説明

綴じ機

【課題】操作に要するエネルギーを低く抑えながら刃を復帰させるために必要な弾性反発力を必要な時点で確保することができる綴じ機を提供する。
【解決手段】複数枚の用紙Pを保持する用紙保持部2と、この用紙保持部2に保持された用紙Pに貫通する刃3と、作動体に加えられる操作力を利用して前記刃3と前記用紙保持部2とを相対的に作動させる駆動機構4と、作動体に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングT3に至った後、その反発力により前記刃3を用紙Pから抜き取って前記用紙Pを綴じるためのばね5とを具備してなるものであって、前記刃3が用紙Pに最も深く貫通する最深貫通タイミングT2と、前記刃3が用紙Pから抜き取られる際の抜き抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングT4との間で、前記作動体の操作終了タイミングT3を迎え得るように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた複数枚の用紙の端部を一体的に綴じ合わせる綴じ機のうち、特に金属製の針を使用しない方式の、いわゆる針なしステープラと称される綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の綴じ機として、抜き刃とパンチ台により複数枚の用紙から切り起こされた切起片を用いて、それら複数枚の用紙を相互に接合するための綴じ機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この綴じ機は、ハンドルを一往復動作させることによって抜き刃が一往復動作するように構成されており、ハンドルの往動作時に固定されたパンチ台に添設された用紙に刃を貫入させて孔をあけ、ハンドルの復動作時に用紙から刃を抜き取って綴じ動作を完了させるようにしている。詳述すれば、従来の綴じ機は、ハンドルを往動作させる際に、刃を用紙に貫入させながら、刃を抜き取るための復帰用のばねを弾性変形させるように構成されている。そして、ハンドルから手を離すことによって、そのハンドルが前記復帰用のばねの反発力により自動的に復動作するとともに刃が用紙から抜き取られるようになっている。
【0004】
そのため、ハンドルを往動作させる際に刃を貫通させるためのエネルギーと、刃を抜き取るためのエネルギーとを同時に加えざるを得ず、操作力を小さくすることには一定の限界があり、何らかの対策が望まれていた。
【0005】
本発明者らはこのような要望に応えるべく種々の研究を行った結果、次のような知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、この種の綴じ機においては、刃復帰用のばねとして、コイルスプリング等のように変位量と反発力が略正比例するという特性を備えたものが用いられている。そのため、図16に示すように、操作を開始するタイミングから刃復帰用のコイルスプリングの反発力が直線的に増大し、操作を終了する時点(操作終了タイミング)において、その反発力が最大となる反発力最大タイミングを同時に迎えることになる。そして、前記刃は前記減少する刃復帰用のコイルスプリングの反発力により駆動され、用紙から抜き取られる。すなわち、刃が用紙から抜き取られる際の最も抵抗力が増大する時点(最大抵抗タイミング)となるクリンチポイントは、刃が用紙から抜き取られる動作の後半に位置する。そして、前記クリンチポイントにおいては、刃復帰用のコイルスプリングの反発力が比較的減少した状態にあり、大きな反発力を発揮している領域では有効な働きをなしていないことがわかった。
【0007】
かかる知見に基づき、さらに研究を進めた結果、反発力最大タイミングを最大抵抗タイミングに近づけることにより、刃復帰用のコイルスプリングの有効な働きをしていない領域を減らすことができるという事実をつきとめ、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みて、操作に要するエネルギーを低く抑えながら刃を復帰させるために必要な弾性反発力を必要な時点で確保することができる綴じ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る綴じ機は、複数枚の用紙を保持する用紙保持部と、この用紙保持部に保持された用紙に貫通する刃と、作動体に加えられる操作力を利用して前記刃と前記用紙保持部とを相対的に作動させる駆動機構と、作動体に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングに至った後、その反発力により前記刃を用紙から抜き取って前記用紙を綴じるためのばねとを具備してなるものであって、前記刃が用紙に最も深く貫通する最深貫通タイミングと、前記刃が用紙から抜き取られる際の抜き抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングとの間で、前記作動体の操作終了タイミングを迎え得るように構成していることを特徴とする。
【0011】
ここで「用紙」とは、穿孔対象物であれば、どのようなものであってもよく、紙製のものの他、プラスチック製、金属製、または木製のものも含まれる。また、薄いシート状のものに限られない。
【0012】
また、「ばね」とは、蓄積した反発力により刃と用紙とを相対的に抜き取り動作させるようなものであればどのようなものであってもよく、例えば、圧縮コイルスプリング、引っ張りコイルスプリング、ねじりコイルスプリング、板バネ、ガススプリング等種々のものが含まれる。
【0013】
このようなものであれば、操作に要するエネルギーを低く抑えながら刃を復帰させるために必要な弾性反発力を必要な時点で確保することができる。
【0014】
ばねは、変位量と反発力とが略正比例するものが好ましい。
【0015】
作動体は、手動により操作されて作動するものが好ましい。
【0016】
用紙綴じの具体的な態様としては、複数枚の用紙に打ち抜き孔及びカット孔を形成するとともに、その打ち抜き孔から切り起こされた切起片の先端部分を前記カット孔に挿通させ、その切起片とカット孔との係わり合いによってそれら複数枚の用紙を相互に綴じることができるようにしたものが挙げられ、前記刃は、前記打ち抜き孔を形成するための抜き刃と、前記カット孔を形成するための切込刃であるものが一例として挙げられる。
