説明

結晶切断装置

【目的】製品に傷をつけることなく、生産性の高い結晶切断装置の提供。
【構成】マルチワイヤソーのスライスベースに、スリットを設け、結晶切断後そこから洗浄液を出すことにより、ウエハ間の砥粒を完全に排出する結晶切断装置。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は結晶切断装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりGaP等の化合物半導物単結晶や水晶などを、薄板状(ウエハ)に切断する装置として、ワイヤを用いた切断装置が使用されている。
【0003】
これは、ワイヤ(ピアノ線)を多溝を有する滑車に多数回巻き付け、往復運動させる。これに加工物を一定荷重で押し当てて、さらに研磨砥粒を含むスラリーをかけることにより、加工物を切断していく装置であり、一般にマルチワイヤソーと称されている。
【0004】
この装置の特徴は脆い材料でも薄く、しかも一度に多数枚を切断できることである。
【0005】
図5はこの装置の主要な部分の斜視図である。ワイヤ6は、ワイヤ繰り出し装置(図示せず)から繰り出され3個ないし4個の多溝滑車5に、らせん状に多数回巻かれたのち、巻取り装置(図示せず)に巻かれる。切断を完了すると加工物1を切断時とは逆の方向に送り、ワイヤ6を加工物1から抜き、加工物1´を取り出す。
【0006】
2はスライスベースである。切断は図6に示す様にスライスベース2の途中まで行ない、切断後の加工物(薄板)1´を保持する役目を待つ。材質はガラス、セラミック、カーボン等が使用される。
【0007】
3は、加工物1及びスライスベース2を、装置に取付けるための治具である。
加工物1、スラススベース2、治具3は互いに接着剤で固定される。
【0008】
ところで、従来のこの結晶切断装置は、加工物1から、ワイヤ6を抜く際、化合物半導体等の比較的軟かい加工物1の場合、ワイヤ6による傷が発生しやすい欠点があった。この傷は目視にてもはっきり認められ、製品の価値を著しく低下させ、最悪の場合は、割れ不良となり、歩留を低下させる。
【0009】
これは、加工物1の切断溝の間に、研磨砥粒4が残っているのと薄板1´同士がスラリーの表面張力により吸着し、これを剥すような形でワイヤ6を抜くと吸着力により、研磨砥粒4の付着したワイヤ6が加工物1´に押し当てられ、傷を与えるものである。
【0010】
これを防ぐためには、切断完了時にワイヤ6を切り、ワイヤ6を横方向に抜く方法があるが、ワイヤ6を切るため、連続作業ができず、生産性が低くなる。
【0011】
【考案が解決しようとする課題】
本考案の目的は、前記した従来技術の欠点を解消し、傷を発生させることなく、ワイヤーを抜き、製品の価値を高め、またマルチワイヤソーの生産性を高めることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち本考案の要旨は、加工物を固定する治具の上に洗浄液供給口を設けておき、結晶切断後そこから洗浄液を出すことにより、薄板の間の砥粒を完全に排出する結晶切断装置にある。
【0013】
【実施例】
本考案結晶切断装置の一実施例を図1に示す。これは、加工物1、スライスベース7、治具8の部分であって、他の部分である溝付ローラ等は従来と変わらないため省略してある。(従来例の図5参照)
スライスベース7と治具8にはそれぞれ洗浄液供給口としてのスリットと穴があり、外部のポンプPとホースでつながれている。加工終了時ポンプから洗浄液を流し込むことにより、薄板の間に残っている砥粒を洗い出す。
【0014】
図3は治具8でありポンプPと継ぐホースを接続するコネクター10が付いており、ここからスライスベース7の方に洗浄液を流すための横穴と縦穴があいている。縦穴はスリット状のものでもよい。
【0015】
図2はスライスベース7である。中央にスリット11があけてあり、この中を洗浄液が流れる。スリット11と治具8の縦穴の位置は、互いに接着した時に同じ位置となる。
【0016】
加工前に、これらの治具8、スライスベース7、加工物1を接着する。なお、スリット11が接着剤で埋まらぬよう、スリット11付近の接着剤を少なくするなどの注意が必要である。
【0017】
加工完了時には、洗浄液9を注入することにより薄板1´の間に残った砥粒4を排出することができる。
【0018】
図4は洗浄液9の流れを示す断面図である。
【0019】
【考案の効果】
以上説明して通り本考案装置によれば、外から洗浄した場合には完全に洗浄されずに残る薄板の間の砥粒を、内から洗浄することにより、ほぼ完全に排出、洗浄できる。
【0020】
これにより、薄板に傷つけることなく、容易にワイヤを抜くことができる。この結果、薄板の割れや不良等を防止し、歩留を向上することができる。また、表面に傷のない商品価値が高い薄板が切断できるものであり、その実用的価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案切断装置の一実施例を示す加工部の斜視説明図。
【図2】本考案に用いられるスライスベースの一実施例を示す斜視説明図。
【図3】本考案に用いられる治具の一実施例を示す斜視説明図。
【図4】本考案装置を用いて切断したウエハ部の切断完了時の断面説明図。
【図5】従来の切断装置の一例を示す斜視説明図。
【図6】従来の切断装置で切断完了した時の加工物部分の断面説明図。
【符号の説明】
1 加工物
1´ 薄板(切断完了後の加工物)
2 スライスベース
3 治具
4 砥粒
5 多溝滑車
6 ワイヤ
7 スライスベース
8 治具
9 洗浄液
10 コネクタ
11 スリット

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】半導体結晶を治具の上に取り付けると共に、その上部より多溝滑車に張渡されて連続的に移動するワイヤを研磨液を供給しながら前記半導体結晶に押当てて複数枚のウエハに切断する結晶切断装置において結晶切断完了後に複数枚のウエハ間に洗浄液を流すための洗浄液供給口を治具に設けて構成されたことを特徴とする結晶切断装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】実開平5−11439
【公開日】平成5年(1993)2月12日
【考案の名称】結晶切断装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−58132
【出願日】平成3年(1991)7月24日
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)