説明

細霧装置付きの撹拌扇

【課題】 先行文献で、送風扇枠の前面に送風扇の羽根径に見合ったサイズで4個の噴出口を設けた構成がある。しかし、この構成は送風扇と噴出口が近接した位置関係となるので、噴出口より噴射されるミストは、細霧化される前(ミスト粒子)の状態で拡散される虞があり、ミスト粒子が近距離で流下するので、細霧冷房、防除効果又は気化潜熱は、それ程期待できないと考えられる。また近距離の作物、家畜又は地面、床面等に流下し、この箇所を濡らすことの弊害が考えられる。
【構成】 本発明は、枠体のブラケットに支持されるモータの出力軸に設けた羽根車と、羽根車用のガードと、枠体に取付けた略筒状の吹出し側のケーシング内に設けた渦巻き形の静翼でなる撹拌扇で、ケーシングを囲繞する配管に設けたノズルは、ケーシングの吹出し方向端部の前方に位置し、かつノズルと羽根車との間に送風流域用の空間を形成する細霧装置付きの撹拌扇である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農事用、畜産用等として活用されている撹拌扇の改良を意図した細霧装置付きの撹拌扇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撹拌扇に配管を介して搬送した流体を、一個のノズルより噴射する構成が考えられる。本出願人もこの考え方に基づく実験機を製造し、工場内で試験を行った。その結果は、略5mの所で流下する傾向がみられ、十分な拡散効果が達成されていないことが判明した。このような状況に鑑み、先行文献を調査した処、下記に示した考案が検索されたので、以下、その概要を説明する。
【0003】
この文献(1)は、実用新案登録第3068525号の「ミストファン及びミストファンキット」である。この考案は、ビニールハウス、温室又は畜舎に設置される送風扇の前面に、この送風扇の羽根径に見合うサイズのリング状の送液管を配置し、この送液管に適宜数の噴出口を配置し、この噴出口より霧化したミストを風圧でビニールハウス、温室又は畜舎内に拡散し、消毒や気化潜熱を利用した冷房をする構成であり、農業用のビニールハウス、温室又は畜舎内の消毒や冷房を、簡単な設備で実現することを意図する。
【0004】
また文献(2)は、実開平7−9457号の「施湿用噴霧装置」である。この考案は、両端を開口した通風筒内にモータにより回転するファンを設け、このファンの送風方向の途上であって通風筒の吹出口の周内に複数の噴霧ノズルを設け、この噴霧ノズルから噴出される細霧をファンからの送風に含ませて高速細霧し、遠方に飛ばす構成であり、ダム建設におけるRCD工法によるコンクリートの打設面に対し、養生のために広範囲に亙って細霧を与える施湿手段として採用できる施湿用噴霧装置を提供することを意図する。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3068525号
【特許文献2】実開平7−9457号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記文献(1)は、送風扇枠の前面に、送風扇の羽根径に見合ったサイズで4個の噴出口を設けた構成であり、送風扇と噴出口は近接した位置関係でなる。従って、噴出口より噴射されるミストは、細霧化される前(ミスト粒子とする)の状態で拡散される虞があり、このミスト粒子が近距離で流下される。従って、このような構成では、十分な細霧冷房、防除効果の拡充又は気化潜熱は、それ程期待できないものと考えられる。またこの近距離の作物、家畜又は地面、床面等に流下し、この箇所を濡らすことから、その弊害が考えられる。例えば、作物及び/又は家畜では生育の阻害、病気の発生と、収穫量の減少等が考えられる。
【0007】
また文献(2)は、通風筒の吹出口の周内に複数の噴霧ノズルを設けた構成であり、圧損及び/又は風量の減少等が考えられること、騒音が発生すること等の弊害が考えられるので、工事現場での使用には差し支えないが、農事用、畜産用としての使用には問題が考えられる。
【0008】
上記に鑑み本発明は、(1)ノズルからの流体を速やかに細霧化すること、(2)細霧噴出用のノズルからの細霧の飛距離及び/又は拡散範囲を拡大すること、(3)作物にムラなく噴霧すること、(4)細霧供給ノズルの取付け個数を細霧の飛距離が伸びることにより減少させること、(5)細霧の拡散効果は、滞空時間を長くすること、(6)園芸ハウス内部を速くムラなく霧で包みこみ、葉面の裏まで霧を届かせること、又は防除に効果を発揮すること、また細霧のミスト化が促進され、作物の葉面を必要以上に濡らさず噴霧状況を確保すること及び/又は最適な噴霧を行うこと等を意図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ケーシングに囲繞する配管に複数のノズルを設ける構成及び/又は
羽根車とノズルとの間に空間を形成する構成を採用し、下記の目的を達成することを意図する。即ち、(1)ノズルからの流体(水、薬液、養分等の流体)を速やかに細霧化すること、(2)細霧噴出用のノズルからの細霧の飛距離及び/又は拡散範囲を拡大すること、(3)作物にムラなく噴霧すること、(4)細霧供給ノズルの取付け個数を細霧の飛距離が伸びることにより減少させること、(5)細霧の拡散効果は、滞空時間を長くすること、(6)園芸ハウス内部を速くムラなく霧で包みこみ、葉面の裏まで霧を届かせることで、防除効果を発揮すること、また細霧のミスト化が促進され、作物の葉面を必要以上に濡らさず、最適な噴霧状況を確保すること及び/又は最適な噴霧を行うこと等を意図する。
