説明

紫外線センサ、およびその製造方法

【課題】 低コストの酸化ガリウム単結晶基板を用いた紫外線センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面41または該直交面41から所定の角度傾斜した面を受光面12rとする酸化ガリウム単結晶基板11と、酸化ガリウム単結晶基板11の第1表面に形成されたオーミック電極13と、受光面12rを含む酸化ガリウム単結晶基板11の第2表面に形成されたショットキー電極12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線ランプ等が発する紫外線を検知する紫外線センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する紫外線ランプは、水や空気の殺菌、半導体や食品容器の洗浄、及び半導体の表面改質等、産業界の多岐にわたり使用されている。この紫外線ランプは消耗品であり、寿命が重要なポイントであるが、紫外線ランプの監視が連続的にできないために事前に寿命時間が規格として定められている。しかしながら、個々のランプの寿命は一定ではなく、設定した時間からずれが生じる場合がある。実際の寿命が設定時間より短い場合、紫外線発生のないまま使用するため、所望の浄化、殺菌等の効果を得ることができず、実際の寿命が設定時間より長い場合、まだ使用可能であるにも拘らず交換されるという無駄が生じることとなる。
【0003】
このような問題に対し、従来、紫外線ランプが照射する紫外線を検知することにより、連続的に紫外線ランプを監視するセンサがある。このセンサとしては、シリコンを用いたものがある。しかしながら、測定波長の選択はフィルタを使用して行われるため、波長254nm付近の短波長域では受光スペクトルのバンド幅が広く、またフィルタの紫外線による劣化及びそれに伴う受光波長のシフトが発生し、感度調整のための校正が必要となる。さらに、フィルタ周辺部品等の耐熱性の問題から、通常40℃以下で使用するという制約があるため、測定場所の調整を頻繁に行なう必要がある。
【0004】
また、波長280nm以下の紫外線を検出するセンサとして光電管が知られている。この光電管は火炎の点滅を検知するセンサとして既に実用化され、主に工業炉など大型燃焼装置の自動制御用の火炎センサに用いられているが、光電管を用いたセンサは、ソーラーブラインドのセンサではないので感度が変動しやすく、耐熱性も低いという問題を有している。
【0005】
これに対し、酸化ガリウム単結晶基板を用い、耐熱性及び耐久性に優れるソーラーブラインドの紫外線センサ及び紫外線用フォトディテクタがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−130012号公報
【特許文献2】特開2009−200222号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した酸化ガリウム単結晶基板は、その単結晶のインゴットを、(100)面(以後、a面と称する)に平行な面をワイヤソーでスライスし、このa面を化学機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)で鏡面研磨してウェハ状に加工することで作製される。しかしながら、酸化ガリウム単結晶基板は、その単結晶におけるa面をスライスする場合、前工程として単結晶を輪切りする工程が行なわれる。即ち、単結晶におけるa面をスライスする工程は、この輪切りした状態の単結晶のうちa面に平行な面をワイヤソーでスライスする工程となる。酸化ガリウム単結晶基板は、上述した輪切り及びスライスの工程により作製されているため、その製造工程に時間等のコストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、低コストの酸化ガリウム単結晶基板を用いた紫外線センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題点を解決するため、本発明に係る紫外線センサは、酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面または該直交面から所定の角度傾斜した面を受光面とする酸化ガリウム単結晶基板と、前記酸化ガリウム単結晶基板の第1表面に形成された第1電極と、前記受光面を含む前記酸化ガリウム単結晶基板の第2表面に形成された第2電極とを有する。
【0010】
また、本発明に係る紫外線センサの製造方法は、酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面または該直交面から所定の角度傾斜した面が切断面となるよう、前記酸化ガリウム単結晶を所定の厚さで切断して切断面を受光面とし、前記酸化ガリウム単結晶基板の第1表面に第1電極を形成し、前記受光面を含む前記酸化ガリウム単結晶基板の第2表面に第2電極を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストの酸化ガリウム単結晶基板を紫外線センサに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る紫外線センサの構成を示す断面図である。
【図2】パッケージ内のセンサチップを示す上面図である。
【図3】手法Aを説明するための模式図である。
【図4】実施の形態1に係る紫外線センサの作製工程を説明するための模式図である。
【図5】実施例1に係る紫外線センサのセンサ感度と静電容量とを示すグラフである。
【図6】図6は、実施の形態2に係る紫外線センサの構成を示す断面図である。
【図7】ショットキー電極の表面状態を示す図である。
【図8】実施の形態2に係る紫外線センサの作製工程を説明するための模式図である。
【図9】実施例2に係る紫外線センサの不純物濃度を示すグラフである。
【図10】実施例2に係る紫外線センサの不純物濃度、比抵抗及びキャリア密度を示す表である。
【図11】実施例2に係る紫外線センサの比抵抗、キャリア密度及びSi濃度の相関を示すグラフである。
【図12】実施例3に係る紫外線センサのセンサ感度、センサの寿命及び研磨傷の個数の相関を示すグラフである。
【図13】実施例4に係る紫外線センサにおけるオーミック電極間の抵抗を示すグラフである。
【図14】実施例4に係る紫外線センサにおけるセンサ感度を示すグラフである。
【図15】実施例5に係る紫外線センサにおけるセンサ感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(実施の形態1)
