説明

組織結紮デバイス

【課題】組織を縫合する際に鉤状部材に縫合糸を容易に係合させることができる組織結紮デバイスを提供する。
【解決手段】組織を結紮するための組織結紮デバイス1であって、弾性復元力を有する縫合糸20と、縫合糸20の一端21に接続され、縫合糸20の導出方向とは交差する方向で、かつ一端21に対して縫合糸20の導出方向とは反対の方向に配置された溝部33を有する鉤状部材30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合糸を備える組織結紮デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、組織を縫合、結紮する動作は、多くの手技において非常に重要な位置を占めているが、熟練を要する難度の高い動作となっている。近年、患者の侵襲を低減する目的から、内視鏡や腹腔鏡、胸腔鏡などを用いて手術などの各種手技を行う試みが進められている。このような鏡視下では、縫合糸や縫合針などを長い鉗子などで操作する必要があるため、縫合、結紮などの難度はさらに高くなる。
【0003】
縫合や結紮において、特に困難なのは、縫合糸を結んで結び目を形成する動作である。結び目が緩んでしまうと縫合や結紮が解除されて重大な合併症を引き起こす場合もある。手技によっては結び目を多数形成する場合もあり、その場合、難度はさらに上昇する。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載の医療用縫合器が提案されている。この医療用縫合器は、糸止め部材に縫合糸が接続された縫合体を備えている。糸止め部材は、断面がU字形状に形成されている。縫合糸は、生体吸収性の樹脂によって形成され、モノフィラメント(単線)とマルチフィラメント(複線)とを使い分けることができる。
曲針などを用いて組織に係止された縫合糸を糸止め部材のU字溝内に引き込み、縫合糸を引き絞ってから、かしめや超音波などにより糸止め部材を変形させると、U字溝内に引き込まれた縫合糸が糸止め部材に固定される。このようにして結び目が形成されるため、結び目の形成が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−140982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、縫合体の縫合糸の詳細については記載されていない。しかし、図1などに示される縫合糸が曲げられた形状を見ると、縫合糸は曲がりやすく、その曲がった形状が維持されると考えられる。
特許文献1の縫合糸の場合、組織から突出した縫合糸は、自身に作用する重力に打ち勝つことができずに組織上に広がる。組織と糸止め部材との間に隙間がないため、糸止め部材に縫合糸を係合しにくくなる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、組織を縫合する際に鉤状部材に縫合糸を容易に係合させることができる組織結紮デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の組織結紮デバイスは、組織を結紮するための組織結紮デバイスであって、弾性復元力を有する縫合糸と、前記縫合糸の一端に接続され、前記縫合糸の導出方向とは交差する方向で、かつ前記一端に対して前記縫合糸の導出方向とは反対の方向に配置された溝部を有する鉤状部材と、を備えたことを特徴としている。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記縫合糸の少なくとも一部は、自然状態で湾曲基準平面上で湾曲するように形成されていることがより好ましい。
【0009】
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記溝部の底部から前記溝部の開口に向かう向きは、前記湾曲基準平面に交差する向きに向いていることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記溝部が、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線を含み前記湾曲基準平面に直交する配置基準平面より前記縫合糸の中間部側に配置されていることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記溝部が、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線を含み前記湾曲基準平面に直交する配置基準平面より前記縫合糸の中間部から離間する側に配置されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記鉤状部材は、前記縫合糸の一端に端部が接続され直線状に延びる直状部を有し、前記溝部は、前記直状部における前記縫合糸が接続された端部とは反対側の端部に設けられ、前記直状部は、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線に交差する向きに延びていることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記溝部の底部から前記溝部の開口に向かう向きが、前記直状部に略平行となるとともに前記直状部における前記縫合糸が接続された端部側に向き、前記溝部の内壁面は前記直状部の外周面に連なっていることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記縫合糸の他端に接続された縫合針を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組織結紮デバイスによれば、組織を縫合する際に鉤状部材に縫合糸を容易に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の組織結紮デバイスにおける、図1(A)は斜視図であり、図1(B)は平面図である。
