説明

給紙装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】簡単な構成にて、一つの給紙ローラーを用いて給紙カセットのシートの重送を防ぎ、また、手差しトレイの封筒や厚紙等のシートを確実に送出する給紙装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】給紙装置20は、ニップ部Nの上流側にあって給紙カセット22から送られるシートSの先端をニップ部Nへ案内するシート案内部37aと、手差しトレイ41から延在し先端部45aがシート案内部37aとニップ部Nとの間に配置され、手差しのシートSをニップ部Nに案内する上下方向に弾性変形可能な手差し案内部材45と、を備える。手差しのシートSは、手差し案内部材45によってニップ部Nに案内され給紙ローラー30によってシート搬送路4に送り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、給紙カセットと手差しトレイを備えた給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、シートを画像形成部に搬送し、画像形成部において像担持体上に形成されたトナー像をシート上に転写した後、該トナー像をシートに定着するプロセスを経て画像が形成される。シートを画像形成部へ送出する方式として、複数枚のシートを給紙カセットに予め積載しておき、給紙カセットからシートを1枚ずつピックアップして画像形成部へ送出するカセット給紙方式と、手差しトレイに1枚ずつセットされたシートを画像形成部へ送出する手差し給紙方式とがある。画像形成装置は、給紙カセットと手差しトレイとの方式を備え、頻繁に印刷するサイズのシートを給紙カセットに収容する一方、封筒、厚紙等の特殊シートは手差しトレイに載置し、何れかの方式が選択して用いられている。
【0003】
通常、給紙カセットから画像形成部へ送出するためにカセット給紙ローラーが用いられ、また手差しトレイから送出するために手差し給紙ローラーが用いられる。しかし、給紙カセットのシートをカセット給紙ローラーによって画像形成部へ送出するとともに、手差しトレイのシートを同じカセット給紙ローラーによって画像形成部へ送出するように、一つの給紙ローラーによって夫々のシートを送出する技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の給紙装置では、給紙トレイ及び手差しトレイが上下方向に積み重ねて配置される。給紙ローラーが給紙トレイ上に揺動可能に配設され、手差しトレイには上スライド板と下スライド板がシート送出方向にスライド可能に配設されている。給紙ローラーが給紙トレイ上に当接しているときは、給紙トレイ上に載置されたシートを送出することが可能な状態にあり、一方、手差しトレイ上のシートを送出する場合、上スライド板をスライド操作すると、下スライド板が給紙ローラー側にスライドし、給紙ローラーが下スライド板の上面側へ持ち上げられ、これにより、給紙ローラーによって手差しトレイに載置されたシートを送出することが可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−162710号公報(段落[0076]〜[0080]、第8図、第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の給紙装置では、給紙ローラーを揺動させる機構が必要であり、またシート送出方向にスライドする上スライド板及び下スライド板を配設する必要があり、装置本体が複雑な構成になるという不都合があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成にて、一つの給紙ローラーを用いて給紙カセットのシートの重送を防ぎ、また、手差しトレイの封筒や厚紙等のシートを確実に送出する給紙装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の発明の給紙装置は、シートを積載し上方に移動可能なシート積載部材が設けられるシート収納部と、給紙ローラーと該給紙ローラーに圧接される分離部材とにより形成されるニップ部と、該ニップ部の上流側にあって前記シート収納部から送られるシートの先端を前記ニップ部へ案内するシート案内部と、前記シート収納部の上側に配置され手差しでのシートの供給を可能とする手差し給紙部と、該手差し給紙部から延在し先端部が前記シート案内部と前記ニップ部との間に配置され、手差しのシートを前記ニップ部に案内する上下方向に弾性変形可能な手差し案内部材と、を備え、前記シート収納部のシートは、前記シート積載部材に積載された複数枚のシートから最上面のシートのみが前記ニップ部によって分離されるとともに前記給紙ローラーによってシート搬送路に送り出され、前記手差し給紙部のシートは、前記手差し案内部材によって前記ニップ部に案内され前記給紙ローラーによって前記シート搬送路に送り出されることを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明では、前記手差し案内部の先端部は、前記分離部材の上流端部より下流側に配置されることを特徴としている。
