説明

縦型タレット旋盤

【課題】縦型のタレット旋盤において、ワークの外径加工時にタレット刃物台に装着する内径旋削用工具がワークと干渉することを回避する。
【解決手段】縦型タレット旋盤は、ワークWを把持して回転するワークテーブルとタレット刃物台50を有してX軸及びZ軸方向に移動する加工ヘッド40を備える。タレット刃物台の工具保持部60の一部に油圧で内径旋削用工具Tを把持するツールホルダ70を取り付ける。自動工具工交換装置100は、タレット式のツールマガジン120とピストン160,162を有し、ツールホルダ70のピン74,76を機械的に押圧して工具Tのクランプ・アンクランプを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型タレット旋盤、特に自動工具交換装置を備えた縦型タレット旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
タレット旋盤は、タレット刃物台の周囲に例えば12個所の旋削工具取付部を有し、短時間で適切な工具を選択して効率の良い加工を達成することができる。
特許文献1は、タレット旋盤における自動工具交換装置を開示している。このタレット旋盤は、タレット刃物台に油圧により工具をクランプ・アンクランプする工具ホルダを装備して多数の工具を自動交換する装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−80416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報のものは、自動工具交換位置に位置決めされた工具ホルダに対してソケットにより着脱自在の作動油供給手段を用いて工具ホルダに油圧を供給するものである。
そこで、回路中の作動油の漏れや異物の混入等の不具合の原因となっていた。
【0005】
本発明の縦型タレット旋盤の自動工具交換装置は、機械的に作動するピンを備えた工具ホルダを用いて、外部から油圧を供給することなく、タレット刃物台の工具を自動交換する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の縦型タレット旋盤は、基本手段として、ワークを把持して回転するワークテーブルと、X軸及びZ軸方向に移動する加工ヘッドと、加工ヘッドに装備されるタレット刃物台を加工エリア内に備えた縦型タレット旋盤において、タレット刃物台の工具取付部に装備されるツールホルダと、ツールホルダに対して工具を自動交換する加工エリア外に配置される自動工具交換装置を備え、ツールホルダは、機械的に操作される1対のピンと、ピンの作動を受けて工具を油圧でクランプ・アンクランプする手段を備え、自動工具交換装置はツールホルダに対向して工具を交換する工具マガジンと、ツールホルダのピンを操作する1対のシリンダを備えるものである。
そして、自動工具交換装置は、フレームとフレーム上に設けられるスライドレールと、スライド上を移動して加工エリアで工具交換を行う自動工具交換ユニットを備え、自動工具交換ユニットは、タレット式の工具マガジンを備え、タレット式の工具マガジンは、工具を把持するグリッパと、グリッパを閉じる方向に付勢するスプリングを備える。
また、待機位置にある自動工具交換ユニットと加工エリアの間を開閉するドアを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長尺の内径加工工具等をツールホルダに交換自在に装備することにより、外径加工時に内径加工工具とワークの干渉を回避することができ、段取り替えなく、多品種のワークの加工が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の縦型タレット旋盤の外観図。
【図2】要部の機械構成を示す説明図。
【図3】一般的なタレット旋盤の概要を示す説明図。
【図4】タレット刃物台と自動工具交換装置の構成を示す説明図。
【図5】タレット刃物台と自動工具交換装置の構成を示す説明図。
【図6】ツールホルダの外観図。
【図7】ツールホルダユニットの断面図。
【図8】本発明の自動工具交換装置の作動を示す説明図。
【図9】本発明の自動工具交換装置の作動を示す説明図。
【図10】本発明の自動工具交換装置の作動を示す説明図。
【図11】本発明の自動工具交換装置の作動を示す説明図。
【図12】本発明の自動工具交換装置の作動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明を実施する縦型タレット旋盤の外観図、図2は要部の機械構成を示す説明図である。
全体を符号1で示す縦型タレット旋盤は、ベース10上に加工エリアWAを有し、ワークを把持して回転するワークテーブル20を備える。
ベース10上にはX軸に沿って移動するコラム30を備え、コラム30に対してワークテーブル20の回転軸線と平行なZ軸方向に移動する加工ヘッド40が装備される。加工ヘッド40にはタレット刃物台50が旋回割り出し自在に設けられる。
【0010】
図3は、一般的なタレット旋盤の概要を示す説明図である。
タレット刃物台50は、例えば、12角形の形状を有し、12個の工具保持部60を有する。各工具保持部60には、外径旋削用工具Tや内径旋削用工具Tが装備される。
外径旋削用工具Tは、ワークテーブル20上に把持されたワークWに対して外径部の加工を施す。内径旋削用工具TはワークWに対して内径部の加工を施すが、内径旋削用の工具Tは突き出し寸法が長い。そこで、外径加工中にこの内径旋削用工具TがワークWと干渉する問題が発生する。
【0011】
そこで、現実的な対応として、隣接する工具保持部には内径旋削用工具を装備せずに離れた位置の工具保持部に内径旋削用工具を装着することで、干渉発生を回避している。この処理により、タレット刃物台50に装着できる工具の本数が制限され、加工効率の低減の原因となっていた。
本発明の縦型タレット旋盤は、自動工具交換装置を装備することによって、内径旋削用工具をタレット刃物台から一時的に取り外すか、又は、加工に最適な内径旋削用工具に交換することにより加工効率の向上を図るものである。
【0012】
