】
駆動ローラ91は、回転することによってボビン92及びパッケージPを従動回転させる回転体である。駆動ローラ91は、パッケージPの外径の変化に応じて回転速度を調節し、該パッケージPの周速度を一定に維持する。これにより、ボビン92に巻回される紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができる。
【0056】
ボビン92は、回転することによって紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。ボビン92は、該ボビン92或いはパッケージPの外周面に接触した状態で回転する駆動ローラ91によって従動回転される。なお、巻取装置9は、図示しない綾振装置によって紡績糸Yを綾振するため、パッケージPにおける紡績糸Yの偏りを防いでいる。
【0057】
このような構成により、ボビン92に導かれた紡績糸Yは、該ボビン92の外周面に偏ることなく巻回されていく。このようにして、巻取装置9は、略円筒形状(チーズ形状)のパッケージPを作成することを可能としている。なお、巻取装置9は、図2に図示されているような略円筒形状(チーズ形状)のパッケージP以外にも、例えば略円錐形状(コーン形状)のパッケージPを作成することができる。
【0058】
次に、図7を用いて、空気分配装置2ならびに添加剤供給装置3の構成について詳細に説明する。なお、図中に示す矢印は、空気の流れ方向を示している。
【0059】
上述したように、紡績機100には、空気分配装置2が一台備えられている。空気分配装置2は、主に空気圧送装置21と、第一空気配管22と、第一分配管23と、第二空気配管24と、第二分配管25と、で構成される。
【0060】
空気圧送装置21は、空気を加圧して送り出す装置である。空気圧送装置21は、詳細な図示は省略しているが、主に電動モータを駆動させることで空気を加圧する電動コンプレッサ等から構成される。なお、空気圧送装置21が圧送した空気の圧力は、圧力調節弁211によって調節される。
【0061】
第一空気配管22は、空気圧送装置21が圧送した空気を案内する通路である。第一空気配管22は、各紡績ユニット1が配置された方向に沿って平行又は略平行に取り付けられている。
【0062】
第一分配管23は、第一空気配管22に流れる空気を分岐させて空気紡績装置6へ導く通路である。第一分配管23の一端部は、空気紡績装置6に接続されている。第一分配管23の他端部は、第一空気配管22の中途部に接続されている。これにより、第一分配管23は、第一空気配管22に流れる空気を分岐させて空気紡績装置6へ導くことを可能としている。なお、第一分配管23によって空気紡績装置6へ導かれる空気の流量は、該第一分配管23の中途部に配置された開閉バルブ231によって調節される。
【0063】
第二空気配管24は、空気圧送装置21が圧送した空気を案内する通路である。第二空気配管24は、各紡績ユニット1が配置された方向に沿って平行又は略平行に取り付けられている。
【0064】
第二分配管25は、第二空気配管24に流れる空気を分岐させて空気紡績装置6へ導く通路である。第二分配管25の一端部は、空気紡績装置6に接続されている。第二分配管25の他端部は、第二空気配管24の中途部に接続されている。これにより、第二分配管25は、第二空気配管24に流れる空気を分岐させて空気紡績装置6へ導くことを可能としている。なお、第二分配管25によって空気紡績装置6へ導かれる空気の流量は、該第二分配管25の中途部に配置された開閉バルブ251によって調節される。
【0065】
このようにして、空気分配装置2は、空気圧送装置21が圧送した空気を第一空気配管22又は第二空気配管24を介して空気紡績装置6へ供給できる。なお、本発明の実施形態としては、第二空気配管24を省略した構成であっても良く、本実施形態に係る紡績機100よりも多くの空気配管を備える構成であっても良い。
【0066】
また、上述したように、紡績機100には、添加剤供給装置3が一台備えられている。添加剤供給装置3は、主に分岐配管31と、圧力調節装置32と、添加剤貯溜槽33と、添加剤供給配管34と、で構成される。
【0067】
分岐配管31は、第一空気配管22に流れる空気を分岐させて添加剤貯溜槽33へ導く通路である。分岐配管31の一端部は、添加剤貯溜槽33に接続されている。分岐配管31の他端部は、第一空気配管22の中途部に接続されている。これにより、分岐配管31は、第一空気配管22に流れる空気を分岐させて添加剤貯溜槽33へ導くことを可能としている。なお、分岐配管31によって添加剤貯溜槽33へ導かれる空気の流量は、該分岐配管31の中途部に配置されたバルブ311によって調節される。
【0068】
