説明

紫外線照射装置

【課題】被照射物の温度上昇が少なく且つ硬化能力に優れた紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】紫外線ランプ22の下方を除いて紫外線ランプを囲むように紫外線のみを選択的に反射する反射板23を配置し、反射板の下方開口部に、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光は透過し、紫外線ランプから直接下方に向かう直接光は反射するフィルタ27を配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は紫外線硬化型樹脂等を硬化させるための紫外線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紙やプラスッチク等の耐熱性の低い被照射物に塗布された紫外線硬化型の塗料やインキ等を硬化させる場合、例えば図5に示すような空冷式の紫外線照射装置1が使用されている。この紫外線照射装置は、図5の前後方向に伸びる紫外線ランプ2の下方を除く周囲に、紫外線のみを選択して反射させ、可視光及び赤外線を後方に透過させる反射板3(ガラスに多層蒸着膜を施してなる所謂コ−ルドミラ−)を設置すると共に、反射板を介さずに下方に向かう直射光から可視光を除去する為に、反射板の開口部付近に、蒸着膜が施されたフィルタ4を設置してなる。なお5は通気口、6は本体、7は排気ダクトである。被照射物は搬送装置8によりフィルタ4の下方を矢印方向に搬送されて紫外線が照射される。
【0003】また図6に示すように紫外線ランプ11の周囲に、中を水が通るガラス製の二重管からなるジャケットにより構成された水フィルタ12を配置した水冷式の紫外線照射装置13が使用される場合もある。なお14は本体であり、15は金属製の反射板、16は反射板15を冷却するための金属製の管で中に水が通っている。また水フィルタ12の二重管の外管と内管の間の水が通る箇所に、波長選択フィルタを配置した、波長選択フィルタ内蔵タイプのものが使用される場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した空冷式の紫外線照射装置の場合、フィルタ4には、可視光を除去する為に石英ガラスのような耐熱性の紫外線透過材料に酸化金属を多層蒸着したものが使用されているが、このようなフィルタの場合紫外線と共に赤外線も透過してしまうという欠点を有する。したがって、フィルタの温度が上昇し、また透過した赤外線により被照射物も温度上昇して被照射物の変形や、多色刷り印刷原版の場合に見当ずれ等が起こるという問題がある。さらにフィルタが高熱になると施された蒸着膜が熱により剥離してしまうこともある。
【0005】また、反射板3の集光点9は反射板3の曲線により決まるが、空冷式の場合、紫外線ランプ2、反射板3及びフィルタ4の冷却用の通気風を取り入れる取入口10を確保する為に、フィルタ4は反射板3の下端からさらに下方に配置する必要がある。従って、フィルタ4は搬送装置8に接近して配置されることになり、被照射物は、熱せられたフィルタ4の幅射熱の影響を受けさらに温度上昇が起こりやすい。
【0006】一方、水冷式の場合には、熱による影響は少ないが、ガラス製の二重管と水のために紫外線、特に300nm以下の短波長の紫外線の透過率が減少し、硬化能力において空冷式に比較して劣るという欠点がある。
【0007】本発明は、被照射物の温度上昇が少なく且つ硬化能力に優れた紫外線照射装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の紫外線照射装置では、紫外線ランプの下方を除いて紫外線ランプを囲むように紫外線のみを選択的に反射する反射板が配置され、反射板の下方開口部に、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光は透過し、紫外線ランプから直接下方に向かう直接光は反射するフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0009】またフィルタが、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光に対しては臨界角以下になるよう、また反射板を介さずに紫外線ランプから直接下方に向かう直接光に対しては臨界角以上になるように配置されていることを特徴とする。
【0010】さらにフィルタが断面形状において逆V字形になるよう配置されていることを特徴とする。