先ず、図1及び図2を用いて実施の形態1に係る紫外線センサについて説明する。図1は、実施の形態1に係る紫外線センサの構成を示す断面図である。図2は、パッケージ内のセンサチップを示す上面図である。図1に示されるように、紫外線センサ1は、紫外線を検出するためのセンサチップ10がパッケージ2内に収容され外部雰囲気から封止されている。
【0015】
パッケージ2は、平板状のステム22と、ステム22の上に設置され、中央に開口部20を有する円筒部材であるキャップ23と、開口部20をキャップ23の内部から覆う窓部材21とを有しており、その内部は、窒素やアルゴン等の不活性ガスで充填される、或いは、真空状態に維持される。
ステム22及びキャップ23は、内部に収容されるセンサチップ10の静電遮蔽の観点から、導電性であることが好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウム、真鍮、鉄、ニッケル等の金属から形成される。
窓部材21は、検出対象となる紫外線に対して透光性を有する材料から形成され、波長254nm付近の紫外線に対してそれぞれ大きな透過率を有するサファイアまたは石英(水晶)を使用することができる。この窓部材21は、開口部20をパッケージ2内から覆うようにエポキシ接着剤24を用いてキャップ23の内側に接着されている。
【0016】
センサチップ10は、酸化ガリウム(Ga23)単結晶基板(以後、単結晶基板と称する)11を有しており、この単結晶基板11の上面(第1表面)に当該単結晶基板11とショットキー接触をなす紫外線検出用のショットキー電極12が形成されている。また、ショットキー電極12に対応して単結晶基板11の下面(第2表面)に当該単結晶基板11とオーミック接触をなすオーミック電極13が形成されている。
【0017】
単結晶基板11は、その表面に絶縁層11aが形成され、絶縁層11aの下に導電層11bが形成されている。単結晶基板11は、表面に絶縁層11aが形成されることにより、紫外線励起により発生する電子正孔対の分離を行うことができる。ショットキー電極12はこの絶縁層11aと接し、オーミック電極13は導電層11bと接するよう形成されている。また、単結晶基板11上には、配線用のパッド電極14が形成されている。
【0018】
単結晶基板11の第1表面およびショットキー電極12の上面は、紫外線等の光を受光する受光面12rであり、この受光面12rがパッケージ2の窓部材21に対向するようセンサチップ10がステム22に設置されている。
【0019】
単結晶基板11に用いられる酸化ガリウム単結晶は、波長280nm以下の波長領域に選択的感度を有し、特に、波長254nm付近に大きな感度を有する。酸化ガリウム単結晶は、バンドギャップが4.7〜4.9eVとワイドな酸化物半導体であるため、ソーラーブラインドのセンサとなる。更に、酸化ガリウム単結晶は融点が1740℃と高く、すでに酸化物であるため、酸化による劣化の心配がなく、耐熱性、安定性および耐久性に優れている。
【0020】
紫外線センサ1の端子となるリード31及び32は、ステム22からパッケージ2の外部へ引き出されており、電流・電圧源3にそれぞれ電気的に接続されている。リード31の一端31aは、パッド電極14と直径25μmのAuボンディングワイヤ25を介して電気的に接続されている。また、リード31は、ガラス26を介してステム22に固定されている。リード32は、ステム22に接続されることにより、センサチップ10のオーミック電極13と電気的に接続されている。なお、ボンディングワイヤ25の直径は、25μmとしたが、これに限定されない。
【0021】
また、図2に示されるように、単結晶基板11は、ステム22の中央に設置され、その中央にショットキー電極12が形成される。なお、ショットキー電極12は、単結晶基板11からパッド電極14における半円部分にかけて形成されている。実施の形態1では、単結晶基板11及びショットキー電極14は、円状に形成されているが、楕円等の形状であってもよい。
【0022】
実施の形態1では、受光面12rとして、酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面を用いる(以後、この手法を手法Aと称する)。以下、手法Aについて図3を参照して詳細に説明する。
【0023】
図3は、手法Aを説明するための模式図である。図3に示されるa、b及びcの矢印は、酸化ガリウム単結晶の結晶方位を示す。
図3に示されるように、直交面41は、酸化ガリウム単結晶のインゴット4の成長方向、即ち、c軸の方向に対して直交する面である。この直交面41を受光面12rとして用いることにより、インゴット4を輪切りする工程のみで単結晶基板11を切り出すことができる。a面42を受光面12rとした場合、インゴット4を輪切りし、スライスする二段階の工程を行うことで酸化ガリウム単結晶基板を切り出している。したがって、a面42を受光面12rとした場合と比べ、直交面41を受光面12rとすることで作業時間の短縮および収率の向上が可能となる。更に、受光面12rを鏡面研磨した場合、a面42はへき開面であるため、へき開によりその表面が鱗状に剥がれる場合があるが、直交面41では鱗状に剥がれることはなく、作業時間を短縮できる。
【0024】
ここで、実施の形態1では、直交面41を受光面12rとするが、直交面41から所定の角度傾斜した面を受光面12rとしてもよい。例えば、成長方向から14°程度傾いたへき開性を有する面である(001)面(以後、c面と称する)を受光面12rとした場合、へき開を利用することによりインゴット4から単結晶基板11を容易に切り出すことができる。へき開面からの傾きはセンサ性能に大きく影響しない。したがって、インゴット4から単結晶基板11を切り出す作業性を考慮すると、受光面12rは、直交面41から−20°〜20°の範囲で傾く面が好ましく、直交面41とc面とがなす角度方向に、−15°〜15°の範囲で傾く面がより好ましく、特に直交面41及びc面と平行する面が好ましい。
【0025】
以下、手法Aを用いた紫外線センサの作製方法について、図4を参照して工程毎に説明する。図4は、実施の形態1に係る紫外線センサの作製工程を説明するための模式図である。
【0026】
(S1:酸化ガリウム単結晶の育成および単結晶基板の切り出し)
純度4Nの酸化ガリウム粉末を原料としてラバーチューブに封入し、静水圧プレスにより圧縮成形する。圧縮成形後、電気炉を用いて1400〜1600℃、10〜40時間、大気雰囲気中で焼成し、得られる酸化ガリウム焼結体を原料棒とする。この原料棒を用いて、FZ(Floating Zone)法により酸化ガリウム単結晶を育成する。単結晶成長条件として、成長速度は5〜30mm/h、雰囲気はドライエア、圧力は1気圧の条件で行なう。
