説明

緩み止めナット

【課題】ボルトに簡易に螺合され、ボルトに一旦締結すればその締結を容易に外すことができないようにすると共に、長期間にわたって振動や外力等が働くことによる緩みを確実に防止することができ、しかも締結の際にガタつくことがない。
【解決手段】緩み止めナット1は、ボルト2の雄螺子溝2aのピッチに整合するコイルピッチを有するコイルバネ13と、コイルバネ13を収容可能とし、ボルト2に対するナット締付方向への回転に伴いボルト2の雄螺子溝2aからコイルバネ13が離反し摩擦力を軽減させて回転を許容させると共に、ボルト2と螺合したときのボルト2に対するナット離脱方向への回転に伴いボルト2の雄螺子溝2aにコイルバネ13が密着し摩擦力を増加させて回転を阻止するように設けたバネ収容部11を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルトにより被締結部材を固定するに際し、緩みや脱落を防止するための緩み止めナットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被締結部材を固定するには、ボルトとナットによる締め付け方式があらゆる分野で多用されている。ボルトに締め付けられたナットは、単純に取り付けただけでは、振動や外力等によって緩んでしまいやすいために、スプリングワッシャーを挟み込むことが通常行われている。また、被締結部材を確実に固定するには、ダブルナットを使用した締め付け方式も広く行われている。
【0003】
しかしながら、このようなボルトとナットによる締め付け方式では、例えばダブルナットを使用した場合、締め付け直後では被締結部材の固定が確実ではあっても、長期間にわたっての振動や衝撃等により一旦緩んでしまうと、2個のナットはそれぞれが自由に回転するようになってボルトより脱落してしまうという問題点を有していた。
【0004】
このため、特許文献1では、ボルトの雄螺子溝のピッチに整合するコイルバネをナットのバネ収容凹部に収容し、ボルトに対するナットの締め付け方向への回転に伴いボルトの雄螺子溝からコイルバネが離反し摩擦力を軽減して回転を許容すると共に、ボルトとナットとが螺合したときのボルトに対するナットの離脱方向への回転に伴いボルトの雄螺子溝にコイルバネが密着し摩擦力を増加して回転を阻止し、ボルトにナットを一旦締結すればその締結を容易に外すことができないようにすると共に、長期間にわたって振動や外力等が働くことによるボルトとナット相互間の緩みを防止することができる緩み止めナットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−307210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、特許文献1では、ボルトの雄螺子溝のピッチに整合するコイルバネをナットのバネ収容凹部に収容し、コイルバネの伸縮を利用してボルトに対するナットの締付けを行い、またボルトに対するナットの離脱方向への回転に伴いボルトの雄螺子溝にコイルバネが密着し摩擦力を増加して回転を阻止する構造であり、コイルバネとナットのバネ収容凹部との間に隙間があることから、この隙間によって締結の際にナットがガタつくことある点である。
【0007】
そこで、この発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、ボルトに簡易に螺合され、ボルトに一旦締結すればその締結を容易に外すことができないようにすると共に、長期間にわたって振動や外力等が働くことによる緩みを確実に防止することができ、しかも締結の際にガタつくことがない緩み止めナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ボルトの雄螺子溝のピッチに整合するコイルのピッチを有するコイルバネと、
前記コイルバネを収容可能とし、前記ボルトに対するナット締付方向への回転に伴い前記ボルトの雄螺子溝から前記コイルバネが離反し摩擦力を軽減させて回転を許容させると共に、前記ボルトと螺合したときの前記ボルトに対するナット離脱方向への回転に伴い前記ボルトの雄螺子溝に前記コイルバネが密着し摩擦力を増加させて回転を阻止するように設けたバネ収容部と、
前記ボルトの雄螺子溝のピッチに整合する雌螺子溝を有するナット部と、
を含み、
前記ナット部の雌螺子溝のピッチ数を、前記コイルバネのコイルのピッチ数より多くしたことを特徴とする緩み止めナットである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ナット部のナット締付側に、前記ボルトの外径より大きな内径を有する環状突起を一体に形成し、
