説明

絶縁基板及びその製造方法並びに積層板及び配線板

【課題】 本発明は、優れた機械的強度を有し且つ軽量性に優れた補強用プリプレグシートを提供する。
【解決手段】 本発明の補強用プリプレグシートは、アラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束から形成された網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなることを特徴とするので、軽量性に優れていると共に、硬化させることによって優れた機械的強度を発揮するので、風力発電用ブレードなどのように軽量性と強度とが要求される用途に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板及びその製造方法並びに積層板及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有しないリジッド基板として用いられる絶縁基板としては、従来からガラス繊維の織布を補強基材とし、この補強基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を複合させてなる絶縁基板が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、回路の配線が微細化するにつれて、絶縁基板の熱膨張率が、この絶縁基板上に形成されるセラミックパッケージなどの熱膨張率よりも大きいことから、回路の信頼性が低下するといった問題点が発生してきた。
【0004】
上記問題点を解決するために、ガラス繊維の代わりにアラミド繊維を用いた絶縁基板が提案され、例えば、特許文献1には、芳香族ポリアミド繊維布にエポキシ樹脂及び/又はポリイミド樹脂を塗布乃至含浸し乾燥した後に銅箔を重ね合わせて加熱、加圧することを特徴とする銅張積層板の製造方法が開示され、特許文献2には、p−アミド繊維の不織布を含む回路基板が提案されている。
【0005】
更に、特許文献3には、有機繊維からなる長尺のシート状基材に順次熱硬化性樹脂を含浸乾燥して前記熱硬化性樹脂の硬化をBステージまで進めたプリプレグとし、所定寸法に裁断した前記プリプレグを熱硬化性樹脂の融点以上の温度で加熱することを特徴とするプリプレグの製造法が開示されている。
【0006】
又、特許文献4には、繊維径が10μm以下である細デニールアラミド繊維で構成されるアラミド繊維不織布に熱硬化性樹脂を保持させてなることを特徴とするアラミド繊維不織布プリプレグが開示されている。
【0007】
しかしながら、上述で開示されたアラミド繊維からなる布は、アラミド繊維を平織や綾織などの状態に通孔が形成されないように密に編んだ織布か、或いは、アラミド繊維からなる不織布である。
【0008】
織布は、経糸と緯糸とを織って形成された布であるので経糸と緯糸との間には通孔は形成されておらず、しかも、織布の表面には、経糸と緯糸との織目に起因する凹凸が形成され、得られる絶縁基板の表面に凹凸が生じるといった問題点を有していた。
【0009】
又、織布は、経糸又は緯糸方向には高い抗張力を有するものの、経糸及び緯糸に対して斜め方向の引張力には弱いといった問題点を有していた。
【0010】
これに対して不織布は上述した織布のような問題点はないものの、織布よりも引張強度などの点で劣り、嵩高くなり易いことから薄膜化にも限界があった。
【0011】
一方、回路基板には、ポリイミドやポリエステルなどのフィルム上に回路を形成してなる可撓性を有するフレキシブル基板と呼ばれる回路基板がある。フレキシブル基板は、その可撓性を利用して機器内での電子回路の配置自由度を高められることが一番の特徴である。
【0012】
フレキシブル基板は、通常、合成樹脂フィルムから形成されており、補強材として繊維が添加されることはない。これは、織布ではフレキシブル基板の可撓性が損なわれ、又、不織布では、嵩高くなりやすくフレキシブル基板で要求される厚みでは補強材としての充分な強度を得ることができないといった問題点があるためである。
【0013】
【特許文献1】特公昭60−52937号公報
【特許文献2】特開昭61−160500号公報
【特許文献3】特開2000−174438号公報
【特許文献4】特開2004−51951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耐熱性に優れ且つ熱膨張率が低く、何れの方向に対しても優れた機械的強度を有し表面平滑性に優れた絶縁基板及びその製造方法、この絶縁基板を用いた積層板及び配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の絶縁基板は、通孔11を有する繊維基材1の両面に熱硬化性樹脂層2、2が積層一体化されており、これら熱硬化性樹脂層2、2同士は上記繊維基材1の通孔11を通じて一体化されている。
【0016】
