給紙装置および画像形成装置
【課題】繰り出されるロール紙の種類に応じたバックテンションを付与する際に、構成の複雑化や特別な構成を要することなく既存構成部品により実現することができる構成を備えた給紙装置を提供する。
【解決手段】挟持搬送用ローラの繰り出し方向に順じた正転およびロール紙30を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動モータDMと、駆動モータの出力軸に設けられた駆動ギヤ42の駆動力を、ロール紙の巻芯軸に装着されている従動ギヤ32Aに伝達する回転力伝達機構5として、駆動モータの正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、回転力伝達機構に有する滑り回転手段53のトルク伝達制御を変化させることにより、ロール紙挟持搬送用ローラを用いたロール紙の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする。
【解決手段】挟持搬送用ローラの繰り出し方向に順じた正転およびロール紙30を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動モータDMと、駆動モータの出力軸に設けられた駆動ギヤ42の駆動力を、ロール紙の巻芯軸に装着されている従動ギヤ32Aに伝達する回転力伝達機構5として、駆動モータの正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、回転力伝達機構に有する滑り回転手段53のトルク伝達制御を変化させることにより、ロール紙挟持搬送用ローラを用いたロール紙の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、ロール紙を対象とした繰り出し位置整合機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置においては、たとえば、電子写真方式を用いる画像形成装置の場合、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像が現像装置から供給される現像剤によって可視像処理される。可視像処理された画像は、記録紙などに転写され、定着されることで複写出力とされる。
【0003】
画像形成装置の一つである、インクジェットプリンタでは、A0版やA1版などの大サイズの記録紙への印字処理を行えるものがある。
このような印字処理に用いられる記録紙には、給紙カセットに積載されている場合と違って、所望する長さを繰り出せる利便性からロール紙を用いることが多い。
【0004】
ロール紙を用いた給紙装置の構成としては次の構成が知られている。
つまり、ロール紙を印字部に向けて繰り出し、印字部にて印字処理が行われた後に、印字画像を担持した部分を裁断し、未印字部部分のロール紙をロール紙側に巻き戻すようにした構成である(例えば、特許文献1)。
【0005】
ロール紙を巻き戻す理由の一つには、繰り出し方向における未印字端部を印字部に向け給紙する際の繰り出し開始位置に位置決めし、印字部に対する繰り出し量を割り出す基準とすることが挙げられる。
【0006】
一方、ロール紙は、巻芯の軸方向が搬送方向と直角方向に設定されていないと、レジストローラがロール紙に伝達する力の方向とロール紙の繰り出し方向とが異なった場合にスキューを生じることが知られている(例えば、特許文献2)。このような事態は、ロール紙の装着状態が不適正である場合に発生しやすい。
スキューは、上述した装着状態だけでなく、ロール紙の回転停止時に発生する、慣性回転による搬送方向に沿った弛みによっても発生し、ロール紙の繰り出し時に皺やよじれを生じさせる不具合がある。
【0007】
そこで、スキューの矯正方法としては、上記各特許文献にも開示されているように、ロール紙に対してバックテンションを与える方法が知られている。
つまり、バックテンションは、特許文献1に開示されているように、ロール紙の巻き戻し方向への駆動を搭載部に設けられているロール紙受けコロによって行う場合、ロール紙受けコロの一つに、コイルバネを内蔵したトルクリミッタ構造を設けた構成、あるいは、特許文献2に開示されているように、ロール紙の駆動伝達路中に伝達トルクを変更可能な電気クラッチを設けた構成を用いて得るようになっている。
【0008】
バックテンションの付与によるロール紙のスキュー矯正は、図14に示す原理にて得られる。
図14におけるロール紙Rの下側端部領域は挟持搬送用のレジストローラAとロール紙Rとの間で緊張した張り側の状態であり、上側端部領域は、弛み側の状態である。
【0009】
このようなロール紙Rにおいてロール紙側へのバックテンションが付与されると、レジストローラAによる搬送力は軸方向で均一であり、バックテンションは図中、搬送負荷分布と表示されている状態である。
ロール紙Rに対して実際に有効に作用する有効搬送力は、搬送力とバックテンションとの差として、図中、有効搬送負荷分布と表示されている状態である。
ロール紙Rは、矢印で示すように、弛み側から張り側に向けた回転(図14中、スキュー矯正方向と表示した回転)が生じ、上下両側の端部領域が搬送方向に平行したときにスキューが矯正される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、バックテンションを付与することでロール紙のスキューを矯正できる。しかし、そのために用いられる構成には、ロール紙の繰り出しに用いられる駆動系とは別の構成が必要となる。
【0011】
つまり、特許文献1においては、ロール紙の挟持搬送に用いられるフィードローラの駆動系とは別にロール紙の受けコロに対してバックテンション付与のための構成が必要となり、また特許文献2においても、駆動に用いる部材とは別に電気クラッチという特別な部品が必要となる。
しかも、ロール紙の種類に応じてバックテンションを変化させる必要もあることから、用いる部品の制御や構成が複雑化する虞がある。
また、スキューの発生原因には、ロール紙を戻す際に生じる搬送方向に沿った弛みがある。
【0012】
本発明の目的は、上記従来の給紙装置における問題に鑑み、繰り出されるロール紙の種類に応じたバックテンションを付与する際に、構成の複雑化や特別な構成を要することなく既存構成部品により実現することができる構成を備えた給紙装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ロール媒体を挟持しながら搬送可能なロール媒体挟持搬送用手段によってロール媒体を牽引することにより繰り出すための給紙装置であって、
該挟持搬送用手段の繰り出し方向に順じた正転および前記ロール紙を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動源と、
該駆動源の出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力を、ロール媒体の巻芯軸に装着されている従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、
一方向クラッチにより回転を断接されるクラッチ側ギヤを備えた仲介回転軸が内輪側に、そして外輪側には前記駆動源からの回転を伝達されるギヤが設けられ、両輪間でのトルク発生方向へのトルク伝達制御が可能な滑り回転手段を備え、
前記駆動モータの正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、前記回転力伝達機構に有する滑り回転手段のトルク伝達制御を変化させることにより、前記ロール紙挟持搬送用ローラを用いたロール紙の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする給紙装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロール紙の巻き戻しのために用いられる既存構成部品である駆動モータの回転方向を選択すると共に、無給電(非励磁)状態を選択してロール紙のサイズや残量に基づき切り換えるだけでバックテンションの強さを最適な状態に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る給紙装置を用いる画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置における給紙経路の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る給紙装置に用いられる回転力伝達機構の構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した回転力伝達機構の駆動源に用いられる駆動モータ正転時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図5】図4に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図6】図3に示した回転力伝達機構における駆動モータの無給電時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図7】図6に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図8】図3に示した回転力伝達機構の駆動源に用いられる駆動モータ正転時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図9】図8に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図10】駆動モータの回転制御に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】図10に示した制御部にて設定される駆動モータの回転制御に用いられるロール紙側の慣性力とバックテンションとの関係の図である。
