翻訳装置、翻訳プログラム及び翻訳システム
【課題】 ユーザが誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、原文の誤訳箇所の修正をより容易に行うことができる翻訳装置等を提供する。
【解決手段】 入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成し、翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部81と、翻訳文生成部81によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部83と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補のリストを作成するリスト生成部82と、リストを記憶する候補記憶部4と、操作部6で受け付けたユーザからの指示に応じて、候補記憶部4に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部81に実行させる再翻訳処理部84とを備えた翻訳装置1である。
【解決手段】 入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成し、翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部81と、翻訳文生成部81によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部83と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補のリストを作成するリスト生成部82と、リストを記憶する候補記憶部4と、操作部6で受け付けたユーザからの指示に応じて、候補記憶部4に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部81に実行させる再翻訳処理部84とを備えた翻訳装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力された第1自然言語を第2自然言語に機械翻訳する翻訳装置、翻訳プログラム及び翻訳システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された第1自然言語を第2自然言語に機械翻訳する翻訳装置は広く知られている(例えば、特許文献1)。このような翻訳装置は、入力された第1自然言語の原文と、この原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文とを対応付けてその表示画面に表示する。これによって、ユーザに原文に対応する翻訳文を表示することができる。
【特許文献1】特開平11−161648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した様な翻訳装置は、原文を言語としての意味を持つ最小の要素である形態素に分解した後、この形態素の関係(文章構文)を分析する解析処理を行う。この後、翻訳装置は、各形態素に対応する第2自然言語の訳語候補の中から1の訳語を選択するとともに、解析処理によって解析した形態素の関係を第2自然言語における関係に置き換える。この翻訳装置は、選択した訳語をこの置き換えた形態素の関係に従って配置することで、翻訳文を生成する。従って、翻訳装置では、解析処理における文章構文の解析結果や、形態素の訳語選択に誤りがあると、誤訳が生じてしまうことになり、このことは翻訳装置において広く知られる課題である。
【0004】
従来の翻訳装置では、上述したような誤訳があった場合に、ユーザが第2自然言語に明るくないと、翻訳の誤りや誤り箇所を検知することが困難であった。また、誤りや誤り箇所を検知することができても、原文をどの様に修正すれば、正しい翻訳文に変換されるかを判断することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、ユーザが誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる翻訳装置、翻訳プログラム及び翻訳システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では以下の手段を採用している。
【0007】
(1)本発明は、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成するリスト生成部と、このリストを記憶する候補記憶部と、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、翻訳文生成部によって、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文が生成されるとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文が生成される。この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文は原文と対応付けて表示処理部によって表示される。これによって、ユーザは逆翻訳文の内容が原文と一致しているかどうかで、誤訳が生じているかどうかや誤訳箇所を確認することが可能となる。
【0009】
そして、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストがリスト生成部によって作成され、このリストは候補記憶部によって記憶される。そして、再翻訳処理部によって、操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、候補記憶部に記憶されるリストから1の候補が選択される。この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が、再翻訳処理部の指示によって翻訳文生成部に実行される。この様に、リストにおける1の候補が選択されて、この1の候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われるため、誤訳を生じないように原文をどの様に修正すべきかの詳しい判断をすることなく翻訳文を修正し、再生成された逆翻訳を見ることで、ユーザは修正された翻訳文の誤訳を確認することが可能となる。このため、第2自然言語に明るくなく、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、正しい訳文を取得することが可能となる。
【0010】
(2)本発明は、上記翻訳装置において、原文と翻訳文とが不一致である形態素を抽出する抽出処理部を更に備え、前記再翻訳処理部は、前記抽出処理部によって抽出された形態素のリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる、ことを特徴とする。
【0011】
この様に、原文と翻訳文との不一致箇所が自動的に抽出処理部によって抽出され、この抽出された形態素について翻訳文や逆翻訳文が再生成されるため、原文と逆翻訳文とを照らし合わせることで誤訳箇所を検出する作業をユーザが行わなくても、誤訳箇所について修正することが可能となる。
【0012】
(3)本発明は、上記翻訳装置において、前記表示処理部は、原文の形態素を前記再翻訳処理部が選択した1の候補の第1自然言語訳に置き換えて表示する、ことを特徴とする。例えば、原文の形態素が「少し」であり、この訳語候補が「少量」や「少しの距離」等である場合に、再翻訳処理部が「少しの距離」を選択すると、原文の「少し」が「少しの距離」に置き換えられて表示される。この構成によれば、リストのうちどの候補が選択されたかをユーザに表示することが可能となる。これによって、変更後の原文と再翻訳語の逆翻訳文を参照することで、ユーザが再翻訳に誤訳がないかを確認することが可能となる。
【0013】
(4)本発明は、上記翻訳装置において、前記候補記憶部に記憶されるリストとこのリストの第1自然言語訳を原文の形態素に関連付けて表示する表示処理部を更に備え、前記再翻訳処理部は、翻訳文及び逆翻訳文の再生成で用いる訳語として、前記操作部で受け付けたユーザの選択操作によって選択された1の候補を前記記憶部で記憶されるリストから選択する、ことを特徴とする。この構成によれば、ユーザはリストの第1自然言語訳を見ながら最適な候補をリストから選択し、操作部を用いて選択操作を行うことで、選択した候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の生成が行われることになる。これによって、第2自然言語に明るくないユーザであっても、最適な訳語候補を選択することが可能となり、誤訳のない翻訳文を取得することが可能となる。
【0014】
(5)本発明は、上記翻訳装置において、前記操作部でユーザからの登録操作を受け付けた場合に、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とを対応付けて登録する登録部を更に備え、前記表示処理部は、当初の原文の入力があった場合に、前記登録部に入力された原文と対応付けて登録されている変更後の翻訳文乃至は変更後の原文の訳文を表示する、ことを特徴とする。この構成によれば、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とが対応付けて登録部によって登録され、当初の原文の入力があった場合に、この当初の原文と対応づけて登録されている変更後の翻訳文又は変更後の原文の訳文が表示される。これによって、登録後には、当初の原文が誤訳を招いてしまう様なものであっても、この原文の入力によって登録されている変更後の翻訳文又は変更後の原文を表示することが可能となる。
【0015】
(6)本発明は、上記翻訳装置において、前記表示処理部は、前記操作部によって表示する文章の選択を受け付けた場合に、入力された原文のうち選択された文章の原文と、この原文に対応する翻訳文及び逆翻訳文のみを表示する、ことを特徴とする。例えば、原文が長文化してしまった場合等、表示処理部のディスプレイにユーザ所望の箇所の原文及びこれに対応する翻訳文と逆翻訳文を表示しきれない場合がある。上記構成によれば、ユーザが選択した文章の原文と、この文章に対応する翻訳文及び逆翻訳文が表示されるため、表示領域の変更の操作を行うことなく、ユーザはこれらの文章を対比して見ることが可能となり、操作性が向上する。
【0016】
(7)本発明は、上記翻訳装置において、他の装置と通信を行う通信部を更に備え、前記表示処理部は、チャットウィンドウを表示し、前記操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文をチャットウィンドウに表示するとともに表示した原文の翻訳文を他の装置に前記通信部を用いて送信し、前記通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文をチャットウィンドウに表示する、ことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、通信部によって、第2自然言語を第1自然言語に翻訳する他の装置と通信が行われる場合に、表示処理部によって、チャットウィンドウが表示され、操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文がチャット画面に表示されるとともに通信部を用いて翻訳文が他の装置に送信される。これによって、チャットウィンドウに、ユーザが入力した第1自然言語の原文が表示されるとともに、他の装置にこの原文の翻訳文が送信され、他の装置のチャットウィンドウに翻訳文が表示される。そして、通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文、すなわち他の装置のチャットウィンドウに表示される第2の自然言語の翻訳文(第1自然言語の文)がチャットウィンドウに表示される。この様にして、ユーザが第1自然言語の文章を翻訳装置を用いて読み書きするだけで、第2自然言語の原文を入力するタイプの他の装置とチャットを行うことが可能となる。
【0018】
(8)本発明は、操作部及び候補記憶部を備える翻訳装置を、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成し、前記候補記憶部に記憶するリスト生成部と、前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されたリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、して機能させる、ことを特徴とする翻訳プログラムである。この構成によれば、(1)で記載した作用と同様の作用を奏する。
【0019】
(9)本発明は、通信ネットワークに複数の端末装置を接続した翻訳システムにおいて、前記通信ネットワーク上及び前記複数の端末装置の何れかに少なくとも1の翻訳エンジンが配置され、前記複数の端末装置はこの翻訳エンジンを共用する、ことを特徴とする。この構成によれば、翻訳エンジンを備えない端末装置であっても通信ネットワークに接続することで、通信ネットワーク上及び他の端末装置の何れかに配置された翻訳エンジンを用いて翻訳を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第2自然言語に明るくなく、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、正しい訳文を取得することができる。これによって、ユーザ等が誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる翻訳装置及び翻訳プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態である翻訳装置について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態にかかる翻訳装置を図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1の実施形態にかかる翻訳装置1の概略構成を示すブロック図である。図2はこの翻訳装置1の表示画面の一例を示す図である。図3は、この翻訳装置1に表示される変更ウィンドウW2及びサブウィンドウSW1,SW2を示す図である。
【0023】
