説明

緑化庇及びそれを有する建物

【課題】植物の置き場所を変更しなくても日射制御に植物を利用できるだけでなく、植物による日射抑制効果を十分に得ること。
【解決手段】窓部11の屋外側には、緑化庇30が設けられる。この緑化庇30は、窓部11の上方に設置される庇構造部31と、窓部11の両側に設置される側面構造部32とよりなる。庇構造部31では、庇フレーム41の内側につる植物Gが絡み付く支えとなる上部ワイヤ42が張られている。側面構造部32では、庇フレーム41の短辺部材41bと床フレーム21の短辺部材との間をつなぐ側面ワイヤ51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物に設けられる緑化庇、及びそれを有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、特に、夏季の強い日射が屋内に取り込まれることを抑制すべく、日射を制御するための方策が採られている。そのような日射制御のための装置としては、庇やブラインド装置があり、これらの装置が窓部の屋内外に設置されているのが一般的である。
【0003】
ところで、近年では、環境意識の高まりとともに、無機質な屋内に対するアクセントや夏季の納涼効果等をねらいとして、建物に対して植物を利用することが提案されている。屋内には観葉植物が置かれ、屋外では壁面緑化や屋上緑化といったものがその例として挙げられる。
【0004】
そこで、植物を利用して日射量の制御を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。そこでは、窓部が設けられた開口領域よりも大きい出窓空間を設け、その出窓空間に鉢植えの植物が置かれるようになっている。そして、夏季と冬季とで鉢植えの置く位置を変更することで日射量の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−68359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来技術のように、鉢植えの植物を置く位置をいちいち変更しなければならないのは面倒だという問題がある。また、植物によって日射が遮られるとはいえ、出窓空間という屋内空間にいったんは日射が取り込まれるため、日射の抑制という点での効果は不十分であるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、植物の置き場所を変更しなくても日射制御に植物を利用できるだけでなく、植物による日射抑制効果を十分に得ることができる緑化庇、及びそれを備えた建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、第1の発明では、屋外側で窓部の上方に設置される庇フレームを有し、その庇フレームは窓枠に平行に延びる一対の第1辺部と、窓枠に交差する方向に延びる一対の第2辺部とがそれぞれ対向配置されてなり、庇フレーム内側にはつる植物が絡み付く支えとなる上部支索が張られた庇構造部と、前記第2辺部の下方に配置されるボトムレールを有し、該ボトムレールとその上方の第2辺部との間にはつる植物が絡み付く支えとなる側面支索が張られた側面構造部と、を備え、前記側面支索を前記庇フレームの内側へ引き込んで前記側面構造部を非形成状態とし、又はその引込状態から側面支索を引き出して側面構造部を形成状態とする側面支索可動機構が、前記側面構造部に設けられている。
【0010】
この第1の発明によれば、庇構造体の上部支索及び側面構造部の側面支索に、つる植物を絡み付かせて生育させれば、そのつる植物によって日射が遮られるため、鉢植えの置き場所を変更したりする必要はない。また、つる植物が屋外側に存在し、日射が屋内に取り込まれる前の段階で日射抑制がなされるため、日射の抑制効果が十分に得られる。
【0011】
ところで、ボトムレールの長手方向に沿って複数の側面支索が並設される場合、それら各側面支索を現場で一本一本組み付けていては作業性が悪い。この点、第1の発明では、側面支索を有する側面構造部が予め庇構造部に組み付けられているため、現場での作業効率が高い。しかも、側面支索可動機構を利用して側面支索を庇フレームへ引き込めた状態とすれば、全体をコンパクト化して施工現場へ持ち運ぶことができる。これにより、作業性の向上だけでなくコンパクト化も合わせて実現できる。
【0012】
また、側面緑化が不要な場合には、側面支索を引き込めたままにして側面構造部が非形成状態とすればよい。この場合、側面支索は上部支索とともに庇フレーム内側に配置され、庇フレーム内では支索が密な状態となる。その密な状態の支索は、生育したつる植物の支えとなって、つる植物が垂れ下がることを抑制できるため、側面支索の存在が無駄にならない。
【0013】
第2の発明では、前記側面支索可動機構は、前記第1辺部間に架け渡され、該第1辺部の長手方向に沿って移動する移動部材を備え、前記側面支索を前記第2辺部に対して挿通自在とし、前記ボトムレールとは反対側の端部が前記移動部材に連結されている。
【0014】
この第2の発明は、側面支索可動機構を好適に実現できる。その具体的な動作は、次の通りである。すなわち、移動部材をそれに連結された側面支索が挿通する第1辺部から離間する方向へ移動させることにより、前記ボトムレールを引き上げながら前記側面支索が庇フレーム内側に引き込まれる。逆に、その引き込まれた状態から、移動部材をそれに連結された側面支索が挿通する第1辺部に向かって移動させることにより、前記ボトムレールを引き下げながら側面支索が庇フレーム内側から引き出される。
【0015】
第3の発明では、前記側面構造部は前記庇フレームの両側に設けられ、かつそれら各側面構造部ごとに前記側面支索可動機構が設けられ、各々の側面構造部に対応する一対の前記移動部材は互いに上下位置を異ならせて前記第1辺部間に架け渡されている。
【0016】
この第3の発明によれば、庇フレーム内側で第1辺部の延びる方向の全域を移動部材の移動範囲として設定できるため、庇フレーム内側の全域を利用して引き上げた側面支索を納めることができる。