圧力調節装置32は、添加剤貯溜槽33に導かれる空気を加圧して該添加剤貯溜槽33の内圧を調節する装置である。圧力調節装置32は、主に摺動ピストンを駆動させることで空気を加圧する増圧弁等から構成される。或いは、電動モータを駆動させることで空気を加圧する電動コンプレッサを用いても良い。なお、圧力調節装置32は、電気回線を介して制御装置Cと接続されている。制御装置Cは、圧力調節装置32へ制御信号を送信することによって、該圧力調節装置32の運転状態を適宜に制御する。
【0069】
添加剤貯溜槽33は、添加剤を貯溜する容器である。添加剤貯溜槽33には、添加剤の貯溜量を検出するレベルセンサ331が備えられている。レベルセンサ331は、電気回線を介して制御装置Cと接続されている。制御装置Cは、レベルセンサ331からの検出信号を受信することによって、添加剤の貯溜量を把握する。
【0070】
添加剤供給配管34は、添加剤貯溜槽33に貯溜された添加剤を第一空気配管22へ導く通路である。添加剤供給配管34の一端部は、添加剤貯溜槽33の底部で開口するように接続されている。添加剤供給配管34の他端部は、第一空気配管22を流れる空気がそれぞれの空気紡績装置6に向けて分岐される上流側に接続されている。
【0071】
このようにして、添加剤供給装置3は、添加剤貯溜槽33に貯溜された添加剤を第一空気配管22に供給できる。また、添加剤供給装置3は、添加剤貯溜槽33の内圧を調節することによって添加剤の供給量を調節できる。
【0072】
ここで、添加剤は、抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を紡績糸Yに付与するものである。つまり、添加剤供給装置3は、必要な機能を組み合わせた添加剤を紡績糸Yに付加することができる。特に、解舒機能のための添加剤として液状ワックスを供給することで、紡績ユニット1ごとに固形ワックスを配置する必要がない。なお、本実施形態において、添加剤はこれに限られるものではなく繊維束Fに付与された油剤の堆積を防ぐ堆積防止剤等を組み合わせてもよい。
【0073】
このような構成により、本紡績機100は、空気紡績装置6に供給される空気に添加剤を加えることができるとともに、簡素な構造でありながら高い精度で添加剤の供給量を調節できる。これにより、空気紡績装置6への添加剤の供給量が過多となったり、過少となったりすることを防止できる。具体的には、制御装置Cは、添加剤の供給量を紡出される紡績糸Yの単位長さあたりの重量に対して0.01%以上、0.2%以下に制御する。これにより、各空気紡績装置6に供給される空気に添加剤を混合しても旋回流による紡績機能を損なうことなく、紡績糸Yに機能性を付与して品質を向上させることが可能となる。
【0074】
添加剤供給装置3が複数の空気紡績装置6に対して添加剤を供給するので、別途工程を設けることなく複数の空気紡績装置6によって紡績糸Yに機能性を付与することができる。また、単一の添加剤供給装置3で複数の空気紡績装置6に添加剤を供給することができるので紡績機100の構成が複雑にならない。
【0075】
なお、本実施形態に係る紡績機100は、第一空気配管22の上流部に配置されたバルブ221を開弁し、第二空気配管24の上流部に配置されたバルブ241を閉弁することで、第一空気配管22のみを用いて空気紡績装置6へ空気を供給することができる。これにより、添加剤を含む空気のみを空気紡績装置6に供給することが可能となる。
【0076】
一方、本実施形態に係る紡績機100は、第一空気配管22の上流部に配置されたバルブ221を閉弁し、第二空気配管24の上流部に配置されたバルブ241を開弁することで、第二空気配管24のみを用いて空気紡績装置6へ空気を供給することができる。これにより、添加剤を含まない空気のみを空気紡績装置6に供給することが可能となる。
【0077】
次に、図8を用いて、空気紡績装置6への添加剤が供給される空気紡績装置6について説明する。
【0078】
紡績室SC内の空間SC1及び空間SC2には、空気圧送装置2及び添加剤供給装置3によって添加剤が供給された空気が充満している。また、空間SC2においては、添加剤が供給された空気が空気孔63aから噴射されて旋回流を形成している。
【0079】
空気紡績装置6において、繊維束Fを構成する各繊維の後端部は、空間SC2の旋回気流によって反転されるとともに旋回される(図中二点鎖線参照)。この際、旋回している各繊維には、旋回流に含まれる添加剤が付着する。さらに、ニードル61nに沿って導かれた繊維束Fには、空間SC1に充満している空気に含まれる添加剤が付着する。そして、添加剤が付着した繊維束Fに、添加剤が付着した各繊維の後端部が旋回されて、次々と中心部の繊維に巻き付いていく。このようにして、繊維束Fは、空気紡績装置6において空気の旋回流により添加剤が付着されつつ紡績糸Yに紡出される。