翻訳装置1は、ROM(ReadOnly Memory)2、フラッシュメモリ3、RAM(Random Access Memory)4、表示部5、操作部6及びスピーカ7をCPU8にバス9を介して接続してなる。
【0024】
ROM2は、本翻訳装置1の起動用のプログラムを記憶する。フラッシュメモリ3は、翻訳プログラム等のプログラムやこのプログラムの実行に必要なデータを記憶する。翻訳プログラムは、例えば、日本語(第1自然言語)の原文を英語(第2自然言語)の翻訳文に機械翻訳する、乃至は英語の原文(第1自然言語)の原文を日本語(第2自然言語)の翻訳文に機械翻訳する後述の翻訳処理を本翻訳装置1に実行させるためのプログラムである。また、プログラムの実行に必要なデータには辞書データ等があり、この辞書データとして、日本語の単語データとこの日本語の単語データと同義語である英語の単語データとが互いに対応付けられて記憶されている。
【0025】
RAM4は、CPU8の作業領域として機能するものであり、フラッシュメモリ3等から読み出されたプログラムやデータが一時的に記憶される。表示部5は、本発明の表示処理部に対応し、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイで構成され、CPU8で生成された翻訳文等の表示画像を表示する。この表示部5の表示については詳しくは図3及び図4を用いて後述する。
【0026】
操作部6は、キーボード61及びマウス62を備え、これらを用いたユーザの操作を受け付ける。キーボード61は、そのキーが押下されることで、ユーザから原文の入力等を受け付ける。マウス62は、表示部5に表示されている文のうち任意の文章をユーザが選択するため等に用いられるものである。
【0027】
スピーカ7は、操作部6で音声出力指示をユーザから受け付けたときに、CPU8から入力された翻訳文の音声データを出力することで、翻訳文を発音する。
【0028】
CPU8は、上述した各構成の動作を制御するものである。CPU8は、上述した翻訳プログラムを実行することで、翻訳文生成部81とリスト生成部82と表示制御部83と再翻訳処理部84と発音処理部85を機能的に備え、これらの構成によって以下のような翻訳処理を実行する。
【0029】
翻訳文生成部81は、キーボード61を用いて入力された原文を翻訳した翻訳文を生成するとともに、この生成した翻訳文を原文と同じ言語に翻訳した逆翻訳文を生成する。
【0030】
ここで、公知の翻訳方法の一つを簡単に説明する。この翻訳方法では、まず、原文の表現を形態素に分け、この分けられた各形態素の関係(文章構文)を解析する処理(解析処理)が実行される。例えば、主語や述語となる形態素や、各形態素の係り受け関係が解析される。次に、解析結果に基づいて、原文の各形態素と同じ意義の訳語に変換する語い変換を行うとともに、解析した原文の文章構文を翻訳語の文章構文に置き換える構文変換を行う処理(変更処理)が実行される。この後、語順の決定等を行い、語い変換された形態素を構文変換がなされた文章構文に従った順番で配置した翻訳文を生成する処理(生成処理)が実行される。
【0031】
上述の変更処理において語い変換を行うときに、形態素によっては複数の訳語候補がある場合があり、この場合には、複数の候補の中から1の候補の選択が行われる。そして、この訳語候補の選択を誤ると翻訳文に誤訳が生じてしまう。
【0032】
リスト生成部82は、原文の形態素のうち訳語候補が複数存在するものについて、これらの訳語候補のリスト(原文訳語候補リスト)を生成し、RAM4(候補記憶部)に記憶させるものである。また、リスト生成部82は、翻訳文の形態素について訳語候補が複数存在するものについて、これらの訳語候補のリスト(翻訳文訳語候補リスト)を生成し、RAM4に記憶させる。
【0033】
この原文訳語候補リストの作成は、フラッシュメモリ3に記憶されている辞書データを原文の形態素を用いて参照することで、この形態素に対応する英語の用語及び日本語訳が取得され、この取得された用語を用いて行われる。また、翻訳文訳語候補リストの作成は、原文の形態素に対応する翻訳文の形態素を用いて辞書データを参照することで、この形態素に対応する日本語の用語及び英語訳が取得され、この取得された用語を用いて行われる。
【0034】
表示制御部83は、本発明の表示処理部に対応し、表示部5の表示を制御するものであり、例えば図2で示すような、入力された原文と原文の翻訳文及び逆翻訳文とを対応づけて表示するための入力ウィンドウW1を生成して表示部5に表示させる。この様に逆翻訳文が表示されるため、逆翻訳文を確認することで、ユーザの意図しない翻訳(誤訳)がなされているかどうか、及びこの誤訳の箇所をユーザに容易に確認させることが可能となる。
【0035】
ここでは、「商店街まではちょっとあります。」という文章を「商店街までは少し距離があります。」という意図でユーザが原文入力したものであるが、逆翻訳文を見ると、「商店街には、それが少しの時間あります。」となっている。このため、ユーザは、逆翻訳文によって、「ちょっと」が「少しの時間」という意味に翻訳される誤訳が生じていることと、主語が「商店街までの距離」ではなく「それ」という意味に誤訳されている可能性があることを把握することができる。
【0036】
また、表示制御部83は、ユーザからの指示に応じて、例えば図2で示すような、入力ウィンドウW1と同内容の変更ウィンドウW2を表示部5に表示させる。この変更ウィンドウW2は、入力された原文の内容を修正し、この修正内容での翻訳文及び逆翻訳文を生成するためのものである。この変更ウィンドウW2は、ユーザが操作部6を用いて入力ウィンドウW1上の文章を選択した場合には、選択した文章についてのみ表示する。本翻訳装置が小型の携帯用のものであり、そのディスプレイが小さくかつ原文が長いことによって、表示領域を変更しなくては入力した原文と、翻訳文及び逆翻訳文とが対応付けた状態で視認できない場合がある。本実施形態では、選択した文章についてのみで変更ウィンドウW2内にこれらの文が表示されるため、かかる場合にも、これらの文章を対応付けてディスプレイ内に表示することが可能となる。
【0037】
そして、表示制御部83は、ユーザからの指示に応じて、例えば図3で示すような、サブウィンドウSW1及びサブウィンドウSW2を生成して、変更ウィンドウW2上に表示させる。このサブウィンドウSW1は、原文訳語候補リストを表示するためのウィンドウであり、サブウィンドウSW2は、翻訳文訳語候補リストを表示するためのウィンドウである。表示制御部83は、RAM4に記憶されているこれらのリストを読み出して、この読み出したリストとこのリストの訳語をサブウィンドウSW1,SW2に書き込んだ状態で対応する形態素に関連付けて表示させる。
【0038】
このサブウィンドウSW1の表示によって、ユーザに原文や翻訳文を修正するための語句を示唆することが可能となり、英語に明るくないユーザでも原文及び翻訳文を修正することが可能となる。また、サブウィンドウSW2の表示によって、ユーザに翻訳文から逆翻訳文に翻訳するときの誤りを確認させることができる。これによって、原文と逆翻訳文とが不一致である場合に、この不一致が原文から翻訳文への翻訳の誤りに起因するものであるか、翻訳文から逆翻訳文への翻訳の誤りに起因するものであるかを確認させることが可能となる。
【0039】
例えば、図3では、「ちょっと」という形態素について、サブウィンドウSW1が表示されており、このサブウィンドウSW1内の原文訳語候補リストには「(I)a moment;少しの時間 (II)a little ;少しの量 (III)a distance;少しの距離」が含まれている。ユーザは、サブウィンドウSW1と翻訳文とが「a moment」という用語で一致しているため、ユーザはこの訳語で翻訳されたことが判断できる。
【0040】
また、サブウィンドウSW2が、形態素「amoment」に関連づけて表示されており、このサブウィンドウSW2内の翻訳文訳語候補リストには「(I)少しの時間と(II)時期」とが表示されている。このため、ユーザは、逆翻訳文の形態素に対応する用語と翻訳文訳語候補リストによって、逆翻訳文がどの訳語候補が選択されて生成されたものであるかを知ることができる。本例では、「a moment」の翻訳文から逆翻訳文への翻訳に誤訳はないことをユーザが把握することができ、これによって、原文から翻訳文への翻訳に誤訳があることを把握することができる。
【0041】
再翻訳処理部84は、ユーザが操作部6を用いて変更ウィンドウW2上の原文を修正した場合に、この修正された原文の翻訳文及び逆翻訳文を翻訳文生成部81に再生成させる処理を実行する。この処理において、再翻訳処理部84は、修正された原文で変更ウィンドウW2上の原文を更新させるとともに、再生成された翻訳文及び逆翻訳文の内容で変更ウィンドウW2上の翻訳文及び逆翻訳文を更新させるように、表示制御部83に指示する。
【0042】
ここで、再翻訳処理部84は、ユーザの操作部6を用いた指示に応じて、原文訳語候補リストから1の訳語候補を選択し、選択した訳語候補で原文の形態素を置き換え、この置き換えた原文の翻訳文及び逆翻訳文を翻訳文生成部81に再生成させる。そして、再翻訳処理部84は、この置き換えた原文及び再生成した翻訳文及び逆翻訳文でサブウィンドウSW1を変更するように表示制御部83に指示する。これによって、ユーザはキーボードでの手入力で原文を修正しなくても、原文及び翻訳文を修正することができるとともに、逆翻訳文を確認することで修正内容に基づいた翻訳文が正確であるかを確認することが可能となる。
【0043】
発音処理部85は、図6を用いて後述するような発音処理を実行する。
【0044】
図4は、図1で示す翻訳装置1が実行する翻訳処理のフローチャートである。図5は、図4で示す翻訳処理における変更処理のフローチャートである。主電源がオンされると入力ウィンドウW1が表示部5に表示されるが、翻訳処理は、この入力ウィンドウW1の表示後に実行される。まず、翻訳文生成部81が、操作部6でユーザから原文の入力を受け付けたと判断するまでステップS1を実行して待機する。
【0045】
原文の入力を受け付けたと判断した場合には(S1でYES)、翻訳文生成部81は、原文を入力ウィンドウW1に表示するように表示制御部83に指示し(S2)、この後、ユーザからの翻訳指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S3)。ユーザからの翻訳指示を受け付けなかったと判断した場合には(S3でNO)、翻訳文生成部81は本処理をステップS1に戻す。ユーザからの翻訳指示を受け付けたと判断した場合には(S3でYES)、翻訳文生成部81は原文の翻訳文を生成するとともに(S4)、翻訳文の逆翻訳文を生成する(S5)。
【0046】
この後、翻訳文生成部81は、生成した翻訳文及び逆翻訳文を表示部5に表示させるように表示制御部83に指示する。表示制御部83はこの指示を受けて、入力ウィンドウW1内に生成した翻訳文及び逆翻訳文を表示する(S6)。そして、再翻訳処理部84は動作部6で変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けたかどうかを判断する(S7)。変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けなかったと判断した場合には(S7でNO)、再翻訳処理部84は本処理をステップS1に戻す。一方、再翻訳処理部84が変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けたと判断した場合には(S7でYES)、再翻訳処理部84は、入力ウィンドウW1と同内容の変更ウィンドウW2を生成して表示するように表示制御部83に指示する(S8)。この後、変更処理が実行される(S9)。
【0047】
図5を参照して、変更処理を説明する。まず、再翻訳処理部84は、操作部6でユーザから訳語候補の表示指示を受け付けたかどうかを判断する(S91)。訳語候補の表示指示を受け付けていないと判断した場合には(S91でNO)、再翻訳処理部84はユーザからキーボード61を用いた手入力での原文和文の変更指示を受け付けたかどうかを判断する(S92)。原文和文の変更指示を受け付けたと判断しなかった場合には(S92でNO)、再翻訳処理部84は、本処理をステップS91に戻し、原文和文の変更指示を受け付けたと判断した場合には(S92でYES)、変更指示の内容で原文を修正した後、後述のステップ101を実行する。
【0048】
一方、訳語候補の表示指示を受け付けたと判断した場合には(S91でYES)、再翻訳処理部84は、この指示にかかる原文の形態素を検出する(S93)。ここで、訳語候補の表示指示は、ユーザが例えばマウス62等を用いて変更ウィンドウW2上の原文の形態素を選択することで行われ、この選択された形態素が検出される。この後、再翻訳処理部84はリスト生成部82に検出した形態素についての原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストの作成を指示する。リスト生成部82はこの指示を受けてこれらの訳語候補リストを作成し(S94)、RAM4に記憶させる。
【0049】
この後、再翻訳処理部84はサブウィンドウSW1,SW2を作成するように指示し、表示制御部83はこの指示を受けて、サブウィンドウSW1,SW2を作成する(S95)。そして、表示制御部83は、サブウィンドウSW1,SW2を表示する(S96)。具体的には、表示制御部83は、RAM4から原文訳語候補リストを読み出してサブウィンドウSW1に書き込んで、変更ウィンドウW2上の対応する原文の形態素に関連づけて表示させる。また、表示制御部83は、RAM4から翻訳文訳語候補リストを読み出してサブウィンドウSW2に書き込んで、変更ウィンドウW2上の対応する翻訳文の形態素に関連づけて表示させる。
【0050】
そして、再翻訳処理部84は、サブウィンドウSW1における訳語候補の選択指示を操作部6でユーザから受け付けたかどうかを判断する(S97)。訳語候補の選択指示を受け付けていないと判断した場合には(S97でNO)、再翻訳処理部84は、サブウィンドウSW1,SW2の表示終了指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S98)。表示終了指示を受け付けたと判断した場合には(S98でYES)、再翻訳処理部84は本処理をステップS91に戻し、判断しなかった場合には(S98でNO)、本処理をステップS97に戻す。
【0051】
