説明

耐圧痕性の薄いクラウンを持つゴルフクラブへッド

【課題】クラウン表面積の少なくとも約50%が、臨界厚さとほぼ等しいクラウン厚さと関連するように形成された、耐圧痕性クラウンを持つウッド型ゴルフクラブへッドを提供する。
【解決手段】臨界厚さは、全体として、臨界厚さよりも実質的に薄い又は厚いクラウンよりも高い耐圧痕性と関連している。ウッド型ゴルフクラブへッドは、更に、クラウンの臨界半径及び臨界スパンと実質的に等しい半径及びスパンを持つクラウンを有する。このようなウッド型ゴルフクラブへッドは、更に、このような厚さのクラウンについて予想されるよりも驚くほど優れた耐圧痕性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/872,130号の恩恵を主張するものである。
本願は、ウッド型ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
重心の位置(CG)及び慣性モーメントの大きさ等のゴルフクラブへッドの様々な性能パラメータは、クラブへッド内での質量の分布と関連している。クラブへッドの構造的一体性を維持する上で必要とされない材料の形態の質量、即ち自由裁量質量は、これらの性能パラメータを高めることによってゴルフクラブの性能を向上するため、クラブへッド内で再分配してもよい。ゴルフクラブの設計者は、自由裁量質量が大きければ大きい程、特定のゴルフクラブへッド性能特性を得るために全クラブへッド質量を再分配する上での余地が大きくなる。従って、再分配に利用できる自由裁量質量の量を大きくするのが望ましい。
【0003】
ウッド型(即ちドライバー又はフェアウェイウッド)ゴルフクラブへッドは、クラウン、ソール、スカート、及び打撃プレートによって輪郭が形成された中空本体を含む。ウッド型クラブへッドの設計者は、彼等の製品における自由裁量質量を大きくするために様々な方法を実行する。例えば、現在のウッド型クラブへッドは、代表的には、鋼合金、チタニウム合金、及び/又は複合材料で形成されている。これらの材料は、強度/重量比が比較的高く、その結果、薄いクラブへッド壁を形成するのに使用できる。薄壁構造には、とりわけ、大きな自由裁量質量を提供するという利点がある。
【0004】
クラウンの厚さを小さくすることにより、クラウンの質量を低減でき、追加の質量を自由裁量質量としてドライバーへッドの他の部分に再分配できる。しかしながらクラウンの厚さを薄くすると、クラウンがゴルフバッグ内の他のゴルフクラブ等の物体とぶつかったときに損傷を被る(例えば圧痕ができる)可能性が高くなるという問題が生じる。クラウンの圧痕は、外観的に望ましくなく、疲労破壊や亀裂による構造上の問題を生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、耐圧痕性を犠牲にすることなく、大きな自由裁量質量を提供するため、クラウンの厚さを小さくしたウッド型ゴルフクラブへッドが必要とされているということは理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ウッド型ゴルフクラブへッドの例示の実施例は、クラウンの表面積の少なくとも約50%が、臨界厚さと実質的に等しいクラウン厚さと関連するように形成された表面積を持つクラウンを有する。幾つかの例では、臨界厚さは、約0.5mm乃至0.8mmである。別の例では、臨界厚さは、約0.65mmよりも小さい。他の例では、臨界厚さは、約0.62mmよりも小さい。他の例では、臨界厚さは、約0.60mmよりも小さい。追加の例では、クラウンの曲率半径及びスパンは、衝突試験を行った場合のクラウンの平均変形面積がクラウンの表面積の約0.3%よりも小さいように形成されている。幾つかの例では、衝突試験を行った場合の平均変形面積は、クラウンの表面積の約0.3%よりも小さい。他の例では、クラウンの前後方向曲率半径は、約60mm乃至約120mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約60mm乃至約120mmである。他の例では、前後方向曲率半径は、約70mm乃至約110mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約70mm乃至約110mmである。他の例では、前後方向曲率半径は、約80mm乃至約100mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約80mm乃至約100mmである。
【0007】
別の例では、クラウンは、約90mm乃至約120mmの等価のクラウンスパンを有する。幾つかの例では、等価のクラウンスパンは約95mm乃至約110mmである。他の例では、等価のクラウンスパンは、約100mm乃至約105mmである。幾つかの例では、クラウンの弾性率は約10Msi乃至約25Msiである。他の例では、クラウンは金属材料から形成される。
【0008】
ウッド型ゴルフクラブへッドの別の例示の実施例は、ゴルフクラブへッドの前部分に位置決めされた打撃プレートと、この打撃プレートに固定された、ゴルフクラブへッドの上部分に位置決めされた耐衝突性クラウンとを含む。耐衝突性クラウンの少なくとも約50%の厚さが、約0.8mmよりも小さく、ゴルフクラブへッドの重心が、打撃プレートのほぼ幾何学的中心に位置決めされたゴルフクラブへッド原点を通り且つへッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行な平面よりも下に配置される。幾つかの例では、ゴルフクラブへッドの重心は、ゴルフクラブへッド原点を通る平面の約2mm乃至約8mm下方に配置される。追加の例では、耐衝突性クラウンの厚さは、ボール落下試験を行ったとき、クラウンの平均永久変形の表面積がクラウンの表面積の約0.5%よりも小さいような厚さである。幾つかの例では耐衝突性クラウンの少なくとも約60%の厚さが約0.65mmよりも小さい。
【0009】
追加の例では、ゴルフクラブへッドは、更に、ゴルフクラブへッドの底部分に位置決めされたソールと、ゴルフクラブへッドの周囲にソールと耐衝突性クラウンとの間に位置決めされたスカートとを含む。クラウン、スカート、打撃プレート、及びソールがクラブへッドの容積を形成する。ゴルフクラブへッドの総質量は約150g乃至約300gであり、クラブへッド容積は、約300cm3 乃至500cm3 である。幾つかの例では、ゴルフクラブへッドの総質量は約190g乃至約210gであり、クラブへッド容積は、約350cm3 乃至460cm3 である。他の例では、スカートの少なくとも約50%の厚さが約0.65mm乃至約0.8mmである。他の例では、クラウンの前後方向曲率半径、クラウンのヒール−トウ方向曲率半径、及びクラウンのスパンは、クラブへッド容積が実質的に臨界クラウン容積であるように形成される。
