説明

組織特異的および標的RNA特異的リボザイム

【課題】組織特異的および標的RNA特異的リボザイムを提供すること。
【解決手段】5’自己触媒的切断リボザイム配列と、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒的切断リボザイム配列とをコードする配列の上流に、標的特異的プロモーター結合部位を含む、核酸。これらの核酸は、選択された部位で本発明のリボザイムを発現させるために使用され得る。リボザイムを投与することによる疾患の処置方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌、ならびに細菌、寄生虫、およびウイルス感染の処置のための、組織特異的および標的RNA特異的リボザイムの使用に関する。より詳細には、本発明は、プロバシン(probasin)プロモーターの制御下での、RNAポリメラーゼ1(A)に標的化されたリボザイムに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
リボザイムは、配列特異的様式でRNAを切断する触媒RNA分子である。哺乳動物細胞における潜在的な遺伝子調節因子として、および抗ウイルス剤としてのリボザイムの使用が示唆されているが、技術的可能性に関して深刻な問題が生じやすい。例えば、リボザイムがどのように標的細胞に導入され得るのか、またはこれらがどのようにその標的RNAとして同一の亜細胞区画に指向され得るのかは、未知である。他の問題は、リボザイム活性に対する標的RNA2次構造の効果に関する。当該分野では、これらの疑問のいずれにも答えることには成功していない。
【0003】
さらに、リボザイムはアンチセンス技術の1つの形態であるので、疾患処置へのアンチセンス技術の適用において遭遇する問題もまた、リボザイム技術の使用において遭遇する。例えば、トランスジェニックマウスにおけるアンチセンスRNAの発現は、標的RNA分子の減少を必ずしも導かず、そして標的RNA分子の減少が生じる場合、これにはタンパク質における減少が予想可能に平行しない。タンパク質レベルが減少する場合でさえ、生物学的効果が検出されないこともあった(非特許文献1)。
【0004】
当該分野での経験から、遊離している場合、または関連のない大きなRNA分子に包埋されている場合で、どちらのリボザイムが最もよく作用するかはまた、明らかでないことが示唆されている(非特許文献1)。現在では、遊離のリボザイムのトランス活性とその包埋された等価物との体系的な比較を可能にするような十分なデータは、インビボでも細胞培養物でも得られていない。
【0005】
癌の処置におけるリボザイム技術の潜在的な使用に焦点をあてた研究がいくつかある。これらの研究において、リボザイムは、細胞培養物において、c-fosおよびc-ras癌遺伝子の両方に対して指向されており、そしてマウスに移植された場合に細胞の悪性能力をいくらか抑制することが示されている。にもかかわらず、これらのリボザイムは、癌遺伝子を特異的に標的化する。
【0006】
文献において、組織特異的癌または他の組織特異的疾患が、組織特異的プロモーターを有するリボザイムをその組織へ送達することによって処置され得、そしてそれが細胞の生存に必須であるRNAに標的化されるという示唆はない。本発明は、組織特異的癌および他の組織特異的疾患を処置し得るこのようなリボザイムを提供する。
【0007】
前立腺癌の問題の等級は、導入をほとんど必要としない。約44,000人の男性が毎年前立腺癌で死亡し、そして約10,000,000人の男性が、前立腺の前癌状態を有する。治療への新しいアプローチが必要であることは、明らかである。治療アプローチを試験するための動物モデルは、利用可能になったばかりであり、そして批准のために何年も必要である。しかし、本発明は、この問題に取り組むための、重要な試薬を提供する。
【0008】
前立腺癌を処置するために遺伝子治療を使用することにおける1つの困難は、標的特異的送達の長期的な問題である。しかし、最近開発されたプロバシンプロモーターは、本発明のリボザイムコードベクターの系統的送達を可能にする標的標的-特異性を提供する(非特許文献2)。本発明のベクターは、3つのハンマーヘッドリボザイムのタンデム配列からなり、この5’および3’は、最初の転写物からそれら自身を自己触媒的に切断するように設計されている。この新規な構築物は、大きな残りの隣接配列(これは、さもなければ触媒活性および特異性を妥協するために存在し得る)に固有の問題を排除する。本発明の構築物は、前立腺特異的プロバシンプロモーターを、前立腺の細胞増殖に重要なmRNAに標的化される3重リボザイムに結合させる。
【0009】
組織特異的プロモーターまたは他のプロモーターの制御下でのリボザイムの内因性送達は、「漏出(leakiness)」(ここで、低レベルの転写が、無関係の組織で起こる)により複雑になり得る。このことは、選択された細胞標的に依存する考慮すべき治療問題を示し得る。本発明のリボザイムは、高レベルの産物(すなわち、RNAポリメラーゼIは、大量の細胞リボソームRNAを産生する)に付随する細胞標的を標的化することによって、この問題を補う。従って、プロモーター漏出が意図されない組織において生じる場合では、細胞死は起こらないようである。従って、この選択は、安全のために必要なレベルを提供し、そしてpolIの標的化は他のプロモーターを使用する多くの選択された組織に適用できる。
【非特許文献1】Whitton, J. Lindsay 「Antisense Treatment of Viral Infection」Adv. in Virus Res.、1994年 44巻
【非特許文献2】Greenburgら、Mol. Endocrinol., 1994年 8:230-239
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
遺伝子治療における共通の問題は、正確な組織へリボザイムを送達する困難さである。本発明では、リボザイム構築物が効率的に送達され得る細胞中の非細胞性RNAへリボザイムを標的化することによって、この困難さが避けられる。IVリポソーム送達は、HBV肝炎の処置に有効である。IVおよび/または体外処置は、マラリア感染の処置のために、赤血球へ構築物を有効に送達する。そして、局所的(ivによる、またはivによらない)投与によって、異形成性/前癌性/癌性HPV 16頸部病変における頸部上皮へリボザイム構築物が有効に送達される。後者の例は、異常なPapスメアによって診断されたインサイチュ病変における異形成/癌性の処置に極めて重要である。非細胞性標的リボザイムの第2の有利な一面は、プロモーター漏出および/または外来送達および/またはリボザイムの発現が、意図されない細胞で起こった場合でさえも、リボザイムはいかなる細胞性RNAも切断するはずがないことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 5’自己触媒的切断リボザイム配列と、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒的切断リボザイム配列とをコードする配列の上流に、標的特異的プロモーター結合部位を含む、核酸。
