組立式屋上用簡易クレーン、及びこのクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法
【課題】既存の建物の屋上などのように狭隘且つ不定形状で障害物の多いスペースに柔軟に対応してクレーンを設置でき、しかも、クレーンを構成する個々の部材を人力で搬入し、建物の屋上での組立、分解を容易に行うことができる組立式屋上用簡易クレーン、及びこのクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法を提供する。
【解決手段】複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱2と、この支柱を立設した状態で支える架台4と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアーム3と、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチ6と、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置する。
【解決手段】複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱2と、この支柱を立設した状態で支える架台4と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアーム3と、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチ6と、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話の移動体基地局を、既存の建物(ビル)の屋上などのように狭隘且つ不定形状で、障害物の多いスペースに設置するための、組立式屋上用簡易クレーン、及びこの組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしする、吊荷の搬入または搬出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、移動体通信技術の進展によって、移動体通信用の無線基地局の整備が進んでいる。無線基地局には、設置する場所に応じて、通信用の鉄塔を新設してアンテナを設置するものから、既存の建物の屋上にアンテナを設置するようなタイプまで、様々な規模のものがある。
【0003】
既存の建物の屋上にアンテナを設置するタイプは、利用者の多い都市部において比較的低コストに移動体基地局を設置できる利点があり、デジタル携帯電話システム構築のための基地局設置工事が各地で進められている。しかし、重量物を高いビルなどの屋上に取り付けることから、アンテナや無線設備などの資材の搬入作業が難しいものとなり、設置場所の状況や周辺の環境に応じて、この様な資材の搬入について様々な方法や工法が用いられている。
【0004】
既存の建物の屋上にアンテナを設置するタイプにおける一般的な資材の搬入方法としては、地上に移動式クレーンを配置し、この移動式クレーンを用いて、建物の外部から屋上に資材を搬入する方法が採られている。この方法は、地上に移動式クレーンを駐車、或いは、設置するための空き地や道路などが必要になるため、建物の周囲に十分なスペースが確保できる場所に限られている。
【0005】
特に、アンテナや無線設備の設置に好適な高層ビルの屋上に移動体基地局を設置するためには、大型の移動式クレーンが必要となる。そして、移動式クレーンの横転などの事故を防ぐためには、移動式クレーンのアウトリガを外側に大きく張り出す必要があるため、より広いスペースが必要になる。
【0006】
そのため、都市部ではこのスペースの確保が困難であり、仮にスペースが確保できたとしても、土地借用、道路の使用や移動式クレーン設置の申請手続、道路への鉄板養生などの措置が必要になり、作業の煩雑化と工期の長期化を招く要因となっている。
【0007】
また、建物の外壁に仮設の足場を設置し、アンテナを構成する資材を分解して、作業員が手搬入する方法も広く行われている。しかし、仮設の足場が設置できない建物も存在し、また、屋上に仮設の足場から資材を引き込むための引き込み用ステージを設置するスペースがない場合にも、資材を搬入できない事態が生じていた。
【0008】
しかも、アンテナを構成する資材について、作業員が手搬入できる程度の重量やサイズに分割しなければならず、不安定な足場を使っての搬入は、作業員の安全面でも問題がある。更に、安全を確保するために、建物に足場を固定するためのアンカーを打つことがあるが、アンカーは建物に傷をつけることがあるため、十分な配慮が必要であり、補修工事が必要になることもある。
【0009】
その他の資材の搬入方法として、アンテナを構成する資材を、建物のエレベータを利用して作業員が手搬入することも行われているが、資材をエレベータで搬入できる程度の重量やサイズに分割できないことも多い。また、通常、エレベータは屋上まで行かないため、最上階から屋上へは非常階段などを利用することになる。このため、エレベータと非常階段を使う煩雑な作業となり、避難用に作られた非常階段では、作業員の安全も十分に確保できない。
【0010】
そこで、例えば、特許文献1に示すように、建物の屋上に「組立式簡易屋上親子クレーン」を設置し、資材の荷揚作業を行う方法が提案されている。この特許文献1においては、建物の屋上に子クレーンを設置し、この子クレーンを使って親クレーンを揚重、組立設置するもので、クレーンの組立、撤去が人力で行えるようになっている。
【0011】
この他、例えば、特許文献2に示すように、ビル、マンションなどの高層建築物に対して資材の荷揚げや荷下ろしを行う「ホイスト」が提案されている。この特許文献2においては、荷揚機を作動させてホイストケーブルを巻き上げることで荷物を吊り上げ、この荷揚機からホイストケーブルを繰り出して荷物を下ろすようになっている。
【0012】
上記した特許文献1,2に開示されている「組立式簡易屋上親子クレーン」や「ホイスト」は、屋上において移動用キャスターや車輪を介して自由に移動可能であり、且つ容易に重量物を屋上に搬入することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−133062号公報
【特許文献2】特開平11−60163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、建物の屋上は、空きスペースの面積や形状が様々であり、且つ貯水タンクなどの障害物が設置されていることも多い。このため、移動式台車の形状やサイズが定まっている上記特許文献1のクレーンでは、狭隘且つ不定形状で障害物の多い屋上には設置できない場合がある。
【0015】
しかも、重量物を吊り上げる際のカウンタウェイトとして水を利用しているため、例えば、移動体基地局を設置する際に要求される250Kg〜500Kg程度の吊り上げ荷重を得ようとすると大量の水が必要になり、この水の準備や使用後の処理が煩雑になるという課題もある。
【0016】
一方、上記特許文献2の技術では、ホイストに補助台板を連結可能にしたことで、設置スペースが小さい場合には荷物の重量を少なくすることで対応できる。しかしながら、建物の屋上などのように、狭隘且つ不定形状で障害物の多いスペースに設置するには必ずしも十分とはいえない。
【0017】
また、特許文献1と同様に、重量物を吊り上げる際のカウンタウェイトとして水を利用しているため、大きな吊り上げ荷重を得ようとすると大量の水が必要になり、水の準備や使用後の処理が煩雑になる。
【0018】
本発明は、上記のような事情に鑑みて創出されたもので、その目的とするところは、既存の建物の屋上などのように狭隘且つ不定形状で障害物の多いスペースに柔軟に対応してクレーンを設置でき、しかも、クレーンを構成する個々の部材を人力で搬入し、建物の屋上での組立、分解を容易に行うことができる組立式屋上用簡易クレーン、及びこのクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てる組立式屋上用簡易クレーンであって、複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱と、この支柱を立設した状態で支える架台と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアームと、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチと、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置することで、上述した課題を解決した。
【0020】
また、前記架台は、前記支柱が立設された反力受けベースと、この反力受けベースに接続され、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて複数の直方体状の枠組み部材が選択的に組み付けられる下段部と、この下段部に積み重ねて組み付けられる直方体状の枠組み部材で形成される上段部を備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
更に、本発明に係るクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法は、前記組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしすることで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
加えて、前記クレーンに設置した風速・風向計の測定値と吊荷荷重、風圧荷重、作業半径のパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定することで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンによれば、架台を屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置するので、設置場所の状況や周辺の環境に応じた様々な設置スペースに対応でき、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上などにも容易にクレーンを設置できる。
【0024】
また、クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てるので、地上に配置する移動式クレーンを使う場合のように建物の周囲にスペースの確保は不要であり、仮設の足場を設置する必要もない。しかも、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材をクレーンのウインチを使って搬入するので、作業員の手搬入に比べて、重量物や大きなサイズの部材を安全且つ短時間に搬入できる。これによって、建物の屋上に移動体基地局を設置する作業の簡単化と工期の短縮が図れる。
【0025】
更に、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて架台を構成するので、架台全体と、個々の枠組み部材の軽量化が可能である。そのため、作業員が人力で搬入できる程度の軽量な部材を用いて、架台の十分な強度が得られる。
【0026】
また、第1、第2のカウンタウェイトを架台と反力受けベースに配置することで、設置スペースの面積や形状に応じて、吊荷の荷重と風による荷重に十分に耐え得るようにすることができる。この様に、第1、第2のカウンタウェイトを用いて、従来のように水をカウンタウェイトとして使用する事がないことから、水の準備や使用後の処理も不要である。
【0027】
