説明

繊維製品処理方法

【課題】繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法の提供。
【解決手段】(a)一般式(1)で表される化合物及び(b)非イオン界面活性剤を含有する繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理するA工程、及びA工程で処理された繊維製品を加熱処理するB工程を含む、繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法。


〔式中、Xは−OH、−R1(R1は総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基等)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは0〜15を示し、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、においに対する意識の高まりから、衣類によい香りを長く残すことが求められてきており、衣料用洗浄剤や仕上げ剤などの繊維製品処理剤を用いる残香性を付与する技術の開発が行われている。しかし、衣類に長く残る香りは、揮散性が乏しく重厚な香りの香料成分が主であり、さわやかな香りや華やかな香りを持続させることは出来なかった。さらに、重厚な香りの香料成分も乾燥機やアイロンといった熱が加わる工程を経ると揮発してしまい、香りを残すことが出来なかった。
【0003】
香り立ちに優れ、さわやかな香りや華やかな香りを繊維製品に付与できる技術として、特許文献1〜4にはケイ酸エステル化合物を含有する繊維処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−59498号公報
【特許文献2】特開昭54−93006号公報
【特許文献3】特開昭55−127314号公報
【特許文献4】特表2003−526644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載されている技術は、ケイ酸エステル化合物の加水分解物(アルコール性香気成分)を香料成分として用いる技術であり、繊維製品に付着したケイ酸エステル化合物が加水分解する際に香りが発せられる。よって、加水分解しすぎると香りの持続性がなくなり、一方、加水分解せず安定であり過ぎると香り立ちが悪くなるため、加水分解の程度により必要な時に香りがうまく発現できない場合があった。
【0006】
本発明の課題は、ケイ酸エステル化合物の加水分解を制御し、繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記A工程及びB工程を含む、繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法を提供する。
A工程:下記(a)成分及び(b)成分を含有する繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理する工程
(a)成分:一般式(1)で表される化合物
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b)成分:非イオン界面活性剤
B工程:A工程で処理された又は、処理されている繊維製品を加熱処理する工程
従来、繊維製品処理組成物で付与する香りとは、洗濯工程で用いる場合は、洗濯中から干すときと言った場面では認知されるが、繊維製品を着るとき、使うときには残香しておらず、また、繊維製品が乾いている状態で用いる場合でも、アイロン等、加熱する工程で揮発性の高い香料は飛んでしまい、残香しない現状にある。しかし、現在は、繊維製品を処理し保管期間を経て、着るとき、使うときまで香っているということが、求められている。そこで、繊維製品を処理した後1日以上経ても残っている香りのことをここでは「維持性の香り」と定義する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一般式(1)で表されるケイ酸エステル化合物を含有する組成物を用いた繊維製品処理方法によると、繊維製品に維持性の香りを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[繊維製品処理剤組成物]
本発明の繊維製品処理方法に用いられる繊維製品処理剤組成物は、上記(a)成分及び(b)成分を含有する。繊維製品処理剤組成物中の(a)成分の含有量は、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.02〜15質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%であり、(b)成分の含有量は、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.2〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、上記一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)において、Xは−OH、−R1又は−OR2、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数であり、複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。
【0013】
1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、nが0の場合には、炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数10〜18の直鎖アルキル基が更により好ましい。また、nが1〜15の場合には、R1はメチル基及びベンジル基から選ばれる基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0014】