【0010】
追加の例では、ソールの少なくとも約50%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmである。幾つかの例では、ソールの少なくとも約55%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmである。他の例では、ソールの少なくとも約60%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmである。他の例では、耐衝突性クラウンの少なくとも約80%の厚さが約0.62mmよりも小さい。幾つかの例では、クラブへッドをアドレスしたときに地面に対して全体に垂直なクラブへッド重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約500kg・mm2 よりも大きい。
【0011】
ウッド型ゴルフクラブへッドの別の実施例は、ゴルフクラブへッドの上部分に位置決めされたクラウンを有する。クラウンの少なくとも約50%の厚さは、約0.65mmよりも小さく、ボール落下試験によるクラウンの平均永久変形の面積は、クラウンの表面積の約0.7%よりも小さい。幾つかの例では、クラウンの表面積は、約8000mm2 乃至約11000mm2 である。他の例では、クラウンの表面積は、約8800mm2 乃至約9200mm2 である。追加の例では、衝突試験でのクラウンの平均永久変形は、クラウンの表面積の約0.5%よりも小さい。別の例では、クラウンの平均永久変形は、クラウンの表面積の約0.3%よりも小さい。他の例では、クラウンの少なくとも約50%の厚さが約0.62mmよりも小さい。幾つかの例では、クラウンの少なくとも約50%の厚
さが約0.60mmよりも小さい。
【0012】
追加の例では、クラブへッドをアドレスしたときに地面に対して全体に垂直なクラブへッド重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約400kg・mm2 乃至約700kg・mm2 である。他の例では、クラブへッド重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約500kg・mm2 乃至約600kg・mm2 である。幾つかの例では、クラブへッド重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約550kg・mm2 乃至約600kg・mm2 である。幾つかの例では、ゴルフクラブへッドのへッド深さは、約70mm乃至約120mmである。幾つかの例では、へッド深さは、約90mm乃至約100mmである。他の例では、ゴルフクラブへッドのへッド高さは、約50mm乃至約80mmである。別の例では、へッド高さは、約60mm乃至約70mmである。幾つかの例では、ゴルフクラブへッドのへッド幅は、約80mm乃至約130mmである。幾つかの例では、へッド幅は、約100mm乃至約110mmである。
【0013】
ウッド型ゴルフクラブへッドの別の例示の例は、ゴルフクラブへッドの前部分に位置決めされた打撃プレートを含む本体と、ゴルフクラブへッドの底部分に位置決めされたソールと、ゴルフクラブへッドの上部分に位置決めされたクラウンと、ゴルフクラブへッドの周囲にソールとクラウンとの間に位置決めされたスカートとを含む。本体は内部キャビティを形成し、へッドは、打撃プレートのほぼ幾何学的中心のところで打撃プレートに位置決めされたゴルフクラブへッド原点を有する。へッド原点は、打撃プレートに対して接線方向であり且つへッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なx軸と、このx軸に対してほぼ垂直であり、へッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なy軸と、x軸及びy軸に対してほぼ垂直なz軸とを含む。クラウンの約81%の厚さが約0.60mmよりも小さく、クラウンの約19%の厚さが約0.8mmよりも大きい。クラウンの等価のクラウンスパンは、約111mmであり、前後方向曲率半径は約85mm乃至約90mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約100mm乃至約120mmである。スカートの厚さは約0.6mm乃至約1.1mmであり、ソールの厚さは約0.8mm乃至約1.2mmである。ゴルフクラブへッドのソール及びスカートは、チタニウム合金から一体の本体として形成されている。クラブへッドの重心は、へッド原点x軸及びへッド原点y軸が形成する平面よりも下に配置されており、Δ1の距離は約14.9mm乃至約16.8mmである。クラブへッドの総へッド質量は約206gであり、へッド容積は約411cm3 であり、原点x軸とほぼ平行な重心x軸を中心とした慣性モーメントは、約219kg・mm2 乃至約255kg・mm2 であり、原点z軸とほぼ平行な重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約384kg・mm2 乃至約391kg・mm2 であり、へッド深さは約102mmであり、へッド高さは約65.5mmであり、へッド幅は約116mmである。
【0014】
ウッド型ゴルフクラブへッドの別の例示の例は、ゴルフクラブへッドの前部分に位置決めされた打撃プレートを含む本体と、ゴルフクラブへッドの底部分に位置決めされたソールと、ゴルフクラブへッドの上部分に位置決めされたクラウンと、ゴルフクラブへッドの周囲にソールとクラウンとの間に位置決めされたスカートとを含む。本体は内部キャビティを形成し、へッドは、打撃プレートのほぼ幾何学的中心のところで打撃プレートに位置決めされたゴルフクラブへッド原点を有する。へッド原点は、打撃プレートに対して接線方向であり、へッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なx軸と、このx軸に対してほぼ垂直であり、へッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なy軸と、x軸及びy軸に対してほぼ垂直なz軸とを含む。クラウンの約82%の厚さが約0.60mmよりも小さく、クラウンの約18%の厚さが約0.8mmよりも大きい。クラウンの等価のクラウンスパンは、約111mmであり、前後方向曲率半径は約85mm乃至約90mmであり、クラウンのヒール−トウ曲率半径は、約110mm乃至約120mmである。スカートの厚さは約0.6mm乃至約0.9mmであり、ソールの厚さは約0.8mm乃至約1.1mmである。ゴルフクラブへッドのソール及びスカートは、チタニウム合金から一体の本体として形成されており、打撃プレートはチタニウム合金から形成されている。クラブへッドの重心は、へッド原点x軸及びへッド原点y軸が形成する平面よりも下に配置されており、Δ1の距離は約18.5mmである。クラブへッドの総へッド質量は約204gであり、へッド容積は約455cm3 であり、原点x軸とほぼ平行な重心x軸を中心とした慣性モーメントは、約259mm2 であり、原点z軸とほぼ平行な重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約416kg・mm2 乃至約421kg・mm2 であり、へッド深さは約109mmであり、へッド高さは約65.7mmであり、へッド幅は約115mmである。