【0017】
作動体が、操作開始位置から中間位置を経て操作終了位置に達する範囲で動作するものである場合の好適な態様としては、前記駆動機構が、作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでに加えられる操作力により、刃と用紙保持部とを相互に離間した待機状態と用紙に刃が貫通する貫通状態との間で相対的に作動させる動作と、作動体が前記中間位置から操作終了位置に達するまでに加えられる操作力により、刃が用紙から一定寸法だけ抜き取られるように刃と用紙保持部とを相対的に移動させる動作とを順次行うように構成されたものであることが好ましい。
【0018】
より具体的には、前記作動体が、操作開始位置から中間位置を経て操作終了位置に達する範囲で動作するものであり、前記駆動機構が、作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでに加えられる操作力により、用紙保持部を静止した刃に対して作動させて用紙に刃を貫通させる動作と、作動体が前記中間位置から操作終了位置に達するまでに加えられる操作力により、刃が用紙から一定寸法だけ抜き取られるように刃を静止した用紙保持部に対して作動させる動作とを順次行うように構成されたものであり、作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでの間だけ刃を用紙に貫通し得る特定位置にロックする第一のロック機構と、作動体が中間位置を越えて操作終了位置に達し、一定寸法退避した刃をロックする第二のロック機構とを備えたものであるものが挙げられる。
【0019】
ここで、「一定寸法」とは、刃が用紙に最も深く貫通した状態からクリンチポイントの直前状態に至るまでの寸法を言う。
【0020】
本発明の綴じ機は、複数枚の用紙を保持する用紙保持部と、この用紙保持部に保持された用紙に貫通する刃と、作動体に加えられる操作力を利用して前記刃と前記用紙保持部とを相対的に作動させる駆動機構と、作動体に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングに至った後、その反発力により前記刃を用紙から抜き取って前記用紙を綴じるためのばねとを具備してなり、刃を用紙から抜き取るのに寄与するばねの反発力が最も大きくなる反発力最大タイミングを、前記刃が用紙に最も深く貫通する最深貫通タイミングよりも後に変位させて、前記用紙から刃を抜き取る際の抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングに近づけるように構成したことを特徴とするものであれば上述した効果が得られる。
【0021】
ここで、「反発力最大タイミング」とは、刃を用紙から抜き取るのに寄与し得る状態でばねの反発力が最も大きくなるタイミングを意味しており、反発力を発揮しないようにばねがロックされている状態にある時間帯は含まれない概念である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のような構成であるから、操作に要するエネルギーを低く抑えながら刃を復帰させるために必要な弾性反発力を必要な時点で確保することができる綴じ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる綴じ機の平面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】同実施形態の綴じ機の作動を示す概略図。
【図4】同実施形態の綴じ機を示す概略図。
【図5】同実施形態の綴じ機の作動を示す概略図。
【図6】同実施形態の綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【図8】本発明の第三実施形態にかかる綴じ機の概略図。
【図9】同実施形態の綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【図10】本発明の第四実施形態にかかる綴じ機の概略図。
【図11】同実施形態の綴じ機の作動を示す概略図。
【図12】同実施形態の綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【図13】本発明の第五実施形態にかかる綴じ機の概略図。
【図14】同実施形態の綴じ機の作動を示す概略図。
【図15】同実施形態の綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【図16】従来の綴じ機の作動を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第一実施形態、図1〜図6>
以下、本発明の第一実施形態について図1ないし図6を参照しながら説明する。
【0025】
この綴じ機1は、図1ないし図6に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0026】
この冊子Bは、図1及び図2に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは綴じ元側に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃31により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51側を、前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの綴じ元側が相互に接合されている。
【0027】
前記切起片P5は、図1及び図2に示すように、一端が半円弧状をなす舌片状のものである。なお、切起片P5は矢尻状のものにする等種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0028】