【図12】図10に示した制御部による前記駆動モータの正転、逆転、無給電状態の設定動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】図3に示した回転力伝達機構によるロール紙巻き戻し時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図14】ロール紙のスキュー矯正原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による給紙装置を備えた画像形成装置の模式図である。同図に示されている画像形成装置1は、インクなどの液滴が吐出されることにより印字を行うインクジェット記録装置を対象としているが、本発明では、これに限ることなく、電子写真方式あるいは印刷機なども対象とすることができる。
インクジェット記録装置1の本体内部には、画像形成部2、用紙吸引搬送部3、ロール紙収納部4などが配置されている。
【0017】
画像形成部2は、図示しない両側板にガイドロッド13およびガイドレール14が掛け渡され、これらのガイドロッド13およびガイドレール14にキャリッジ15が矢示A方向に摺動可能に保持されている。
キャリッジ15は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドには図示しないが、各記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが一体的に備えられている。
【0018】
キャリッジ15を移動走査する主走査機構は、次の部材が含まれている。
主走査方向の一方側に配置される駆動モータ21と、駆動モータ21によって回転駆動される駆動プーリ22と、駆動プーリ22に連動可能な従動プーリ23と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に掛け回されたベルト部材24である。なお、従動プーリ23は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ22に対して離れる方向)にテンションが架けられている。
【0019】
ベルト部材24は、キャリッジ15の背面側に設けられているベルト固定部に一部分が保持されて主走査方向(矢示A方向)にキャリッジ15を牽引する。
また、キャリッジ15は、エンコーダシート(図示されず)とキャリッジに設けられているエンコーダセンサ(図示されず)を用いて主走査方向の位置を検知される。エンコーダシートは、キャリッジに設けられているエンコーダセンサによって読み取られる。
【0020】
キャリッジ15における主走査領域のうち、記録領域では、ロール紙30が用紙吸引搬送部3によってキャリッジ15の主走査方向と直交する方向(副走査方向:矢示B方向)に間欠的に搬送される。
【0021】
また、主走査領域のうち一方の端部側領域には、記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構18が配置されている。さらに、主走査方向のキャリッジ移動領域外または、上記主走査領域のうち他方の端部側領域には、記録ヘッドのサブタンクに供給する各色のインクを収容したメインカートリッジ19が記録装置本体1に対して着脱自在に装着される。
【0022】
図中、ロール紙収容部4は給紙手段である。
図2においてロール紙収容部4は、ロール紙(用紙)30がセットされている。しかし、幅方向(矢示A方向)のサイズが異なるロール紙をセットすることも可能である。
ロール紙30は、その紙軸に両側からフランジ31、およびスプール軸32が装着され、図示しない受け部に載置される。
ロール紙30の駆動部には、図3に示す回転力伝達機構5が設けられている。
回転力伝達機構5は、滑り回転手段に相当するトルクリミッタ54を用いてロール紙30にバックテンションを付与しながらロール紙30を給送する。また、ロール紙30を巻き戻すときは、回転力伝達機構5の駆動モータDMを逆転(ロール紙30を巻き戻すときの回転方向とする)させることで、ロール紙30の先端を所定の位置に戻すことができる。
【0023】
図1に示したインクジェット記録装置1に用いられるロール紙30は、ロール紙収容部4から、記録装置本体1の後方を通過して前方に向けて搬送される。
ロール紙30は、ローラ対33に挟持されてレジストローラ34、加圧ローラ35にむけて搬送され、その後ローラ対33の挟持状態が解除され、レジストローラ34,加圧ローラ35によって記録領域に搬送される。
レジストローラ34および加圧ローラ35は、ロール紙30を繰り出す方向およびロール紙収容部に向けて戻す方向にそれぞれ回転することができ、いずれの場合にも、ロール紙30を挟持している。ここで、ロール紙30が記録領域を繰り出し方向に搬送されている状態では、搬送レジストローラ34からロール紙収容部4までのロール紙30は、所定の張力が作用している。
【0024】
キャリッジ15を主走査方向に移動し、レジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35によってロール紙(用紙)30を間欠的に送りながら、記録ヘッドを画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、ロール紙30上に所要の画像が形成される。さらに、画像形成後の用紙は、図示しない切断手段により所定の長さにカットされ、装置本体1の正面側に配置された図示しない排紙トレイへ排出される。
【0025】
図3は、本発明による給紙装置に用いられる駆動部の構成を示す斜視図である。
同図において駆動部には、駆動モータDMと、駆動モータDMの出力軸に設けられている駆動ギヤ42と、ロール紙30の巻芯軸に装着されたスプール軸32に設けられている従動ギヤ32Aと、駆動ギヤ42と従動ギヤ32Aとの間に位置して駆動ギヤ42の駆動力を従動ギヤ32Aに伝達する回転力伝達機構5が含まれている。
駆動モータDMは、ロール紙30を巻き戻すときに回転させる方向である逆転、ロール紙30を巻き戻すときに回転する方向とは逆の方向である正転、そして、無給電(非励磁)のいずれかが選択可能である。
【0026】
回転力伝達機構5には、駆動ギヤ42に噛み合うアイドルギヤ50およびアイドルギヤ50と同軸上に支持されている伝達ギヤ51と、内輪側に仲介回転軸52が、そして外輪側に伝達ギヤ51に噛み合うギヤ(以下、これを滑り回転手段側ギヤともいう)54Aが設けられている滑り回転手段であるトルクリミッタ54と、トルクリミッタ54内の仲介回転軸52に設けられた一方向クラッチ53の出力側に装備されているクラッチ側ギヤ53Aが含まれている。
一方向クラッチ53は、クラッチ側ギヤ53Aがロール紙30を巻き戻す方向へ回転(前述した逆転)すると仲介回転軸52をロックする方向へ回転を付与されるが、仲介回転軸52が滑り回転手段側ギヤ54Aから伝達される回転によって、クラッチ側ギヤ53Aより早く回転した場合に、相対的に空転することができる。
【0027】
伝達ギヤ51を支持する回転軸51Aおよび仲介回転軸52には、駆動モータDMの回転数検知が可能な回転数センサS1およびロール紙の残量を繰り出し履歴により検知可能な残量センサS2が設けられている。
【0028】
以上のような構成において、本実施例では、回転力伝達機構5がロール紙30の巻き戻し動作だけでなく、ローラ対33の挟持状態が解除されたあとのロール紙30(レジストローラ34よりも給紙方向上流側)におけるバックテンションの強さを変更して付与できるようになっている。
まず、ロール紙30の巻き戻し動作について、図13を用いて説明する。