【0015】
ゴルフクラブへッドクラウンの例示の実施例は、所定の厚さを持ち、クラブ外部クラウン表面領域を形成する賦形基体を有する。賦形基体は、前後方向クラウンスパンと、トウ−ヒール方向クラウンスパンと、クラウン前後方向曲率半径と、クラウントウ−ヒール方向曲率半径とを形成する。厚さは、約0.8mmよりも小さく、賦形基体の質量は約36gよりも小さい。賦形基体は、衝突試験で形成されたクラウンの永久変形の平均面積がクラブ外部クラウン表面積の約0.7%よりも小さいように形成されている。幾つかの例では、クラブ外部クラウン表面積は、約8000mm2 乃至約11000mm2 である。他の例では、クラブ外部クラウン表面積は、約9500mm2 乃至約10500mm2 である。別の例では、賦形基体は、衝突試験で形成されたクラウンの永久変形の平均面積が、クラブ外部クラウン表面積の約0.5%よりも小さいように形成されている。追加の例では、賦形基体は、衝突試験で形成されたクラウンの永久変形の平均面積が、クラブ外部クラウン表面積の約0.3%よりも小さいように形成されている。幾つかの例では、賦形基体の約70%乃至約90%の厚さが約0.62mmよりも小さい。他の例では、賦形基体の約80%乃至約85%の厚さが約0.60mmよりも小さい。
【0016】
追加の例では、賦形基体は、金属材料から形成されている。幾つかの例では、賦形基体の弾性率は、約13Msi乃至約20Msiである。他の例では、トウ−ヒール方向スパン及び前後方向スパンは臨界スパンである。幾つかの例では、賦形基体の質量は約30gである。他の例では、トウ−ヒール方向曲率半径及び前後方向曲率半径の少なくとも一方が臨界曲率半径である。
【0017】
ここに開示した技術の以上の及び他の目的、特徴、及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された単数形及び複数形は、本文中で特に明確に指示されていない限り、複数形を含む。更に、「含む」という用語は、「備えている」ということを意味する。
【0019】
本明細書中に説明したシステム、装置、及び方法は、いかなる形であれ制限されるように解釈すべきではない。そうではなく、本開示は、開示の様々な実施例の新規な特徴及び新規でない特徴の全てと、単独で、及び互いの様々な組み合わせ及び副組み合わせで関連している。ここに開示したシステム、方法、及び装置は、任意の特定の特徴及びこれらの特徴の組み合わせに限定されず、また、開示のシステム、方法、及び装置は、一つ又はそれ以上の任意の特定の利点が存在すること、又は問題点が解決されることを必要としない。
【0020】
開示の幾つかの方法の作動を詳細に説明するが、その順序は説明を容易にするためのものであって、以下に説明する特定の用語によって特定の順序が必要とされていない限り、この説明方法には、再構成が含まれるということは理解されるべきである。例えば、順次
説明した作動は、幾つかの場合では、再構成してもよいし、同時に行ってもよい。更に、簡略化を図るため、添付図面には、開示のシステム、方法、及び装置を他のシステム、方法、及び装置と関連して使用するための様々な方法は図示してない。更に、以下の説明は、開示の方法を説明するため、「製造」及び「提供」といった用語をしばしば使用する。これらの用語は、実際に行われる作動を高度に概略に示すものである。これらの用語と対応する実際の作動は、特定の実施例に応じて変化し、当業者が容易に認識できるものである。
【0021】
本開示の装置又は方法に関して本明細書中に説明した作動理論、科学的原理、又は他の理論的説明は、良好な理解を目的として提供されたものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。特許請求の範囲に記載の装置及び方法は、このような作動理論によって説明された方法で機能する装置及び方法に限定されない。
【0022】
[概略説明]
図1乃至図4に示すように、代表的なウッド型(即ちドライバー又はフェアウェイウッド)ゴルフクラブへッド5は、クラウン15、ソール20、スカート25、打撃プレート30、及びホーゼル35によって輪郭が形成された中空本体10を含む。打撃プレート30は、ゴルフボール(図示せず)に打撃を加えるようになった前面即ち打撃面40を形成する。ホーゼル35は、ゴルフクラブシャフト(図示せず)を受け入れるようになったホーゼルボア37を形成する。本体10は、更に、ヒール部分45、トウ部分50、及び後部分55を含む。クラウン15は、ゴルフボールにアドレスするための通常位置で上下方向で見てクラブへッド5の周囲輪郭57の上方に延びており且つ打撃面40の最も上の部分の後方にある、クラブへッド5の上部分と定義される。ソール20は、クラブへッド5の最も下の点から上方に、クラブへッドの最も下の点からクラウン15までの距離の約50%乃至60%延びる、クラブへッド5の下部分であると定義される。スカート25は、打撃面40を除く、トウ部分50から後部分55に亘ってヒール部分45までクラブへッドの周囲輪郭57の真下に延びる、クラウン15とソール20との間のクラブへッド5の側部であると定義される。代表的には立方センチメートル(cm3 )で計測されるクラブへッド5の容積は、クラブへッド5の容積押退け量に等しい。
【0023】
[慣性モーメント]
図5及び図6を参照すると、クラブへッドの慣性モーメントは、代表的には、クラブへッドの重心(CG)80を通って延びる三つの軸線に関して定義される。クラブへッド5がアドレス位置にあるとき、重心z軸CGz−軸85が、CG80を通って地面100に対して全体に垂直方向に延びる。重心x軸CGx−軸90が、CG80を通ってヒールからトウへの方向に全体に打撃面40と平行に且つCGz−軸85に対して全体に垂直方向に延びる。重心y軸CGy−軸95が、CG80を通って前後方向に、CGx−軸90及びCGz−軸85に対して全体に垂直方向に延びる。クラブへッド5がアドレス位置にあるとき、CGx−軸90及びCGy−軸95は、両方とも、地面100に対して全体に水平方向に延びる。CGx−軸90を中心とした慣性モーメント(ICGx )は、以下の方程式から計算できる。
【数1】

