説明

給湯装置

【課題】貯湯タンク内および循環回路内に滞留する滞留水を確実に上水に置換する給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2の下部と上部とを循環可能に接続し湯水を循環させる循環ポンプ20を有した循環回路17と、貯湯タンク2下部に接続され上水を供給する給水管7と、貯湯タンク2上部からの湯水を浴槽6へ供給する湯張り管13と、湯張り管13の開閉を行う開閉手段14と、浴槽6へ供給される湯水の流量を検出する流量検出手段15と、開閉手段14を開とし貯湯タンク2内の湯水を浴槽6に供給すると共に、給水管7から貯湯タンク2内に上水を供給し、貯湯タンク2内を上水に置換する上水置換運転を行う制御手段23とを備え、制御手段23は上水置換運転時に、流量検出手段15での検出流量を積算して算出した出湯量が貯湯タンク2容量より少ない予め設定された所定出湯量に達したと判断したら、循環ポンプ20を所定時間駆動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプユニットで沸き上げた湯水を貯湯する貯湯タンクを有するものにおいて、貯湯タンクとヒートポンプユニットとを接続する循環回路内および貯湯タンク内に滞留する湯水を排水し上水に置換する給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の給湯装置においては、図3に示すようなものがあった。101は湯水を貯湯する貯湯タンク、102は貯湯タンク101内の湯水を加熱するヒートポンプユニット、103は貯湯タンク101の下部と上部とを循環可能に接続した循環回路、104は循環回路103に設けられ湯水を循環させる循環ポンプ、105は貯湯タンク101の下部に接続し貯湯タンク101に上水を供給する給水管、106は貯湯タンク101上部から出湯された湯水を浴槽107へ供給する湯張り管、108は湯張り管106に設けられ湯張り管106の開閉を行う湯張り弁、109湯張り管106に設けられ浴槽107へ供給される湯水の流量を検出する流量センサ、110は各種センサの入力を受けて各アクチュエータの駆動を制御する制御手段、111はこの給湯装置を遠隔操作するリモコンである。
【0003】
前記リモコン111には、上水置換スイッチ112が設けられ、この上水置換スイッチ112が操作されると、制御手段110は、湯張り弁108を開とし貯湯タンク101上部から出湯した湯水を湯張り管106を介して浴槽107に供給すると共に、給水管105から水圧により貯湯タンク101内および循環回路103内に上水を供給し、貯湯タンク101内および循環回路103内に滞留する湯水を上水に置換する上水置換運転を行うものであり、出張や旅行等で長期間留守にしていて、その期間中に貯湯タンク101内および循環回路103内に滞留する水が古い水になったとしても、上水置換スイッチ112を操作することで、それまでの滞留水を排水すると共に新鮮な上水に入れ替えることができ、給湯等に使用する湯水を衛生的に保つことができるものであった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−39616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この従来のものは、前記上水置換運転により、上水の水圧によって貯湯タンク101の下部から上部にかけて滞留された湯水を押し出すと共に、循環回路103に滞留する湯水を押し出すものであるが、循環回路103には循環ポンプ104のように通水の妨げとなり圧力損失が増加するものが設けられ、また、この種の給湯装置は各設置箇所により設置の仕方が異なり、例えば、ヒートポンプユニット102のみ高所に配置された場合や、貯湯タンク101とヒートポンプユニット102との間の循環回路103の配管長が長い場合というように、配管状況によっては循環回路103の圧力損失が大きくなる場合があり、そのような場合に、前記上水置換運転を行った時、循環回路103に滞留する湯水を上水の水圧によって押し出すことができない、または少量しか押し出せない可能性があり、貯湯タンク101内に滞留していた湯水は全て上水に置換されるが、循環回路103内に滞留する湯水は上水への置換が行われずに残留し、給湯等に使用する湯水を衛生的に保つことができないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクの下部と上部とを循環可能に接続し湯水を循環させる循環ポンプを有した循環回路と、該循環回路途中に設けられ前記貯湯タンク内の湯水を循環加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク下部に接続され前記貯湯タンクに上水を供給する給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯される湯水を浴槽へ供給する湯張り管と、該湯張り管の開閉を行う開閉手段と、前記浴槽へ供給される湯水の流量を検出する流量検出手段と、前記開閉手段を開として前記貯湯タンク内の湯水を前記浴槽に供給すると共に、前記給水管から前記貯湯タンク内に上水を供給し、前記貯湯タンク内を上水に置換する上水置換運転を行う制御手段とを備えた給湯装置において、前記制御手段は、前記上水置換運転時に、前記流量検出手段で検出された流量を積算して出湯量を算出し、その出湯量が前記貯湯タンク容量より少ない予め設定された所定出湯量に達したと判断したら、前記循環ポンプを所定時間駆動させるものとした。
【発明の効果】
【0007】
この発明の請求項1によれば、制御手段は、上水置換運転時に、流量検出手段で検出された流量を積算して出湯量を算出し、その出湯量が貯湯タンク容量より少ない予め設定した所定出湯量に達したと判断したら、貯湯タンク内の下部が上水で満たされたとみなし、その状態から循環ポンプを所定時間駆動させるようにしたので、循環ポンプを駆動させる時には、貯湯タンクから循環回路に確実に上水が循環され、循環回路内に滞留している滞留水を確実に且つ無駄なく置換することができ、上水置換運転により貯湯タンク内および循環回路内の滞留水を確実に上水に置換することができ衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の上水置換運転の動作を示すフローチャート。
【図3】従来の給湯装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この発明の一実施形態の給湯装置を図1に基づき説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、5はこの給湯装置を遠隔操作するリモコン、6は浴槽である。
【0010】
7は貯湯タンク2下部、ここでは貯湯タンク2底部に接続され貯湯タンク2に上水を給水する給水管、8は貯湯タンク2上部に接続され貯湯されている温水を出湯する出湯管、9は前記給水管7から分岐された給水バイパス管、10は前記出湯管8からの出湯と給水バイパス管9からの給水とを設定温度になるように内部の弁体(図示せず)の弁開度を調整して混合する混合弁、11は混合弁10で混合された湯を給湯栓4に給湯する給湯管、12は給湯管11に設けられ混合弁10で混合された湯の温度を検出する給湯温度センサである。
【0011】
13は給湯管11から分岐され貯湯タンク2上部から出湯される湯水を浴槽6へ供給する湯張り管で、この湯張り管13には、その開閉動作により浴槽6への湯水の供給の開始/停止を行う開閉手段としての湯張り弁14と、浴槽6へ供給される湯水の流量を検出する流量検出手段としての流量センサ15と、浴槽6の浴槽水が逆流するのを防止する二重に配設した逆止弁16とが設けられているものである。
【0012】
17は貯湯タンク2とヒートポンプユニット3とを循環可能に接続する循環回路で、この循環回路17は、貯湯タンク2下部とヒートポンプユニット3とを結び貯湯タンク2内の湯水をヒートポンプユニット3に供給する往き管18と、ヒートポンプユニット3と貯湯タンク2上部とを結びヒートポンプユニット3で沸き上げられた湯を貯湯タンク2上部に戻す戻り管19とから構成され、また、20は循環回路17に設けられ貯湯タンク2内の湯水をヒートポンプユニット3に循環させる循環ポンプである。
【0013】
21は戻り管19の途中から分岐したバイパス管で、このバイパス管21はその一端が戻り管19の途中に流路切替手段としてのバイパス切替弁22を介して接続され、他端が給水管7に接続されており、給水管7による給水経路の一部を共用して貯湯タンク2下部に連通しているものである。また、バイパス切替弁22は、戻り管19同士を連通させ循環回路17を形成するように切り替えた状態、すなわち貯湯タンク2の上部側に切り替えた状態と、ヒートポンプユニット3からバイパス切替弁22に至る戻り管19とバイパス管21とを連通させ、貯湯タンク2下部から取り出した湯水を、往き管18→ヒートポンプユニット3→戻り管19→バイパス管21の順に循環させ、貯湯タンク2下部に戻すように切り替えた状態、すなわち貯湯タンク2下部側に切り替えた状態とに設定可能である。
【0014】
23は貯湯タンクユニット1内の給湯温度センサ12や流量センサ15等の各センサの出力、またはリモコン5からの指示を受けて混合弁10や湯張り弁14等の各アクチュエータの作動を制御する制御手段としての貯湯制御部である。