前記打ち抜き孔P1は、図1及び図2に示すように、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃31による穿孔直後は、抜き刃31の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、切起片P5の形状に対応した一端が半円弧状をなす長孔状の空間である。なお、打ち抜き孔P1は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0029】
一方、前記カット孔P2は、図1及び図2に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための直線状をなすメインスリットP21と、このメインスリットP21の両端から所定の方向、すなわち打ち抜き孔P1と反対の方向に屈曲して伸びるサブスリットP22とを備えている。なお、カット孔P2は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0030】
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、図1及び図3ないし図6を参照して説明する。
【0031】
この綴じ機1は、図1及び図3ないし図6に示すように、複数枚の用紙Pを保持する用紙保持部2と、この用紙保持部2に保持された用紙Pに貫通する刃3と、作動体たるハンドル9に加えられる操作力を利用して前記刃3と前記用紙保持部2とを相対的に作動させる駆動機構4と、ハンドル9に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングT3に至った後、その反発力により前記刃3を用紙Pから抜き取って前記用紙Pを綴じるためのばねであるスプリング5とを具備してなる。
【0032】
用紙保持部2は、図1及び図3ないし図6に示すように、用紙Pを挿入可能な隙間21を有するもので、ハウジング6に待機位置(d)から貫通位置(e)までの間で昇降し得るように保持されている。本実施形態では、用紙保持部2が待機位置(d)よりも上方に移動するのを禁止する図示しない上ストッパと、用紙保持部2が貫通位置(e)よりも下方に移動するのを禁止する下ストッパ61とを、前記ハウジング6に設けている。
【0033】
刃3は、図1及び図3ないし図6に示すように、前記打ち抜き孔P1を形成するための抜き刃31と、前記カット孔P2を形成するための切込刃32であり、刃ベース7に保持されて穿孔位置(f)から退避位置(g)までの間で昇降し得るようになっている。すなわち、前記刃ベース7は、前記ハウジング6に昇降可能に保持されている。
【0034】
抜き刃31は、図1及び図3ないし図6に示すように、先端P51に湾曲部分を備えた切起片P5を形成し得るものであり、前記刃ベース7に取り付けられている。また、前記抜き刃31により囲まれた空間には、前記切起片P5を前記切込刃32に設けられた窓33に挿入させるためのインナーカム8を設けている。インナーカム8は、基端に軸81を有するとともに、先端に前記切起片P5を前記切込刃32に設けられた窓33に挿入させるための押し出し部82を備えたものである。前記インナーカム8の基端には、該インナーカム8を回動させるためのアーム83が突出させてある。
【0035】
切込刃32は、例えば、図1に示すようなコ字状をなすカット孔P2を形成し得るものであり、前記刃ベース7に取り付けられている。この切込刃32は、図1及び図3ないし図6に示すように、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ、該切起片P5を係わり合わせるための窓33を備えている。なお、以上説明した刃ベース7、抜き刃31、インナーカム8、及び切込刃32は、それぞれ種々変更可能であり、上述したものには限られない。
【0036】
ハンドル9は、図1及び図4ないし図6に示すように、手動により操作されて作動するものであり、操作開始位置(a)から中間位置(b)を経て操作終了位置(c)に達する範囲で動作するように構成されている。すなわち、このハンドル9は、軸91を介してハウジング6に上下方向に回動可能に支持されている。
【0037】
駆動機構4は、図4ないし図6に示すように、前記ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32と用紙保持部2とを相互に離間した待機状態と、用紙Pに抜き刃31及び切込刃32が貫通する貫通状態との間で相対的に作動させる動作、及び、ハンドル9が前記中間位置(b)から操作終了位置(c)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように、抜き刃31及び切込刃32と用紙保持部2とを相対的に移動させる動作を順次行うように構成されたものである。すなわち、この実施形態における駆動機構4は、用紙保持部2を作動させるための用紙用駆動部材41と、抜き刃31及び切込刃32を作動させるための刃用駆動部材42と、前記ハンドル9の回動動作に連動させて用紙用駆動部材41及び刃用駆動部材42を図6に示すようなタイミングで作動させるための動作変換機構43とを具備してなる。
【0038】
動作変換機構43は、図4ないし図6に示すように、ハンドル9に加えられる操作力によって前記用紙用駆動部材41と刃用駆動部材42とを図6に示すようなタイミングで作動させるとともに、前記操作力が消勢した際に、スプリング5の反発力により前記用紙用駆動部材41及び刃用駆動部材42、並びにハンドル9を復帰動作させるためのもので、例えば、図4及び図5に模式的に示すような構成をなしている。すなわち、この実施形態における動作変換機構43は、ハンドル9の下面に取り付けられカム面431を前記用紙用駆動部材41の上面に当接させた第一のカム47と、ハンドル9の下面に取り付けられカム面432を前記刃用駆動部材42の上面に当接させた第二のカム48とを具備してなる。前記第一、第二のカム47、48の各カム面431、432と、前記用紙用駆動部材41及び刃用駆動部材42の各カム受け面433、434とは、図6に示すようなタイミングチャートに対応する形状に設定してある。前記用紙用駆動部材41は、連結部材44を介して用紙保持部2に一体動作可能に接続されている。前記刃用駆動部材42は、昇降部材45とアーム46とを介して刃ベース7に接続されている。昇降部材45は、降下時に前記アーム46を下方に押圧するための下向き押圧面451と、上昇時に前記アーム46を上方に引き上げるための上向き押圧面452とを備えている。
