説明

練製食品切断機

【課題】面倒な調整を行うことなく切断した餅の大きさを一定に保つ。切断中の切断刃と押出ノズルの間に餅が詰まったり、切断されて回転台上に落下した餅が台上を転がることを防止する。
【解決手段】搗きたての餅を収納するホッパー9と、その底部に設置された押出シリンダ6及び押出スクリュー7と、押出スクリュー7を駆動するモータ11と、押出シリンダの前端に設置された押出ノズル8と、押出ノズルの開口部から押し出された餅を切り落とす切断刃19と、切断されて落下する餅を受ける回転台28と、それを駆動するモータ27を備える。さらに、切断刃の移動と両モータのオン−オフを関係付けるリミットスイッチ18が設置され、これにより切断刃が切断前の初期位置から移動すると同時に両モータがオフとなり、切断後に切断刃が初期位置に復帰すると同時に両モータがオンとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ノズルから押し出される餅、つくね、こんにゃくなどの練製食品を定量に切断するための練製食品切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
臼や餅つき器で搗いた大餅(一臼分の餅)は一定の大きさに分割され、人手により丸められて小餅とされるが、搗きたての大餅を一定の大きさに分割するのは意外と難しく、かつ多くの労力を必要とする。そこで、家庭用では手動式、業務用では電動式の餅切断機が市販されている。
家庭用の餅切断機は、搗きたての大餅を収納するホッパーと、ホッパーの底部に設置されて餅を水平方向に押し出す手動の押出機構(押出シリンダと押出スクリュー)と、押出シリンダの先端に設置された押出ノズルと、押出ノズルの開口部から押し出した餅を切り落とすための手動の切断刃を備え、ハンドルで押出スクリューを回転させて押出ノズルの先端から餅を押し出し、切断刃で切断する。
【0003】
業務用の餅切断機は、家庭用のものと同様の構造であるが(特許文献1参照)、押出スクリューと切断刃が電動式であり、押出ノズルの下方に電動式の回転台が設置され、押出スクリューの回転及び切断刃の作動タイミングは可変とされていて、押出ノズルの先端から連続的に押し出される餅を、所定のタイミングで自動的に作動する切断刃で切断し、連続回転する回転台(ターンテーブル)上に落下させ、次工程(例えば餅を丸める作業者が待機)に回転搬送するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3126095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記家庭用の餅切断機の場合、押出スクリューと切断刃の作動の両方を手動で行うことから、餅の押し出しと切断の作業を連動させるのが難しく、切断した餅の大きさがばらついたり、切断途中でノズルの先端と切断刃の間から漏れた餅が切断刃に絡んで故障の原因になったりする。また、作業能率も悪い。
一方、電動式の餅切断機の場合、切断作業が全自動であり作業能率はよいが、作業初期において餅の押出量が安定せず、また作業初期と作業後期では餅の硬さが変化するため押出量が変化し、切断した餅の大きさを一定に保つには、たびたびスクリューの回転数及び切断のタイミングを調整する必要があり、そのための作業時間ロスと餅の無駄が生じやすい。また、切断中も餅は連続的に押し出されるため、切断中の切断刃と押出ノズルの間に餅が詰まることがあり、これが故障の原因となる。さらに回転台が連続回転するため落下した餅が台上で転がって定位置を外れ、次の作業の支障となったり、台から落ちたり、先に落下した餅とひっついたり、あるいは長く延びたりして形崩れすることもある。
【0006】
