説明

絞り装置

【課題】EC素子で構成される絞り装置において、光漏れを防止する絞り装置を提供する。
【解決手段】第1の部材11のEC素子13a〜13dの間に形成される着色不能領域16a〜16cの背面に、第2の部材12のEC素子14a〜14cを配置し、第1の部材11で隣り合うEC素子を着色する場合に、隣り合うEC素子の間に形成される着色不能領域の背面に位置する第2の部材12のEC素子を着色させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子に入射する光量を調整するために、物性素子における光の透過率を制御するものが特許文献1に開示されている。特許文献1では、物性素子として、例えばエレクトロクロミック(EC)素子が用いられている。そして、この物性素子を同心円状の複数の領域に配置し、各領域を独立に制御することで、透過率を制御している。
【0003】
また、EC素子をカメラの絞りに使用する場合に、2つのEC材料を用いたものが特許文献2に開示されている。特許文献2では、2つのEC材料を対向させて可視光線の全域にわたって光を遮断している。ここでは、基板に第1のEC材料および第2のEC材料を成膜させ、第1のEC材料が成膜した基板と、第2のEC材料が成膜した基板と、を対向させている。
【特許文献1】特開平6−148593号公報
【特許文献2】特開平5−346594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の発明においては、複数の領域を遮光状態にした場合に、各領域の間に存在する隙間から光が透過するという問題点がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、例えば分割した各領域の間から光が漏れることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、絞り装置において、複数の第1のエレクトロクロミック素子によって構成され、複数の第1のエレクトロクロミック素子の着色、消色がそれぞれ独立して制御されることで、撮像素子へ入射する光量を調整する絞り手段と、光軸方向において絞り手段に積層され、絞り手段において隣り合う第1のエレクトロクロミック素子間に生じる着色不能領域と光軸方向で隣り合う複数の第2のエレクトロクロミック素子によって構成され、第2のエレクトロクロミック素子の着色、消色がそれぞれ独立して制御されることで、着色不能領域を通る光を遮光可能とする遮光手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第1の層状部材と第2の層状部材を備え、第1の層状部材と第2の層状部材が所定の軸に沿って積層された絞り装置であって、第1の層状部材は、第1の着色領域と第1の着色不能領域が隣接して形成され、第2の層状部材は、第2の着色領域と第2の着色不能領域が隣接して形成され、第1の着色領域と第2の着色領域は、エレクトロクロミック素子で構成され、所定の軸方向から見たときに、第2の着色領域と第1の着色不能領域が重なっている領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、遮光手段における第2のエレクトロクロミック素子を着色させることで、絞り手段における着色不能領域を通る光を遮光することができる。よって、本発明によれば、分割した各領域の間から光が漏れることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この実施形態の絞り装置が使用されるデジタルスチルカメラについて図1を用いて説明する。図1はデジタルスチルカメラの概略構成図である。なお、ここでは絞り装置をデジタルスチルカメラに使用した場合について説明するが、これに限られることはなく、その他の撮像装置にも使用することができる。
【0010】
デジタルスチルカメラは、撮像素子1と、レンズ2a、2bと、絞り装置3と、シャッター5と、コントローラ10と、を備える。ここで、撮像素子1は被写体の像が結像される位置に配置されている。撮像素子1は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。レンズ2a、2bは、被写体の像を撮像素子1の撮像面に結像させる。絞り装置3は絞り手段であって、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を調整する。シャッター5は、レリーズボタン4の操作に応じて開閉動作し、撮像素子1の撮像面への露光動作を行う。コントローラ10は、絞り装置3やシャッター5の動作を制御する。
【0011】