【0024】
ここで、yは、クラブへッドのCGxz平面から、無限小質量dmまでの距離であり、zは、クラブへッドのCGxy平面から、無限小質量dmまでの距離である。クラブへッドのCGxz平面は、クラブヘッドのCGx−軸90及びクラブヘッドのCGz−軸85が形成する平面である。CGxz平面は、CGx−軸90及びゴルフクラブヘッドのCG
y−軸95が形成する平面である。
【0025】
CGz−軸85を中心とした慣性モーメント(ICGz )は、以下の方程式から計算できる。
【数2】

【0026】
ここで、xは、クラブへッドのCGyz平面から、無限小質量dmまでの距離であり、yは、クラブへッドのCGxz平面から、無限小質量dmまでの距離である。クラブへッドのCGyz平面は、ゴルフクラブへッドのCGy−軸95及びゴルフクラブへッドのCGx−軸90が形成する平面である。
【0027】
[クラブへッド原点座標系]
クラブへッドの様々な特徴(例えばCG80)の位置を決定できるように、クラブへッド原点座標系を提供してもよい。図7及び図8を参照すると、クラブへッド原点60がクラブへッド5に示してある。クラブへッド原点60は、ほぼ打撃面40の幾何学的中心(即ち、米国ゴルフ協会の「ゴルフクラブへッドの可撓性を計測するための方法」改訂版2.0に定められているように、打撃面40の高さ及び幅の中点の交点)に位置決めされる。
【0028】
へッド原点60を持つへッド原点座標系は、三つの軸線、即ちクラブへッド5がアドレス位置にある場合にへッド原点60を通って地面100に対して全体に垂直方向に延びるz軸65と、へッド原点60を通ってヒールからトウへの方向に全体に打撃面40と平行に且つz軸65に対してほぼ垂直方向に延びるx軸70と、へッド原点60を通って前後方向に全体にx軸70及びz軸65に対してほぼ垂直方向に延びるy軸75とを含む。x軸70及びy軸75は、クラブへッド5がアドレス位置にある場合、両方とも、地面100に対して全体に水平方向に延びる。x軸70は、原点60からクラブへッド5のトウ50まで正方向に延び、y軸75は、原点60からクラブへッド5の後部分55に向かって正方向に延び、z軸65は、原点60からクラウン15に向かって正方向に延びる。
【0029】
[Δ1及びΔ2]
クラブへッドの様々な特徴(例えばCG80)の位置を、更に、ホーゼルボア37を通って軸線方向に延びるシャフト軸線97に対して定めてもよい。Δ1は、CGy−軸95に沿って計測した、CGxz平面と、シャフト軸線97を通過し且つCGz−軸85と全体に平行な平面との間の距離と定義される。Δ2は、CGx−軸90に沿って計測した、CGyz平面と、シャフト軸線97を通過し且つCGy−軸85と全体に平行な平面との間の距離と定義される。
【0030】
[クラブへッドの寸法の定義]
図1及び図2を参照すると、クラブへッド5は、クラブへッド5がアドレス位置にある場合にz軸と平行な軸線に沿って計測した、本体10の表面の最低点と最高点との間の距離と定義される最大高さ(H)と、クラブへッド5がアドレス位置にある場合にy軸と平行な軸線に沿って計測した、本体10の表面の最前点と最後点との間の距離と定義される最大深さ(D)と、クラブへッド5がアドレス位置にある場合にx軸と平行な軸線に沿って計測した、本体10のトウ50の部分とヒール45の部分との間の最大長さ間の所定の距離と定義される最大幅(W)とを有する。
【0031】
[衝突分析の導入]
容積が大きいウッド型ゴルフクラブへッドについては、通常は、クラブへッドの重心を打撃面40の幾何学的中心(即ち、米国ゴルフ協会の「ゴルフクラブへッドの可撓性を計測するための方法」改訂版2.0に定められているように、打撃面の高さ及び幅の中点の交点)よりも下に配置するのが望ましい。クラウン15の厚さを小さくすると、クラブへッドの重心を下げるために再分配してもよい自由裁量質量が増大する。例えば、クラウン面積が約100cm2 のチタニウム合金製の460cm2 のドライバーへッドについて、厚さが約0.8mm程度のクラウンの質量は、代表的には、約36g程度である。クラウン厚さを約0.2mm程度減少することによって、クラウン質量を約9.0g減少でき、この質量をドライバーへッドの他の部分に自由裁量質量の形態で再分配できる。
【0032】
残念なことに、クラウン厚さを小さくすることは望ましくない。これは、代表的には、クラウンが薄ければ薄い程、動いているボール等の物体やゴルフバッグ内の別のゴルフクラブ等とクラウンがぶつかったときに圧痕等の永久的な変形が起こり易いためである。クラウンの圧痕は外観的に望ましくなく、疲労破壊や亀裂による構造上の問題点を生じる場合もある。
【0033】
衝突現象、及びクラウン厚さ等の変化するクラブへッドパラメータがこうした変形に及ぼす効果を分析するのに数値シミュレーション及び実験的試験を使用してもよい。本明細書中に説明した理論的シミュレーション及び実験的試験は、様々なゴルフクラブ形体に基づく。ゴルフクラブへッド形体には、代表的には金属材料から形成された、様々なゴルフクラブ形状及び材料特性を持つゴルフクラブへッドが含まれる。理論的データ及び実験データによれば、特定の種類の薄いゴルフクラブクラウンは、クラウンの圧痕及び他の永久変形に対し、同様の比較的厚いクラウンと比較して予期せぬ抵抗を示すことが示された。驚くべきことに、損傷に対する抵抗を犠牲にすることなく、ゴルフクラブクラウンを、従来のウッド型クラブへッドのクラウンよりも大幅に薄くできる。
【0034】
[衝突の理論的分析/数値分析]
図9を参照すると、ウッド型クラブへッド5のクラウン15が、移動している物体105と(又は移動しているゴルフへッドが別の動いている又は動いていない物体と)、クラウンの衝突位置110でぶつかったとき、クラウン衝突位置の周囲で局所的変形が生じる。このような情況は、一般的には、いわゆる動的負荷と関連している。静的負荷とは異なり、動的負荷が加わったとき、代表的には、全ての衝突エネルギがクラウンの変形に伝えられるわけではない。動的負荷が加わったとき、衝突エネルギは、更に、応力波、(表面波、圧縮波、横波、及び剪断波)を発生し、これらの波がクラウン15を通過する。クラブ衝突位置110の周囲の局所的変形による変形エネルギは、代表的には、圧縮波及び剪断波の形態であり、これは、全衝突エネルギの一部に過ぎない。代表的には、例えば鋼製のボール又は他のゴルフクラブへッド等の物体が衝突したクラウンには、弾性変形及び塑性変形の両方が生じる。弾性変形が生じたクラウンの部分は、衝突後に本質的に元の形態に戻ろうとする。塑性変形は、一般的には、クラウンの永久的な変形であり、衝突後に残る。幾つかの例では、クラウンの永久的な変形を圧痕と呼ぶ。
【0035】
図10は、ゴルフクラブへッドクラウン115の一部及び先が丸い圧子120の断面図である。ABAQUS社のABAQUSソフトウェアを使用し、先が丸い圧子120が衝突位置110でゴルフクラブへッドクラウン115に作用する衝突をシミュレートする。シェルエレメントを使用し、クラウン115を凸状のボウルとして数値モデル化する。クラウン115についての基本的モデル条件は、クラウン厚さ(t)が0.8mm、クラウン曲率半径(R)が127mm、クラウンスパン(S)が90mmである。クラウン材料の基本的モデル条件は、降伏強度が130Ksi、弾性率が15.1Msi、歪硬化係数(n)が0.047であり、これらは全て、ウッド型ゴルフクラブへッドの鋳造に一般的に使用される代表的なTi−6Al−4V合金で代表的な値である。先が丸い圧子120
は表面が剛性の球とモデル化される。先が丸い圧子120についての基本的モデル条件には、圧子の半径(r)が24.1mm及び圧子の密度が約7.8g/cm3 という条件が含まれる。この密度は、ほぼ、多くの一般的な鋼合金の密度である。シミュレーションについての基本的モデルの圧子落下高さ(Q)(即ち、先が丸い圧子120とクラウンの衝突位置110との間の距離)は、1350mmに設定される。
【0036】
降伏を越えるクラウン115の応力−歪関係を以下の方程式を使用してモデル化する。
【数3】