(項目2) 前記標的特異的プロモーター結合部位が、プロバシンプロモーターの結合部位である、項目1に記載の核酸。
(項目3) 前記5’自己触媒的切断リボザイムをコードする核酸が、配列番号1として配列表に示されるヌクレオチド9〜62の配列を有する。項目1に記載の核酸。
(項目4) 前記3’自己触媒的切断リボザイムをコードする核酸が、配列番号1として配列表に示されるヌクレオチド119〜172の配列を有する。項目1に記載の核酸。
(項目5) 前記核酸が、リボソームRNA(ポリメラーゼI(A))に独特のRNA配列に結合する標的RNA結合部位を含む触媒リボザイムをコードする、項目1に記載の核酸。
(項目6) 前記核酸が、配列番号1として配列表に示されるヌクレオチド72〜113の配列を有する、項目5に記載の核酸。
(項目7) 配列番号1として配列表に示される配列のヌクレオチドから本質的になる、項目1に記載の核酸。
(項目8) 配列番号1として配列表に示される配列を有する、項目1に記載の核酸。
(項目9) ベクター中の、項目1に記載の核酸。
(項目10) ベクター中の、項目2に記載の核酸。
(項目11) ベクター中の、項目3に記載の核酸。
(項目12) ベクター中の、項目4に記載の核酸。
(項目13) ベクター中の、項目5に記載の核酸。
(項目14) ベクター中の、項目6に記載の核酸。
(項目15) ベクター中の、項目7に記載の核酸。
(項目16) ベクター中の、項目8に記載の核酸。
(項目17) 生殖細胞または体細胞中に、項目1に記載の核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、ここで、該動物は、5’自己触媒的切断リボザイム配列、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイム、および3’自己触媒的切断リボザイム配列を含むリボザイムを発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
(項目18) 生殖細胞または体細胞中に、項目7に記載の核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、ここで、該動物は、5’自己触媒的切断リボザイム配列、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイム、および3’自己触媒的切断リボザイム配列を含むリボザイムを発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
(項目19) 生殖細胞または体細胞中に、項目8に記載の核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、ここで、該動物は、5’自己触媒的切断リボザイム配列、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイム、および3’自己触媒的切断リボザイム配列を含むリボザイムを発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
(項目20) 前記動物が、標的RNAに関連する表現型を発現しない、項目17に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(項目21) 項目20に記載の動物に、前記標的RNAに関連する表現型を発現させる能力について化合物をスクリーニングする方法であって、該化合物を該動物に投与する工程、および該表現型の発現を引き起こす能力を評価する工程を包含する、方法。
(項目22) 特定の組織の増殖性疾患を有する被験体を、該組織の細胞増殖を阻害することによって処置する方法であって、項目5に記載の核酸を該被験体に投与する工程を包含し、ここで、標的特異的プロモーター結合配列は、疾患組織に特異的であり、これにより該核酸にコードされるリボザイムが発現され、該組織におけるリボソームRNA産生が阻害され、細胞増殖が阻害され、そして該増殖性疾患が処置される、方法。
(項目23) 前立腺癌を有する被験体を処置する方法であって、項目7に記載の核酸を該被験体に投与する工程を包含し、これにより、該核酸にコードされるリボザイムが該前立腺において発現され、そして該前立腺癌が処置される、方法。
(項目24) 被験体の感染を処置する方法であって、項目1に記載の核酸を、被験体に投与する工程を包含し、ここで、コードされる標的RNA特異的結合部位は、感染因子に独特のRNAに特異的であり、これにより核酸にコードされるリボザイムが発現され、そして該感染因子が殺傷される、方法。
【0012】
本発明は、組織特異的および標的RNA特異的リボザイムを提供する。これらのリボザイムは、とりわけ、標的特異的新生物を破壊するため、およびウイルス感染を処置するために使用され得る。本発明のリボザイムは、5’自己触媒的切断リボザイム配列、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイム、および3’自己触媒的切断リボザイムを含む。
【0013】
本発明はまた、本発明のリボザイムをコードする核酸を提供する。これらの核酸は、選択された部位で本発明のリボザイムを発現させるために使用され得る。本発明の核酸は、5’自己触媒的切断リボザイム配列と、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒的切断リボザイム配列とをコードする配列の上流に、組織特異的プロモーター結合部位を含む。
【0014】
特定の組織の増殖性疾患を有する被験体を、この組織における細胞増殖を阻害することによって処置する方法は、項目5の核酸を被験体に投与する工程を包含する。ここで、標的特異的プロモーター結合配列は、疾患組織に特異的であり、これによってこの核酸にコードされるリボザイムが発現され、組織におけるリボソームRNA産生が阻害され、細胞増殖が阻害され、そして処置された増殖性疾患が提供される。
【0015】