育成した酸化ガリウム単結晶のインゴット4をスライドガラスに貼り付け、酸化ガリウム単結晶の成長方向に垂直な直交面が切断面となるよう切断し、単結晶基板11を得る。単結晶基板11の厚さは、0.6〜0.7mmが好ましい。
【0027】
(S2:酸化ガリウム単結晶基板の研磨)
切り出した単結晶基板11を研磨冶具に貼り付け、#1000の研磨盤で10〜30分研削することで面出しを行う。続いて1μmダイヤ及びCMPでそれぞれ20〜60分、好ましくは20〜30分研磨することで鏡面を得る。
【0028】
(S3:単結晶基板のアニーリング)
研磨した単結晶基板11をアセトン、エタノールで洗浄し、熱処理を行なう。この熱処理は、単結晶基板11に光励起により発生したキャリアの分離に必要な絶縁層11aを形成し、結晶成長後の酸化ガリウム単結晶内に残留する欠陥を回復する目的で行う。熱処理は酸素雰囲気中で1100℃、3〜24時間で行なう。3時間より短い時間では、結晶性の回復が不十分となり、24時間よりも長い処理時間をかけても、ほぼ飽和して特性に変化はない。酸素を使うのは、酸化ガリウム単結晶育成時に発生した酸素欠損を補充するためである。
【0029】
単結晶基板11のアニーリング後、図示しない以下のS4〜S6の工程により、当該単結晶基板11に電極を形成する。
【0030】
(S4:オーミック電極の形成)
Tiを30〜100nm、好ましくは50〜80nm蒸着後、Alを100〜300nm、好ましくは150〜300nm蒸着し、Al/Tiのオーミック電極13を形成する。電極サイズは1〜5mmφ、好ましくは3〜4mmφとする。なおサイズが大きくなるほど接触抵抗が小さい。蒸着には、例えば電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)が用いられる。
【0031】
(S5:パッド電極の形成)
単結晶基板11上に配線用のパッド電極14を作製する。パッド電極14のサイズは0.05〜1.5mmφ、Cr(13a)を10〜50nm、好ましくは30〜50nm、AuまたはPtを30〜100nm、好ましくは50〜100nm、単結晶基板11上に蒸着する。
【0032】
(S6:ショットキー電極の形成)
ショットキー電極12の材料として、n型半導体なので、仕事関数が大きいとされる金属であるAu、Ptなどが用いられる。Niを2〜5nm、好ましくは2nm蒸着後、AuまたはPtを6〜10nm蒸着し、Au/NiまたはPt/Tiの半透明または透明な透光性を有する金属薄膜の電極を作製する。なお、金属には、Ni層を挿入しないAu、Pt、さらにAu、Ptのほか、Al,Co,Ge,Sn,In,W,Mo,Cr,Cu等も使用し得る。蒸着には、例えばEB蒸着法が用いられる。
【0033】
Niを蒸着するのは、AuまたはPt単体では、基板との密着性が悪いので、薄いNi層を挿入して密着性を改善するためである。これが受光面12rになり、この場合の電極サイズは1〜5mmφ、好ましくは1〜2mmφ。サイズが大きくなるほど受光面拡大につながる。
【0034】
(実施例1)
上述したS1〜6の工程に従って、紫外線センサ1の作製を行った。
純度4Nの酸化ガリウム粉末をラバーチューブに封入し、静水圧プレスにより圧縮成形した。圧縮成形後、電気炉を用いて1500℃、40時間、大気雰囲気中で焼成し、得られた酸化ガリウム焼結体を用いて、FZ法により酸化ガリウム単結晶を育成した。単結晶成長条件として、成長速度は20mm/h、雰囲気はドライエア、圧力は1気圧の条件で行った。
得たれた酸化ガリウム単結晶のインゴット4をスライドガラスに貼り付け、酸化ガリウム単結晶の成長方向に垂直な直交面が切断面となるよう切断し、これを単結晶基板11とした。単結晶基板11の厚さは、0.65mmとした。
【0035】
切り出した単結晶基板11を研磨冶具に貼り付け、#1000の研磨盤で20分研削することで面出しを行った。研磨冶具は、ムサシノ電子株式会社製、MA−200Dを使用した。続いて1μmダイヤ及びCMPでそれぞれ30分研磨することで鏡面を得た。
【0036】
研磨した単結晶基板11をアセトン、エタノールで洗浄し、酸素雰囲気中で1100℃、4時間で熱処理を行った。
【0037】
次に、上述したS4〜6の工程に従って、電極の作製を行なった。単結晶基板11における第2表面のオーミック電極13はTiを75nm蒸着後、Alを300nm蒸着した。一方、単結晶基板11における第1表面のショットキー電極12はNiを2nm蒸着後、Auを8nm蒸着した。配線用のパッド電極14は1mmφとし、Crを50nm蒸着後、Auを100nm蒸着した。このとき、実質的な受光部はショットキー電極部分からパッド電極1mmφを除いた部分になる。
【0038】
ショットキー電極12を形成した単結晶基板11を保護するため、予めエポキシ接着剤により窓部材21をキャップ23に接着し且つリード31〜32を設けたパッケージ2を用いて、パッケージングを行った。この際、パッケージ2内には不活性ガスを充填した。
パッケージングされた紫外線センサ1のリード31〜32に対し、図1に示されるように電流・電圧源3を接続し、電流値を測定することにより紫外線の検出を行うことができる。
【0039】
このように作製した紫外線センサ1を複数用意し、複数の紫外線センサ1に対し、岩崎電気株式会社製の低圧水銀ランプQGL200U−21を用いて、波長254nmの紫外線を連続的に照射し、センサ感度の測定を行った。また、CV測定により、複数の紫外線センサ1の静電容量[F]を測定した。CV測定には、三和電気計器株式会社製、M1−490Kを使用した。測定結果を図5に示す。
【0040】
図5は、実施例1に係る紫外線センサのセンサ感度と静電容量とを示すグラフである。図5に示される斜線範囲は、受光面にa面を用いた紫外線センサの特性範囲を示す。
受光面にa面を用いた紫外線センサは、紫外線センサの作製条件を変化させることにより、センサ感度を1.0×10-2〜1.0×10-4[A/W]、静電容量を1.0×10-12〜1.0×10-9[F]まで変化させることができる。図5に示されるように、紫外線センサ1は、受光面にa面を用いた紫外線センサと同等のセンサ特性(センサ感度,静電容量等)を有することが確認できた。
また、受光面12rにa面を用いた紫外線センサに用いられる単結晶基板は、インゴットから25〜30枚程度切り出すことができる。一方、単結晶基板11は、インゴット4から50〜60枚程度切り出すことができた。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態1では、上述した手法Aを用いて紫外線センサを作製したが、手法Aに加え、以下の手法B〜Eを適宜組み合わせることにより、コストの低減及び良好なセンサ特性を有する紫外線センサを作製できる。