2は炭素数6〜22、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜15の炭化水素基を示すが、炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基が好ましく、特に分岐構造を有するアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好適である。
【0015】
一般式(1)において、nが0の場合には、4個のXのうち2〜4個、好ましくは3又は4個が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適である。
【0016】
n=0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合には、nは平均値を示し、全てのX及びYに対して、1/10以上、好ましくは1/8以上が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適であり、全てのX及びYが−OR2である化合物が特に好ましい。nとしては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0019】
nが1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、Tは、−OR2又は−R1を示す。〕
一般式(1)で表される化合物は、特許文献1や特許文献4などに記載されている方法で入手することができる。
【0022】
<(b)成分>
(b)成分は、非イオン界面活性剤であり、(b)成分は(a)成分を繊維製品に効率良く吸着させる効果を奏する。(b)成分としては、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基とオキシアルキレン基を有する非イオン界面活性剤が好ましく、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0023】
2a−A−〔(R2bO)p−R2cq (2)
〔式中、R2aは、炭素数8〜18、好ましくは炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R2bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R2cは、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であり、pは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは10〜60の数であり、Aは−O−、−COO−、−CONH−、−NH−、−CON<又は−N<であり、Aが−O−、−COO−、−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合qは2である。〕
一般式(2)の化合物の具体例としては、以下の式(2−1)〜(2−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
2a−O−(C24O)r−H (2−1)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。rは2〜100、好ましくは10〜60の数である。〕
2a−O−(C24O)s−(C36O)t−H (2−2)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。s及びtはそれぞれ独立に2〜40、好ましくは5〜40の数であり、(C24O)と(C36O)はランダム又はブロック付加体であってもよい。〕
【0025】
【化4】

【0026】
〔式中、R2aは前記の意味を示す。Bは−N<又は−CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0〜40の数であり、u+vは5〜60、好ましくは5〜40の数である。R2d、R2eはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
<その他の成分>
本発明の繊維製品処理方法に用いられる繊維製品処理剤組成物は、組成物自体あるいは処理した繊維製品の香り立ちをよくする観点から、(c)成分として香料を含有することが好ましい。組成物中の(c)成分の含有量は、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましく、0.3〜0.8質量%が更に好ましい。また、(a)成分と(c)成分の割合は、(a)成分/(c)成分の質量比で10/90〜90/10が好ましく、25/75〜80/20がより好ましく、25/75〜75/25が更に好ましい。
【0027】
(c)成分としては、テルピネオール、ゲラニオール、リナロール、ミルセノール、ネロール、シス−ジャスモン、フェニルエチルアセテート、アリルアミルグリコレート、リファローム、シス−3−ヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキサノン、p−t−ブチルシクロヘキサノン、アセチルオイゲノール、シンナミルアセテート、オイゲノール、イソオイゲノール、モスシンス、アニソール、メチルオイゲノール、クマリン、i)α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、テルピノーレン、ミルセン、p−サイメンから選ばれる炭化水素系香料、ii)サンダルマイソールコア、サンタロール、l−メントール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、エチルリナルール、ムゴール、ネロリドールから選ばれるアルコール系香料、iii)アルデヒドC−111、グリーナール、マンダリンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、イオノンα、メチルイオノンα、メチルイオノンGから選ばれるアルデヒド、ケトン系香料、iv)ヘプチルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、リナリルアセテート、エチルシンナメート、ベンジルサリシレート、イソブチルサリシレートから選ばれるエステル系香料、v)チモール、バニトロープから選ばれるフェノール系香料、vi)セドロキサイド、シトロネリルエチルエーテル、アネトール、ネロリンヤラヤラ、エステラゴール、メチルイソオイゲノールから選ばれるエーテル系香料、その他β−カリオフィレン、トリメチルウンデセナール、ヘキシルサリシレート、アンブロキサン、テンタローム、パールライド等を挙げることができる。
