説明

締結具

【課題】軸上の任意の位置に迅速に且つ簡易に固定可能な締結具を提供する。
【解決手段】締結具1は、軸3の外周面を両側方から挟み込む中央孔15を形成可能な一対の第1、第2締付半体1a,1bと、前記第1締付半体1aに形成されたボルト貫通孔12に挿通し且つ前記第2締付半体1bに形成されたネジ孔13に螺合させる締結ボルト2とを有し、前記第1締付半体1aには、一端に前記ボルト貫通孔12が開放する第1対向面21が形成され、他端に第1係合部31が形成されており、前記第2締付半体1bには、一端に前記ネジ孔13が開放し且つ前記第1対向面21に対向する第2対向面22が形成され、他端に前記第1係合部31に着脱自在に係合する第2係合部41が形成されており、前記第1、第2係合部31,41を係合させた状態で前記締結ボルト2を締め付けることにより前記中央孔15を縮径させる構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸に外嵌固定させて軸継手やカラーとして使用される締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の締結具として、図6に示す締結具501Aのように、一対の締付半体501a,501bからなり、一方の締付半体501aの2箇所のボルト孔512,512に締結ボルト502,502を通して他方の締付半体501bの2箇所のネジ孔513,513に螺合させて締め付けることで、中央孔515に軸503を固定させるものがある。
【0003】
また、図7に示すように、他の締結具501Bとして、すり割り溝510を設けた筒状体500からなり、すり割り溝510に対向する一側に設けたボルト孔512Bに締結ボルト502Bを通して他側のネジ孔513Bに螺合させて締め付けることで、中央孔515Bに軸503を固定させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−51931号公報
【特許文献2】特開2004−144235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す従来の締結具501Aは、分割可能な一対の締付半体501a,501bからなるので軸503の所定位置に直接設置できるが、2本の締結ボルト502,502の締め付けに時間を要し、且つ各々の締結ボルト502,502を均等に締付けるのが面倒である。そのため、軸503への固定作業を迅速に且つ確実に行うのは困難であった。
【0006】
また、図7に示す締結具501Bは、筒状体500を軸503の所定位置に外嵌させるには、軸503の端部から筒状体500を挿通させて所定位置まで移動させる必要がある。そのため、軸503に何らかの部材が既に取り付けられていると、これを取り外してから筒状体500を軸503に挿通させる必要がある。従って、このものも軸503への固定作業を迅速に行うのが困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軸上の任意の位置に迅速に且つ簡易に固定可能な締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る締結具は、
軸の外周面を両側方から挟み込む中央孔を形成可能な一対の第1、第2締付半体と、前記第1締付半体に形成されたボルト貫通孔に挿通し且つ前記第2締付半体に形成されたネジ孔に螺合させる締結ボルトとを有し、
前記第1締付半体には、一端に前記ボルト貫通孔が開放する第1対向面が形成され、他端に第1係合部が形成されており、
前記第2締付半体には、一端に前記ネジ孔が開放し且つ前記第1対向面に対向する第2対向面が形成され、他端に前記第1係合部に着脱自在に係合する第2係合部が形成されており、
前記第1、第2係合部を係合させた状態で前記締結ボルトを締め付けることにより前記中央孔を縮径させる構成としたものである。
【0009】
上記構成によれば、一対の第1、第2締付半体をばらした状態にできるので、軸に既に各種部材が取り付けられているか否かにかかわらず、一対の第1、第2締付半体を軸上の任意の位置に配置させることができる。そして、前記第1、第2係合部を係合させた状態で前記締結ボルトを締め付けることにより前記中央孔が縮径し、第1、第2締付半体が軸の外周面に固定される。
【0010】
前記締結具において、
前記第1締付半体の前記他端近傍に外側に切り欠く外側切欠部が形成されると共に前記第1係合部となる外向き係合突起が形成され、
前記第2締付半体の前記他端近傍に内側に切り欠く内側切欠部が形成されると共に前記第2係合部となる内向き係合突起が形成され、
前記第1締付半体の外側切欠部に前記第2締付半体の内向き係合突起を配置させると同時に前記第2締付半体の内側切欠部に前記第1締付半体の外向き係合突起を配置させて、前記外向き係合突起と前記内向き係合突起とを係合させる構成とするのが望ましい。