【0011】またフィルタが断面形状において山形で、山形の両辺が下方に突出するように湾曲しているようになされていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】図1において本発明による紫外線照射装置20では、図1の前後方向に伸びる箱状の本体21内に直管形の紫外線ランプ22が配置され、紫外線ランプ22の長手方向に、紫外線ランプ22の下方を除いてその周囲を取り囲むように、紫外線のみを選択して反射させ可視光及び赤外線を後方に透過させる反射板23(所謂コ−ルドミラ−)が配置されている。反射板23の上部には通気孔24が設けられている。なお25は反射板23を支える支持部材、26は排気ダクト、また30は被照射物を搬送する搬送装置である。
【0013】反射板23の下方開口部には紫外線ランプ22の長手方向に沿ってフィルタ27が配置されている。フィルタ27は石英製の平板部材27a、27bからなり、2枚を逆V字形、即ち山形に組み合わせ頂部を合わせたような断面形状をしている。石英製の平板部材27a、27bには蒸着膜は何ら施されていない。各平板部材の下方は保持部材28に保持され、下方の支持部材25と保持部材28の間には空気流入口29が設けられている。空気流入口29から本体21内に取り入れられた空気は、フィルタ27、紫外線ランプ22及び反射板23を冷却し、通気孔24、排気ダクト26を通って本体21の外に排気される。
【0014】フィルタ27は、紫外線ランプ22から出て反射板23に反射して来た反射光Aを透過するが、紫外線ランプから反射板23を介さずに直接来る直接光Bは反射するようになされている。即ち平板部材27a、27bは、反射光に対しては臨界角(透過と反射の境界角)以内になるよう、また直接光に対しては臨界角以上になるような角度に配置されている。例えば平板部材27a、27bの材質が石英の場合屈折率は1.06であるから、臨界角は平板部材27a、27bの垂線に対してそれぞれ43°となる。従って、平板部材27a、27bの垂線に対してそれぞれ43°以内に入射する光(反射光A)は透過するが、43°以上の角度で入射する光(直接光B)は反射する。
【0015】反射板23において赤外線と可視光が取り除かれて紫外線のみからなる反射光は、フィルタに対して臨界角以内の角度で入射するのでフィルタ27を透過し集光点Cに向かう。一方、紫外線ランプから直接来る、紫外線、赤外線及び可視光のすべてを含む直接光Bはフィルタ27に対して臨界角以上の角度で入射するので反射板23方向に反射され、反射板23において赤外線と可視光が取り除かれて紫外線のみが反射光としてフィルタ27に臨界角以内の角度で入射し透過する。
【0016】従って、紫外線ランプ22から放射されるすべての光が反射板23において赤外線と可視光が取り除かれて紫外線のみがフィルタ27を透過することになるので、フィルタや被照射物の温度上昇が防げる。
【0017】またフィルタ27は山形になされて、反射板23により囲まれる空間内に入り込んでいるので、被照射物から遠くなり、それだけ被照射物はフィルタからの熱的影響を受けにくい。なお、フィルタ27は紫外線ランプ22に接近して配置されることになるが、フィルタ27は、空気流入口29から流入する空気により冷却される一方、蒸着膜が全く施されていないので温度上昇による影響はない。
【0018】図2の紫外線照射装置31(図1と同じ部材には同じ符号が付されている)ではフィルタ32は、下方に突出するように湾曲した石英製の湾曲板部材32a、32bからなり、この2枚の湾曲板部材を山形に組み合わせ頂部を合わせたような断面形状をしている。湾曲板部材32a、32bには蒸着膜は何ら施されていない。
【0019】また図2の紫外線照射装置では、反射板23と同じ材質からなる補助反射板33が設けられ、フィルタ32で反射したが反射板23に入射しない、即ち反射板23でカバ−できない光を反射するようになされている。なおこのような補助反射板33は図1の紫外線照射装置に配置することもできる。
【0020】なお、図示のフィルタでは、2枚の平板部材や湾曲板部材を山形に組み合わせてなるが、1枚の部材で構成されていてもよい。
【0021】
【実施例】図1の紫外線照射装置を用いてその光学的特性を測定した。なお反射板23の下方開口部の幅Dは94mm、空気流入口29の高さEは10mm、空気流入口29の上端から紫外線ランプ22の中心までの距離Fは50mm、空気流入口29の上端からフィルタ27の頂部までの距離Gは34mmである。紫外線22として6KWのメタルハライドランプを使用し、紫外線ランプ22の中心から集光点までの距離(照射距離)を100mmとし、コ−ト紙に紫外線硬化型オフセットインキ墨を塗布したものを2m/minの速度で移動しながら、紫外線照射計(感度波長域300〜400nm)を用い測定して、ピ−ク照度、UV光量及びUVインキ硬化スピ−ドを求めた。その結果を表1に示す。