手法B:酸化ガリウム単結晶を育成する際に用いる原料粉末中の不純物量を調整し、酸化ガリウム単結晶を育成する手法。
手法C:単結晶基板の表面状態を調整する手法。
手法D:超音波半田器(超音波半田器ごて)を用いて単結晶基板上にオーミック電極を形成し且つ当該単結晶基板とステムとのダイボンディングを行う手法。
手法E:IBS法を用いてショットキー電極を形成する手法。
【0042】
上述した手法A〜Eを全て組み合わせた紫外線センサの構成について図6を参照して説明する。
図6は、実施の形態2に係る紫外線センサの構成を示す断面図である。図6において、図1と同一符号のものは、図1に示されたものと同一のものを示しており、重複する説明は省略する。
【0043】
紫外線センサ100は、図1に示されるセンサチップ10に代わりセンサチップ110を有し、パッケージ2に代わりパッケージ102を有する。センサチップ110は、図1に示される単結晶基板11に代わり単結晶基板111を有する。また、センサチップ110は、ショットキー電極12に代わりショットキー電極112を有し、オーミック電極13に代わりオーミック電極113を有する。
【0044】
パッケージ102は窓部材21が低融点ガラス124によりキャップ23に接着されている点でパッケージ2とは異なり、単結晶基板111は原料粉末中のSi濃度及びFe濃度と研磨傷とが調整されている点で単結晶基板11と異なる。ショットキー電極112はIBS法を用いて単結晶基板111上に形成されている点でショットキー電極12と異なり、オーミック電極113は超音波半田器を用いて低融点金属により単結晶基板11上に形成されている点でオーミック電極13と異なる。
【0045】
次に、上述した紫外線センサ100の構成を用いて、手法B〜Eの詳細を説明する。先ず、手法Bについて説明する。
手法Bは、原料粉末中の不純物量を調整することにより、キャリア密度の低い酸化ガリウム単結晶を育成する手法である。調整する不純物は、SiとFeとが挙げられる。
【0046】
結晶中のキャリア密度とセンサ感度は密接な関係があり、キャリア密度の範囲としては1×1017〜1×1018が好ましく、1.47×1017〜2.51×1018がより好ましく、特に2〜5×1017cm-3が好ましい。キャリア密度が高過ぎる場合、酸化ガリウム単結晶は導電性が高いが結晶性が低下してしまい、センサチップ110へ応用した際、高いセンサ感度が得られないばかりか、暗電流も増加してしまう。一方、キャリア密度が低過ぎる場合、酸化ガリウム単結晶は結晶中の抵抗が高くなり、光電流が流れ難いものとなる。
【0047】
Siは、育成した酸化ガリウム単結晶のキャリア密度と密接な関係があるものであり、原料粉末中のSi濃度は、1〜50ppmが好ましく、5〜30ppmがより好ましく、中でも6〜29ppmが特に好ましい。キャリア密度はSi濃度に比例して増加する傾向にあり、Si濃度が高すぎると酸化ガリウム単結晶の結晶性が低下してしまいセンサチップ110への応用には適さない。一方、Si濃度が低すぎる場合、酸化ガリウム単結晶中の抵抗が高くなり、センサチップ110へ応用した際に流れる光電流が小さくなる。
【0048】
Feは、酸化ガリウム単結晶の導電性に影響を与えるものであり、原料粉末中のFe濃度は、3ppm以下が好ましく、中でも1ppm以下が特に好ましい。これは、Feを多く含んだ原料粉末を用いた酸化ガリウム単結晶からセンサチップ110を作製した場合、酸化ガリウム単結晶中にFeが取り込まれることにより、導電性が著しく低下してしまい、紫外線に反応し難くなるためである。
【0049】
次に、手法Cについて図7を参照して説明する。
図7は、ショットキー電極の表面状態を示す図である。図7において、図6と同一符号のものは、図6に示されたものと同一のものを示しており、重複する説明は省略する。
手法Cは、単結晶基板111を鏡面研磨する際、単結晶基板111の第1表面に図7に示されるような所定の研磨傷を設けることにより、ショットキー電極112形成時に、凹凸を生じさせショットキー電極112を網目状に形成する手法である。この手法Cは、ショットキー電極112と単結晶基板111との熱膨張率の違いにより生じる応力を緩和させ、ショットキー電極112の断線等に起因したセンサ感度低下を抑制し、センサチップ110の耐久性を向上させる効果を奏する。
【0050】
研磨傷は、長さ0.1〜0.5mm、幅0.02〜0.1mmのサイズが好ましい。また、研磨傷は、1mm2の範囲内に、10〜100個が好ましく、特に30〜60個が好ましい。研磨傷がこのサイズを超える場合、または研磨傷数がこの範囲を超える場合、ショットキー電極113に断線が生じる可能性がある。一方、研磨傷がこのサイズ未満である場合、または研磨傷数がこの範囲未満である場合、上述した応力の緩和が著しく低下する。
【0051】
単結晶基板111の第1表面に形成されているショットキー電極112の役割は、紫外線励起により発生したキャリアを集め、光電流として取り出すことである。ショットキー電極112の直下でキャリアが発生した箇所と、パッド電極14及びボンディングワイヤ25がショットキー電極112により電気的に接続されていれば、キャリアは光電流として外へ取り出すことができる。したがって、単結晶基板111の第1表面に研磨傷による凹凸があり、この凹凸に伴いショットキー電極112が網目状に形成された場合においても、断線されていない限りショットキー電極112としての機能は大きく損なわれない。なお、研磨傷は、単結晶基板111の第1表面のみに限定するものではなく単結晶基板111の第2表面等、単結晶基板111の表面に一様に設けてもよい。
【0052】
次に、手法Dについて説明する。
手法Dは、超音波半田器を用いて低融点金属により単結晶基板111上にオーミック電極113を形成する手法である。
【0053】
紫外線センサは、紫外線等の光を受け、発生した光電流を信号として取り出すことにより動作する。この光電流を効率よく外部へ取り出すためには、オーミック電極の低抵抗化が必要になる。蒸着により形成したオーミック電極は、オーミック電極間の抵抗が1〜10[kΩ]程度である。この電極を蒸着した酸化ガリウム単結晶基板にシンター処理を施すことにより、オーミック電極間の抵抗を改善することができる。
【0054】