絞り装置3について図2、図3、図4を用いて説明する。絞り装置3は第1の部材(絞り手段)11と、第2の部材(遮光手段)12と、を光軸方向に積層して構成する。第1の部材及び第2の部材は、いずれも層状の部材である。図2は第1の部材11を示し、図3は第2の部材12を示す。また、図4は絞り装置3の断面図であり、第1の部材11と第2の部材12を所定の軸(光軸15)に沿って積層させた状態の断面図である。各々の断面図は、図2、図3における各A−A断面である。なお、図4においては、EC素子の透明基板などの一部を省略する。
【0012】
第1の部材11は、図2に示すように複数のEC素子(第1のエレクトロクロミック素子)13a〜13dから構成され、第2の部材12は、図3に示すように複数のEC素子(第2のエレクトロクロミック素子)14a〜14cから構成される。なお、図2においては、着色領域として4つのEC素子13a〜13dを示している。また、図3においては、着色領域として3つのEC素子14a〜14cを示している。ただし、第1の部材11、及び第2の部材12における着色領域はこれより多い、または少ないEC素子によって形成されてもよい。なお、着色領域では、着色のみが生じるのでなく、消色も生じる。
【0013】
EC素子13a〜13d、14a〜14cの各々は、透明基板、透明電極、EC材料及び電解質で構成されている。透明電極は、透明基板の面上に設けられている。また、EC材料、電解質は、透明基板で挟まれた領域に封入されている。このような構成により、EC素子13a〜13d、14a〜14cでは、電気化学的な酸化還元反応によって着色、消色が生じる。EC素子13a〜13d、14a〜14cは、印加される電圧に基づいて着色濃度、つまり光透過率が変化する。すなわち、EC素子13a〜13d、14a〜14cに印加される電圧を制御することで、EC素子13a〜13d、14a〜14cの着色、消色をそれぞれ独立して切り換えることができる。
【0014】
第1の部材11は、複数のEC素子13a〜13dで形成されている。複数のEC素子13a〜13dは、光軸15を中心として同心円状に配置される。EC素子13aは略円形状であり、EC素子13b〜13dは円環形状である。EC素子13b〜13dは円形状のEC素子13aよりも径方向外側に同心状に配置されている。また、EC素子13a〜13dは、着色不能領域16a〜16cによって分離される。この、着色不能領域16a〜16cは、透明電極、EC材料及び電解質が設けられていない領域である。また、最外周部のEC素子13dの外周端にはスペーサ18を配置する。
【0015】
着色不能領域16a〜16cは、EC素子13a〜13dにおける透明電極のパターンに応じて形成される。ここでは、透明電極のパターンが円形状(13a)あるいは円環形状(13b〜13d)であるので、着色不能領域16a〜16cは円環形状である。また、着色不能領域16a〜16cは、光軸15を中心として、同心円状に設けられる。ここで、第1の部材11では、EC素子13a〜13dの着色、消色をそれぞれ独立して制御する。そのために、この着色不能領域16a〜16cは、隣り合うEC素子13a〜13dの間に配置されている。上述のように、着色不能領域16a〜16cは、透明電極、EC材料及び電解質が設けられていない領域であるので、その領域は着色することができない。よって、EC素子13a〜13dが着色された場合でも、着色不能領域16a〜16cは着色されずに透明である。
【0016】
スペーサ18は、黒色のスペーサであり、遮光作用を有する。
【0017】
第1の部材11では、EC素子13a〜13dを同心円状に配置している。そして、EC素子13a〜13dの着色、消色をそれぞれ独立して制御することで、絞り装置3における開口の大きさを変化させることができる。これにより、光透過量を制御し、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を制御することができる。
【0018】
第2の部材12は、略円環形状のEC素子14a〜14cで形成されている。略円環形状のEC素子14a〜14cは、光軸15を中心として同心円状に配置される。第2の部材12が第1の部材11に積層されることで、絞り装置3を形成される。なお、両者を積層した状態において、第2の部材12と第1の部材11は接触していても、離れていても良い。EC素子14a〜14cは、第1の部材11の着色不能領域16a〜16cと光軸方向において隣り合うように配置される。つまり、絞り装置3においては、着色不能領域16a〜16cの背面(対向する位置)にEC素子14a〜14cが設けられる。
【0019】
なお、第2の部材12のEC素子14aの幅は、着色不能領域16aを少なくとも覆う大きさであるのが好ましい。EC素子14b、14cについても、各々、着色不能領域16b、16cを少なくとも覆う大きさであるのが好ましい。このようにすれば、着色不能領域16a〜16cを通過する光(漏れ光)を遮光できる。