ロール紙30を巻き戻すときは、駆動モータDMを逆転させる。駆動ギヤ42が回転すると、アイドルギヤ50および同軸上の伝達ギヤ51を介してギヤ54Aが回転する。このとき、ギヤ54Aの回転によりクラッチ側ギヤ53Aはギヤ54と同じ方向に回転するので、クラッチ側ギヤ53Aの回転により、アイドルギヤ55,56を介して従動ギヤ32を回転させることで、ロール紙30を巻き戻すことができる。
次に、ロール紙30に与えるバックテンションの強さを強中弱それぞれに設定する構成について図4乃至9を用いて説明する。
【0029】
図4乃至図9は、上述したバックテンションを変更する時の各部材での回転状態を説明するための図である。なお、各図において表示されている矢印は、回転伝達方向および回転速度の大きさ(矢印の長短)を示している。また、図9においては、これ以前に示した図における回転方向が異なる場合を対象として「’」を付けて表示してある。
図4および図5は、第1番目のバックテンション設定時を示している。
図4および図5において、第1番目のバックテンション設定時には、駆動モータDMがクラッチ側ギヤ53Aから伝達されて回転する仲介回転軸51の回転速度よりも高速回転する。
これにより、第1番目のバックテンション設定に関して説明したように、一方向クラッチ53内で仲介回転軸52がクラッチ側ギヤ53Aの回転に関係なくトルクリミッタ54内で設定される回転数によって空転する。
回転伝達機構5では、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力が、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。この結果、ロール紙30には、繰り出しに必要な牽引力に対して従動ギヤ32Aに作用する回転負荷分だけバックテンションが弱い状態で与えられる。
【0030】
第1番目に、バックテンションを弱に設定するときについて説明する。
図4,5に示すように、正転(ロール紙30の巻き戻し時に回転する方向と逆方向)する駆動モータDMからギヤ54Aに伝達される回転数のほうが、ロール紙30を介して従動ギヤ32からクラッチ側ギヤ53に伝達される回転数よりも速くなるようなギヤ比に設定にすることで、ロール紙30に弱いバックテンションを与える。
従動ギヤ32Aからクラッチ側ギヤ53Aに伝達される回転数よりも駆動モータDMから滑り回転手段側ギヤ54Aに伝達される回転数のほうが速くなるようなギヤ比としているため、仲介回転軸52が、回転伝達状態にあるクラッチ側ギヤ53Aとの間に生じた速度差分だけクラッチ側ギヤ53Aよりも速く回転する。
【0031】
一方向クラッチ53は、クラッチ側ギヤ53Aの回転により仲介回転軸52とロックする方向へ回転を付与されるが、仲介回転軸52は滑り回転手段側ギヤ54Aから伝達される回転によって、クラッチ側ギヤ53Aより早く回転しているため、一方向クラッチ53は相対的に空転し、ロックしない。
この結果、回転伝達機構5では、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力が、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。
ロール紙30には、繰り出しに必要な牽引力に対して従動ギヤ32Aに作用する回転負荷分だけバックテンションが弱い状態で与えられる。
【0032】
第2番目に、バックテンションを強に設定するときについて説明する。
図8,9に示すように駆動モータDMが逆転されると、従動ギヤ32Aから回転を伝達されているクラッチ側ギヤ53Aの回転方向と逆方向に仲介回転軸52がトルクリミッタ54を介して回転する。
クラッチ側ギヤ53Aは、従動ギヤ32Aからの回転を受けて仲介回転軸52をロックして連動させるが、同軸上に設けられた滑り回転手段側ギヤ54Aは駆動モータDMにより異なる回転方向に回転するため、トルクリミッタ54内で滑りが生じ、これにより発生した抵抗力がクラッチ側ギヤ53Aを介して従動ギヤ32Aに強いバックテンションを与える。
【0033】
第3番目に、バックテンションを中に設定するときについて説明する。
図6,7に示すように駆動モータDMが無給電(非励磁)状態とされると、従動ギヤ32Aから回転を伝達されているクラッチ側ギヤ53Aが回転し、この回転に応じて一方向クラッチ53の作用により仲介回転軸52が連動しようとする。
さらに、仲介回転軸52と同軸上に設けられたトルクリミッタ54では、内輪に連動して外輪が回転し、滑り回転手段側ギヤ54A、伝達ギヤ51および駆動ギヤ42を回転させる。
このため、クラッチ側ギヤ53Aを回転させる従動ギヤ32には、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力に加えて、駆動モータDMを空転させることによるモータ空転トルクが、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。
これにより、牽引力に対する抵抗力であるバックテンションは、第1番目で得られるバックテンションの強さに対して駆動モータDMの空転トルクを加えた強さ分だけ強くなる。
【0034】
本実施例では、駆動モータDMが非励磁状態において、駆動ギヤ42の回転を可能にするために、駆動モータDMの空転トルクがトルクリミッタ54の外輪と内輪とが相対的に滑るときの回転トルクより低い関係を設定されている。これにより、トルクリミッタ54側の回転により駆動モータDMの駆動ギヤ42が回転されることになる。
【0035】
図10は、駆動モータDMの回転制御、特にバックテンションを切り換えるタイミング制御に用いられる制御部の構成を示すブロック図である。
同図において制御部100は、図11において説明する、ロール紙側の慣性力とロール紙30に与えるバックテンションの強さ、とを関係付けたマップが保存されている記憶素子101を備えて印字制御が可能な制御処理部が用いられる。
制御部100の入力側には、本実施例と関係する構成としてキャリッジセンサCS、残量センサS2(図3参照)、ロール紙のサイズおよび種類を入力可能な操作パネル102が接続され、出力側には駆動モータDMの駆動部103が接続されている。
キャリッジセンサCSは、ロール紙の慣性質量に影響する紙サイズの一つである紙幅を検知する部材である。
【0036】
制御部100では、図11に示す、ロール紙30の慣性力とロール紙30に与えるバックテンションの強さとを関係付けたマップに基づき駆動モータDMの駆動制御が実行される。
図11に示すマップは、キャリッジセンサCSからの情報に応じた紙幅およびロール紙30の残量センサS2からの情報に応じたロール紙30の外径から割り出された慣性質量と、これに応じて弛みが生じないバックテンションの強さとが示されている。なお、慣性質量の大きさは、上述したロール紙30自体の重量に加えて、種類や厚さも影響する。このため、本実施例では、操作パネル102により各種の情報を入力できるようになっている。なお図11において示されている図番は、後で説明するバックテンション設定状態時に用いる図面の番号である。
【0037】
図12は、駆動モータDMの正転、逆転、無給電状態を設定する動作を説明するためのフローチャートである。
この設定動作は、ロール紙30をセットしたとき、印刷ジョブが入力され印刷動作を開始するとき、ロール紙30が切断手段にて切断されたあと次の印刷を開始するため待機位置にロール紙を巻き戻したとき等のタイミングで行う。
例えば、ロール紙30をセットしたとき、印刷ジョブが入力され印刷動作を開始するとき、の場合、ロール紙30は、レジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35を通過して、キャリッジ15の下方まで搬送される。そのとき、残量センサS2の検出結果により、ロール紙30の残量が検知される。さらに、ロール紙30がキャリッジ15の下方に位置しているとき、キャリッジ15を主走査方向に走査しながらキャリッジセンサCSにてロール紙30の幅を検出する(ST1)。
また、ロール紙30が切断手段にて切断されたあと次の印刷を開始するため待機位置にロール紙を巻き戻す場合は、切断されたロール紙30をレジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35付近まで巻き戻す際に、上述のように残量を検知するとともに、キャリッジ15を主走査方向に走査しながらキャリッジセンサCSにてロール紙30の幅を検出する(ST1)。
【0038】
制御部100は、検出されたロール紙30の残量と幅を、メモリ101の慣性力情報(図11)と照合し、慣性力を判定する(ST2)。
次に、制御部100は、判定された慣性力が大であるかを判定する(ST3)。
慣性力が大である場合、さらに操作パネル102で紙種が入力されているか否かを判定する(ST4)。