【0039】
スプリング5は、例えば、図3ないし図6に示すように、変位量と反発力とが略正比例する圧縮コイルスプリング5であり、ハウジング6の底面と用紙保持部2の下面との間に配されている。
【0040】
本実施形態では、刃3を穿孔位置(f)でロックするための第一のロック機構10と、刃3を退避位置(g)でロックするための第二のロック機構11とを備えている。
【0041】
第一のロック機構10は、図4ないし図6に示すように、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでの間だけ、抜き刃31及び切込刃32を用紙Pに貫通し得る特定位置、すなわち穿孔位置(f)にロックするものであり、刃ベース7とハウジング6との間に設けられている。この第一のロック機構10は、例えば、前記駆動機構4の昇降部材45における下向き押圧面451が前記アーム46に当接したときにロック解除され、前記昇降部材45における上向き押圧面452が前記アーム46に当接した状態のまま、刃3が穿孔位置(f)に達した段階でロック状態となるように構成されている。
【0042】
第二のロック機構11は、図4ないし図6に示すように、ハンドル9が中間位置(b)を越えて操作終了位置(c)に達し、一定寸法L退避した抜き刃31及び切込刃32をロックするものであり、刃ベース7とハウジング6との間に設けられている。この第二のロック機構11は、例えば、前記駆動機構4の昇降部材45における下向き押圧面451が前記アーム46に当接した状態のまま、刃3が退避位置(g)に達した段階でロック状態となり、前記昇降部材45における上向き押圧面452が前記アーム46に当接したときにロック解除されるように構成されている。この実施形態において、前記一定寸法Lとは、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pに最も深く貫通した状態から、切込刃32の窓33の上縁34が切起片P5を用紙P方向へ押し付ける状態にいたるまでの寸法である。
【0043】
なお、図4及び図5に示している符号12は、刃ベース7を初期位置である穿孔位置(f)に復帰させるためのばねである補助スプリングである。この補助スプリング12は、第二のロック機構11から開放された無負荷状態の刃ベース7を退避位置(g)から穿孔位置(f)に復帰させるのに必要十分な小さな反発力を有するものでよい。
【0044】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の操作開始T1から綴じ動作終了T5までの作動を、図3、図5及び図6を用いて説明する。
【0045】
この綴じ機1によれば、ハンドル9を操作開始位置(a)から中間位置(b)まで同一方向に操作する間に、次の動作が営まれる。すなわち、用紙保持部2は、待機位置(d)から貫通位置(e)まで降下し、その貫通位置(e)で下ストッパ61により停止させられる。その間に、スプリング5が圧縮され、反発力が蓄積される。一方、抜き刃31及び切込刃32は、第一のロック機構10の働きにより穿孔位置(f)に保持され停止している。したがって、用紙保持部2に保持された用紙Pに抜き刃31及び切込刃32が貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成されるとともに、インナーカム8が用紙保持部2の降下動作に伴って回動を始め、打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を切込刃32の窓33に挿入する。そして、ハンドル9が中間位置(b)に達した段階で、前記刃3が用紙Pに最も深く貫通する最深貫通タイミングT2を迎え、切起片P5が適切に切込刃32の窓33に収まることになる。
【0046】
そして、最深貫通タイミングT2の後、ハンドル9が中間位置(b)から操作終了位置(c)までさらに同一方向に操作されると、次の動作が営まれる。すなわち、用紙保持部2は、前記下ストッパ61と、動作変換機構43との協働により貫通位置(e)に停止している。スプリング5は、最も圧縮された状態を維持したまま保持されている。一方、抜き刃31及び切込刃32は、最深貫通タイミングT2で前記第一のロック機構10のロック状態が解除されるため、動作変換機構43に付勢されて降下する刃用駆動部材42に押圧されて一定寸法Lだけ降下し、切込刃32の窓33の上縁34で切起片P5を用紙Pに向けて押し付ける。そして、刃ベース7が一定寸法Lだけ降下した段階で、第二のロック機構11により抜き刃31及び切込刃32が退避位置(g)にロックされる。ハンドル9が操作終了位置(c)に達した段階、すなわち、操作終了タイミングT3で、反発力最大タイミングを迎える。
【0047】
次に、ハンドル9から手を離すと、次の動作が営まれる。すなわち、ハンドル9に加えられていた操作力が消勢すると、用紙保持部2がスプリング5の反発力により上方に移動する。その結果、切起片P5が窓33の上縁34に押圧されてカット孔P2に押し込まれ、綴じ動作が終了する。その途中、すなわち、カット孔P2に切起片P5が押し込まれて、その先端P51が反対側の面に抜き取られる際に、前記刃3が用紙Pから抜き取られる際の抜き抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングT4(クリンチポイント)を迎えることになる。この抜き取り動作は、スプリング5の反発力により行われる。
【0048】
この最大抵抗タイミングT4は、スプリング5の反発力が最も大きくなる反発力最大タイミングに近く設定してあるので、スプリング5に無駄なエネルギーを蓄積しておく必要がなくなる。換言すれば、従来のものであれば、図6に一点鎖線で示すように、最深貫通タイミングT2で大きな反発力を蓄積しておかないと、クリンチポイントをスプリング5力のみで通過させることは不可能であった。しかしながら、本実施形態によれば、従来よりも小さな反発力の蓄積で、クリンチポイントを通過させることが可能になる。したがって、ハンドル9に大きな操作力を加える必要がなくなり、操作感を軽快なものとすることができる。
【0049】