一方、サブウィンドウSW1における訳語候補の選択指示を受け付けたと判断した場合には(S97でYES)、再翻訳処理部84は、選択すべき訳語候補を検出する(S99)。ここで、訳語候補の選択指示は、ユーザからマウス62等を用いて1の訳語候補が原文訳語候補リストから選択操作されることで行われ、ユーザの選択操作によって選択された訳語候補が検出される。なお、再翻訳処理部84がユーザの選択操作によらず自動で訳語候補を順次選択する構成であってもよい。この場合には、原文訳語候補リストにおける訳語候補リストが順番に検出される。
【0052】
この後、再翻訳処理部84は、検出した訳語候補の日本語訳で変更ウィンドウW2上の原文の形態素を置き換えるよう表示制御部83に指示する(S100)。そして、再翻訳処理部84は、変更後の原文についての翻訳文及び逆翻訳文の生成を翻訳文生成部81に指示する。翻訳文生成部81は、この指示を受けて翻訳文を生成するとともに、生成した翻訳文の逆翻訳文を生成する(S101)。この後、表示制御部83が置き換えた原文及び生成した翻訳文と逆翻訳文で変更ウィンドウW2内の表示を更新する(S102)。この後、上述したステップS98が実行される。
【0053】
この変更処理は、再翻訳処理部84が、ユーザから変更ウィンドウW2の表示の終了指示を操作部6で受け付けたと判断するまで実行され、判断した場合に終了する。
【0054】
図4に戻って、再翻訳処理部84が、ユーザからの変更ウィンドウW2に表示されていた翻訳文の登録指示をユーザから操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S10)。登録指示を受け付けていないと判断した場合には(S10でNO)、再翻訳処理部84は本処理をステップS1に戻す。登録指示を受け付けたと判断した場合には(S10でYES)、再翻訳処理部84は、入力ウィンドウW1における原文と変更ウィンドウW2における翻訳文とを対応づけて、フラッシュメモリ3に記憶(登録)させる(S11)。この後、再翻訳処理部84は、本処理をステップS1に戻す。
【0055】
ステップS11で登録された後には、登録された原文が入力されたときに、ステップS4で翻訳文の生成に代えて、この登録された翻訳文が読み出される。これによって、原文が誤訳を生じてしまうような不適切なものであっても、ユーザの意図する翻訳文が表示されることになる。なお、ステップS11で、入力ウィンドウW1における原文と変更ウィンドウW2における原文とが対応付けて登録されてもよい。この構成では、登録後、登録された原文が入力されると、この原文に換えて変更ウィンドウW2における原文がステップS2で表示される。この場合でも、表示された原文が翻訳されると、ユーザの意図する意味での翻訳がなされる。
【0056】
図6は、図1で示す翻訳装置1の実行する発音処理のフローチャートである。本処理は、翻訳装置1が専用機である場合には主電源がオンされたときに実行開始され、オフされたときに実行が終了する。なお、翻訳装置1が汎用機である場合には、翻訳アプリケーションが起動された場合に本処理が実行開始され、アプリケーションの終了によって実行終了される。
【0057】
まず、発音処理では、発音処理部85が操作部6で会話指示を受け付けたと判断するまでステップS21を実行して待機する。会話指示を受け付けたと判断した場合には(S21でYES)、発音処理部85は翻訳文が表示されているかどうかを判断する(S22)。翻訳文が表示されていないと判断した場合には(S22でNO)、発音処理部85は処理をステップS21に戻す。
【0058】
翻訳文が表示されていると判断した場合には(S22でYES)、発音処理部85は、変更ウィンドウW2が表示されている場合にはこの翻訳文を、表示されていない場合には入力ウィンドウW1の翻訳文を、フラッシュメモリ3の音声ライブラリを用いて音声波形に変換しWAV形式等の音声データを生成する(S23)。発音処理部85は、この音声データをスピーカ7に出力する(S24)。この音声データは図略のD/A(Digital/Analog)コンバータを介してスピーカ7に入力され、スピーカ7から翻訳文の音声が放音される。この後、発音処理部85は、本処理をステップS21に戻す。
【0059】
上述したように、第1の実施形態では、原文とこの原文の翻訳文及びこの翻訳文の逆翻訳文が表示されるため、ユーザは翻訳文を見なくても翻訳文の誤訳を検出することができる。また、ユーザからの指示に応じて、原文の形態素の訳語候補リストから1の訳語候補が選択されて、この選択された訳語候補を形態素の訳として用いて、翻訳文及び逆翻訳文の再生成を行うことができるため、ユーザは原文をどの様に修正するかを判断しなくても、翻訳文を修正することができる。そして、この修正された翻訳文が誤訳であるかどうかを、ユーザは逆翻訳文を確認することで確認することができる。これによって、どの様に原文を修正すべきかを詳しく判断することなく、翻訳文を修正し、この修正後の翻訳文の誤訳を逆翻訳文を見ることで詳しく判断することができるため、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図7を用いて説明する。第2の実施形態では、変更処理の内容のみが第1の実施形態と相違しているため、この変更処理について説明する。図7は、第2の実施形態にかかる変更処理のフローチャートである。本フローチャートでは、図5で示す変更処理と同一の処理を実行するステップについては同一の符号を付して説明を省略する。本変更処理では、ステップS1で訳語候補の表示指示があったと判断した場合に(S91でYES)、ステップS93に代えてステップS201が実行されることのみが相違している。
【0061】
ステップS201では、再翻訳処理部84aが原文と逆翻訳文とが変更ウィンドウW2において不一致となっている形態素を検出する(S201)。そして、上述したステップS94で不一致となっている形態素の原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストが作成され、ステップS95でこれらのリストが書き込まれたサブウィンドウSW1,SW2が表示される。
【0062】
上記構成によって、第2の実施形態では、原文と逆翻訳文とを参照させて、不一致箇所すなわち誤訳が生じている箇所を検出する作業を行わなくてもユーザが誤訳箇所を検出することができ、操作性良く誤訳を検出することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、図1、図8〜図10を用いて、本発明の第3の実施形態を説明する。図8は、第3の実施形態にかかる翻訳装置1B,1B´の概略構成を示すブロック図である。翻訳装置1Bは、他の翻訳装置1B(以下、本装置と区別するため「翻訳装置1B´」と記載する)と通信を行う通信部10を備える。また、翻訳装置1Bでは、CPU8は、フラッシュメモリ3に記憶されるチャットプログラムを実行することで、チャット処理部86を機能的に備える。なお、この他の翻訳装置1Bの構成については、翻訳装置1と同様であるため説明を省略する。
【0064】
チャット処理部86は、入力原文表示処理及び受信翻訳文表示処理を実行する。入力原文表示処理では、チャット処理部86は、本翻訳装置1Bのユーザと他の翻訳装置1B´のユーザとがチャットを行うためのチャットウィンドウW3を表示部5に表示する指示を表示制御部83に行うとともに、ユーザからの指示があったときに入力ウィンドウW1乃至は変更ウィンドウW2の原文をチャットウィンドウW3内に表示するよう指示する。これとともに、チャット処理部86は、通信部10を用いて表示する原文の翻訳文を他の翻訳装置1B´に送信する。
【0065】
また、受信翻訳文表示処理では、チャット処理部86は通信部10で受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示するように表示制御部83に指示する。
【0066】
図8は、第3の実施形態にかかる翻訳装置1Bと翻訳装置1B´の外観を示す斜視図である。翻訳装置1Bと翻訳装置1B´は携帯可能な小型の装置である。翻訳装置1B,1B´は、平板な略直方体形状の背面部11と、同形状の前面部12とから成る。この背面部11と前面部12とは、その一縁が互いに接続され、この接続部を基準として開閉可能になっている。背面部11の内側にはキーボード61及びマウス62が配設されており、前面部12の内側には表示部5(ディスプレイ)が配設されており、これによって、背面部11と前面部12とを開くことで、キーボード61及びマウス62と表示部5が出現するようになっている。
【0067】
表示部5は、入力ウィンドウW1や変更ウィンドウW2の他に、チャットウィンドウW3が表示可能になっている。ここでは、入力ウィンドウW1の下にチャットウィンドウW3が表示されている。このチャットウィンドウW3には、入力ウィンドウW1乃至は変更ウィンドウの原文がユーザからの指示に応じて表示される。これとともに、無線通信によって他の翻訳装置1B´から受信した文章が表示される。他の翻訳装置1B´が本翻訳装置1Bとが逆の翻訳を行うものである場合、例えば、本翻訳装置1Bが日本語の原文を英語の翻訳文に翻訳し翻訳装置1B´は英語の原文を日本語の翻訳文に翻訳する場合には、本翻訳装置1BのチャットウィンドウW3には原文とこの原文の言語(日本語)の受信した翻訳文が表示される。これによって、チャットウィンドウW3上で原文(日本語)と同じ言語でチャットが行われる。
【0068】
一方、他の翻訳装置1B´のチャットウィンドウW3には、入力された原文(英語表記)と本翻訳装置1Bから受信した翻訳文(英語)が表示され、これによって、チャットウィンドウW3上で原文(英語)と同じ言語でチャットが行われることになる。
【0069】
図9は、図8で示す翻訳装置1Bが実行する入力原文表示処理のフローチャートである。本処理は、図4で示す翻訳処理と並行して実行される。まず、チャット処理部86は、チャットウィンドウW3を表示の指示を操作部6でユーザから受け付けたかどうかを判断する(S31)。チャットウィンドウW3の表示の指示を受け付けていないと判断した場合には(S31でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS31の処理を実行する。チャットウィンドウW3の表示の指示を受け付けたと判断した場合には(S31でYES)、チャット処理部86は表示制御部83にチャットウィンドウW3を生成して表示させる(S32)。
【0070】
この後、チャット処理部86はユーザからの書き込み指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S33)。書き込み指示を受け付けていないと判断した場合には(S33でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS33を実行する。書き込み指示を受け付けたと判断した場合には(S33でYES)、チャット処理部86は変更ウィンドウW2が表示されているかどうかを判断する(S34)。
【0071】
変更ウィンドウW2が表示されていないと判断した場合には(S34でNO)、チャット処理部86は入力ウィンドウW1に入力されている原文をチャットウィンドウW3に表示するよう表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S35)。一方、変更ウィンドウW2が表示されていると判断した場合には(S34でYES)、チャット処理部86は変更ウィンドウW2に入力されている原文をチャットウィンドウW3に表示するよう表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S36)。
【0072】
この後、チャット処理部86は、チャットウィンドウW3に表示した原文の翻訳文を通信部10を用いて他の翻訳装置1B´に送信する(S37)。
【0073】
図10は、図8で示す翻訳装置1Bが実行する受信翻訳文表示処理のフローチャートである。本処理は、図9で示す入力原文表示処理と並行して実行される。チャット処理部86は通信部10で他の翻訳装置1B´から翻訳文を受信したかどうかを判断する(S41)。翻訳文を受信していないと判断した場合には(S41でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS41を実行する。翻訳文を受信したと判断した場合には(S41でYES)、チャット処理部86は受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示するように表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S42)。
【0074】
上述したように、第3の実施形態では、ユーザからの指示に応じて、入力原文をチャットウィンドウW3に表示するとともに、この表示した原文の翻訳文を他の翻訳装置1B´に送信し、また、他の翻訳装置1B´から受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示することができる。これによって、本翻訳装置1B,1B´のチャットウィンドウW3にはそれぞれの入力原文の言語と同一の言語でチャットが行われることになり、異なった言語を母国語になるユーザ同士しても翻訳装置1B,1B´を用いて意思疎通を図ることができる。
【0075】
なお、第3の実施形態では、2台の翻訳装置1B,1B´の間でチャットを行う構成であるが、図11で示すように1台の翻訳装置1Bを用いてチャットを行う構成を採用してもよい。ここでは、翻訳装置1B´の表示画面で表示するウィンドウW1〜W3が翻訳装置1Bの表示画面に表示される。これによって、異なった言語を母国語とする人同士が同じ装置1Bを用いてチャットを行うことができる。
【0076】
(第4の実施形態)
以下に、図12〜図16を用いて本発明の第4の実施形態を説明する。図12は、第4の実施形態にかかる翻訳システム100を示す図である。この翻訳システム100は、第3の実施形態で説明した翻訳装置1B、この翻訳装置1と双方向で有線又は無線を介して通信を行う端末装置1dとを備える。翻訳装置1Bは、上述したようにフラッシュメモリ3に辞書データを記憶するとともに、翻訳文生成部81、リスト生成部82、再翻訳処理部84等の翻訳文及び逆翻訳文を生成する各機能部(以下、「翻訳エンジン80」と記載する)をCPU8に備える。
【0077】