【0017】
さらに、前記側面構造部は前記庇フレームの両側に設けられているが、緑化庇の設置箇所によっては、側面緑化が一方のみで足りる場合もあり得る。そのような場合には、側面緑化が必要とされる側で側面支索を引き出して側面構造部を形成し、他方の側では側面支索を引き込めて側面構造部を非形成状態とすれば、設置箇所に応じた側面緑化を形成できる。また、前述したように、両側の側面支索を引き込めた状態として、側面構造部を両側で非形成状態にすることもできる。したがって、設置箇所を問わず設置できる点でこの緑化庇の汎用性は高い。
【0018】
第4の発明では、前記一対の第2辺部は中空状に形成され、その中空部には前記上部支索の端部が挿入されるとともに、前記側面支索が挿通されて下方に引き出されており、この中空部を貯水部とした。
【0019】
この第4の発明によれば、貯水部としての中空部に水が溜められると、上部支索の挿入部分や側面支索の挿通部分から水が漏れ出し、上部支索や側面支索を伝って水が流れ出す。これにより、上部支索や側面支索に絡み付いたつる植物に水を供給することができる。このため、庇構造部や側面構造部の上部のように、背の届かない部分のつる植物にも容易に水供給できる。
【0020】
第5の発明では、前記中空部は少なくとも二つの空間部を有しており、そのうち第1空間部にはその側部に設けられた上部支索用側部孔から前記上部支索の端部が挿入され、第2空間部には前記側面支索が挿通され、該第2空間部の底部に前記側面支索を第2辺部の下方に引き出すための側面支索用底孔が設けられている。
【0021】
この第5の発明によれば、第1空間部と第2空間部とが区別されているため、各空間部から漏れ出す水量が異なっても、それぞれの貯水量は他方の空間部での水漏れ量に影響されない。そのため、上部支索又は側面支索の一方に供給される水が、他方よりも少なくなってしまうという事態を防止できる。
【0022】
第6の発明では、前記両空間部の上方には、前記第2辺部の長手方向に延びる上方空間がそれぞれ形成され、各上方空間は非区画の状態とされており、前記第1空間部及び第2空間部のいずれか一方に、当該空間部に水を供給する水供給口が設けられている。
【0023】
この第6の発明によれば、一方の空間部に設けられた水供給口から水が供給されると、その空間部に水が溜められる。その水供給を継続すると、一方の空間部の容積を超えた分の水が他方の空間部へ溢れ出し、当該他方の空間部にも水が溜められる。このため、各空間部に水供給口を設ける必要がなく、構成を簡素化できる。
【0024】
第7の発明では、前記第2空間部は、その底部が前記第1空間部の底部よりも低い位置に配置されて、該第1空間部の側方から下方にかけて形成され、前記側面支索を庇フレーム内側に引き出すための側面支索用側部孔が、前記第1空間部の前記上部支索用側部孔の下方に設けられている。
【0025】
この第7の発明によれば、第2空間部の底孔から挿入された側面支索は側部孔から庇フレームの内側に引き出される。この側部孔は、上部支索用側部孔の下方に配置されているため、その上部支索用側部孔の上方に配置される場合に比べ、第2空間部を挿通する側面支索の挿通長さを短くすることができる。これにより、緑化庇の製造コストを低減させることができる。
【0026】
第8の発明では、屋外温度を検出する屋外温度検出手段と、前記上部支索及び側面支索に絡み付いたつる植物の水分量を検出する植物水分量検出手段と、前記貯水部に水を供給する水供給手段と、前記屋外温度検出手段又は前記植物水分量検出手段による検出結果により、屋外温度又はつる植物の乾燥度が所定値となった場合に、前記貯水部に水を供給すべく前記水供給手段による水供給を開始させる制御手段と、を備えた。
【0027】
この第8の発明によれば、屋外温度又はつる植物の乾燥度が所定値となると、水供給手段による水供給が開始し、貯水部に水が溜められる。これにより、つる植物への水供給が自動的に行われるため、つる植物に対する給水の管理を容易に行うことができる。
【0028】
第9の発明では、前記側面支索はフレキシブルホースであり、そのフレキシブルホースには所定間隔ごとに水流出孔が形成されている。
【0029】
この第9の発明によれば、側面支索を水流出孔を有するフレキシブルホースとしたことにより、これに水を流通させれば、その流通する水が水流出孔から漏れ出す。その漏れ出した水により、つる植物に給水することができる。
【0030】
第10の発明では、前記上部支索及び前記側面支索は、ロープ又は鋼製ワイヤである。
【0031】
この第10の発明によれば、上部支索及び前記側面支索をロープ又は鋼製ワイヤとしたことにより、絡み付いたつる植物を支える上で十分な強度を確保することができる。
【0032】
この場合、前述した第4の発明のように、上部支索や側面支索に水を伝わらせることでつる植物に給水する構成では、水浸透性のロープを用いることが好ましい。これにより、ロープが水を含むことで水が伝わり、給水が行われる。また、上部支索として鋼製ワイヤを用いるのであれば、それが若干たわませた状態で張られていることが好ましい。このたわみにより、漏れ出した水は鋼製ワイヤを伝って流れることができる。
【0033】
第11の発明では、前記ボトムレールは、前記窓部の屋外側に設けられる屋外床部の床フレームの一部である。
【0034】
この第11の発明によれば、ボトムレールが屋外床部の床フレームの一部となっているため、そのボトムレール利用して屋外床部が形成される。このため、窓部の屋外側に屋外床部が設置される場合には、その屋外床部を構成する部品点数を少なくできる。
【0035】
第12の発明では、外壁部に設けられた窓部の屋外側に屋外床部が設けられた建物であって、前記窓部の上方に、上記第1乃至第11の発明のいずれか1に記載の緑化庇が有する庇フレームが取り付けられるとともに、前記屋外床部に前記ボトムレールが取り付けられて、前記窓部の両側方に前記側面支索が設けられ、前記窓部の周囲は庇構造体、側面構造部及び屋外床部によって囲われている。