【0080】
添加剤が付着した紡績糸Yは、巻取装置9に回転可能に保持されたボビン92の外周面に偏ることなく巻回されていく。そして、巻取装置9は、添加剤が付着した紡績糸Yが巻き取られた略円筒形状(チーズ形状)のパッケージPを作成する。このようにして、紡績機100は、別途工程を設けることなく紡績糸Yに機能性を付与し、かつ紡績糸Yの機能性を損なうことなくパッケージPを作成することができる。
【0081】
図9を用いて、空気紡績装置6の稼動台数に応じて添加剤の供給量を調節する制御態様について説明する。図9の横軸は、空気紡績装置6の稼動台数を示している。図9の縦軸は、全ての空気紡績装置6が稼動しているときの添加剤の供給量に対する実際の供給量の比を示している。
【0082】
本紡績機100は、空気紡績装置6の稼働台数の増加に応じて添加剤の供給量を増量させる。詳細に説明すると、本紡績機100の制御装置Cは、添加剤供給装置3を構成する圧力調節装置32を制御することによって、空気紡績装置6の稼働台数の増加に応じて添加剤の供給量を増量させる。
【0083】
一方、本紡績機100は、空気紡績装置6の稼働台数の減少に応じて添加剤の供給量を減量させる。詳細に説明すると、本紡績機100の制御装置Cは、添加剤供給装置3を構成する圧力調節装置32を制御することによって、空気紡績装置6の稼働台数の減少に応じて添加剤の供給量を減量させる。
【0084】
なお、図9の実線に示すように、本紡績機100においては、空気紡績装置6の稼働台数に応じて段階的に添加剤の供給量を調節する。但し、図9の破線に示すように、連続的に添加剤の供給量を調節することも可能である。なお、制御装置Cは、圧力調節装置32の単位時間あたりの運転時間と停止時間の割合、いわゆるデューティー比を制御することで添加剤の供給量を調節する。添加剤の供給量の調節は、レギュレータによる差圧の調節や添加剤供給装置3による添加剤の供給量を直接制御することによって行なっても良い。
【0085】
このような構成により、本紡績機100は、空気紡績装置6に供給される空気に添加剤を加えることができるとともに、空気紡績装置6の稼働台数に応じて添加剤の供給量を調節できる。これにより、空気紡績装置6への添加剤の供給量が過多となったり、過少となったりすることを防止でき、紡績糸Yの品質を向上させることが可能となる。
【0086】
次に、本紡績機100の制御装置Cが空気紡績装置6の稼働台数を把握する方法について説明する。
【0087】
制御装置Cは、各紡績ユニット1から送信された電気信号を受信することで空気紡績装置6の稼働台数を把握する。具体的に説明すると、制御装置Cは、各紡績ユニット1から稼動状態を示す稼動信号を受信することによって空気紡績装置6の稼動台数を把握する。或いは、制御装置Cは、糸欠点検出装置7から送信された糸走行信号を受信することによって空気紡績装置6の稼動台数を把握する。また、例えばドラフト装置5等にセンサを取り付け、該センサからの糸走行信号等によって空気紡績装置6の稼動台数を把握することも可能である。
【0088】
また、制御装置Cは、第一空気配管22に備えられた空気流量測定装置222の測定結果に基づいて空気紡績装置6の稼働台数を把握することも可能である。これは、上述したように、第一空気配管22を流れる空気の流量と空気紡績装置6の稼働台数とに相関関係があることを利用している。空気流量測定装置222は、例えば熱線式流量計や差圧式流量計等で良く、測定形式は限定しない。
【0089】
このような構成により、本紡績機100は、空気紡績装置6の稼働台数を正確に把握できるため、適宜に添加剤の供給量を調節できる。これにより、空気紡績装置6への添加剤の供給量が過多となったり、過少となったりすることを防止でき、紡績糸Yの品質を向上させることが可能となる。
【0090】
次に、図10を用いて、第一空気配管22の内部に付着した添加剤が空気紡績装置6に流れ込むことを防止できる構造について説明する。
【0091】
上述したように、第一空気配管22には、添加剤供給装置3によって添加剤等の添加剤が供給される。従って、第一空気配管22の内部に付着した添加剤が大量に空気紡績装置6に流れ込む可能性がある。そのため、本紡績機100は、第一空気配管22を傾斜して取り付けることによって、該第一空気配管22の内部に付着した添加剤を所定箇所まで導くようにしている。
【0092】
このような構成により、本紡績機100は、第一空気配管22の内部に付着した添加剤を所定箇所に溜めることができる。これにより、第一空気配管22の内部に付着した添加剤が空気紡績装置6に流れ込むことを防止でき、紡績糸Yの品質を向上させることが可能となる。
【0093】
また、第一空気配管22には、該第一空気配管22に溜まった添加剤を外部に排出する添加剤排出口223が備えられている。