前立腺癌を有する被験体を処置するための方法が提供され、本方法は項目7に記載の核酸を被験体に投与する工程を包含する。これによってこの核酸にコードされるリボザイムが前立腺において発現され、そして前立腺癌が処置される。
【0016】
被験体における感染を処置する方法もまた提供され、本方法は項目1に記載の核酸を被験体に投与する工程を包含しする。ここで、コードされる標的RNA特異的結合部位は感染因子に独特のRNAに特異的であり、これによりこの核酸にコードされるリボザイムが発現され、そして感染因子が殺傷される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
(リボザイム)
本発明は、組織特異的および標的RNA特異的リボザイムを提供する。これらのリボザイムは、特に、組織特異的新生物を破壊し、そしてウイルス、細菌または寄生生物の感染を処置するために用いられ得る。本発明のリボザイムは、5’自己触媒切断リボザイム配列、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイム、および3’自己触媒切断リボザイムを含む。本発明のリボザイムの1つの例は、図2および配列番号1におけるそのDNAコード配列により示される。1〜164位のヌクレオチドは、5’および3’自己触媒リボザイム配列を含むリボザイムをコードする。この例示的なリボザイムの5’自己触媒切断リボザイム、触媒リボザイム、および3’自己触媒切断リボザイムは、配列番号1に別々に示される。
【0018】
あるいは、5’自己触媒切断リボザイムは、転写されたRNAの別のストレッチで置換され得る。このRNAにおいて、最初の20〜30のnt(またはそれより長いnt)の後に、最初の20〜30ntの逆相補を示す配列が続く。このように、この構築物は、pol II転写物のように5’末端で恐らくなおキャップされているが、最初のヌクレオチドは、標的化中間リボザイムの5’側のヌクレオチドの特異性を変化させないはずである。転写物がキャップされるという事実に基づくと、それは細胞質に効率的に輸出されるはずである。5’および3’自己触媒リボザイムの両方を有する本発明の3重リボザイム構築物について、内部標的化リボザイムの細胞質への拡散媒介輸送がいくらか存在すると予想されるが、このオルタナティブ5’末端は、細胞質比率を増大させるはずである。
【0019】
本発明は、触媒作用において標的RNA特異的であり、かつ組織特異的発現に供されることの両方において独特の特徴を有するリボザイムを提供する。図1および配列番号1に示される例において、標的RNA特異性は、RNAポリメラーゼI(A)(リボソームRNAポリメラーゼ)に独特の配列に特異的に結合する、RNA結合部位により付与される。任意のRNAに独特のRNA配列は、本発明の標的RNA特異的リボザイムの標的であり得る。独特の配列の決定は、核酸配列間の任意の適合を調査しそして見出し得る、多くのコンピューターデータベース(GenBank)およびコンピュータープログラム(Genetics Computer Group, PCGENEおよびBLAST)が利用可能であれば、日常的である。データベースのうちの1つに位置する独特のDNA配列は、対応する独特のRNA配列を有する。
【0020】
本発明のリボザイムの触媒配列の1つの例はまた、図1および配列番号1におけるそのDNAコード配列として示される。他の触媒配列は、当該分野で公知の触媒配列を含む。多くの配列変異が、「ステム」領域における許容可能なヌクレオチド変化を規定している(FedorおよびUhlenbeck, Proc.Nat.Acad.Sci. 87: 1668-1672, 1990)。当業者は、本明細書中に記載の自己触媒切断リボザイムおよびRNA結合部位と日常的に組み合わせた場合に、任意の触媒配列(なお発見されていないものでさえ)を使用して本発明のリボザイムを構築し得ることを理解する。
【0021】
本発明の触媒リボザイムを用いて発現される5’および3’自己触媒切断リボザイムの1つの例は、図1および配列番号1に示され、図2および3においてもまた示される。さらに以下に記載のように、これらのリボザイムは、触媒リボザイムの発現に重要である。なぜなら、これらは転写されて最小5’または3’外来配列を有する触媒リボザイムを生じるとすぐに、リボザイム転写物を切断するからである。従って、標的特異的結合部位および触媒リボザイムを含む触媒配列は、標的RNAに結合しそして切断するのに正しい配置にある。例示される構築物における外来配列は、クローニング手順の結果である。代替のクローニングスキームの選択により、これらの外来ヌクレオチドのいくつかまたは全てが排除され得ることが理解される。
【0022】
(リボザイムをコードする核酸)
本発明はまた、本発明のリボザイムをコードする核酸を提供する。これらの核酸を使用して、選択された部位で本発明のリボザイムを発現し得る。この部位は、組織特異的癌を処置する場合において組織特異的であり得るか、または感染(例えば、肝炎、ヘルペス、マラリア、結核など)を処置するために、感染性因子の複製を妨げるリボザイムの場合において標的特異的であり得る。
【0023】
本発明の核酸は、5’自己触媒切断リボザイム配列と、標的RNA特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒切断リボザイム配列とをコードする配列の上流に、組織特異的プロモーター結合部位を含む。
【0024】
リボザイム産生構築物における組織特異的プロモーター結合部位は、選択されたプロモーターからRNAを活動的に転写する組織(単数または複数)におけるリボザイムの組織特異的発現をもたらす。従って、プロモーターを利用する組織における標的RNAのみがリボザイムにより切断される。図1および配列番号1に示される例示的なリボザイムは、前立腺上皮に特異的なプロモーターである、プロバシンプロモーターに対する結合部位を利用する(Greenburgら、1994)。この組織特異的プロモーター結合部位は、(Greenburgら、1994)に示される配列を有する。
【0025】
予想されるように、組織特異的プロモーターは、本発明の核酸構築物において使用され得る。これらのプロモーターの例として、前立腺特異的抗原(前立腺)、アルブミン(肝臓)、脂肪酸結合タンパク質(腸骨)、乳漿酸性タンパク質(乳房)、平滑筋作用(平滑筋)などに対する結合部位が挙げられる。まだ同定されていない標的特異的プロモーターを使用して、本発明のリボザイムの選択された組織(単数または複数)への発現を標的化し得ることもまた明らかである。一旦標的組織プロモーターが同定されると、その結合配列は、配列解析のような日常的な方法により日常的に決定され得る。プロモーターは、デリーション解析、変異誘発、フットプリンティング、ゲルシフト、およびトランスフェクション分析により定義される(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, New York, 1989)。