なお、前記抜き刃31及び切込刃32は、用紙Pから抜き取られるまでの間は、第二のロック機構11により退避位置(g)にロックされているが、その後は、第二のロック機構11のロックが解除される。第二のロック機構11による拘束から解放された抜き刃31及び切込刃32は、操作終了タイミングT3から上昇を始めた刃用駆動部材42により上方に引き上げられ、穿孔位置(f)に復帰して、第一のロック機構10によりロックされ、初期状態となる。また、ハンドル9は、動作変換機構43の働きにより、用紙用駆動部材41から伝えられるスプリング5の反発力により操作開始位置(a)まで復帰する。
【0050】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の綴じ機1は、複数枚の用紙Pを保持する用紙保持部2と、この用紙保持部2に保持された用紙Pに貫通する刃3と、ハンドル9に加えられる操作力を利用して前記刃3と前記用紙保持部2とを相対的に作動させる駆動機構4と、ハンドル9に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングT3に至った後、その反発力により前記刃3を用紙Pから抜き取って前記用紙Pを綴じるためのスプリング5とを具備してなるものであって、前記刃3が用紙Pに最も深く貫通する最深貫通タイミングT2と、前記刃3が用紙Pから抜き取られる際の抜き抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングT4との間で、前記ハンドル9の操作終了タイミングT3を迎え得るように構成しているので、操作に要するエネルギーを低く抑えながら、抜き刃31及び切込刃32を復帰させるために必要な弾性反発力を必要な時点で確保することができる。
【0051】
すなわち、最深貫通タイミングT2を越えてハンドル操作が行われるため、従来スプリング5に与えられていた無駄なエネルギーを減らすことができ、切起片P5がカット孔P2を通過して用紙Pの反対側に引き上げられる最大抵抗タイミングT4において、スプリング5の反発力を十分に利用することができる。換言すれば、刃3を用紙Pから抜き取るのに寄与するスプリング5の反発力が最も大きくなる反発力最大タイミングを、前記刃3が用紙Pに最も深く貫通する最深貫通タイミングT2よりも後に変位させて、前記用紙Pから刃3を抜き取る際の抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングT4に近づけるように構成したので、上述した効果が得られる。なお、本実施形態においては、前記操作終了タイミングT3と前記反発力最大タイミングは同時期である。
【0052】
本実施形態のスプリング5は、変位量と反発力とが略正比例するコイルスプリングであるので、比較的簡単な構成を用いて本発明を実現できる。特に、本実施形態のスプリング5は、用紙Pのうち打ち抜き孔P1及びカット孔P2が穿孔される部分の近傍に配されているので、用紙保持部2と抜き刃31及び切込刃32が協働して紙押さえの役割を果たし、用紙Pに所望の形状の打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成することができる。また、このスプリング5は、抜き刃31及び切込刃32を用紙Pから抜き取る動作に伴って、動作変換機構43及び補助スプリング12を介して前記抜き刃31及び切込刃32を前記穿孔位置(f)に自動的に復帰させるとともに、前記用紙保持部2を待機位置(d)に自動的に復帰させるものであるので、一回の綴じ動作が完了した後に、続けて綴じ動作を行うことができる。この際、従来のように、大きなバネ力を有するコイルスプリングを用いる必要がなくなり、操作力を小さくすることができるとともに、コイルスプリング5の小型化及び綴じ機1の小型化に資することができる。
【0053】
また、本実施形態では、ハンドル9が手動により操作されて作動するものであるので、従来の綴じ機に比べて小さな作動力、換言すれば、軽い操作力で穿孔動作及び綴じ動作を完了させることができる。
【0054】
複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5の先端P51部分を前記カット孔P2に挿通させ、その切起片P5とカット孔P2との係わり合いによってそれら複数枚の用紙Pを相互に綴じることができるようにしたものであり、前記刃3として、前記打ち抜き孔P1を形成するための抜き刃31と、前記カット孔P2を形成するための切込刃32を用いているので、特に用紙Pの枚数が多くなると、切起片P5をカット孔P2に挿通させる際に切込刃32と用紙Pとの間、より具体的には、切起片P5と切込刃32との間に比較的大きな摩擦力が発生する。そのため、用紙Pから切込刃32を抜き取るためのエネルギーとして、穿孔用のパンチの場合の用紙Pから刃3を抜き取るためのエネルギーよりも大きなエネルギーが必要となる。しかしながら、このような多枚数対応の綴じ機1であっても、切込刃32を用紙Pに貫通させる際に、該切込刃32を抜き取るためのエネルギーを小さくすることができるとともに、スプリング5の反発力が最大になる近傍で切起片P5をカット孔P2に挿通させることができるため、比較的小さなスプリング5を用いて切込刃32を用紙Pから引き抜くことができる。
【0055】
前記ハンドル9は、操作開始位置(a)から中間位置(b)を経て操作終了位置(c)に達する範囲で一方向に動作するものであり、前記駆動機構4が、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでに加えられる操作力により、穿孔位置(f)に保持された抜き刃31及び切込刃32に対して、用紙保持部2を待機位置(d)から貫通位置(e)まで近づける動作をし、その後、ハンドル9が前記中間位置(b)から操作終了位置(c)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように、貫通位置(e)に保持された用紙保持部2に対して、抜き刃31及び切込刃32を穿孔位置(f)から退避位置(g)まで一定寸法Lだけ遠ざける動作をするように構成されたものであるので、ハンドル9に加えられる一方向への動作を用いて、刃3と用紙保持部2とを接離動作させることができる。換言すれば、前記駆動機構4が、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでに加えられる操作力により、用紙保持部2を静止した抜き刃31及び切込刃32に対して作動させて用紙Pに刃3を貫通させる動作と、ハンドル9が前記中間位置(b)から操作終了位置(c)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように刃3を静止した用紙保持部2に対して作動させる動作とを順次行うように構成されたものであるので、ハンドル9に加えられる一方向への動作を用いて、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を穿孔し、切起片P5が形成された後に、この切起片P5がカット孔P2に挿通される直前の段階まで切込刃32によって持ち上げられることとなる。