上記絶縁基板を構成している繊維基材1は通孔11を有している。このような繊維基材1としては、通孔を有し且つ両面に積層一体化させた熱硬化性樹脂層を通孔を通じて一体化させることができればよく、複数条の繊維束を交差させていると共に繊維束同士の交差部を一体化させてなり、互いに隣接する繊維束間に通孔が形成された網状体が好ましい。
【0017】
このような網状体としては、例えば、図1又は図2に示したように、繊維束1a、1a・・・を多数本、所定間隔毎、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mm毎に並設してなる繊維束列1Aと、この繊維束列1Aの繊維束1aに斜行又は直交する方向に、多数の繊維束1b、1b・・・を所定間隔、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mm毎に並設してなる繊維束列1Bとからなり、これらの繊維束列1A、1Bの繊維束1a、1bの交差部を熱融着や接着剤などの公知の手段でもって一体化することにより多数の通孔11が設けられてなるものや、このようにして得られた網状体の一面に、図3又は図4に示すように、多数本の繊維束1d、1d・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mm毎に並設してなる繊維束列1Dを、網状体を形成している上記2列の繊維束列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、繊維束列1A(1B)の繊維束1a(1b)と、繊維束列1Dの繊維束1dとの交差部を接着剤或いは熱融着により一体化させて多数の通孔11を設けてなるように形成してなる網状体、図5に示したように、多数本の繊維束1d、1d・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mm毎に並設してなる繊維束列1D及び多数本の繊維束1e、1e・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mm毎に並設してなる繊維束列1Eを、網状体を形成している上記2列の繊維束列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、繊維束列1A(1B)の繊維束1a(1b)と、繊維束列1D、1Eの繊維束1d、1eとを接着剤或いは熱融着により一体化させて多数の通孔11を設けてなるように形成してなる網状体を挙げることができ、様々な方向の強度に優れた図5に示した網状体が好ましい。なお、網状体は、例えば、特公平3−80911号公報に記載の方法を用いて製造することができる。
【0018】
そして、網状体を構成している繊維束を構成している繊維としては、特に限定されず、例えば、アラミド繊維、玄武岩繊維などが挙げられるが、強度の点において炭素繊維と同等の性能を示し、ガラス繊維と比較して半分程度の比重であって軽量性に優れていることから、アラミド繊維が好ましく、機械的強度が優れていることから、パラ系のアラミド繊維が好ましい。なお、パラ系のアラミド繊維としては、例えば、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維やポリ−p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタラミド繊維などが挙げられる。
【0019】
ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維は、東レ・デュポン社から商品名「ケブラー」にて市販され、ポリ−p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタラミド繊維は、帝人社から商品名「テクノーラ」にて市販されている。
【0020】
繊維束は、モノフィラメントが束ねられたものであって、所謂、マルチフィラメントといわれるが、モノフィラメントが撚られたものであっても無撚り状であってもよいが、熱硬化性樹脂の含浸性に優れ、網状体に熱硬化性樹脂を均一に且つ充分に含浸することができ、機械的強度に優れ且つ熱膨張率が低く、何れの方向に対しても優れた機械的強度を有しており、表面平滑性に優れた絶縁基板を得ることができるので、モノフィラメントが無撚り状であることが好ましい。
【0021】
モノフィラメントの繊維径は、細いと、繊維基材の強度が低下することがあり、太いと、繊維束の形成に支障を生じることがあるので、2〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0022】
又、繊維束の繊度は、細いと、繊維基材の強度が低下することがあり、太いと、繊維基材の厚みが厚くなり過ぎることがあるので、100〜2000dtexが好ましく、100〜1000dtexがより好ましい。
【0023】