【0026】
本発明のリボザイムをコードする核酸において、5’自己触媒切断リボザイムをコードする核酸は、配列番号1に示される1〜54位のヌクレオチドの配列を有し得る。本発明のリボザイムをコードする核酸において、3’自己触媒切断リボザイムをコードする核酸は、配列番号1に示される111〜164位のヌクレオチドの配列を有し得る。
【0027】
本発明の核酸によりコードされ得る他の5’および3’自己触媒リボザイムが開発され得ることが理解される。これらのリボザイムは、Tairaら(Nuc.Acids Res. 19(19):5125-5130, 1991)の方法に従って開発され得る。
【0028】
本発明の核酸は、2つの別々の機能的領域:標的RNAを切断する高度に保存された触媒配列(「触媒コア」としても知られる)および標的RNA特異的結合部位を含む隣接領域、を含む触媒リボザイムをコードする。核酸相補性により、結合部位は、リボザイムコアが標的RNA分子上の特異的部位を切断するように指向する。隣接配列の長さは、特異性だけでなく、個々のリボザイム分子の切断効率もまた関連する。本発明の触媒リボザイムにおいて、隣接配列は標的RNAに高度に特異的であり、一旦切断が始まってもなお標的RNAからの即座の解離を可能にする。これは、リボザイムの循環(1分あたり約1切断の予想Kcatを有する)を可能にし、そして有効であるために必要とされるリボザイムの量を減少させる。16〜21Kcalの結合/解離値の範囲が効果的であるはずである。
【0029】
ヒトRNAの複雑さは、ヒトDNAより約100倍低く、そして特異性は、12〜15塩基対ほどの少なさで達成され得る。RNA-RNA二重鎖の安定性は、GC含量、温度、pH、イオン濃度、および構造のようないくつかの要因によりもたらされる。隣接規則は、二重鎖の安定性の有用な評価を提供する(Castanottoら、「Antisense Catalatic RNAs as Therapeutic Agents 」Advances in Pharmacol, 25: 289-317, 1994)。
【0030】
上記のように、コードされるRNA結合部位は独特であり、同様に、コード核酸配列は対応する独特のDNA配列である。RNA結合部位は、リボソームRNAポリメラーゼI(A)サブユニットに独特のRNA配列に結合する配列を含み得る。リボソームRNAポリメラーゼ結合部位をコードするDNAは、図3に示す配列を有し得る。これは、RNAポリメラーゼI(A)サブユニット由来の配列である。
【0031】
本発明の触媒リボザイムはまた触媒配列を含み、これは、標的RNA特異的結合部位が結合する部位の中央に近い標的RNAを切断する。ハンマーヘッド型のリボザイムにおいて、触媒配列は、一般的に高度に保存される。保存触媒コア残基は、進化的に保存されたステムループ構造に連結された5’CUGANGA3’および5’GAAA3’である。
【0032】
標的RNAにおける最も保存されそしておそらく最も有効に切断される配列は、5’GUC3’である。しかし、XUN(N=A、UまたはC)もまた、有効に切断される。このような切断部位は、ほとんどのRNAに遍在し、そして基本的に全てのRNAの標的化を可能にする(Whitton, J. Lindsay、「Antisense Treatment of Viral Infection」Adv. in Virus Res. 第44巻、1994)。
【0033】
標的RNA上の適切な部位の選択について、標的部位の二次構造がインビトロでの切断に対して効果を有し得ることが知られている(Whitton、1994)。従って、選択された標的分子の配列は、プログラムRNAFOLD(プログラムのPCGENEグループまたはインターネットで入手可能である)を用いて、潜在的な二次構造について日常的にスクリーニングされ得る。従って、標的アクセス可能性の適切な予測が行われ得る。コンピューター補助のRNA折りたたみ(Castanottoら、1994)は、RNAの3次元モデルについてのコンピューター分析(Majorら、Science 253:1255-1260、1991およびCastanottoら、1994)と共に、切断部位の選択を導くにおいて確実に有効である。
【0034】
内部リボザイムは、寄生虫の増殖、ウイルス生活環などに必要とされる非細胞RNAに標的化され得、そして発現は、組織特異的プロモーターまたはウイルス特異的プロモーターによって駆動され得る。本願中で特に提示される3つの重要な例は、以下の通りである:
A) B型肝炎ウイルス標的を用いるアルブミンプロモーターの使用(同じリボザイム標的部位を用いて、ウイルスRNAプレゲノム、Sタンパク質、およびポリメラーゼ/逆転写酵素転写物を切断するために選択される);
B) P. falciparum由来のEMP-1タンパク質ファミリーの高度に保存された領域(これは、マラリアにおける細胞接着および抗原変異に必要とされる)に標的化されたリボザイムを用いる、赤血球中で活性な一般的なプロモーターの使用;および
C) E6タンパク質の翻訳開始部位(子宮頸発癌に深く関与するE6およびE7タンパク質の両方の発現に重要であると知られている部位)の付近の特異的部位に標的化されたリボザイムを用いる、HPVプロモーターの使用。
【0035】
本発明の核酸の1つの例は、配列表で配列番号1として示される配列のヌクレオチドを有する。この例示的な核酸は、5’自己触媒的に切断するリボザイム(配列番号1に示される配列を有する)と、リボソームRNA結合部位をコードするDNA(配列表中で配列番号1として示される配列を有する)と、3’自己触媒的に切断するリボザイム(配列番号1に示される配列を有する)とをコードする配列の上流に、プロバシンプロモーターを含む。
【0036】
あるいは、同じ組織で同じリボザイムを発現する、プロモーター結合部位およびリボザイムをコードする配列においてサイレントな塩基置換が行われ得る。従って、配列番号1に示されるリボザイムをコードする、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を実質的に有する核酸が提供される。この核酸は、選択されたプロモーターの特徴/定義に基づいて変化し得、そして配列番号1と80%〜99%の配列同一性を有し、より好ましくは、配列番号1と90%〜99%の配列同一性を有する。他の改変は、例えば、クローニング目的のために挿入されるヌクレオチドの変化(または欠失) を含み得(図2)、それらには、-1〜-8、+69〜+76が含まれる。図3において、ボックスはクローニング選択の関数である外来ヌクレオチドを含み、従って改変され得る。不対の塩基は任意の塩基であり得、選択されるクローニングスキームによってのみ決定される。対の塩基の一つが改変される場合、他方は、相補的様式で改変されなければならない。さらに、リボザイムコード配列は、リボザイムの配列を改変するが、リボザイムの標的RNA特異性に影響を与えず、かつその切断活性を無効にしない方法で改変され得る。例えば、5’、3’、および内部リボザイムのステムループ領域(図2)における改変は、触媒活性を維持しながら、他の構築物に組み込まれ得る(FedorおよびUhlenbeck、1990)。