紙種が入力されていない場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション強を設定し(ST6)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて逆転させる(ST7)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを逆転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを逆転し続けてもよい。
【0039】
一方、ST4で紙種が入力されていた場合、制御部100は、入力された紙主情報からバックテンションの変更が必要であるかどうかを判定する(ST5)。例えば、制御部100は、入力された紙種情報により紙質がすべりやすいか否かを判定し、滑りやすい紙の場合は、滑りにくい紙に比べて慣性力が小さいので、バックテンションを低めに設定(バックテンションを変更)することになる。一方、滑りにくい紙の場合は、バックテンションを変更する必要がないということになる。
そこで、バックテンション変更が必要ない場合、上述と同様に、制御部100は、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて逆転させる(ST6、ST7)。一方、バックテンション変更が必要な場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST8)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST9)。駆動モータDMを無給電状態にするのは、レジストローラ34が回転開始してから回転、停止を繰り返している期間である。
【0040】
次に、ST3において、制御部100は、慣性力が大でないと判定した場合、慣性力が中であるかを判定する(ST10)。
慣性力が中である場合、さらに操作パネル102で紙種が入力されているか否かを判定する(ST11)。
紙種が入力されていない場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST13)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST14)。駆動モータDMを無給電状態にするのは、レジストローラ34が回転開始してから回転、停止を繰り返している期間である。
【0041】
一方、ST4で紙種が入力されていた場合、制御部100は、ST5のときと同様に、入力された紙主情報からバックテンションの変更が必要であるかどうかを判定する(ST12)。
そこで、バックテンション変更が必要ない場合、上述と同様に、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST13)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST14)。
【0042】
一方、バックテンション変更が必要な場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション弱を設定し(ST15)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて正転させる(ST16)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを正転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを正転し続けてもよい。
【0043】
そして、ST10において、制御部100は、慣性力が中でないと判定した場合、慣性力が小であるかを判定する(ST17)。
慣性力が小である場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション弱を設定し(ST18)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて正転させる(ST19)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを正転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを正転し続けてもよい。
一方、慣性力が小でないと判定された場合、操作パネル102にエラーである旨を表示させる。
【0044】
なお、駆動モータDMの正転、逆転、無給電状態を設定する際、ロール紙30を搬送したときに検出される残量センサS2およびキャリッジセンサCSの検出結果を使用していた(図12のST1)が、これに限られない。
例えば、ST1は、ロール紙30を搬送したときに、駆動モータDMの負荷トルクが図示しない閾値を超えるか否かを制御部100で監視するようにしてもよく、その結果に基づきST2の慣性力を判定してもよい。
【0045】
以上のような本実施例では、駆動モータDMの正転、逆転および無給電(非励磁)状態をロール紙のサイズや残量に基づき設定ことにより可能にしている。また、上述した駆動モータDMにおける回転状態の切り換えタイミングには、挟持搬送ローラとして用いられるレジストローラ34の駆動源でのトルク変動が用いられる。
つまり、レジストローラ34においてトルクが変化する原因としては、ロール紙に作用する牽引力の変化が原因として考えられる。
この変化は、図14において説明したように、ロール紙の幅方向での搬送負荷分布の変化に繋がるので、スキューが発生したことを検知できるからである。また、レジストローラ34でのトルク変化は、ロール紙のサイズや残量の変化によるロール紙の質量変化も影響するので、ロール紙のサイズ入力部からの情報に従って上述した切り換えタイミングが設定される。
【符号の説明】
【0046】
1 インクジェット記録装置
5 回転力伝達機構
30 ロール紙
32 スプール軸
32A 従動ギヤ
34 レジストローラ
35 加圧ローラ
42 駆動ギヤ
52 仲介回転軸
53 一方向クラッチ
53A クラッチ側ギヤ
54 トルクリミッタ
54A 滑り回転手段側ギヤ
S2 残量センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2003−276264号公報
【特許文献2】特開2009−256061号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、ロール紙を対象とした繰り出し位置整合機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置においては、たとえば、電子写真方式を用いる画像形成装置の場合、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像が現像装置から供給される現像剤によって可視像処理される。可視像処理された画像は、記録紙などに転写され、定着されることで複写出力とされる。
【0003】
画像形成装置の一つである、インクジェットプリンタでは、A0版やA1版などの大サイズの記録紙への印字処理を行えるものがある。
このような印字処理に用いられる記録紙には、給紙カセットに積載されている場合と違って、所望する長さを繰り出せる利便性からロール紙を用いることが多い。
【0004】
ロール紙を用いた給紙装置の構成としては次の構成が知られている。
つまり、ロール紙を印字部に向けて繰り出し、印字部にて印字処理が行われた後に、印字画像を担持した部分を裁断し、未印字部部分のロール紙をロール紙側に巻き戻すようにした構成である(例えば、特許文献1)。
【0005】
ロール紙を巻き戻す理由の一つには、繰り出し方向における未印字端部を印字部に向け給紙する際の繰り出し開始位置に位置決めし、印字部に対する繰り出し量を割り出す基準とすることが挙げられる。
【0006】
一方、ロール紙は、巻芯の軸方向が搬送方向と直角方向に設定されていないと、レジストローラがロール紙に伝達する力の方向とロール紙の繰り出し方向とが異なった場合にスキューを生じることが知られている(例えば、特許文献2)。このような事態は、ロール紙の装着状態が不適正である場合に発生しやすい。
スキューは、上述した装着状態だけでなく、ロール紙の回転停止時に発生する、慣性回転による搬送方向に沿った弛みによっても発生し、ロール紙の繰り出し時に皺やよじれを生じさせる不具合がある。
【0007】
そこで、スキューの矯正方法としては、上記各特許文献にも開示されているように、ロール紙に対してバックテンションを与える方法が知られている。
つまり、バックテンションは、特許文献1に開示されているように、ロール紙の巻き戻し方向への駆動を搭載部に設けられているロール紙受けコロによって行う場合、ロール紙受けコロの一つに、コイルバネを内蔵したトルクリミッタ構造を設けた構成、あるいは、特許文献2に開示されているように、ロール紙の駆動伝達路中に伝達トルクを変更可能な電気クラッチを設けた構成を用いて得るようになっている。
【0008】
バックテンションの付与によるロール紙のスキュー矯正は、図14に示す原理にて得られる。