【0094】
このような構成により、本紡績機100は、第一空気配管22の内部に溜まった添加剤を排出することができる。これにより、第一空気配管22の内部に溜まった添加剤が空気紡績装置6に流れ込むことを防止でき、紡績糸Yの品質を向上させることが可能となる。
【0095】
図10に図示される実施形態では、第一空気配管22は、添加剤供給装置3から遠くなるに従って下方に傾斜するように配置されている。第一空気配管22は、本実施形態に限定されず、例えば添加剤供給装置3から遠くなるに従って上方に傾斜するように配置されても良い。この場合、添加剤排出口223は、添加剤供給装置3の近傍に配置される。また、第一空気配管22に付着した添加剤が添加剤排出口223から添加剤貯溜槽33に戻るようにしても良い。
【0096】
本実施形態に係る紡績機100は、添加剤供給装置3を一台備える構成である。しかし、複数の紡績ユニット1を複数のグループに分ける場合、グループ毎に添加剤供給装置3と空気圧送装置21とを設けても良い。複数の紡績ユニット1に対して共通の添加剤供給装置3と空気圧送装置21を設けることにより、紡績機100全体の構成を簡素化でき、且つ、紡績機100が大型化することを回避できる。また、各紡績ユニット1に個別に添加剤供給装置3を設けても良い。この場合、各紡績ユニット1で異なる種類の添加剤を供給することが出来る。
【0097】
なお、本実施形態に係る紡績機100は、繊維束Fが上方から下方に向けて送られる。しかし、本発明に係る紡績機100は、このような実施形態に限られない。例えば繊維束Fが格納されているケンスを機台下部に配置し、巻取装置9を機台上部に配置した構成であっても良い。紡績ユニット1が備える空気紡績装置6は、上記実施形態のものに限らず、例えば、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズル方式であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
3 添加剤供給装置
6 空気紡績装置
100 紡績機
Y 紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の旋回流により繊維を紡績して紡績糸を紡出する紡績機であって、
所定の機能を前記紡績糸に付与する添加剤を前記空気に供給する添加剤供給装置を備える紡績機。
【請求項2】
前記添加剤供給装置は、
抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を前記紡績糸に付与する添加剤を供給する請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記添加剤供給装置は、
紡出された前記紡績糸の単位長さあたりの重量の0.01%以上、0.2%以下の重量の前記添加剤を供給する請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の紡績機。
【請求項4】
前記繊維を紡績室に案内する繊維案内部と、
前記紡績室に旋回流を発生させる空気を噴射する空気孔が少なくとも1つ形成されたノズルブロックと、
前記旋回室で旋回された前記繊維が通過する中空ガイド軸体と、を有する空気紡績装置を備え、
前記添加剤供給装置は、前記空気孔から噴射される空気に前記添加剤を供給する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紡績機。
【請求項5】
前記紡績機により紡出された紡績糸をパッケージに巻き取る巻取り装置を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紡績機。
【請求項6】
複数の前記紡績装置と、
空気を圧送する空気圧送装置と、
前記空気圧送装置が圧送した空気を案内する空気配管と、を備え、
前記添加剤供給装置は、前記空気配管を流れる空気がそれぞれの前記空気紡績装置に向けて分岐される上流側で該空気配管に添加剤を供給する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紡績機。
【請求項7】
抗菌機能と防臭機能と消臭機能と解舒機能のうち少なくとも一以上の機能を紡績糸に付与する添加剤が混合された空気の旋回流によって繊維を紡績する紡績糸の製造方法。
【請求項8】
紡出された紡績糸の単位長さあたりの重量の0.01%以上、0.2%以下の重量の前記添加剤を供給する請求項7に記載の紡績糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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