加えて、複数のカウンタウェイトは、吊荷の荷重と風による荷重に耐え得るように選択的に配置され、前記架台の下段部における前記吊荷の吊り上げ時の前記アームの方向と逆方向の端部側に配置される第1のカウンタウェイトを備えていることから、クレーンを用いた屋上への資材の搬入時の荷重のバランスを取ることができる。
【0028】
また、複数のカウンタウェイトは、反力受けベースにおける前記吊荷の屋上への荷下ろし時の前記アームの方向と逆方向の端部側に配置される第2のカウンタウェイトを備えていることから、クレーンを用いた屋上への資材の荷下ろし時の荷重のバランスを取ることができる。
【0029】
この他、本発明に係る吊荷の搬入または搬出方法によれば、上記構成の組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしするので、人力では不可能な重量物であっても、容易に搬入、搬出が可能となる。
【0030】
また、吊荷の搬入または搬出作業時に風速・風向計の測定値、吊荷荷重、風圧荷重及び作業半径のパラメータに基づいて所定のアルゴリズムで荷重モーメントを計算し、必要に応じてカウンタウェイトの数を増やしたり、吊荷の荷重に制限を付したりすることで、風が強い日であっても作業の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第1の設置例を示す側面図である。
【図2】図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの平面図である。
【図3】図1及び図2に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図4】図1及び図2に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図5】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第1の組立工程を示す斜視図である。
【図6】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の組立工程を示す斜視図である。
【図7】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の組立工程を示す斜視図である。
【図8】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の組立工程を示す斜視図である。
【図9】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第5の組立工程を示す斜視図である。
【図10】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第6の組立工程を示す斜視図である。
【図11】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第7の組立工程を示す斜視図である。
【図12】組立式屋上用簡易クレーンにおける、組み立てが完了した状態を示す斜視図である。
【図13】架台ユニットの具体的な構成例を説明するもので、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
【図14】反力受け枠組み部材と最下部の短支柱ユニットとの接合部の構成例を示すもので、(a)図は正面図、(b)図は(a)図のB矢示図、(c)図は(a)図のA矢示図である。
【図15】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する平面図である。
【図16】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する側面図である。
【図17】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する背面図である。
【図18】アーム固定ユニットの構成例を示すもので、(a)図は図16のD矢示図、(b)図は図16のE矢示図、(c)図は図16のF部の拡大図である。
【図19】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例の変形例について説明するもので、(a)図及び(b)図はそれぞれアウトリガを示す正面図、(c)図は(a)図及び(b)図に示したアウトリガの架台への装着例を示す平面図である。
【図20】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す平面図である。
【図21】図20に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図22】図20に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図23】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す斜視図である。
【図24】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す平面図である。
【図25】図24に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図26】図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図27】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す斜視図である。
【図28】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す平面図である。
【図29】図28に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図30】図28に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図31】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
[第1の設置例]
図1は、本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例を示す側面図、図2はその平面図である。また、図3は図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図4は図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。この第1の設置例は、クレーンを設置する屋上の端(側壁)から背後に十分な設置スペースを確保できる場合に好適なもので、最も安定且つ大きな引揚荷重が得られるものである。
【0034】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンは、分解して建物の屋上に人力で搬入し、屋上でボルトとナットなどの締結金具を用いて組み立て、使用後に再び分解して撤去できるように構成している。分解した各々のパーツ(個々の部材)は、人力で搬入可能な重量(例えば、30Kg以下)及びサイズであり、例えば、エレベータと非常階段などを利用して人力で持ち運び、屋上に搬入して組み立てて設置する。作業後には、搬入と逆の手順で分解して撤去する。この組み立て及び撤去作業は、別の組立装置を使わずに人力で行うことができる。
【0035】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンは、図1乃至図4に示すように、支柱2の部分と、この支柱2を立設した状態で支える架台4の部分により構成されている。
【0036】
より具体的には、図1・図2に示すように、複数の短支柱ユニット2−1,2−2,2−3…を連結して構成した支柱2と、この支柱2を立設した状態で支える架台4と、上記支柱2の上部に装着され、水平方向に回動するアーム3と、このアーム3を介して吊荷7を吊り上げ、荷下ろしするウインチ6と、吊荷7の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と架台4とのバランスを取る第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2を備えている。
【0037】
上記支柱2は、図3に示すように、反力受けベース1における長方形状の第1の反力受け枠組み部材1−1に立設されている。この第1の反力受け枠組み部材1−1に隣接して、長方形状の第2の反力受け枠組み部材1−2が設けられている。この第2の反力受け枠組み部材1−2は、架台4と支柱2を接続するための架台接続材として働くもので、架台4で支柱2を立設した状態に支え、支柱2に掛かる吊荷7の荷重と風による荷重に耐え得るようになっている。
【0038】
上記架台4は、図4に示すように、屋上の設置スペース9の面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材(架台ユニット4−1〜4−6)を選択的に組み付けて配置し、ボルトとナットなどの締結金具で固定したものである。本例では、架台4の支柱2側を2段構成にしている。
【0039】
この様に、直方体状の枠組み部材で形成された複数の架台ユニット4−1〜4−6を、設置スペースの面積と形状に応じて反力受けベースに選択的に接続して架台4を構成するので、架台4を自由な形状及び占有スペースで設置でき、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上においても、容易にクレーンを設置できる。また、複数の架台ユニット4−1〜4−6は、上記設置スペースの面積と形状に応じて、水平方向に自由に組み付けて配置できると共に、垂直方向にも自由に組み付けて配置できる。
【0040】
そして、図2・図4に示すように、上記架台4の下段部における吊荷7の吊り上げ時のアーム3の方向と逆方向の端部側には、ウェイト架台11−1が設置されており、このウェイト架台11−1に板状の第1のカウンタウェイト5−1が積み重ねて配置される。
【0041】
また、反力受け枠組み部材1−2における吊荷7の屋上への荷下ろし時の上記アーム3の方向と逆方向の端部側には、ウェイト架台11−2が設けられ、このウェイト架台11−2に板状の第2のカウンタウェイト5−2が積み重ねて配置される。
【0042】
上記カウンタウェイト5−1,5−2によって、図2に示すように、吊荷7の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷7と上記架台4とのバランスを取っている。そして、上記ウェイト5−2に隣接して設置したウインチブラケット12内に設置したウインチ6により、アーム3を介して吊荷7を吊り上げ、このアーム3を水平方向に回動させて屋上に荷下ろしするようになっている。
【0043】
上記短支柱ユニット2−1,2−2,2−3…、及び架台ユニット4−1,4−2,4−3…などのパーツ(個々の部材)は、図3(図8乃至図11の支柱ユニット参照)・図6に示すように、直方体状の枠体で形成されており、屋上の空きスペース(設置スペース)の面積や形状、障害物の有無やその位置などを考慮して組み上げることで、支柱2とこの支柱2を立設した状態で支える架台4を構成する。しかも、上記支柱2、架台4及びアーム3などは、組み上げたときにトラス構造になり、軽量で且つ十分な強度を確保できるようになっている。
【0044】
尚、図1乃至図4において、13はアーム3を支えるアーム支線、14−1はアームの一端を軸支するアーム固定ブロック、14−2はアーム支線の一端を固定するアーム固定ブロック、15は滑車台、16は滑車(スナッチブロック)、17はウインチブラケット連結材、18は支線、19−1,19−2は支線用ターンバックル、20は支線用ブラケット、21はフック、25はウインチ用のワイヤーロープである。