【0020】
このように、この実施形態の絞り装置では、光軸15(所定の軸)方向から見たときに、EC素子(14a〜14c)と着色不能領域(16a〜16c)とが重なっている領域(重複領域)が形成される。重複領域の範囲は、着色不能領域(16a〜16c)と同じであるのが好ましい。ただし、漏れ光の影響が少なければ、重複領域の範囲は、着色不能領域(16a〜16c)より小さくても良い。なお、重複領域の範囲は、着色不能領域(16a〜16c)より大きくても良い。
【0021】
また、上記の重複領域を形成するにあたり、EC素子(14a〜14)の領域は、着色不能領域(16a〜16c)よりも小さくても良い。あるいは、EC素子(14a〜14)の領域は、着色不能領域16a〜16cと等しくても良い。あるいは、EC素子(14a〜14)の領域は、着色不能領域(16a〜16c)よりも大きくても良い。
【0022】
第2の部材12の着色不能領域17a〜17dは、EC素子14a〜14cにおける透明電極のパターンに応じて形成される。ここでは、透明電極のパターンが円環形状であるので、着色不能領域17a〜17dは円形状(17a)あるいは円環形状(17b〜17d)である。また、着色不能領域17a〜17dは、光軸15を中心として同心円状に設けられる。このように、EC素子14a〜14cの透明電極が設けられていない領域が、着色不能領域17a〜17dとなる。着色不能領域17a〜17dは透明であるので、第1の部材11のEC素子13a〜13dを光が透過した場合に、これらの光を遮光することがない。これにより、第1の部材11を通過した光を撮像素子1の撮像面へ入射させることができる。
【0023】
次に絞り装置3の作用について説明する。
【0024】
絞り装置3において、撮像素子1へ入射する光量を制御するには、EC素子を着色させれば良い。例えば第1の部材11のEC素子13c、13dを着色させると、開口は図5のような状態となる。図5(a)は絞り装置3を被写体側から見た場合の正面図であり、図5(b)は絞り装置3のA−A断面図である。なお、図5において着色するEC素子にハッチングを施す。以下の図においても同様とする。
【0025】
第1の部材11のEC素子13c、13dを着色させて、第1の部材11によって開口の大きさを図5のように決めたとする。この場合に、第1の部材11では、EC素子13c、13dとの間に形成された着色不能領域16cを着色することができない。すると、図5に示すような状態では、着色不能領域16cから光が漏れることになる。そして、漏れた光によっても撮像素子1の撮像面が露光する。そのため、所望する撮影条件で撮影を行うことができない場合がある。
【0026】
そこで、この実施形態では、開口を上記の大きさにした場合には、第2の部材12のEC素子14cを着色させる。ここで、図6に示すように、第2の部材12のEC素子14cは第1の部材11の不着色部分16cと隣り合うように配置されている。よって、着色不能領域16cを通る光を、着色したEC素子14cによって遮光することができる。図6(a)は絞り装置3を被写体側から見た場合の正面図であり、図6(b)は絞り装置3のA−A断面図である。このように、本実施形態の絞り装置3によれば、第1の部材11の不着色部分16cから漏れる光を遮光することができる。
【0027】
以上のように、この実施形態の絞り装置3では、第1の部材11によって、絞り装置3の開口の大きさを変更する。その際、第1の部材11では、隣り合うEC素子を着色させるので、着色させたEC素子の間にある着色不能領域を光が透過する。そこで、着色不能領域と光軸方向で隣り合う第2の部材12のEC素子を着色させる。このようにすることによって、この実施形態の絞り装置3では、第1の部材11の着色不能領域を通った光を遮光することができる。その結果、例えば、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を正確に制御することができる。
【0028】
この実施形態では、絞り装置3を第1の部材11と第2の部材12とで構成した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば3枚以上など、複数の部材を積層して絞り装置を構成してもよい。
【0029】
なお、第1の部材のEC素子と第2の部材のEC素子との幅を略同一としても良い。そして、第1の部材と第2の部材とで絞り装置における開口の大きさを制御し、さらに絞り装置から漏れる光を遮断してもよい。
【0030】