【0036】
この第12の発明によれば、窓部の屋外側に屋外床部を有する屋外空間が形成された建物において、その屋外空間の周囲が緑化庇によって囲まれる。このような緑化庇の存在により、屋外空間で日射が抑制されたり、つる植物の蒸散による涼しさが得られたりして、その屋外空間での快適さを確保できる。
【0037】
第13の発明では、前記建物は、複数の建物ユニットが組み合わされてなるユニット式建物であって、前記庇フレームは建物ユニットの天井大梁に、前記屋外床部の床フレームは該建物ユニットの床大梁にそれぞれ介在部材を介して固定されている。
【0038】
この第13の発明によれば、緑化庇の庇フレームや、屋外床部の床フレームが建物ユニットの梁材に固定されるため、それらは強固に支持される。これにより、緑化庇や屋外床部は十分な張り出し長さを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】窓部周りに設置された緑化庇の全体構成を示す斜視図。
【図2】床フレームの設置構造を示す概略縦断面図。
【図3】庇フレームの設置構造を示す概略縦断面図。
【図4】庇フレームの断面図(図3のA−A断面図)。
【図5】側面ワイヤの動きを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一実施の形態である緑化庇を、以下に図面を参照しながら説明する。この緑化庇は住宅等の建物に適用され、その窓部周りの屋外側に設置される。そして、窓部の中でも、採光確保のために比較的大開口とされた窓部の屋外側に、この緑化庇が設置されるのが好適である。
【0041】
図1は、窓部周りに設置された緑化庇の全体構成を示す斜視図である。前提として、緑化庇が設置される窓部及びその周辺構成を、図1を参照しながら説明する。
【0042】
図1に示されているように、窓部11は建物の一階部分に設けられている。この窓部11は掃き出し窓であり、リビング空間やキッチン空間等の屋内空間と屋外とを連通する開口部12に窓装置13が設置されてなる。
【0043】
窓部11の屋外側には、縁側やウッドデッキ等の屋外床部14が設けられている。この屋外床部14は、床フレーム21と、屋外用床材22とを有している。平面視が矩形状をなす床フレーム21は、一対の長辺部材21aと一対の短辺部材21bとがそれぞれ対向配置されてなり、窓部11よりも横長に形成されている。この床フレーム21は、その短辺部材21bが建物外壁15から前方に突出し、水平な状態で設置されている。前記屋外用床材22は長尺状をなし、床フレーム21の内側で一対の短辺部材21b間に架け渡されるようにして設けられている。複数枚の屋外用床材22が短辺部材21bの延びる方向に沿って並設されることにより、屋外床が形成されている。この屋外床の床面は屋内空間の床面と略同じ高さレベルとされ、バリアフリー化が実現されている。
【0044】
床フレーム21と地面との間の床下空間23(後述の図2参照)は、パネル24,25によって塞がれている。パネル24,25は、前面側を塞ぐ前面パネル24と、側面側を塞ぐ一対の側面パネル25とからなる。両側の側面パネル25については、屋外床部14の床下空間23における通気性を確保するため、いずれもメッシュ状のものが採用されている。そして、地面と縁側床との間の上り下りを容易にすべく、前面パネル24の前方には沓脱石等の踏み台26が設置されている。
【0045】
次に、おなじく図1を参照しながら、緑化庇30の全体構成を説明する。緑化庇30は、前記窓部11の周囲に設置されており、窓部11の上方に設置される庇構造部31と、窓部11の両脇に設置される一対の側面構造部32とで構成されている。なお、庇構造部31と窓部11の上縁との間にはシャッタ装置16が設置され、シャッタカーテンが引き出されることにより、窓部11の屋外側が閉鎖されるようになっている。
【0046】
庇構造部31は、庇フレーム41と、上部支索としての上部ワイヤ42とを有している。平面視が矩形状をなす庇フレーム41は、一対の長辺部材41aと一対の短辺部材41bとがそれぞれ対向配置されてなり、窓部11よりも横長に形成されている。長辺部材41aが第1辺部に、短辺部材41bが第2辺部にそれぞれ相当する。この庇フレーム41は、その短辺部材41bが建物外壁15から前方に突出し、水平な状態で設置されている。庇フレーム41の横幅は、前記屋外床部14の床フレーム21と略同じ長さ寸法を有し、窓部11に対する横方向の設置位置は床フレーム21と同じとなっている。そのため、床フレーム21の各短辺部材21bの直上に庇フレーム41の各短辺部材41bが配置されている。
【0047】
前記上部ワイヤ42は鋼製ワイヤであり、前記庇フレーム41の内側に、同庇フレーム41の短辺部材41b間に架け渡されるようにして設けられている。この上部ワイヤ42は複数本(後述する図3に示されているようにこの実施形態では6本)あり、短辺部材41bの延びる方向に沿って、所定間隔を隔てて互いに平行をなすように並んだ状態となっている。これら上部ワイヤ42は、つる植物Gが絡み付く支えとなる。図示のようにつる植物Gが上部ワイヤ42に絡み付きながら生育することで、つる植物Gが庇フレーム41の内側で生い茂る。つる植物Gとしては、例えば、ツタ、ゴーヤ、ぶどう等、適宜の植物を採用できる。
【0048】
前記一対の側面構造部32は、それぞれが複数本(図2及び図3に示されているようにこの実施形態では6本)の側面ワイヤ51により構成されている。側面支索としての側面ワイヤ51は前記上部ワイヤ42と同様の鋼製ワイヤであり、前記庇フレーム41の短辺部材41bと前記床フレーム21の短辺部材21bとの間に架け渡されるように設けられている。このため、この実施形態では、床フレーム21の短辺部材21bがボトムレールに相当する。各側面構造部32における複数本の側面ワイヤ51は、短辺部材41bの延びる方向に沿って、所定間隔を隔てて互いに平行をなすように並んだ状態となっている。これらの側面ワイヤ51もつる植物Gが絡み付く支えとなり、この側面部分でもつる植物Gを生育させることが可能となる。
【0049】
このように、屋外側に屋外床部14が設けられた窓部11に、その周りを囲むように緑化庇30が設置されることで、生育して生い茂ったつる植物Gにより、庇部分及び側面部分で日射が遮られる。このつる植物Gを利用した日射抑制により、特に、夏季において屋内空間に日射による熱エネルギーが取り込まれることが抑制される。そうすることで、冷房効率の向上、省エネ効果等が得られる。また、植物Gを利用している点で、納涼効果等も得られる。
【0050】
次に、図2及び図3を参照しながら、上記屋外床部14及び緑化庇30の建物への設置構造を説明する。その設置構造とは、具体的には屋外床部14の床フレーム21及び緑化庇30の庇フレーム41を支持する構造である。ここでは、建物がユニット式建物である場合を想定して説明するが、勿論、屋外床部14や緑化庇30が設置される建物はユニット式のものに限られず、在来工法や鉄骨軸組構造を有する建物であってもよい。
【0051】
図2は床フレーム21の設置構造を示す概略縦断面図であり、図3は庇フレーム41の設置構造を示す概略縦断面図である。いずれも概略図であるから、フレーム21,41の断面や、床、天井、壁等の内部構造は簡略化して図示されている。
【0052】
図2に示されているように、一階部分の建物ユニットの床大梁61は基礎Kの上面に設けられ、その床大梁61には床構造体62が設置されている。また、図3に示されているように、一階部分の建物ユニットの天井大梁63には天井構造体64が設置されている。床大梁61と天井大梁63との間には、内壁構造体65や前述した掃き出し式の窓装置13が設置されている。そして、これらの内装用の各構造体62,64,65によって屋内空間17が形成されている。
【0053】
床大梁61及び天井大梁63の屋外側にはそれぞれ取付補助部材71,72が設けられ、その取付補助部材71,72のさらに屋外側にはL字状をなす支持ブラケット73,74が設けられている。これらは、それぞれボルト等の固定手段(図示略)によって相手側に固定されている。天井側については、取付補助部材72と支持ブラケット74との間には外壁パネル66が介在されている。床側及び天井側において、支持ブラケット73,74には、前記床フレーム21又は前記庇フレーム41の各々の短辺部材21b,41bが固定されている。つまり、床フレーム21及び庇フレーム41は、取付補助部材71,72及び支持ブラケット73,74により、大梁61,63に対して片持ち支持されている。これら取付補助部材71,72及び支持ブラケット73,74が介在部材に相当する。
【0054】
このような設置構造により、両フレーム21,41の支持が強固なものとなり、その建物外壁15からの張り出し長さは、500mm〜1,500mm程度まで確保することが可能となる。屋外床部14において、それ以上の張り出し長さが要求される場合は、床フレーム21を支持する独立基礎が別途設置される。
【0055】
ちなみに、床フレーム21を構成する長辺部材21a及び短辺部材21bは、その横断面が庇フレーム41のそれよりも大きく形成されている。これは、床フレーム21により構成される屋外床部14には住人等が載る以上、十分な強度を確保する必要があるからである。
【0056】
次に、この実施形態の緑化庇30をより詳細にみていくと、さらなる特徴的な部分を有する。以下に、その特徴部分を順に説明する。
【0057】
第1の特徴として、緑化庇30は、上部ワイヤ42や側面ワイヤ51に絡み付いたつる植物Gへ給水する構成を有している。その構成を図4及び前述した図1を参照しながら説明する。なお、図4は、庇フレーム41の断面図(図3のA−A断面図)である。
【0058】
図4に示されているように、庇フレーム41を構成する一対の短辺部材41bは、それぞれ金属板材により中空に形成された管状の部材であり、その長手方向に対する横断面は全体として略四角形状をなしている。短辺部材41bの中空部81には、区画板部82が長手方向全域にわたって設けられている。L字状に形成された区画板部82はその一辺が底板部83と平行で、かつ他辺が起立した状態とされ、起立部分の上端縁と上板部84との間には空間が確保されている。この区画板部82により、短辺部材41bの中空部81は、区画板部82の内側に形成された第1空間部R1と、区画板部82の外側に形成された第2空間部R2とに区画されている。両空間部R1,R2の各上方は非区画の上方空間部R3とされている。この場合、第1空間部R1の底部(区画板部82の一辺)は、第2空間部R2の底部(短辺部材41bの底板部83)よりも高い位置に配置されている。これら2つの空間部R1,R2はいずれも水が溜められる貯水部となる。
【0059】
図1に示されているように、各側面構造部32にはそれぞれ給水管52が設けられている。この給水管52は床フレーム21の短辺部材21bと庇フレーム41の短辺部材41bとの間に架け渡され、最も建物外壁15側で、前記複数本の側面ワイヤ51と同様に並んで配置されている。給水管52の下端は、床フレーム21の短辺部材21bから屋外床部14の床下空間23に導出され、その床下空間23に設置されたポンプ装置91に接続されている。ポンプ装置91はタイマー駆動式のものであり、屋外に設置された雨水タンク92と送水管93を介して接続されている。なお、メッシュ状の側面パネル25により、ポンプ駆動時の排熱が可能となっている。
【0060】
図4に戻り、前記給水管52の上端部は庇フレーム41の短辺部材41b内にその底板部83から導入され、水供給口としての上端開口が前記第1空間部R1内に配置されている。このため、設定時刻にポンプ装置91が駆動を開始すると、雨水タンク92に溜められた雨水が送水管93及び給水管52を通じて、短辺部材41bの第1空間部R1に供給される。これにより、まずは第1空間部R1で水が溜められる。さらに給水を継続すると、第1空間部R1から水が溢れ出し、その水は第2空間部R2に溜められることになる。こうして、短辺部材41b内の第1空間部R1及び第2空間部R2それぞれに水が供給される。
【0061】