【0037】
(リボザイム産生構築物の合成)
代表的には、RNA結合およびコア配列は、逆方向相補的オリゴヌクレオチドとして合成され、そしてリボザイムを含有する関連RNAの産生を可能にするベクターにクローン化される。本発明のリボザイムは、オリゴヌクレオチド(5’GGA AGA TCT TTC AAA GAC TGA TGA CTC CGT GAG GAC GAA ACG AGG ATC AGA TCT TCC 3’)およびその逆方向相補体の合成により調製される。クローニングに使用されるBgl II部位に下線を施した。適切な制限消化(この特定の場合では、 Bgl II)の後、二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、親ベクター中の複数のクローニング部位にクローン化される(図1)。
【0038】
(機能的試験)
一旦配列決定されると、これらのリボザイムは、機能的に試験される。試験は、(痕跡量の放射活性の存在下で)2つの可能な細菌プロモーター(この場合、SP-6またはT-7)のうちの1つを用いるリボザイムの転写、その後の電気泳動によるリボザイムの自己触媒切断の評価が含まれる。これらの試験からのデータを実施例に提供する。
【0039】
さらなる試験手順は、インビトロで転写されたリボザイムと、インビトロで合成された標的RNA転写物または細胞質RNA調製物とのインキュベーションを含む。インキュベーション後、RNAを、標準的なノーザンブロット解析によって試験して、標的RNA転写物の特異的分解を確認する。
【0040】
構築された三重リボザイムは、これを、標的中の組織特異的様式でベクターの発現を駆動する組織特異的プロモーターの1つの後方にサブクローニングすることによりさらに試験され得る。これらの試験からのデータを実施例に提供する。
【0041】
最後に、三重リボザイム実験アプローチは、さらに、マウスにおけるインビボ研究を行うことにより確認される。2つのこのような研究は実施例に記載のように実施された。第1の実験では、藻類緑色蛍光タンパク質(pBGFT)の発現を駆動するプロバシンプロモーターからなるpol Iリボザイムよりも容易にモニターされる制御ベクターを使用した。この試験ベクターは、本発明者らのインビボ送達系の有効性を確認するために使用される。 pol Iリボザイムを導入する第2の実験もまた行われた。三重リボザイムまたは緑色蛍光タンパク質のいずれかを導入した両方の場合において、手術後の種々の時間で動物を安楽死させ、死体解剖し、そして免疫組織化学によりベクターの活性について種々の組織を試験した。
【0042】
(送達)
本発明の核酸は、リボザイムの発現部位に核酸を送達するためのベクター中に存在し得る。ベクターは、市販の調製物(例えば、pGMプラスミド(Promega))の1つであり得る。ベクター送達は、市販のリポソーム調製物、または本発明のリポソームの特徴を有する新たに開発されたリポソームを使用する、リポソームによって行われ得る。他の送達方法は、本明細書中で教示される方法において適用され日常的に試験され得る。リポソームを用いる送達方法の例を、実施例にさらに記載する。
【0043】
リポソームの投与方法は、処置される疾患および標的化される組織に従って予測可能に変化し得る。共にリポソームのシンクである肺(例えば、結核、癌)および肝臓(例えば、肝炎および癌)について、静脈内投与が適切である。癌、感染(例えば、肝炎、膀胱炎、直腸炎、子宮頸炎など)、ならびに前癌性症状を含む多くの他の局所的病理学的症状について、器官の動脈上流からのカテーテル処置は、肺および肝臓によるリポソームの顕著なクリアランスを避けるので、送達の好ましい様式である。多くの他の部位での病変(例えば、皮膚癌、ヒトパピローマウイルス感染、ヘルペス(口腔または生殖器)、および前癌性子宮頸異形成)について、局所的送達は、有効であると予想され、そしてその簡便さのために好適であり得る。
【0044】
白血病および他の症状(例えば、マラリア)もまた、リボザイムのエキソビボ投与によってより容易に処置され得る。
【0045】
リポソームは、局所的、非経口的(例えば、静脈内)に、 筋肉内注射により、腹膜内注射により、経皮的、生体外的(excorporeally)などにより投与され得るが、代表的には、IVおよび局所的投与が好ましい。必要とされるリポソームの正確な量は、被験体の種、年齢、体重および一般的な被験体の状態、処置される疾患の重篤度、使用される特定の化合物、その投与様式などに依存して、被験体によって変化する。従って、正確な量を特定することは不可能である。しかし、適切な量は、本明細書中の教示に提供される日常的な実験のみを用いて当業者によって決定され得る。一般には、投薬量は、実施例に提供される代表的な量に近似する。
【0046】
非経口投与は、使用される場合、一般に注射によって特徴づけられる。注射可能物質は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に適切な固体形態、またはエマルジョンのいずれかとしての従来の形態で調製され得る。非経口投与のつい最近修正されたアプローチには、投薬量の定常レベルを維持するような緩除な放出系または持続放出系の使用が含まれる。例えば、本明細書中で参考として援用される米国特許第3,710,795号を参照のこと。
【0047】
局所的投与は、クリーム、ゲル、座薬などにより行われ得る。エキソビボ(生体外)送達は、他の情況において代表的に使用されるものであり得る。
【0048】
(トランスジェニック動物)
本発明は、生殖細胞または体細胞中に、5’自己触媒切断リボザイム配列と、標的RNA-特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒切断リボザイム配列とコードする配列の上流に、標的特異的プロモーター結合部位を含む核酸を含む、トランスジェニック非ヒト動物を提供する。ここでこの動物は、5’自己触媒切断リボザイム配列と、標的RNA-特異的結合部位を含む触媒リボザイムと、3’自己触媒切断リボザイム配列とを含むリボザイムを発現する。