そして、図6に示したように、上記網状体1の両面には、完全に熱硬化された熱硬化性樹脂層2、2が積層一体化されている。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられ、絶縁基板としての耐熱性、電気特性などの点から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂が好ましい。
【0024】
網状体1の両面に熱硬化性樹脂層2、2が積層一体化され、熱硬化性樹脂層2、2は網状体1の通孔11を通じて一体化している。そして、網状体1の表面は全面的に熱硬化性樹脂層2、2によって被覆されている。
【0025】
従って、熱硬化性樹脂層2、2は網状体1の両面に強固に積層一体化されており、熱硬化性樹脂層2、2が網状体1から不測に剥離するようなことはない。そして、熱硬化性樹脂は、網状体1の表面からだけでなく、網状体1の通孔11の壁面11aを通じて網状体1を構成している繊維束中に充分に浸透しており、絶縁基板Aは優れた機械的強度を有している。
【0026】
特に、繊維束を構成しているモノフィラメントが無撚り状である場合には、モノフィラメント間に熱硬化性樹脂が円滑に浸透し、得られる絶縁基板Aは更に優れた機械的強度を有する。
【0027】
そして、網状体1の表面に形成された凹凸は熱硬化性樹脂層2、2によって隠蔽され、絶縁基板の表面は平滑面とされており、よって、絶縁基板の表面に精密な回路を形成することができる。
【0028】
次に、本発明の絶縁基板の製造方法について説明する。先ず、未硬化の熱硬化性樹脂を溶媒に溶解させて熱硬化性樹脂溶液を作製した後、合成樹脂フィルムや金属シートなどの基材上に熱硬化性樹脂溶液を流延、展開した後、熱硬化性樹脂溶液を加熱して溶媒を除去すると共に、熱硬化性樹脂をBステージ状態となるまで硬化させて、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを作製する。
【0029】
一方、通孔を有する網状体を用意する。なお、網状体と熱硬化性樹脂との接着性を改善するために、網状体に熱硬化性樹脂シートを積層する前に、網状体に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理などの処理を施しておいてもよい。
【0030】
次に、上記網状体の両面にBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層させて積層シートを作製する。次に、積層シートを加熱しながら厚み方向に押圧することによって、網状体の両側に積層させた熱硬化性樹脂シート同士を網状体の通孔を通じて一体化させると共に、熱硬化性樹脂シートを構成している熱硬化性樹脂を網状体内に含浸させる。
【0031】
積層シートを加熱しながら厚み方向に押圧する方法としては、積層シートを一対の加熱されたロール間に供給する方法が挙げられる。この場合、ロールへの熱硬化性樹脂の付着を防止してロール表面の平滑性を確保するために、積層シートとロールとの間に離型フィルムを介在させてもよい。
【0032】
この際、熱硬化性樹脂シートを構成している熱硬化性樹脂は、網状体における熱硬化性樹脂シートの積層面からだけでなく、網状体の通孔の壁面11aを通じて繊維束中に含浸し、熱硬化性樹脂は、網状体の内部に充分に且つ確実に含浸される。
【0033】
そして、上述した熱硬化性樹脂シート同士の一体化及び熱硬化性樹脂の網状体中への含浸と同時に、熱硬化性樹脂シートを完全に硬化させることによって、完全に熱硬化した熱硬化性樹脂層2、2が網状体1の両面に積層一体化されてなる絶縁基板Aを得ることができる。
【0034】
又、絶縁基板の一面又は両面に金属箔を積層一体化しておいてもよい。絶縁基板の一面又は両面に金属箔を積層一体化しておくことによって、金属箔からエッチング処理等によって不要部分を除去して直ちに配線板を製造することができる。
【0035】
上記金属箔としては、特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられ、銅箔が好ましい。
【0036】
絶縁基板の一面に金属箔を積層一体化する方法としては、網状体の両面にBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層させて積層シートを作製する際に、熱硬化性樹脂シート上に更に金属箔を積層させ、しかる後、積層シートをその厚み方向に押圧しながら加熱することによって、少なくとも一面に金属箔が積層一体化されてなる絶縁基板を製造することができる。なお、金属箔と熱硬化性樹脂層との接着を確実なものとするために、金属箔における熱硬化性樹脂シートに対向する面を粗面化しておいてもよい。
【0037】