前記環状突起の軸方向の長さより厚く、かつボルト挿通孔を有する板状弾性部材を備え、
前記環状突起の外周に、前記板状弾性部材のボルト挿通孔の内径を固着したことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナットである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記コイルバネの一方の端部を前記バネ収容部に係止し、他方の端部を前記バネ収容部の内壁内に配置して自由端とし、
前記バネ収容部の内壁に、前記回転の阻止を解除した後の回転により前記他方の端部を押動する押動部を設け、
前記回転を阻止する以上の回転により前記一方の端部は、前記バネ収容部から係止が解除され、
前記押動部により前記他方の端部を押動し、前記ボルトから離脱するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナットである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記コイルバネの一方の端部を前記バネ収容部に係止し、他方の端部を前記バネ収容部の外部からナット離脱方向へ移動可能に配置した自由端とし、
前記他方の端部をナット離脱方向へ移動して前記コイルバネを外方へ広げて回転を可能にし、前記ボルトから離脱するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナットである。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、コイルバネとバネ収容部との間に隙間があっても、ナット部の雌螺子溝のピッチ数を、コイルバネのコイルのピッチ数より多くしたことで、ナット部の雌螺子溝とボルトの雄螺子溝とが隙間なく螺合して支持しており、締結の際に緩み止めナットがガタつくことがない。
【0015】
請求項2に記載の発明では、ナット部のナット締付側に、板状弾性部材を固着したことで、締結の際に板状弾性部材よって軸方向の不勢力が生じて締結の際に緩み止めナットがガタつくことがない。また、ナット部と板状弾性部材とが一体されており、使用時に板状弾性部材の脱落や忘れたりすることがない。
【0016】
請求項3に記載の発明では、緩み止めナットをボルトから離脱する際には、ナット離脱方向への回転に伴い回転を阻止する以上に回転すると、一方の端部は、バネ収容部から係止が解除され、押動部により他方の端部を押動し、ボルトの雄螺子溝を保護しながら簡単に緩み止めナットを回転してボルトから離脱することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、緩み止めナットをボルトから離脱する際には、コイルバネの他方の端部を外部から離脱方向に移動すると共に、コイルバネが外方へ広がり、ボルトの雄螺子溝を保護しながら簡単に緩み止めナットを回転してボルトから離脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態を示す締結時の緩み止めナットの断面図である。
【図2】ボルトに対するナットの回転動作を示すもので、(a)はボルトに対するナットの締め付け方向への回転動作状態の断面図、(b)はボルトに対するナットの緩み方向への回転動作状態の断面図である。
【図3】緩み止めナットの断面図である。
【図4】コイルバネの具体例を示すもので、(a)はコイルバネの全体側面図、(b)はコイルバネの正面図、(c)はコイルバネの背面図である。
【図5】第2の実施の形態を示す締結時の緩み止めナットの断面図である。
【図6】緩み止めナットの断面図である。
【図7】第3の実施の形態を示す締結時の緩み止めナットの断面図である。
【図8】緩み止めナットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の緩み止めナットの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
[第1の実施の形態]
この発明の第1の実施の形態を、図1乃至図4に基づいて説明すると、緩み止めナット10は、バネ収容部11と、ナット部12と、コイルバネ13と、キャップ部14とを含み、ナット部12に工具を嵌めて回転させて締め付け、または解除を行ない、ナット部12と、コイルバネ13が、ボルト2の雄螺子溝2aに螺合巻装される。
【0020】