庇フレーム41の各短辺部材41bにおいて、第1空間部R1を形成する内側板部85にはワイヤ挿通孔86が設けられている。ワイヤ挿通孔86は前記上部ワイヤ42の本数及び設置箇所に合わせ、短辺部材41bの長手方向に沿って所定間隔を隔てて設けられている。短辺部材41b間に架け渡される上部ワイヤ42は、その両端部がそれぞれ短辺部材41bのワイヤ挿通孔86に挿入され、内部の挿入端には抜け止め部42aが設けられている。この抜け止め部42aは、上部ワイヤ42の一本一本についてその両端部に設けられている。そして、上部ワイヤ42は若干のたるみが持たされている。このため、前記第1空間部R1に水が溜められると、ワイヤ挿通孔86から水が漏れ出し、若干たるんだ上部ワイヤ42を短辺部材41b間の中央部に向かって水が伝って流れ出す。こうして、上部ワイヤ42に絡み付いたつる植物Gに水が供給される。なお、このワイヤ挿通孔86が上部支索用側部孔に相当する。
【0062】
同じく各短辺部材41bにおいて、第2空間部R2を形成する底板部83と内側板部85には、それぞれワイヤ挿通孔87,88が設けられている。ワイヤ挿通孔87,88は前記側面ワイヤ51の本数及び設置箇所に合わせ、短辺部材41bの長手方向に沿って所定間隔を隔てて設けられている。側面ワイヤ51はその上端部が底板部83のワイヤ挿通孔87、及び内側板部85のワイヤ挿通孔88に挿通されて庇フレーム41の内側に引き出され、上端連結部材101,102に連結されている。なお、ワイヤ挿通孔87,88はそれぞれ側面支索用底孔及び側面支索用側部孔に相当する。
【0063】
この上端連結部材101,102は短辺部材41bと平行をなす棒状部材であり、側面構造部32ごと、側面ワイヤ51すべての端部がこの上端連結部材101,102に連結されている。この上端連結部材101,102が、側面ワイヤ51の抜け止めとして機能している。そして、前記第2空間部R2に水が溜められると、ワイヤ挿通孔87,88から水が漏れ出し、上下方向に延びる側面ワイヤ51を伝って水が流れ出す。こうして、側面ワイヤ51に絡み付いたつる植物Gに水が供給される。
【0064】
次に、第2の特徴として、緑化庇30は、側面ワイヤ51を庇フレーム41の内側に引き込み又は引き出し可能とする側面ワイヤ可動機構を有している。この側面ワイヤ可動機構は側面支索可動機構に相当し、主として、緑化庇30を建物に設置する場合の作業性を向上させるためのものである。当該機構について、前述の図4及び図5を参照しながら説明する。なお、図5は、側面ワイヤ51の動きを説明する説明図である。この図5では側面ワイヤ51の動作を説明するため、各部の構成を簡略化し、また、上部ワイヤ42を省略した状態で図示されている。
【0065】
まず、前記図4に示されているように、庇フレーム41を構成する一対の長辺部材41aの内側面には、該長辺部材41aの長手方向に沿って、前記上端連結部材101,102を案内する案内溝103,104が形成されている。案内溝103,104の形成範囲は、庇フレーム41の内側において長辺部材41aの長手方向全域にわたっている。前述したように、上端連結部材101,102は側面構造部32ごとの側面ワイヤ51が連結されるものであり、庇フレーム41内に二本設けられている。それら各上端連結部材101,102に対応して、上下に二条の前記案内溝103,104が平行をなすように形成され、各上端連結部材101,102は互いに異なる案内溝103,104にその両端部が挿入されている。ちなみに、図5(a)の拡大図では、上端連結部材101,102の一端部が案内溝103,104に挿入されている状態が図示されている。
【0066】
これにより、一対の上端連結部材101,102はそれぞれが長辺部材41aの長手方向に沿って移動可能とされ、その移動範囲は庇フレーム41の内側において長辺部材41aの長手方向全域にわたる。この場合、上端連結部材101,102ごとに案内溝103,104が形成されているため、上端連結部材101,102が移動するのにお互いに干渉しないようになっている。したがって、上端連結部材101,102は移動部材に相当する。
【0067】
また、同じく前記図4に示されているように、前記上端連結部材101,102に一端が連結された複数の側面ワイヤ51は、庇フレーム41の短辺部材41bに形成された前記ワイヤ挿通孔87,88に挿通されて挿通自在とされ、短辺部材41bの下方に引き出されている。この点は給水に関する構成として前述した通りである。そして、図5に示されているように、他端部は床フレーム21を構成する短辺部材21bに連結されている。この短辺部材21bは、床フレーム21を施工する前の状態であり、長辺部材21aと非連結となっている。緑化庇30の施工とともに、短辺部材21bを建物に設置し、長辺部材21aと連結することで床フレーム21を形成する作業が行われる。
【0068】
側面ワイヤ可動機構は、上述した構成よりなる。図5(a)では、一方側(図の右側)の側面構造部32を構成する側面ワイヤ51(便宜上51Rとする)が、その大部分、庇フレーム41内側に引き込まれている。この状態から、側面ワイヤ51Rが連結された上端連結部材101を、該側面ワイヤ51Rが挿通された短辺部材41b側(右側)へ移動させるとともに、床フレーム21の短辺部材21bを下方へ移動させる。すると、図5(b)に示されているように、側面ワイヤ51Rが庇フレーム41から引き出される。上端連結部材101を短辺部材41bの内側板部85に当接するまで移動させれば、側面ワイヤ51Rが最大限引き出され、これにより一方側に側面構造部32が形成される。そこから、上端連結部材101及び床フレーム21の短辺部材21bを逆に移動させれば、側面ワイヤ51Rは庇フレーム41の内側に引き込まれる。
【0069】