一方、端末装置1dは、翻訳エンジン80を備えない。このため、端末装置1dは、翻訳装置1Bの翻訳エンジン80を共用し、翻訳文及び逆翻訳文の生成や、原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストの生成を翻訳装置1Bに実行させる。端末装置1dは、ウィンドウW1〜W3やサブウィンドウSW1,SW2を表示するための機能部、すなわち表示制御部83やチャット処理部86をCPU8に備える。これらの機能部によって、端末装置1dは、翻訳装置1Bによって生成されたこれらの翻訳文や訳語候補リストをウィンドウW1〜W3,サブウィンドウSW1,SW2に表示する。端末装置1dのその他の構成は、翻訳装置1Bと同様であるため説明を省略する。
【0078】
図13は、図12で示す端末装置1dの実行する翻訳処理を示すフローチャートである。本処理において、図4で示す処理と同一のステップについては同一の符号を付し、説明を省略する。ステップS3で翻訳指示があると判断された場合には、CPU8は通信部10を用いて原文を翻訳装置1Bに送信し、翻訳文及び逆翻訳文の生成を指示する(S51)。この後、CPU8は翻訳文及び逆翻訳文を受信するまでステップS52を実行して待機する。そして、翻訳文及び逆翻訳文を受信したと判断した場合には(S52でYES)、ステップS6が実行され、受信した翻訳文及び逆翻訳文が表示される。
【0079】
図14は、図13の翻訳処理における変更処理のフローチャートである。本処理において、図5で示す処理と同一のステップについては同一の符号を付し、説明を省略する。ステップS93で選択された形態素が検出された後、CPU8は通信部10を用いて検出した形態素を翻訳装置1Bに送信し、原文候補リスト及び翻訳文候補リストの作成を指示する(S301)。CPU8はこれらの訳語候補リストを翻訳装置1Bから受信するまでステップS302を実行して待機する。これらの訳語候補リストを受信したと判断した場合には(S302でYES)、CPU8はステップS95を実行し、受信した訳語候補リストを表示するサブウィンドウSW1,SW2を生成する。
【0080】
また、ステップS100が実行されて原文が変更されたときに、CPU8は通信部10を用いて変更された原文を翻訳装置1Bに送信し、変更後の原文による翻訳文及び逆翻訳文の再生成を指示する(S303)。この後、翻訳文及び逆翻訳文を翻訳装置1Bから受信するまで、CPU8はステップS304を実行して待機する。そして、翻訳文及び逆翻訳文を受信したと判断した場合には(S304でYES)、ステップS102が実行され、受信した翻訳文及び逆翻訳文が変更ウィンドウW2に表示される。
【0081】
図15は、図12で示す翻訳装置1Bの実行する翻訳文等送信処理を示すフローチャートである。CPU8は、端末装置1dから原文を受信したか否かを判断する。そして、原文を受信したと判断した場合には(S61でYES)、翻訳文生成部81は受信した原文の翻訳文及び逆翻訳文を生成する(S62)。この後、CPU8は通信部10を用いて生成した翻訳文及び逆翻訳文を端末装置1dに送信する(S63)。原文を受信したと判断しなかった場合には(S61でNO)、CPU8は形態素を受信したかどうかを判断する(S64)。
【0082】
形態素を受信していないと判断した場合には(S64でNO)、CPU8は本処理をステップS61に戻す。受信したと判断した場合には(S64でYES)、リスト生成部82は受信した形態素についての原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストを生成する(S65)。この後、CPU8は生成した翻訳文訳語候補リストを端末装置1dに送信し(S66)、本処理をステップS61に戻す。
【0083】
上記構成によって、第4の実施形態では、翻訳エンジンを備えない端末装置1dであっても、翻訳装置1Bの翻訳エンジン80によって翻訳を行うことができる。また、このような端末装置1dと翻訳装置1Bの間でチャットを行うことができる。
【0084】
(第5の実施形態)
以下、図16を用いて本発明の第5の実施形態を説明する。図16は、第
5の実施形態にかかる翻訳システム100Aを示す図である。翻訳システム100Aは、第4の実施形態で示した複数の端末装置1dとサーバ20とがインターネットやLAN等であるネットワークNに接続されてなる。端末装置1dは、図13及び図14で示した翻訳処理を実行することでサーバ20に対して翻訳文・逆翻訳文の生成を指示するとともに、訳語候補リストの生成を指示する。サーバ20は、翻訳装置1Bと同様の構成であるため、翻訳エンジン80を備えており、図14で示したような翻訳文等の送信処理を実行して、端末装置1dからの指示に応えて逆翻訳文・翻訳文を生成して翻訳装置1に送信するとともに、訳語候補リストを生成して端末装置1dに送信する。
【0085】
上記構成によって、第5の実施形態では、翻訳エンジン80を備えない端末装置1dであっても、サーバ20の翻訳エンジン80を共用することで、翻訳文及び逆翻訳文を取得して表示することができる。また、このような端末装置1d同士であっても、チャットを行うことができる。
【0086】
本実施形態は、以下の変形例を採用することができる。
【0087】
(1)発明の第1〜第5の実施形態では、入力ウィンドウW1とは別に
変更ウィンドウW2を表示する構成であるが、この構成に限定されない。すなわち、入力ウィンドウW1のみが表示され、この入力ウィンドウW1上にサブウィンドウSW1,SW2が表示され、入力原文の修正や再翻訳文の表示が行われてもよい。
【0088】
(2)本発明の第1〜第5の実施形態では、日本語と英語との間での翻訳を翻訳処理で行う構成であるが、これに限定されず、自然言語を他の自然言語に機械翻訳する構成であればよい。
【0089】
(3)また、本発明の第1〜第5の実施形態では、サブウィンドウSW1,
SW2が表示される構成であるが、必ずしもこの構成に限定されず、サブウィンドウSW1,SW2を表示しない構成であってもよい。この構成では、サブウィンドウSW1が表示されないため、ユーザはサブウィンドウSW1に表示された原文訳語候補リストから1の候補を選択することができない。このため、再翻訳処理部84が、ユーザの訳語候補選択指示に応じて訳語リストから自動的に1の候補を選択する。そして、選択した候補が対応する形態素の訳語として用いられて、翻訳文及び逆翻訳文が再生成される。
【0090】
(4)第1〜第5の実施形態では、原文訳語候補リストから1の候補が選択されて、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文が再生成される構成であるが、これとともに翻訳文訳語候補リストから1の候補が選択されて、逆翻訳文の再生成が行われる構成であってもよい。例えば、原文と逆翻訳文とが不一致である場合に、原文訳語候補リストの訳語候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を行うより前に、不一致の形態素の翻訳文訳語候補リストから自動で訳語候補を順次選択して逆翻訳文の再生成が行われる。このように再生成された逆翻訳文が原文と一致することは、原文と逆翻訳文との不一致が翻訳文から逆翻訳文への誤訳に起因し、原文から翻訳文への誤訳はないことを示す。このため、ユーザは誤訳のない翻訳文を取得することができているため、原文訳語候補リストの訳語候補を用いた翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われない。一方、翻訳文訳語候補リストの候補を用いて再生成された全ての逆翻訳文と原文とが一致しない場合には、原文から翻訳文への誤訳があったことを示す。このため、上述したような翻訳処理を実行することで原文訳語候補リストの訳語候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われる。これによって、自動的に翻訳文の誤訳の有無の判断や、誤訳の修正を行うことができる。
【0091】
(5)また、第1〜第5の実施形態では、原文訳語候補リストが生成され、このリストから1の訳語候補が選択されて、選択された訳語を形態素の訳語として用いて翻訳文等の再生成を行う構成であるが、この他に構文変換の候補が複数ある場合に、これらの候補のリスト(構文候補リスト)が生成される構成であってもよい。この場合には、構文候補リストから1の候補が選択され、この選択された構文で翻訳文や逆翻訳文が再生成される。この構成によれば、語い変換の誤りによる誤訳のみならず構文の変換によって誤訳が生じた場合でも、効果的に翻訳文の誤訳を修正することができる。
【0092】
(6)なお、第1〜第5の実施形態では、翻訳装置1,1B及び端末装置1dは汎用機であっても、専ら翻訳を行うための専用機であってもよい。
【0093】
(7)なお、第1〜第5の実施形態では、ユーザが操作部6を用いて原文を入力しているが、これに限定されない。例えば、翻訳装置1,1Bはユーザの音声を認識する音声認識機能を備え、認識した音声を原文として表示する構成であってもよい。また、マウス62による指示の一部又は全部を音声コマンドでも指示できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1の実施形態にかかる翻訳装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2はこの翻訳装置の表示画面の一例を示す図である。
【図3】翻訳装置に表示される変更ウィンドウW2及びサブウィンドウSW1,SW2を示す図である。
【図4】図1で示す翻訳装置が実行する翻訳処理のフローチャートである。
【図5】図4で示す翻訳処理における変更処理のフローチャートである。
【図6】図1で示す翻訳装置の実行する発音処理のフローチャートである。
【図7】第2の実施形態にかかる変更処理のフローチャートである。
【図8】第3の実施形態にかかる翻訳装置1Bと翻訳装置1B´の外観を示す斜視図である。
【図9】図8で示す翻訳装置が実行する入力原文表示処理のフローチャートである。
【図10】図8で示す翻訳装置が実行する受信翻訳文表示処理のフローチャートである。
【図11】第3の実施形態の変形例にかかる翻訳装置の外観を示す斜視図である。
【図12】第4の実施形態にかかる翻訳システム100を示す図である。
【図13】図12で示す端末装置1dの実行する翻訳処理を示すフローチャートである。
【図14】図13の翻訳処理における変更処理のフローチャートである。
【図15】図12で示す翻訳装置1の実行する翻訳文等送信処理を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施形態にかかる翻訳システム100Aを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1,1B,1B´−翻訳装置(端末装置) 1d−端末装置 3−フラッシュメモリ(登録部) 4−RAM(候補記憶部) 5−表示部 6−操作部 10−通信部(通信部) 81−翻訳文生成部
82−リスト生成部 83−表示制御部(表示処理部) 84,84a−再翻訳処理部 100,100A−翻訳システム
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力された第1自然言語を第2自然言語に機械翻訳する翻訳装置、翻訳プログラム及び翻訳システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された第1自然言語を第2自然言語に機械翻訳する翻訳装置は広く知られている(例えば、特許文献1)。このような翻訳装置は、入力された第1自然言語の原文と、この原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文とを対応付けてその表示画面に表示する。これによって、ユーザに原文に対応する翻訳文を表示することができる。
【特許文献1】特開平11−161648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した様な翻訳装置は、原文を言語としての意味を持つ最小の要素である形態素に分解した後、この形態素の関係(文章構文)を分析する解析処理を行う。この後、翻訳装置は、各形態素に対応する第2自然言語の訳語候補の中から1の訳語を選択するとともに、解析処理によって解析した形態素の関係を第2自然言語における関係に置き換える。この翻訳装置は、選択した訳語をこの置き換えた形態素の関係に従って配置することで、翻訳文を生成する。従って、翻訳装置では、解析処理における文章構文の解析結果や、形態素の訳語選択に誤りがあると、誤訳が生じてしまうことになり、このことは翻訳装置において広く知られる課題である。
【0004】
従来の翻訳装置では、上述したような誤訳があった場合に、ユーザが第2自然言語に明るくないと、翻訳の誤りや誤り箇所を検知することが困難であった。また、誤りや誤り箇所を検知することができても、原文をどの様に修正すれば、正しい翻訳文に変換されるかを判断することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、ユーザが誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる翻訳装置、翻訳プログラム及び翻訳システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では以下の手段を採用している。
【0007】
(1)本発明は、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成するリスト生成部と、このリストを記憶する候補記憶部と、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、翻訳文生成部によって、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文が生成されるとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文が生成される。この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文は原文と対応付けて表示処理部によって表示される。これによって、ユーザは逆翻訳文の内容が原文と一致しているかどうかで、誤訳が生じているかどうかや誤訳箇所を確認することが可能となる。
【0009】