【0011】
これによれば、締結ボルトを締付けると、外向き係合突起と内向き係合突起とは周方向に互いに引っ張り合う力が作用する。従って、外向き係合突起と内向き係合突起が一層強固に係合され、軸への締結力を十分に確保することができる。よって、軸に固定状態にある第1、第2締付半体が不用意に外れたり軸の固定が緩んだりすることもない。
【0012】
また、前記第1締付半体の外側切欠部に前記第2締付半体の内向き係合突起(第2係合部)を配置させると同時に前記第2締付半体の内側切欠部に前記第1締付半体の外向き係合突起(第1係合部)を配置させることにより、外周部に突出させることなく前記第1、第2係合部を形成することができる。
【0013】
前記締結具において、
前記第1、第2締付半体の軸方向側の少なくとも一方の端面にベアリング押さえ等となる突片が形成されてもよい。
これによれば、例えば、軸に取り付けたベアリングローラにベアリング押さえ等となる突片を当接させることにより、ベアリングローラの回転に支障なく軸上の所定位置に前記締結具を保持させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る締結具によれば、軸に既に各種部材が取り付けられているか否かにかかわらず、軸上の任意の位置に迅速に且つ簡易に固定させることができる。従って、使い勝手の良い締結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による締結具を示す一部切欠側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態による締結具を軸に取り付ける様子を示す説明図である。
【図4】締結具の他の例を示す断面図である。
【図5】締結具の他の例を示す平面図である。
【図6】従来の締結具の構成を示す断面図である。
【図7】従来の他の締結具の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3に示すように、実施形態による締結具1は、軸3の外周面を両側方から挟み込む中央孔15を形成可能な略半円形状の一対の第1、第2締付半体1a,1bと、軸3に外嵌させた第1、第2締付半体1a,1bを締め付ける1本の締結ボルト2とから構成される。第1締付半体1aと第2締付半体1bとは分解可能となっている(図3参照)。
【0017】
第1締付半体1aは、その一端には外周面側に開放し且つ締結ボルト2の頭部20が収容可能な凹部11が形成され、この凹部11に連通して締結ボルト2を挿通するボルト貫通孔12が形成されている。ボルト貫通孔12は、第1締付半体1aの一端である第1対向面21に開放されている。第1締付半体1aは、その他端には外向きに突出する外向き係合突起(第1係合部)31が形成され、他端近傍の外周面を軸線方向に切り欠く外側切欠部30が形成されている。
【0018】
第2締付半体1bは、その一端には締結ボルト2のネジ軸23が螺合するネジ孔13が形成されている。ネジ孔13は、第2締付半体1bの一端である第2対向面22に開放されている。第2対向面22は、第1締付半体1aの第1対向面21に対向している。第2締付半体1bは、その他端には内向きに突出する内向き係合突起(第2係合部)41が形成され、他端近傍の内周面を軸線方向に切り欠く内側切欠部40が形成されている。
【0019】
前記第1締付半体1aの外向き係合突起31と前記第2締付半体1bの内向き係合突起41は、外側切欠部30に内向き係合突起41を配置させると同時に内側切欠部40に外向き係合突起31を配置させて係合される。外向き係合突起31と内向き係合突起41を係合させて第1、第2対向面21,22を近接させると、第1、第2締付半体1a,1bの内周部に軸3の外径と略一致する直径の中央孔15が形成される。
【0020】
締結ボルト2は、凹部11内に収容可能な大きさの頭部20と、ボルト貫通孔12に挿通し且つネジ孔13に螺合可能なネジ軸23とからなる。外向き係合突起31と内向き係合突起41を係合させ、締結ボルト2のネジ軸23を第1締付半体1aのボルト貫通孔12に挿通させると共にネジ軸23を第2締付半体1bのネジ孔13に螺合させると、ばらした状態の第1、第2締付半体1a,1bが組み付けられる。
【0021】
以上の構成の締結具1の軸3への取り付けは、まず、軸3の外周面上の固定させる箇所に第1、第2締付半体1a,1bを配置させ、第1締付半体1aの外向き係合突起31と第2締付半体1bの内向き係合突起41とを係合させる(図3参照)。次いで、締結ボルト2のネジ軸23を第1締付半体1aのボルト貫通孔12に挿通させて第2締付半体1bのネジ孔13に螺合させる。すると、凹部11の座面14が締結ボルト2の頭部20で押されることにより、軸3を外嵌する中央孔15の内径が縮径する。この中央孔15の縮径によって第1、第2締付半体1a,1bは軸3の外周面にそれぞれ強固に圧接し、十分な締結力で確実に固定される。