【0049】
この核酸は、図1および配列番号1に示される核酸であり得る。あるいは、同じ組織で同じリボザイムを発現する、プロモーター結合部位およびリボザイムコード配列においてサイレントな塩基置換が作製され得る。例えば、これらの置換は、上記のようであり得る。
【0050】
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は有用である。何故なら、この動物は、標的RNAに関連する表現型(例えば、それがコードするタンパク質)を発現しないからである。本明細書で用いる用語「表現型」は、形態、生化学的プロフィール(例えば、発現されるRNAまたはタンパク質の量における変化)、およびノックアウトにより影響されるその他のパラメーターを含む。例えば、そうでなければ健康な細胞の細胞死は、リボザイム発現によりもたらされた表現型の改変の尺度であり得る。
【0051】
(形質転換された宿主細胞)
本発明のリボザイムは、形質転換された細胞株で発現され得る。形質転換された細胞を用いて、リボザイム発現の特異性ならびに標的RNAに対する特異性および切断活性の両方を確証し得る。このようなスクリーニング機能の例は、実施例に記載される。
【0052】
(スクリーニング法)
本発明のトランスジェニック動物および形質転換宿主細胞は、この動物または宿主細胞に標的RNAに関連する表現型を発現させるその能力について化合物をスクリーニングする方法で用いられ得る。この方法は、化合物を、動物/細胞に投与する工程、および上記表現型を発現させる化合物の能力を評価する工程を必要とする。上記表現型が回復される場合、化合物は有効であると考えられる。例えば、L-dopa機能的ノックアウトトランスジェニック動物が作製され得、そしてL-dopa関連表現型を回復する薬物をスクリーニングするために用いられ得る。
【0053】
(増殖性疾患の処置)
特定組織の増殖性疾患を有する被験体を処置する方法が提供される。この処置は、特定組織中で細胞増殖を阻害することにより実施され、そしてこれは、被験体に、細胞生存または複製に必須であるRNAを標的にするリボザイムをコードし、および疾患組織に特異的である標的特異的プロモーター結合配列を含む核酸を投与する工程工程により達成され得る。核酸によりコードされるリボザイムは、疾患組織で発現され、その組織において必須のRNAの産生は阻害され、細胞増殖はその組織中で阻害され、細胞死が結果として起こりそして増殖性疾患が処置される。
【0054】
本発明の方法により処置され得る増殖性疾患は、前立腺、乳房、結腸、膵臓、肺、および肝臓を含む、標的特異的プロモーターが存在するほとんどすべての癌を含む。
【0055】
例えば、本発明は、前立腺癌を有する被験体を処置する方法を提供し、この被験体に、配列番号1で示される核酸を投与する工程を包含し、それによってこの核酸によりコードされるリボザイムが前立腺において発現され、そして前立腺癌が処置される。
【0056】
(ウイルス感染の処置)
被験体においてウイルス感染を処置する方法は、被験体に、本発明の核酸を投与する工程を包含し、ここで、コードされる標的RNA特異的結合部位は、感染因子に独特なRNAに特異的であり、それによって、上記核酸にコードされるリボザイムが発現され、そして感染因子が殺される。転写は、ウイルス感染組織中で標的リボザイムを選択的に発現するウイルス特異的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを用いて、即ち、B型肝炎ウイルスに対する標的リボザイムの発現については肝特異的アルブミンプロモーターを用い、駆動され得る。
【0057】
抗ウイルス効力を決定する状況において、リボザイム発現細胞株は、それらのリボザイムネガティブ相当物と、ウイルス感染/複製/産出を支持するそれらの能力について比較され得る。上記の方法と類似の方法で、リボザイム発現細胞株が得られかつアッセイされ得る;そしてすべての場合で、感染を防ぐリボザイムの能力が決定され得る。
【0058】
本発明を、以下の非限定的な実施例中にさらに詳細に例示する。
【実施例】
【0059】
(実施例)
(前立腺癌におけるリボザイム遺伝子治療の分析)
この実施例は、正常および新生物性の前立腺上皮を殺すための、ハンマーヘッドリボザイムの前立腺標的発現を利用することに対するベクターおよび新規戦略を呈示する。このリボザイムは、高度に革新的な、三重リボザイム標的であり、必須のRNAを攻撃することにより細胞を破壊する。5’および3’リボザイムは、転写の間に自己触媒切断を行うように設計されており、細胞内の内部リボザイムを(高レベルで)遊離する。
【0060】
必須の細胞内RNA(RNAポリメラーゼ1(A)のような)に向けて標的された、ハンマーヘッドリボザイムの細胞内発現は、細胞死を生じる。リボザイムが拘束的な様式で特定組織に対して標的される場合、その組織内の細胞のみが、そのリボザイムの発現により影響される。前立腺を選択的に標的にすることは、ラットプロバシンプロモーター(pb)(または前立腺特異的抗原プロモーター)を介して達成され得る。組織特異的前立腺標的が、プロバシンプロモーターを用いて存在するので、ベクターの全身的送達または前立腺への直接導入によりトランスフェクト前立腺癌の死が生じ、いくらかの付帯的な損傷もまた、残りの正常な前立腺上皮において観察される。プロバシンプロモーターのかなり独特な特異性のため、体内のその他の場所では、付帯的なさらなる損傷は観察を予期されない。このことはまた、前立腺特異的抗原についても真実であると予測される。
【0061】
標的の例は、RNAポリメラーゼIおよびIIのI(A)サブユニットを含む。その他の内部標的リボザイムは、記載された方法によりインビトロおよびインビボ活性について試験される。
【0062】
(合成)
図1に示される一次二重リボザイムベクターを構築した。2つの隣接するリボザイム(塩基1〜54および66〜120)は、自己切断し得る。polImRNAを標的にする第3のリボザイム(図2)(塩基64〜105)は、隣接するリボザイム間にクローン化される。この内部リボザイムは、polIメッセージに対してアンチセンスであり、そして領域内での塩基対形成により最小の二次構造と相互作用して切断を行う、2つの領域内(TTCAAAGA-触媒コア-ACGAGGATCAG)に19塩基を有する。
【0063】