【0045】
また、図1・図16において、33は手すりである。この手すり33は、所定の間隔を開けて配置された2本の縦杆の上方部を、横杆により連結して構成されるもので、必要に応じてクランプ等を介して架台4に固定されるものである。尚、以降の説明では、図1・図16以外の図面を簡単化するために、この手すり33は省略する。
【0046】
図5乃至図11は、それぞれ、上記図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける第1乃至第7の組立工程を示す斜視図であり、図12は組立が完了した状態を示す斜視図である。また、図13は架台ユニットの具体的な構成例を示しており、図14は反力受け枠組み部材と最下部の短支柱ユニットとの接合部の構成例を示している。
【0047】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンを組み立てる際には、図5に示すように、屋上に傷がつくのを防ぐために、まず、二点鎖線で囲んだクレーンの設置スペース9に、コンパネ(コンクリートパネル)を敷き詰める。本例では1.8m×0.9mの8枚のコンパネ10−1〜10−8を、4行2列に配置している。
【0048】
そして、このコンパネ10−1〜10−8上の側壁8側に、反力受けベース1を設置する。この反力受けベース1は、反力受け枠組み部材1−1と、この反力受け枠組み部材1−1に結合され、架台4を接続する架台接続材として働く第2の反力受け枠組み部材1−2を備えている。
【0049】
次に、図6に示すように、反力受け枠組み部材1−2の端部上に架台ユニット4aを接続し、反力受け枠組み部材1−2の端部に架台ユニット4−1〜4−4を順次接続すると図7に示すような構成となる。各々の架台ユニット4−1〜4−4は、例えば、図6・図13(a)(b)に示すように、L字アングルなどで構成された、例えば、幅W=1000mm、高さH=1200mm、奥行D=600mmの直方体状の枠組み部材で構成されている。
【0050】
図13(a)(b)に示すように、上記枠組み部材の側面にはボルト穴22が形成されており、ボルトとナットなどの締結金具を用いて固定することで、隣接するユニット間を接続する。また、底面にはキャスター23が装着されており、このキャスター23を介して架台ユニット4−1〜4−4を作業員の僅かな労力で移動させて、エレベータなどへの搬入が容易に行えるようになっている。
【0051】
引き続き、図8に示すように、最下部の短支柱ユニット2−1を反力受け枠組み部材1−1上に立設する。図14(a)〜(c)は、それぞれ反力受け枠組み部材1−1と最下部の短支柱ユニット2−1との接合部の構成例を詳しく示している。
【0052】
反力受け枠組み部材1−1の底面には、図14(a)に示すように、ゴム板24が接着されており、中央付近にボルトとナットなどの締結金具を用いて短支柱ユニット2−1を固定する。この接合部には滑車台15が設置され、滑車台15にウインチ6からのワイヤーロープ25をアーム3の基部(一端側)に導く滑車16が装着されている。
【0053】
また、図8に示すように、架台ユニット4−4にウェイト架台11−1を設置し、このウェイト架台11−1に板状(本例では円板状)の第1のカウンタウェイト5−1を積み重ねて配置する。更に、この架台ユニット4−4のウェイト架台11−1側にウインチブラケット12を設け、ウインチ6の駆動部を装着する。
【0054】
そして、上記架台ユニット4aにウェイト架台11−2を設置し、このウェイト架台11−2に板状(本例では円板状)の第2のカウンタウェイト5−2を積み重ねて配置すると、全体として図9に示すような構造になる。
【0055】
次に、図10に示すように、架台ユニット4−1上及び架台ユニット4a上に、それぞれ架台ユニット4−5,4−6を積み重ねてボルトとナットなどの締結金具を用いて固定して組み上げる。また、短支柱ユニット2−1上に短支柱ユニット2−2を連結してボルトとナットなどの締結金具を用いて固定すると、全体として図11に示すような構造になる。
【0056】
最後に、短支柱ユニット2−2上に、短支柱ユニット2−3、アーム固定ブロック14−1、短支柱ユニット2−4、及びアーム固定ブロック14−2を順次結合して支柱2を組み立て、この支柱2にアーム3の一端を取り付ける(図3参照)。
【0057】
そして、アーム支線13、支線18、ウインチ6用のワイヤーロープ25などを装着し、図12に示すように、組立式屋上用簡易クレーンの全体を組み立てる。
【0058】
図15乃至図17は、それぞれ上述した組立式屋上用簡易クレーンにおいて、吊荷の搬入工程を説明するための平面図、側面図及び背面図である。また、図18は、これら図15乃至図17に示した組立式屋上用簡易クレーンにおけるアーム固定ユニットの構成例を示している。
【0059】
図15に示すように、吊り上げた吊荷7を屋上に荷下ろしする際に、吊荷7が重量物であってもアーム3を容易に水平方向に回動させることができるように、水平移動用ウインチ26を設けている。この水平移動用ウインチ26は手動ウインチであり、作業員によるワイヤ28aの巻き上げまたは巻き戻し操作と、作業員によるワイヤ28bの引っ張りまたは戻しで、アーム3の先端付近(他端側)を滑車27−3,27−2,27−1(図18(a)参照)を介して引き寄せ、或いは、引き離すことにより、アーム3を水平方向に回動させる。
【0060】
吊り上げた吊荷7を屋上に荷下ろしする際には、水平移動用ウインチ26側のワイヤ28aを弛ませておき、作業員がワイヤ28bを引っ張ってアーム3を屋上側に引き寄せ、この状態でウインチ6を使って吊荷7を屋上に荷下ろしする。一方、再び吊荷7を吊り上げるときには、アーム3の向きを側壁8の外側に張り出すためにワイヤ28bを弛ませておき、水平移動用ウインチ26でワイヤ28aを引き寄せてアーム3を側壁8の外側に張り出し、この状態でウインチ6を使って吊荷7を屋上に吊り上げる。吊荷7の上げ下ろしの際には、ワイヤ28a,28bは作業の邪魔にならないようにしておく。
【0061】
また、風が強い日であっても、吊荷7を安全に上げ下ろしできるようにするために、アーム固定ブロック14−2の頂部に、風速・風向計(図省略)を設置し、風速・風向計の測定値から吊荷荷重、風圧荷重、作業半径などのパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定する。
【0062】
ここで、吊荷荷重とは、吊荷7の荷重(質量)であり、クレーンにかかる荷重である。また、風圧荷重とは、クレーンに働く荷重と吊荷7に働く荷重の和からなり、クレーンに働く荷重はクレーンの形状と構造(受風面積)で決まり、吊荷7に働く荷重は吊荷7の形並びに大きさ(受風面積)で決まる。更に、作業半径とは、通常はアーム3の起伏角度によって上記荷重が変化するもので、本例では固定であるので関係しないが、アーム3の回転時に吊荷7と風圧荷重の荷重点が移動するので考慮する必要がある。
【0063】
そして、上記演算結果に基づき、設計時と作業時の第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2の各重量による安全性を判定する。安全性が十分でないと判定されたときには吊荷7の荷重を制限する(吊荷7を軽くするか、または分割する)。或いは、第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2の重量を、適宜増加させたり配置を変えたりして、安全性を確保する。
【0064】
実際の作業では、屋上にいる作業員が風速・風向計の測定値を入手・認識できるようにしておき、その測定値及び吊荷荷重、風圧荷重、作業半径などのパラメータを用いて荷重モーメントを計算し、吊荷7の荷重を低減する事を地上にいる作業員に指示したり、また、屋上にいる作業員がその場でカウンタウェイト5−1及び/または5−2の重量を増大させて調整することで、風が強い日であっても吊荷7を安全に上げ下ろしできる。特に、これは、強風、突風等の異常時荷重がクレーンに働いた時に、作業安全を確保する上で重要なことである。
【0065】
ここで、アーム3の先端部はアーム支線13により支えられており、アーム3の基部は、図18(b)に示すように、アーム固定ブロック14−1の取付金具14aに軸支されて水平方向に回動可能となっている。そして、アーム3の回転範囲は、アームストッパ29−1,29−2により制限される。
【0066】
本件特許出願の発明者等は、上述した構成の組立式屋上用簡易クレーンを試作し、種々の検証を行った。試作機の大きさは、幅W=2730mm、高さH=3970mm、奥行D=3550mmで、アーム長は2000mm、架台総重量1150Kgである。ウインチ6にはマックスブル工業(株)製のBMW−107−SCを用いた。ウインチ6の電源は、単相100Vで11.4A(50Hz)である。
【0067】
クレーンの組立、撤去は、5名から6名の作業員で可能であり、組立時間は約2時間、撤去時間は約1時間であった。パーツ(個々の部材)数は74、総パーツ(個々の部材の全体)重量は91Kgである。
【0068】
その結果、最大引揚荷重が480Kg程度、最大引揚容量は幅W=2m、高さH=2m、奥行D=2m程度であった。この時の引揚高は30m(巻上時間6分)であった。
【0069】
更に、上記クレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2が、それぞれ180Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0070】
図19は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例の変形例について説明するためのもので、(a)図及び(b)図はそれぞれアウトリガを示す正面図、(c)図は(a)図及び(b)図に示したアウトリガの架台への装着例を示す平面図である。
【0071】
設置スペース9の横方向に余裕がある場合には、図19(a)(b)に示すような、略三角枠状のアウトリガ30−1,30−2を利用する。例えば、図19(c)に示すように、アウトリガ30−1,30−2を架台4の外側に設ければ、より大きな吊り上げ荷重に耐えられ、且つ安全性も向上できる。
【0072】
図20は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す平面図である。図21は図20に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図22は図20に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図23は本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す斜視図である。
【0073】
この第2の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図20乃至23において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0074】
図20に示すように、第2の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31が存在し、側壁8から背後に十分な設置スペース9を確保しにくく、横方向に確保できる場合に好適なものである。すなわち、第1の設置例における架台ユニット4−3,4−4を側壁8の背後方向ではなく、横方向に設置している。本例では、1.8m×0.9mの6枚のコンパネを3行2列に配置したスペースにクレーンを設置できる。
【0075】
第2の設置例は、第1の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合320Kg程度)が少し下がるものの、設置スペース9が狭く背後に十分なスペースがない場合にもクレーンを設置できる。