【図2】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図3】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図4】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図5】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例の組織結紮デバイスおける、図6(A)は要部の斜視図であり、図6(B)は平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例の組織結紮デバイスおける、図7(A)は要部の斜視図であり、図7(B)は平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の組織結紮デバイスにおける、図8(A)は斜視図であり、図8(B)は平面図である。
【図9】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図10】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図11】本発明の第3実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図12】同組織結紮デバイスの一部を破断した平面図である。
【図13】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図14】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図15】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図16】本発明の第3実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図17】本発明の第3実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図18】本発明の第3実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図19】本発明の第4実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図20】同組織結紮デバイスの一部を破断した平面図である。
【図21】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図22】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図23】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図24】本発明の第4実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図25】本発明の第4実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図26】本発明の第4実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図27】本発明の第4実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図28】本発明の第5実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図29】同組織結紮デバイスの一部を破断した平面図である。
【図30】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図31】本発明の第5実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図32】本発明の第5実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図33】本発明の第6実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図34】同組織結紮デバイスの一部を破断した平面図である。
【図35】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図36】本発明の第6実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図37】本発明の第6実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図38】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図39】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図40】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る組織結紮デバイス(以下、「デバイス」とも称する。)の第1実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本デバイス1は、縫合糸20と、縫合糸20の一端21に接続された鉤状部材30と、縫合糸20の他端22に接続された縫合針40とを備えている。
【0014】