そして、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストがリスト生成部によって作成され、このリストは候補記憶部によって記憶される。そして、再翻訳処理部によって、操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、候補記憶部に記憶されるリストから1の候補が選択される。この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が、再翻訳処理部の指示によって翻訳文生成部に実行される。この様に、リストにおける1の候補が選択されて、この1の候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われるため、誤訳を生じないように原文をどの様に修正すべきかの詳しい判断をすることなく翻訳文を修正し、再生成された逆翻訳を見ることで、ユーザは修正された翻訳文の誤訳を確認することが可能となる。このため、第2自然言語に明るくなく、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、正しい訳文を取得することが可能となる。
【0010】
(2)本発明は、上記翻訳装置において、原文と翻訳文とが不一致である形態素を抽出する抽出処理部を更に備え、前記再翻訳処理部は、前記抽出処理部によって抽出された形態素のリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる、ことを特徴とする。
【0011】
この様に、原文と翻訳文との不一致箇所が自動的に抽出処理部によって抽出され、この抽出された形態素について翻訳文や逆翻訳文が再生成されるため、原文と逆翻訳文とを照らし合わせることで誤訳箇所を検出する作業をユーザが行わなくても、誤訳箇所について修正することが可能となる。
【0012】
(3)本発明は、上記翻訳装置において、前記表示処理部は、原文の形態素を前記再翻訳処理部が選択した1の候補の第1自然言語訳に置き換えて表示する、ことを特徴とする。例えば、原文の形態素が「少し」であり、この訳語候補が「少量」や「少しの距離」等である場合に、再翻訳処理部が「少しの距離」を選択すると、原文の「少し」が「少しの距離」に置き換えられて表示される。この構成によれば、リストのうちどの候補が選択されたかをユーザに表示することが可能となる。これによって、変更後の原文と再翻訳語の逆翻訳文を参照することで、ユーザが再翻訳に誤訳がないかを確認することが可能となる。
【0013】
(4)本発明は、上記翻訳装置において、前記候補記憶部に記憶されるリストとこのリストの第1自然言語訳を原文の形態素に関連付けて表示する表示処理部を更に備え、前記再翻訳処理部は、翻訳文及び逆翻訳文の再生成で用いる訳語として、前記操作部で受け付けたユーザの選択操作によって選択された1の候補を前記記憶部で記憶されるリストから選択する、ことを特徴とする。この構成によれば、ユーザはリストの第1自然言語訳を見ながら最適な候補をリストから選択し、操作部を用いて選択操作を行うことで、選択した候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の生成が行われることになる。これによって、第2自然言語に明るくないユーザであっても、最適な訳語候補を選択することが可能となり、誤訳のない翻訳文を取得することが可能となる。
【0014】
(5)本発明は、上記翻訳装置において、前記操作部でユーザからの登録操作を受け付けた場合に、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とを対応付けて登録する登録部を更に備え、前記表示処理部は、当初の原文の入力があった場合に、前記登録部に入力された原文と対応付けて登録されている変更後の翻訳文乃至は変更後の原文の訳文を表示する、ことを特徴とする。この構成によれば、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とが対応付けて登録部によって登録され、当初の原文の入力があった場合に、この当初の原文と対応づけて登録されている変更後の翻訳文又は変更後の原文の訳文が表示される。これによって、登録後には、当初の原文が誤訳を招いてしまう様なものであっても、この原文の入力によって登録されている変更後の翻訳文又は変更後の原文を表示することが可能となる。
【0015】
(6)本発明は、上記翻訳装置において、前記表示処理部は、前記操作部によって表示する文章の選択を受け付けた場合に、入力された原文のうち選択された文章の原文と、この原文に対応する翻訳文及び逆翻訳文のみを表示する、ことを特徴とする。例えば、原文が長文化してしまった場合等、表示処理部のディスプレイにユーザ所望の箇所の原文及びこれに対応する翻訳文と逆翻訳文を表示しきれない場合がある。上記構成によれば、ユーザが選択した文章の原文と、この文章に対応する翻訳文及び逆翻訳文が表示されるため、表示領域の変更の操作を行うことなく、ユーザはこれらの文章を対比して見ることが可能となり、操作性が向上する。
【0016】
(7)本発明は、上記翻訳装置において、他の装置と通信を行う通信部を更に備え、前記表示処理部は、チャットウィンドウを表示し、前記操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文をチャットウィンドウに表示するとともに表示した原文の翻訳文を他の装置に前記通信部を用いて送信し、前記通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文をチャットウィンドウに表示する、ことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、通信部によって、第2自然言語を第1自然言語に翻訳する他の装置と通信が行われる場合に、表示処理部によって、チャットウィンドウが表示され、操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文がチャット画面に表示されるとともに通信部を用いて翻訳文が他の装置に送信される。これによって、チャットウィンドウに、ユーザが入力した第1自然言語の原文が表示されるとともに、他の装置にこの原文の翻訳文が送信され、他の装置のチャットウィンドウに翻訳文が表示される。そして、通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文、すなわち他の装置のチャットウィンドウに表示される第2の自然言語の翻訳文(第1自然言語の文)がチャットウィンドウに表示される。この様にして、ユーザが第1自然言語の文章を翻訳装置を用いて読み書きするだけで、第2自然言語の原文を入力するタイプの他の装置とチャットを行うことが可能となる。
【0018】
(8)本発明は、操作部及び候補記憶部を備える翻訳装置を、入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成し、前記候補記憶部に記憶するリスト生成部と、前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されたリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、して機能させる、ことを特徴とする翻訳プログラムである。この構成によれば、(1)で記載した作用と同様の作用を奏する。
【0019】
(9)本発明は、通信ネットワークに複数の端末装置を接続した翻訳システムにおいて、前記通信ネットワーク上及び前記複数の端末装置の何れかに少なくとも1の翻訳エンジンが配置され、前記複数の端末装置はこの翻訳エンジンを共用する、ことを特徴とする。この構成によれば、翻訳エンジンを備えない端末装置であっても通信ネットワークに接続することで、通信ネットワーク上及び他の端末装置の何れかに配置された翻訳エンジンを用いて翻訳を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第2自然言語に明るくなく、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、正しい訳文を取得することができる。これによって、ユーザ等が誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる翻訳装置及び翻訳プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態である翻訳装置について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態にかかる翻訳装置を図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1の実施形態にかかる翻訳装置1の概略構成を示すブロック図である。図2はこの翻訳装置1の表示画面の一例を示す図である。図3は、この翻訳装置1に表示される変更ウィンドウW2及びサブウィンドウSW1,SW2を示す図である。
【0023】
翻訳装置1は、ROM(ReadOnly Memory)2、フラッシュメモリ3、RAM(Random Access Memory)4、表示部5、操作部6及びスピーカ7をCPU8にバス9を介して接続してなる。
【0024】
ROM2は、本翻訳装置1の起動用のプログラムを記憶する。フラッシュメモリ3は、翻訳プログラム等のプログラムやこのプログラムの実行に必要なデータを記憶する。翻訳プログラムは、例えば、日本語(第1自然言語)の原文を英語(第2自然言語)の翻訳文に機械翻訳する、乃至は英語の原文(第1自然言語)の原文を日本語(第2自然言語)の翻訳文に機械翻訳する後述の翻訳処理を本翻訳装置1に実行させるためのプログラムである。また、プログラムの実行に必要なデータには辞書データ等があり、この辞書データとして、日本語の単語データとこの日本語の単語データと同義語である英語の単語データとが互いに対応付けられて記憶されている。
【0025】
RAM4は、CPU8の作業領域として機能するものであり、フラッシュメモリ3等から読み出されたプログラムやデータが一時的に記憶される。表示部5は、本発明の表示処理部に対応し、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイで構成され、CPU8で生成された翻訳文等の表示画像を表示する。この表示部5の表示については詳しくは図3及び図4を用いて後述する。
【0026】
操作部6は、キーボード61及びマウス62を備え、これらを用いたユーザの操作を受け付ける。キーボード61は、そのキーが押下されることで、ユーザから原文の入力等を受け付ける。マウス62は、表示部5に表示されている文のうち任意の文章をユーザが選択するため等に用いられるものである。
【0027】
スピーカ7は、操作部6で音声出力指示をユーザから受け付けたときに、CPU8から入力された翻訳文の音声データを出力することで、翻訳文を発音する。
【0028】
CPU8は、上述した各構成の動作を制御するものである。CPU8は、上述した翻訳プログラムを実行することで、翻訳文生成部81とリスト生成部82と表示制御部83と再翻訳処理部84と発音処理部85を機能的に備え、これらの構成によって以下のような翻訳処理を実行する。
【0029】
翻訳文生成部81は、キーボード61を用いて入力された原文を翻訳した翻訳文を生成するとともに、この生成した翻訳文を原文と同じ言語に翻訳した逆翻訳文を生成する。
【0030】
ここで、公知の翻訳方法の一つを簡単に説明する。この翻訳方法では、まず、原文の表現を形態素に分け、この分けられた各形態素の関係(文章構文)を解析する処理(解析処理)が実行される。例えば、主語や述語となる形態素や、各形態素の係り受け関係が解析される。次に、解析結果に基づいて、原文の各形態素と同じ意義の訳語に変換する語い変換を行うとともに、解析した原文の文章構文を翻訳語の文章構文に置き換える構文変換を行う処理(変更処理)が実行される。この後、語順の決定等を行い、語い変換された形態素を構文変換がなされた文章構文に従った順番で配置した翻訳文を生成する処理(生成処理)が実行される。
【0031】
上述の変更処理において語い変換を行うときに、形態素によっては複数の訳語候補がある場合があり、この場合には、複数の候補の中から1の候補の選択が行われる。そして、この訳語候補の選択を誤ると翻訳文に誤訳が生じてしまう。
【0032】
リスト生成部82は、原文の形態素のうち訳語候補が複数存在するものについて、これらの訳語候補のリスト(原文訳語候補リスト)を生成し、RAM4(候補記憶部)に記憶させるものである。また、リスト生成部82は、翻訳文の形態素について訳語候補が複数存在するものについて、これらの訳語候補のリスト(翻訳文訳語候補リスト)を生成し、RAM4に記憶させる。
【0033】
この原文訳語候補リストの作成は、フラッシュメモリ3に記憶されている辞書データを原文の形態素を用いて参照することで、この形態素に対応する英語の用語及び日本語訳が取得され、この取得された用語を用いて行われる。また、翻訳文訳語候補リストの作成は、原文の形態素に対応する翻訳文の形態素を用いて辞書データを参照することで、この形態素に対応する日本語の用語及び英語訳が取得され、この取得された用語を用いて行われる。
【0034】
表示制御部83は、本発明の表示処理部に対応し、表示部5の表示を制御するものであり、例えば図2で示すような、入力された原文と原文の翻訳文及び逆翻訳文とを対応づけて表示するための入力ウィンドウW1を生成して表示部5に表示させる。この様に逆翻訳文が表示されるため、逆翻訳文を確認することで、ユーザの意図しない翻訳(誤訳)がなされているかどうか、及びこの誤訳の箇所をユーザに容易に確認させることが可能となる。
【0035】
ここでは、「商店街まではちょっとあります。」という文章を「商店街までは少し距離があります。」という意図でユーザが原文入力したものであるが、逆翻訳文を見ると、「商店街には、それが少しの時間あります。」となっている。このため、ユーザは、逆翻訳文によって、「ちょっと」が「少しの時間」という意味に翻訳される誤訳が生じていることと、主語が「商店街までの距離」ではなく「それ」という意味に誤訳されている可能性があることを把握することができる。
【0036】
また、表示制御部83は、ユーザからの指示に応じて、例えば図2で示すような、入力ウィンドウW1と同内容の変更ウィンドウW2を表示部5に表示させる。この変更ウィンドウW2は、入力された原文の内容を修正し、この修正内容での翻訳文及び逆翻訳文を生成するためのものである。この変更ウィンドウW2は、ユーザが操作部6を用いて入力ウィンドウW1上の文章を選択した場合には、選択した文章についてのみ表示する。本翻訳装置が小型の携帯用のものであり、そのディスプレイが小さくかつ原文が長いことによって、表示領域を変更しなくては入力した原文と、翻訳文及び逆翻訳文とが対応付けた状態で視認できない場合がある。本実施形態では、選択した文章についてのみで変更ウィンドウW2内にこれらの文が表示されるため、かかる場合にも、これらの文章を対応付けてディスプレイ内に表示することが可能となる。