図2に示すように、ベース10上には加えてエリアWAに隣接して自動工具交換装置100が搭載されており、ワークテーブル20とタレット刃物台50がある加工エリアWAと自動工具交換装置100の間は加工中はドア55が閉じて隔離されている。
【0013】
図4、図5はタレット刃物台50と自動工具交換装置100の構成を示す説明図である。
タレット刃物台50の工具保持部60には、後述するツールホルダ70が装備され、このツールホルダ70に対向して自動工具交換装置100が装備される。
【0014】
自動工具交換装置100は、フレーム102上にガイドレール104を有し、レール104上に自動工具交換ユニット110が移動可能に搭載される。
自動工具交換ユニット110は、タレット式のツールマガジン120を有する。ツールマガジン120は1対のグリッパ130とグリッパ130を閉じる方向に付勢するスプリング140を備える。
【0015】
グリッパ130で保持された内径旋削用工具Tは、外方へ力を加えることにより、スプリング140に抗して引き抜くことができ、また工具を押し込むこともできる。
ツールホルダ70は、交互に出入りする1対のピン74,76を有し、このピン74,76を交互に押し込むことで、工具Tをクランプ・アンクランプすることができる。
自動工具交換ユニット110は、シリンダ150を有し、2本のピストン160,162を交互に駆動して、ツールホルダ70のピン74,76を操作することができる。
【0016】
図6は、ツールホルダ70の外観を示す説明図、図7はツールホルダ70内に装備されるツールホルダユニット80の構造を示す断面図である。
ツールホルダユニット80は、ハウジング内にツールシャンクに対応するシャンク穴82を有し、シャンク穴82内に軸方向に移動する爪84が装備される。爪84はピストン86に連動し、ピストン86を挟んで1対の油圧ポートP,Pが設けられる。
【0017】
第1のポートPに作動油を供給することにより、ピストン86とともに爪84は後退し、シャンク穴82に挿入された工具のシャンクをクランプする。一度クランプ状態になると、ピストン86と楔部材88によりセルフロックされる。第2のポートPに作動油を供給することによって、ピストン86と爪84は前進して、工具のシャンクをアンクランプする。
本発明に使用するツールホルダ70は、ピン74,76を交互に押し込むことにより、内部に充填された作動油が図示しない回路を介してポートP又はPに供給され、ツールシャンクのクランプ・アンクランプを行なうものである。
【0018】
図8から図12により、本発明の自動工具交換装置の作動を説明する。
ステップSでタレット刃物台50をATC(自動工具交換)原点に移動させる。
ステップSでタレット刃物台50を割り出す
ステップSでATCドア55を開く。
ステップSで自動工具交換装置のマガジン120を前進させ、グリッパ130で工具Tを受け取る。
ステップSでアンクランプ用のピストン160を突出させて、ツールホルダ70の工具をアンクランプする。
ステップSでアンクランプ用のピストン160を復帰させる。
ステップSでタレット刃物台50を+Z方向に移動させる。
ステップSでマガジン120を旋回させる。
ステップSでタレット刃物台50をATC原点位置に移動させる。
ステップS10でクランプ用のピストン162で工具T21をクランプさせる。
ステップS11でクランプ用ピストン162を復帰させる。
ステップS12でマガジン120を復帰させる。
ステップS13でATCドア55を閉じる。
ステップS14でタレット刃物台50を割り出す。
ステップS15でタレット刃物台50を加工位置に移動させる。
以上の作動により工具の自動交換が完了する。また、ワークの外径加工中にはツールホルダ70の工具を取り外しておくことにより、ワークと工具の干渉を確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 縦型タレット旋盤
10 ベース
20 ワークテーブル
30 コラム
40 加工ヘッド
50 タレット刃物台
55 ドア
60 工具保持部
70 ツールホルダ
74,76 ピン
100 自動工具交換装置
110 自動工具交換ユニット
120 ツールマガジン
130 グリッパ
150 シリンダ
160,162 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持して回転するワークテーブルと、X軸及びZ軸方向に移動する加工ヘッドと、加工ヘッドに装備されるタレット刃物台を加工エリア内に備えた縦型タレット旋盤において、タレット刃物台の工具取付部に装備されるツールホルダと、ツールホルダに対して工具を自動交換する加工エリア外に配置される自動工具交換装置を備え、ツールホルダは、機械的に操作される1対のピンと、ピンの作動を受けて工具を油圧でクランプ・アンクランプする手段を備え、自動工具交換装置はツールホルダに対向して工具を交換する工具マガジンと、ツールホルダのピンを操作する1対のシリンダを備える縦型タレット旋盤。
【請求項2】
自動工具交換装置は、フレームとフレーム上に設けられるスライドレールと、スライド上を移動して加工エリアで工具交換を行う自動工具交換ユニットを備え、自動工具交換ユニットは、タレット式の工具マガジンを備える請求項1記載の縦型タレット旋盤。
【請求項3】
タレット式の工具マガジンは、工具を把持するグリッパと、グリッパを閉じる方向に付勢するスプリングを備える請求項2記載の縦型タレット旋盤。
【請求項4】
待機位置にある自動工具交換ユニットと加工エリアの間を開閉するドアを備える請求項2記載の縦型タレット旋盤。
【請求項5】
ツールホルダに装着される工具は、内径旋削用工具である請求項1記載の縦型タレット旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−234479(P2010−234479A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84925(P2009−84925)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】