しかしながら、手法Dによれば、オーミック電極113の形成時に超音波半田器と低融点金属とを用いることにより、上述したシンター処理を行ったものと同等の抵抗を有するオーミック電極113を形成することができる。更に、蒸着のような真空プロセス要する方法を行うことなく、短時間で単結晶基板111にオーミック電極113を形成することができるため、コストの低減の効果を奏する。例えば、低融点金属には、超音波半田、In、Sn等が用いられる。
【0055】
また、オーミック電極113の形成と共に低融点金属を用いて単結晶基板111とステム22とのダイボンディングを行う。ダイボンディング材料に有機物を含まないため、紫外線照射により有機物の分解や分解物による紫外線吸収を抑止することができ、より短波長の紫外線の検出が可能となる効果を奏する。
更に、窓部材21とキャップ23とを低融点ガラス124により接着させることにより、低融点金属を用いたダイボンディングと同様、有機物による紫外線吸収を抑止する効果を奏する。
【0056】
次に、手法Eについて説明する。
手法Eは、IBS法を用いてAuまたはPtを単結晶基板111上に蒸着することにより、ショットキー電極112を形成する手法である。
【0057】
酸化ガリウム単結晶基板上に蒸着する金属薄膜の密度が高いほど紫外線に対する耐久性が高まるが、AuまたはPt単体では、酸化ガリウム単結晶基板との密着性が悪い。この手法では、AuまたはPtをより強い力で基板に供給するため、通常のスパッタリング法に比べ2桁以上の高真空で成膜を行うIBS法を用いる。IBS法による高真空下でのスパッタを行うことにより、その時粒子に与えられた運動エネルギーがほとんど損なわれること無く所定の基板に堆積させることができるため、密着性及び密度の高い薄膜が得られる。したがって、IBS法を用いて単結晶基板111上に緻密なショットキー電極112を金属薄膜として成膜することにより、例えばEB蒸着法を用いて成膜した電極よりも密度及び密着性の高い電極が得られ、耐久性の改善も可能となる。
【0058】
実施の形態2では、上述した手法AにB〜Eを適宜組み合わせて紫外線センサを作製するが、手法BとC、手法BとD、手法CとE等、2つの手法を手法Aに加えた紫外線センサであってもコスト低減、センサ感度の向上等の効果を奏する。なお、手法B〜D、手法C〜E、手法B、C及びE等3つの手法を手法Aに加えた紫外線センサは、2つの手法を手法Aに加えた紫外線センサよりコスト低減、センサ感度の向上の点でより好ましく、手法Aに手法B〜Eを全て加えた紫外線センサが特に好ましい。
【0059】
次に、紫外線センサ100の作製方法について、図8を参照して作製工程毎に説明する。
図8は、実施の形態2に係る紫外線センサの作製工程を説明するための模式図である。
【0060】
(S11:酸化ガリウム単結晶の育成および結晶基板の切り出し)
Si濃度30ppm以下、Fe濃度1ppm以下の純度4Nの酸化ガリウム粉末を原料としてラバーチューブに封入し、静水圧プレスにより圧縮成形する。圧縮成形後、電気炉を用いて1400〜1600℃、10〜40時間、大気雰囲気中で焼成し、得られる酸化ガリウム焼結体を原料棒とする。この原料棒を用いて、FZ(Floating Zone)法により酸化ガリウム単結晶を育成する。単結晶成長条件として、成長速度は5〜30mm/h、雰囲気はドライエア、圧力は1気圧の条件で行なう。
育成した酸化ガリウム単結晶のインゴット104をスライドガラスに貼り付け、酸化ガリウム単結晶の成長方向に垂直な直交面が切断面となるよう切断し、これを単結晶基板111とする。単結晶基板111の厚さは、0.6〜0.7mmが好ましい。
【0061】
(S12:酸化ガリウム単結晶基板の研磨)
切り出した単結晶基板111を研磨冶具に貼り付け、#1000の研磨盤で10〜30分研削することで面出しを行う。続いて1μmダイヤ及びCMPでそれぞれ20〜60分、好ましくは20〜30分研磨することで鏡面を得る。この際、研磨傷を、長さ0.1〜0.5mm、幅0.02〜0.1mmのサイズで設け、1mm2の範囲内に、30〜60個設ける。
【0062】
(S13:単結晶のアニーリング)
研磨した単結晶基板111をアセトン、エタノールで洗浄し、熱処理を行なう。この熱処理は、実施の形態1と同様に、単結晶基板111に光励起により発生したキャリアの分離に必要な絶縁層111aを形成し、結晶成長後の酸化ガリウム単結晶内に残留する欠陥を回復する目的で行う。熱処理は、酸素雰囲気中で1100℃、3〜24時間で行なう。また、Si濃度が低い原料粉末を用いるなどして用意した、キャリア密度の低い単結晶基板の場合は、キャリアの分離のための絶縁層を必要としないため、この工程は省略することが可能である。
【0063】
(S14:オーミック電極の形成)
200〜250℃に熱した超音波半田器で低融点金属5を単結晶基板111の第2表面に付ける。その後、好ましくは1〜5秒程度超音波で振動を与えることにより、低融点金属5の表面酸化膜を破り、低融点金属5が単結晶基板111内に拡散することでオーミック電極113を単結晶基板111の第2表面全体または一部に形成する。なおサイズが大きくなるほど接触抵抗が小さい。
【0064】
(S15:ステムへのマウント)
300〜350度に熱したホットプレートの上に金属製のブロック6aを置き、ブロック6a上にリード31〜32を設けたステム22を置きこれを熱する。オーミック電極113を形成した単結晶基板111を、オーミック電極113とステム22とが接するようステム22上に設置する。単結晶基板111の上からピンセット、スライドガラス等で均一に加圧し、単結晶基板111における第2表面の低融点金属5を一様に広げ、単結晶基板111とステム22とのダイボンディングを行う。ステム22をブロック6aからはずし、冷却することにより単結晶基板111のステム22へのマウントが完了する。
【0065】
(S16:パッド電極の形成)
ワイヤボンディング用のパッド電極14を作製する。パッド電極用マスク6bで単結晶基板111上方を覆い、EB蒸着法によりパッド電極14を形成する。パッド電極14のサイズは0.05〜1.5mmφ、Cr14aを10〜100nm、好ましくは30〜50nm、AuまたはPt14bを80〜150nm、好ましくは90〜100nm、単結晶基板111の第1表面に蒸着する。
【0066】
(S17:ショットキー電極の形成)
ショットキー電極112の材料として、実施の形態1と同様、仕事関数が大きいとされる金属であるAu、Ptなどが用いられる。密着性および耐久性が高いショットキー電極112を単結晶基板111上に蒸着するため、ショットキー電極用マスク6cで単結晶基板111の上方を覆い、IBS法によりAuまたはPtを6〜10nm蒸着し、半透明または透明な透光性を有する金属薄膜であるショットキー電極112を作製する。なお、金属にはAu、Ptのほか、Al,Co,Ge,Sn,In,W,Mo,Cr,Cu等も使用し得る。