【0076】
上記第2の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ360Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0077】
図24は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す平面図である。図25は図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図26は図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図27は本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す斜視図である。
【0078】
第3の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図24乃至27において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0079】
図24に示すように、第3の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31,32が存在し、側壁8から背後に設置スペース9を確保しにくく、横方向にも制限がある場合に用いるものである。
【0080】
すなわち、第1の設置例における架台ユニット4−1にウェイト架台11−1を設置して板状の第1のカウンタウェイト5−1を積み重ねて配置すると共に、反力受け枠組み部材1−2における吊荷7の屋上への荷下ろし時の上記アーム3の方向と逆方向の端部側にウェイト架台11−2を設け、このウェイト架台11−2に板状の第2のカウンタウェイト5−2が積み重ねて配置している。
【0081】
そして、上記架台ユニット4−1と反力受け枠組み部材1−2上に架台ユニット4−2,4−3を積み上げて組み付けている。これによって、本例では1.8m×0.9mの4枚のコンパネを2行2列に配置した狭いスペースにクレーンを設置できる。
【0082】
第3の設置例は、第1、第2の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合150Kg程度)が更に下がるが、従来はクレーンが設置できなかった狭いスペースにもクレーンを設置できる。
【0083】
この第3の設置例の場合、カウンタウェイト5−1,5−2を十分に重くし、且つ吊り上げる重量物を分解して軽くするなどして、安全性を確保するものである。
【0084】
上記第3の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ620Kgの場合、500Kgの吊荷でも安全性を確保できることを確認できた。
【0085】
図28は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す平面図である。図29は図28に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図30は図28に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図31は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す斜視図である。
【0086】
第4の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図28乃至31において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0087】
図28に示すように、本第4の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31が存在し、側壁8から背後には設置スペース9を確保できるものの、横方向に障害物31が存在する場合に好適なものである。すなわち、架台ユニット4−3の背後方向にウェイト架台11−4とウインチブラケット12を設置している。本例では1.8m×0.9mの6枚のコンパネを逆L字型に配置したスペースにクレーンを設置できる。
【0088】
第4の設置例は、第1の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合490Kg程度)が少し下がるものの、横方向に障害物31が存在する場合にもクレーンを設置できる。
【0089】
上記第4の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ200Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0090】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンは、上記第1の設置例乃至第4の設置例で説明したように、架台4を屋上の設置スペース9の面積と形状に応じて、複数の架台ユニット(直方体状の枠組み部材)4−1,4−2,4−3…を選択的に組み付けて配置できるので、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上などにもフレキシブルに対応でき、容易にクレーンを設置できる。
【0091】
また、クレーンの構成部材を分解して、個々のパーツ(部材)を、個別に建物の屋上に作業員による人力で搬入し、屋上で組み立てるので、移動式クレーンを使う場合のように設置場所や駐車スペースの確保は不要であり、仮設の足場を設置する必要もない。勿論、鉄板養生やクレーン設置のための申請も不要であり、足場の設置及びステージ設置も不要である。
【0092】
更に、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材をクレーンのウインチを使って搬入するので、作業員による手搬入に比べて、重量物や大きなサイズの資材を安全且つ短時間に効率的に搬入できる。また、作業員に無理を強いる搬入がなくなるので、より安全に作業を進めることができる。
【0093】
また、一度に搬入できる重量(最大で500Kg近く)が増えるので、吊り上げの工程数も少なくでき、建物の屋上に移動体基地局を設置する作業の簡単化と工期の短縮が図れる。
【0094】
加えて、複数の架台ユニット(直方体状の枠組み部材)を選択的に組み付けて架台4を構成することにより、作業員が人力で搬入できる軽量の部材を用いても、クレーンの十分な強度が得られる。
【0095】
また、上記支柱2及び架台4は、組み上げたときにトラス構造になり、アーム3も同様にトラス構造を採用しているので、軽量で且つ十分な強度を確保できる。
【0096】
しかも、板状のカウンタウェイト5−1,5−2を用いることで、設置スペース9の面積や形状に応じて、吊荷7の荷重と風による荷重に耐え得るように自由に配置でき、カウンタウェイト5−1,5−2の数を調整して、クレーンにより吊り上げる資材の荷重に容易に対応することができる。
【0097】
また、カウンタウェイト5−1,5−2を用いて、従来のように水をカウンタウェイトとして使用する事がないことから、水の準備や使用後の処理が不要である。
【0098】
尚、上述した実施の形態では、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材を吊り上げる事を一例に説明したが、これに限定されることはなく、どのような資材を吊り上げる場合にも、本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンを利用できるものである。
【0099】
また、資材や荷物を建物の屋上へ搬入する場合を一例に説明したが、これに限定されることはなく、例えば、古くなった移動体基地局を撤去する際(古くなった移動体基地局を新しい設備にする場合を含む)に、資材や荷物を建物の屋上から搬出する場合などにも同様に適用できる事は勿論である。
【0100】
以上、実施の形態を用いて本発明の説明を行ったが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0101】
また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るのである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンは、クレーンの構成部材を分解して、個々の構成部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上でクレーンを組み立てて、例えば、携帯電話の移動体基地局を設置するためのアンテナや無線設備などの資材を容易に搬入できるので、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0103】
1…反力受けベース
1−1…反力受け枠組み部材
1−2…反力受け枠組み部材
2…支柱
2−1…短支柱ユニット
2−2…短支柱ユニット
2−3…短支柱ユニット
2−4…短支柱ユニット
3…アーム
4…架台
4−1…架台ユニット
4−2…架台ユニット
4−3…架台ユニット
4−4…架台ユニット
4−5…架台ユニット
4−6…架台ユニット
4a…架台ユニット
5−1…カウンタウェイト
5−2…カウンタウェイト
6…ウインチ
7…吊荷
8…側壁
9…設置スペース
10−1…コンパネ
10−2…コンパネ
10−3…コンパネ
10−4…コンパネ
10−5…コンパネ
10−6…コンパネ
10−7…コンパネ
10−8…コンパネ
11−1…ウェイト架台
11−2…ウェイト架台
12…ウインチブラケット
13…アーム支線
14−1…アーム固定ブロック
14−2…アーム固定ブロック
14a…取付金具
15…滑車台
16…滑車(スナッチブロック)
17…ウインチブラケット連結材
18…支線
19−1…支線用ターンバックル
19−2…支線用ターンバックル
20…支線用ブラケット
21…フック
22…ボルト穴
23…キャスター
24…ゴム板
25…ワイヤーロープ
26…水平移動用ウインチ
27−1…滑車
27−2…滑車
27−3…滑車
28a…ワイヤ
28b…ワイヤ
29−1…アームストッパ
29−2…アームストッパ
30−1…アウトリガ
30−2…アウトリガ
31…障害物
32…障害物
33…手すり
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話の移動体基地局を、既存の建物(ビル)の屋上などのように狭隘且つ不定形状で、障害物の多いスペースに設置するための、組立式屋上用簡易クレーン、及びこの組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしする、吊荷の搬入または搬出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、移動体通信技術の進展によって、移動体通信用の無線基地局の整備が進んでいる。無線基地局には、設置する場所に応じて、通信用の鉄塔を新設してアンテナを設置するものから、既存の建物の屋上にアンテナを設置するようなタイプまで、様々な規模のものがある。
【0003】
既存の建物の屋上にアンテナを設置するタイプは、利用者の多い都市部において比較的低コストに移動体基地局を設置できる利点があり、デジタル携帯電話システム構築のための基地局設置工事が各地で進められている。しかし、重量物を高いビルなどの屋上に取り付けることから、アンテナや無線設備などの資材の搬入作業が難しいものとなり、設置場所の状況や周辺の環境に応じて、この様な資材の搬入について様々な方法や工法が用いられている。
【0004】