その引き込みの動きを、他方側(図の左側)で説明する。図5(a)では、他方側の側面構造部32を構成する側面ワイヤ51(便宜上51Lとする)が、その大部分、庇フレーム41の内側から引き出されている。この状態から、側面ワイヤ51Lが連結された上端連結部材102を、該側面ワイヤ51Lが挿通された短辺部材41bとは反対側の短辺部材41b側(右側)へ移動させるとともに、床フレーム21の短辺部材21bを上方へ移動させる。すると、図5(b)に示されているように、側面ワイヤ51Lが庇フレーム41の内側に引き込まれる。床フレーム21の短辺部材21bを庇フレーム41の短辺部材41bに当接するまで移動させれば、側面ワイヤ51Lが最大限引き込まれ、これにより他方側では側面構造部32が非形成の状態となる。そこから、上端連結部材102及び床フレーム21の短辺部材21bを逆に移動させれば、側面ワイヤ51Lは庇フレーム41の内側から引き出される。
【0070】
ちなみに、側面ワイヤ51が庇フレーム41の内側に引き込まれると、その内側には上部ワイヤ42だけでなく側面ワイヤ51も存在することになる。これにより、庇フレーム41の内側では、ワイヤ42,51が密な状態で存在する。一方、側面ワイヤ51が引き出されると、庇フレーム41の内側では上部ワイヤ42のみとなりワイヤは疎な状態となる。このため、側面ワイヤ51の引き出し又は引き込みによって、庇フレーム41の内側でのワイヤの疎密が変更されることになる。
【0071】
以上のように、緑化庇30が側面ワイヤ可動機構を有することにより、側面構造部32を構成する側面ワイヤ51は施工時にすでに庇構造部31に組み付けられた状態となっている。このため、緑化庇30の施工現場では、側面ワイヤ51を引き出すことで側面構造部32が簡単に形成される。これにより、緑化庇30を施工する場合の作業性が向上する。また、側面ワイヤ51を庇フレーム41の内側へ引き込めた状態とすれば、全体がコンパクトになり、現場への持ち運びも容易となる。
【0072】
以上をまとめると、この実施形態の緑化庇30によれば、以下に列挙する有利な効果が得られる。
【0073】
(1)上部ワイヤ42及び側面ワイヤ51に、つる植物Gを絡み付かせて生育させれば、庇構造部31や側面構造部32ではそのつる植物Gによって日射が遮られる。このため、従来技術のように、季節に応じて鉢植えの置き場所をいちいち変更したりする必要はない。また、つる植物Gが屋外側に存在し、日射が屋内に取り込まれる前の段階で日射抑制がなされるため、日射の抑制効果が十分に得られる。
【0074】
かかる日射抑制により、屋内空間17に日射による熱が入り込まないため、特に、夏季において冷房効率向上による省エネ効果が得られる。また、屋外床部14を有する屋外空間では、つる植物Gの蒸散により納涼効果が得られるし、建物外観のアクセントや環境アピールにもつながる。
【0075】
(2)屋外床部14では、その屋外床の床面が屋内空間17の床面と略同じ高さレベルとされ、バリアフリー化が実現されているため、屋内外への出入りが容易となるし、屋内空間17を広く感じさせる効果も得られる。
【0076】
(3)複数本の側面ワイヤ51を有する側面構造部32が予め庇構造部31に組み付けられているだけでなく、側面ワイヤ可動機構を有するため、側面ワイヤ51を庇フレーム41の内側へ引き込めれば、全体をコンパクト化させることができる。この状態での建築現場へ持ち運びは容易である。そして、現場では、庇フレーム41から側面ワイヤ51を引き出せば側面構造部32が形成され、緑化庇30が設置可能な状態となる。これにより、複数本の側面ワイヤ51を一本一本組み付けるという面倒な作業を行うことなく、建物への設置可能な状態を容易に形成できるため、作業効率を向上させることができる。
【0077】
(4)側面ワイヤ可動機構において、上端連結部材101,102はそれぞれ上下位置を異ならせて設けられており、庇フレーム41の内側の長手方向全域がその移動範囲として設定されている。このため、庇フレーム41の長手方向全域を利用して、引き上げた側面ワイヤ51を納めることができる。
【0078】
(5)庇フレーム41の短辺部材41bに空間部R1,R2を設けてそこにポンプ装置91で水を送り、溜まった水がワイヤ挿通孔86,87から漏れ出して上部ワイヤ42や側面ワイヤ51を伝って流れ出すことで、つる植物Gに給水する構成を採用している。これにより、庇構造部31や側面構造部32の上部のように、背の届かない部分に存在するつる植物Gにも容易に水やりができる。また、上部ワイヤ42用の第1空間部R1と、側面ワイヤ51用の第2空間部R2とが区画されているため、各空間部R1,R2から漏れ出す水量が異なっても、それぞれの貯水量は他方での水漏れ量に影響されない。そのため、上部ワイヤ42又は側面ワイヤ51の一方に供給される水が、他方よりも少なくなってしまうという事態を防止できる。
【0079】
(6)第1空間部R1に給水管52の上端開口が設けられ、その第1空間部R1の容積を超えた分の水が第2空間部R2へ溢れ出し、当該第2空間部R2にも水が溜められるようになっている。これにより、一方の空間部R1に水を供給すれば足りるため、構成を簡素化できる。
【0080】
(7)第2空間部R2を挿通する側面ワイヤ51は、底板部83のワイヤ挿通孔87と、上部ワイヤ42用のワイヤ挿通孔86より下方のワイヤ挿通孔88との間を挿通する。このため、上部ワイヤ42用のワイヤ挿通孔86の上方から庇フレーム41の内側へ引き出される構成に比べ、側面ワイヤ51の挿通長さが短くなり、その分、緑化庇30の製造コストを低減できる。
【0081】
(8)つる植物Gが絡み付く支えとなる支索として、鋼製ワイヤからなる上部ワイヤ42及び側面ワイヤ51が用いられているため、絡み付いたつる植物Gを支える上で十分な強度を確保することができる。また、上部ワイヤ42が若干たわませた状態で張られているため、ワイヤ挿通孔86から漏れ出した水は上部ワイヤ42を伝って中央側で流れることができる。
【0082】
(9)側面ワイヤ51の下端が、屋外床部14の床フレーム21の短辺部材21bに連結され、緑化庇30の側面構造部32を構成する部材と、屋外床部14の床フレーム21を構成する部材とを共通化させている。これにより、屋外床部14を構成する部品点数を少なくできる。
【0083】