図14におけるロール紙Rの下側端部領域は挟持搬送用のレジストローラAとロール紙Rとの間で緊張した張り側の状態であり、上側端部領域は、弛み側の状態である。
【0009】
このようなロール紙Rにおいてロール紙側へのバックテンションが付与されると、レジストローラAによる搬送力は軸方向で均一であり、バックテンションは図中、搬送負荷分布と表示されている状態である。
ロール紙Rに対して実際に有効に作用する有効搬送力は、搬送力とバックテンションとの差として、図中、有効搬送負荷分布と表示されている状態である。
ロール紙Rは、矢印で示すように、弛み側から張り側に向けた回転(図14中、スキュー矯正方向と表示した回転)が生じ、上下両側の端部領域が搬送方向に平行したときにスキューが矯正される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、バックテンションを付与することでロール紙のスキューを矯正できる。しかし、そのために用いられる構成には、ロール紙の繰り出しに用いられる駆動系とは別の構成が必要となる。
【0011】
つまり、特許文献1においては、ロール紙の挟持搬送に用いられるフィードローラの駆動系とは別にロール紙の受けコロに対してバックテンション付与のための構成が必要となり、また特許文献2においても、駆動に用いる部材とは別に電気クラッチという特別な部品が必要となる。
しかも、ロール紙の種類に応じてバックテンションを変化させる必要もあることから、用いる部品の制御や構成が複雑化する虞がある。
また、スキューの発生原因には、ロール紙を戻す際に生じる搬送方向に沿った弛みがある。
【0012】
本発明の目的は、上記従来の給紙装置における問題に鑑み、繰り出されるロール紙の種類に応じたバックテンションを付与する際に、構成の複雑化や特別な構成を要することなく既存構成部品により実現することができる構成を備えた給紙装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ロール媒体を挟持しながら搬送可能なロール媒体挟持搬送用手段によってロール媒体を牽引することにより繰り出すための給紙装置であって、
該挟持搬送用手段の繰り出し方向に順じた正転および前記ロール紙を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動源と、
該駆動源の出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力を、ロール媒体の巻芯軸に装着されている従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、
一方向クラッチにより回転を断接されるクラッチ側ギヤを備えた仲介回転軸が内輪側に、そして外輪側には前記駆動源からの回転を伝達されるギヤが設けられ、両輪間でのトルク発生方向へのトルク伝達制御が可能な滑り回転手段を備え、
前記駆動モータの正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、前記回転力伝達機構に有する滑り回転手段のトルク伝達制御を変化させることにより、前記ロール紙挟持搬送用ローラを用いたロール紙の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする給紙装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロール紙の巻き戻しのために用いられる既存構成部品である駆動モータの回転方向を選択すると共に、無給電(非励磁)状態を選択してロール紙のサイズや残量に基づき切り換えるだけでバックテンションの強さを最適な状態に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る給紙装置を用いる画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置における給紙経路の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る給紙装置に用いられる回転力伝達機構の構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した回転力伝達機構の駆動源に用いられる駆動モータ正転時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図5】図4に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図6】図3に示した回転力伝達機構における駆動モータの無給電時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図7】図6に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図8】図3に示した回転力伝達機構の駆動源に用いられる駆動モータ正転時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図9】図8に示した回転伝達状態を説明するための回転力伝達機構の要部展開図である。
【図10】駆動モータの回転制御に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】図10に示した制御部にて設定される駆動モータの回転制御に用いられるロール紙側の慣性力とバックテンションとの関係の図である。
【図12】図10に示した制御部による前記駆動モータの正転、逆転、無給電状態の設定動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】図3に示した回転力伝達機構によるロール紙巻き戻し時での各ギヤの回転状態を説明するための図である。
【図14】ロール紙のスキュー矯正原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による給紙装置を備えた画像形成装置の模式図である。同図に示されている画像形成装置1は、インクなどの液滴が吐出されることにより印字を行うインクジェット記録装置を対象としているが、本発明では、これに限ることなく、電子写真方式あるいは印刷機なども対象とすることができる。
インクジェット記録装置1の本体内部には、画像形成部2、用紙吸引搬送部3、ロール紙収納部4などが配置されている。
【0017】
画像形成部2は、図示しない両側板にガイドロッド13およびガイドレール14が掛け渡され、これらのガイドロッド13およびガイドレール14にキャリッジ15が矢示A方向に摺動可能に保持されている。
キャリッジ15は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドには図示しないが、各記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが一体的に備えられている。
【0018】
キャリッジ15を移動走査する主走査機構は、次の部材が含まれている。
主走査方向の一方側に配置される駆動モータ21と、駆動モータ21によって回転駆動される駆動プーリ22と、駆動プーリ22に連動可能な従動プーリ23と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に掛け回されたベルト部材24である。なお、従動プーリ23は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ22に対して離れる方向)にテンションが架けられている。
【0019】
ベルト部材24は、キャリッジ15の背面側に設けられているベルト固定部に一部分が保持されて主走査方向(矢示A方向)にキャリッジ15を牽引する。
また、キャリッジ15は、エンコーダシート(図示されず)とキャリッジに設けられているエンコーダセンサ(図示されず)を用いて主走査方向の位置を検知される。エンコーダシートは、キャリッジに設けられているエンコーダセンサによって読み取られる。
【0020】
キャリッジ15における主走査領域のうち、記録領域では、ロール紙30が用紙吸引搬送部3によってキャリッジ15の主走査方向と直交する方向(副走査方向:矢示B方向)に間欠的に搬送される。
【0021】
また、主走査領域のうち一方の端部側領域には、記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構18が配置されている。さらに、主走査方向のキャリッジ移動領域外または、上記主走査領域のうち他方の端部側領域には、記録ヘッドのサブタンクに供給する各色のインクを収容したメインカートリッジ19が記録装置本体1に対して着脱自在に装着される。
【0022】
図中、ロール紙収容部4は給紙手段である。