【0028】
本発明の繊維製品処理方法に用いられる繊維製品処理剤組成物は、洗浄剤、柔軟剤、漂白剤、糊剤等の、水で希釈して用いる組成物に応用できる。
【0029】
本発明の繊維製品処理剤組成物を洗浄剤組成物に応用する場合には、上記成分に加えて、界面活性剤、ビルダー、アルカリ剤、漂白成分等の従来の洗浄剤組成物に配合される成分を含有することが好ましい。洗浄剤組成物中の(a)成分の含有量は、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.3〜10質量%が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。
【0030】
洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤としては(b)成分以外に、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
陰イオン界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルコールのエトキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩若しくはそのエステル塩、又は脂肪酸塩等が挙げられる。特に、アルキル鎖の炭素数が10〜18(好ましくは12〜14)の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜20のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が好ましい。また、対イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0032】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等が、両性界面活性剤としては、カルボベタイン型、スルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
洗浄剤組成物中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、5〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。
【0034】
本発明の繊維製品処理剤組成物を柔軟剤組成物に応用する場合には、柔軟基剤、抗菌剤等を含有することが好ましい。柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。
【0035】
柔軟剤組成物に用いられる柔軟基剤としては、下記式(3)〜(7)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化5】

【0037】
〔式(3)〜(7)中、R31及びR32はそれぞれ炭素数11〜23の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基、D及びEはそれぞれ独立に−CO−O−、−O−CO−、−NR40−CO−、又は−CO−NR40を示す。R40は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。a及びbはそれぞれ独立に2又は3、R33、R34、R38及びR39はそれぞれ独立に炭素数10〜24のアルキル基、アルケニル基又はβ−ヒドロキシアルキル基であり、R35、R36及びR37はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、ベンジル基又は−(C24O)c−H(但し、cは1〜3である)を示し、X-はハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル基を有するモノアルキル硫酸イオン等の陰イオン基を示す。〕
柔軟基剤として、シリコーン化合物も挙げることができる。シリコーン化合物としては、水不溶性のシリコーン化合物が好適である。ここで水不溶性のシリコーン化合物とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解する量が1g以下のシリコーン化合物である。具体的にはジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0038】
水不溶性のシリコーン化合物としては、分子量が好ましくは千〜100万、より好ましくは3千〜100万、更に好ましくは5千〜100万であり、25℃における粘度が好ましくは2〜100万mm2/s、より好ましくは500〜100万mm2/s、更に好ましくは1千〜100万mm2/sのジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。アミノ変性ジメチルポリシロキサンとしては、アミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)が好ましくは1,500〜40,000g/mol、より好ましくは2,500〜20,000g/mol、更に好ましくは3,000〜10,000g/molのものが好適である。ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンとしては、界面活性剤便覧(産業図書(株)発行 昭和35年7月5日発行)、324頁〜325頁に記載の曇数Aが好ましくは0〜18、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜5のものが好適である。
【0039】