(10)窓部11の屋外側に屋外床部14を有する屋外空間が形成された建物において、その屋外空間の周囲にこの緑化庇30が設けられている。これにより、その屋外空間での日射が抑制されたり、つる植物Gの蒸散による涼しさが得られたりして、屋外空間での快適さを確保できる。
【0084】
(11)屋外床部14の床フレーム21は建物ユニットの床大梁61に、緑化庇30の庇フレーム41は建物ユニットの天井大梁63に固定され、それらは強固に支持された状態となっている。これにより、屋外床部14や緑化庇30は十分な張り出し長さを確保できる。
【0085】
なお、緑化庇30としては、以上に説明した形態に限らられず、例えば以下に別例として示す形態で実施することも可能である。
【0086】
(a)上記実施の形態では、上部ワイヤ42は複数本が平行に延びるように設けられているが、本数をより多く増やして密な状態が形成されるようにしてもよい。もっとも、あまりに密な状態とすると、かえってつる植物Gが絡み付きにくくなるため、それとのバランスを保つ必要はある。また、複数本が平行に延びる態様に限られず、例えば、長辺部材41a間にも架け渡したり、斜めに張ったりして上部ワイヤ42を交差させて格子状をなすようにしてもよい。このように上部ワイヤ42をある程度密な状態にすれば、絡み付いたつる植物Gの垂れ下がり防止や、上方からの落下物の受け止めに効果がある。
【0087】
なお、側面ワイヤ51も平行に延びる本数を増加させて密な状態としてもよいが、疎な状態でつる植物Gを絡み付かせ、側方への視界をある程度確保する方が好ましい。
【0088】
(b)上記実施の形態では、緑化庇30として、両側の側面構造部32が形成された状態の設置態様とされているが(図1参照)、側面構造部32が片側だけ形成された状態としてもよい。緑化庇30の設置箇所によっては、一方の側面構造部32だけで日射を遮ることが可能な場合もあり得る。そのような場合には、側面緑化が必要とされる側だけ側面ワイヤ51を引き出して側面構造部32を設ければ、設置箇所に応じた側面緑化を形成できる。この場合、非形成側の側面ワイヤ51は上部ワイヤ42とともに庇フレーム41の内側に配置されるため、庇構造部31ではワイヤが密な状態となる。その密な状態のワイヤ42,51は、生育したつる植物Gの支えとなって垂れ下がりを抑制できるため、側面ワイヤ51の存在が無駄になることはない。このように、設置箇所に応じて両側に側面構造部32を形成したり、一方側だけに側面構造部32を形成したりでき、緑化庇30の汎用性は高い。
【0089】
(c)上記実施の形態では、窓部11の屋外側に縁側等の屋外床部14が設けられた箇所に緑化庇30を設置しているが、そのような屋外床部14が存在しない窓部周りに設置してもよい。また、建物一階部分の窓部周りではなく、上階部分の窓部周り(バルコニー空間に通じる窓部等)に緑化庇30が設置されるようにしてもよい。さらに、緑化庇30が設置される窓部は、上記実施形態のように掃き出し窓ではなく、腰窓であってもよい。
【0090】
なお、屋外床部14を有しない窓部に設置される場合には、緑化庇30の構成として、床フレーム21の短辺部材21bをボトムレールとするのではなく、長手部材等がボトムレールとされる。この場合、当該長手部材等は、建物外壁15から水平に突出するようにして設置される。
【0091】
(d)上記実施の形態では、上部支索や側面支索として鋼製ワイヤを用いたが、ロープや流水管等であってもよい。例えば、上部支索として、天然繊維からなるロープを用いた場合、繊維に水を染み込ませて、つる植物Gに給水することができる。この場合、上記実施形態の上部ワイヤ42のように、ロープをたわませる必要はなくなる。また、上部支索や側面支索として流水管を利用した場合、そこに水を流通させることで冷却効果が得られる。また、その流水管に孔を開けて水を外に染み出させることにより、つる植物Gに給水することもできる。なお、側面支索に用いられる流水管としては、短辺部材41bでの挿通可能とすべく、フレキシブルホースであることが好ましい。
【0092】
(e)上記実施の形態では、床フレーム21や庇フレーム41は平面視において矩形状に形成されているが、平面視において台形形状をなすように形成してもよい。また、庇フレーム41を水平な状態で設置するのではなく、外壁側から前方に向かって下に傾斜するように設置してもよい。
【0093】
(f)上記実施の形態では、屋外床部14の床下空間23に設置されたポンプ装置91をつる植物Gへの給水用に使用しているだけであるが、図1に示されているように、縁側の脇に植栽エリア111を設けてそこにも給水可能な構成としてもよい。また、上記実施の形態では、雨水タンク92を屋外に設置してそこに溜めた雨水をつる植物Gへの給水用の水として利用しているが、給水用の水としては水道水を利用してもよい。この場合、ポンプ装置91には水道管が接続されることになる。さらに、庇フレーム41の短辺部材41bへの給水構成として、第2空間部R2に給水するようにしてもよい。
【0094】
(g)上記実施の形態では、ポンプ装置91をタイマー駆動式のものとしたが、センサ等からの情報に基づいて、所定条件で自動的に給水が行われる構成を採用してもよい。その場合、ポンプ装置91(水供給手段)を駆動を制御するコントローラ(制御手段)と、つる植物Gの乾燥状態を検出し、その検出結果を前記コントローラに出力する水分量検出センサ(植物水分量検出手段)とが設けられる。そして、コントローラは、水分量検出センサからの情報により、つる植物Gの乾燥度が所定値に達したと判断した場合に、ポンプ装置91を駆動させる。
【0095】
かかる構成において、給水を自動的に開始するための判断要素としては、つる植物Gの乾燥状態を検出した結果だけでなく、屋外温度検出センサ(屋外温度検出手段)や屋外乾燥度検出センサ等を設け、それらの検出結果を利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