【0056】
特に、本実施形態においては、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでの間だけ刃3を用紙Pに貫通し得る特定位置にロックする第一のロック機構10と、ハンドル9が中間位置(b)を越えて操作終了位置(c)に達し、一定寸法L退避した刃3をロックする第二のロック機構11とを備えたものであるので、第一のロック機構10の働きにより用紙保持部2を静止した抜き刃31及び切込刃32に対して作動させて用紙Pに刃3を貫通させる動作をスムーズに行うことができ、第二のロック機構11の働きにより抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように刃3を静止した用紙保持部2に対して作動させる動作後の抜き刃31及び切込刃32を退避位置(g)に保持することができる。
【0057】
<他の実施形態>
なお、本発明の綴じ機は、前記実施形態に限らず、図7、図9、図12及び図15に示すタイミングチャートに対応するものも含まれる。なお、第一実施形態のものと、同一またはそれに相当する部分には、同様の符号を付して説明を省略する。また、各タイミングチャート中の一点鎖線は、従来の綴じ機におけるばねであるスプリングの反発力を示している。
【0058】
<第二実施形態(図7)>
この綴じ機は、駆動機構4が図7に示すタイミングチャートのように動くよう構成されているものであり、第一実施形態のものと、ばねであるスプリング5が圧縮されるタイミングが異なる。すなわち、本実施形態の駆動機構4は、ハンドル9に加えられる一方向への動作に略正比例してスプリング5が反発力を蓄積するようにしている。
【0059】
図7に示すタイミングチャートを実現するための綴じ機1は、特に図示は行わないが、種々の構成が考えられる。
【0060】
<第三実施形態(図8、図9)>
この綴じ機1は、駆動機構4が図9に示すタイミングチャートのように動くよう構成されているものであり、第一実施形態のものと、用紙保持部2及び刃3の配置が異なる。このようなタイミングチャートを実現するための綴じ機1としては、図8に概略的に示すようなものが考えられる。
【0061】
具体的には、本実施形態の駆動機構4は、第一実施形態で示した前記用紙用駆動部材が、連結部材44を介して刃ベース7に接続され、本実施形態での刃用駆動部材42として機能しており、一方、第一実施形態で示した前記刃用駆動部材が、昇降部材45とアーム46とを介して用紙保持部2に一体動作可能に接続され、本実施形態での用紙用駆動部材41として機能している。
【0062】
すなわち、この綴じ機1の刃3は、第一実施形態の用紙保持部と同様に駆動され、一方、この綴じ機1の用紙保持部2は、第一実施形態の刃と同様に駆動される。したがって、第一実施形態の図5に準じた動きを行う。詳述すれば、前記駆動機構4が、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32を静止した用紙保持部2に対して作動させて用紙Pに刃3を貫通させる動作と、ハンドル9が前記中間位置(b)から操作終了位置(c)に達するまでに加えられる操作力により、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように用紙保持部2を静止した刃3に対して作動させる動作とを順次行うように構成されたものである。また、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでの間だけ用紙保持部2を用紙Pに貫通し得る特定位置にロックする第一のロック機構10と、ハンドル9が中間位置(b)を越えて操作終了位置(c)に達し、一定寸法L退避した用紙保持部2をロックする第二のロック機構11とを備えている。
【0063】
なお、タイミングチャート中の二点鎖線は、ばねであるスプリング5の反発力の変形例を示している。すなわち、本実施形態の駆動機構4に代えて、ハンドル9に加えられる一方向への動作に略正比例してスプリング5が反発力を蓄えるように構成してもよい。
【0064】
<第四実施形態(図10、図11、図12)>
この綴じ機1は、駆動機構4が図12に示すタイミングチャートのように動くよう構成されているものであり、第一実施形態のものと、用紙保持部2及び刃3の動きが異なる。このようなタイミングチャートを実現するための綴じ機1としては、図10に概略的に示すようなものが考えられる。
【0065】
この綴じ機1の刃3は、所定位置に静止しており、一方、この綴じ機1の用紙保持部2は、待機位置(d)と貫通位置(e)との間で往復動作を行う。そして、本実施形態の駆動機構4は、用紙保持部2を作動させるための用紙用駆動部材41と、前記ハンドル9の昇降動作に連動させて用紙用駆動部材41を作動させるための動作変換機構43とを具備してなる。
【0066】
動作変換機構43は、ハンドル9に加えられる操作力によって前記用紙用駆動部材41を図12に示すようなタイミングで作動させるとともに、前記操作力が消勢した際に、ばねであるスプリング5の反発力により前記用紙用駆動部材41及びハンドル9を復帰動作させるためのもので、例えば、図10に模式的に示すような構成をなしている。すなわち、この実施形態における動作変換機構43は、ハンドル9の下面に取り付けられる昇降部材49と、中間部を前記昇降部材49の下端に回転可能に取り付けられるとともに、端部を前記連結部材44に回転可能に取り付けられた用紙用駆動部材41を下方から付勢する下ストッパ50とを具備してなるものである。