【0010】
また、第3の発明では、上記の給紙装置において、前記手差し案内部材は前記手差し給紙部に取り付けられる矩形状の板材からなり、前記手差し案内部材の先端部には、前記給紙ローラーの軸方向長さより大きい平面視コ字状の切り欠き部が前記給紙ローラーに対向する位置に形成されることを特徴としている。
【0011】
また、第4の発明では、上記の給紙装置において、前記給紙ローラーは、外縁の一部が欠けた円形状に形成され前記分離部材に圧接可能であるローラーと、該ローラーの軸方向の両側に隣接して配置され、前記ローラーの外周径より小さい円形状のコロと、を有することを特徴としている。
【0012】
また、第5の発明では、上記の給紙装置において、前記分離部材は、前記給紙ローラーに向けてバネ部材によって付勢される板材からなり、前記シート案内部を形成した支持部材に取り付けられることを特徴としている。
【0013】
また、第6の発明では、上記の構成の給紙装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、シート収納部のシートを送出する場合、シート収納部のシートが手差しシート案内部材の弾性に抗してシート積載部材からシート案内部に送られ、シートの先端がシート案内部に当接する。これによって、複数枚のシートをニップ部に送ることが抑制され、さらにシートはシート案内部に沿ってニップ部に滑らかに進入するように案内される。ニップ部に到着したシートは、給紙ローラーによって確実にシート搬送路に送り出される。シート案内部で捌かれずに複数枚のシートがニップ部に送られたとき、複数枚のシートから最上面のシートのみがニップ部で分離され、分離されたシートが給紙ローラーによって確実にシート搬送路に送り出される。一方、手差し給紙部上のシートを送出する場合、シートを手差し給紙部上に載置したとき、シートが手差し案内部材によって案内され、シートの先端をシート案内部の下流側のニップ部近傍に配置することが可能となる。これによって、シートをニップ部に確実に送ることができ、ニップ部に送られたシートは給紙ローラーによってシート搬送路に送り出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る給紙装置を備えた画像形成装置を示す断面図
【図2】実施形態に係る給紙装置の要部を示す断面図
【図3】実施形態に係る給紙装置の手差し給紙部を示す斜視図
【図4】実施形態に係る給紙装置の手差し給紙部からシートが送出される場合を示す断面図
【図5】実施形態に係る給紙装置の給紙カセットからシートが送出される場合を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態である給紙装置を備える画像形成装置の全体構成を示す断面図であり、右側を画像形成装置の前方側として図示している。画像形成装置1の装置本体1aの下部には、給紙装置20が配置される。給紙装置20は、積載されたシートSを収容するシート収納部である給紙カセット22と、手差し給紙部である手差しトレイ41とを備える。給紙カセット22はシートSを収納するために装置本体1aの前方から引き出し可能に設けられる。手差しトレイ41は給紙カセット22の上方に配置される。尚、給紙カセット22は装置本体1aに固定されていてもよい。給紙装置20の後方には、装置本体1aの下方から上方へ延びて装置本体1aの上面に形成された排紙部3に至るシート搬送路4が形成されている。このシート搬送路4に沿って上流側から順に、ピックアップローラー29、給紙ローラー30、レジストローラー対8、画像形成部9、定着部10及び排出ローラー対11が配置されている。
【0018】
給紙カセット22には、給紙カセット22に対して回動自在に支持されたシート積載板28が設けられている。シート積載板28上に積載されたシートSがピックアップローラー29によってシート搬送路4に向けて送出され、ピックアップローラー29によって複数枚のシートSが同時に送られた場合には、給紙ローラー30と分離パッド35とによってシートSが捌かれ、最上位の1枚のみが送出されるように構成されている。シート搬送路4に送出されたシートSは、レジストローラー対8へと搬送され、レジストローラー対8によってタイミングを調整されて画像形成部9へと供給される。
【0019】
手差しトレイ41は、給紙カセット22に積載されていないサイズの用紙や封筒、厚紙等のシートSを画像形成部9にレジストローラー対8を介して送出するものであり、シートSは装置本体1aの前方から手差しトレイ41上に載置される。