既存の建物の屋上にアンテナを設置するタイプにおける一般的な資材の搬入方法としては、地上に移動式クレーンを配置し、この移動式クレーンを用いて、建物の外部から屋上に資材を搬入する方法が採られている。この方法は、地上に移動式クレーンを駐車、或いは、設置するための空き地や道路などが必要になるため、建物の周囲に十分なスペースが確保できる場所に限られている。
【0005】
特に、アンテナや無線設備の設置に好適な高層ビルの屋上に移動体基地局を設置するためには、大型の移動式クレーンが必要となる。そして、移動式クレーンの横転などの事故を防ぐためには、移動式クレーンのアウトリガを外側に大きく張り出す必要があるため、より広いスペースが必要になる。
【0006】
そのため、都市部ではこのスペースの確保が困難であり、仮にスペースが確保できたとしても、土地借用、道路の使用や移動式クレーン設置の申請手続、道路への鉄板養生などの措置が必要になり、作業の煩雑化と工期の長期化を招く要因となっている。
【0007】
また、建物の外壁に仮設の足場を設置し、アンテナを構成する資材を分解して、作業員が手搬入する方法も広く行われている。しかし、仮設の足場が設置できない建物も存在し、また、屋上に仮設の足場から資材を引き込むための引き込み用ステージを設置するスペースがない場合にも、資材を搬入できない事態が生じていた。
【0008】
しかも、アンテナを構成する資材について、作業員が手搬入できる程度の重量やサイズに分割しなければならず、不安定な足場を使っての搬入は、作業員の安全面でも問題がある。更に、安全を確保するために、建物に足場を固定するためのアンカーを打つことがあるが、アンカーは建物に傷をつけることがあるため、十分な配慮が必要であり、補修工事が必要になることもある。
【0009】
その他の資材の搬入方法として、アンテナを構成する資材を、建物のエレベータを利用して作業員が手搬入することも行われているが、資材をエレベータで搬入できる程度の重量やサイズに分割できないことも多い。また、通常、エレベータは屋上まで行かないため、最上階から屋上へは非常階段などを利用することになる。このため、エレベータと非常階段を使う煩雑な作業となり、避難用に作られた非常階段では、作業員の安全も十分に確保できない。
【0010】
そこで、例えば、特許文献1に示すように、建物の屋上に「組立式簡易屋上親子クレーン」を設置し、資材の荷揚作業を行う方法が提案されている。この特許文献1においては、建物の屋上に子クレーンを設置し、この子クレーンを使って親クレーンを揚重、組立設置するもので、クレーンの組立、撤去が人力で行えるようになっている。
【0011】
この他、例えば、特許文献2に示すように、ビル、マンションなどの高層建築物に対して資材の荷揚げや荷下ろしを行う「ホイスト」が提案されている。この特許文献2においては、荷揚機を作動させてホイストケーブルを巻き上げることで荷物を吊り上げ、この荷揚機からホイストケーブルを繰り出して荷物を下ろすようになっている。
【0012】
上記した特許文献1,2に開示されている「組立式簡易屋上親子クレーン」や「ホイスト」は、屋上において移動用キャスターや車輪を介して自由に移動可能であり、且つ容易に重量物を屋上に搬入することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−133062号公報
【特許文献2】特開平11−60163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、建物の屋上は、空きスペースの面積や形状が様々であり、且つ貯水タンクなどの障害物が設置されていることも多い。このため、移動式台車の形状やサイズが定まっている上記特許文献1のクレーンでは、狭隘且つ不定形状で障害物の多い屋上には設置できない場合がある。
【0015】
しかも、重量物を吊り上げる際のカウンタウェイトとして水を利用しているため、例えば、移動体基地局を設置する際に要求される250Kg〜500Kg程度の吊り上げ荷重を得ようとすると大量の水が必要になり、この水の準備や使用後の処理が煩雑になるという課題もある。
【0016】
一方、上記特許文献2の技術では、ホイストに補助台板を連結可能にしたことで、設置スペースが小さい場合には荷物の重量を少なくすることで対応できる。しかしながら、建物の屋上などのように、狭隘且つ不定形状で障害物の多いスペースに設置するには必ずしも十分とはいえない。
【0017】
また、特許文献1と同様に、重量物を吊り上げる際のカウンタウェイトとして水を利用しているため、大きな吊り上げ荷重を得ようとすると大量の水が必要になり、水の準備や使用後の処理が煩雑になる。
【0018】
本発明は、上記のような事情に鑑みて創出されたもので、その目的とするところは、既存の建物の屋上などのように狭隘且つ不定形状で障害物の多いスペースに柔軟に対応してクレーンを設置でき、しかも、クレーンを構成する個々の部材を人力で搬入し、建物の屋上での組立、分解を容易に行うことができる組立式屋上用簡易クレーン、及びこのクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てる組立式屋上用簡易クレーンであって、複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱と、この支柱を立設した状態で支える架台と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアームと、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチと、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置することで、上述した課題を解決した。
【0020】
また、前記架台は、前記支柱が立設された反力受けベースと、この反力受けベースに接続され、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて複数の直方体状の枠組み部材が選択的に組み付けられる下段部と、この下段部に積み重ねて組み付けられる直方体状の枠組み部材で形成される上段部を備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
更に、本発明に係るクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法は、前記組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしすることで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
加えて、前記クレーンに設置した風速・風向計の測定値と吊荷荷重、風圧荷重、作業半径のパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定することで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンによれば、架台を屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置するので、設置場所の状況や周辺の環境に応じた様々な設置スペースに対応でき、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上などにも容易にクレーンを設置できる。
【0024】
また、クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てるので、地上に配置する移動式クレーンを使う場合のように建物の周囲にスペースの確保は不要であり、仮設の足場を設置する必要もない。しかも、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材をクレーンのウインチを使って搬入するので、作業員の手搬入に比べて、重量物や大きなサイズの部材を安全且つ短時間に搬入できる。これによって、建物の屋上に移動体基地局を設置する作業の簡単化と工期の短縮が図れる。
【0025】
更に、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて架台を構成するので、架台全体と、個々の枠組み部材の軽量化が可能である。そのため、作業員が人力で搬入できる程度の軽量な部材を用いて、架台の十分な強度が得られる。
【0026】
また、第1、第2のカウンタウェイトを架台と反力受けベースに配置することで、設置スペースの面積や形状に応じて、吊荷の荷重と風による荷重に十分に耐え得るようにすることができる。この様に、第1、第2のカウンタウェイトを用いて、従来のように水をカウンタウェイトとして使用する事がないことから、水の準備や使用後の処理も不要である。
【0027】
加えて、複数のカウンタウェイトは、吊荷の荷重と風による荷重に耐え得るように選択的に配置され、前記架台の下段部における前記吊荷の吊り上げ時の前記アームの方向と逆方向の端部側に配置される第1のカウンタウェイトを備えていることから、クレーンを用いた屋上への資材の搬入時の荷重のバランスを取ることができる。
【0028】
また、複数のカウンタウェイトは、反力受けベースにおける前記吊荷の屋上への荷下ろし時の前記アームの方向と逆方向の端部側に配置される第2のカウンタウェイトを備えていることから、クレーンを用いた屋上への資材の荷下ろし時の荷重のバランスを取ることができる。
【0029】
この他、本発明に係る吊荷の搬入または搬出方法によれば、上記構成の組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしするので、人力では不可能な重量物であっても、容易に搬入、搬出が可能となる。
【0030】
また、吊荷の搬入または搬出作業時に風速・風向計の測定値、吊荷荷重、風圧荷重及び作業半径のパラメータに基づいて所定のアルゴリズムで荷重モーメントを計算し、必要に応じてカウンタウェイトの数を増やしたり、吊荷の荷重に制限を付したりすることで、風が強い日であっても作業の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第1の設置例を示す側面図である。
【図2】図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの平面図である。
【図3】図1及び図2に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図4】図1及び図2に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図5】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第1の組立工程を示す斜視図である。
【図6】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の組立工程を示す斜視図である。
【図7】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の組立工程を示す斜視図である。
【図8】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の組立工程を示す斜視図である。
【図9】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第5の組立工程を示す斜視図である。
【図10】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第6の組立工程を示す斜視図である。
【図11】図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、第7の組立工程を示す斜視図である。