そして、上述の絶縁基板を用いて配線板を製造する方法としては、例えば、金属箔が少なくとも一面に積層一体化された絶縁基板の金属箔上にレジストでパターンを形成した後、不要部分をエッチングなどによって除去することによって所望の回路パターンを形成する方法(サブトラクティブ法)や、絶縁基板上に予めレジストによってパターンを形成しておき、メッキなどで回路パターンを形成する方法(アディティブ法)などが挙げられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の絶縁基板は、通孔を有する繊維基材の両面に熱硬化性樹脂層が積層一体化されており、これら熱硬化性樹脂層同士は上記繊維基材の通孔を通じて一体化されていることを特徴とするので、熱硬化性樹脂層を構成している熱硬化性樹脂が繊維基材の表面からだけでなく通孔の壁面を通じても繊維基材の内部に充分に含浸されており、熱硬化性樹脂層が繊維基材の両面に強固に積層一体化されていると共に、繊維基材も熱硬化性樹脂によって確実に補強されており、よって、絶縁基板は、熱膨張率が低く、何れの方向に対しても優れた機械的強度を有している。
【0039】
そして、絶縁基板は、繊維基材の両面が熱硬化性樹脂層によって被覆され、繊維基材の凹凸が隠蔽されているので表面平滑性に優れており、絶縁基板の表面に精密な回路を容易に形成することができる。
【0040】
又、上記絶縁基板において、繊維基材が、複数条の繊維束を交差させていると共に繊維束同士の交差部を一体化させてなる網状体であり、互いに隣接する繊維束間に通孔が形成されている場合には、繊維束が所定間隔毎に配設されて繊維束間に通孔が形成されることによって繊維基材は優れた可撓性を有し、よって、絶縁基板は、優れた柔軟性を有しており、フレキシブル基材として好適に用いることができる。
【0041】
そして、繊維基材は複数条の繊維束を交差させて繊維束同士の交差部を一体化させているので、絶縁基板は、全ての方向に対して優れた機械的強度を有している。
【0042】
更に、上記絶縁基板において、繊維束のモノフィラメントが無撚り状に束ねて形成されている場合には、熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂が繊維束のモノフィラメント間に確実に浸透しており、絶縁基板は優れた機械的強度を有している。
【0043】
又、上記絶縁基板において、繊維がアラミド繊維である場合には、絶縁基板は更に優れた機械的強度を有している。
【0044】
そして、本発明の絶縁基板の製造方法は、通孔を有する繊維基材の両面に、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層して積層シートを形成し、この積層シートを加圧しながら加熱して上記繊維基材の両面に積層させた上記熱硬化性樹脂シート同士を上記繊維基材の通孔を通じて一体化させると共に、上記熱硬化性樹脂シートを硬化させることを特徴とするので、熱硬化性樹脂シート同士は繊維基材の通孔を通じて一体化し、熱硬化性樹脂シートから構成される熱硬化性樹脂層は、繊維基材を両側から挟持した状態に繊維基材の両面に積層一体化される。
【0045】
しかも、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを構成している熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂のように流動性に優れているので、繊維基材の両面からだけでなく、繊維基材の通孔の壁面を通じても繊維基材を構成している繊維間に浸透して繊維基材を強化し、よって、得られる絶縁基板は、優れた機械的強度を有し、熱膨張率も低く寸法安定性に優れている。
【0046】
そして、上記絶縁基板の製造方法において、繊維基材が、複数条の繊維束を交差させると共に繊維束同士の交差部を一体化させてなる網状体であり、互いに隣接する繊維束間に通孔が形成されている場合には、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを構成している熱硬化性樹脂を繊維基材の通孔を通じて更に効果的に繊維基材を構成している繊維束中に浸透させることができ、よって、得られる絶縁基板は、更に優れた機械的強度を有し且つ熱膨張率も低く寸法安定性に更に優れている。
【0047】
又、上記絶縁基板の製造方法において、繊維束がモノフィラメントを無撚り状に束ねて形成されている場合には、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを構成している熱硬化性樹脂を繊維束のモノフィラメント間に更に円滑に且つ確実に浸透させて繊維基材を更に均一に強化することができ、よって、得られる絶縁基板は、その全ての方向において、引張強度などの機械的強度に優れている。
【0048】
そして、上記絶縁基板の少なくとも一面に金属箔が積層一体化されている積層板は、エッチングなどの汎用の手段を用いて回路を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(実施例1)
ポリ−p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタラミドのモノフィラメントを無撚り状に束ねてなる繊維束(帝人社製 商品名「テクノーラ」、モノフィラメントの繊維径:12μm、繊度:220dtex)を用意した。
【0050】