【0020】
画像形成部9は、電子写真プロセスによってシートSに所定のトナー像を形成するものであり、図1において時計回りに回転可能に軸支された像担持体である感光体14と、この感光体14の周囲に配置される帯電装置15、現像装置16、クリーニング装置17、シート搬送路4を挟んで感光体14に対向するように配置される転写ローラー18及び感光体14の前方に配置される露光装置19から構成されている。
【0021】
帯電装置15には、図示しない電源が接続された導電性ゴムローラー15aが備えられており、この導電性ゴムローラー15aが感光体14に当接するよう配置されている。そして、感光体14が回転すると、導電性ゴムローラー15aが感光体14の表面に接触して従動回転し、この時、導電性ゴムローラー15aに所定の電圧を印加することにより、感光体14の表面が一様に帯電させられることになる。
【0022】
次いで、露光装置19から射出されるビーム光により、入力された画像データに基づく静電潜像が感光体14上に形成され、現像装置16により静電潜像にトナーが付着して感光体14の表面にトナー像が形成される。そして、レジストローラー対8から感光体14と転写ローラー18との間(転写位置)にシートSが所定のタイミングで供給され、転写ローラー18によりシートS上に感光体14の表面のトナー像が転写される。
【0023】
トナー像が転写されたシートSは、感光体14から分離されて定着部10に向けて搬送される。この定着部10は、シート搬送方向に対し画像形成部9の下流側に配置されており、画像形成部9においてトナー像が転写されたシートSは、定着部10に備えられた加熱ローラーと加圧ローラーによって加熱、加圧され、シートSに転写されたトナー像が定着される。
【0024】
画像形成されたシートSは、排出ローラー対11によって排紙部3に排出される。一方、転写後に感光体14の表面に残留しているトナーはクリーニング装置17により除去され、感光体14は帯電装置15によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0025】
図2〜図5を用いて給紙装置20を詳しく説明する。図2は給紙装置20の給紙ローラー30周辺を示す部分断面図であり、図3は手差しトレイ41を示す斜視図である。図4は手差しトレイ41からシートが送出される場合を示す給紙ローラー30周辺の部分断面図であり、図5は給紙カセット22からシートが送出される場合を示す給紙ローラー30周辺の部分断面図である。
【0026】
図2に示すように、給紙カセット22は、シート積載部材であるシート積載板28と、リフト板33とを備える。装置本体1aには、ピックアップローラー29と、給紙ローラー30と、分離部材である分離パッド35が配設される。
【0027】
シート積載板28は、給紙カセット22内に設けられており、シートSの送出方向の上流側を図示しない回転軸の回りに上下方向に回動可能に支持される。このシート積載板28上にシートSが積載される。
【0028】
リフト板33はシート積載板28の下方に配設され、ギア34によって回動させられる。給紙カセット22が装置本体1aに装着されると、ギア34は、装置本体1a側に設けた駆動ギア(図略)に噛み合い、駆動ギアを介して装置本体1aに設けた昇降モーター(図略)に駆動連結される。昇降モーターの一方向の回転駆動により、リフト板33が徐々に上昇すると、リフト板33の先端に当接するシート積載板28が上昇する。シート積載板28が上昇すると、シート積載板28上に積載されたシートSは、ピックアップローラー29に押しつけられる。ピックアップローラー29によって、シート積載板28上に積載されたシート束の上側の1枚或いは複数枚のシートSが給紙ローラー30側へ送られる。一方、昇降モーターの他方向の回転駆動により、リフト板33が徐々に下降すると、シート積載板28が下降する。
【0029】
給紙ローラー30は、給紙カセット22から送られたシートS、或いは手差しトレイ41に載置されたシートSをシート搬送路4へ送り出すとともに、給紙カセット22から複数枚のシートSが送られた場合、複数枚のシートSから最上面のシートSのみを分離パッド35とともに分離してシート搬送路4へ送り出すものである。給紙ローラー30は、ローラー31と一対のコロ32とを有し、シートSの幅方向(図2の紙面の表裏方向)の略中央で装置本体1aに回転可能に支持される。
【0030】
ローラー31は、ゴム等の弾性材によって外縁の一部が欠けた円形状、例えば半円状に形成される。コロ32は、表面が滑らかな樹脂等によってローラー31の外周径より僅かに小さい円形状に形成され、ローラー31の軸方向の両側に隣接して配置される。
【0031】