図2においてロール紙収容部4は、ロール紙(用紙)30がセットされている。しかし、幅方向(矢示A方向)のサイズが異なるロール紙をセットすることも可能である。
ロール紙30は、その紙軸に両側からフランジ31、およびスプール軸32が装着され、図示しない受け部に載置される。
ロール紙30の駆動部には、図3に示す回転力伝達機構5が設けられている。
回転力伝達機構5は、滑り回転手段に相当するトルクリミッタ54を用いてロール紙30にバックテンションを付与しながらロール紙30を給送する。また、ロール紙30を巻き戻すときは、回転力伝達機構5の駆動モータDMを逆転(ロール紙30を巻き戻すときの回転方向とする)させることで、ロール紙30の先端を所定の位置に戻すことができる。
【0023】
図1に示したインクジェット記録装置1に用いられるロール紙30は、ロール紙収容部4から、記録装置本体1の後方を通過して前方に向けて搬送される。
ロール紙30は、ローラ対33に挟持されてレジストローラ34、加圧ローラ35にむけて搬送され、その後ローラ対33の挟持状態が解除され、レジストローラ34,加圧ローラ35によって記録領域に搬送される。
レジストローラ34および加圧ローラ35は、ロール紙30を繰り出す方向およびロール紙収容部に向けて戻す方向にそれぞれ回転することができ、いずれの場合にも、ロール紙30を挟持している。ここで、ロール紙30が記録領域を繰り出し方向に搬送されている状態では、搬送レジストローラ34からロール紙収容部4までのロール紙30は、所定の張力が作用している。
【0024】
キャリッジ15を主走査方向に移動し、レジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35によってロール紙(用紙)30を間欠的に送りながら、記録ヘッドを画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、ロール紙30上に所要の画像が形成される。さらに、画像形成後の用紙は、図示しない切断手段により所定の長さにカットされ、装置本体1の正面側に配置された図示しない排紙トレイへ排出される。
【0025】
図3は、本発明による給紙装置に用いられる駆動部の構成を示す斜視図である。
同図において駆動部には、駆動モータDMと、駆動モータDMの出力軸に設けられている駆動ギヤ42と、ロール紙30の巻芯軸に装着されたスプール軸32に設けられている従動ギヤ32Aと、駆動ギヤ42と従動ギヤ32Aとの間に位置して駆動ギヤ42の駆動力を従動ギヤ32Aに伝達する回転力伝達機構5が含まれている。
駆動モータDMは、ロール紙30を巻き戻すときに回転させる方向である逆転、ロール紙30を巻き戻すときに回転する方向とは逆の方向である正転、そして、無給電(非励磁)のいずれかが選択可能である。
【0026】
回転力伝達機構5には、駆動ギヤ42に噛み合うアイドルギヤ50およびアイドルギヤ50と同軸上に支持されている伝達ギヤ51と、内輪側に仲介回転軸52が、そして外輪側に伝達ギヤ51に噛み合うギヤ(以下、これを滑り回転手段側ギヤともいう)54Aが設けられている滑り回転手段であるトルクリミッタ54と、トルクリミッタ54内の仲介回転軸52に設けられた一方向クラッチ53の出力側に装備されているクラッチ側ギヤ53Aが含まれている。
一方向クラッチ53は、クラッチ側ギヤ53Aがロール紙30を巻き戻す方向へ回転(前述した逆転)すると仲介回転軸52をロックする方向へ回転を付与されるが、仲介回転軸52が滑り回転手段側ギヤ54Aから伝達される回転によって、クラッチ側ギヤ53Aより早く回転した場合に、相対的に空転することができる。
【0027】
伝達ギヤ51を支持する回転軸51Aおよび仲介回転軸52には、駆動モータDMの回転数検知が可能な回転数センサS1およびロール紙の残量を繰り出し履歴により検知可能な残量センサS2が設けられている。
【0028】
以上のような構成において、本実施例では、回転力伝達機構5がロール紙30の巻き戻し動作だけでなく、ローラ対33の挟持状態が解除されたあとのロール紙30(レジストローラ34よりも給紙方向上流側)におけるバックテンションの強さを変更して付与できるようになっている。
まず、ロール紙30の巻き戻し動作について、図13を用いて説明する。
ロール紙30を巻き戻すときは、駆動モータDMを逆転させる。駆動ギヤ42が回転すると、アイドルギヤ50および同軸上の伝達ギヤ51を介してギヤ54Aが回転する。このとき、ギヤ54Aの回転によりクラッチ側ギヤ53Aはギヤ54と同じ方向に回転するので、クラッチ側ギヤ53Aの回転により、アイドルギヤ55,56を介して従動ギヤ32を回転させることで、ロール紙30を巻き戻すことができる。
次に、ロール紙30に与えるバックテンションの強さを強中弱それぞれに設定する構成について図4乃至9を用いて説明する。
【0029】
図4乃至図9は、上述したバックテンションを変更する時の各部材での回転状態を説明するための図である。なお、各図において表示されている矢印は、回転伝達方向および回転速度の大きさ(矢印の長短)を示している。また、図9においては、これ以前に示した図における回転方向が異なる場合を対象として「’」を付けて表示してある。
図4および図5は、第1番目のバックテンション設定時を示している。
図4および図5において、第1番目のバックテンション設定時には、駆動モータDMがクラッチ側ギヤ53Aから伝達されて回転する仲介回転軸51の回転速度よりも高速回転する。
これにより、第1番目のバックテンション設定に関して説明したように、一方向クラッチ53内で仲介回転軸52がクラッチ側ギヤ53Aの回転に関係なくトルクリミッタ54内で設定される回転数によって空転する。
回転伝達機構5では、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力が、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。この結果、ロール紙30には、繰り出しに必要な牽引力に対して従動ギヤ32Aに作用する回転負荷分だけバックテンションが弱い状態で与えられる。
【0030】
第1番目に、バックテンションを弱に設定するときについて説明する。
図4,5に示すように、正転(ロール紙30の巻き戻し時に回転する方向と逆方向)する駆動モータDMからギヤ54Aに伝達される回転数のほうが、ロール紙30を介して従動ギヤ32からクラッチ側ギヤ53に伝達される回転数よりも速くなるようなギヤ比に設定にすることで、ロール紙30に弱いバックテンションを与える。
従動ギヤ32Aからクラッチ側ギヤ53Aに伝達される回転数よりも駆動モータDMから滑り回転手段側ギヤ54Aに伝達される回転数のほうが速くなるようなギヤ比としているため、仲介回転軸52が、回転伝達状態にあるクラッチ側ギヤ53Aとの間に生じた速度差分だけクラッチ側ギヤ53Aよりも速く回転する。
【0031】
一方向クラッチ53は、クラッチ側ギヤ53Aの回転により仲介回転軸52とロックする方向へ回転を付与されるが、仲介回転軸52は滑り回転手段側ギヤ54Aから伝達される回転によって、クラッチ側ギヤ53Aより早く回転しているため、一方向クラッチ53は相対的に空転し、ロックしない。
この結果、回転伝達機構5では、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力が、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。
ロール紙30には、繰り出しに必要な牽引力に対して従動ギヤ32Aに作用する回転負荷分だけバックテンションが弱い状態で与えられる。
【0032】
第2番目に、バックテンションを強に設定するときについて説明する。
図8,9に示すように駆動モータDMが逆転されると、従動ギヤ32Aから回転を伝達されているクラッチ側ギヤ53Aの回転方向と逆方向に仲介回転軸52がトルクリミッタ54を介して回転する。
クラッチ側ギヤ53Aは、従動ギヤ32Aからの回転を受けて仲介回転軸52をロックして連動させるが、同軸上に設けられた滑り回転手段側ギヤ54Aは駆動モータDMにより異なる回転方向に回転するため、トルクリミッタ54内で滑りが生じ、これにより発生した抵抗力がクラッチ側ギヤ53Aを介して従動ギヤ32Aに強いバックテンションを与える。
【0033】
第3番目に、バックテンションを中に設定するときについて説明する。
図6,7に示すように駆動モータDMが無給電(非励磁)状態とされると、従動ギヤ32Aから回転を伝達されているクラッチ側ギヤ53Aが回転し、この回転に応じて一方向クラッチ53の作用により仲介回転軸52が連動しようとする。
さらに、仲介回転軸52と同軸上に設けられたトルクリミッタ54では、内輪に連動して外輪が回転し、滑り回転手段側ギヤ54A、伝達ギヤ51および駆動ギヤ42を回転させる。