本実施形態では、縫合糸20はポリプロピレンにより形成されていて、鉤状部材30に作用する重力に釣り合う(鉤状部材30を持ち上げる)弾性復元力を作用することができるように、縫合糸20の弾性率や断面形状などが調節されている。なお、ここで言う弾性復元力とは、ある形状の縫合糸を変形させたときに、その縫合糸が元の形状に戻ろうとする力のことを意味する。言い換えれば、弾性的に変形した縫合糸に生じる力のことである。
縫合糸20の弾性復元力は、術者の手技に支障がない範囲内で、大きいことが好ましい。縫合糸20は、弾性的に変形できる歪の範囲が比較的大きくなるように構成されている。
【0015】
縫合糸20を形成する材料としては、ポリプロピレン以外の樹脂や金属なども好適に用いることができる。
縫合糸20に用いられる樹脂は、吸収性の樹脂と非吸収性の樹脂とに分類される。吸収性の樹脂としては、PGA、PLA、PDS、TMC、ポリエプシロンカプロラクトンおよびその共重合体などがある。非吸収性の樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテステル、フッ素樹脂、PETなどがある。
一方で、縫合糸20に用いられる金属の例としては、ステンレススチール、Co−Cr合金、βチタン、ニッケルチタン、純Ti、Ti合金、Mg合金などを挙げることができる。
なお、鉤状部材30の質量は、例えば、皮膚縫合などの場合は5g以下程度が好ましく、心臓血管外科手術のような微小な領域では0.01g以下程度が望ましい。
【0016】
鉤状部材30は、縫合糸20の一端21に端部が接続され、直線状に延びる直状部31、および、直状部31における縫合糸20が接続された端部とは反対側の端部に設けられた湾曲部32を有している。
なお、鉤状部材30と縫合糸20の材質が同じ場合、一体物として構成してもよい。
以下では、説明の便宜のために、縫合糸20の一端21を原点Oとし、縫合糸20の原点Oにおける中心軸線を基準線L1と規定する。
基準線L1上にZ軸を規定し、縫合糸20から離間する向きをZ軸の正の向きとする。原点Oを通り基準線L1に直交する基準平面S1を規定すると、基準平面S1上に設けられるX軸およびY軸と前述のZ軸とで、右手系の直交座標系が規定される。
このように規定された直交座標系XYZにおいて、直状部31は、基準線L1に直交する向き、すなわちX軸の正の向きに延びている。この場合、縫合糸20が導出される導出方向は、Z軸の負の向きとして規定される。
直状部31の端部には、不図示の固定穴が形成されていて、縫合糸20の一端21を固定穴に圧入し、一端21と直状部31とを接着剤や溶接などで固定することで、縫合糸20に直状部31が接続されている。
【0017】
湾曲部32は、略U字状に形成されてXY平面である基準平面S1上に配置されている。湾曲部32には、縫合糸20を係合可能な溝部33が形成されている。溝部33は、湾曲部32をZ軸方向に貫通している。溝部33の底部33aから溝部33の開口33bに向かう向きD1は、Y軸の正の向きに設定されている。
溝部33の深さ(溝部33の底部33aから開口33bまでの距離)は、縫合糸20の外径より大きく設定されている。
【0018】
この例では、直状部31および湾曲部32は、ステンレススチール製のワイヤーを曲げ加工することで、一体に形成されている。鉤状部材30は縫合糸20より硬く形成されていて、カシめることで塑性変形させることができる。
直状部31が延びる軸線に直交する平面による直状部31の断面形状、および、湾曲部32が湾曲する軸線に直交する平面による湾曲部32の断面形状は、互いに同一の矩形状に形成されている。
鉤状部材30の大きさは、例えば皮膚縫合などの場合は10mm以下程度が好ましく、心臓血管外科手術のような微小な領域では2mm以下程度が好ましく、非常に小さく形成されている。
【0019】
縫合針40は、公知の各種のものを使用することができ、直線状のもの、湾曲状のもの、先端部のみ湾曲し、他の部位が直線状に形成されたものなどを、縫合部位などを考慮して適宜選択することができる。縫合糸20と縫合針40との接続態様には特に制限はなく、具体的には、接着、溶着、あるいは縫合針40の端部に形成した穴に縫合糸20の端部を通して結ぶなどの方法を挙げることができる。
【0020】
次に、以上のように構成されたデバイス1の使用時の動作について、組織の表面に形成された裂傷部を縫合する場合を例にとって説明する。
まず、術者は、図2に示すように、把持鉗子Wなどでデバイス1の縫合針40を把持し、組織Tの裂傷部T1の近傍に縫合針40を穿刺する。
図3に示すように、裂傷部T1を囲うように縫合針40および縫合糸20を組織T内に通す。組織Tから突出した縫合針40を裂傷部T1から離間するように引くことで、鉤状部材30が縫合糸20にかけられるのに適した高さだけ、縫合糸20の一端21を組織Tから突出させる。この一端21を突出させる高さは、例えば、数mm〜数cm程度とするのが望ましい。
図3に示すように、裂傷部T1を囲うように縫合針40および縫合糸20を組織T内に通す。組織Tから突出した縫合針40を裂傷部T1から離間するように引くことで、縫合糸20の一端21が組織Tから数mm程度突出するように調節する。
このとき、縫合糸20は前述の弾性復元力を作用させることができるため、縫合糸20の一端21により支持された鉤状部材30が重力の影響を受けて組織T上に倒れてしまうことなく、鉤状部材30が組織Tから浮いた(離間した)状態が保持される。
【0021】
縫合針40を把持した把持鉗子Wを鉤状部材30側に移動し、図4に示すように開口33bを通して溝部33に縫合糸20を係合させ、縫合糸20でループを形成する。鉤状部材30に縫合糸20が係合した状態を保持しつつ、縫合針40を裂傷部T1から離間するように引く。これにより、溝部33内で縫合糸20が移動して組織Tに鉤状部材30が当接し、裂傷部T1の周辺の組織Tが縫合糸20により緊縛され、裂傷部T1の開口が閉じる。