【0037】
そして、表示制御部83は、ユーザからの指示に応じて、例えば図3で示すような、サブウィンドウSW1及びサブウィンドウSW2を生成して、変更ウィンドウW2上に表示させる。このサブウィンドウSW1は、原文訳語候補リストを表示するためのウィンドウであり、サブウィンドウSW2は、翻訳文訳語候補リストを表示するためのウィンドウである。表示制御部83は、RAM4に記憶されているこれらのリストを読み出して、この読み出したリストとこのリストの訳語をサブウィンドウSW1,SW2に書き込んだ状態で対応する形態素に関連付けて表示させる。
【0038】
このサブウィンドウSW1の表示によって、ユーザに原文や翻訳文を修正するための語句を示唆することが可能となり、英語に明るくないユーザでも原文及び翻訳文を修正することが可能となる。また、サブウィンドウSW2の表示によって、ユーザに翻訳文から逆翻訳文に翻訳するときの誤りを確認させることができる。これによって、原文と逆翻訳文とが不一致である場合に、この不一致が原文から翻訳文への翻訳の誤りに起因するものであるか、翻訳文から逆翻訳文への翻訳の誤りに起因するものであるかを確認させることが可能となる。
【0039】
例えば、図3では、「ちょっと」という形態素について、サブウィンドウSW1が表示されており、このサブウィンドウSW1内の原文訳語候補リストには「(I)a moment;少しの時間 (II)a little ;少しの量 (III)a distance;少しの距離」が含まれている。ユーザは、サブウィンドウSW1と翻訳文とが「a moment」という用語で一致しているため、ユーザはこの訳語で翻訳されたことが判断できる。
【0040】
また、サブウィンドウSW2が、形態素「amoment」に関連づけて表示されており、このサブウィンドウSW2内の翻訳文訳語候補リストには「(I)少しの時間と(II)時期」とが表示されている。このため、ユーザは、逆翻訳文の形態素に対応する用語と翻訳文訳語候補リストによって、逆翻訳文がどの訳語候補が選択されて生成されたものであるかを知ることができる。本例では、「a moment」の翻訳文から逆翻訳文への翻訳に誤訳はないことをユーザが把握することができ、これによって、原文から翻訳文への翻訳に誤訳があることを把握することができる。
【0041】
再翻訳処理部84は、ユーザが操作部6を用いて変更ウィンドウW2上の原文を修正した場合に、この修正された原文の翻訳文及び逆翻訳文を翻訳文生成部81に再生成させる処理を実行する。この処理において、再翻訳処理部84は、修正された原文で変更ウィンドウW2上の原文を更新させるとともに、再生成された翻訳文及び逆翻訳文の内容で変更ウィンドウW2上の翻訳文及び逆翻訳文を更新させるように、表示制御部83に指示する。
【0042】
ここで、再翻訳処理部84は、ユーザの操作部6を用いた指示に応じて、原文訳語候補リストから1の訳語候補を選択し、選択した訳語候補で原文の形態素を置き換え、この置き換えた原文の翻訳文及び逆翻訳文を翻訳文生成部81に再生成させる。そして、再翻訳処理部84は、この置き換えた原文及び再生成した翻訳文及び逆翻訳文でサブウィンドウSW1を変更するように表示制御部83に指示する。これによって、ユーザはキーボードでの手入力で原文を修正しなくても、原文及び翻訳文を修正することができるとともに、逆翻訳文を確認することで修正内容に基づいた翻訳文が正確であるかを確認することが可能となる。
【0043】
発音処理部85は、図6を用いて後述するような発音処理を実行する。
【0044】
図4は、図1で示す翻訳装置1が実行する翻訳処理のフローチャートである。図5は、図4で示す翻訳処理における変更処理のフローチャートである。主電源がオンされると入力ウィンドウW1が表示部5に表示されるが、翻訳処理は、この入力ウィンドウW1の表示後に実行される。まず、翻訳文生成部81が、操作部6でユーザから原文の入力を受け付けたと判断するまでステップS1を実行して待機する。
【0045】
原文の入力を受け付けたと判断した場合には(S1でYES)、翻訳文生成部81は、原文を入力ウィンドウW1に表示するように表示制御部83に指示し(S2)、この後、ユーザからの翻訳指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S3)。ユーザからの翻訳指示を受け付けなかったと判断した場合には(S3でNO)、翻訳文生成部81は本処理をステップS1に戻す。ユーザからの翻訳指示を受け付けたと判断した場合には(S3でYES)、翻訳文生成部81は原文の翻訳文を生成するとともに(S4)、翻訳文の逆翻訳文を生成する(S5)。
【0046】
この後、翻訳文生成部81は、生成した翻訳文及び逆翻訳文を表示部5に表示させるように表示制御部83に指示する。表示制御部83はこの指示を受けて、入力ウィンドウW1内に生成した翻訳文及び逆翻訳文を表示する(S6)。そして、再翻訳処理部84は動作部6で変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けたかどうかを判断する(S7)。変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けなかったと判断した場合には(S7でNO)、再翻訳処理部84は本処理をステップS1に戻す。一方、再翻訳処理部84が変更ウィンドウW2の表示指示を受け付けたと判断した場合には(S7でYES)、再翻訳処理部84は、入力ウィンドウW1と同内容の変更ウィンドウW2を生成して表示するように表示制御部83に指示する(S8)。この後、変更処理が実行される(S9)。
【0047】
図5を参照して、変更処理を説明する。まず、再翻訳処理部84は、操作部6でユーザから訳語候補の表示指示を受け付けたかどうかを判断する(S91)。訳語候補の表示指示を受け付けていないと判断した場合には(S91でNO)、再翻訳処理部84はユーザからキーボード61を用いた手入力での原文和文の変更指示を受け付けたかどうかを判断する(S92)。原文和文の変更指示を受け付けたと判断しなかった場合には(S92でNO)、再翻訳処理部84は、本処理をステップS91に戻し、原文和文の変更指示を受け付けたと判断した場合には(S92でYES)、変更指示の内容で原文を修正した後、後述のステップ101を実行する。
【0048】
一方、訳語候補の表示指示を受け付けたと判断した場合には(S91でYES)、再翻訳処理部84は、この指示にかかる原文の形態素を検出する(S93)。ここで、訳語候補の表示指示は、ユーザが例えばマウス62等を用いて変更ウィンドウW2上の原文の形態素を選択することで行われ、この選択された形態素が検出される。この後、再翻訳処理部84はリスト生成部82に検出した形態素についての原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストの作成を指示する。リスト生成部82はこの指示を受けてこれらの訳語候補リストを作成し(S94)、RAM4に記憶させる。
【0049】
この後、再翻訳処理部84はサブウィンドウSW1,SW2を作成するように指示し、表示制御部83はこの指示を受けて、サブウィンドウSW1,SW2を作成する(S95)。そして、表示制御部83は、サブウィンドウSW1,SW2を表示する(S96)。具体的には、表示制御部83は、RAM4から原文訳語候補リストを読み出してサブウィンドウSW1に書き込んで、変更ウィンドウW2上の対応する原文の形態素に関連づけて表示させる。また、表示制御部83は、RAM4から翻訳文訳語候補リストを読み出してサブウィンドウSW2に書き込んで、変更ウィンドウW2上の対応する翻訳文の形態素に関連づけて表示させる。
【0050】
そして、再翻訳処理部84は、サブウィンドウSW1における訳語候補の選択指示を操作部6でユーザから受け付けたかどうかを判断する(S97)。訳語候補の選択指示を受け付けていないと判断した場合には(S97でNO)、再翻訳処理部84は、サブウィンドウSW1,SW2の表示終了指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S98)。表示終了指示を受け付けたと判断した場合には(S98でYES)、再翻訳処理部84は本処理をステップS91に戻し、判断しなかった場合には(S98でNO)、本処理をステップS97に戻す。
【0051】
一方、サブウィンドウSW1における訳語候補の選択指示を受け付けたと判断した場合には(S97でYES)、再翻訳処理部84は、選択すべき訳語候補を検出する(S99)。ここで、訳語候補の選択指示は、ユーザからマウス62等を用いて1の訳語候補が原文訳語候補リストから選択操作されることで行われ、ユーザの選択操作によって選択された訳語候補が検出される。なお、再翻訳処理部84がユーザの選択操作によらず自動で訳語候補を順次選択する構成であってもよい。この場合には、原文訳語候補リストにおける訳語候補リストが順番に検出される。
【0052】
この後、再翻訳処理部84は、検出した訳語候補の日本語訳で変更ウィンドウW2上の原文の形態素を置き換えるよう表示制御部83に指示する(S100)。そして、再翻訳処理部84は、変更後の原文についての翻訳文及び逆翻訳文の生成を翻訳文生成部81に指示する。翻訳文生成部81は、この指示を受けて翻訳文を生成するとともに、生成した翻訳文の逆翻訳文を生成する(S101)。この後、表示制御部83が置き換えた原文及び生成した翻訳文と逆翻訳文で変更ウィンドウW2内の表示を更新する(S102)。この後、上述したステップS98が実行される。
【0053】
この変更処理は、再翻訳処理部84が、ユーザから変更ウィンドウW2の表示の終了指示を操作部6で受け付けたと判断するまで実行され、判断した場合に終了する。
【0054】
図4に戻って、再翻訳処理部84が、ユーザからの変更ウィンドウW2に表示されていた翻訳文の登録指示をユーザから操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S10)。登録指示を受け付けていないと判断した場合には(S10でNO)、再翻訳処理部84は本処理をステップS1に戻す。登録指示を受け付けたと判断した場合には(S10でYES)、再翻訳処理部84は、入力ウィンドウW1における原文と変更ウィンドウW2における翻訳文とを対応づけて、フラッシュメモリ3に記憶(登録)させる(S11)。この後、再翻訳処理部84は、本処理をステップS1に戻す。
【0055】
ステップS11で登録された後には、登録された原文が入力されたときに、ステップS4で翻訳文の生成に代えて、この登録された翻訳文が読み出される。これによって、原文が誤訳を生じてしまうような不適切なものであっても、ユーザの意図する翻訳文が表示されることになる。なお、ステップS11で、入力ウィンドウW1における原文と変更ウィンドウW2における原文とが対応付けて登録されてもよい。この構成では、登録後、登録された原文が入力されると、この原文に換えて変更ウィンドウW2における原文がステップS2で表示される。この場合でも、表示された原文が翻訳されると、ユーザの意図する意味での翻訳がなされる。
【0056】
図6は、図1で示す翻訳装置1の実行する発音処理のフローチャートである。本処理は、翻訳装置1が専用機である場合には主電源がオンされたときに実行開始され、オフされたときに実行が終了する。なお、翻訳装置1が汎用機である場合には、翻訳アプリケーションが起動された場合に本処理が実行開始され、アプリケーションの終了によって実行終了される。
【0057】
まず、発音処理では、発音処理部85が操作部6で会話指示を受け付けたと判断するまでステップS21を実行して待機する。会話指示を受け付けたと判断した場合には(S21でYES)、発音処理部85は翻訳文が表示されているかどうかを判断する(S22)。翻訳文が表示されていないと判断した場合には(S22でNO)、発音処理部85は処理をステップS21に戻す。
【0058】
翻訳文が表示されていると判断した場合には(S22でYES)、発音処理部85は、変更ウィンドウW2が表示されている場合にはこの翻訳文を、表示されていない場合には入力ウィンドウW1の翻訳文を、フラッシュメモリ3の音声ライブラリを用いて音声波形に変換しWAV形式等の音声データを生成する(S23)。発音処理部85は、この音声データをスピーカ7に出力する(S24)。この音声データは図略のD/A(Digital/Analog)コンバータを介してスピーカ7に入力され、スピーカ7から翻訳文の音声が放音される。この後、発音処理部85は、本処理をステップS21に戻す。
【0059】
上述したように、第1の実施形態では、原文とこの原文の翻訳文及びこの翻訳文の逆翻訳文が表示されるため、ユーザは翻訳文を見なくても翻訳文の誤訳を検出することができる。また、ユーザからの指示に応じて、原文の形態素の訳語候補リストから1の訳語候補が選択されて、この選択された訳語候補を形態素の訳として用いて、翻訳文及び逆翻訳文の再生成を行うことができるため、ユーザは原文をどの様に修正するかを判断しなくても、翻訳文を修正することができる。そして、この修正された翻訳文が誤訳であるかどうかを、ユーザは逆翻訳文を確認することで確認することができる。これによって、どの様に原文を修正すべきかを詳しく判断することなく、翻訳文を修正し、この修正後の翻訳文の誤訳を逆翻訳文を見ることで詳しく判断することができるため、翻訳文の内容を理解することが困難なユーザであっても、誤訳や誤訳箇所の検知をより容易に行うことができるとともに、誤訳があったときに原文の修正をより容易に行うことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図7を用いて説明する。第2の実施形態では、変更処理の内容のみが第1の実施形態と相違しているため、この変更処理について説明する。図7は、第2の実施形態にかかる変更処理のフローチャートである。本フローチャートでは、図5で示す変更処理と同一の処理を実行するステップについては同一の符号を付して説明を省略する。本変更処理では、ステップS1で訳語候補の表示指示があったと判断した場合に(S91でYES)、ステップS93に代えてステップS201が実行されることのみが相違している。
【0061】