内部polIリボザイムは、オリゴヌクレオチド(5’GGA AGA TCT TTC AAA GAC TGA TGA CTC CGT GAG GAC GAA ACG AGG ATC AGA TCT TCC 3’)(リボゾームセンス鎖のみがその逆相補鎖で示される)の合成により調製される。クローニングで用いられるBglII部位に下線を引いてある。BglIIを用いた適切な制限消化の後、二本鎖オリゴヌクレオチドを親ベクター内のBglII部位中にクローン化した(図1)。
【0064】
(送達)
三重リボザイム構築物に連結されると、前立腺特異的プロモーターは、リポソームを介して全身的に前立腺に送達される。血管系中への種々の導入経路は(いくつかは肺および肝臓を迂回する)は、記載のように評価される。同所性経路もまた用いられ得る。リポソームビヒクルは、前立腺癌細胞に分子を送達するに十分効果的であることが予期される。何故なら、血管形成の程度が高いからである。従って、この遺伝子治療アプローチにより負わせられる腫瘍の治癒または少なくとも減少が、合理的に期待される。
【0065】
以下のリポソーム調製物がこれらの研究で用いられた:(a)リポフェクタミン試薬(GIBCO BRL、Gaithersburg、MD)は、正に荷電した脂質DOSPA、および中性脂質DOPEを3:1モル比で含むポリカチオン性脂質である;(b)DOPEと2:1または0.6:1.0の比で組み合わせて用いられるカチオン性脂質DDAB(Brunetteら、Mol.Cell.Biol.14:2411-2418、1994);および(c)VICAL Corp.(San Diego、CA)から得られる、DOPEと1:1のモル比で組み合わせたDMRIE(Felgnerら、Methods(Orlando)5:67-75、1995)。リポソーム試薬は、トランスフェクション前に4℃で貯蔵した。
【0066】
(試験)
一旦配列決定されると、これらのリボザイムは機能的に試験される。試験機構は、2つの可能な細菌プロモーターのうちの1つ、この場合pCRIIベクター(Invitrogen、San Diego、Ca)中に存在するSP-6またはT-7を用いる三重リボザイムの転写、その後の(痕跡量の放射活性の存在下の)電気泳動によるリボザイムの自己切断の評価を包含する。これは、polIリボザイムを用いて実施され、そして切断が観察された。即ち、最初、内部標的リボザイムおよび3’リボザイムを含む113bpのフラグメントが産生され、次いで内部polIリボザイムを含む74bpのフラグメントが出現した。
【0067】
引き続いて、リボザイムは、C3H10T 1/2マウス線維芽細胞中へのその一過性トランスフェクションにより試験された。これは、三重リボザイム発現が誘導されたとき、Pol1RNAが分解されたことを示した。従って、この分子の2相の活性が調査されかつ起こることが示された。予期されたように、シスのリボザイムの自己触媒切断およびトランスでのpolImRNAの機能的分解が起こる。
【0068】
次の工程は、組織特異的プロモーター(例えば、組織特異的様式で発現を標的化するプロバシンまたは前立腺特異的抗原)の制御下でベクターに三重リボザイムを導入することである。これを、完全な3’末端、5’末端および内部リボザイムを含むNot1フラグメントを切り出し(図2)、そしてそれをプロバシンプロモーター領域(-426〜+28(Greenburgら、1994)を含むベクターにサブクローニングすることによってなした。このプロモーターが、前立腺に遺伝子発現を標的化することが示された。
【0069】
三重リボザイムアンチpolI構築物を発現するトランスジェニックマウスで、ベクターをインビボにおいて試験する。トランスジェニックマウスを、Hogan(Manipulating the mouse embryo:a laboratory manual, Cold Spring Harbor,NY 1986)に記載されたように、標準的な前核注入法によって作製した。注入前に、構築物を、プラスミドの制限消化(HindIIIおよびSacII)、続いてスクロース勾配分取によってベクターDNAから分離した。注入前に、単離された構築物を10mm tris pH8.0、0.1mm EDTAに対して透析した。これらのマウスにおいて、一旦、プロバシン発現が出生後の発育の3〜5週の段階で明らかになると、前立腺の上皮の破壊が生じることが予想される。トランスジェニックマウスを作製する効率は、産まれた26匹のマウスに対して10〜15%である(すなわち、2〜3匹のトランスジェニックマウスが予想される)。本リボザイムの機能性を証明する別の方法は組織培養(例えば、ヒトPC3前立腺癌細胞)にベクターを導入し、そしてリボザイムの活性化に対する細胞死を観察することである。C3H10T1/2マウス線維芽細胞は、polI三重リボザイムに感受性であることが確認された。
【0070】
この遺伝子治療のアプローチのさらなる確認がインビボにおける研究によって得られる。2つのそのような研究を実施した。第1の実験において、polIリボザイムより容易にモニターされる、藻類緑色蛍光タンパク質の発現を駆動するプロバシンプロモーターからなる制御ベクターを、インビボにおけるリポソーム送達系の有効性を確かめるために使用した。手順は、麻酔され、そして下行大動脈を露出する外科的手順によって作製されたマウスを含む。30ゲージのカテーテルを下行大動脈中に配置し、続いて300μgベクター/体重キログラム(ベクター:リポソームの比率は10μg/40μl)を注入する。結果は、緑色蛍光タンパク質の発現が、背外側前立腺の上皮において生じるが、肺(リポソームの通常の標的)には生じないことを確認する。さらなる研究は、発現が肝臓ならびに腎臓、副腎および脳を含む他の組織において観察されるかどうかを決定する。polIリボザイムを上記と同じ方法を使用してインビボに導入した第2の実験もまた実施した。三重リボザイムまたは緑色蛍光タンパク質のいずれかを導入した両方の場合において、手術後様々な時間で動物を安楽死させ、死体解剖し、そして組織を免疫組織化学によってベクターの活性について調べた。投与後7日で前立腺上皮においてアポプトーシス細胞死のいくらかの証拠があった。
【0071】
インビボにおける研究は、前立腺腫瘍を有するトランスジェニックマウスにおいて行った。腫瘍を、遺伝子(例えば、EcoRI(制限酵素)、cfos(癌原遺伝子)、またはラミン(核マトリクッス分子)の改変型)のプロバシン指向された発現によって誘導する。リボザイムの投与を上記のように行う。
【0072】
(標的選択)