縫合針40を裂傷部T1から離間するように引いた状態で、不図示の別の把持鉗子などで、図5に示すように鉤状部材30の湾曲部32を外側から潰すようにカシめ、縫合糸20に鉤状部材30を固定する。このように、縫合糸20とカシめた鉤状部材30とにより結び目を形成することで、組織Tを結紮する。
縫合糸20におけるカシめた鉤状部材30より縫合針40側を医療用のナイフなどで切断し、縫合針40および切断した縫合糸20を取り出して手技を終了する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のデバイス1によれば、縫合糸20を他端22側から組織T内に通したときに、縫合糸20の一端21を組織Tから突出させることで、縫合糸20の弾性復元力により鉤状部材30が組織Tから浮いた状態が保持される。組織Tを通した縫合糸20を組織Tから浮いた状態の鉤状部材30の溝部33に係合させることで、鉤状部材30に縫合糸20を容易に係合させることができる。
デバイス1は縫合針40を備えるため、縫合針40に接続された縫合糸20を組織Tに容易に通すことができる。
【0023】
本実施形態のデバイス1は、以下に説明するようにその形状を様々に変形させることができる。
例えば、図6に示すデバイス1Aのように、前記第1実施形態のデバイス1の湾曲部32に代えて、溝部52が形成された湾曲部51を備えてもよい。
湾曲部51は、略U字状に形成されてXY平面である基準平面S1上に配置されている。溝部52の底部52aから開口52bに向かう向きD1は、X軸の負の向きとY軸の正の向きとの間の向きに設定されている。略U字状に形成された湾曲部51のうちのX軸の負の向き側の端部が直状部31に接続され、溝部52の開口52bは、直状部31と湾曲部51との接続部よりX軸の正の向き側に配置されている。直状部31および湾曲部51は、鉤状部材30と同一の材料で一体に形成されている。
【0024】
図7に示すデバイス1Bは、前記第1実施形態のデバイス1の湾曲部32に代えて、溝部54が形成された湾曲部53を備えている。
湾曲部53は、略J字状に形成されて基準平面S1上に配置されている。溝部54の底部54aから開口54bに向かう向きD1は、X軸の負の向きとY軸の正の向きとの間の向きに設定されている。略J字状に形成された湾曲部53のうちのY軸の正の向き側の端部が、直状部31に接続されている。
溝部54の開口54bは、直状部31と湾曲部53との接続部よりY軸の負の向き側に配置されている。
このように構成されたデバイス1A、1Bによっても、本実施形態のデバイス1と同様に、縫合糸20の弾性復元力により湾曲部が組織Tから浮いた状態で保持されるため、鉤状部材に縫合糸20を容易に係合させることができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8から図10を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8に示すように、本実施形態のデバイス2は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材60を備えている。
【0026】
鉤状部材60は、前述の直状部31と、溝部62が形成された湾曲部61とを有している。
湾曲部61は、略U字状に形成されて基準平面S1上に配置されている。溝部62は、溝部62の底部62aから溝部62の開口62bに向かう向きD2が、直状部31に略平行(X軸の負の向き)となるとともに、直状部31における縫合糸20が接続された端部側に向くように形成されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の負の向き側に形成されている。
溝部62の内壁面は、直状部31の外周面に連なって(直接接続されて)いる。
【0027】
次に、以上のように構成されたデバイス2の使用時の動作について、組織Tの表面に形成された裂傷部T1を縫合する場合を例にとって説明する。
この動作は、前記第1実施形態のデバイス1を用いた場合と、鉤状部材60を組織Tから浮いた状態に保持するところまで同一なので、それ以降の手順について説明する。
術者は、縫合針40を把持した把持鉗子Wを移動させ、図9に示すように、直状部31における縫合糸20が接続されている側の端部に縫合糸20の中間部を当接させる。把持鉗子Wが縫合糸20の他端22の位置を保持している力を弱めることで、縫合糸20は自身の弾性復元力により、形成したループを広げるように変形する。これにより、縫合糸20の中間部が直状部31に沿って縫合糸20の一端21から離間するように移動し、溝部62に縫合糸20が係合する。
【0028】
図10に示すように、鉤状部材60に縫合糸20を係合させたまま、把持鉗子Wを裂傷部T1から離間するように引く。これにより、裂傷部T1の周辺の組織Tが縫合糸20により緊縛される。不図示の別の把持鉗子などで鉤状部材60の湾曲部61をカシめ、縫合糸20に鉤状部材60を固定する。固定した鉤状部材60より他端22側で縫合糸20を切断し、手技を終了する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のデバイス2によれば、直状部31における縫合糸20が接続されている側の端部に当接させた縫合糸20の中間部を、直状部31に沿って滑らせるように移動させることで、溝部62に縫合糸20をさらに容易に係合させることができる。
把持鉗子Wが縫合糸20の他端22の位置を保持する力を弱めることで、縫合糸20の弾性復元力により溝部62に縫合糸20を自動的に係合させることができる。
また、溝部62の開口62bが、直状部31における縫合糸20が接続された端部側に向くように形成されているため、術者が開口62bの向きD2を認識しやすくすることができる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図11から図18を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11および図12に示すように、本実施形態のデバイス3は、前記第2実施形態のデバイス2の縫合糸20に代えて、縫合糸70を備えている。
