説明

絵画等の吊下げ装置

【課題】 従来の、レールを用いた吊下げ装置は壁面への取り付けが困難であったり、レールそのものへの加工が困難であった。
【解決手段】 レール1、取り付け用ピン2、吊下げ具3から成る吊下げ装置において、レール1は長さ方向の正面側に開口した第1の溝4と、この溝4の背面から開口側に貫通し、所定の間隔をおいて設けた複数の穴9を有し、かつ下面側に開口し、その開口縁に引掛り縁5を有する小さな第2の溝6を有し、断面がほぼ「C」字型であることを特徴とし、取り付け用ピン2は頭部側を支軸にして先端側で「V」字型に開脚する先端の先鋭な2本の針と、この針の頭部側で針を集束し可動状態で保持する押圧用の頭部を有することを特徴とし、吊り下げ具3は、前記レールの第2の溝6の縁5に引掛り状に嵌合する引掛け端部を有することを特徴とし、前記取り付け用ピン2がレール1の穴9を経由して建物の壁面に圧入されるように構成したことを特徴とする吊下げ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の壁面に対して額縁や写真パネルなどの物品を壁面に吊下げる時に使用する吊下げ装置の固定手段に関する物である。
【背景技術】
【0002】
従来既存の壁面ボードの上から取り付けることのできる額縁や写真パネルなどの吊下げ装置において、下地となる桟木を探し出して固定することが困難であるため、レールの壁面と接する面に一定の角度を設けたピン孔を形成し、細いピンを用いて固定する方法が知られている。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
さらに、従来一定の角度を設けたピン孔をレールとは別の部品として作成することで、製造時の穴あけ工程を簡略化し、製造コストを削減する方法が良く知られている。(例えば、特許文献2を参照)
【0004】
【特許文献1】 登録実用新案公報 第3036110号
【特許文献2】 公開特許公報 特開2004−8761
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、長尺部材であるレールの、壁面と接する面に一定の角度を設けたピン孔を形成するために、ドリルを傾斜させて斜め方向に穿孔したり、非常に特殊なプレス金型を用いる必要がある等、非常に困難な製造方法が必要であり、製品の製造コストを大幅に増大させるという問題点があった。
【0006】
そして、上記の特許文献2に記載の構成は、従来の特許文献1に記載の構成に対して、レールと取り付け用ピンの間に、一定の角度を設けたピン孔を有する部品を介在させる必要性がある為、取り付け時の作業性が著しく悪化するという問題点があった。
【0007】
またさらに、上記特許文献1及び特許文献2に記載の取り付けに用いられるピンは非常に細く、裸指で圧入した場合にケガをしてしまうため、特許文献2にも記載の通り、圧入時にコイン状のものを指とピンの間に介在させて作業を行う必要があり、これも大きな作業性の悪化をもたらす原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本願の請求項1の発明は、レール、取り付け用ピン、吊下げ具から成る吊下げ装置において、レールは長さ方向の正面側に開口した第1の溝と、この溝の背面から開口側に貫通し、所定の間隔をおいて設けた複数の穴を有し、かつ下面側に開口し、その開口縁に引掛り縁を有する小さな第2の溝を有し、断面がほぼ「C」字型であることを特徴とし、取り付け用ピンは頭部側を支軸にして先端側で「V」字型に開脚する先端の先鋭な2本の針とこの針の頭部側で針を集束し可動状態で保持する押圧用の頭部を有することを特徴とし、吊り下げ具は、前記レールの第2の溝の縁に引掛り状に嵌合する引掛け端部を有することを特徴とし、前記取り付け用ピンがレールの穴を経由して建物の壁面に圧入されるように構成したことを特徴とする吊下げ装置である。
【0009】
また、請求項2の発明は、上記取り付け用ピンの2本の針は、両端が先鋭で、ばね性を有する一本の線材から成り、この線材を二つ折りにして、折り曲げ部分を押圧頭部に可動状態で保持し、他方の先端寄りで交差するように折り曲げて形成され、その先端側がワッシャーで閉脚状態に保持されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1に記載の取り付け用ピンは、頭部側を支軸にして先端側で「V」字型に開脚する先端の先鋭な2本の針と、この針の頭部側で針を集束し可動状態で保持する押圧用の頭部を有する構成とすることによって、前記取り付け用ピンを、壁面に向けて頭部を押圧すると、前記2本の針は「V」字型に開脚しつつ壁面内へ進入することとなる。そのため、作業者は前記取り付け用ピンを壁面に対して垂直に打込むだけで前記ピンをある一定の角度を持って壁面内へと進入させることができる。その結果、一定の角度を有するピン孔を介して固定用のピンを壁面内へ打込んだ場合と同等の固着力を発揮することができる。
【0011】
つまり本願の請求項1に記載の前記取り付け用ピンは、壁面に対して垂直に打込むだけで良い為、前記レールの第1の溝の背面から開口側に貫通し、所定の間隔をおいて設けられる複数の穴を、一定の角度に設ける必要が無く、ドリル又はプレス金型を用いて容易に穿孔することが可能であり、非常に安価に前記レールを製造することができる。
【0012】
また、本願の請求項2に記載の、上記取り付け用ピンの二本の針が、ばね性を有する一本の線材を用い、この線材を二つ折りにして途中でクロスするように折り曲げることで二本に形成され、二本の針は、上記折り曲げ部分が頭部となり、クロス部分から先端側が僅かに開脚し、ワッシャーで閉脚されている構成とすることで、取り付け用ピンを壁面に対して打込んだ際、針は通常の鋼線を用いた場合に比べ、より強力な復元力をもって開脚状態に戻るため、壁面内の針の周面は、壁面と密圧着状態となり摩擦力が増大するため、前記レールをより強固に取り付けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願の請求項1に記載の取り付け用ピンにおいて、十分な取り付け強度を発揮させる為に、その先鋭な先端部の角度は、針の進入方向先端部より、もう一方の針との対面方向に略45°の角度を持って形成されることが好ましい。