【0037】
ここで、sは応力を表し、eは歪を表し、強度係数は153である。
圧子のパラメータを様々に変化させ、クラウンの形状及びクラウンの材料特性に関するクラウンのパラメータを様々に変化させることによって、シェル型クラウンに剛性圧子を衝突させた場合の幾つかの異なるシミュレーションを行う。詳細には、クラウン曲率半径(Rc)、クラウンスパン(S)、クラウン厚さ(tc)、圧子の半径(r)、圧子の落下高さ(Q)、クラウン材料の降伏強度、及びクラウン材料の弾性率を各々独立して変化させる。この際、残りのパラメータは基本的モデル条件のままである。幾つかの数値シミュレーションの結果を表1乃至表6に概略に示す。これらの表1乃至表6では、クラウンの理論的変形(Dc)は、衝突後のクラウンの衝突位置110での単一の節の最大残留撓み(即ち圧痕深さ)と定義される。圧痕深さは、衝突によるクラブへッドクラウンの永久的な変形を特徴付ける。理論的変形値が大きいということは、座屈等の不安定な条件を示す。これを以下に詳細に説明する。
【0038】
【表1】

【0039】
表1.クラウン厚さが0.8mm、クラウンスパンが90mm、及びクラウン材料の降伏強度が130Ksi、そして弾性率が15.6Msiが場合の、クラウン曲率半径(Rc)の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の半径(r)及び圧子の落下高さ(Q)は、夫々、24.1mm及び1350mmである。
【0040】
【表2】

【0041】
表2.クラウン厚さが0.8mm、クラウン曲率半径が127mm、及びクラウン材料の降伏強度が130Ksi、そして弾性率が15.6Msiの場合の、クラウンスパン(S)の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の半径(r)及び圧子の落下高さ(Q)は、夫々、24.1mm及び1350mmである。
【0042】
【表3】

【0043】
表3.クラウンスパンが90mm、クラウン曲率半径が127mm、及びクラウン材料の降伏強度が130Ksi、そして弾性率が15.6Msiの場合の、クラウン厚さ(tc)の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の半径(r)及び圧子の落下高さ(Q)は、夫々、24.1mm及び1350mmである。
【0044】
【表4】

【0045】
表4.クラウン厚さが0.8mm、クラウンスパンが90mm、クラウン曲率半径が127mm、及びクラウン材料の降伏強度が130Ksi、そして弾性率が15.6Msiの場合の、圧子の半径(r)の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の落下高さ(Q)は、1350mmである。
【0046】
【表5】

【0047】
表5.クラウン厚さが0.8mm、クラウンスパンが90mm、クラウン曲率半径が127mm、及びクラウン材料の降伏強度が130Ksi、そして弾性率が15.6Msiの場合の、圧子の落下高さ(Q)の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の半径(r)は、24.1mmである。
【0048】
【表6】

【0049】
表6.クラウン厚さが0.8mm、クラウンスパンが90mm、クラウン曲率半径が127mmの場合のクラウン材料の降伏強度及び弾性率の関数としてのクラウンの理論的変形(Dc)。圧子の落下高さ(Q)及び圧子の半径(r)は、夫々、1350mm及び24.1mmである。
【0050】
表1乃至表6に示す数値シミュレーションの結果は、クラウンの理論的変形を劇的に増大する臨界クラウンパラメータが、臨界クラウンパラメータ範囲又は移行領域に存在することを示す。例えば、表1、表2、及び表3に示すように、127mm乃至76.2mmの範囲のクラウン曲率半径、90mm乃至60mmの範囲のクラウンスパン、及び0.6mm乃至0.55mmの範囲のクラウン厚さで、クラウンの理論的変形が劇的に増大する
。これとは対照的に、圧子の半径、圧子の落下高さ、クラウン材料の降伏強度、及びクラウン材料の弾性率は、同様の劇的変化をもたらさない。
【0051】
表3に示すように、大幅に増大したクラウンの理論的永久変形は、0.58mm乃至0.57mmの範囲のクラウン厚さで生じる。例えば、厚さが0.58mm及び0.57mmのクラウンについて、クラウンの理論的永久変形は、夫々、0.53mm及び8.87mmである。クラウン厚さの効果は複雑である。これは、この移行範囲よりも上のクラウン厚さでもクラウンの理論的永久変形が増大するためである。例えば、表3に示すように、クラウン厚さが0.8mmよりも大きい場合、クラウンの理論的永久変形は、クラウン厚さが0.6mmである場合よりも大きい。
【0052】
クラウン厚さ移行領域の効果は、クラウンの塑性変形によって散逸する衝突エネルギのパーセンテージと定義される「塑性散逸 (plastic dissipation)」を分析することによっても予想できる。クラウン厚さの関数としての塑性散逸のパーセンテージを図11に示す。ここでは、この他のシミュレーションパラメータは、表3で使用した値と等価である。0.58mmの厚さのクラウンについての塑性散逸のパーセンテージは、約44%であるが、0.57mmの厚さのクラウンについての塑性散逸のパーセンテージは、約39%であるということに着目されたい。比較的薄い0.57mmのクラウンが放散するエネルギが、比較的厚い0.58mmのクラウンよりも小さいが、理論的変形が比較的大きい。
【0053】
数値分析を精密に行えば行う程、代表的な衝突変形プロセスが三つの衝突後段階に分けられることが示唆される。第1段階は、主に衝突位置の周囲の弾性変形を特徴とし、局所的歪レベルが弾性限度よりも全体に低い。図12A及び図12Bは、先が丸い圧子1204の衝突後4ms後の、クラウン厚さが夫々0.57mm及び0.58mmのクラウン1202の一部の図解である。クラウンのスパン、曲率半径、弾性率、及び降伏強度、及び圧子の落下高さ及び半径は、表3の基本的モデル条件と一致する。図12A及び図12Bに示すクラウンの部分は、関連した平面内の歪に基づいて影が付けてある。平面内の正及び負の歪領域が示してある。図12A及び図12Bの両方において、圧子1204を取り囲む暗い領域は、弾性変形と対応する。図12A及び図12Bに示すように、厚さが0.57mmのクラウンは、この第1の衝突後段階では、厚さが0.58mmのクラウンと非常に似た挙動を示す。
【0054】
衝突後の第2段階は、衝突位置を取り囲み且つ衝突位置から離れた高応力/歪領域をクラウンに形成することを特徴とする。こうした領域での局所的歪レベルは、クラウン材料の弾性限度を越えており、代表的には、永久的塑性変形を局所的に形成する。図13A及び図13Bは、衝突後7ms後の、0.57mm及び0.58mmのクラウン厚さの夫々についての、この段階でのクラウンの一部の図解である。図13Aは、圧子1204の周囲の暗いリング状領域1206が、正の平面内歪と関連しており、クラウンの局所的な永久的塑性変形と対応する。厚さが0.58mmのクラウンは、厚さが0.57mmのクラウンと同様の挙動を示すが、厚さが0.58mmのクラウンは、歪レベルが僅かに小さい。厚さが0.58mmのクラウンの局所的歪レベルは、全体として、弾性限度を越えない。図13Bに示すように、リング状領域1208の正の平面内歪は、リング状領域1206での正の平面内歪よりも僅かに小さい。
【0055】
衝突後の第3段階は、衝突位置でクラウンがばねのように戻ることを特徴とする。第2段階での塑性変形の程度に応じて、変形したクラウンの一部がその元の位置にばねのように戻る。変形したクラウンの残りの部分は、永久変形したままであり、圧痕を残す。図14A及び図14Bは、衝突後8ms後の、0.57mm及び0.58mmのクラウン厚さの夫々についての、この段階でのクラウンの一部の図解である。図15A及び図15Bは、衝突後10ms後の、0.57mm及び0.58mmのクラウン厚さの夫々についての
、この段階でのクラウンの一部の図解である。図15Aの暗い領域1210は、クラウンの永久変形を示す。図15A及び図15Bに示すように、厚さが0.57mmのクラウンは、クラウンの理論的永久変形が、厚さが0.58mmのクラウンについて予測されるよりも遥かに高い。逆に、厚さが0.58mmのクラウンについては、変形した領域の大部分がばねのように戻ると予測され、この場合、厚さが0.57mmのクラウンがばねのように戻る態様はかなり小さく、厚さが0.58mmのクラウンと比較して1/17程度である。従って、厚さが0.58mmのクラウン及び厚さが0.57mmのクラウンについて予測されるばね態様の戻りは大きく変化するが、クラウンの厚さの差は、0.01mmと表面的には些細である。
【0056】
図16は、圧子との接触後8ms後の厚さが0.57mmのクラウンの理論的平面内歪を示す。図16に示すクラウン1600の部分を、関連した平面内歪の大きさに基づいて複数の表面エレメントに分割する。中心衝突領域1602と関連した表面エレメント及び周囲領域1604−1608は、約1.13%よりも大きい平面内歪と関連する。領域1604−1608の歪は、衝突領域1602が元の形状に戻るのを阻止するクラウンの永久変形と関連している。図16に示すように、周囲領域1604−1608は、衝突領域1602の周囲に所定の定期的角度をなして配置されている。
【0057】
衝突中心の理論的変形を、図17のグラフに、厚さが異なる四つのクラウンについて、衝突後の時間の関数として示す。0.6mm及び0.8mmのクラウン厚さについては、衝突中心のクラウン材料は、衝突前の元の位置に実質的にばねのように戻る。0.58mmのクラウン厚さについては、7ms後に衝突中心で「ヒステリシス」を生じるが、最終的には、実質的に元の衝突前の位置に戻る。しかしながら、0.57mmのクラウン厚さについては、衝突後7ms後に初期ばね戻り移動から分かれ、永久変形したままとなる。
【0058】
[座屈理論]
コラム座屈理論を使用して上文中に説明した理論的衝突分析を例示する。所与のコラムについて、以下の方程式を使用し、理論的座屈負荷(Pcr)を計算できる。
【数4】