溝部62は、溝部62の底部62aから開口62bに向かう向きD2が、湾曲基準平面S2に交差するように形成されている。
【0031】
縫合糸70は、自然状態で自身の中央部が、YZ平面となる湾曲基準平面S2上でZ軸の負の向きが凸となる湾曲形状に形成されている。本実施形態では、縫合糸70は中心角で約180度湾曲している。縫合糸70の両端部は、Z軸にほぼ平行に延びる直線状に形成されている。縫合糸70は、ポリプロピレンなどの樹脂の中では比較的硬いものを好適に用いることができる。自然状態で湾曲する縫合糸70の形状は、例えば、縫合糸70を熱処理することで形成することができる。なお、縫合糸70を形成する材料は、樹脂としては、ポリプロピレン以外にも、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテステル、フッ素樹脂、PETなどの非吸収性の樹脂や、PGA、PLA、PDS、TMC、ポリエプシロンカプロラクトンおよびその共重合体などの吸収性樹脂を用いることができる。縫合糸70には、金属としてはステンレススチール、Co−Cr合金、βチタン、ニッケルチタン、純Ti、Ti合金、Mg合金などを用いることができる。縫合糸70をステンレススチールなどで形成する場合には、自然状態で湾曲する縫合糸70の形状は焼き入れになどより形成することができる。
この実施形態では、直状部31はYZ平面に直交する向き、すなわち、X軸の正の向きに延びている。
【0032】
次に、以上のように構成されたデバイス3の使用時の動作について説明する。
この動作は、前記第1実施形態のデバイス1を用いた場合と、鉤状部材60を組織Tから浮いた状態に保持するところまで同一なので、それ以降の手順について説明する。
なお、縫合糸70は湾曲形状に形成されているため、裂傷部T1を囲うように縫合針40を通したときに、縫合糸70により規定されるYZ平面に対して、直状部31はX軸の正の向き側に延びるように、すなわち湾曲基準平面S2に直交するように配置される。溝部62は、直状部31に対するY軸の負の向き側に配置される。
【0033】
術者は、縫合針40を把持した把持鉗子Wを移動させ、図13に示すように、鉤状部材60の溝部62に縫合糸70を組織T側から係合させる。このとき、縫合糸70の曲がり部70aに示されるように、縫合糸70の曲率半径が比較的小さくなる(小さいループを形成する)ように縫合糸70を曲げる。
鉤状部材60に縫合糸70を係合させた状態で、把持鉗子Wが縫合糸70の位置を保持している力を弱めることなどにより、把持鉗子WをY軸の正の向き側に移動させると、図14に示すように、小さく形成した縫合糸70のループの曲率半径が大きくなり、鉤状部材60がZ軸回りに方向E1(Z軸の正の向きに見て時計回り。)に約90度回転する。
縫合針40をさらに裂傷部T1から離間するように引くことで、図15に示すように、組織Tに鉤状部材60が当接し、裂傷部T1の周辺の組織Tが縫合糸70により緊縛され、裂傷部T1の開口が閉じる。
鉤状部材60の湾曲部61をカシめて縫合糸70に鉤状部材60を固定し、縫合糸70の適切な部位を医療用のナイフで切断して手技を終了する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のデバイス3によれば、組織Tを縫合する際に鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
縫合糸70は、自然状態で湾曲するように形成されている。このため、裂傷部T1を囲うように組織T内に縫合糸70を通したときに、縫合糸70に対する鉤状部材60の向きが定まる。したがって、鉤状部材60が非常に小さく形成されていて術者が目視によって溝部62の位置を確認しにくい場合であっても、溝部62に縫合糸70を係合させやすくすることができる。
【0035】
溝部62は、向きD2が湾曲基準平面S2に交差するように形成されているため、縫合糸70を湾曲基準平面S2に交差するように移動させることで、溝部62に縫合糸70を係合させることができる。
直状部31はYZ平面に直交する向きに延びているため、組織Tを緊縛するときに鉤状部材60がZ軸回りに回転する。このため、鉤状部材60に縫合糸70が係合しているか否かをこの回転する動きを確認することで、術者が容易に認識することができる。
【0036】
本実施形態のデバイス3は、以下に説明するようにその形状を様々に変形させることができる。
例えば、本実施形態のデバイス3を、図16に示すデバイス3Aのように変形させてもよい。
デバイス3Aでは、縫合糸70により規定されるYZ平面に対して、直状部31はX軸の負の向きに延びている。湾曲部61は、略U字状に形成されて基準平面S1上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の負の向き側に形成されている。
このように構成されたデバイス3Aによれば、鉤状部材60に縫合糸70を係合させた状態で把持鉗子WをY軸の正の向き側に移動させると、鉤状部材60がZ軸回りに方向E2(Z軸の正の向き側に見て反時計回り。)に約90度回転する。
これ以外は、本実施形態のデバイス3と同様の手順を行うことで、鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
【0037】
図17に示すデバイス3Bでは、直状部31は、X軸の負の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の負の向きの間の向きに向くように配置されている。湾曲部61は、X軸の負の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きを法線とし、原点Oを通る平面S6上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の負の向き側、かつ、Z軸の負の向き側に形成されている。