そして、図5に示したように、上記繊維束1a、1a・・・を多数本、5mm間隔毎に並設してなる繊維束列1Aと、この繊維束列1Aの繊維束1aに直交する方向に、多数の繊維束1b、1b・・・を5mm間隔毎に並設してなる繊維束列1Bとからなり、これらの繊維束列1A、1Bの繊維束1a、1bの交差部を接着剤によって一体化した。
【0051】
更に、多数本の上記繊維束1d、1d・・・を一定間隔毎に並設してなる繊維束列1D及び多数本の繊維束1e、1e・・・を一定間隔毎に並設してなる繊維束列1Eを、上記2列の繊維束列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、繊維束列1A(1B)の繊維束1a(1b)と、繊維束列1D、1Eの繊維束1d、1eとを接着剤を用いて一体化させて多数の通孔11を設けてなる網状体を作製した。なお、繊維束1d、1eと繊維束1a、1bとは、繊維束1a、1bの交点において重なり合うように調整した。
【0052】
一方、多官能エポキシ樹脂(東都化成社製 商品名「YDCN−704」)80重量部、ビスフェノール型ノボラック樹脂(JER社製 商品名「YLH−129」)20重量部及び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2重量部を含む熱硬化性樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて熱硬化性樹脂溶液を作製した。
【0053】
次に、金属ベルトキャスティング成形機の金属ベルト上に熱硬化性樹脂溶液を流延、展開した後、熱硬化性樹脂溶液を80℃にて30分間に亘って加熱してメチルエチルケトンを除去すると共に、熱硬化性樹脂をBステージ状態となるまで硬化させて、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを二枚作製した。
【0054】
しかる後、上記網状体の両面にBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層して積層シートを作製し、真空プレスを用いて積層シートを両面から厚み方向に2MPaの押圧力で圧縮しながら60分間に亘って180℃に加熱してBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを完全に硬化させることによって、網状体の両面に熱硬化性樹脂層が積層一体化されてなる絶縁基板を得た。
【0055】
得られた絶縁基板において、網状体の両面に積層一体化された熱硬化性樹脂層は網状体の通孔を通じて一体化され、網状体の表面は熱硬化性樹脂層によって全面的に被覆されており熱硬化性樹脂層の表面は平滑であった。又、熱硬化性樹脂シートを構成していた熱硬化性樹脂は、網状体の両面及び通孔の壁面を通じて網状体を構成しているモノフィラメント間に充分に浸透していた。
【0056】
(実施例2)
実施例1と同様の要領で網状体及び二枚のBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを作製した。そして、厚さが12μmの銅箔を二枚用意し、これら銅箔の一面に粗面化処理を施した。
【0057】
次に、網状体の両面にBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層させた後に、両方の熱硬化性樹脂シート上に銅箔をその粗面化処理面が熱硬化性樹脂シート側となるように積層して積層シートを得た。
【0058】
しかる後、真空プレスを用いて積層シートを両面から厚み方向に2MPaの押圧力で圧縮しながら60分間に亘って180℃に加熱してBステージ状態の熱硬化性樹脂シートを完全に硬化させることによって、網状体の両面に熱硬化性樹脂層が積層一体化され且つ双方の熱硬化性樹脂層上に銅箔が積層一体化されてなる絶縁基板を得た。
【0059】
得られた絶縁基板において、網状体の両面に積層一体化された熱硬化性樹脂層は網状体の通孔を通じて一体化され、網状体の表面は熱硬化性樹脂層によって全面的に被覆されており熱硬化性樹脂層の表面は平滑であった。又、熱硬化性樹脂シートを構成していた熱硬化性樹脂は、網状体の両面及び通孔の壁面を通じて網状体を構成しているモノフィラメント間に充分に浸透していた。
【0060】
(実施例3)
実施例1で得られた絶縁基板の一方の熱硬化性樹脂層の表面にプラズマ表面処理を施した後、アディティブ法(無電解メッキ法)によって所定の回路パターンを形成して配線板を得た。
【0061】
(比較例1)
網状体の代わりに、アラミド繊維からなり且つ通孔が形成されていない厚みが0.11mmの平織状の織布(日東紡社製)を用いて実施例1と同様の要領で絶縁基板を得た。
【0062】
得られた絶縁基板は、織布の両面に積層一体化された熱硬化性樹脂層同士は一体化されておらず、熱硬化性樹脂シートを構成していた熱硬化性樹脂は織布に充分に浸透しておらず、織布中に気泡や空隙部が多数、形成されていた。又、絶縁基板の表面には、織布に起因した凹凸が形成されていた。