本発明は、このような従来の餅切断機の問題点に鑑みてなされたもので、面倒な調整を行うことなく、切断した餅の大きさを一定に保つことが容易で、切断中の切断刃と押出ノズルの間に餅が詰まったり、落下した餅が台上を転がることも防止できる餅切断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、切断前の練製食品を収納するホッパーと、前記ホッパーの底部に設置されて練製食品を前方に押し出す押出機構と、前記押出機構を駆動するモータと、前記押出機構の前端に設置された押出ノズルと、前記押出ノズルの開口部に沿って移動して前記開口部から押し出された練製食品を切り落とす切断刃と、前記押出ノズル下方に設置されて前記切断刃により切り落とされた練製食品を受ける回転台と、前記回転台を駆動するモータを備えた練製食品切断機において、前記切断刃の移動と前記両モータのオン−オフを関係付ける制御手段が設置され、前記制御手段により、前記切断刃が切断前の初期位置から移動するとき前記両モータがオフとされ、切断後に前記切断刃が前記初期位置に復帰したとき前記両モータがオンとされることを特徴とする。なお、本発明でいう練製食品には、餅のほか、いわゆる練りもの、つくね、こんにゃくなど、餅と同様に処理可能な練製食品も含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る切断機によれば、面倒な調整を行うことなく、切断した餅等の練製食品の大きさを一定に保つことが容易である。また、切断中の切断刃と押出ノズルの間に練製食品が詰まったり、落下した練製食品が台上を転がることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る餅切断機の正面図(一部断面)である。
【図2】その平面図(一部省略)である。
【図3】切断刃近傍の側面図であり、(a)は切断刃が初期位置において待機状態のとき、(b)は切断位置に移動したときの状態を示す。
【図4】切断刃の移動と前記両モータのオン−オフを関係付ける制御手段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係る練製食品切断機(特に餅切断機)について、具体的に説明する。
この餅切断機は、機台1上に設置された押出部2及び移送部3と、押出部2に併設された切断部4からなる。
【0011】
押出部2は、機台1に固定された支持部5と、支持部5上に水平に設置された押出シリンダ6と、押出シリンダ6内に回転自在に支持された押出スクリュー7と、押出シリンダ6の前端に固定され開口部(前端)に向かって次第に内径が細くなっている押出ノズル8と、押出シリンダ6の上部に設置されたホッパー9と、押出スクリュー7の後端に接続されたモータ11と、モータ11の駆動量(回転数)をカウントして表示する表示装置12からなる。
【0012】
ホッパー9は、押出シリンダ6と一体化した下部ホッパー13と、その上に設置された上部ホッパー14からなる。押出シリンダ6の上部は開口しており、その開口15に下部ホッパー13の下端が連通し、ホッパー9内に投入された餅が開口15を通して押出シリンダ6内に送り込まれる。モータ11が回転すると押出スクリュー7が回転し、押出シリンダ6内の餅を前方に送り、押出ノズル8の開口部から前方に押し出す。なお、押出シリンダ6と押出スクリュー7が本発明でいう押出機構を構成している。
表示装置12は、制御部16と表示部17からなる。制御部16はモータ11の回転数(押出スクリュー7の回転数)をカウントし、カウント数を表示部17に表示するとともに、後述する切断刃19を初期位置から移動させたとき、その移動を検知してカウント数を自動的にリセットし、表示を初期値(ゼロ)に戻す機能を有する。
【0013】
切断部4は、押出ノズル8に一体形成されたブラケット18と、一端がブラケット18に固定されたピン(図示せず)に揺動自在に支持された切断刃19と、ブラケット18に固定されたリミットスイッチ21からなる。切断刃19の他端には手動で揺動させるためのハンドル部22が形成されている。ハンドル部22をつかんでこの切断刃19をブラケット16の端面23(切断刃19のガイド面として機能する;図3参照)に沿って動かし、切断刃19を押出ノズル8の開口部外面に沿って、初期位置(図3(a))と切断位置(図3(b))の間を揺動(往復動)させることができる。このとき、切断刃19の切刃24が押出ノズル8の開口25を横切り、押し出された餅を切断する。
なお、切断刃19は図示しないコイルバネにより常時初期位置に向けて付勢され、その付勢力により初期位置においてリミットスイッチ21に接触している。
【0014】