バネ収容部11は、円筒状であり、ナット部12と一体に成形され、キャップ部14は、バネ収容部11にコイルバネ13を取り付けた後に、バネ収容部11を覆うように圧入、又は接着などにより固定される。キャップ部14には、ボルト貫通孔14aが形成され、このボルト貫通孔14aはバネ収容部11の内壁11aの径より小径に形成されている。バネ収容部11の先端側には、コイルバネ13を係止するための係止孔11bがナット軸方向と平行に形成されている。キャップ部14は、コイルバネ13が外部から見えないようにして外観性の向上を図り、かつコイルバネ13を保護するために設けられているが、キャップ部14は設けなくてもよい。
【0021】
コイルバネ13は、図4に示すように、ボルト2の雄螺子溝2aのピッチに整合するコイル部13aと、コイル部13aの一方の端部13bと、コイル部13aの他方の端部13cとを有する。一方の端部13bは、コイル部13aの外法の位置でコイル軸方向と平行に屈曲し、他方の端部13cは、コイル部13aの外周部より僅か外方に延出している。
【0022】
バネ収容部11には、コイルバネ13が収容され、この収容状態でコイル部13aの一方の端部13bは係止孔11bに係止され、他方の端部13cは内壁11a内に配置した自由端としている。コイルバネ13の装着状態では、コイル部13aと内壁11aとの間には隙間Dがあり、この隙間Dはコイル部13aが外方へ広がること許容する。
【0023】
内壁11aの一部には、断面凹み状の押動部11cが軸方向に形成され、コイルバネ13の他方の端部13cは、断面凹み状の押動部11cに当接しないように配置されている。
【0024】
緩み止めナット10を離脱するときに、ナット離脱方向への回転に伴いボルト2の雄螺子溝2aにコイルバネ13のコイル部13aが密着し摩擦力を増加させて回転を阻止する以上の回転を行なうと、この回転力によってコイルバネ13が引きずられて回転し、一方の端部13bや一方の端部13bを係止している係止孔11bに負荷が集中してかかり、係止孔11bが破損したり、変形し、また一方の端部13bが破損したり、伸びる等変形してバネ収容部11の係止孔11bから外れるなどによって係止が解除される。これによって、押動部11cが他方の端部13cに当たり押動するために、コイルバネ13が外方へ広がり、あるいは摩擦が無くなりあるいは軽減する等で自由に回転できるようになり、ボルト2の雄螺子溝2aを保護しながら緩み止めナット10をボルト2から離脱することができるようになっている。押動部11cの形状は、特に限定されず、一方の端部13bが破壊され、あるいは変形してバネ収容部11の係止孔11bから外れて係止が解除されると、他方の端部13cを押動することができればよく、例えば、内壁11aより内側へ突出させて押動することができるようにしてもよい。
【0025】
ナット部12は、ボルト2の雄螺子溝2aのピッチに整合する雌螺子溝12aを有し、このナット部12の雌螺子溝12aのピッチ数を、コイルバネ13のコイルのピッチ数より多くしている。しかも、コイル部13aの部分の長さよりナット部12の雌螺子溝12aの部分の長さを長くし、この長い部分のナット部12の雌螺子溝12aとボルト2の雄螺子溝2aの螺合によって一体化でき、コイルバネ13のコイル部13aとバネ収容部11の内壁11aとの間に隙間Dがあっても、この隙間Dによって締結の際に緩み止めナット10がガタつくことがないようにしている。
【0026】
次に、以上のように構成された第1の実施の形態についての使用、動作を説明すると、図1に示すように、被締結部Wを締結するに際し、例えば被締結物Wを貫挿したボルト2に対して、コイルバネ13が被締結物Wとは反対側に位置するようにして緩み止めナット10をネジ込んで行く。
【0027】
このとき、図2(a)に示すように、ボルト2の雌螺子溝2aに対し緩み止めナット10をナット締付方向に回すと、ナット部12の雌螺子溝12aとボルト2の雄螺子溝2aとが隙間なく螺合していき、この締結の際にガタつくことがなく、円滑に螺合することができる。
【0028】
さらに、緩み止めナット10をネジ込んで行くと、バネ収容部11内においてボルト2の雄螺子溝2aに嵌ったコイルバネ13のコイル部13aは、一方の端部13bを支点として外方へ広がり、ボルト2と接触しているコイルバネ13の素線の摩擦力が軽減され、緩み止めナット10はボルト2の雄螺子溝2aに円滑にネジ込まれる。そして、緩み止めナット10と一緒にネジ込まれたコイルバネ13は、ボルト2の雄螺子溝2aに嵌り込み、コイルバネ13の素線の弾性力によりボルト2の軸中心に向って押さえ付けられる。
【0029】