また、図18に示すデバイス3Cでは、直状部31は、X軸の負の向き、Y軸の正の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きに向くように配置されている。湾曲部61は、X軸の正の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きを法線とし、原点Oを通る平面S7上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の負の向き側、かつ、Z軸の正の向き側に形成されている。
デバイス3B、3Cのいずれの場合であっても、直状部31に対して溝部62がY軸の負の向き側に配置されているため、前述のデバイス3、3Aと同様の手順を行うことで、鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
【0038】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図19から図27を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図19および図20に示すように、本実施形態のデバイス4は、前記第3実施形態のデバイス3に対して直状部31に湾曲部61が接続されている向きのみが異なる。
湾曲部61は、溝部62が直状部31に対するY軸の正の向き側に形成されるように、XY平面である基準平面S1上に配置されている。
【0039】
次に、このように構成されたデバイス4の使用時の動作について説明する。
この動作は、前記第1実施形態のデバイス1を用いた場合と、鉤状部材60を組織Tから浮いた状態に保持するところまで同一なので、それ以降の手順について説明する。
なお、縫合糸70は湾曲形状に形成されているため、裂傷部T1を囲うように縫合針40を通したときに、縫合糸70により規定されるYZ平面に対して、直状部31はX軸の正の向き側に延びるように、すなわちYZ平面である湾曲基準平面S2に直交するように配置される。溝部62は、直状部31に対するY軸の正の向き側に配置される。
【0040】
術者は、縫合針40を把持した把持鉗子Wを移動させ、図21に示すように、鉤状部材60の溝部62に縫合糸70を組織T側から係合させる。このとき、縫合糸70の曲がり部70bに示されるように、前述の曲がり部70aに比べて縫合糸70の曲率半径が比較的大きくなる(大きいループを形成する)ように縫合糸70を曲げる。
鉤状部材60に縫合糸70を係合させた状態で、把持鉗子WをY軸の正の向き側に移動させると、図22に示すように縫合糸70のループの曲率半径が大きくなり、鉤状部材60がZ軸回りに方向E1に約90度回転する。
縫合針40をさらに裂傷部T1から離間するように引くと、図23に示すように、組織Tに鉤状部材60が当接し、裂傷部T1の周辺の組織Tが縫合糸70により緊縛され、裂傷部T1の開口が閉じる。
これ以降の動作は、前記デバイス1を用いた場合と同様なので、説明を省略する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のデバイス4によれば、前記実施形態のデバイス3と同様の効果を奏することができる。
【0042】
なお、本実施形態のデバイス4を、図24に示すデバイス4Aのように変形させてもよい。
デバイス4Aでは、縫合糸70により規定されるYZ平面に対して、直状部31はX軸の負の向きに延びている。湾曲部61は、略U字状に形成されて基準平面S1上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の正の向き側に形成されている。
このように構成されたデバイス4Aによれば、鉤状部材60に縫合糸70を係合させた状態で把持鉗子WをY軸の正の向き側に移動させると、鉤状部材60がZ軸回りに方向E2に約90度回転する。
これ以外は、本実施形態のデバイス4と同様の手順を行うことで、鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
【0043】
図25に示すデバイス4Bでは、直状部31は、X軸の正の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の負の向きの間の向きに向くように配置されている。湾曲部61は、
X軸の正の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きを法線とし、原点Oを通る平面S8上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の正の向き側、かつ、X軸の正の向き側に形成されている。
図26に示すデバイス4Cでは、直状部31は、X軸の負の向き、Y軸の負の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きに向くように配置されている。湾曲部61は、
X軸の正の向き、Y軸の正の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きを法線とし、原点Oを通る平面S9上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の正の向き側に形成されている。
そして、図27に示すデバイス4Dでは、直状部31は、X軸の正の向き、Y軸の正の向き、およびZ軸の負の向きの間の向きに向くように配置されている。湾曲部61は、X軸の正の向き、Y軸の正の向き、およびZ軸の正の向きの間の向きを法線とし、原点Oを通る平面上に配置されている。溝部62は、直状部31に対するY軸の正の向き側、かつ、X軸の正の向き側に形成されている。