【0015】
前記ヒートポンプユニット3は、冷媒を圧縮する回転数可変の圧縮機24と、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換加熱する水冷媒熱交換器25と、水冷媒熱交換器25通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての膨張弁26と、膨張弁26からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器27とを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプ回路28と、空気熱交換器27に送風する室外ファン29と、前記循環ポンプ20と、ヒートポンプユニット3を制御し、貯湯制御部23と通信可能に接続されたヒーポン制御部30とを備えており、ヒートポンプ回路28内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0016】
前記リモコン5は、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ31と、風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ32と、浴槽6へ風呂設定温度の湯を設定された湯張り量だけ注湯する湯張りスイッチ33と、貯湯タンク2内および循環回路17内に滞留する湯水を上水に置換する上水置換運転を行わせる上水置換スイッチ34とを備えているものである。
【0017】
前記上水置換スイッチ34は、出張や旅行等で長期間留守にしていた場合等に操作するスイッチであり、出張や旅行等で留守にしていた期間中に貯湯タンク2内および循環回路17内に滞留する水が古い水になってしまったとしても、ユーザが上水置換スイッチ34を操作することで、それまで貯湯タンク2内および循環回路17内に滞留していた滞留水を排水すると共に新鮮な上水に入れ替えることができ、給湯等に使用する湯水を衛生的に保つことができるものである。
【0018】
次に、図1に示す一実施形態の給湯装置の特徴的動作である前記上水置換運転について図2のフローチャートを用いて説明する。
【0019】
出張や旅行等で長期間留守にしていた場合であって、帰宅後ユーザによって前記上水置換スイッチ34が操作されると、上水置換運転が開始され、前記貯湯制御部23は、湯張り弁14を開とし(ステップS1)、混合弁10の弁開度を出湯管8側全開として、貯湯タンク2内に滞留する湯水を貯湯タンク2上部から出湯して湯張り管13を介して浴槽6内に供給して排水すると共に、給水管7からの上水が貯湯タンク2内に給水され、貯湯タンク2下部から上部に向かって徐々に上水に置換されていく。
【0020】
この上水置換運転時に、湯張り管13に設けられた流量センサ15によって浴槽6に供給される湯水の流量が検出され、貯湯制御部23は、流量センサ15で検出された流量を積算して出湯量を算出し、その出湯量が予め設定された所定出湯量、すなわち、貯湯タンク2容量全量より少なく且つ貯湯タンク2下部が上水で満たされたとみなせるような、例えば貯湯タンク2容量の半分に相当する出湯量に達したか否か判断し(ステップS2)、出湯量が所定出湯量に達したと判断したら、バイパス切替弁22を戻り管19同士を連通させ循環回路17を形成するように切り替えた状態、すなわち貯湯タンク2の上部側に切り替えて、循環ポンプ20の駆動を開始させ(ステップS3)、循環ポンプ20が駆動を開始してから所定時間が経過したか否か判断する(ステップS4)。ここで、循環ポンプ20が駆動している間、循環回路17内に滞留している湯水は貯湯タンク2上部に送水され、送水された滞留水はすぐさま出湯管8から湯張り管13を介し浴槽6に排水されるものである。なお、前記所定時間は、例えば、予め行った試験により循環回路17内に滞留する湯水が全て上水に置換されるのに十分且つ適当な時間が設定されていればよいものである。
【0021】
そして、貯湯制御部23は、前記ステップS4で所定時間が経過したと判断すると、ヒートポンプユニット3からバイパス切替弁22に至る戻り管19とバイパス管21とを連通させるように切り替えた状態、すなわち貯湯タンク2の下部側に切り替えて、循環ポンプ20の駆動を停止させ(ステップS5)、流量センサ15で検出された流量を積算して算出した出湯量が、貯湯タンク2容量全量と循環回路17から貯湯タンク2内に循環させた水量とを加算した予め設定された水量に達したか否か判断することで、貯湯タンク2内の全量が上水に置換されたか否かを判断し(ステップS6)、貯湯タンク2内の全量が上水に置換されたと判断すると、湯張り弁14を閉(ステップS7)として、上水置換運転を終了するものである。