【0010】
請求項1は、枠体に設けたブラケットに支持されるモータと、このモータの出力軸に設けた羽根車と、この羽根車をカバーするガードと、前記枠体に取付けた略筒状の吹出し側のケーシングと、このケーシング内に設けた渦巻き形の静翼で構成した撹拌扇であって、
この撹拌扇に付設された細霧装置は、前記ケーシングに囲繞するように設けた配管と、この配管に設けたノズルとで構成し、このノズルが前記ケーシングの吹出し方向端部の前方に位置するとともに、このノズルと前記羽根車との間に送風流域用の空間(流路)を形成する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するための最適な配管装置を提供すること等を意図する。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の配管に、他に設置したタンクに設けた搬送用の配管を接続する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するための最適な配管及び/又はノズルの構造を提供すること等を意図する。
【0014】
請求項3は、請求項1に記載の配管は、前記ケーシングの吹出し側の先端周面に取付け体を介して設け、この配管に設けたノズルの吹出し口が、このケーシングの吹出し方向端部より突出する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇である。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するための最適な配管及び/又はノズルの構造を提供すること等を意図する。
【0016】
請求項4は、請求項1に記載の配管に設けたノズルは、少なくとも三個以上であって、略等間隔に設ける構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、枠体に設けたブラケットに支持されるモータと、モータの出力軸に設けた羽根車と、羽根車をカバーするガードと、枠体に取付けた略筒状の吹出し側のケーシングと、ケーシング内に設けた渦巻き形の静翼で構成した撹拌扇であって、
撹拌扇に付設された細霧装置は、ケーシングに囲繞するように設けた配管と、配管に設けたノズルとで構成し、ノズルがケーシングの吹出し方向端部の前方に位置するとともに、ノズルと羽根車との間に送風流域用の空間を形成する構成とした細霧装置付きの撹拌扇である。
【0018】
従って、請求項1は、ケーシングに囲繞する配管に複数のノズルを設ける構成及び/又は羽根車とノズルとの間に空間を形成する構成を採用し、下記の目的を達成できる。即ち、(1)ノズルからの流体(水、薬液、養分等の流体)を速やかに細霧化できること、(2)細霧噴出用のノズルからの細霧の飛距離及び/又は拡散範囲を拡大できること、(3)作物にムラなく噴霧できること、(4)細霧供給ノズルの取付け個数を細霧の飛距離が伸びることにより減少させ得ること、(5)細霧の拡散効果は、滞空時間を長くできること、(6)園芸ハウス内部を速くムラなく霧で包みこみ、葉面の裏まで霧を届かせることで、防除効果が発揮できること、また細霧のミスト化が促進され、作物の葉面を必要以上に濡らさず、最適な噴霧状況が確保できること及び/又は最適な噴霧が行えること等の特徴がある。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載の配管に、他に設置したタンクに設けた搬送用の配管を接続する構成とした細霧装置付きの撹拌扇である。
【0020】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するための最適な配管装置を提供できること等の特徴を有する。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1に記載の配管は、ケーシングの吹出し側の先端周面に取付け体を介して設け、配管に設けたノズルの吹出し口が、ケーシングの吹出し方向端部より突出する構成とした細霧装置付きの撹拌扇である。
【0022】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するための最適な配管及び/又はノズルの構造を提供できること等の特徴を有する。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1に記載の配管に設けたノズルは、少なくとも三個以上であって、略等間隔に設ける構成とした細霧装置付きの撹拌扇である。
【0024】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するための最適な配管及び/又はノズルの構造を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一例を説明する。
【0026】
図面の説明をすると、図1はハウスに本発明の細霧装置付きの撹拌扇を装置した状態の側面図、図2は細霧装置付きの撹拌扇の側面図、図3は細霧装置付きの撹拌扇の正面図、図4は細霧装置付きの撹拌扇の正面斜視図、図5は細霧装置付きの撹拌扇の背面斜視図である。
【0027】