図2(b)に示すように、逆にボルト2の雄螺子溝2aに対し緩み止めナット10をナット離脱方向に回すと、バネ収容部11内においてコイルバネ13は一方の端部13bを支点として内径方向に収縮する状態となるようにコイルバネ13の素線が引っ張られてボルト2の雄螺子溝2aを締め付け、強力な緩み止め状態にさせる。このため、コイルバネ13と一体となった緩み止めナット10はコイルバネ13の部分で回転が阻止されて緩まなくなる。この状態では、コイルバネ13のコイル部13aとバネ収容部11の内壁11aとの間に隙間Dがあるが、ナット部12の雌螺子溝12aのピッチ数を、コイルバネ13のコイルのピッチ数より多くしたことで、ナット部12の雌螺子溝12aとボルト2の雄螺子溝2aとが隙間なく螺合して支持しており、締結の際に緩み止めナット1がガタつくことがない。また、コイル部13aの部分の長さよりナット部12の雌螺子溝12aの部分の長さを長くし、この長い部分のナット部12の雌螺子溝12aとボルト2の雄螺子溝2aの螺合によって一体化しており、コイルバネ13のコイル部13aとバネ収容部11の内壁11aとの間に隙間Dがあっても、この隙間Dによって締結の際に緩み止めナット10がガタつくことがない。
【0030】
図2(c)に示すように、緩み止めナット10をボルト2から離脱するときに、ナット離脱方向への回転に伴いボルト2の雄螺子溝2aにコイルバネ13のコイル部13aが密着し摩擦力を増加させて回転を阻止する以上の回転を行なうと、この回転力によってコイルバネ13が引きずられて回転し、一方の端部13bや一方の端部13bを係止している係止孔11bに負荷が集中してかかり、係止孔11bが破損したり、変形し、また一方の端部13bが破損したり、伸びる等変形してバネ収容部11の係止孔11bから外れて係止が解除される。これによって、押動部11cが他方の端部13cに当たり押動し、これによりコイルバネ13が外方へ広がり、あるいは摩擦が無くなりあるいは軽減する等で自由に回転できるようになり、緩み止めナット10を緩めたり、ボルト2の雄螺子溝2aを保護しながらボルト2から容易に離脱することができる。
【0031】
[第2の実施の形態]
この第2の実施の形態を、図5及び図6に基づいて説明すると、第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一の符号が付されることでその詳細な説明は省略されている。この第2の実施の形態にあっては、ナット部12のナット締付側に環状突起12bを突出させて一体に形成している。この環状突起12bは、ボルト2の外径より大きな内径を有している。このナット部12には板状弾性部材15が備えられ、この板状弾性部材15は環状突起12bの軸方向の長さより厚く、かつボルト挿通孔15aを有する。この板状弾性部材15は、環状突起12bの外周に、ボルト挿通孔15aの内径を圧入して固着している。この実施の形態では、板状弾性部材15として、皿バネを用いているが、これに限定されずスプリングワッシャー、座金等弾性を有する部材であれば良い。
【0032】
このように、ナット部12のナット締付側に、板状弾性部材15を固着したことで、締結の際に板状弾性部材15よって軸方向に付勢力が生じてボルト2の雄螺子溝2aとナット部12の雌螺子溝12aとを密着させると共に、コイル部13aと密着させるから締結の際にガタつくことがない。また、ナット部12と板状弾性部材15とが一体されており、使用時に板状弾性部材15の脱落や忘れたりすることがない。
[第3の実施の形態]
この第3の実施の形態を、図7及び図8に基づいて説明すると、第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一の符号が付されることでその詳細な説明は省略されている。この第3の実施の形態にあっては、緩み止めナット1が蝶ナットであり、一対の翼10aを有する。コイルバネ13の他方の端部13cは、コイル部13aの外側に沿ってコイル軸方向に延ばし、一方の端部13b側に位置させ、さらに端部を外側に曲げた構成である。
【0033】
また、バネ収容部11には、溝部11eが一方の翼10aの近傍に形成されている。この溝部11eは、先端部からナット軸方向に形成され、コイルバネ13の他方の端部13cが移動可能な大きさに形成されている。コイルバネ13の一方の端部13bは、バネ収容部11の係止孔11bに係止し、他方の端部13cをバネ収容部11の溝部11eに外部から移動可能に配置されている。このバネ収容部11の溝部11eは、他方の端部13cが自由に移動できる大きさや形状であれば特に限定されないし、溝でなくてもよい。
【0034】
この実施の形態で、緩み止めナット10をネジ込んで行くと、緩み止めナット10と一緒にネジ込まれたコイルバネ13は、ボルト2の雄螺子溝2aに嵌り込み、コイルバネ13の素線の弾性力によりボルト2の軸中心に向って押さえ付けられる。このコイルバネ13は、係止孔11bによって一方の端部13bが係止され、他方の端部13cが自由端となっているため、係止孔11bを支点として円滑に外方へ広がり、緩み止めナット10をボルト2にネジ込むことができる。