これらの柔軟基剤は、単独で使用しても併用しても良い。特に式(3)〜(7)で表される化合物とシリコーン化合物を併用することにより、更に柔軟性が向上すると共に繊維製品の触感が向上し好ましい。
【0040】
柔軟剤組成物中の柔軟基剤の含有量は、特に限定されないが、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0041】
柔軟剤組成物に用いられる抗菌剤としては、下記式(8)又は(9)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化6】

【0043】
〔式(8)又は(9)中、R41及びR46はそれぞれ独立に炭素数5〜19の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R43及びR44はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、Tは−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−又はフェニレン基、R42は炭素数1〜6のアルキレン基又は−(OR47e−(ここで、R47は炭素数2〜3のアルキレン基、eは1〜10の数)、R45は炭素数1〜3のアルキレン基、dは0又は1、Z-はハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル基を有するモノアルキル硫酸イオン等の陰イオン基を示す。〕
柔軟剤組成物中の抗菌剤の含有量は、特に限定されないが、0.001〜10質量%が好ましく、0.001〜3.0質量%がより好ましい。
【0044】
本発明の繊維製品処理剤組成物を漂白剤組成物に応用する場合には、漂白成分等の従来の漂白剤組成物に配合される成分を含有することが好ましい。漂白剤組成物中の(a)成分の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.02〜10質量%がより好ましく、0.02〜5質量%が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。
【0045】
漂白剤組成物に用いられる漂白成分としては、水溶液中で過酸化水素を放出する化合物(過酸化水素放出物質)又は過酸化水素、及び必要であれば、水溶液中で過酸化水素と反応し有機過酸を発生させる化合物(漂白活性化剤)等が挙げられる。
【0046】
過酸化水素放出物質としては、炭酸塩・過酸化水素付加物、硼酸塩・過酸化水素付加物、トリポリリン酸塩・過酸化水素付加物、ピロリン酸塩・過酸化水素付加物、尿素・過酸化水素付加物等が挙げられる。この中でも、炭酸塩・過酸化水素付加物、硼酸塩・過酸化水素付加物が好ましく、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウムがより好ましい。本発明の漂白剤組成物中の過酸化水素放出物質の含有量は、特に限定されないが、0.1〜80質量%が好ましく、0.5〜70質量%がより好ましい。
【0047】
漂白活性化剤としては、式(10)又は(11)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化7】

【0049】
〔式(10)又は(11)中、R51は炭素数4〜13、好ましくは10〜13のアルキル基、R52は炭素数5〜13、好ましくは7〜11のアルキル基、M2は水素原子又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム若しくはアルカノールアミンを示す。〕
漂白剤組成物中の過酸化水素放出物質又は過酸化水素の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。また、漂白活性化剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5.0質量%がより好ましい。
【0050】
漂白剤組成物には、更に、漂白力を向上させる観点から、カルシウム捕捉量が200〜600CaCO3mg/gであり且つカルシウム安定度定数が3〜10である化合物を好ましくは0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%含有させることが好適である。
【0051】
漂白剤組成物には、更に、漂白力を向上させる観点から、0.025質量%濃度の水溶液もしくは分散液の最大pHが10.0以上(20℃)であり、且つ該水溶液もしくは分散液1リットルをpH9にするために0.1Nの塩酸水溶液を10ml以上必要とする化合物を好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜25質量%、更に好ましくは5〜20質量%、更により好ましくは5〜15質量%含有することが好適である。このような化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、モノエタノールアミン等が挙げられる。中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0052】
本発明の繊維製品処理剤組成物を糊剤組成物に応用する場合には、糊料基剤を含有することが好ましい。糊剤組成物中の本発明の(a)成分の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.02〜15質量%がより好ましく、0.03〜5質量%が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.15〜5質量%がより好ましい。
【0053】
糊料基剤としては、(i)低級脂肪酸ビニルエステルと不飽和カルボン酸類を必須モノマー成分とするビニル重合体、(ii)低級脂肪酸ビニルエステルとカチオン性不飽和単量体を必須モノマー成分とするビニル重合体等が挙げられる。
【0054】
低級脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、酢酸ビニルが好ましい。
【0055】