図中1は方形状の枠体で、この枠体1の後方側(吸込み側)には複数本のブラケット2を支持し、このブラケット2にモータ3を取付ける。このモータ3の出力軸30には羽根車4を軸支する。また前記枠体1の前方側には略筒状の吹出し側のケーシング6を設け、このケーシング6の吹出し方向端部のやや内方には渦巻き形の静翼8を設ける。そして、この静翼8は断面視して吹出し方向に向かってテーパー形状を呈しており、風の吹出しをスムーズにして、到達距離の補助と、翼体80の強度の確保、又は樹脂成形の特性を利用すること等を目的とする。図中5は羽根車4のガードを示しており、前記ブラケット2に支持されている。尚、この静翼8はケーシング6の吹出し方向端部のやや内方で、十分な間隔81を持つ構成とし、羽根車4からの送風を遠方に、かつ略円筒状に送出すことを目的とする。またこのケーシング6に囲繞するように設けた配管10と、この配管10等間隔に複数のノズル11を設ける。そして、このノズル11がケーシング6の吹出し方向端部の前方に位置するとともに、このノズル11と前記羽根車4との間に送風流域用の空間12を形成する構成とし、ケーシング6内において、風の移動をスムーズにし、また羽根車4からの送風を遠方に、かつ略円筒状に送出すことを目的とする。そして、この送風の特性を活用することで、ノズル11から噴射される流体の細霧化を促進しつつ、かつ細霧を遠方に飛ばすとともに細霧拡散が図れる。このような構成であることから、ハウスH内の広域的な範囲に、細霧を供給できること、配置台数の減少化、省資源化、環境保護等に役立て得る特徴がある。さらにこの細霧の一層の広域的な拡散を必要とする場合は、本発明の撹拌扇の首振り及び/又は俯仰角調整を図る(図示せず)。尚、この全部のノズル11は図3に示した如く、軸心方向(羽根車4の軸心方向)に傾斜することで、噴射(噴霧)方向の収歛化と、羽根車4で生成される風に確実に混入できること等の特徴があり、前述の通り、噴射される流体の細霧化を促進しつつ、かつ細霧を遠方に飛ばすとともに細霧拡散が図れる。勿論、このノズル11の方向は全部及び/又は一部を変更可能であり、気候及び/又は作物(家畜)、取付け位置、ハウスH(畜舎)の形態等により選択する。そして、本発明は前述の如く、ノズル11より噴射された流体は、瞬時に細霧化されるとともに、ケーシング6の吹出し方向端部から吹出される風に誘導され、広域的に拡散される特徴がある。
【0028】
前記配管10はケーシング6に固止した複数個の取付け体13で適宜間隔を持って支持され、この配管10にケーシング6の振動が伝達しない構成とし、ノズル11からの均等な噴射を意図する。
【0029】
尚、20はガード5とケーシング6との間に設けたベルマウスで、羽根車4で生成される風をスムーズにケーシング6に送風し、またこの風の生成に寄与する。
【0030】
図中21は配管10に流体を供給する配管で、図示しない水槽及び/又は撹拌扇に付設したタンクに連設されている。また図示しないが、撹拌扇に直接タンクを設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1はハウスに本発明の細霧装置付きの撹拌扇を装置した状態の側面図
【図2】図2は細霧装置付きの撹拌扇の側面図
【図3】図3は細霧装置付きの撹拌扇の正面図
【図4】図4は細霧装置付きの撹拌扇の正面斜視図
【図5】図5は細霧装置付きの撹拌扇の背面斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 枠体
2 ブラケット
3 モータ
30 出力軸
4 羽根車
5 ガード
6 ケーシング
8 静翼
80 翼体
81 間隔
10 配管
11 ノズル
12 送風流域用の空間
13 取付け体
20 ベルマウス
21 配管
H ハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に設けたブラケットに支持されるモータと、このモータの出力軸に設けた羽根車と、この羽根車をカバーするガードと、前記枠体に取付けた略筒状の吹出し側のケーシングと、このケーシング内に設けた渦巻き形の静翼で構成した撹拌扇であって、
この撹拌扇に付設された細霧装置は、前記ケーシングに囲繞するように設けた配管と、この配管に設けたノズルとで構成し、このノズルが前記ケーシングの吹出し方向端部の前方に位置するとともに、このノズルと前記羽根車との間に送風流域用の空間を形成する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇。
【請求項2】
請求項1に記載の配管に、他に設置したタンクに設けた搬送用の配管を接続する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇。
【請求項3】
請求項1に記載の配管は、前記ケーシングの吹出し側の先端周面に取付け体を介して設け、この配管に設けたノズルの吹出し口が、このケーシングの吹出し方向端部より突出する構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇。
【請求項4】
請求項1に記載の配管に設けたノズルは、少なくとも三個以上であって、略等間隔に設ける構成としたことを特徴とする細霧装置付きの撹拌扇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−95(P2007−95A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185372(P2005−185372)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(391008294)フルタ電機株式会社 (176)
【Fターム(参考)】