【0063】
(比較例2)
網状体の代わりに、アラミド繊維からなり且つ通孔が形成されていない不織布(王子製紙社製、目付:18g/m2)を用いて実施例1と同様の要領で絶縁基板を得た。
【0064】
得られた絶縁基板は、不織布の両面に積層一体化された熱硬化性樹脂層同士は一体化されておらず、熱硬化性樹脂シートを構成していた熱硬化性樹脂は不織布に充分に浸透していなかった。不織布中に気泡や空隙部が形成されていた。
【0065】
実施例1及び比較例1、2で得られた絶縁基板の熱膨張係数及び引張強度を下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0066】
(熱膨張係数)
絶縁基板から幅2mm、長さ10mmの短冊状の試験片を切り出し、この試験片を用いて熱分析装置(セイコーインスツル社製 商品名「TMA/SS120C」)を用いて試験片の長さ方向の熱膨張係数を測定した。
【0067】
(引張強度)
絶縁基板を幅1cmに切断して試験片を作製し、この試験片の引張強度を引張試験機(オリエンテック社製 商品名「テンシロンUCT500」)を用いて測定した。なお、引張試験の条件は引張速度5mm/分とした。
【0068】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の絶縁基板を構成している網状体を示した平面図である。
【図2】本発明の絶縁基板を構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図3】本発明の絶縁基板を構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図4】本発明の絶縁基板を構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図5】本発明の絶縁基板を構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図6】本発明の絶縁基板を示した断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 繊維基材(網状体)
11 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通孔を有する繊維基材の両面に熱硬化性樹脂層が積層一体化されており、これら熱硬化性樹脂層同士は上記繊維基材の通孔を通じて一体化されていることを特徴とする絶縁基板。
【請求項2】
繊維基材が、複数条の繊維束を交差させていると共に上記繊維束同士の交差部を一体化させてなる網状体であり、互いに隣接する上記繊維束間に通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項3】
繊維束は、モノフィラメントが無撚り状に束ねて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の絶縁基板。
【請求項4】
繊維がアラミド繊維であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の絶縁基板。
【請求項5】
可撓性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の絶縁基板。
【請求項6】
通孔を有する繊維基材の両面に、Bステージ状態の熱硬化性樹脂シートを積層して積層シートを形成し、この積層シートを加圧しながら加熱して上記繊維基材の両面に積層させた上記熱硬化性樹脂シート同士を上記繊維基材の通孔を通じて一体化させると共に、上記熱硬化性樹脂シートを硬化させることを特徴とする絶縁基板の製造方法。
【請求項7】
繊維基材が、複数条の繊維束を交差させると共に上記繊維束同士の交差部を一体化させてなる網状体であり、互いに隣接する上記繊維束間に通孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項8】
繊維束は、モノフィラメントが無撚り状に束ねて形成されていることを特徴とする請求項7に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の絶縁基板の少なくとも一面に金属箔が積層一体化されてなることを特徴とする積層板。
【請求項10】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の絶縁基板の少なくとも一面に回路が形成されていることを特徴とする配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−56335(P2010−56335A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220352(P2008−220352)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)