【0022】
また、締結ボルト2の締付けによって、外向き係合突起31と内向き係合突起41の間には周方向に互いに引っ張り合う力が作用する。従って、外向き係合突起31及び内向き係合突起41の係合力が一層強くなり、第1、第2締付半体1a,1bが強固に結合される。よって、締結具1の使用中に第1、第2締付半体1a,1bが軸3から不用意に外れたり、軸3の固定が緩んでずれたりする不都合はない。
【0023】
また、外向き係合突起31及び内向き係合突起41を係合させた状態において、外向き係合突起31は内側切欠部40に、内向き係合突起41は外側切欠部30にそれぞれ嵌まり込む態様となるから、外向き係合突起31や内向き係合突起41が外周部に突出し障害となることはない。
【0024】
以上のように、実施の形態の締結具1によれば、分離自在な第1、第2締付半体1a,1bから構成されるから、軸3に既に各種部材が取り付けられているか否かにかかわらず、第1、第2締付半体1a,1bを軸3の側方から軸3を挟み込むと共に1本の締結ボルト2を締め付けるだけで、任意の位置に締結具1を固定することができる。従って、軸3上の任意の位置に迅速に且つ簡易に固定させることができる。よって、使い勝手が良く且つ固定作業の容易なカラーとしての締結具1を提供することができる。
【0025】
また、図4に示すように、締結具1Aを所定長さに設定し、複数の締結ボルト2で締め付ける構成とすれば、2本の軸3a,3bを連結させる軸継手として利用することができる。
【0026】
また、図5に示すように、締結具1Bとして、第1、第2締付半体1a,1bの軸方向側の一方の端面10a,10bにベアリング押さえとなる突片16a,16bを形成することもできる。突片16a,16bは、第1、第2締付半体1a,1bの各々の同一面において中央孔15に沿って形成され、軸3に取り付けられるベアリングローラの内輪51に当接される。これにより、ベアリングローラの回転に支障なく軸3上の所定位置に締結具1Bを保持させることができる。尚、突片16a,16bは、第1、第2締付半体1a,1bの軸方向側の両端面に形成されてもよい。
【0027】
尚、外向き係合突起31と内向き係合突起41は、それぞれ第1、第2締付半体1a,1bのどちらに設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1,1A,1B 締結具
1a 第1締付半体
1b 第2締付半体
2 締結ボルト
3 軸
10a,10b 端面
12 ボルト貫通孔
13 ネジ孔
15 中央孔
16a,16b 突片
21 第1対向面
22 第2対向面
30 外側切欠部
31 外向き係合突起(第1係合部)
40 内側切欠部
41 内向き係合突起(第2係合部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の外周面を両側方から挟み込む中央孔を形成可能な一対の第1、第2締付半体と、前記第1締付半体に形成されたボルト貫通孔に挿通し且つ前記第2締付半体に形成されたネジ孔に螺合させる締結ボルトとを有し、
前記第1締付半体には、一端に前記ボルト貫通孔が開放する第1対向面が形成され、他端に第1係合部が形成されており、
前記第2締付半体には、一端に前記ネジ孔が開放し且つ前記第1対向面に対向する第2対向面が形成され、他端に前記第1係合部に着脱自在に係合する第2係合部が形成されており、
前記第1、第2係合部を係合させた状態で前記締結ボルトを締め付けることにより前記中央孔を縮径させる構成とした締結具。
【請求項2】
請求項1に記載の締結具において、
前記第1締付半体の前記他端近傍に外側に切り欠く外側切欠部が形成されると共に前記第1係合部となる外向き係合突起が形成され、
前記第2締付半体の前記他端近傍に内側に切り欠く内側切欠部が形成されると共に前記第2係合部となる内向き係合突起が形成され、
前記第1締付半体の外側切欠部に前記第2締付半体の内向き係合突起を配置させると同時に前記第2締付半体の内側切欠部に前記第1締付半体の外向き係合突起を配置させて、前記外向き係合突起と前記内向き係合突起とを係合させる構成とした締結具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の締結具において、
前記第1、第2締付半体の軸方向側の少なくとも一方の端面にベアリング押さえ等となる突片が形成されている締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−7312(P2011−7312A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154141(P2009−154141)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】