【0022】
以上説明した上水置換運転において、貯湯制御部23は、流量センサ15で検出した流量を積算して出湯量を算出し、その出湯量が予め設定された所定出湯量、すなわち、貯湯タンク2容量全量より少なく且つ貯湯タンク2下部が上水で満たされたとみなせるような出湯量に達したと判断したら、バイパス切替弁22を戻り管19同士を連通させ循環回路17を形成するように切り替えて、循環ポンプ20を所定時間駆動させるようにしたので、循環ポンプ20を駆動させる時には、給水管7から貯湯タンク2に供給された新鮮な上水が貯湯タンク2下部に貯まった状態で、貯湯タンク2から循環回路17に確実に上水が循環され、循環回路内17に滞留している滞留水を確実に且つ無駄なく置換することができ、さらに、流量センサ15で検出された流量を積算して算出した出湯量が貯湯タンク2容量全量に達したと判断、つまり、貯湯タンク2内の全量が上水に置換されたと判断したら、湯張り弁14を閉として、前記上水置換運転を終了することで、上水置換運転により貯湯タンク2内および循環回路17内の滞留水を確実に上水に置換することができ衛生的である。
【0023】
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、加熱手段としてヒートポンプユニット3、特に水冷媒熱交換器25に貯湯タンク2内の湯水を循環させて加熱するものであったが、加熱手段としては電気ヒータ、灯油やガスを燃料とする燃焼バーナであってもよいものである。
【0024】
また、本実施形態では、前記上水置換運転を行わせる上水置換スイッチ34がリモコン5上に設けられているが、上水置換スイッチ34を設けずに、リモコン5の複数スイッチの同時押し、例えば給湯温度設定スイッチ31と湯張りスイッチ33との同時押しや湯張りスイッチ33の長押し等の特殊操作により上水置換運転が行われるようにしてもよいものである。
【0025】
また、本実施形態では、前記上水置換スイッチ34を操作する事例として、出張や旅行等で長期間留守にしていた場合を示したが、上水置換スイッチ34を操作する事例としては、アパート等の賃貸住宅に居住していた者の退去時の場合であってもよく、その場合、退去する者または管理人が上水置換スイッチ34を操作しておけば、その時に上水置換運転が行われて、貯湯タンク2内および循環回路17内には上水が滞留することとなり、一旦加熱されて冷えた滞留水が貯湯タンク2および循環回路17内に貯まっている状態よりは、次の入居者が入居するまでの期間、少なからず雑菌の繁殖を抑制することができるものである。
【符号の説明】
【0026】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
6 浴槽
7 給水管
13 湯張り管
14 湯張り弁
15 流量センサ
17 循環回路
20 循環ポンプ
23 貯湯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクの下部と上部とを循環可能に接続し湯水を循環させる循環ポンプを有した循環回路と、該循環回路途中に設けられ前記貯湯タンク内の湯水を循環加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク下部に接続され前記貯湯タンクに上水を供給する給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯される湯水を浴槽へ供給する湯張り管と、該湯張り管の開閉を行う開閉手段と、前記浴槽へ供給される湯水の流量を検出する流量検出手段と、前記開閉手段を開として前記貯湯タンク内の湯水を前記浴槽に供給すると共に、前記給水管から前記貯湯タンク内に上水を供給し、前記貯湯タンク内を上水に置換する上水置換運転を行う制御手段とを備えた給湯装置において、前記制御手段は、前記上水置換運転時に、前記流量検出手段で検出された流量を積算して出湯量を算出し、その出湯量が前記貯湯タンク容量より少ない予め設定された所定出湯量に達したと判断したら、前記循環ポンプを所定時間駆動させるようにしたことを特徴とする給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−242093(P2011−242093A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116817(P2010−116817)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】