【0059】
ここで、(E)はコラム材料の弾性率であり、(I)は面積慣性モーメントであり、(l)はコラムの長さであり、(K)はコラム端部での自由度で決まる負荷パラメータ定数である。臨界座屈負荷(Pcr)は、変形した形状の曲げモーメントの均衡から、以下の方程式に従って概算される。
【数5】

【0060】
ここで、(M)はコラムの復元曲げモーメントであり、(P)は軸線方向負荷であり、(d)はコラムの横方向撓みである。復元曲げモーメント(M)は、弾性率(E)、面積慣性モーメント(I)、及び横方向撓み(d)の関数である。
【0061】
臨界座屈負荷(Pcr)よりも小さい全ての軸線方向負荷(P)について、コラムの横方向撓み(d)は存在しない。軸線方向負荷(P)が臨界座屈負荷(Pcr)と等しい場合には、均衡状態が存在し、その結果、コラムに有限量の横方向撓み(d)が生じる。軸線方向負荷(P)が臨界座屈負荷(Pcr)よりも大きい場合には、不安定が生じ、コラ
ムの横方向撓み(d)が不確定に増大し、コラムの構造を破損してしまう。臨界座屈負荷(Pcr)は、弾性率(E)、面積慣性モーメント(I)、コラムの長さ(l)、及び負荷パラメータ定数(K)で決まるけれども、臨界座屈負荷はコラム材料の強度とは無関係であるということに着目されたい。
【0062】
コラム座屈理論は、クラウンの変形及び圧痕を理解する上での簡単な骨組みを提供するが、上文中に論じた理論的クラウン圧痕の予測と必ずしも完全に相関しない。コラムの座屈については、臨界負荷(即ち撓み)は、コラムの復元曲げモーメント(M)と、軸線方向負荷(即ちPd)の座屈効果との間のバランスの結果である。クラウン圧痕の形成に適用されたように、パラメータ(例えばクラウンの厚さ、クラウンのスパン、クラウンの曲率半径)の組み合わせが存在し、任意の一つのパラメータが臨界値以下であると、復元力が、代表的には、加えられた負荷による変形を補償するには不十分となる。この臨界値は、衝突点(図12乃至16参照)の周囲の別個の位置での塑性散逸のいきなりの変化(図11参照)及び塑性歪エネルギの集中と同時に生じる場合もある。
【0063】
[実験的試験]
他の物体との衝突に対するクラウンの応答は、いわゆる衝突試験を使用して実験的に特徴を定めることができる。衝突試験は、一般的には、所定の質量、形状、及び大きさの試験体を、選択された高さからゴルフクラブクラウンに落下させることによって行われる。別の態様では、試験体及びクラウンが所定の相対的衝突速度で衝突するように、試験体及び/又はクラブへッド又はクラウンを所定速度まで加速してもよい。
【0064】
代表的な例では、衝突試験は、便利には、ボールをゴルフクラブへッドのクラウンの少なくとも一つの衝突位置に落下させる「ボール落下試験」として実施される。特定のボール落下試験では、直径が約48mmの鋼球を約1.3mの高さからゴルフクラブへッドのクラウンの幾つかの衝突位置に落下させる。結果的に形成された圧痕即ちクラウンの永久変形を計測し、様々な衝突位置での圧痕の直径を平均し、圧痕の代表的な又は平均的な直径を決定する。ボール落下試験は、クラウンの変形をクラウンのスパン、湾曲、厚さ、又は他のクラウンパラメータの関数として決定するのに使用してもよいし、臨界的厚さ、スパン、湾曲、及び容積を決定するのに使用してもよい。
【0065】
一般的には、クラウンの代表的な永久変形は、ほぼ円形であり、変形の直径及び深さに基づいて特徴を定めることができる。代表的には、最大変形深さの約半分の深さを使用し、変形直径を決定する。他の例では、変形は、楕円形、長円形、又は他の形状を備えており、一つ又はそれ以上の軸線に沿った変形距離に基づく方向性のある直径を特徴とし、又は変形面積が実質的に同じ円形の変形と対応して決定できる有効直径を決定できる。変形直径は、最大変形深さの約5%、10%、又は25%の深さに基づいて概算でき、又は視覚的外観に基づくことができる。クラウンの変形は、一般的には、実質的に完成したウッド型ゴルフクラブへッドを形成するようにクラブへッドスカート及び打撃面に固定されたクラウンとの衝突に基づいて計測され又は概算される。代表的には、ウッド型ゴルフへッドは、金属材料から形成される。
【0066】
三つの異なるウッド型ゴルフクラブ形体、即ち試験クラブ形体A、B、及びCに衝突試験を行う。これらのクラブ形体の詳細は、以下の表7に簡単に記載してある。全ての試験クラブ形体は、降伏強度が135Ksiで弾性率が16Msiの材料で形成されている。各形体の幾つかの異なる試料を試験した。各試料はクラウンの厚さが異なる。
【0067】
【表7】