このため、クラッチ側ギヤ53Aを回転させる従動ギヤ32には、従動ギヤ32Aおよびクラッチ側ギヤ53Aを含む仲介回転軸52までの伝達経路に位置する各ギヤの慣性質量および噛み合い部での摩擦抵抗を含めた力に加えて、駆動モータDMを空転させることによるモータ空転トルクが、ロール紙30の繰り出し力に対する抵抗力、換言すれば、従動ギヤ32Aの回転負荷となる。
これにより、牽引力に対する抵抗力であるバックテンションは、第1番目で得られるバックテンションの強さに対して駆動モータDMの空転トルクを加えた強さ分だけ強くなる。
【0034】
本実施例では、駆動モータDMが非励磁状態において、駆動ギヤ42の回転を可能にするために、駆動モータDMの空転トルクがトルクリミッタ54の外輪と内輪とが相対的に滑るときの回転トルクより低い関係を設定されている。これにより、トルクリミッタ54側の回転により駆動モータDMの駆動ギヤ42が回転されることになる。
【0035】
図10は、駆動モータDMの回転制御、特にバックテンションを切り換えるタイミング制御に用いられる制御部の構成を示すブロック図である。
同図において制御部100は、図11において説明する、ロール紙側の慣性力とロール紙30に与えるバックテンションの強さ、とを関係付けたマップが保存されている記憶素子101を備えて印字制御が可能な制御処理部が用いられる。
制御部100の入力側には、本実施例と関係する構成としてキャリッジセンサCS、残量センサS2(図3参照)、ロール紙のサイズおよび種類を入力可能な操作パネル102が接続され、出力側には駆動モータDMの駆動部103が接続されている。
キャリッジセンサCSは、ロール紙の慣性質量に影響する紙サイズの一つである紙幅を検知する部材である。
【0036】
制御部100では、図11に示す、ロール紙30の慣性力とロール紙30に与えるバックテンションの強さとを関係付けたマップに基づき駆動モータDMの駆動制御が実行される。
図11に示すマップは、キャリッジセンサCSからの情報に応じた紙幅およびロール紙30の残量センサS2からの情報に応じたロール紙30の外径から割り出された慣性質量と、これに応じて弛みが生じないバックテンションの強さとが示されている。なお、慣性質量の大きさは、上述したロール紙30自体の重量に加えて、種類や厚さも影響する。このため、本実施例では、操作パネル102により各種の情報を入力できるようになっている。なお図11において示されている図番は、後で説明するバックテンション設定状態時に用いる図面の番号である。
【0037】
図12は、駆動モータDMの正転、逆転、無給電状態を設定する動作を説明するためのフローチャートである。
この設定動作は、ロール紙30をセットしたとき、印刷ジョブが入力され印刷動作を開始するとき、ロール紙30が切断手段にて切断されたあと次の印刷を開始するため待機位置にロール紙を巻き戻したとき等のタイミングで行う。
例えば、ロール紙30をセットしたとき、印刷ジョブが入力され印刷動作を開始するとき、の場合、ロール紙30は、レジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35を通過して、キャリッジ15の下方まで搬送される。そのとき、残量センサS2の検出結果により、ロール紙30の残量が検知される。さらに、ロール紙30がキャリッジ15の下方に位置しているとき、キャリッジ15を主走査方向に走査しながらキャリッジセンサCSにてロール紙30の幅を検出する(ST1)。
また、ロール紙30が切断手段にて切断されたあと次の印刷を開始するため待機位置にロール紙を巻き戻す場合は、切断されたロール紙30をレジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35付近まで巻き戻す際に、上述のように残量を検知するとともに、キャリッジ15を主走査方向に走査しながらキャリッジセンサCSにてロール紙30の幅を検出する(ST1)。
【0038】
制御部100は、検出されたロール紙30の残量と幅を、メモリ101の慣性力情報(図11)と照合し、慣性力を判定する(ST2)。
次に、制御部100は、判定された慣性力が大であるかを判定する(ST3)。
慣性力が大である場合、さらに操作パネル102で紙種が入力されているか否かを判定する(ST4)。
紙種が入力されていない場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション強を設定し(ST6)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて逆転させる(ST7)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを逆転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを逆転し続けてもよい。
【0039】
一方、ST4で紙種が入力されていた場合、制御部100は、入力された紙主情報からバックテンションの変更が必要であるかどうかを判定する(ST5)。例えば、制御部100は、入力された紙種情報により紙質がすべりやすいか否かを判定し、滑りやすい紙の場合は、滑りにくい紙に比べて慣性力が小さいので、バックテンションを低めに設定(バックテンションを変更)することになる。一方、滑りにくい紙の場合は、バックテンションを変更する必要がないということになる。
そこで、バックテンション変更が必要ない場合、上述と同様に、制御部100は、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて逆転させる(ST6、ST7)。一方、バックテンション変更が必要な場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST8)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST9)。駆動モータDMを無給電状態にするのは、レジストローラ34が回転開始してから回転、停止を繰り返している期間である。
【0040】
次に、ST3において、制御部100は、慣性力が大でないと判定した場合、慣性力が中であるかを判定する(ST10)。
慣性力が中である場合、さらに操作パネル102で紙種が入力されているか否かを判定する(ST11)。
紙種が入力されていない場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST13)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST14)。駆動モータDMを無給電状態にするのは、レジストローラ34が回転開始してから回転、停止を繰り返している期間である。
【0041】
一方、ST4で紙種が入力されていた場合、制御部100は、ST5のときと同様に、入力された紙主情報からバックテンションの変更が必要であるかどうかを判定する(ST12)。
そこで、バックテンション変更が必要ない場合、上述と同様に、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション中を設定し(ST13)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態にする(ST14)。
【0042】
一方、バックテンション変更が必要な場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション弱を設定し(ST15)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて正転させる(ST16)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを正転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを正転し続けてもよい。
【0043】
そして、ST10において、制御部100は、慣性力が中でないと判定した場合、慣性力が小であるかを判定する(ST17)。
慣性力が小である場合、制御部100は、メモリ101に蓄積されている図11の情報からバックテンション弱を設定し(ST18)、駆動モータDMをレジストローラ34の回転開始にあわせて正転させる(ST19)。ここで、レジストローラ34は、回転開始してから回転、停止を繰り返す動作であるため、レジストローラ34の回転、停止にあわせて(遅延してもよい)、駆動モータDMを正転、停止を繰り返す。なお、制御を簡易にするのであれば、レジストローラ34回転開始後、駆動モータDMを正転し続けてもよい。
一方、慣性力が小でないと判定された場合、操作パネル102にエラーである旨を表示させる。
【0044】
なお、駆動モータDMの正転、逆転、無給電状態を設定する際、ロール紙30を搬送したときに検出される残量センサS2およびキャリッジセンサCSの検出結果を使用していた(図12のST1)が、これに限られない。