移送部3は、機台1に固定されたブラケット26と、ブラケット26の下面に固定されたモータ27と、モータ27の回転軸上端に固定されて押出ノズル8の下方位置を通って回転する回転台28と、押出ノズル8の開口部の真下に位置し回転台28の下に設置されたボール支持体29からなる。ボール支持体29は、ボール31とボール31を回転自在に支持したケーシング部32からなり、ケーシング部32はブラケット26の上面に固定され、ボール31の一部がケーシング部32から上方に突出し、回転台28の下面に接触している。回転台28は切断されて落下した餅を受け止め、モータ27により回転してその餅を周方向に搬送し、搬送された餅は人手により取り上げられ、丸められて小餅とされる。ボール支持体29は、落下した餅の衝撃を受け止める作用を有する。
【0015】
図4に示すように、リミットスイッチ21により、押出スクリュー7を回転させるモータ11及び回転台28を回転させるモータ27のオン−オフが制御される。具体的に説明すると、電源スイッチを入れた状態で、切断刃19が初期位置にきたとき(初期位置に復帰すると同時に)、図3(a)に示すように該切断刃19はリミットスイッチ21と接触してモータ11,27の電力がオンとなり、切断刃19が初期位置を離れたとき(切断位置に向けて移動を開始すると同時に)、図3(b)に示すように該切断刃19はリミットスイッチ21から離れてモータ11,27の電力がオフとなる。なお、この例ではリミットスイッチ21が本発明でいう制御手段を構成し、切断刃19がその作動体として機能する。
【0016】
次にこの餅切断機の使用方法を説明する。
まず、ホッパー9に搗きたての餅(切断前の餅)を例えば一臼分入れ、切断刃19を初期位置に停止させた状態で電源スイッチ(図4参照)を入れると、モータ11,27が回転し、押出スクリュー7が回転して押出ノズル8の先端から餅が押し出される。同時にモータ11の回転数がカウントされ、カウント数が表示装置12の表示部17に表示される。
【0017】
作業者は、所定量の餅が押し出されたことを目視で確認すると、切断刃19を初期位置から切断位置に向けて移動させ、押し出された餅を押出ノズル8の開口部において切断する。切断刃19が初期位置から移動すると同時に、リミットスイッチ18の作用でモータ11,27の電力がオフとなり、押出スクリュー7及び回転台28の回転が停止する。切断された所定量の餅は回転台28上に落下し、押出ノズル8の開口部の直下において回転台28上に載置される。また、切断刃19の移動とともに表示部17のカウント数がリセットされる。このように、切断刃19による餅の切断と切断された餅の回転台28上への落下は、押出スクリュー7及び回転台28の回転が停止した状態で行われる。
【0018】
続いて切断刃19を切断位置から初期位置に向けて復帰移動させる。切断刃19が初期位置に復帰すると同時に、リミットスイッチ18の作用でモータ11,27の電力がオンとなり、押出スクリュー7及び回転台28が回転を開始し、同時にモータ11の回転数がカウントされ、カウント数が表示装置12の表示部17に表示される。以降は、作業者は同じ作業を繰り返せばよい。
なお、モータ11の回転数に対して餅の押出量が安定していれば(定常状態)、餅の押出量を直接確認しなくても、カウント数が一定値に達するたびに切断刃19を作動させることで、押し出された餅を同じ大きさに切断することができる。
【0019】
この餅切断機では、餅の切断は、作業者が所定量の餅が押し出されたことを確認して行うので、餅の押出量が安定しない作業初期においても、切断した餅の大きさを一定に保つことができる。また、作業初期と作業後期で餅の硬さが変化して、モータ11の単位回転数当たりの餅の押出量が変化する場合でも、作業者が押出量を確認して切断するので、切断した餅の大きさを一定に保つことができる。さらに、餅の押出量が安定した定常状態であれば、カウント数を確認するのみで切断した餅の大きさを一定に保つことができる。逆に、途中で餅の大きさを変化させることも自在に可能である。
【0020】
この餅切断機では、切断刃19による餅の切断が押出スクリュー7の停止中(押出停止中)に行われるから切断しやすく、切断中の切断刃19と押出ノズル8の開口部との間に餅が押し出されて詰まったり、餅が切断刃19に絡みつくことも防止される。また、切断位置に達した切断刃19を初期位置に向けて復帰させるときも、押出ノズル8の開口部から餅が押し出されていないので、餅が切断刃19に絡みつくことがなく復帰させやすい。
さらに、切断された餅は停止した回転台28上に落下するので、餅は回転台28上の決まった位置に落下して載置され、台上で転がったり形崩れすることもない。