【図12】組立式屋上用簡易クレーンにおける、組み立てが完了した状態を示す斜視図である。
【図13】架台ユニットの具体的な構成例を説明するもので、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
【図14】反力受け枠組み部材と最下部の短支柱ユニットとの接合部の構成例を示すもので、(a)図は正面図、(b)図は(a)図のB矢示図、(c)図は(a)図のA矢示図である。
【図15】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する平面図である。
【図16】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する側面図である。
【図17】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおいて、屋上への吊荷の搬入工程を説明する背面図である。
【図18】アーム固定ユニットの構成例を示すもので、(a)図は図16のD矢示図、(b)図は図16のE矢示図、(c)図は図16のF部の拡大図である。
【図19】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例の変形例について説明するもので、(a)図及び(b)図はそれぞれアウトリガを示す正面図、(c)図は(a)図及び(b)図に示したアウトリガの架台への装着例を示す平面図である。
【図20】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す平面図である。
【図21】図20に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図22】図20に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図23】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す斜視図である。
【図24】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す平面図である。
【図25】図24に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図26】図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図27】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す斜視図である。
【図28】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す平面図である。
【図29】図28に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図である。
【図30】図28に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける、反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。
【図31】本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
[第1の設置例]
図1は、本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例を示す側面図、図2はその平面図である。また、図3は図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図4は図1に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。この第1の設置例は、クレーンを設置する屋上の端(側壁)から背後に十分な設置スペースを確保できる場合に好適なもので、最も安定且つ大きな引揚荷重が得られるものである。
【0034】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンは、分解して建物の屋上に人力で搬入し、屋上でボルトとナットなどの締結金具を用いて組み立て、使用後に再び分解して撤去できるように構成している。分解した各々のパーツ(個々の部材)は、人力で搬入可能な重量(例えば、30Kg以下)及びサイズであり、例えば、エレベータと非常階段などを利用して人力で持ち運び、屋上に搬入して組み立てて設置する。作業後には、搬入と逆の手順で分解して撤去する。この組み立て及び撤去作業は、別の組立装置を使わずに人力で行うことができる。
【0035】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンは、図1乃至図4に示すように、支柱2の部分と、この支柱2を立設した状態で支える架台4の部分により構成されている。
【0036】
より具体的には、図1・図2に示すように、複数の短支柱ユニット2−1,2−2,2−3…を連結して構成した支柱2と、この支柱2を立設した状態で支える架台4と、上記支柱2の上部に装着され、水平方向に回動するアーム3と、このアーム3を介して吊荷7を吊り上げ、荷下ろしするウインチ6と、吊荷7の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と架台4とのバランスを取る第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2を備えている。
【0037】
上記支柱2は、図3に示すように、反力受けベース1における長方形状の第1の反力受け枠組み部材1−1に立設されている。この第1の反力受け枠組み部材1−1に隣接して、長方形状の第2の反力受け枠組み部材1−2が設けられている。この第2の反力受け枠組み部材1−2は、架台4と支柱2を接続するための架台接続材として働くもので、架台4で支柱2を立設した状態に支え、支柱2に掛かる吊荷7の荷重と風による荷重に耐え得るようになっている。
【0038】
上記架台4は、図4に示すように、屋上の設置スペース9の面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材(架台ユニット4−1〜4−6)を選択的に組み付けて配置し、ボルトとナットなどの締結金具で固定したものである。本例では、架台4の支柱2側を2段構成にしている。
【0039】
この様に、直方体状の枠組み部材で形成された複数の架台ユニット4−1〜4−6を、設置スペースの面積と形状に応じて反力受けベースに選択的に接続して架台4を構成するので、架台4を自由な形状及び占有スペースで設置でき、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上においても、容易にクレーンを設置できる。また、複数の架台ユニット4−1〜4−6は、上記設置スペースの面積と形状に応じて、水平方向に自由に組み付けて配置できると共に、垂直方向にも自由に組み付けて配置できる。
【0040】
そして、図2・図4に示すように、上記架台4の下段部における吊荷7の吊り上げ時のアーム3の方向と逆方向の端部側には、ウェイト架台11−1が設置されており、このウェイト架台11−1に板状の第1のカウンタウェイト5−1が積み重ねて配置される。
【0041】
また、反力受け枠組み部材1−2における吊荷7の屋上への荷下ろし時の上記アーム3の方向と逆方向の端部側には、ウェイト架台11−2が設けられ、このウェイト架台11−2に板状の第2のカウンタウェイト5−2が積み重ねて配置される。
【0042】
上記カウンタウェイト5−1,5−2によって、図2に示すように、吊荷7の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷7と上記架台4とのバランスを取っている。そして、上記ウェイト5−2に隣接して設置したウインチブラケット12内に設置したウインチ6により、アーム3を介して吊荷7を吊り上げ、このアーム3を水平方向に回動させて屋上に荷下ろしするようになっている。
【0043】
上記短支柱ユニット2−1,2−2,2−3…、及び架台ユニット4−1,4−2,4−3…などのパーツ(個々の部材)は、図3(図8乃至図11の支柱ユニット参照)・図6に示すように、直方体状の枠体で形成されており、屋上の空きスペース(設置スペース)の面積や形状、障害物の有無やその位置などを考慮して組み上げることで、支柱2とこの支柱2を立設した状態で支える架台4を構成する。しかも、上記支柱2、架台4及びアーム3などは、組み上げたときにトラス構造になり、軽量で且つ十分な強度を確保できるようになっている。
【0044】
尚、図1乃至図4において、13はアーム3を支えるアーム支線、14−1はアームの一端を軸支するアーム固定ブロック、14−2はアーム支線の一端を固定するアーム固定ブロック、15は滑車台、16は滑車(スナッチブロック)、17はウインチブラケット連結材、18は支線、19−1,19−2は支線用ターンバックル、20は支線用ブラケット、21はフック、25はウインチ用のワイヤーロープである。
【0045】
また、図1・図16において、33は手すりである。この手すり33は、所定の間隔を開けて配置された2本の縦杆の上方部を、横杆により連結して構成されるもので、必要に応じてクランプ等を介して架台4に固定されるものである。尚、以降の説明では、図1・図16以外の図面を簡単化するために、この手すり33は省略する。
【0046】
図5乃至図11は、それぞれ、上記図1乃至図4に示した組立式屋上用簡易クレーンにおける第1乃至第7の組立工程を示す斜視図であり、図12は組立が完了した状態を示す斜視図である。また、図13は架台ユニットの具体的な構成例を示しており、図14は反力受け枠組み部材と最下部の短支柱ユニットとの接合部の構成例を示している。
【0047】
本実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンを組み立てる際には、図5に示すように、屋上に傷がつくのを防ぐために、まず、二点鎖線で囲んだクレーンの設置スペース9に、コンパネ(コンクリートパネル)を敷き詰める。本例では1.8m×0.9mの8枚のコンパネ10−1〜10−8を、4行2列に配置している。
【0048】
そして、このコンパネ10−1〜10−8上の側壁8側に、反力受けベース1を設置する。この反力受けベース1は、反力受け枠組み部材1−1と、この反力受け枠組み部材1−1に結合され、架台4を接続する架台接続材として働く第2の反力受け枠組み部材1−2を備えている。
【0049】
次に、図6に示すように、反力受け枠組み部材1−2の端部上に架台ユニット4aを接続し、反力受け枠組み部材1−2の端部に架台ユニット4−1〜4−4を順次接続すると図7に示すような構成となる。各々の架台ユニット4−1〜4−4は、例えば、図6・図13(a)(b)に示すように、L字アングルなどで構成された、例えば、幅W=1000mm、高さH=1200mm、奥行D=600mmの直方体状の枠組み部材で構成されている。
【0050】
図13(a)(b)に示すように、上記枠組み部材の側面にはボルト穴22が形成されており、ボルトとナットなどの締結金具を用いて固定することで、隣接するユニット間を接続する。また、底面にはキャスター23が装着されており、このキャスター23を介して架台ユニット4−1〜4−4を作業員の僅かな労力で移動させて、エレベータなどへの搬入が容易に行えるようになっている。
【0051】
引き続き、図8に示すように、最下部の短支柱ユニット2−1を反力受け枠組み部材1−1上に立設する。図14(a)〜(c)は、それぞれ反力受け枠組み部材1−1と最下部の短支柱ユニット2−1との接合部の構成例を詳しく示している。
【0052】