【0067】
また、本実施形態では、用紙用駆動部材41を第1ロック位置(h)または第2ロック位置(i)でロックするためのロック機構13を備えている。このロック機構13は、ハンドル9が前記操作開始位置(a)から中間位置(b)に達するまでの間だけ用紙用駆動部材41を第1ロック位置(h)にロックするとともに、ハンドル9が前記操作終了タイミングT3から最大抵抗タイミングT4を越えた所定の間だけ用紙用駆動部材41を第2ロック位置(i)にロックするものであり、用紙用駆動部材41と昇降部材49との間に設けられている。したがって、図11に示すような動きを行う。なお、符号62は、用紙保持部2が待機位置(d)よりも上方に移動するのを禁止する図示しない上ストッパである。
【0068】
なお、タイミングチャート中の二点鎖線は、スプリング5の反発力の変形例を示している。すなわち、本実施形態の駆動機構4に代えて、ハンドル9に加えられる一方向への動作に略正比例してスプリング5が反発力を蓄えたのち、最も圧縮された状態を維持したまま保持されるように構成してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、刃3を静止させた状態で用紙保持部2を往復動作させるようにしていたが、これとは逆に、用紙保持部2を静止させた状態で刃3を往復動作させるようにしてもよい。
【0070】
<第五実施形態(図13、図14、図15)>
この綴じ機1は、駆動機構4が図15に示すタイミングチャートのように動くよう構成されているものであり、第一実施形態のものと、用紙保持部2及び刃3、並びにハンドル9の動きが異なる。このようなタイミングチャートを実現するための綴じ機1としては、図13に概略的に示すようなものが考えられる。
【0071】
この綴じ機1の用紙保持部2は、所定位置に静止しており、一方、この綴じ機1の刃3は、待機位置(d)と貫通位置(e)との間で往復動作を行う。そして、本実施形態の駆動機構4は、前記ハンドル9の回転動作に連動させて刃用駆動部材42を作動させるための動作変換機構43、具体的には、ハンドル9の下面に取り付けられカム面431を前記刃ベース7の上面に当接させたカム47を備えている。これらカム面431と刃ベース7のカム受け面433とを、図15に示すようなタイミングチャートに対応する形状に設定してある。この動作変換機構43は、ハンドル9に加えられる操作力によって前記刃用駆動部材42を図15に示すようなタイミングで作動させるとともに、前記操作力が消勢した際に、ばねであるスプリング5の反発力により前記刃用駆動部材42及びハンドル9を復帰動作させるためのもので、例えば、図13に模式的に示すような構成をなしている。
【0072】
また、本実施形態のスプリング5は、刃ベース7とハウジング6との間に配されている。具体的には、このスプリング5は、抜き刃31及び切込刃32が用紙Pから一定寸法Lだけ抜き取られるように刃3を静止した用紙保持部2に対して作動させるように構成されたばねである補助スプリング12、及び、中間部材52とともに一直線状に配されている。換言すれば、このスプリング5は、刃ベース7に一体動作可能に保持された連結部材51の下面と前記中間部材52の上面との間に配されており、前記補助スプリング12は、前記中間部材52の下面とハウジング6の底面との間に配されている。この補助スプリング12は、ハンドル9に加えられる付勢力から開放された無負荷状態の刃ベース7を一定寸法Lだけ復帰させるのに必要十分な小さな反発力を有するものでよく、図15に示すタイミングチャート中では、二点鎖線で示している。
【0073】
また、本実施形態では、スプリング5の反発力を最大にした状態でロックするための第一のロック機構10と、スプリング5の反発力を発揮し得る状態でロックするための第二のロック機構11とを備えている。第一のロック機構10は、ハンドル9が前記中間位置(b)から操作終了位置(c)に達する間だけ刃ベース7と中間部材52との間の距離を一定に保つものであり、連結部材51と中間部材52との間に設けられている。第二のロック機構11は、ハンドル9が前記操作終了タイミングT3から最大抵抗タイミングT4を越えた所定の間だけ中間部材52を所定位置にロックするものであり、中間部材52と前記ハウジング6との間に設けられている。したがって、図14に示すような動きを行う。
【0074】
なお、本実施形態では、最深貫通タイミングT2と操作終了タイミングT3とを同時期に設定しており、操作終了タイミングT3と最大抵抗タイミングT4との間で反発力最大タイミングを迎えるように設定してある。換言すれば、刃3を用紙Pから抜き取るのに寄与するスプリング5の反発力が最も大きくなる反発力最大タイミングを、前記刃3が用紙Pに最も深く貫通する最深貫通タイミングT2よりも後に変位させて、前記用紙Pから刃3を抜き取る際の抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングT4に近づけるように構成している。
【0075】
また、本実施形態では、用紙保持部2を静止させた状態で刃3を往復動作させるようにしていたが、これとは逆に、刃3を静止させた状態で用紙保持部2を往復動作させるように構成してもよい。
【0076】
<その他の変形例>
また、前記実施形態では、作動体を手動で操作するものについて説明したが、例えばソレノイドで作動させるものや、電動で作動させるものの他、手動と電動モータ等とを連動させたものであってもよい。この場合であっても、刃を貫通させるためのエネルギーと、刃を抜き取るためのエネルギーとを同時に加える必要がないため、大きな操作力を一時期に集中して加える必要がなくなり、容量の小さなアクチュエータで対応することができるという効果が得られる。すなわち、モータ等を用いて、機械的に操作力を加える場合、エネルギーを与える領域を、刃を貫通させる時期と刃を抜き取る時期とに分散させることができる。そのため、比較的小さいモータで駆動させることができ、綴じ機の小型化に資することができる。
【0077】