【0021】
なお、この餅切断機は例えば次のような改変が可能である。
(1)上記の例では、制御手段として、切断刃19が初期位置において接触するリミットスイッチ21を設けたが、リミットスイッチの代わりに他の検知センサを設置して、切断刃19が初期位置にあるか否かを検出することもできる。例えば反射型光電センサや磁気センサなどの非接触の近接センサが便利である。
(2)上記の例では、作業者が餅の押出量を確認し又は表示されたカウント数を目視で確認して切断刃19を移動させたが、カウント数が規定値(所定の大きさの餅が押し出されるカウント数)に達っしたとき自動的に報知する機能を、表示装置12に付加しておくと便利である。報知手段としては例えば信号音や信号光の発信が考えられる。なお、この場合、表示装置12において、目標とする小餅の大きさに応じて前記規定値を任意に設定できるようにしておくことが望ましい。
【0022】
(3)上記の例では、モータ11,27のオン−オフの制御手段としてリミットスイッチを設置し、作業者による切断刃19の移動とモータ11,27のオン−オフを関係付けたが、カウント数が規定値に達したときモータ11,27を自動的にオフとし、続いて作業者が切断刃19を移動させて餅を切断し、さらに切断刃19を初期位置に復帰させたときモータ11,27を自動的にオンとする制御方法をとることもできる。
(4)上記(3)の場合において、作業者が切断刃19を移動させる代わりに、切断刃19を往復移動させる移動手段を設け、カウント数が規定値に達したときモータ11,27を自動的にオフとするとともに前記移動手段を自動的に作動させるようにしてもよい。あるいは、カウント数が規定値に達したとき、例えば起動ボタンを押して前記移動手段を作動させるようにしてもよい。
【0023】
(5)この餅切断機の構造は、餅のほか、いわゆる練りもの、つくね、こんにゃくなど、餅と同様に処理可能な練製食品の切断機として用いることができる。
なお、上記(3),(4)の構成は、切断作業の間、押出量がほぼ一定に保たれる(押出スクリューの単位回転数当たりの押出量の変動が少ない)練製食品の切断に適する。
【符号の説明】
【0024】
6 押出シリンダ
7 押出スクリュー
8 押出ノズル
9 ホッパー
11 押出スクリューのモータ
12 表示装置
19 切断刃
21 リミットスイッチ
25 押出ノズルの開口
27 回転台のモータ
28 回転台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断前の練製食品を収納するホッパーと、前記ホッパーの底部に設置されて練製食品を前方に押し出す押出機構と、前記押出機構を駆動するモータと、前記押出機構の前端に設置された押出ノズルと、前記押出ノズルの開口部に沿って移動して前記開口部から押し出された練製食品を切り落とす切断刃と、前記押出ノズル下方に設置されて前記切断刃により切り落とされた練製食品を受ける回転台と、前記回転台を駆動するモータを備えた練製食品切断機において、前記切断刃の移動と前記両モータのオン−オフを関係付ける制御手段が設置され、前記制御手段により、前記切断刃が切断前の初期位置から移動するとき前記両モータがオフとされ、切断後に前記切断刃が前記初期位置に復帰したとき前記両モータがオンとされることを特徴とする練製食品切断機。
【請求項2】
前記押出機構を駆動するモータの回転数をカウントして表示する表示装置が設置されていることを特徴とする請求項1に記載された練製食品切断機。
【請求項3】
前記表示装置におけるカウント数の表示が、前記切断刃の移動に伴って初期値にリセットされることを特徴とする請求項2に記載された練製食品切断機。
【請求項4】
前記表示装置が、前記モータの回転数のカウント数が規定値に達したことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項3に記載された練製食品切断機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−161956(P2010−161956A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5225(P2009−5225)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】