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニチン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、α−クロロソルビン酸、シトラコン酸、p−ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ポリカルボン酸のアルキルエステル、部分エステル(好ましくは炭素数1〜6の低級アルキルモノエステル)又は部分アミドが挙げられる。これらのうちアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル等が特に好ましい。
【0056】
カチオン性不飽和単量体としては、一般式(12)〜(18)で表されるものが挙げられる。
【0057】
【化8】

【0058】
〔式(12)〜(18)中、R61は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基(好ましくはメチル基)、R62、R63及びR64はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R65、R66及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3(好ましくは1〜2)のアルキル基、R68、R69及びR70はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基(好ましくはメチル基)、fは1〜10の数、X-は前記の意味を示す。〕
糊剤組成物中の糊料基剤の含有量は、特に限定されないが、20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0059】
本発明に用いられる繊維製品処理剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的から必要に応じて無機塩を含有することができる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが貯蔵安定性の点から好ましい。
【0060】
繊維製品処理剤組成物はまた、貯蔵安定性を改善する目的で、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を含有してもよい。配合できる成分としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0061】
また必要に応じて、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤が好ましく、特にエタノールが匂いの点から好ましい。
【0062】
[繊維製品処理方法]
本発明の繊維製品処理方法は、上記(a)成分及び(b)成分を含有する繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理するA工程、及びA工程で処理された繊維製品を加熱処理するB工程を含む。また、(a)成分及び(b)成分を含有する繊維製品処理剤組成物を含む担体を繊維製品と共に高温雰囲気下に入れ、高温雰囲気下でA工程及びB工程を同時に行うこともできる。
【0063】
<A工程>
本発明のA工程は、特に繊維製品処理剤組成物中の(a)成分を繊維製品に効率良く吸着させることを目的とする。
【0064】
A工程において、繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理する方法としては、下記(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)繊維製品の洗濯工程における洗浄又は濯ぎの段階で繊維製品処理剤組成物を洗浄水又は濯ぎ水に添加する方法
(ii)トリガー容器などの噴霧器を用いて繊維製品処理剤組成物を繊維製品に噴霧する方法
(iii)繊維製品処理剤組成物を含む担体を処理の対象である繊維製品と共に加熱乾燥機等の高温雰囲気下に入れる方法
(i)の方法を使用する場合は、浴比(水/繊維製品の質量比)は、3〜30が好ましく、4〜30がより好ましい。ドラム型の洗濯機の使用においては、これらの浴比は、通常、洗濯物の重量に応じて自動的に設定される。これらの浴比などを考慮して、繊維製品処理剤組成物が繊維製品に効率的に付着するような洗浄条件又は濯ぎ条件を選定することが好適である。この方法においては、繊維製品1kgあたり繊維製品処理剤組成物が好ましくは0.005〜15.0g、より好ましくは0.05〜10.0gとなるように繊維製品処理剤組成物を使用することが好適である。また、水に対する繊維製品処理剤組成物の添加量は、0.001〜1000ppmとなる割合が好ましく、0.01〜100ppmとなる割合がより好ましい。
【0065】
(ii)の方法を使用する場合は、噴霧器としては、特に限定はなく、市販のスプレーバイアルやトリガー式噴霧器などを用いることができる。噴霧器からの噴霧量は1回のストロークで繊維製品処理剤組成物を0.1〜2.0g、好ましくは0.2〜1.5g、更に好ましくは0.3〜1.0g噴出するものが好適である。本発明で使用するトリガー式噴霧器としては、噴霧の均一性の観点から、実開平4−37554号公報に開示されているような蓄圧式トリガーが特に好適である。噴霧特性としては、特に地面に垂直に置いた対象物に15cm離れた場所からスプレーしたときの液のかかる面積が好ましくは100〜800cm2、より好ましくは150〜600cm2となるトリガー式噴霧器が好ましい。噴霧器に充填する繊維製品処理剤組成物の含有量は、噴霧特性の観点から、0.001〜5.0質量%が好ましく、0.005〜3.0質量%がより好ましく、0.01〜1.0質量%が更に好ましい。また(ii)の方法においては、繊維製品1kgあたり繊維製品処理剤組成物が好ましくは0.005〜10.0g、より好ましくは0.05〜5.0gとなる様にトリガー式噴霧器を使用する。
【0066】