デバイス4B、4C、4Dのいずれの場合であっても、前述のデバイス4、4Aと同様の手順を行うことで、鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
【0044】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図28から図32を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図28および図29に示すように、本実施形態のデバイス5は、前記第3実施形態のデバイス3に対して縫合糸70の一端71に鉤状部材60が接続されている向きのみが異なる。
直状部31は、基準線L1に直交するとともに、YZ平面となる湾曲基準平面S2に平行なY軸の正の向きに沿って延びている。すなわち、この実施形態では、直状部31は、基準線L1を含みYZ平面に直交するZX平面(配置基準平面)より縫合糸70の中間部側、すなわち、Y軸の正の向き側に延びている。
湾曲部61は、溝部62が直状部31に対するX軸の正の向き側に形成されるように、XY平面である基準平面S1上に配置されている。
【0045】
以上のように構成されたデバイス5は、縫合糸70を組織T内に通して鉤状部材60を組織Tから浮いた状態に保持すると、図30に示すように配置される。
縫合糸70によりループを形成して湾曲部61と組織Tとの間に縫合糸70を配置した状態から縫合糸70の位置を保持している力を弱めると、縫合糸70の弾性復元力によりループが広がり、湾曲部61の溝部62に縫合糸70が係合する。
これ以降は、前述の第3実施形態で図14以下で説明される手順と同様にして、縫合糸70で組織Tを結紮する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のデバイス5によれば、組織Tを縫合する際に鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
さらに、縫合糸70の一端71に対するY軸の正の向き側に溝部62が配置されるとともに、溝部62が縫合糸70の一端71側に開口しているため、縫合糸70の弾性復元力を利用して溝部62に縫合糸70を容易に係合させることができる。
また、縫合糸70の弾性復元力により縫合糸70が溝部62の内周面に押し付けられるため、溝部62に係合した縫合糸70を溝部62から外れにくくすることができる。
【0047】
本実施形態のデバイス5は、その形状を様々に変形させることができる。
直状部31がY軸の正の向きに沿って延びていれば、湾曲部61が配置される向きは特に限定されない。例えば、図31に示すデバイス5Aのように、湾曲部61が基準平面S1上に配置されるとともに、溝部62が直状部31に対するX軸の負の向き側に形成されていてもよい。また、図32に示すデバイス5Bのように、湾曲部61がYZ平面上に配置されるとともに、溝部62が直状部31に対するZ軸の正の向き側に形成されていてもよい。
また、直状部31は、Y軸の正の向きに沿って延びていなくても、ZX平面よりY軸の正の向き側に延びていればよい。
【0048】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図33から図37を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図33および図34に示すように、本実施形態のデバイス6は、前記第3実施形態の変形例におけるデバイス3Aに対して縫合糸70の一端71に鉤状部材60が接続されている向きのみが異なる。
直状部31は、Y軸の負の向きに沿って、すなわち、縫合糸70の中間部から離間する向きに延びている。
湾曲部61は、溝部62が直状部31に対するX軸の正の向き側に形成されるように、基準平面S1上に配置されている。
【0049】
以上のように構成されたデバイス6は、縫合糸70を組織T内に通して鉤状部材60を組織Tから浮いた状態に保持すると、図35のように配置される。
縫合糸70が組織Tから突出した場所から縫合糸70を湾曲部61側に移動させることで、湾曲部61の溝部62に縫合糸70を係合させる。
湾曲部61の溝部62に縫合糸70を係合させつつ、縫合糸70を組織Tから突出した場所を中心に方向E6に回転させると、鉤状部材60がZ軸回りに方向E1に約180度回転して図22に示す状態になる。
これ以降は、前述の第4実施形態で図23で説明される手順と同様にして、縫合糸70で組織Tを結紮する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のデバイス6によれば、組織Tを縫合する際に鉤状部材60に縫合糸70を容易に係合させることができる。
さらに、組織Tから突出させた縫合糸70を湾曲部61側に移動させることで、湾曲部61の溝部62に縫合糸70を容易に係合させることができる。
【0051】
本実施形態のデバイス6は、その形状を様々に変形させることができる。
直状部31がY軸の負の向きに沿って延びていれば、湾曲部61が配置される向きは特に限定されない。例えば、図36に示すデバイス6Aのように、湾曲部61が基準平面S1上に配置されるとともに、溝部62が直状部31に対するX軸の負の向き側に形成されていてもよい。また、図37に示すデバイス6Bのように、湾曲部61がYZ平面上に配置されるとともに、溝部62が直状部31に対するZ軸の正の向き側に形成されていてもよい。
また、直状部31は、Y軸の負の向きに沿って延びていなくても、ZX平面よりY軸の負の向き側に延びていればよい。
【0052】