【0014】
もしもその角度が45°よりも大幅に鈍角となる場合、針は壁面表層部分ばかりに侵入することとなり、十分な取り付け強度を発揮することができないばかりか、壁面表層部を破壊してしまう問題が発生する。
【0015】
ついで、もしもその角度が45°よりも大幅に鋭角となる場合、針は開脚状態というには少なすぎる開脚量しか発揮することが出来ず、十分な取り付け強度を発揮することができない。
【0016】
さらに、前記取り付け用ピンの頭部に樹脂等の被覆を行うことで、圧入時にコイン状のものを指とピンの間に介在させて作業を行う必要が無くなり、安全且つ迅速に作業を行うことが可能となる。尚、従来一定の角度を設けてピンを打込む場合、ピンの頭部に必要十分な樹脂等の被覆を行うと、ピン頭部は斜め方向を向き、頭部周面が前記レールの第1の溝の開口部方向を向いてしまい、上記レールの第1の溝内に収納が不可能となるので、そのような加工は不可能であった。
【0017】
また、取り付け用ピンを、バネ性を有する一本の線材を用い、この線材を二つ折りにして途中でクロスするように折り曲げることで二本に形成する場合、その先鋭な先端部からクロス部までの距離を略10mmとなるように形成することによって、最も一般的な壁面厚である9.5mmの壁面ボードに対して取り付けた際にも壁面裏側へピンが大きく突出することが無く、壁面裏側での花咲現象と呼ばれる破損現象の発生を押え、十分且つ安定した取り付け強度を確保することが可能となる。
【実施例】
【0018】
以下、本願の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1に示す実施形態の吊下げ装置は、レール1、取り付け用ピン2、吊下げ具3から成る吊下げ装置において、レール1は長さ方向の正面側に開口した第1の溝4と、この溝4の背面から開口側に貫通し、所定の間隔をおいて設けた複数の穴9を有し、かつ下面側に開口し、その開口縁に引掛り縁5を有する小さな第2の溝6を有し、断面がほぼ「C」字型であることを特徴とし、取り付け用ピン2は頭部側を支軸にして先端側で「V」字型に開脚する先端の先鋭な2本の針と、この針の頭部側で針を集束し可動状態で保持する押圧用の頭部を有することを特徴とし、吊り下げ具3は、前記レールの第2の溝6の縁5に引掛り状に嵌合する引掛け端部を有することを特徴とし、前記取り付け用ピン2がレール1の穴9を経由して建物の壁面に圧入される
【0020】
その際に、図2に示すように、取り付け用ピン2は、十分な取り付け強度を発揮させる為に、その先鋭な先端部8の角度を、針の進入方向先端部7より、もう一方の針との対面方向に略45°の角度を持って形成される。
【0021】
さらに、図2に示すように前記取り付け用ピン2の頭部10に樹脂等の被覆を行うことで、圧入時にコイン状のものを指とピンの間に介在させて作業を行う必要が無くなり、安全且つ迅速に作業が行われる。
【0022】
またその際、図3に示すように、取り付け用ピン2を、バネ性を有する一本の線材を用い、この線材を二つ折りにして途中でクロスするように折り曲げることで二本に形成する場合、その先鋭な先端部7からクロス部11までの距離を略10mmとなるように形成することによって、最も一般的な壁面厚である9.5mmの壁面ボードに対して取り付けた際にも壁面裏側へ取り付け用ピン2が大きく突出することが無く、壁面裏側での花咲現象と呼ばれる破損現象の発生を押え、十分且つ安定した取り付け強度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 吊下げ装置の斜視図
【図2】 取り付け用ピンの正面図
【図3】 取り付け用ピンとレールの取り付け状態を示す部分拡大図
【符号の説明】
【0024】
1. レール
2. 取り付け用ピン
3. 吊下げ具
4. 第1の溝
5. 引掛り縁
6. 第2の溝
7. 針の先端側
8. ワッシヤー
9. 穴
10.取り付け用ピンの頭部
11.クロス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール1、取り付け用ピン2、吊下げ具3から成る吊下げ装置において、レール1は長さ方向の正面側に開口した第1の溝4と、この溝4の背面から開口側に貫通し、所定の間隔をおいて設けた複数の穴9を有し、かつ下面側に開口し、その開口縁に引掛り縁5を有する小さな第2の溝6を有し、断面がほぼ「C」字型であることを特徴とし、取り付け用ピン2は頭部側を支軸にして先端側で「V」字型に開脚する先端の先鋭な2本の針と、この針の頭部側で針を集束し可動状態で保持する押圧用の頭部を有することを特徴とし、吊り下げ具3は、前記レールの第2の溝6の縁5に引掛り状に嵌合する引掛け端部を有することを特徴とし、前記取り付け用ピン2がレール1の穴9を経由して建物の壁面に圧入されるように構成したことを特徴とする吊下げ装置。
【請求項2】
上記取り付け用ピン2の2本の針は、両端が先鋭で、ばね性を有する一本の線材から成り、この線材を二つ折りにして、折り曲げ部分を押圧頭部に可動状態で保持し、他方の先端寄りで交差するように折り曲げて形成され、その先端側がワッシャー8で閉脚状態に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の吊下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−39491(P2009−39491A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230778(P2007−230778)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000181963)若井産業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】