反力受け枠組み部材1−1の底面には、図14(a)に示すように、ゴム板24が接着されており、中央付近にボルトとナットなどの締結金具を用いて短支柱ユニット2−1を固定する。この接合部には滑車台15が設置され、滑車台15にウインチ6からのワイヤーロープ25をアーム3の基部(一端側)に導く滑車16が装着されている。
【0053】
また、図8に示すように、架台ユニット4−4にウェイト架台11−1を設置し、このウェイト架台11−1に板状(本例では円板状)の第1のカウンタウェイト5−1を積み重ねて配置する。更に、この架台ユニット4−4のウェイト架台11−1側にウインチブラケット12を設け、ウインチ6の駆動部を装着する。
【0054】
そして、上記架台ユニット4aにウェイト架台11−2を設置し、このウェイト架台11−2に板状(本例では円板状)の第2のカウンタウェイト5−2を積み重ねて配置すると、全体として図9に示すような構造になる。
【0055】
次に、図10に示すように、架台ユニット4−1上及び架台ユニット4a上に、それぞれ架台ユニット4−5,4−6を積み重ねてボルトとナットなどの締結金具を用いて固定して組み上げる。また、短支柱ユニット2−1上に短支柱ユニット2−2を連結してボルトとナットなどの締結金具を用いて固定すると、全体として図11に示すような構造になる。
【0056】
最後に、短支柱ユニット2−2上に、短支柱ユニット2−3、アーム固定ブロック14−1、短支柱ユニット2−4、及びアーム固定ブロック14−2を順次結合して支柱2を組み立て、この支柱2にアーム3の一端を取り付ける(図3参照)。
【0057】
そして、アーム支線13、支線18、ウインチ6用のワイヤーロープ25などを装着し、図12に示すように、組立式屋上用簡易クレーンの全体を組み立てる。
【0058】
図15乃至図17は、それぞれ上述した組立式屋上用簡易クレーンにおいて、吊荷の搬入工程を説明するための平面図、側面図及び背面図である。また、図18は、これら図15乃至図17に示した組立式屋上用簡易クレーンにおけるアーム固定ユニットの構成例を示している。
【0059】
図15に示すように、吊り上げた吊荷7を屋上に荷下ろしする際に、吊荷7が重量物であってもアーム3を容易に水平方向に回動させることができるように、水平移動用ウインチ26を設けている。この水平移動用ウインチ26は手動ウインチであり、作業員によるワイヤ28aの巻き上げまたは巻き戻し操作と、作業員によるワイヤ28bの引っ張りまたは戻しで、アーム3の先端付近(他端側)を滑車27−3,27−2,27−1(図18(a)参照)を介して引き寄せ、或いは、引き離すことにより、アーム3を水平方向に回動させる。
【0060】
吊り上げた吊荷7を屋上に荷下ろしする際には、水平移動用ウインチ26側のワイヤ28aを弛ませておき、作業員がワイヤ28bを引っ張ってアーム3を屋上側に引き寄せ、この状態でウインチ6を使って吊荷7を屋上に荷下ろしする。一方、再び吊荷7を吊り上げるときには、アーム3の向きを側壁8の外側に張り出すためにワイヤ28bを弛ませておき、水平移動用ウインチ26でワイヤ28aを引き寄せてアーム3を側壁8の外側に張り出し、この状態でウインチ6を使って吊荷7を屋上に吊り上げる。吊荷7の上げ下ろしの際には、ワイヤ28a,28bは作業の邪魔にならないようにしておく。
【0061】
また、風が強い日であっても、吊荷7を安全に上げ下ろしできるようにするために、アーム固定ブロック14−2の頂部に、風速・風向計(図省略)を設置し、風速・風向計の測定値から吊荷荷重、風圧荷重、作業半径などのパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定する。
【0062】
ここで、吊荷荷重とは、吊荷7の荷重(質量)であり、クレーンにかかる荷重である。また、風圧荷重とは、クレーンに働く荷重と吊荷7に働く荷重の和からなり、クレーンに働く荷重はクレーンの形状と構造(受風面積)で決まり、吊荷7に働く荷重は吊荷7の形並びに大きさ(受風面積)で決まる。更に、作業半径とは、通常はアーム3の起伏角度によって上記荷重が変化するもので、本例では固定であるので関係しないが、アーム3の回転時に吊荷7と風圧荷重の荷重点が移動するので考慮する必要がある。
【0063】
そして、上記演算結果に基づき、設計時と作業時の第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2の各重量による安全性を判定する。安全性が十分でないと判定されたときには吊荷7の荷重を制限する(吊荷7を軽くするか、または分割する)。或いは、第1、第2のカウンタウェイト5−1,5−2の重量を、適宜増加させたり配置を変えたりして、安全性を確保する。
【0064】
実際の作業では、屋上にいる作業員が風速・風向計の測定値を入手・認識できるようにしておき、その測定値及び吊荷荷重、風圧荷重、作業半径などのパラメータを用いて荷重モーメントを計算し、吊荷7の荷重を低減する事を地上にいる作業員に指示したり、また、屋上にいる作業員がその場でカウンタウェイト5−1及び/または5−2の重量を増大させて調整することで、風が強い日であっても吊荷7を安全に上げ下ろしできる。特に、これは、強風、突風等の異常時荷重がクレーンに働いた時に、作業安全を確保する上で重要なことである。
【0065】
ここで、アーム3の先端部はアーム支線13により支えられており、アーム3の基部は、図18(b)に示すように、アーム固定ブロック14−1の取付金具14aに軸支されて水平方向に回動可能となっている。そして、アーム3の回転範囲は、アームストッパ29−1,29−2により制限される。
【0066】
本件特許出願の発明者等は、上述した構成の組立式屋上用簡易クレーンを試作し、種々の検証を行った。試作機の大きさは、幅W=2730mm、高さH=3970mm、奥行D=3550mmで、アーム長は2000mm、架台総重量1150Kgである。ウインチ6にはマックスブル工業(株)製のBMW−107−SCを用いた。ウインチ6の電源は、単相100Vで11.4A(50Hz)である。
【0067】
クレーンの組立、撤去は、5名から6名の作業員で可能であり、組立時間は約2時間、撤去時間は約1時間であった。パーツ(個々の部材)数は74、総パーツ(個々の部材の全体)重量は91Kgである。
【0068】
その結果、最大引揚荷重が480Kg程度、最大引揚容量は幅W=2m、高さH=2m、奥行D=2m程度であった。この時の引揚高は30m(巻上時間6分)であった。
【0069】
更に、上記クレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2が、それぞれ180Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0070】
図19は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける第1の設置例の変形例について説明するためのもので、(a)図及び(b)図はそれぞれアウトリガを示す正面図、(c)図は(a)図及び(b)図に示したアウトリガの架台への装着例を示す平面図である。
【0071】
設置スペース9の横方向に余裕がある場合には、図19(a)(b)に示すような、略三角枠状のアウトリガ30−1,30−2を利用する。例えば、図19(c)に示すように、アウトリガ30−1,30−2を架台4の外側に設ければ、より大きな吊り上げ荷重に耐えられ、且つ安全性も向上できる。
【0072】
図20は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す平面図である。図21は図20に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図22は図20に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図23は本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第2の設置例を示す斜視図である。
【0073】
この第2の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図20乃至23において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0074】
図20に示すように、第2の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31が存在し、側壁8から背後に十分な設置スペース9を確保しにくく、横方向に確保できる場合に好適なものである。すなわち、第1の設置例における架台ユニット4−3,4−4を側壁8の背後方向ではなく、横方向に設置している。本例では、1.8m×0.9mの6枚のコンパネを3行2列に配置したスペースにクレーンを設置できる。
【0075】
第2の設置例は、第1の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合320Kg程度)が少し下がるものの、設置スペース9が狭く背後に十分なスペースがない場合にもクレーンを設置できる。
【0076】
上記第2の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ360Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0077】
図24は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す平面図である。図25は図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図26は図24に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図27は本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第3の設置例を示す斜視図である。
【0078】
第3の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図24乃至27において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0079】
図24に示すように、第3の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31,32が存在し、側壁8から背後に設置スペース9を確保しにくく、横方向にも制限がある場合に用いるものである。
【0080】
すなわち、第1の設置例における架台ユニット4−1にウェイト架台11−1を設置して板状の第1のカウンタウェイト5−1を積み重ねて配置すると共に、反力受け枠組み部材1−2における吊荷7の屋上への荷下ろし時の上記アーム3の方向と逆方向の端部側にウェイト架台11−2を設け、このウェイト架台11−2に板状の第2のカウンタウェイト5−2が積み重ねて配置している。
【0081】
そして、上記架台ユニット4−1と反力受け枠組み部材1−2上に架台ユニット4−2,4−3を積み上げて組み付けている。これによって、本例では1.8m×0.9mの4枚のコンパネを2行2列に配置した狭いスペースにクレーンを設置できる。
【0082】
第3の設置例は、第1、第2の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合150Kg程度)が更に下がるが、従来はクレーンが設置できなかった狭いスペースにもクレーンを設置できる。
【0083】
この第3の設置例の場合、カウンタウェイト5−1,5−2を十分に重くし、且つ吊り上げる重量物を分解して軽くするなどして、安全性を確保するものである。
【0084】
上記第3の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ620Kgの場合、500Kgの吊荷でも安全性を確保できることを確認できた。