IBS法によるショットキー電極の形成では、イオンエネルギー、イオン電流密度、イオン種、スパッタリング時の動作真空度、堆積速度等が形成条件として挙げられる。ショットキー電極112の形成に用いる条件は、イオンエネルギーが500〜1200eV、イオン電流密度が1〜10mA/cm2、イオン種がArイオン、動作真空度が4〜5×10-3Pa、堆積速度が0.1〜0.2nm/secが好ましい。例えば、これらの条件で形成された厚さ10nmのAu薄膜は波長200nmでの紫外線透過率が60%程度である。これが受光面12rとなり、この場合の電極サイズは1〜5mmφ、好ましくは1〜2mmφである。なお、電極サイズが大きいほど受光面は大きくなるが、それに伴い一定照度の紫外線を受けた場合のダメージも大きくなる。
【0067】
(実施例2)
図8に示されるS11〜S17の工程に従って、Si濃度及びFe濃度の異なる紫外線センサを複数作製した。
Si濃度6ppm、Fe濃度1ppmの純度4Nの酸化ガリウム粉末をラバーチューブに封入し、静水圧プレスにより圧縮成形した。圧縮成形後、電気炉を用いて1500℃、40時間、大気雰囲気中で焼成し、得られた酸化ガリウム焼結体を用いて、FZ法により酸化ガリウム単結晶を育成した。単結晶成長条件として、成長速度は20mm/h、雰囲気はドライエア、圧力は1気圧の条件で行った。
得られた酸化ガリウム単結晶のインゴット104をスライドガラスに貼り付け、直交面41が切断面となるよう切断し、これを単結晶基板111とした。単結晶基板111の厚さは、0.65mmとした。
【0068】
切り出した単結晶基板111を研磨冶具に貼り付け、#1000の研磨盤で20分研削することで面出しを行った。研磨冶具には、ムサシノ電子株式会社製、MA−200Dを使用した。続いて1μmダイヤ及びCMPでそれぞれ30分研磨することで鏡面を得た。
【0069】
研磨した単結晶基板111をアセトン、エタノールで洗浄し、酸素雰囲気中で1100℃、4時間で熱処理を行なった。
【0070】
225度に熱した超音波半田器で低融点金属5を単結晶基板111の第2表面に付け、3秒程度超音波で振動を与えることにより、オーミック電極113を単結晶基板111の第2表面の一部に形成した。
【0071】
325度に熱したホットプレートの上に金属製のブロック6aを置き、ブロック6a上にステム22を置いてこれを熱し、オーミック電極113を形成した単結晶基板111をステム22上に設置した。単結晶基板111の上からスライドガラスで均一に加圧し、単結晶基板111とステム22とのダイボンディングを行った。ダイボンディング後、ステム22をブロック6aからはずし、冷却した。
【0072】
冷却後、パッド電極用マスク6bで単結晶基板111上方を覆い、EB蒸着法によりパッド電極14を形成した。パッド電極14のサイズは0.775mmφ、Cr14aを50nm、Au14bを100nm、単結晶基板111の第1表面に蒸着した。
【0073】
IBS法により受光面12rを含む単結晶基板111の第1表面にAuを10nm蒸着し、ショットキー電極112を形成した。IBS法の条件としては、イオンエネルギーを850eV、イオン電流密度を5.5mA/cm2、イオン種をArイオン、動作真空度を4.5×10-3Pa、堆積速度を0.15nm/secとした。また、電極サイズは2mmφとした。このとき、実質的な受光部はショットキー電極112の2mmφからパッド電極14の0.775mmφを除いた部分になる。
【0074】
ショットキー電極112を形成した単結晶基板111を保護するため、予め低融点ガラス124により窓部材21をキャップ23に接着し且つリード31〜32を設けたパッケージ102を用いて、パッケージングを行った。この際、パッケージ102内には不活性ガスを充填し、紫外線センサ100Aを作製した。
次に、Si濃度及びFe濃度がそれぞれ異なる複数の原料粉末を用いて、紫外線センサ100Aと同様の方法で紫外線センサB〜Gをそれぞれ作製した。
【0075】
紫外線センサ100A〜Gに対し、岩崎電気株式会社製の低圧水銀ランプQGL200U−21を用いて、波長254nmの紫外線を連続的に照射し、紫外線センサとして動作するか否かを確認した。その結果、紫外線センサ100F及びGは紫外線センサとして動作しなかった。
【0076】
図9は、実施例2に係る紫外線センサの不純物濃度を示すグラフである。図9に示されるA〜Gのそれぞれは、紫外線センサ100A〜Gのそれぞれを示す。また、斜線範囲は紫外線センサとして動作するFe濃度の範囲を示す。図9に示されるように、紫外線センサとして動作しない紫外線センサ100F及びGは、Fe濃度が14及び18ppmである。このことから、斜線範囲外のFe濃度14以上のものは、紫外線センサとして動作しないことが確認できた。また、Fe濃度3以下のものは、紫外線センサとして動作することが確認できた。
【0077】
次に、紫外線センサ100A〜Cが有するセンサチップの比抵抗[Ωcm]とキャリア密度[cm-3]をバイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製,ホール効果測定装置を用いて測定した。測定結果を図10及び11に示す。
【0078】
図10は、実施例2に係る紫外線センサの不純物濃度、比抵抗及びキャリア密度を示す表である。図11は、実施例2に係る紫外線センサの比抵抗、キャリア密度及びSi濃度の相関を示すグラフである。
図10及び11に示されるように、Si濃度が増加するに伴いキャリア密度及び比抵抗が減少し、Si濃度が減少するに伴い、キャリア濃度及び比抵抗が増加することから、原料粉末中に含まれるSi濃度は育成した酸化ガリウム単結晶のキャリア密度と密接な関係があることが確認できた。
【0079】
(実施例3)
図8に示されるS11〜S17の工程に従って、単結晶基板表面の状態が異なる紫外線センサを複数作製した。
Si濃度4ppm、Fe濃度1ppmの原料粉末を用い、その他は実施例2と同様の条件で複数の紫外線センサを作製した。なお、複数の紫外線センサの作製に際し、図8のS12で示した酸化ガリウム単結晶基板の研磨の工程において、複数の紫外線センサそれぞれが、単結晶基板111上の単位面積当たりの研磨傷数が異なるよう研磨傷を調整した。
作製した研磨傷数が異なる複数の紫外線センサに対し、岩崎電気株式会社製の低圧水銀ランプQGL200U−21を用いて、波長254nmの紫外線を連続的に照射し、そのセンサ感度と当該センサ感度が10%低下するまでの時間を測定した。測定結果を図12に示す。
【0080】