(iii)の方法を使用する場合は、担体としては、繊維製品処理剤組成物を担持することができ且つそれを繊維製品へと付着させることができる任意の担体を用いることができ、例えば、可撓性吸収体を用いることができる。担体中の繊維製品処理剤組成物の含有量は、担体から繊維製品への均一付着性の観点から、0.001〜5.0質量%が好ましく、0.005〜3.0質量%がより好ましく、0.01〜1.0質量%が更に好ましい。また(iii)の方法においては、繊維製品1kgあたり繊維製品処理剤組成物が好ましくは0.1〜20.0g、より好ましくは0.5〜8.0gとなる様に使用することが好適である。
【0067】
(iii)の方法では、担体の坪量、厚さなどを考慮して(例えば、後述する範囲から適宜選定する)、繊維製品処理剤組成物を繊維製品へと効率的に付着させるような担体に、本発明の繊維製品処理剤組成物を担持させることが好適である。
【0068】
担体に用いられる可撓性吸収体としては、紙、織物、不織布及びスポンジ等を挙げることができ、空隙率が30〜90%のものが好ましい。ここで、空隙率は下式で求めることができる。
【0069】
空隙率(%)=[1−W/(V×ε)]×100
〔式中、Wは可撓性吸収体の質量(g)、Vは可撓性吸収体の見かけ体積(cm3)、εは可撓性吸収体を構成する材料の比重を示す。〕
本発明では、可撓性吸収体として不織布が好適に使用される。不織布としては、湿式不織布や、ケミカルボンド、サーマルボンド及びエアレイ等の乾式不織布の他に、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ニードルパンチ及び/又はステッチボンドを挙げることができるが、湿式不織布、ケミカルボンド、サーマルボンド、メルトブローン、又はスパンレースから選ばれる1種以上が好ましい。また、不織布の坪量は、10〜300g/m2が好ましく、10〜200g/m2がより好ましく、15〜180g/m2が更に好ましい。
【0070】
不織布の材質としては疎水性繊維及び親水性繊維を用いることができ、疎水性繊維としてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル及びポリ塩化ビニル等から選ばれる1種以上、また親水性繊維としてはナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリウレタン及びセルロース等から選ばれる1種以上を用いることができる。本発明では疎水性繊維及び親水性繊維を併用することもできる。
【0071】
本発明の可撓性吸収体はブロック状でもシート状でも良いが、シート状のものが好適である。シートの厚さは、好ましくは50μm〜3000μm、より好ましくは100μm〜2000μmであり、回転式加熱乾燥機の大きさにもよるが縦10〜30cm、横10〜50cm程度の大きさのものを1枚乃至複数枚用いることが好適である。
【0072】
可撓性吸収体としてシート状のものを用いる場合、本発明の繊維製品処理剤組成物の担持量は、好ましくは30〜800g/m2、より好ましくは50〜600g/m2、更に好ましくは100〜500g/m2である。担持方法としては、リバースロールコーター法、グラビアロールコーター法、オポジットナイフコーター法、インバースナイフコーター法、キスロールコーター法、スプレーコート法、エアナイフコーター法、ディップロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、ハケ塗り法等の湿式コーティング法を挙げることができ、製造の容易性の観点から、ディップロールコーター法が好ましい。
【0073】
<B工程>
本発明のB工程は、繊維製品に付着した繊維製品処理剤組成物中の(a)成分の加水分解を制御することを目的とする。
【0074】
B工程において、繊維製品処理剤組成物で処理された繊維製品を加熱処理する方法としては、熱源と直接接触させる方法(接触加熱方法)、又は熱源との直接接触を行わず空気等の媒体を介して繊維製品を加熱する方法(非接触加熱方法)がある。
【0075】
接触加熱方法としての熱源には、アイロン、プレス機などの加熱可能な硬質表面を用いることができる。かけ面の表面温度は、80〜250℃が好ましく、90〜240℃がより好ましく、100〜230℃が更に好ましい。あて布をして、かけ面を接触させてもよい。熱処理時間は設定温度により異なるが、5秒〜5分程度である。
【0076】
非接触加熱方法としては、加熱雰囲気下での加熱が挙げられ、加熱乾燥機、加熱洗濯乾燥機などを用いることができる。加熱雰囲気の温度は、50〜120℃が好ましく、50〜110℃がより好ましく、50〜100℃が更に好ましい。熱処理時間は、加熱雰囲気の温度等、加熱乾燥機、加熱洗濯乾燥機の機能によるところが大きいが、5〜400分程度である。
【実施例】
【0077】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。
【0078】
<(a)成分>
(a−1):下記合成例1で得られたオクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル
(a−2):下記合成例2で得られたケイ酸テトラキス(cis−3−ヘキセニル)エステル
(a−3):下記合成例3で得られたポリ(3,7−ジメチル−trans−2,6−オクタジエニルオキシ)シロキサン
<(a’)成分((a)成分の比較品)>
(a’−1):フェニルエチルアルコール
(a’−2):cis−3−ヘキセノール
(a’−3):ゲラニオール
<(b)成分>
(b−1)成分:炭素数12の飽和アルコールにエチレンオキシドを平均20モル付加させたもの
<(c)成分>
(c1−1):クマリン
(c1−2):オイゲノール
(c2−1):イソブチルサリシレート
(c2−2):ベンジルサリシレート
(c3−1):パールライド
<その他の成分>
(d−1):N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンと硬化牛脂脂肪酸を1/1.9のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させ、反応物中の脂肪酸含量が5質量%になった時点で反応を終了させて得られた反応生成物であり、下記式(3−1)で表されるアミンを95質量%含有するもの。
【0079】
【化9】