ステップS201では、再翻訳処理部84aが原文と逆翻訳文とが変更ウィンドウW2において不一致となっている形態素を検出する(S201)。そして、上述したステップS94で不一致となっている形態素の原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストが作成され、ステップS95でこれらのリストが書き込まれたサブウィンドウSW1,SW2が表示される。
【0062】
上記構成によって、第2の実施形態では、原文と逆翻訳文とを参照させて、不一致箇所すなわち誤訳が生じている箇所を検出する作業を行わなくてもユーザが誤訳箇所を検出することができ、操作性良く誤訳を検出することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、図1、図8〜図10を用いて、本発明の第3の実施形態を説明する。図8は、第3の実施形態にかかる翻訳装置1B,1B´の概略構成を示すブロック図である。翻訳装置1Bは、他の翻訳装置1B(以下、本装置と区別するため「翻訳装置1B´」と記載する)と通信を行う通信部10を備える。また、翻訳装置1Bでは、CPU8は、フラッシュメモリ3に記憶されるチャットプログラムを実行することで、チャット処理部86を機能的に備える。なお、この他の翻訳装置1Bの構成については、翻訳装置1と同様であるため説明を省略する。
【0064】
チャット処理部86は、入力原文表示処理及び受信翻訳文表示処理を実行する。入力原文表示処理では、チャット処理部86は、本翻訳装置1Bのユーザと他の翻訳装置1B´のユーザとがチャットを行うためのチャットウィンドウW3を表示部5に表示する指示を表示制御部83に行うとともに、ユーザからの指示があったときに入力ウィンドウW1乃至は変更ウィンドウW2の原文をチャットウィンドウW3内に表示するよう指示する。これとともに、チャット処理部86は、通信部10を用いて表示する原文の翻訳文を他の翻訳装置1B´に送信する。
【0065】
また、受信翻訳文表示処理では、チャット処理部86は通信部10で受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示するように表示制御部83に指示する。
【0066】
図8は、第3の実施形態にかかる翻訳装置1Bと翻訳装置1B´の外観を示す斜視図である。翻訳装置1Bと翻訳装置1B´は携帯可能な小型の装置である。翻訳装置1B,1B´は、平板な略直方体形状の背面部11と、同形状の前面部12とから成る。この背面部11と前面部12とは、その一縁が互いに接続され、この接続部を基準として開閉可能になっている。背面部11の内側にはキーボード61及びマウス62が配設されており、前面部12の内側には表示部5(ディスプレイ)が配設されており、これによって、背面部11と前面部12とを開くことで、キーボード61及びマウス62と表示部5が出現するようになっている。
【0067】
表示部5は、入力ウィンドウW1や変更ウィンドウW2の他に、チャットウィンドウW3が表示可能になっている。ここでは、入力ウィンドウW1の下にチャットウィンドウW3が表示されている。このチャットウィンドウW3には、入力ウィンドウW1乃至は変更ウィンドウの原文がユーザからの指示に応じて表示される。これとともに、無線通信によって他の翻訳装置1B´から受信した文章が表示される。他の翻訳装置1B´が本翻訳装置1Bとが逆の翻訳を行うものである場合、例えば、本翻訳装置1Bが日本語の原文を英語の翻訳文に翻訳し翻訳装置1B´は英語の原文を日本語の翻訳文に翻訳する場合には、本翻訳装置1BのチャットウィンドウW3には原文とこの原文の言語(日本語)の受信した翻訳文が表示される。これによって、チャットウィンドウW3上で原文(日本語)と同じ言語でチャットが行われる。
【0068】
一方、他の翻訳装置1B´のチャットウィンドウW3には、入力された原文(英語表記)と本翻訳装置1Bから受信した翻訳文(英語)が表示され、これによって、チャットウィンドウW3上で原文(英語)と同じ言語でチャットが行われることになる。
【0069】
図9は、図8で示す翻訳装置1Bが実行する入力原文表示処理のフローチャートである。本処理は、図4で示す翻訳処理と並行して実行される。まず、チャット処理部86は、チャットウィンドウW3を表示の指示を操作部6でユーザから受け付けたかどうかを判断する(S31)。チャットウィンドウW3の表示の指示を受け付けていないと判断した場合には(S31でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS31の処理を実行する。チャットウィンドウW3の表示の指示を受け付けたと判断した場合には(S31でYES)、チャット処理部86は表示制御部83にチャットウィンドウW3を生成して表示させる(S32)。
【0070】
この後、チャット処理部86はユーザからの書き込み指示を操作部6で受け付けたかどうかを判断する(S33)。書き込み指示を受け付けていないと判断した場合には(S33でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS33を実行する。書き込み指示を受け付けたと判断した場合には(S33でYES)、チャット処理部86は変更ウィンドウW2が表示されているかどうかを判断する(S34)。
【0071】
変更ウィンドウW2が表示されていないと判断した場合には(S34でNO)、チャット処理部86は入力ウィンドウW1に入力されている原文をチャットウィンドウW3に表示するよう表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S35)。一方、変更ウィンドウW2が表示されていると判断した場合には(S34でYES)、チャット処理部86は変更ウィンドウW2に入力されている原文をチャットウィンドウW3に表示するよう表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S36)。
【0072】
この後、チャット処理部86は、チャットウィンドウW3に表示した原文の翻訳文を通信部10を用いて他の翻訳装置1B´に送信する(S37)。
【0073】
図10は、図8で示す翻訳装置1Bが実行する受信翻訳文表示処理のフローチャートである。本処理は、図9で示す入力原文表示処理と並行して実行される。チャット処理部86は通信部10で他の翻訳装置1B´から翻訳文を受信したかどうかを判断する(S41)。翻訳文を受信していないと判断した場合には(S41でNO)、チャット処理部86は繰り返しステップS41を実行する。翻訳文を受信したと判断した場合には(S41でYES)、チャット処理部86は受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示するように表示制御部83に指示し、表示制御部83はこの指示通りの処理を実行する(S42)。
【0074】
上述したように、第3の実施形態では、ユーザからの指示に応じて、入力原文をチャットウィンドウW3に表示するとともに、この表示した原文の翻訳文を他の翻訳装置1B´に送信し、また、他の翻訳装置1B´から受信した翻訳文をチャットウィンドウW3に表示することができる。これによって、本翻訳装置1B,1B´のチャットウィンドウW3にはそれぞれの入力原文の言語と同一の言語でチャットが行われることになり、異なった言語を母国語になるユーザ同士しても翻訳装置1B,1B´を用いて意思疎通を図ることができる。
【0075】
なお、第3の実施形態では、2台の翻訳装置1B,1B´の間でチャットを行う構成であるが、図11で示すように1台の翻訳装置1Bを用いてチャットを行う構成を採用してもよい。ここでは、翻訳装置1B´の表示画面で表示するウィンドウW1〜W3が翻訳装置1Bの表示画面に表示される。これによって、異なった言語を母国語とする人同士が同じ装置1Bを用いてチャットを行うことができる。
【0076】
(第4の実施形態)
以下に、図12〜図16を用いて本発明の第4の実施形態を説明する。図12は、第4の実施形態にかかる翻訳システム100を示す図である。この翻訳システム100は、第3の実施形態で説明した翻訳装置1B、この翻訳装置1と双方向で有線又は無線を介して通信を行う端末装置1dとを備える。翻訳装置1Bは、上述したようにフラッシュメモリ3に辞書データを記憶するとともに、翻訳文生成部81、リスト生成部82、再翻訳処理部84等の翻訳文及び逆翻訳文を生成する各機能部(以下、「翻訳エンジン80」と記載する)をCPU8に備える。
【0077】
一方、端末装置1dは、翻訳エンジン80を備えない。このため、端末装置1dは、翻訳装置1Bの翻訳エンジン80を共用し、翻訳文及び逆翻訳文の生成や、原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストの生成を翻訳装置1Bに実行させる。端末装置1dは、ウィンドウW1〜W3やサブウィンドウSW1,SW2を表示するための機能部、すなわち表示制御部83やチャット処理部86をCPU8に備える。これらの機能部によって、端末装置1dは、翻訳装置1Bによって生成されたこれらの翻訳文や訳語候補リストをウィンドウW1〜W3,サブウィンドウSW1,SW2に表示する。端末装置1dのその他の構成は、翻訳装置1Bと同様であるため説明を省略する。
【0078】
図13は、図12で示す端末装置1dの実行する翻訳処理を示すフローチャートである。本処理において、図4で示す処理と同一のステップについては同一の符号を付し、説明を省略する。ステップS3で翻訳指示があると判断された場合には、CPU8は通信部10を用いて原文を翻訳装置1Bに送信し、翻訳文及び逆翻訳文の生成を指示する(S51)。この後、CPU8は翻訳文及び逆翻訳文を受信するまでステップS52を実行して待機する。そして、翻訳文及び逆翻訳文を受信したと判断した場合には(S52でYES)、ステップS6が実行され、受信した翻訳文及び逆翻訳文が表示される。
【0079】
図14は、図13の翻訳処理における変更処理のフローチャートである。本処理において、図5で示す処理と同一のステップについては同一の符号を付し、説明を省略する。ステップS93で選択された形態素が検出された後、CPU8は通信部10を用いて検出した形態素を翻訳装置1Bに送信し、原文候補リスト及び翻訳文候補リストの作成を指示する(S301)。CPU8はこれらの訳語候補リストを翻訳装置1Bから受信するまでステップS302を実行して待機する。これらの訳語候補リストを受信したと判断した場合には(S302でYES)、CPU8はステップS95を実行し、受信した訳語候補リストを表示するサブウィンドウSW1,SW2を生成する。
【0080】
また、ステップS100が実行されて原文が変更されたときに、CPU8は通信部10を用いて変更された原文を翻訳装置1Bに送信し、変更後の原文による翻訳文及び逆翻訳文の再生成を指示する(S303)。この後、翻訳文及び逆翻訳文を翻訳装置1Bから受信するまで、CPU8はステップS304を実行して待機する。そして、翻訳文及び逆翻訳文を受信したと判断した場合には(S304でYES)、ステップS102が実行され、受信した翻訳文及び逆翻訳文が変更ウィンドウW2に表示される。
【0081】
図15は、図12で示す翻訳装置1Bの実行する翻訳文等送信処理を示すフローチャートである。CPU8は、端末装置1dから原文を受信したか否かを判断する。そして、原文を受信したと判断した場合には(S61でYES)、翻訳文生成部81は受信した原文の翻訳文及び逆翻訳文を生成する(S62)。この後、CPU8は通信部10を用いて生成した翻訳文及び逆翻訳文を端末装置1dに送信する(S63)。原文を受信したと判断しなかった場合には(S61でNO)、CPU8は形態素を受信したかどうかを判断する(S64)。
【0082】
形態素を受信していないと判断した場合には(S64でNO)、CPU8は本処理をステップS61に戻す。受信したと判断した場合には(S64でYES)、リスト生成部82は受信した形態素についての原文訳語候補リスト及び翻訳文訳語候補リストを生成する(S65)。この後、CPU8は生成した翻訳文訳語候補リストを端末装置1dに送信し(S66)、本処理をステップS61に戻す。
【0083】
上記構成によって、第4の実施形態では、翻訳エンジンを備えない端末装置1dであっても、翻訳装置1Bの翻訳エンジン80によって翻訳を行うことができる。また、このような端末装置1dと翻訳装置1Bの間でチャットを行うことができる。
【0084】
(第5の実施形態)
以下、図16を用いて本発明の第5の実施形態を説明する。図16は、第
5の実施形態にかかる翻訳システム100Aを示す図である。翻訳システム100Aは、第4の実施形態で示した複数の端末装置1dとサーバ20とがインターネットやLAN等であるネットワークNに接続されてなる。端末装置1dは、図13及び図14で示した翻訳処理を実行することでサーバ20に対して翻訳文・逆翻訳文の生成を指示するとともに、訳語候補リストの生成を指示する。サーバ20は、翻訳装置1Bと同様の構成であるため、翻訳エンジン80を備えており、図14で示したような翻訳文等の送信処理を実行して、端末装置1dからの指示に応えて逆翻訳文・翻訳文を生成して翻訳装置1に送信するとともに、訳語候補リストを生成して端末装置1dに送信する。
【0085】
上記構成によって、第5の実施形態では、翻訳エンジン80を備えない端末装置1dであっても、サーバ20の翻訳エンジン80を共用することで、翻訳文及び逆翻訳文を取得して表示することができる。また、このような端末装置1d同士であっても、チャットを行うことができる。
【0086】
本実施形態は、以下の変形例を採用することができる。
【0087】
(1)発明の第1〜第5の実施形態では、入力ウィンドウW1とは別に
変更ウィンドウW2を表示する構成であるが、この構成に限定されない。すなわち、入力ウィンドウW1のみが表示され、この入力ウィンドウW1上にサブウィンドウSW1,SW2が表示され、入力原文の修正や再翻訳文の表示が行われてもよい。
【0088】
(2)本発明の第1〜第5の実施形態では、日本語と英語との間での翻訳を翻訳処理で行う構成であるが、これに限定されず、自然言語を他の自然言語に機械翻訳する構成であればよい。
【0089】
(3)また、本発明の第1〜第5の実施形態では、サブウィンドウSW1,
SW2が表示される構成であるが、必ずしもこの構成に限定されず、サブウィンドウSW1,SW2を表示しない構成であってもよい。この構成では、サブウィンドウSW1が表示されないため、ユーザはサブウィンドウSW1に表示された原文訳語候補リストから1の候補を選択することができない。このため、再翻訳処理部84が、ユーザの訳語候補選択指示に応じて訳語リストから自動的に1の候補を選択する。そして、選択した候補が対応する形態素の訳語として用いられて、翻訳文及び逆翻訳文が再生成される。