【0022】なお比較例として、図5の紫外線照射装置を従来例1とし、図6の紫外線照射装置を従来例2として、図1の紫外線装置と同じ条件で測定しその結果を表1に併せて示した。ただし図5の紫外線照射装置(従来例1)において、反射板3の下方開口部の幅は94mm、空気流入口10の高さは10mm、紫外線ランプ2の中心から集光点9までの距離(照射距離)を100mmとした。また図6の紫外線照射装置(従来例2)において、反射板15の下方開口部の幅は135mm、本体14の下端から紫外線ランプ11の中心までの距離は35mm、照射距離を85mmとした。
【0023】
【表1】


【0024】表1から、本発明装置は、水冷式の従来例2に比較して、ピ−ク照度において遥かに優れ、また空冷式の従来例1に比較してもピ−ク照度が勝っている。従って、UV光量及びUVインキ硬化スピ−ドにおいて従来例1及び2より優れている。
【0025】また、上述したと同じ装置を用い、被照射物として厚さ0.28mmのコ−ト紙(図3)、厚さ0.24mmのアルミニウム板(図4)を用いて、搬送スピ−ドを変えて温度上昇を測定した結果を図3及び図4R>4に示す。この結果から、本発明装置は従来例1及び2に比較して温度上昇が少ないことがわかる。
【0026】
【発明の効果】本発明の紫外線照射装置では、反射板の下方開口部に、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光は透過し、紫外線ランプから直接下方に向かう直接光は反射するフィルタが配置されているので、紫外線ランプから放射されるすべての光が反射板において赤外線と可視光が取り除かれて、紫外線のみがフィルタに入射され透過することになるので、フィルタや被照射物の温度上昇が防げ、被照射物の変形や、多色刷り印刷原版の場合に見当ずれが防止できる。
【0027】また、水冷式のように紫外線が減衰することがないので、紫外線硬化樹脂等を硬化させる硬化能力において優れている。さらに、フィルタは被照射物から離れて配置されているので、被照射物はフィルタの輻射熱による影響を受けにくく温度上昇しにくい。またフィルタには蒸着膜が無くまた施す必要もないので、フィルタが紫外線ランプに接近して配置されていても、蒸着膜がある場合のように熱に対する心配をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による紫外線照射装置の断面図。
【図2】本発明による別の紫外線照射装置の断面図。
【図3】被照射物としてコ−ト紙を用いて温度上昇を測定したグラフ。
【図4】被照射物としてアルミニウム板を用いて温度上昇を測定したグラフ。
【図5】従来の紫外線照射装置(空冷式)の断面図。
【図6】従来の紫外線照射装置(水冷式)の断面図。
【符号の説明】
20 紫外線照射装置
21 本体
22 紫外線ランプ
23 反射板
24 通気孔
25 支持部材
26 排気ダクト
27 フィルタ
27a 平板部材
27b 平板部材
28 保持部材
29 空気流入口
30 搬送装置
31 紫外線照射装置
32 フィルタ
32a 湾曲板部材
32b 湾曲板部材
33 補助反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】紫外線ランプの下方を除いて紫外線ランプを囲むように紫外線のみを選択的に反射する反射板が配置され、反射板の下方開口部に、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光は透過し、紫外線ランプから直接下方に向かう直接光は反射するフィルタが配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】フィルタが、紫外線ランプから反射板に反射して下方に向かう反射光に対しては臨界角以下になるよう、また反射板を介さずに紫外線ランプから直接下方に向かう直接光に対しては臨界角以上になるように配置されている請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】フィルタが断面形状において逆V字形になるよう配置されている請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】フィルタが断面形状において山形で、山形の両辺が下方に突出するように湾曲している請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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