【0080】
〔式中、Rは硬化牛脂脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基を示す。〕
(d−2):塩化カルシウム
(d−3):硬化牛脂脂肪酸1.7モルとグリセリン1モルの脱水縮合物(脱水縮合物中の未反応脂肪酸含有量は3質量%)
(d−4):エタノール
合成例1:オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル[トリス(2−フェニルエチルオキシ)オクチルシラン]の合成
300mLの四つ口フラスコにオクチルトリエトキシシラン83.01g(0.30mol)、フェニルエチルアルコール127.76g(0.83mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.857mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜115℃で2.5時間攪拌した。2.5時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら110〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステルを含む173.61gの淡黄色油状物を得た。
【0081】
合成例2:ケイ酸テトラキス(cis−3−ヘキセニル)エステル[テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン]の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.17mol)、cis−3−ヘキセノール64.74g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら112〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラキス(cis−3−ヘキセニル)エステルを含む66.17gの薄茶色油状物を得た。
【0082】
合成例3:ポリ(3,7−ジメチル−trans−2,6−オクタジエニルオキシ)シロキサンの合成
100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン72.96gと水酸化カリウム0.24g、イオン交換水0.4mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.4mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、67.29gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。続いて、100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン縮合物25.00gと3,7−ジメチル−trans−2,6−オクタジエン−1−オール(ゲラニオール)62.95g、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら97〜121℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら118〜121℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、65.36gのポリ(3,7−ジメチル−trans−2,6−オクタジエニルオキシ)シロキサンを淡黄色油状物として得た。
【0083】
実施例1及び比較例1
最終の繊維製品処理剤組成物が300gになるように、表1に示す配合成分を表1に示す割合で用い、下記方法により表1に示す組成の繊維製品処理剤組成物1及び2を調製した。得られた繊維製品処理剤組成物を、下記処理方法で繊維製品に処理し、下記方法で残香性の官能評価を行った。
【0084】
<繊維製品処理剤組成物の調製法>
一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根をビーカー底面より1cm上部に設置した、500mLのガラスビーカーに必要量の95質量%イオン交換水を入れ、ウォーターバスで62℃まで昇温した。500rpmで攪拌しながら、融解した(b)成分を添加した。次に(d−1)と、(d−3)及び(d−4)を予め予備混合し、70℃で溶融させた予備混合物を添加した。次に所定のpHにするのに必要な量の35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、5分間攪拌した後、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、(d−2)を添加し更に5分間混合した。更に、(a)成分又は(a’)成分と、(c)成分を攪拌しながら添加し、最後に再度pHを確認し、必要に応じて35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整した。表1の組成においては、(d−1)は、ほぼすべて塩酸塩の状態で組成物に存在する。なお、表1中、(d−1)の数値はそれ自体(有効分)の配合量である。
【0085】
<繊維製品処理方法>
(1) 前処理
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿タオル24枚を日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0086】
(2) 繊維製品処理剤組成物による繊維製品の処理
National 電気バケツN-BK2-Aに、5Lの水道水を注水し、繊維製品処理剤組成物を10g/衣料1.0kgとなるように溶解(処理浴の調製)させ、上記方法で前処理を行った2枚の木綿タオルを5分間浸漬し、処理した。その後、家庭用二槽式洗濯機で1分間脱水した。
【0087】
(3) 乾燥処理
処理方法1:上記方法で処理された木綿タオルを、National 洗濯乾燥機 NH-D502(乾燥機内温度68℃)で2時間加熱処理し、その後20℃/60%RHの恒温室内でハンガーに吊り下げて22時間放置した。