分離パッド35は給紙ローラー30に対向して配置される。従って、分離パッド35は、給紙ローラー30の軸方向長さと略同じ幅を有する矩形状に形成される板材からなり、また給紙ローラー30に対向する表面が摩擦面で形成される。分離パッド35は支持部材37に接着部材によって取り付けられる。
【0032】
支持部材37は、コイルスプリング等のバネ部材36によって給紙ローラー30側に付勢され、また、給紙ローラー30側に移動可能に装置本体1aに保持されている。給紙ローラー30が回転して、ローラー31が分離パッド35に対向する位置にあるとき、ローラー31は分離パッド35当接するように、またローラー31が分離パッド35に対向しない位置にあるとき(図2の状態)、コロ32が分離パッド35当接するように、支持部材37は保持されている。給紙ローラー30が回転して、ローラー31が分離パッド35に対向する位置にあるとき、或いはコロ32が分離パッド31に対向する位置にあるとき、ニップ部Nに所定のニップ圧が作用する。
【0033】
従って、給紙ローラー30が回転しシートSを送り出すとき、ニップ部Nにおいてニップ圧が作用することになり、シートSは給紙ローラー30によってシート搬送路4に送り出される。シートSが送り出された後、ローラー31が分離パッド35に対向しない位置で停止し(図2の状態)、給紙ローラー30は次のシートSの送出に備える。
【0034】
支持部材37にはシート案内部37aが形成される。シート案内部37aは、ニップ部Nの上流側において斜面形状に形成され、給紙カセット22から送られるシートSの先端をニップ部Nへ案内するものである。具体的には、シート積載板28に積載されたシートSは、所定の傾斜角を有してシート案内部37aに送られるが、シート案内部37aの斜面は、このシートSの傾斜角より大きな角度に設定されている。また、シート案内部37aの斜面は分離パッド35の傾斜角より大きい角度に設定されている。これによって、給紙カセット22から送られたシートSの先端はシート案内部37aに当接し、シート案内部37aに沿ってニップ部Nに滑らかに進入する。また、給紙カセット22から複数枚のシートSが送られた場合、シート案内部37aにおいて、その斜面に沿って複数枚のシートSの上側のシートSがニップ部Nに向かって先行することになり、複数枚のシートSを同時にニップ部Nに送ることが抑制される。
【0035】
給紙カセット22の上側には手差しトレイ41が配設されている。
【0036】
図3に示すように、手差しトレイ41は、シートSを載置可能なトレイ本体42と、トレイ本体42の上面に設けられ、シートSの幅に合わせてシートSの位置決めを行うための一対のカーソル43と、載置されたシートSを給紙ローラー30のニップ部Nに向けて案内する手差し案内部材45と、を備える。
【0037】
トレイ本体42には、幅方向に延びて切り欠かれる一対の開口42aが設けられ、一方、一対のカーソル43は、それぞれの下縁部から下方に向けて延設され、且つ幅方向に延びるラック44を有し、各ラック44は各開口42aを介してトレイ本体42の裏面側に配置されている。そして、これらのラック44は互いに逆方向を向く歯面を有し図示しないピニオンに噛合する。これによって、一方のカーソル43を移動させることにより他方のカーソル43が一方のカーソル43に対して反対方向に同一量だけ移動し、シートSの幅に合わせてシートSの位置決めが行われる。
【0038】
給紙カセット22(図2参照)のシートSを給紙ローラー30によってシート搬送路4へ送出するするとともに、手差しトレイ41のシートSを同じ給紙ローラー30によってシート搬送路4へ送出する場合、手差しトレイ41が給紙カセット22の上方に配置される構成となることがある。この構成では、手差しトレイ41にシートSを載置したとき、手差しトレイ41に差し込まれたシートSの先端がシート案内部37a(図2参照)に当接することがある。具体的には、シート案内部37aの斜面(図2参照)は、手差しトレイ41のシートSの載置面方向に対して所定の角度を有して対向配置される。さらに、手差しトレイ41から給紙ローラー30側へシートSを送り出し易くするために、手差しトレイ41のシートSの載置面がシートSの送り出し方向の下流側を下側に傾斜させる構成では、前記所定の角度はさらに大きくなる。このシート案内部37aの斜面とシートSの載置面とのなす角度が大きくなると、手差しトレイ41に差し込まれたシートSの先端がシート案内部37aに衝突し、シートSをニップ部N(図2参照)に送ることができなくなる。シートSが厚紙等の固くコシのある用紙であると、ニップ部Nへの不送りが頻繁に発生する。
【0039】