11…窓部、14…屋外床部、21…床フレーム、21b…短辺部材(ボトムレール)、30…緑化庇、31…庇構造部、32…側面構造部、41…庇フレーム、41a…長辺部材(第1辺部)、41b…短辺部材(第2辺部)、42…上部ワイヤ(上部支索)、51…側面ワイヤ(側面支索)、61…床大梁、63…天井大梁、71,72…取付補助部材(介在部材)、73,74…支持ブラケット(介在部材)、81…中空部、86…ワイヤ挿通孔(上部支索用側部孔)、87…ワイヤ挿通孔(側面支索用底孔),88…ワイヤ挿通孔(側面支索用側部孔)、101,102…上端連結部材(移動部材)、G…つる植物、R1…第1空間部、R2…第2空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側で窓部の上方に設置される庇フレームを有し、その庇フレームは窓枠に平行に延びる一対の第1辺部と、窓枠に交差する方向に延びる一対の第2辺部とがそれぞれ対向配置されてなり、庇フレーム内側にはつる植物が絡み付く支えとなる上部支索が張られた庇構造部と、
前記第2辺部の下方に配置されるボトムレールを有し、該ボトムレールとその上方の第2辺部との間にはつる植物が絡み付く支えとなる側面支索が張られた側面構造部と、
を備え、
前記側面支索を前記庇フレームの内側へ引き込んで前記側面構造部を非形成状態とし、又はその引込状態から側面支索を引き出して側面構造部を形成状態とする側面支索可動機構が、前記側面構造部に設けられていることを特徴とする緑化庇。
【請求項2】
前記側面支索可動機構は、前記第1辺部間に架け渡され、該第1辺部の長手方向に沿って移動する移動部材を備え、前記側面支索を前記第2辺部に対して挿通自在とし、前記ボトムレールとは反対側の端部が前記移動部材に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の緑化庇。
【請求項3】
前記側面構造部は前記第1辺部の前記庇フレームの両側に設けられ、かつそれら各側面構造部ごとに前記側面支索可動機構が設けられ、各々の側面構造部に対応する一対の前記移動部材は互いに上下位置を異ならせて前記第1辺部間に架け渡されていることを特徴とする請求項2に記載の緑化庇。
【請求項4】
前記一対の第2辺部は中空状に形成され、その中空部には前記上部支索の端部が挿入されるとともに、前記側面支索が挿通されて下方に引き出されており、この中空部を貯水部としたことを特徴とする請求項2又は3に記載の緑化庇。
【請求項5】
前記中空部は少なくとも二つの空間部を有しており、そのうち第1空間部にはその側部に設けられた上部支索用側部孔から前記上部支索の端部が挿入され、第2空間部には前記側面支索が挿通され、該第2空間部の底部に前記側面支索を第2辺部の下方に引き出すための側面支索用底孔が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の緑化庇。
【請求項6】
前記両空間部の上方には、前記第2辺部の長手方向に延びる上方空間がそれぞれ形成され、各上方空間は非区画の状態とされており、前記第1空間部及び第2空間部のいずれか一方に、当該空間部に水を供給する水供給口が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の緑化庇。
【請求項7】
前記第2空間部は、その底部が前記第1空間部の底部よりも低い位置に配置されて、該第1空間部の側方から下方にかけて形成され、前記側面支索を庇フレーム内側に引き出すための側面支索用側部孔が、前記第1空間部の前記上部支索用側部孔の下方に設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の緑化庇。
【請求項8】
屋外温度を検出する屋外温度検出手段と、
前記上部支索及び側面支索に絡み付いたつる植物の水分量を検出する植物水分量検出手段と、
前記貯水部に水を供給する水供給手段と、
前記屋外温度検出手段又は前記植物水分量検出手段による検出結果により、屋外温度又はつる植物の乾燥度が所定値となった場合に、前記貯水部に水を供給すべく前記水供給手段による水供給を開始させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の緑化庇。
【請求項9】
前記側面支索はフレキシブルホースであり、そのフレキシブルホースには所定間隔ごとに水流出孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の緑化庇。
【請求項10】
前記上部支索及び前記側面支索は、ロープ又は鋼製ワイヤであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の緑化庇。
【請求項11】
前記ボトムレールは、前記窓部の屋外側に設けられる屋外床部の床フレームの一部であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の緑化庇。
【請求項12】
外壁部に設けられた窓部の屋外側に屋外床部が設けられた建物であって、
前記窓部の上方に、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の緑化庇が有する庇フレームが取り付けられるとともに、前記屋外床部に前記ボトムレールが取り付けられて、前記窓部の両側方に前記側面支索が設けられ、前記窓部の周囲は庇構造部、側面構造部及び屋外床部によって囲まれていることを特徴とする建物。
【請求項13】
前記建物は、複数の建物ユニットが組み合わされてなるユニット式建物であって、
前記庇フレームは建物ユニットの天井大梁に、前記屋外床部の床フレームは該建物ユニットの床大梁にそれぞれ介在部材を介して固定されていることを特徴とする請求項12に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184997(P2011−184997A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53958(P2010−53958)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】