図12は、実施例3に係る紫外線センサのセンサ感度、センサの寿命及び研磨傷の個数の相関を示すグラフである。
図12に示されるように、研磨傷数の増加に伴いセンサ感度が軽微に減少するが、大きな低下は見られない。このことから、研磨傷数がセンサ感度に与える影響は大きくないことが確認できた。一方、センサ感度が10%低下するまでの時間は、研磨傷数の増加に伴い長くなることが確認できた。これは、研磨傷による単結晶基板111における第1表面の凹凸に応じてショットキー電極112が網目状に形成された場合、紫外線照射に伴う熱の影響を緩和できるためである。なお、研磨傷を設けない平坦な単結晶基板111に均一にショットキー電極112を形成した場合、センサ感度が高いが、熱によりAu等の金属薄膜が凝集し、感度低下に繋がる可能性がある。
【0081】
(実施例4)
図8に示されるS11〜S17の工程に従って、オーミック電極の形成方法が異なる紫外線センサを複数作製した。
Si濃度4ppm、Fe濃度1ppmの原料粉末を用い、その他は実施例2と同様の条件で紫外線センサ100Hを作製した。なお、紫外線センサ100Hの作製に際し、図8のS14で示したオーミック電極の形成の工程において、低融点金属として黒田テクノ株式会社製のセラソルザー(登録商標)を用いて単結晶基板111上にオーミック電極113を形成した。
【0082】
また、図8のS14で示したオーミック電極の形成の工程に代わり、実施の形態1のS4で示したオーミック電極の形成の工程を用いた紫外線センサ100Iと紫外線センサ100Jとを作製した。
紫外線センサ100Iは、当該オーミック電極の形成の工程において、Ti/Alの蒸着によりオーミック電極を形成した酸化ガリウム単結晶基板を有する。また、紫外線センサ100Iは、In接合を用いて当該酸化ガリウム単結晶基板をステム22にマウントされている。
紫外線センサ100Jは、当該オーミック電極形成の工程において、Ti/Alの蒸着によりオーミック電極を形成し且つシンター処理(800℃・2分)を施した酸化ガリウム単結晶基板を有する。また、紫外線センサ100Jは、銀ペーストを用いて当該酸化ガリウム単結晶基板をステム22にマウントされている。
【0083】
これら紫外線センサ100H〜Jのオーミック電極間の抵抗を、菊水電子工業株式会社製、ダイオードカーブトレーサを用いて測定した。また、紫外線センサ100H〜Jに対し、上述したSLUV−6を用いて波長254nmの紫外線を連続的に照射し、センサ感度を測定した。測定結果を図13及び14に示す。
【0084】
図13は、実施例4に係る紫外線センサにおけるオーミック電極間の抵抗を示すグラフである。図14は、実施例4に係る紫外線センサにおけるセンサ感度を示すグラフである。図13及び14に示されるH〜Jのそれぞれは、紫外線センサ100H〜Jをそれぞれ示す。
【0085】
図13に示されるように、蒸着により形成した紫外線センサ100Iのオーミック電極は、抵抗が1〜10kΩであり、シンター処理を施した紫外線センサ100Jのオーミック電極は、10〜1000Ωである。よって、シンター処理により抵抗の改善が確認できるが、工程が増加していることからコストアップに繋がる。一方、紫外線センサ100Hのオーミック電極113は、紫外線センサ100Jと同等の抵抗を有していることが確認できた。
【0086】
また、図14に示されるように、紫外線センサ100Jは紫外線センサ100Iよりセンサ感度がよく、紫外線センサ100Hは紫外線センサ100Jよりセンサ感度がよいことが確認できた。このことから、超音波半田を用いることにより、オーミック特性が改善され、その結果、紫外線センサとして取り出せる光電流が増加することがわかる。
【0087】
(実施例5)
図8に示されるS11〜S17の工程に従って、ショットキー電極の形成方法が異なる紫外線センサを複数作製した。
Si濃度24ppm、Fe濃度1ppmの原料粉末を用い、その他は実施例2と同様の条件で紫外線センサ100Kを作製した。
また、図8のS17で示したショットキー電極の形成の工程に代わり、実施の形態1のS6で示したショットキー電極の形成の工程を用いた紫外線センサ100Lを作製した。
【0088】
紫外線センサ100K及びLに対し、上述したQGL200U−21を用いて波長254nmの紫外線を連続的に照射し、センサ感度を測定した。測定結果を図15に示す。
【0089】
図15は、実施例5に係る紫外線センサにおけるセンサ感度を示すグラフである。図15に示されるK及びLは、紫外線センサ100K及びLを示す。
図15に示されるように、紫外線センサ100Lはセンサ感度が3×10-3〜6×10-4[A/W]であるが、紫外線センサ100Kは1×10-3〜6×10-3[A/W]である。したがって、IBS法を用いてショットキー電極112を形成するとセンサ感度が向上することが確認できた。
【0090】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態1〜2は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【0091】
なお、特許請求の範囲に記載の直交面は、例えば、前述の実施の形態1及び2における直交面41であり、受光面は、例えば、受光面12rである。酸化ガリウム単結晶基板は、例えば、酸化ガリウム単結晶基板11及び111であり、パッケージは、例えば、パッケージ2及びパッケージ102である。第1表面は、例えば、酸化ガリウム単結晶基板11及び111の第1表面であり、第2表面は、例えば、酸化ガリウム単結晶基板11及び111の第2表面である。低融点金属は、例えば、低融点金属5であり、低融点ガラスは、例えば、低融点ガラス124である。窓部材は、例えば、窓部材21であり、第1及び第2端子は、例えば、リード31及び32である。
【符号の説明】
【0092】
1,100 紫外線センサ、
2,102 パッケージ、
3 電流・電圧源、
4,104 インゴット、
5 低融点金属、
10,110 センサチップ、
11,111 酸化ガリウム単結晶基板、
12,112 ショットキー電極、
13,113 オーミック電極、
14 パッド電極、
20 開口部、
21 窓部材、
22 ステム、
23 キャップ、
24 接着剤、
25 ボンディングワイヤ、
26 ガラス、
31,32 リード、
31a リード31の一端、
41 直交面、
124 低融点ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面または該直交面から所定の角度傾斜した面を受光面とする酸化ガリウム単結晶基板と、
前記酸化ガリウム単結晶基板の第1表面に形成された第1電極と、