【0088】
処理方法2:上記方法で処理された木綿タオルを、洗濯乾燥機を用いることなく、20℃/60%RHの恒温室内でハンガーに吊り下げて24時間放置した。
【0089】
<残香性の官能評価>
上記処理方法1(洗濯乾燥機での処理あり)で加熱処理した木綿タオルと、処理方法2(洗濯乾燥機での処理なし;自然乾燥)で処理した木綿タオルについて10人のパネラーによる残香性の官能評価を行った。評価結果は、香り強度が強いと答えたパネラーの人数で示した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例2及び比較例2
実施例1と同様に繊維製品処理剤組成物1で木綿タオルを処理した後、乾燥機のヒーターを強(実施例2−1)・弱(実施例2−2)で設定し、30分加熱処理し、20℃/60%RHの恒温室内でハンガーに吊り下げて放置した。また、実施例1と同様に繊維製品処理剤組成物1で木綿タオルを処理した後、加熱処理をせず、20℃/60%RHの恒温室にハンガーに吊り下げて放置した(比較例2)。実施例2−1,2−2のものと比較例2のものについて、処理1日後に香り強度を比較した。残香性評価は、10人のパネラーにより下記の基準である6段階の臭気強度で判定し、平均点で表した。それぞれの環境温度の最高値及び評価結果を表2に示す。なお、環境温度は、おんどとり(TandD社Thermo Recorder TR-72U)のセンサーを乾燥機のふた中央部に取り付けモニターした。
(残香性評価基準)
5…非常に強いにおい
4…強いにおい
3…楽に感知できるにおい
2…何のにおいであるかわかる弱いにおい
1…やっと感知できるにおい
0…無臭
【0092】
【表2】

【0093】
実施例3及び比較例3
上述した繊維製品処理剤組成物1及び2を用い、下記方法で繊維製品に処理し、下記方法で残香性の官能評価を行った。
【0094】
<繊維製品処理方法>
(1) 前処理
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿100%ブロードを日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)後、約15cm×25cm(長方向が縦糸と平行方向)に裁断したものを試験布とした。
【0095】
(2) 繊維製品処理剤組成物による繊維製品の処理
200mlビーカーに、1.2Lの水道水を注水し、繊維製品処理剤組成物を10g/衣料1.0kgとなるように溶解(処理浴の調製)させ、上述の方法で前処理を行った5枚の試験布を5分間浸漬し、処理した。その後、家庭用二槽式洗濯機で1分間脱水した。
【0096】
(3) 加熱処理
20℃/60%RHの恒温室に24時間放置し乾燥させた後、試験布を家庭用アイロン(National NA−CL605−A、温度は木綿設定)で15秒間アイロンがけ処理を行った。
【0097】
<残香性の官能評価>
官能評価結果は、上記方法でアイロンにより加熱処理したものを、ブランク(熱処理なし)のものと比較して香り強度が強いと答えたパネラーの人数(/10人)で示した。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
実施例4及び比較例4
実施例3と同様に繊維製品処理剤組成物1で繊維製品を処理した後、アイロン処理温度を高温(実施例4−1)、中温(実施例4−2)、低温(実施例4−3)と変化させて加熱処理を行った。これら加熱処理後のものについて、加熱処理なしのもの(比較例4)と香り強度を比較した。残香性評価は、実施例2及び比較例2と同様に、6段階評価の臭気強度判定により行った。それぞれの表面温度及び評価結果を表4に示す。なお、表面温度は、AS ONE製 TM-300 THERMOMETER及びiuchi製 DIGETAL THERMOMETER MODEL2455 を用いて測定した。
【0100】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A工程及びB工程を含む、繊維製品に維持性の香りを付与する繊維製品処理方法。
A工程:下記(a)成分及び(b)成分を含有する繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理する工程
(a)成分:一般式(1)で表される化合物
【化1】

〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b)成分:非イオン界面活性剤
B工程:A工程で処理された、又は、処理されている繊維製品を加熱処理する工程
【請求項2】
A工程における処理方法が、下記(i)又は(ii)のいずれかの方法である請求項1記載の方法。
(i)繊維製品の洗濯工程における洗浄又は濯ぎの段階で繊維製品処理剤組成物を洗浄水又は濯ぎ水に添加する方法
(ii)繊維製品処理剤組成物を繊維製品に噴霧する方法
【請求項3】
B工程における加熱処理方法が、50〜120℃の雰囲気下で加熱処理する方法、又は80〜250℃の硬質表面と接触させて加熱処理する方法である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
B工程における加熱処理方法が、アイロン又はプレス機を用いて加熱処理する方法である請求項1〜3記載の方法。
【請求項5】
B工程における加熱処理方法が、加熱乾燥機を用いて加熱処理する方法である請求項1〜3記載の方法。
【請求項6】
(a)成分及び(b)成分を含有する繊維製品処理剤組成物を含む担体を繊維製品と共に高温雰囲気下に入れ、高温雰囲気下でA工程及びB工程を同時に行う請求項1記載の方法。
【請求項7】
繊維製品処理剤組成物がさらに柔軟基剤を含有する請求項1〜6いずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−163714(P2010−163714A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6726(P2009−6726)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】