そこで本実施形態では、手差し案内部材45を手差しトレイ41から給紙ローラー30側に延設している。手差し案内部材45は、手差しトレイ41のトレイ本体42の先端部(給紙ローラー30側)の下面に接着部材によって取り付けられ、ポリエチレンテレフタラート樹脂等で薄板状に弾性力を有するように形成される。また手差し案内部材45は、トレイ本体42の幅と略同じ長さを有し、シート送出方向には、その先端部45aが支持部材37のシート案内部37aとニップ部Nとの間にまで延在して形成される(図2参照)。尚、手差し案内部材45の先端部45aはシート案内部37aの下流側に配置されるならば、ニップ部N近傍まで延ばして配置してもよい。
【0040】
更に、一つの給紙ローラー30によって、給紙カセット22のシートSと手差しトレイ41のシートSとを給紙可能とするために、手差し案内部材45の先端部45aには、給紙ローラー30や分離パッド35より僅かに大きい平面視コ字状の切り欠き部45bが形成される。
【0041】
手差し案内部材45を上記のように構成し、切り欠き部45bが給紙ローラー30や分離パッド35に対向する位置に配置することで、図4に示すように、シートS1を手差しトレイ41上に載置すると、シートS1をニップ部Nに確実に送ることができる。
【0042】
具体的には、手差しトレイ41に差し込まれたシートS1の先端は手差し案内部材45によって給紙ローラー30に向かって案内され、シートS1は給紙ローラー30のコロ32の表面に当接し、シートS1の厚みに応じて手差し案内部材45は下側に変形する。シートS1がコロ32の表面に当接しても、コロ32の表面は滑らかに形成されているために、支障なくニップ部Nの近傍に案内される。
【0043】
上記のようにシートS1を手差しトレイ41に載置した状態において、給紙ローラー30を矢印A方向に回転駆動させると、ローラー31がシートS1の表面に接触し、シートS1がローラー31と分離パッド35によって挟持されてニップ部Nに送られる。ニップ部Nに送られたシートS1はローラー31によってシート搬送路4に確実に送り出される。また、給紙カセット22にシートSが積載されている状態で、手差しトレイ41からシートSが給紙された場合、手差しトレイ41から給紙されるシートSの摩擦により、給紙カセット22内のシートSがニップNまで搬送されることがあるが、この場合でも、再度手差しトレイ41からシートSを給紙するときは、給紙ローラー30のローラー31が手差しトレイ41からのシートSに先に接触するため、給紙カセット22からシートSが給紙されることがない。
【0044】
図5に示すように、給紙カセット22からシート搬送路4へシートSを送り出す場合、ピックアップローラー29の回転駆動によって、シート積載板28上に積載されたシートSが給紙ローラー30に向けて搬送される。この場合、複数のシートS2、S3が給紙ローラー30に向けて送られたとき、上側のシートS2がシート案内部37aの斜面に沿ってニップ部Nに向かって先行することになり、シートS2、S3を同時にニップ部Nに送ることが抑制される。
【0045】
しかし、複数のシートS2、S3がニップ部Nに同時に送られることになった場合には、給紙ローラー30が矢印A方向に回転することで、ローラー31が分離パッド35に対向してニップ部Nに所定のニップ圧が作用するときに、シートS2、S3が捌かれ、シートS2のみがシート搬送路4に送り出される。
【0046】
ここで、給紙カセット22から給紙ローラー30にシートSを搬送するとき、シートSが手差し案内部材45の下面に当接するが、手差し案内部材45が上下方向に弾性力を有することで、手差し案内部材45の弾性力に抗してシートSが手差し案内部材45を押し上げ、ニップ部Nに確実に送られる。
【0047】
手差し案内部材45を所定の位置に配設するという簡単な構成にて、一つの給紙ローラー30によって給紙カセット22のシートSが重複することなくシート搬送路4に送出され、また、手差しトレイ41の封筒や厚紙等のシートSが確実にシート搬送路4に送出される。
【0048】
尚、上記実施形態では、複数枚のシートSが同時に給紙ローラー30に送られた場合、給紙ローラー30と分離パッド35によってシートSを捌く構成を示したが、本発明はこれに限らず、全周が円筒状に構成された給紙ローラーとトルクリミッターを有する分離ローラーとによって捌くように構成してもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
また、上記実施形態では、手差しトレイ41に手差し案内部材45を接着部材等で取り付ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、手差し案内部材45を装置本体1aに取り付けて、手差し案内部材45の先端部45aがシート案内部37aの下流側に配置されるように構成してもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