また、絞り装置3のEC素子は同心円状に配置することに限られない。例えば、EC素子は四角形や他の多角形、楕円形状、角丸四角形および中抜きの同形状であっても良い。そして、このような形状のEC素子を、光軸を中心として光軸に近い位置から外側へ順次配置してもよい。また、グリッド形状としてもよい。
【0031】
また、この実施形態では、絞り装置3を撮像素子1に入射する光量を調整するためにのみ用いたが、絞り装置3をシャッターとして用いてもよい。
【0032】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0033】
第1の部材11の着色不能領域16a〜16cに、第2の部材12のEC素子14a〜14cをそれぞれ隣り合わせて配置する。そして、着色不能領域16a〜16cをそれぞれ独立して着色、消色させる。これにより、第1の部材11で形成された開口の大きさに応じて、開口の外側を通る光を遮光、または透過させることができる。すなわち、第1の部材11で隣り合うEC素子が着色された場合に、着色されたEC素子の間に形成された着色不能領域から漏れる光を、第2の部材12のEC素子によって遮光することができる。その結果、例えば、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を正確に制御することができる。
【0034】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の絞り装置を用いたデジタルスチルカメラを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態の第1の部材を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態の第2の部材を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態の絞り装置の概略断面図である。
【図5】本発明の絞り装置における絞り状態を説明する概略図であり、(a)被写体側から見た正面図であり、(b)断面図である。
【図6】本発明の絞り装置における絞り状態を説明する概略図であり、(a)被写体側から見た正面図であり、(b)断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 撮像素子
3 絞り装置
11 第1の部材(絞り手段)
12 第2の部材(遮光手段)
13a〜13d EC素子(第1のエレクトロクロミック素子)
14a〜14c EC素子(第2のエレクトロクロミック素子)
15 光軸
16a〜16c 着色不能領域
17a〜17d 着色不能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1のエレクトロクロミック素子によって構成され、前記複数の第1のエレクトロクロミック素子の着色、消色がそれぞれ独立して制御されることで、撮像素子へ入射する光量を調整する絞り手段と、
光軸方向において前記絞り手段に積層され、前記絞り手段において隣り合う第1のエレクトロクロミック素子間に生じる着色不能領域と前記光軸方向で隣り合う複数の第2のエレクトロクロミック素子によって構成され、前記第2のエレクトロクロミック素子の着色、消色がそれぞれ独立して制御されることで、前記着色不能領域を通る光を遮光可能とする遮光手段と、を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記光遮断手段は、前記絞り手段において隣り合う第1のエレクトロクロミック素子が着色した場合に、着色した前記第1のエレクトロクロミック素子の間に生じる前記着色不能領域と前記光軸方向で隣り合う前記第2のエレクトロクロミック素子が着色されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
第1の層状部材と第2の層状部材を備え、該第1の層状部材と該第2の層状部材が所定の軸に沿って積層された絞り装置であって、
前記第1の層状部材は、第1の着色領域と第1の着色不能領域が隣接して形成され、
前記第2の層状部材は、第2の着色領域と第2の着色不能領域が隣接して形成され、
前記第1の着色領域と前記第2の着色領域は、エレクトロクロミック素子で構成され、
前記所定の軸方向から見たときに、前記第2の着色領域と前記第1の着色不能領域が重なっている領域を有することを特徴とする絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−116258(P2009−116258A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292124(P2007−292124)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】