説明

線状体の巻き取り方法及び鉛線供給材

【課題】この発明は、鉛線をボビンに巻き取った場合に張力や応力が加わらない状態として輸送中或いは溶接作業中に巻きに緩みなどが生じるようなことがなく、鉛線の絡まりを防止する鉛線の巻き取り方法を提供しようとするものである。
【解決手段】鉛線2の巻き取り方法であって、鉛線2の端部3をボビン1の端部に固定して巻き取って鉛線2を隙間なくボビン1に配列して巻き付けて二段目に巻き付けた鉛線2で一段目に巻きつけた鉛線2を押さえ付け、その段階でボビン1に固定している鉛線2の基端部3を途中で切断しさらに一段目の鉛線の配置されていない隙間にダミー部材6を挿入して埋設し一段目の鉛線2の配列上面を平坦とした後、引き続き鉛線2を所定の長さまで巻き取ることを特徴とする鉛線2の巻き取り方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉛蓄電池に溶接用足し鉛として供給する鉛線の巻き取り方法及び鉛線供給材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の各部の電気的接続は鉛接続部品の溶接によって行われているが、溶接部位や鉛部品の形状によっては別の鉛(足し鉛)を供給することが必要である。
【0003】
従来、手溶接では鉛ロー棒によって供給していたが、近年のロボットを用いた自動溶接方法では鉛を連続的に供給するために、ボビンに巻き取られた鉛線を繰り出しながら鉛を供給することが行われている。
【0004】
しかしながら、ボビンに巻き取られた鉛線は、張力や応力が加わっていない状態となっているので、輸送中或いは溶接作業中に巻きに緩みが生じることがあった。
【0005】
特に、溶接作業中に鉛線の繰り出しをしたり、繰り出しを停止したりすると、ボビンに巻かれた鉛線の巻き緩みが生じて巻きが緩み、これが原因で溶接時に鉛線が絡まって鉛線が円滑に繰り出せず溶接作業の稼働率が低下するといった問題があった。
【0006】
線材の巻き取りに関する先行技術としては、回転ピンドルにセットした巻き取りボビンに線材を巻き取る際に、前記線材の下端末を前記回転ピンドルに設けて線材下端末挿入部に挿入して押さえ、然る後に前記線材を巻き始め、その後に前記巻き取りボビンに前記線材を巻き取る技術が公知となっている。(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭2002−356275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の先行技術は鉛線の巻き取りに関するものではなく、この技術を鉛線の巻き取りに適用した場合は輸送中或いは溶接作業中に巻きに緩みが生じ、溶接時に鉛線が絡まって鉛線が円滑に繰り出しが生じたり、溶接作業の稼働率が低下するといった問題を解消することはできなかった。
【0009】
この発明は、鉛線をボビンに巻き取った場合に張力や応力が加わらない状態として輸送中或いは溶接作業中に巻きに緩みなどが生じるようなことがなく、鉛線の絡まりを防止する鉛線の巻き取り方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、鉛線の巻き取り方法であって、鉛線の端部をボビンの端部に固定して巻き取って鉛線を隙間なくボビンに配列して巻き付けて二段目に巻き付けた鉛線で一段目に巻きつけた鉛線を押さえ付け、その段階でボビンに固定している鉛線の基端部を途中で切断しさらに一段目の鉛線の配置されていない隙間にダミー部材を挿入して埋設し一段目の鉛線の配列上面を平坦とした後、引き続き鉛線を所定の長さまで巻き取ることを特徴とする鉛線の巻き取り方法である。また、前記鉛線の巻き取り方法により製造した鉛線供給材を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ボビンに巻き取られた鉛線が輸送中に緩むことがなく、またボビンから繰り出す際に緩みが生じて鉛線同士の絡まりが生ずるようなことも防止することができる。そのために、この方法で巻き取った鉛線をボビンから繰り出して溶接作業などを行なう際にも鉛線が絡まって円滑に繰り出すことが出来ないといったトラブルもなく溶接作業の稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施例になる鉛線の巻き取り開始段階を示す説明図。
【図2】この発明の一実施例になる鉛線の巻き取り途中の段階を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1および図2は、いずれもこの発明の鉛線の巻き取り方法を示すものである。図1において1はボビンである。2は鉛線である。ボビン1は、鉛線2の巻き取り時には図示しない駆動源と連動して矢印方向に回転され鉛線2が巻き取られる。鉛線2は、その基端部3でボビン2の胴部4の片側に設けられた孔5に挿入されて止められて、その後図示されているようにボビン2の胴部4に隙間なく一列に配列されてスパイラルに巻かれる。ボビン2に巻き取られていく鉛線はボビン2の胴部4の他端部に達した後、図2に示すように逆戻りして、一段目の配列の各鉛線の中間に二段目の配列として巻き取られる。図2は二段目の配列が再び最初の巻き始めの段階に達する直前の時点を示したものである。
【0016】