【0035】
逆にボルト2の雄螺子溝2aに対し緩み止めナット10をナット離脱方向に回すときには、バネ収容部11内において、コイルバネ13は一方の端部13bと他方の端部13cが係止されているため、内径方向に収縮する状態となるようにコイルバネ13の素線が引っ張られてボルト2の雄螺子溝2aを締め付け、強力な緩み止め状態にさせる。このため、コイルバネ13と一体となった緩み止めナット10はコイルバネ13の部分で回転が阻止されて緩まなくなる。
【0036】
緩み止めナット10を離脱するときには、他方の端部13cと翼1aとを一緒に指で摘み、他方の端部13cを離脱方向へ移動させると共に、ナット離脱方向へ回転させる。このように、緩み止めナット10をボルト2から離脱する際には、コイルバネ13の他方の端部13cを外部から離脱方向に移動すると共に、ナット離脱方向へ回転すると、コイルバネ11のコイル部11aが外方へ広がりボルト2の雄螺子溝2aの密着を解除して摩擦が無くなりあるいは軽減する等で自由に回転を許容するようになるから、ボルト2の雄螺子溝2aを保護しながら簡単に緩み止めナット10を回転してボルト2から離脱することができる。この実施の形態では、係止孔11bを破損したり、コイルバネ11の一方の端部13bを破損したり、変形させることなく自由に緩み止めを解除することができるために、何回でも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、被締結部材を固定するに際し、ボルトに装着されて緩みや脱落を防止するための緩み止めナットに適用可能であり、ボルトに簡易に螺合され、ボルトに一旦締結すればその締結を容易に外すことができないようにすると共に、長期間にわたって振動や外力等が働くことによる緩みを確実に防止することができ、しかも締結の際にガタつくことがない。
【符号の説明】
【0038】
W 被締結物
10 緩み止めナット
11 バネ収容部
12 ナット部
13 コイルバネ
14 キャップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの雄螺子溝のピッチに整合するコイルのピッチを有するコイルバネと、
前記コイルバネを収容可能とし、前記ボルトに対するナット締付方向への回転に伴い前記ボルトの雄螺子溝から前記コイルバネが離反し摩擦力を軽減させて回転を許容させると共に、前記ボルトと螺合したときの前記ボルトに対するナット離脱方向への回転に伴い前記ボルトの雄螺子溝に前記コイルバネが密着し摩擦力を増加させて回転を阻止するように設けたバネ収容部と、
前記ボルトの雄螺子溝のピッチに整合する雌螺子溝を有するナット部と、
を含み、
前記ナット部の雌螺子溝のピッチ数を、前記コイルバネのコイルのピッチ数より多くしたことを特徴とする緩み止めナット。
【請求項2】
前記ナット部のナット締付側に、前記ボルトの外径より大きな内径を有する環状突起を一体に形成し、
前記環状突起の軸方向の長さより厚く、かつボルト挿通孔を有する板状弾性部材を備え、
前記環状突起の外周に、前記板状弾性部材のボルト挿通孔の内径を固着したことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナット。
【請求項3】
前記コイルバネの一方の端部を前記バネ収容部に係止し、他方の端部を前記バネ収容部の内壁内に配置して自由端とし、
前記バネ収容部の内壁に、前記回転の阻止を解除した後の回転により前記他方の端部を押動する押動部を設け、
前記回転を阻止する以上の回転により前記一方の端部は、前記バネ収容部から係止が解除され、
前記押動部により前記他方の端部を押動し、前記ボルトから離脱するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナット。
【請求項4】
前記コイルバネの一方の端部を前記バネ収容部に係止し、他方の端部を前記バネ収容部の外部からナット離脱方向へ移動可能に配置した自由端とし、
前記他方の端部をナット離脱方向へ移動して前記コイルバネを外方へ広げて回転を可能にし、前記ボルトから離脱するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78139(P2010−78139A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84199(P2009−84199)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(302006599)有限会社エコツール (2)
【出願人】(302008490)石徳螺子株式会社 (2)