前記受光面を含む前記酸化ガリウム単結晶基板の第2表面に形成された第2電極と、
を備えることを特徴とする紫外線センサ。
【請求項2】
前記所定の角度は、前記直交面と前記酸化ガリウム単結晶における(001)面とがなす角度であって、該角度の方向に前記直交面から−20°以上、20°以下の角度である請求項1記載の紫外線センサ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記酸化ガリウム単結晶基板とオーミック接触をなすオーミック電極であり且つ低融点金属が前記酸化ガリウム単結晶基板内の一部に拡散することにより形成されている請求項1または請求項2記載の紫外線センサ。
【請求項4】
前記第2電極は、前記受光面に形成され、前記酸化ガリウム単結晶基板とショットキー接触をなし且つ前記酸化ガリウム単結晶基板上にIBS法により蒸着された透光性を有する金属薄膜である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項5】
前記酸化ガリウム単結晶基板を内部に収容すると共に外部雰囲気から封止し、少なくとも一部に紫外線に対して透光性を有する窓部材が設けられているパッケージと、
前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続されると共に前記パッケージの外部に引き出された第1及び第2端子と
を更に備える請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項6】
前記窓部材は、低融点ガラスにより前記パッケージに接着されており、
前記酸化ガリウム単結晶基板は、低融点金属により前記パッケージ内部にダイボンディングされている請求項5記載の紫外線センサ。
【請求項7】
前記受光面は、1mm2当たり、長さ0.1mm以上、0.5mm以下および幅0.02mm以上、0.1mm以下の傷を、10個以上、100個以下有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項8】
前記酸化ガリウム単結晶は、Si濃度1ppm以上、50ppm以下、Fe濃度3ppm以下である請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項9】
前記酸化ガリウム単結晶は、キャリア密度が1×1017cm-3以上、1×1018cm-3以下の電気的導電性を有する請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項10】
酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して直交する直交面または該直交面から所定の角度傾斜した面が切断面となるよう、前記酸化ガリウム単結晶を所定の厚さで切断して切断面を受光面とし、
前記酸化ガリウム単結晶基板の第1表面に第1電極を形成し、
前記受光面を含む前記酸化ガリウム単結晶基板の第2表面に第2電極を形成する
ことを特徴とする紫外線センサの製造方法。
【請求項11】
前記所定の角度は、前記直交面と前記酸化ガリウム単結晶における(001)面とがなす角度であって、該角度の方向に前記直交面から−20°以上、20°以下の角度である請求項10記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項12】
前記第1電極は、前記酸化ガリウム単結晶基板の表面とオーミック接触をなすオーミック電極であり、
前記第1電極を、超音波半田器による所定の超音波により低融点金属を前記酸化ガリウム単結晶基板内の一部に拡散させることで形成する請求項10または請求項11記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項13】
前記第2電極は、前記酸化ガリウム単結晶基板の表面とショットキー接触をなすショットキー電極であり、
前記第2電極を、IBS法により前記酸化ガリウム単結晶基板上に透光性を有する金属薄膜を蒸着させることで形成する請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項14】
少なくとも一部に紫外線に対して透光性を有する窓部材が設けられているパッケージ内に前記第1電極及び前記第2電極を形成した前記酸化ガリウム単結晶基板を収容すると共に外部雰囲気から封止し、
前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続された第1及び第2端子を前記パッケージの外部に引き出す請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項15】
前記窓部材を、低融点ガラスにより前記パッケージに接着し、
前記酸化ガリウム単結晶基板を、低融点金属により前記パッケージ内部にダイボンディングする請求項14記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項16】
前記切断面に対し、1mm2当たり、長さ0.1mm以上、0.5mm以下および幅0.02mm以上、0.1mm以下の傷を、10個以上100個以下有するよう研磨を行い、研磨した前記切断面を受光面とする請求項10乃至請求項15記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項17】
前記酸化ガリウム単結晶は、Si濃度1ppm以上、50ppm以下、Fe濃度3ppm以下である酸化ガリウム粉末を圧縮成形し、所定の条件で焼成して得られる酸化ガリウム焼結体の原料棒を用いて、FZ法により酸化ガリウム単結晶を育成して得る請求項10乃至請求項16のいずれかに記載の紫外線センサの製造方法。
【請求項18】
前記酸化ガリウム単結晶は、キャリア密度が1×1017cm-3以上、1×1018cm-3以下の電気的導電性を有する請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の紫外線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−176090(P2011−176090A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38512(P2010−38512)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(302061336)トーニック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】