例えば、ST1は、ロール紙30を搬送したときに、駆動モータDMの負荷トルクが図示しない閾値を超えるか否かを制御部100で監視するようにしてもよく、その結果に基づきST2の慣性力を判定してもよい。
【0045】
以上のような本実施例では、駆動モータDMの正転、逆転および無給電(非励磁)状態をロール紙のサイズや残量に基づき設定ことにより可能にしている。また、上述した駆動モータDMにおける回転状態の切り換えタイミングには、挟持搬送ローラとして用いられるレジストローラ34の駆動源でのトルク変動が用いられる。
つまり、レジストローラ34においてトルクが変化する原因としては、ロール紙に作用する牽引力の変化が原因として考えられる。
この変化は、図14において説明したように、ロール紙の幅方向での搬送負荷分布の変化に繋がるので、スキューが発生したことを検知できるからである。また、レジストローラ34でのトルク変化は、ロール紙のサイズや残量の変化によるロール紙の質量変化も影響するので、ロール紙のサイズ入力部からの情報に従って上述した切り換えタイミングが設定される。
【符号の説明】
【0046】
1 インクジェット記録装置
5 回転力伝達機構
30 ロール紙
32 スプール軸
32A 従動ギヤ
34 レジストローラ
35 加圧ローラ
42 駆動ギヤ
52 仲介回転軸
53 一方向クラッチ
53A クラッチ側ギヤ
54 トルクリミッタ
54A 滑り回転手段側ギヤ
S2 残量センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2003−276264号公報
【特許文献2】特開2009−256061号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体を挟持しながら搬送可能なロール媒体挟持搬送用手段によってロール媒体を牽引することにより繰り出すための給紙装置であって、
該挟持搬送用手段の繰り出し方向に順じた正転および前記ロール紙を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動源と、
該駆動源の出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力を、ロール媒体の巻芯軸に装着されている従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、
一方向クラッチにより回転を断接されるクラッチ側ギヤを備えた仲介回転軸が内輪側に、そして外輪側には前記駆動源からの回転を伝達されるギヤが設けられ、両輪間でのトルク発生方向へのトルク伝達制御が可能な滑り回転手段を備え、
前記駆動源の正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、前記回転力伝達機構に有する滑り回転手段のトルク伝達制御を変化させることにより、前記ロール媒体挟持搬送用手段を用いたロール媒体の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記駆動源の回転方向および給電状態は、前記ロール媒体のサイズおよびまたは残量検知に基づき設定されることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記回転力伝達機構は、前記ロール媒体の繰り出し方向に前記駆動源が正転するとき、前記従動ギヤから前記クラッチ側ギヤを介して前記仲介回転軸に伝達される回転数より、前記駆動源から前記滑り回転手段の外輪側ギヤに伝達される回転数の方が高速となる関係を設定され、前記一方向クラッチに有するクラッチ側ギヤに対してこれが支持されている仲介回転軸を相対的に空転させることが可能であることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
前記回転力伝達機構は、前記駆動源の空転トルクが前記滑り手段の外輪と内輪とが相対的に滑るときの回転トルクより低い関係を設定され、前記駆動源が無給電(非励磁)状態とされると、前記ロール媒体挟持搬送用手段により牽引されるロール媒体の巻芯軸側の従動ギヤから前記クラッチ側ギヤに回転が伝達され、前記滑り回転手段を介して前記駆動源に回転が伝達されると前記駆動源が空転することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項5】
前記回転力伝達機構は、前記駆動源が前記ロール媒体の繰り出し方向と逆方向に回転した場合、前記従動ギヤから前記クラッチ側ギヤを介して前記仲介回転軸に伝達される回転方向と、前記駆動源から前記滑り回転手段を介して前記仲介回転軸に伝達される回転方向が異なることにより、該仲介回転軸を有する滑り回転手段の内輪と外輪との間に相対的な滑りが生じ、滑りによる抵抗力が前記クラッチ側ギヤおよびこれと連動する従動ギヤに対する制動力として作用することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの一つに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
ロール媒体を挟持しながら搬送可能なロール媒体挟持搬送用手段によってロール媒体を牽引することにより繰り出すための給紙装置であって、
該挟持搬送用手段の繰り出し方向に順じた正転および前記ロール紙を繰り出し方向と逆方向となる巻き戻し方向に準じた逆転とを選択可能な駆動源と、
該駆動源の出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力を、ロール媒体の巻芯軸に装着されている従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、
一方向クラッチにより回転を断接されるクラッチ側ギヤを備えた仲介回転軸が内輪側に、そして外輪側には前記駆動源からの回転を伝達されるギヤが設けられ、両輪間でのトルク発生方向へのトルク伝達制御が可能な滑り回転手段を備え、
前記駆動源の正転、逆転および無給電(非励磁)のいずれかが選択されたときに、前記回転力伝達機構に有する滑り回転手段のトルク伝達制御を変化させることにより、前記ロール媒体挟持搬送用手段を用いたロール媒体の牽引力に対するバックテンションの強さを変更することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記駆動源の回転方向および給電状態は、前記ロール媒体のサイズおよびまたは残量検知に基づき設定されることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記回転力伝達機構は、前記ロール媒体の繰り出し方向に前記駆動源が正転するとき、前記従動ギヤから前記クラッチ側ギヤを介して前記仲介回転軸に伝達される回転数より、前記駆動源から前記滑り回転手段の外輪側ギヤに伝達される回転数の方が高速となる関係を設定され、前記一方向クラッチに有するクラッチ側ギヤに対してこれが支持されている仲介回転軸を相対的に空転させることが可能であることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
前記回転力伝達機構は、前記駆動源の空転トルクが前記滑り手段の外輪と内輪とが相対的に滑るときの回転トルクより低い関係を設定され、前記駆動源が無給電(非励磁)状態とされると、前記ロール媒体挟持搬送用手段により牽引されるロール媒体の巻芯軸側の従動ギヤから前記クラッチ側ギヤに回転が伝達され、前記滑り回転手段を介して前記駆動源に回転が伝達されると前記駆動源が空転することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項5】
前記回転力伝達機構は、前記駆動源が前記ロール媒体の繰り出し方向と逆方向に回転した場合、前記従動ギヤから前記クラッチ側ギヤを介して前記仲介回転軸に伝達される回転方向と、前記駆動源から前記滑り回転手段を介して前記仲介回転軸に伝達される回転方向が異なることにより、該仲介回転軸を有する滑り回転手段の内輪と外輪との間に相対的な滑りが生じ、滑りによる抵抗力が前記クラッチ側ギヤおよびこれと連動する従動ギヤに対する制動力として作用することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの一つに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−206859(P2012−206859A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197661(P2011−197661)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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