また、作動体は、本実施形態に示した往復回動させるレバーに限らず、例えば一方向に回動させるダイヤル式のものや、直線的に作動させるスライダ式のもの等であってもよい。
【0078】
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切 起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0079】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし没入側を下方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし、没入側を上方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に下方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「降下」、「上面」、または「下面」を、それぞれ「下方」、「上方」、「降下」、「上昇」、「下面」、または「上面」と読み替えた構造をなしている。
【0080】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0081】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0082】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0083】
P…用紙
P1…打ち抜き孔
P2…カット孔
P5…切起片
P51…先端
1…綴じ機
T2…最深貫通タイミング
T3…操作終了タイミング
T4…最大抵抗タイミング
2…用紙保持部
3…刃
31…抜き刃
32…切込刃
4…駆動機構
5…ばね(スプリング)
9…作動体(ハンドル)
(a)…操作開始位置
(b)…中間位置
(c)…操作終了位置
10…第一のロック機構
11…第二のロック機構
L…一定寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙を保持する用紙保持部と、この用紙保持部に保持された用紙に貫通する刃と、作動体に加えられる操作力を利用して前記刃と前記用紙保持部とを相対的に作動させる駆動機構と、作動体に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングに至った後、その反発力により前記刃を用紙から抜き取って前記用紙を綴じるためのばねとを具備してなるものであって、
前記刃が用紙に最も深く貫通する最深貫通タイミングと、前記刃が用紙から抜き取られる際の抜き抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングとの間で、前記作動体の操作終了タイミングを迎え得るように構成していることを特徴とする綴じ機。
【請求項2】
前記ばねが、変位量と反発力とが略正比例するものである請求項1記載の綴じ機。
【請求項3】
前記作動体が、手動により操作されて作動するものである請求項1または2記載の綴じ機。
【請求項4】
複数枚の用紙に打ち抜き孔及びカット孔を形成するとともに、その打ち抜き孔から切り起こされた切起片の先端部分を前記カット孔に挿通させ、その切起片とカット孔との係わり合いによってそれら複数枚の用紙を相互に綴じることができるようにしたものであって、前記刃が、前記打ち抜き孔を形成するための抜き刃と、前記カット孔を形成するための切込刃である請求項1、2又は3記載の綴じ機。
【請求項5】
前記作動体が、操作開始位置から中間位置を経て操作終了位置に達する範囲で動作するものであり、
前記駆動機構が、作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでに加えられる操作力により、刃と用紙保持部とを相互に離間した待機状態と用紙に刃が貫通する貫通状態との間で相対的に作動させる動作と、作動体が前記中間位置から操作終了位置に達するまでに加えられる操作力により、刃が用紙から一定寸法だけ抜き取られるように刃と用紙保持部とを相対的に移動させる動作とを順次行うように構成されたものである請求項1、2、3または4記載の綴じ機。
【請求項6】
前記作動体が、操作開始位置から中間位置を経て操作終了位置に達する範囲で動作するものであり、
前記駆動機構が、作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでに加えられる操作力により、用紙保持部を静止した刃に対して作動させて用紙に刃を貫通させる動作と、作動体が前記中間位置から操作終了位置に達するまでに加えられる操作力により、刃が用紙から一定寸法だけ抜き取られるように刃を静止した用紙保持部に対して作動させる動作とを順次行うように構成されたものであり、
作動体が前記操作開始位置から中間位置に達するまでの間だけ刃を用紙に貫通し得る特定位置にロックする第一のロック機構と、作動体が中間位置を越えて操作終了位置に達し、一定寸法退避した刃をロックする第二のロック機構とを備えたものである請求項1、2、3、4または5記載の綴じ機。
【請求項7】
複数枚の用紙を保持する用紙保持部と、この用紙保持部に保持された用紙に貫通する刃と、作動体に加えられる操作力を利用して前記刃と前記用紙保持部とを相対的に作動させる駆動機構と、作動体に加えられる操作力の一部を利用して反発力を蓄積し前記操作力が消勢する操作終了タイミングに至った後、その反発力により前記刃を用紙から抜き取って前記用紙を綴じるためのばねとを具備してなり、
刃を用紙から抜き取るのに寄与するばねの反発力が最も大きくなる反発力最大タイミングを、前記刃が用紙に最も深く貫通する最深貫通タイミングよりも後に変位させて、前記用紙から刃を抜き取る際の抵抗が最も大きくなる最大抵抗タイミングに近づけるように構成したことを特徴とする綴じ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−250348(P2012−250348A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122073(P2011−122073)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】