様々な分子が、標的化のために選択された。第1には、RNAポリメラーゼ1(A)がある。それは豊富なRNAであるので、優れた標的を表す。前立腺細胞以外で、プロバシンプロモーターの漏出(低レベルの転写)が存在する場合、それらは、制限されたレベルのPolIリボザイムの存在を残存することが予想される。ホスホフルクトキナーゼ(関与する組織に依存するリボザイム標的ヌクレオチド178、121、または162)、RNA polIIサブユニット 14.4kd(リボザイム標的ヌクレオチド83または884)、mRNA polIIサブユニット 140kd(リボザイム標的ヌクレオチド204)、およびRNA polII 23kdサブユニット(リボザイム標的ヌクレオチド143)を含む他の潜在的な標的を試験する。
【0073】
別の目的の潜在的な標的は複製タンパク質Aの70kDサブユニットである。それは、DNA複製中心/病巣の形成に必要とされ、それゆえ導入エラーの危険なしにDNA複製を破壊するはずである。配列の参考は、Kimら、Mol. Cell. Biol. 12:3050-3059,1992である。
【0074】
(寄生虫感染におけるリボザイム遺伝子治療)
上記の方法は、特定された場合を除き、本文脈において適用し得る。例えば、寄生虫感染に対する投与方法は、前立腺癌に対する投与方法とは異なり、かつ組織部位に依存する。
【0075】
マラリア(Plasmodium falciparum)の場合、EMP-1タンパク質を標的化する。EMP-1タンパク質は、細胞接着に必要であり、そして迅速な抗原性変異を引き起こすために問題になる。特に、エキソンIIの高度に保存されたGTCを標的化する。関連するEMBL登録番号は、L42246、L42244、L42245、L42247、L40600〜L40609、L42636である。Smith, J.ら、Cell 82:101-110, 1995およびSu, X.ら、Cell 82:89-100,1995を参照のこと。赤血球における活性なプロモーターを使用し得、そして処置もまた生体外で行われ得る。
【0076】
(細菌感染におけるリボザイム遺伝子治療)
上記の方法は、特定された場合を除き、本文脈において適用し得る。例えば、細菌感染に対する投与方法は、前立腺癌に対する投与方法とは異なり、かつ組織部位に依存する。
【0077】
放線菌結核の場合、細胞侵入に必須である転写されたフラグメントを標的化する。EMBL登録番号は、X70901である。Arruda, S.ら、Science 261:1454-1457, 1993を参照のこと。標的は、1535bpのフラグメント由来の、52kDのタンパク質をコードするオープンリーディングフレームのN末端の近傍にある。
【0078】
(ウイルス感染におけるリボザイム遺伝子治療)
上記の方法は、特定された場合を除き、本文脈において適用し得る。例えば、ウイルス感染に対する投与方法は、前立腺癌に対する投与方法とは異なる。
【0079】
ヒトパピローマウイルス16型のE6およびE7タンパク質は、二重シストロン性mRNAから翻訳される。E6の翻訳開始部位に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、E6およびE7の両方の合成を阻害する。標的は、GTTであり、ヌクレオチド108で切断する(Tanら、J. Gen. Virol. 75:2663-2670, 1994)。元の番号の出典は、Seedortら、Virology 145:181-185,1985である。IVおよび局所的投与は、効果的な組合せのはずである。局所的投与は異形成/前癌性の病変に対して有効なはずである。
【0080】
B型肝炎ウイルスは、部分的に1重鎖DNAウイルスであり、そしてウイルスゲノムの組込みは重要な事象ではないと今考えられている。むしろ、ウイルスゲノムが伸長したRNA中間体に作製され、次いでそれがDNAに逆転写される。多くの利点を有する標的が選択された。それは、ウイルスRNAプレゲノムを第1の位置で切断し、そしてS(エンベロープ)およびポリメラーゼ/逆転写酵素ドメインの両方に配置される。切断は、HBVサブタイプaywのヌクレオチド438の後のGTCで起こる。EMBL登録番号は、X02496であり、そして元の配列の参考は、Galibertら、Nature 281, 646-650, 1979である。発現はアルブミンプロモーターによって駆動され得、そして静脈内投与は非常に有効なはずである。
【0081】
前述の発明を、明白および理解の目的のためにいくらか詳細に記載したが、形態および詳細における様々な改変が、本発明および添付の特許請求の範囲の真の範囲から逸脱することなしになされ得ることを、本開示を読むことによって当業者は理解する。
【0082】
本願を通じて、様々な出版物が括弧内で参照されている。これらの出版物の開示は、本発明が属する当該分野の状態をより十分に記載するために、それらの全体が本願中で参考として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、NotI部位で開始する親二重リボザイムをコードするDNAを示す。下線の配列は、NotI部位(GCGGCCGC)およびBglII(AGATCT)である。親二重リボザイムの配列は、NotI部位で開始する。下線の配列は、NotI部位(GCGGCCGC)およびBglII(AGATCT)である。
【図2】図2は、内部PolI標的化三重リボザイム(太字)を有する全配列をコードするDNAを示す。下線の配列は、NotI部位(GCGGCCGC)およびBglII(AGATCT)である。これは、内部PolI標的化三重リボザイム(太字)を有する全配列である。下線の配列は、NotI部位(GCGGCCGC)およびBglII(AGATCT)である。
【図3】図3は、コアリボザイムがその逆相補DNAとしてクローン化された、親二重リボザイムの二次元構造を示す。
【0084】
(配列表)
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の組織の増殖性疾患を有する被験体を、該組織の細胞増殖を阻害することによって処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−84550(P2007−84550A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283150(P2006−283150)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【分割の表示】特願平9−518381の分割
【原出願日】平成8年11月8日(1996.11.8)
【出願人】(506348499)エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント (5)
【出願人】(599034952)ペン.ステート.リサーチ.ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】