この状態に至った時点で鉛線の基端部3を、ボビン2の胴部4の片側に設けた孔5に挿入されている部分で切断して鉛線とボビンとの接続関係を切断する。しかしながら、この時点では鉛線は一段目に配列されたものが二段目の鉛線で押し付けられているので、一段目の鉛線と二段目の鉛線は鉛線同士の摩擦抵抗によって互いに滑り合うことはなく、これらの鉛線は一塊の鉛線となった状態となっている。
【0017】
次に、図2に示すようにボビン2の胴部に巻かれた鉛線2の一段目の部分で巻き始めの鉛線の配置されていない隙間の部分に鉛のダミー線6を挿入して埋設し、一段目の鉛線2の配列上面を実質的に平坦とする。その後、引き続き鉛線2を所定の長さまで巻き取って巻き取り作業を終了する。
【0018】
なお、本願においてダミー部材は鉛を用いたが、鉛線の配置されていない隙間を埋めることが可能な材料であれば特に限定されるものではない。例えば、プラスチックや他の金属などを用いることが可能である。金属を用いる場合は、不純物の混入などを考慮すると、鉛を使用することが好ましい。
【0019】
鉛線の巻き取りは、例えば6段〜7段とし一段で約32本の配列とする。従って、一つのボビンで200巻き程度である。これらの鉛線は互いに摩擦抵抗があって線全体が鉛の塊となった状態となる。しかも鉛線の基端部はボビンの胴部で固定部が切断されているので、鉛線の巻かれた塊が全体となってボビンの胴部の上を滑るような状態となるものである。
【0020】
このようにして巻き取られた鉛線を自動溶接機などでボビンから鉛線を繰り出すときは、ボビンをフリー回転として鉛線を必要な長さで引っ張り出して足し鉛として使用する。また、溶接の途中で鉛線の引き出しを止めるときは、鉛線の引っ張りを中止すると鉛線の引き出しは必然的に止まる。
【0021】
従って、自動溶接などで、巻き線の引き出しと中止を繰り返すようなことを行っても、その際の鉛線の余分な引き出しや緩みが生じて、回転中の鉛線が部分的に弛んで個別的に回って、その部分の線が行き場を失って隙間から飛び出すようなことが回避されるようになった。
【0022】
従来は鉛線の基端部がリールに固定されていたので、自動溶接などで、巻き線の引き出しと中止を繰り返し行なうと、バックテンションがかった状態となって余分の巻き線の引き出しが行われるような状態が生じ、その際に生じた隙間から鉛線が部分的に回転して飛び出すようなことが生じていた。鉛線が部分的に弛んで回ってしまうと、その部分の線が行き場を失うことが生じていた。
【0023】
然るに、この発明では鉛線が基端部で固定されていないので、ボビンとの間で滑りが生じて、それによって回転を吸収して余分の鉛線の引き出しが回避されるようになったものと考えられるものである。また、鉛線同士の接触抵抗は比較的に大きいので鉛線は全て一つの塊となった状態となってボビンとの接触面で滑っていくので巻き戻しの最後まで余分の引き出しを生じないようにすることができて、隙間から飛び出すようなことが生じ、その部分の線が行き場を失うようなことを防止することができ、溶接作業を効率よく行うことが可能となったものである。
【実施例1】
【0024】
図1に示すボビンを用いて、図2に示すようにして基端部を切り離し、太さ8mmの鉛線を7段巻きとし一段で約41本の配列で巻き取った。鉛線の巻き回数は一つのボビンで280巻きとした。巻き始めの隙間には用いた鉛線と同じ鉛線のダミー線を用いて埋めた。この巻き取った鉛線で自動溶接機を用いて鉛蓄電池の鉛接続部品の溶接に足し鉛として用いた。その結果、余分の巻き線の引き出しが行われるようなことはなく、またその際に鉛線が部分的に弛んで回って、その部分の線が行き場を失うことが生じるようなことは皆無であった。
【0025】
これに対して、同じように鉛線を巻き取り鉛線の端部を切り離さないで巻き取った鉛線を、同じように自動溶接機で溶接するために巻き戻して使用したところ、6回/10ボビンの割りで鉛線が部分的に弛んで回って、その部分の線が行き場を失うことが生じるような事態が発生し、その都度ボビンの交換が必要であった。さらに、ロボット溶接のティーチングの修正も4回/10ボビンの割合で発生していた。
【符号の説明】
【0026】
1‥‥ボビン、2‥‥鉛線、3‥‥基端部、4‥‥胴、5‥‥孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛線の巻き取り方法であって、鉛線の端部をボビンの端部に固定して巻き取って鉛線を隙間なくボビンに配列して巻き付けて二段目に巻き付けた鉛線で一段目に巻き付けた鉛線を押さえ付け、その段階でボビンに固定している鉛線の基端部を途中で切断しさらに一段目の鉛線の配置されていない隙間にダミー部材を挿入して埋設し一段目の鉛線の配列上面を平坦とした後、引き続き鉛線を所定の長さまで巻き取ることを特徴とする鉛線の巻き取り方法。
【請求項2】
前記請求項1記載の鉛線の巻き取り方法により製造した鉛線供給材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280456(P2010−280456A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133226(P2009−133226)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】