【0068】
表7.実験的クラウン衝突試験で使用する試験クラブ形体
クラウンの表面積(A)は、クラブBの外面で計測したクラウンの総表面積と定義される。以下の方程式から、等価のクラウンスパン(Seq)を計算する。
【数6】

【0069】
図19に示すように、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)は、クラブの原点を通るy軸75及びクラブの原点を通るz軸65が定義する平面に沿って計測した、クラウンの平均的曲率半径と定義される。図20に示すように、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)は、クラブの原点を通るx軸70及びクラブの原点を通るz軸65が定義する平面と平行であり且つ本体10の表面の最前点と最後点との間のほぼ中間の(即ち、本体10の表面の最前点からの最大深さ(D)のほぼ半分と等しい距離のところにある)平面に沿って計測した、クラウンの平均的曲率半径と定義される。
【0070】
試験クラブ形体A、B、及びCに実施した実験的試験には、ボール落下試験が含まれる。試験は、直径が約48mmの鋼球を約1.3mの高さから各クラブへッドのクラウンに落下させることによって行われる。落下を、図18に示す6個のクラウン衝突位置の各々で一回づつ6回行う。図示のように、6個の衝突位置は、クラウンに亘って分配されており、クラブへッドの幾何学的中心60と整合しており、離間距離(B)は約25mmに等しい。各衝突位置について、クラウンの厚さ、及び圧痕の平均直径と定義される実験によるクラウンの変形を記録する。
【0071】
【表8】

【0072】
表8.試験クラブ形体Aについての、クラウンの厚さの関数としての、実験によるクラウンの変形。試験を行ったクラウンの各々の約80%が、表示のクラウン厚さを有する。
【0073】
【表9】

【0074】
表9.試験クラブ形体Bについての、クラウンの厚さの関数としての、実験によるクラウンの変形。試験を行ったクラウンの各々の約85%が、表示のクラウン厚さを有する。
【0075】
【表10】