【0085】
図28は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す平面図である。図29は図28に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベースと支柱を抽出して示す斜視図、図30は図28に示した組立式屋上用簡易クレーンの反力受けベース、架台、カウンタウェイト及びウインチを抽出して示す斜視図である。また、図31は、本発明の実施の形態に係る組立式屋上用簡易クレーンにおける、第4の設置例を示す斜視図である。
【0086】
第4の設置例の基本的な構成は第1の設置例と同様であるので、図28乃至31において、図1乃至図4と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0087】
図28に示すように、本第4の設置例は、クレーンを設置する屋上に障害物31が存在し、側壁8から背後には設置スペース9を確保できるものの、横方向に障害物31が存在する場合に好適なものである。すなわち、架台ユニット4−3の背後方向にウェイト架台11−4とウインチブラケット12を設置している。本例では1.8m×0.9mの6枚のコンパネを逆L字型に配置したスペースにクレーンを設置できる。
【0088】
第4の設置例は、第1の設置例に比べて最大引揚荷重(上述した試作機の場合490Kg程度)が少し下がるものの、横方向に障害物31が存在する場合にもクレーンを設置できる。
【0089】
上記第4の設置例のクレーンの転倒検証を、吊荷の重量と風荷重を考慮してシミュレーションしたところ、カウンタウェイト5−1,5−2がそれぞれ200Kgの場合、500Kgの吊荷でも十分に安全性を確保できることを確認できた。
【0090】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンは、上記第1の設置例乃至第4の設置例で説明したように、架台4を屋上の設置スペース9の面積と形状に応じて、複数の架台ユニット(直方体状の枠組み部材)4−1,4−2,4−3…を選択的に組み付けて配置できるので、狭隘且つ不定形で障害物の多い既存の建物の屋上などにもフレキシブルに対応でき、容易にクレーンを設置できる。
【0091】
また、クレーンの構成部材を分解して、個々のパーツ(部材)を、個別に建物の屋上に作業員による人力で搬入し、屋上で組み立てるので、移動式クレーンを使う場合のように設置場所や駐車スペースの確保は不要であり、仮設の足場を設置する必要もない。勿論、鉄板養生やクレーン設置のための申請も不要であり、足場の設置及びステージ設置も不要である。
【0092】
更に、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材をクレーンのウインチを使って搬入するので、作業員による手搬入に比べて、重量物や大きなサイズの資材を安全且つ短時間に効率的に搬入できる。また、作業員に無理を強いる搬入がなくなるので、より安全に作業を進めることができる。
【0093】
また、一度に搬入できる重量(最大で500Kg近く)が増えるので、吊り上げの工程数も少なくでき、建物の屋上に移動体基地局を設置する作業の簡単化と工期の短縮が図れる。
【0094】
加えて、複数の架台ユニット(直方体状の枠組み部材)を選択的に組み付けて架台4を構成することにより、作業員が人力で搬入できる軽量の部材を用いても、クレーンの十分な強度が得られる。
【0095】
また、上記支柱2及び架台4は、組み上げたときにトラス構造になり、アーム3も同様にトラス構造を採用しているので、軽量で且つ十分な強度を確保できる。
【0096】
しかも、板状のカウンタウェイト5−1,5−2を用いることで、設置スペース9の面積や形状に応じて、吊荷7の荷重と風による荷重に耐え得るように自由に配置でき、カウンタウェイト5−1,5−2の数を調整して、クレーンにより吊り上げる資材の荷重に容易に対応することができる。
【0097】
また、カウンタウェイト5−1,5−2を用いて、従来のように水をカウンタウェイトとして使用する事がないことから、水の準備や使用後の処理が不要である。
【0098】
尚、上述した実施の形態では、例えば、携帯電話の移動体基地局を構成するアンテナ等の資材を吊り上げる事を一例に説明したが、これに限定されることはなく、どのような資材を吊り上げる場合にも、本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンを利用できるものである。
【0099】
また、資材や荷物を建物の屋上へ搬入する場合を一例に説明したが、これに限定されることはなく、例えば、古くなった移動体基地局を撤去する際(古くなった移動体基地局を新しい設備にする場合を含む)に、資材や荷物を建物の屋上から搬出する場合などにも同様に適用できる事は勿論である。
【0100】
以上、実施の形態を用いて本発明の説明を行ったが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0101】
また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るのである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る組立式屋上用簡易クレーンは、クレーンの構成部材を分解して、個々の構成部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上でクレーンを組み立てて、例えば、携帯電話の移動体基地局を設置するためのアンテナや無線設備などの資材を容易に搬入できるので、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0103】
1…反力受けベース
1−1…反力受け枠組み部材
1−2…反力受け枠組み部材
2…支柱
2−1…短支柱ユニット
2−2…短支柱ユニット
2−3…短支柱ユニット
2−4…短支柱ユニット
3…アーム
4…架台
4−1…架台ユニット
4−2…架台ユニット
4−3…架台ユニット
4−4…架台ユニット
4−5…架台ユニット
4−6…架台ユニット
4a…架台ユニット
5−1…カウンタウェイト
5−2…カウンタウェイト
6…ウインチ
7…吊荷
8…側壁
9…設置スペース
10−1…コンパネ
10−2…コンパネ
10−3…コンパネ
10−4…コンパネ
10−5…コンパネ
10−6…コンパネ
10−7…コンパネ
10−8…コンパネ
11−1…ウェイト架台
11−2…ウェイト架台
12…ウインチブラケット
13…アーム支線
14−1…アーム固定ブロック
14−2…アーム固定ブロック
14a…取付金具
15…滑車台
16…滑車(スナッチブロック)
17…ウインチブラケット連結材
18…支線
19−1…支線用ターンバックル
19−2…支線用ターンバックル
20…支線用ブラケット
21…フック
22…ボルト穴
23…キャスター
24…ゴム板
25…ワイヤーロープ
26…水平移動用ウインチ
27−1…滑車
27−2…滑車
27−3…滑車
28a…ワイヤ
28b…ワイヤ
29−1…アームストッパ
29−2…アームストッパ
30−1…アウトリガ
30−2…アウトリガ
31…障害物
32…障害物
33…手すり
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てる組立式屋上用簡易クレーンであって、
複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱と、この支柱を立設した状態で支える架台と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアームと、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチと、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、
前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置することを特徴とする組立式屋上用簡易クレーン。
【請求項2】
前記架台は、前記支柱が立設された反力受けベースと、この反力受けベースに接続され、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて複数の直方体状の枠組み部材が選択的に組み付けられる下段部と、この下段部に積み重ねて組み付けられる直方体状の枠組み部材で形成される上段部を備える請求項1に記載の組立式屋上用簡易クレーン。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしすることを特徴とするクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法。
【請求項4】
前記クレーンに設置した風速・風向計の測定値と吊荷荷重、風圧荷重、作業半径のパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定する請求項3に記載のクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法。
【請求項1】
クレーンの構成部材を分解して個々の部材を建物の屋上に人力で搬入し、屋上で組み立てる組立式屋上用簡易クレーンであって、
複数の短支柱ユニットを連結して構成した支柱と、この支柱を立設した状態で支える架台と、前記支柱の上部に装着され、水平方向に回動するアームと、このアームを介して吊荷を吊り上げ、荷下ろしするウインチと、吊荷の吊り上げ及び荷下ろし時に、吊荷と前記架台とのバランスを取る複数のカウンタウェイトを備え、
前記架台は、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて、複数の直方体状の枠組み部材を選択的に組み付けて配置することを特徴とする組立式屋上用簡易クレーン。
【請求項2】
前記架台は、前記支柱が立設された反力受けベースと、この反力受けベースに接続され、前記屋上の設置スペースの面積と形状に応じて複数の直方体状の枠組み部材が選択的に組み付けられる下段部と、この下段部に積み重ねて組み付けられる直方体状の枠組み部材で形成される上段部を備える請求項1に記載の組立式屋上用簡易クレーン。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の組立式屋上用簡易クレーンを用いて建物の屋上に吊荷を搬入、或いは、建物の屋上から荷下ろしすることを特徴とするクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法。
【請求項4】
前記クレーンに設置した風速・風向計の測定値と吊荷荷重、風圧荷重、作業半径のパラメータを用いて、所定のアルゴリズムで演算して安全作業か否かを判定する請求項3に記載のクレーンを用いた吊荷の搬入または搬出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−103819(P2013−103819A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249657(P2011−249657)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(000151184)株式会社土井製作所 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(000151184)株式会社土井製作所 (21)
【Fターム(参考)】
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