【0090】
(4)第1〜第5の実施形態では、原文訳語候補リストから1の候補が選択されて、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文が再生成される構成であるが、これとともに翻訳文訳語候補リストから1の候補が選択されて、逆翻訳文の再生成が行われる構成であってもよい。例えば、原文と逆翻訳文とが不一致である場合に、原文訳語候補リストの訳語候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を行うより前に、不一致の形態素の翻訳文訳語候補リストから自動で訳語候補を順次選択して逆翻訳文の再生成が行われる。このように再生成された逆翻訳文が原文と一致することは、原文と逆翻訳文との不一致が翻訳文から逆翻訳文への誤訳に起因し、原文から翻訳文への誤訳はないことを示す。このため、ユーザは誤訳のない翻訳文を取得することができているため、原文訳語候補リストの訳語候補を用いた翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われない。一方、翻訳文訳語候補リストの候補を用いて再生成された全ての逆翻訳文と原文とが一致しない場合には、原文から翻訳文への誤訳があったことを示す。このため、上述したような翻訳処理を実行することで原文訳語候補リストの訳語候補を用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成が行われる。これによって、自動的に翻訳文の誤訳の有無の判断や、誤訳の修正を行うことができる。
【0091】
(5)また、第1〜第5の実施形態では、原文訳語候補リストが生成され、このリストから1の訳語候補が選択されて、選択された訳語を形態素の訳語として用いて翻訳文等の再生成を行う構成であるが、この他に構文変換の候補が複数ある場合に、これらの候補のリスト(構文候補リスト)が生成される構成であってもよい。この場合には、構文候補リストから1の候補が選択され、この選択された構文で翻訳文や逆翻訳文が再生成される。この構成によれば、語い変換の誤りによる誤訳のみならず構文の変換によって誤訳が生じた場合でも、効果的に翻訳文の誤訳を修正することができる。
【0092】
(6)なお、第1〜第5の実施形態では、翻訳装置1,1B及び端末装置1dは汎用機であっても、専ら翻訳を行うための専用機であってもよい。
【0093】
(7)なお、第1〜第5の実施形態では、ユーザが操作部6を用いて原文を入力しているが、これに限定されない。例えば、翻訳装置1,1Bはユーザの音声を認識する音声認識機能を備え、認識した音声を原文として表示する構成であってもよい。また、マウス62による指示の一部又は全部を音声コマンドでも指示できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1の実施形態にかかる翻訳装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2はこの翻訳装置の表示画面の一例を示す図である。
【図3】翻訳装置に表示される変更ウィンドウW2及びサブウィンドウSW1,SW2を示す図である。
【図4】図1で示す翻訳装置が実行する翻訳処理のフローチャートである。
【図5】図4で示す翻訳処理における変更処理のフローチャートである。
【図6】図1で示す翻訳装置の実行する発音処理のフローチャートである。
【図7】第2の実施形態にかかる変更処理のフローチャートである。
【図8】第3の実施形態にかかる翻訳装置1Bと翻訳装置1B´の外観を示す斜視図である。
【図9】図8で示す翻訳装置が実行する入力原文表示処理のフローチャートである。
【図10】図8で示す翻訳装置が実行する受信翻訳文表示処理のフローチャートである。
【図11】第3の実施形態の変形例にかかる翻訳装置の外観を示す斜視図である。
【図12】第4の実施形態にかかる翻訳システム100を示す図である。
【図13】図12で示す端末装置1dの実行する翻訳処理を示すフローチャートである。
【図14】図13の翻訳処理における変更処理のフローチャートである。
【図15】図12で示す翻訳装置1の実行する翻訳文等送信処理を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施形態にかかる翻訳システム100Aを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1,1B,1B´−翻訳装置(端末装置) 1d−端末装置 3−フラッシュメモリ(登録部) 4−RAM(候補記憶部) 5−表示部 6−操作部 10−通信部(通信部) 81−翻訳文生成部
82−リスト生成部 83−表示制御部(表示処理部) 84,84a−再翻訳処理部 100,100A−翻訳システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、
この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、
原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成するリスト生成部と、
このリストを記憶する候補記憶部と、
ユーザからの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、
を備えたことを特徴とする翻訳装置。
【請求項2】
原文と翻訳文とが不一致である形態素を抽出する抽出処理部を更に備え、 前記再翻訳処理部は、前記抽出処理部によって抽出された形態素のリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の翻訳装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記再翻訳処理部が選択した1の候補の第1自然言語訳に原文の形態素を置き換えて表示する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の翻訳装置。
【請求項4】
前記候補記憶部に記憶されるリストとこのリストの第1自然言語訳を原文の形態素に関連付けて表示する表示処理部を更に備え、
前記再翻訳処理部は、翻訳文及び逆翻訳文の再生成で用いる訳語として、前記操作部で受け付けたユーザの選択操作によって選択された1の候補を前記候補記憶部で記憶されるリストから選択する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項5】
前記操作部でユーザからの登録操作を受け付けた場合に、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とを対応付けて登録する登録部を更に備え、
前記表示処理部は、当初の原文の入力があった場合に、前記登録部に入力された原文と対応付けて登録されている変更後の翻訳文乃至は変更後の原文の訳文を表示する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記操作部によって表示する文章の選択を受け付けた場合に、入力された原文のうち選択された文章の原文と、この原文に対応する翻訳文及び逆翻訳文のみを表示する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項7】
他の装置と通信を行う通信部を更に備え、
前記表示処理部は、
チャットウィンドウを表示し、前記操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文をチャットウィンドウに表示するとともに表示した原文の翻訳文を他の装置に前記通信部を用いて送信し、
前記通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文をチャットウィンドウに表示する、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項8】
操作部及び候補記憶部を備える翻訳装置を、
入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、
この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、
原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成し、前記候補記憶部に記憶するリスト生成部と、
前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されたリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、
して機能させる、ことを特徴とする翻訳プログラム。
【請求項9】
通信ネットワークに複数の端末装置を接続した翻訳システムにおいて、
前記通信ネットワーク上及び前記複数の端末装置の何れかに少なくとも1の翻訳エンジンが配置され、
前記複数の端末装置はこの翻訳エンジンを共用する、ことを特徴とする翻訳システム。
【請求項1】
入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、
この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、
原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成するリスト生成部と、
このリストを記憶する候補記憶部と、
ユーザからの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されるリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、
を備えたことを特徴とする翻訳装置。
【請求項2】
原文と翻訳文とが不一致である形態素を抽出する抽出処理部を更に備え、 前記再翻訳処理部は、前記抽出処理部によって抽出された形態素のリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の翻訳装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記再翻訳処理部が選択した1の候補の第1自然言語訳に原文の形態素を置き換えて表示する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の翻訳装置。
【請求項4】
前記候補記憶部に記憶されるリストとこのリストの第1自然言語訳を原文の形態素に関連付けて表示する表示処理部を更に備え、
前記再翻訳処理部は、翻訳文及び逆翻訳文の再生成で用いる訳語として、前記操作部で受け付けたユーザの選択操作によって選択された1の候補を前記候補記憶部で記憶されるリストから選択する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項5】
前記操作部でユーザからの登録操作を受け付けた場合に、当初の原文と、変更後の翻訳文又は変更後の原文とを対応付けて登録する登録部を更に備え、
前記表示処理部は、当初の原文の入力があった場合に、前記登録部に入力された原文と対応付けて登録されている変更後の翻訳文乃至は変更後の原文の訳文を表示する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記操作部によって表示する文章の選択を受け付けた場合に、入力された原文のうち選択された文章の原文と、この原文に対応する翻訳文及び逆翻訳文のみを表示する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項7】
他の装置と通信を行う通信部を更に備え、
前記表示処理部は、
チャットウィンドウを表示し、前記操作部でユーザからの書き込み指示があったときに、変更前乃至は変更後の原文をチャットウィンドウに表示するとともに表示した原文の翻訳文を他の装置に前記通信部を用いて送信し、
前記通信部で他の装置から翻訳文を受信したときに、この受信した翻訳文をチャットウィンドウに表示する、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の翻訳装置。
【請求項8】
操作部及び候補記憶部を備える翻訳装置を、
入力された第1自然言語の原文を第2自然言語に翻訳した翻訳文を生成するとともに、この翻訳文を第1自然言語に翻訳した逆翻訳文を生成する翻訳文生成部と、
この翻訳文生成部によって生成された翻訳文及び逆翻訳文を原文と対応付けて表示する表示処理部と、
原文の形態素のうち第2自然言語の訳語の候補が複数存在するものについて、その訳語のリストを作成し、前記候補記憶部に記憶するリスト生成部と、
前記操作部で受け付けたユーザからの指示に応じて、前記候補記憶部に記憶されたリストから1の候補を選択し、この選択した訳語を対応する形態素の訳語として用いて翻訳文及び逆翻訳文の再生成を翻訳文生成部に実行させる再翻訳処理部と、
して機能させる、ことを特徴とする翻訳プログラム。
【請求項9】
通信ネットワークに複数の端末装置を接続した翻訳システムにおいて、
前記通信ネットワーク上及び前記複数の端末装置の何れかに少なくとも1の翻訳エンジンが配置され、
前記複数の端末装置はこの翻訳エンジンを共用する、ことを特徴とする翻訳システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−318202(P2006−318202A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139968(P2005−139968)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【出願人】(505173854)
【出願人】(505173865)
【出願人】(505174079)
【出願人】(505173876)株式会社プロジェクト・パル (1)
【出願人】(300089013)株式会社セイコー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【出願人】(505173854)
【出願人】(505173865)
【出願人】(505174079)
【出願人】(505173876)株式会社プロジェクト・パル (1)
【出願人】(300089013)株式会社セイコー (1)
【Fターム(参考)】
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