また、上記実施形態では、給紙カセット22のシート積載板28がリフト板33を介して昇降モーターによって上下動し、ピックアップローラー29によって、シート積載板28上に積載されたシートSを給紙ローラー30側へ送る構成を示したが、本発明はこれに限らず、シート積載板28をバネによって上方に付勢し、シート積載板28を給紙ローラー30の軸に固定したカムの回転とバネによってシート積載板28を上下動させる構成であってもよい。即ち、給紙ローラー30のローラー31が上方に位置するとき(図2参照)、シート積載板28はカムによって下方に位置し、この状態から給紙ローラー30が回転しローラー31が分離パッド35に対向するとき、シート積載板28はバネによって上方に移動する。シート積載板28が上方に移動すると、シート積載板28に積載されたシート束の上側のシートSが給紙ローラー30のローラー31に押し当てられ、さらにローラー31の回転によって上側のシートSが送り出される。このように、給紙カセット22からシートSを送り出さないとき、シート積載板28は給紙カセット22の下方の位置にあるために、手差しトレイ41からのシートSの挿入が容易となる。また、給紙ローラー30のローラー31はシートSに押し当たり更に送り出すピックアップローラー29の機能を兼ね備えるために、給紙カセット22は簡単な構成になり、また小型化する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、給紙カセットと手差しトレイを備えた給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
1a 装置本体
8 レジストローラー対
9 画像形成部
20 給紙装置
22 給紙カセット(シート収納部)
28 シート積載板(シート積載部材)
29 ピックアップローラー
30 給紙ローラー
31 ローラー
32 コロ
35 分離パッド(分離部材)
36 バネ部材
37 支持部材
37a シート案内部
41 手差しトレイ(手差し給紙部)
42 トレイ本体
42a 開口
43 カーソル
44 ラック
45 手差し案内部材
45a 先端部
45b 切り欠き部
N ニップ部
S、S1〜S3 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積載し上方に移動可能なシート積載部材が設けられるシート収納部と、
給紙ローラーと該給紙ローラーに圧接される分離部材とにより形成されるニップ部と、
該ニップ部の上流側にあって前記シート収納部から送られるシートの先端を前記ニップ部へ案内するシート案内部と、
前記シート収納部の上側に配置され手差しでのシートの供給を可能とする手差し給紙部と、
該手差し給紙部から延在し先端部が前記シート案内部と前記ニップ部との間に配置され、手差しのシートを前記ニップ部に案内する上下方向に弾性変形可能な手差し案内部材と、を備え、
前記シート収納部のシートは、前記シート積載部材に積載された複数枚のシートから最上面のシートのみが前記ニップ部によって分離されるとともに前記給紙ローラーによってシート搬送路に送り出され、
前記手差し給紙部のシートは、前記手差し案内部材によって前記ニップ部に案内され前記給紙ローラーによって前記シート搬送路に送り出されることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記手差し案内部の先端部は、前記分離部材の上流端部より下流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記手差し案内部材は前記手差し給紙部に取り付けられる矩形状の板材からなり、前記手差し案内部材の先端部には、前記給紙ローラーの軸方向長さより大きい平面視コ字状の切り欠き部が前記給紙ローラーに対向する位置に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記給紙ローラーは、外縁の一部が欠けた円形状に形成され前記分離部材に圧接可能であるローラーと、該ローラーの軸方向の両側に隣接して配置され、前記ローラーの外周径より小さい円形状のコロと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記分離部材は、前記給紙ローラーに向けてバネ部材によって付勢される板材からなり、前記シート案内部を形成した支持部材に取り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の給紙装置を備えた画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−103783(P2013−103783A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247083(P2011−247083)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】