以上、本発明の第1実施形態から第6実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態から第6実施形態では、デバイスに縫合針40は備えられなくてもよい。この例として、前述の実施形態のデバイス4において縫合針40を備えない構成にした図38に示すデバイス4Eを用いて、血管(組織)T10を縫合する場合で説明する。
【0053】
術者は、縫合糸70の一端71側を把持鉗子Wで把持し、血管T10を囲うように縫合糸70を配置する。縫合糸70は自然状態で湾曲するように形成されているため、血管T10を囲うように縫合糸70を容易に配置することができる。
また、縫合糸70が湾曲する湾曲基準平面(不図示)に対して直状部31は直交する向きに延びているため、直状部31は血管T10とほぼ平行になるように配置される。なお、この例では、鉤状部材60の溝部62は、直状部31より縫合糸70の他端72側に配置される。
【0054】
次に、図39に示すように、把持鉗子Wにより縫合糸70の一端71側の位置を保持した状態で、縫合糸70の他端72側を別の把持鉗子W2で把持する。直状部31の縫合糸70に接続された側の端部に縫合糸70の中間部を当接させ、縫合糸70の中間部を直状部31に沿って縫合糸70の一端71から離間するように移動させることで、溝部62に縫合糸70を係合させる。
把持鉗子Wによる把持を解除し、鉤状部材60に縫合糸70を係合させた状態で把持鉗子W2を血管T10から離間するように引くことで、図40に示すように鉤状部材60がZ軸回りに約90度回転する。さらに、把持鉗子W2を引くことで、血管T10が縫合糸70により緊縛される。
湾曲部62をカシめて縫合糸70に鉤状部材60を固定し、血管T10を結紮する。
【0055】
前記第3実施形態および第4実施形態では、直状部31はYZ平面に直交する向きに延びているとした。しかし、直状部31が延びる向きはこれに限定されず、YZ平面に交差する向きに延びているとしてもよい。
前記第3実施形態から第6実施形態では、縫合糸70は中心角で約180度湾曲するように形成した。しかし、縫合糸70における湾曲する部分の中心角はこの限りでなく、0度より大きく360度より小さければ何度でもよい。
【0056】
前記第1実施形態から第6実施形態では、ワイヤーを曲げ加工することで鉤状部材を形成するとしたが、ステンレススチールで形成したブロックをレーザー加工やワイヤーカット加工や機械加工によって溝部などを形成することで、鉤状部材を構成してもよい。
また、前記第1実施形態から第6実施形態では、鉤状部材に直状部を有しているものとしたが、直状部でなく、例えば波状部であっても良い。さらには直状部が無くてもよい。この場合、縫合糸の一端は溝部の基端部に接続される。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B、2、3、3A、3B、3C、4、4A、4B、4C、4D、4E、5、5A、5B、6、6A、6B デバイス(組織結紮デバイス)
20、70 縫合糸
21、71 一端
22、72 他端
30 鉤状部材
31 直状部
33 溝部
40 縫合針
62a 底部
62b 開口
L1 基準線
S2 湾曲基準平面
T 組織
T10 血管(組織)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を結紮するための組織結紮デバイスであって、
弾性復元力を有する縫合糸と、
前記縫合糸の一端に接続され、前記縫合糸の導出方向とは交差する方向で、かつ前記一端に対して前記縫合糸の導出方向とは反対の方向に配置された溝部を有する鉤状部材と、
を備えたことを特徴とする組織結紮デバイス。
【請求項2】
前記縫合糸の少なくとも一部は、自然状態で湾曲基準平面上で湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。
【請求項3】
前記溝部の底部から前記溝部の開口に向かう向きは、前記湾曲基準平面に交差する向きに向いていることを特徴とする請求項2に記載の組織結紮デバイス。
【請求項4】
前記溝部が、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線を含み前記湾曲基準平面に直交する配置基準平面より前記縫合糸の中間部側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項5】
前記溝部が、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線を含み前記湾曲基準平面に直交する配置基準平面より前記縫合糸の中間部から離間する側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項6】
前記鉤状部材は、前記縫合糸の一端に端部が接続され直線状に延びる直状部を有し、
前記溝部は、前記直状部における前記縫合糸が接続された端部とは反対側の端部に設けられ、
前記直状部は、前記縫合糸の一端における前記縫合糸の中心軸線である基準線に交差する向きに延びていることを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。
【請求項7】
前記溝部の底部から前記溝部の開口に向かう向きが、前記直状部に略平行となるとともに前記直状部における前記縫合糸が接続された端部側に向き、
前記溝部の内壁面は前記直状部の外周面に連なっていることを特徴とする請求項6に記載の組織結紮デバイス。
【請求項8】
前記縫合糸の他端に接続された縫合針を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2013−94409(P2013−94409A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239732(P2011−239732)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】