【0076】
表10.試験クラブ形体Cについての、クラウンの厚さの関数としての、実験によるクラウンの変形。試験を行ったクラウンの各々の約85%が、表示のクラウン厚さを有する。
試験クラブA、B、及びCに実施したボール落下試験についての実験によるクラウンの永久変形を表8、9、及び10に示す。実験によるクラウンの変形は、クラウンの理論変形とは異なる態様で定義され、衝突後のz軸方向での最大残留撓みと定義される。更に、永久変形は、表8乃至10において、クラウン表面積に対する、圧痕の平均直径から決定される圧痕面積の比によって特徴付けられる。
【0077】
実験によるクラウンの変形と、クラウンの理論的変形は定義が異なるけれども、実験によるクラウンの変形の値と、クラウンの理論的変形値を比較し、圧痕深さ(クラウンの理論的変形で使用されるような)と、圧痕直径(実験によるクラウンの変形で使用されるような)とを相関させることができる。例えば、表8乃至10の実験によるクラウンの変形の値は、更に、クラウンのかなり大きな圧痕損傷が観察されるクラウンの臨界厚さ範囲又は移行範囲が存在するということを示す。このような移行領域は、表1乃至表6に示すクラウンの変形の理論的データに基づいて予測される。実験は、更に、表1乃至表6に示すクラウンの変形の理論的データに示すように、クラウンが厚ければ厚い程、被る圧痕損傷が薄いクラウンよりも大きいということを示す。
【0078】
[検討]
上文中に論じた理論的分析及び実験結果は、ウッド型ゴルフクラブへッドのクラウンの厚さ、クラウンのスパン、及びクラウンの曲率半径の所与の組み合わせについて、これらのパラメータに対して臨界値が存在することを示唆する。臨界値は、代表的には、特定のクラウン形状が与えられた場合の、動的負荷(即ち衝突)によるクラウンの曲げ又は座屈と、初期衝突変形からばねをなして戻るクラウンの性能との間のバランスを示す。
【0079】
例えば、ゴルフクラブクラウンの臨界厚さは、この厚さについてのクラウンの変形直径、変形深さ、変形表面積、及びクラウンの変形の大きさと関連した他のパラメータが、僅かに厚い又は薄い実質的に同様のクラウンについての対応する値よりも、全体として小さい、厚さである。臨界厚さは、一般的には、前後方向及びトウ−ヒール方向の両方向でのクラウンのスパン及びクラウンの曲率半径の関数である。臨界厚さは、便利には、ボール落下試験等の衝突試験に基づいて概算できる。例えば、代表的な臨界厚ボール落下試験では、臨界厚さは、クラウンの厚さを変化させることによって決定される。この際、スパンや曲率半径等の他のクラウンパラメータは一定に保持される。この種のボール落下試験は、クラウンの所定の曲率半径及びスパンについて、圧痕直径又はクラウンの変形をクラウンの厚さの関数として決定する。臨界厚さは、代表的には、ボール落下試験での圧痕の直径及び深さを大幅に小さくし、厚さを僅かに増減することにより大きな変形を生じるクラウンの厚さとして決定される。別の態様では、臨界厚さは、クラウンの厚さの関数としての塑性散逸のパーセンテージのいきなりの変化に対応するものとして理論的に決定できる。
【0080】
臨界厚さを持つクラウンは、代表的には、クラウンの永久変形に対して抵抗し、クラブへッド設計について再分配できる大きな質量を提供できる。臨界厚さ範囲は、臨界厚さを含む厚さの範囲であり、臨界厚さの±0.2mm、±0.1mm、±0.05mm、±0.02mm、又は±0.01mm内の厚さである。臨界厚さ範囲は、必ずしも臨界厚さを中心として対称でない。例えば、臨界厚さ範囲は、臨界厚さ−0.2mm乃至+0.05mmの範囲であってもよく、この他の非対称範囲は、上掲の対称範囲限度に基づいていてもよい。厚さが臨界厚さ範囲内のゴルフクラブクラウンのことを、本明細書中、臨界厚さと等価の厚さを持つクラウンと呼ぶ。
【0081】
臨界クラウン容積は、クラウンの選択された曲率半径、厚さ、及びスパンの値と関連したクラウン容積であり、クラウンの変形は、パラメータの値がこれらと僅かに異なるクラウンについての変形よりも小さい。臨界クラウン容積と関連したクラウンの曲率半径、厚さ、及びスパンのうちの任意の一つが変化すると、ボール落下試験等の衝突試験で生じるクラウンの永久変形の大きさが大幅に増大する。所定範囲の臨界クラウン容積と関連した容積を持つゴルフクラブクラウンは、衝突に応じた変形が小さいことを特徴とし、厚さ、曲率半径、スパン等の一つ又はそれ以上の臨界クラウンパラメータ又はこれらのパラメータの範囲に基づく所定範囲の臨界クラウン容積と関連した容積を持つゴルフクラブクラウンを、本明細書中、臨界クラウン容積と等価の容積を持つクラウンと呼ぶ。
【0082】
ゴルフクラブクラウンの臨界スパンは、スパンが僅かに異なる実質的に同様のクラウンよりもクラウンの変形が、全体として、大幅に小さいクラウンスパンである。スパンが臨界スパンよりも大きいゴルフクラブクラウンを、本明細書中、臨界スパンと等価のスパンを持つという。代表的には、臨界スパンは、約3mmを越えない変形深さと関連しており、クラウンのスパンが臨界スパンよりも約1mm大きくなると、変形深さは、約0.05mm、0.1mm、又は0.2mm増大する。臨界スパンは、厚さ及び曲率半径を一定に保持したままクラウンのスパンを変化させてボール落下試験を実施することによって決定してもよい。
【0083】
ゴルフクラブクラウンの臨界曲率半径は、その曲率半径のクラウンの全体としての変形が、曲率半径が小さい実質的に同様のクラウンよりも大幅に小さい、クラウン曲率半径である。クラウン臨界曲率半径は、ヒール−トウ方向での臨界曲率半径であってもよいし、前後方向での臨界曲率半径であってもよく、又はクラウンの平均的曲率半径であってもよい。代表的には、臨界曲率半径は、約3mmよりも小さい変形深さと関連しており、この変形深さは、クラウン曲率半径が約1mm増大すると、約0.4mm、0.5mm、又は0.6mm減少する。本明細書中、曲率半径が臨界曲率半径よりも小さいゴルフクラブク
ラウンを、臨界曲率半径と等価の曲率半径を持つという。臨界曲率半径は、厚さ及びスパンを一定に保持したまま、曲率半径を変化させたボール落下試験を行うことによって決定してもよい。
【0084】
耐衝撃性クラウンは、クラウンの永久変形に抵抗するゴルフクラブクラウンである。衝突試験を加えたとき、耐衝撃性クラウンには、一般的には、問題とならない程小さい代表的な大きさの圧痕しか形成されない。例えば、ボール落下試験によって決定された圧痕の平均的な大きさは、このような圧痕がゴルフクラブへッドの外観に現れない場合、又はゴルフクラブへッドの機能を損なわない場合には、十分に小さいものと考えられる。一般的には、直径が約48mmの鋼球を約1.3mの高さからクラウンに落下させるボール落下試験によって決定した、変形と関連した表面積のクラウンの表面積に対する比が、約0.010、0.006、0.002、0.001、0.0005、又は0.0005よりも小さい場合には、平均的な圧痕又は変形は受容可能である。特定のクラウンの変形に対する抵抗は、例えば、クラウンのスパン、クラウンの厚さ、又はトウ−ヒール方向、前後方向、又は他の方向でのクラウンの曲率半径で決まる。
【0085】
衝突試験に基づくクラウンの評価は、例えば、試験体の質量、大きさ、及び相対的衝突速度で決まるけれども、衝突試験に基づいて決定される臨界値は、正確な衝突試験パラメータに対する変化が驚く程低くなりがちである。例えば、上掲の表5に示すように、落下高さが大きくなると、圧痕の大きさ即ちクラウンの永久変形が大きくなる傾向があるが、落下高さを倍にしてもクラウンの変形の増大はほんの僅かであり、約0.62mmから約0.69mmになるに過ぎない。直径が35.6mm乃至55.8mmの試験体を1m乃至2mの高さから落下した場合の代表的な圧痕直径の変化は、約10%に過ぎない。従って、試験体の半径及び落下高さの条件を僅かに変化させて実施したボール落下試験(又は他の衝突試験)により、僅かに異なる代表的な又は平均的な圧痕直径が決定されるが、このような変化は、臨界厚さ、臨界容積、又はクラウンの臨界曲率半径の概算値を大きくは変化させない。本開示における便宜のため、衝突試験は、半径が15mm乃至50mmの試験体を用いた約0.5m乃至約3mのボール落下試験(又は関連した試験体/クラウン相対速度)に基づく。
【0086】
[クラブへッドの第1例]
幾つかの実施例において、クラウン、ソール、スカート、及び打撃プレートは、一つ又はそれ以上の金属材料から、従来の鋳造技術(例えば遠心式インベストメント鋳造法)、常温成形及び/又は鍛造を使用して形成されていてもよい。金属材料は、様々な鋼合金(例えば、炭素鋼(1020、8620)、ステンレス鋼(304、410)、PH合金(17−4、C450、C455))及び/又はチタニウム合金(例えば、α/近α(3−2.5)、α−β(6−4、SP700)β/近β(15−3−3−3、10−2−3))から選択されてもよい。別の態様では、クラウン、ソール、スカート、及び打撃プレートは、ガラスファイバ強化ポリマー(GFRP)、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)、金属母材複合材料(MMC)、及び/又はセラミック母材複合材料(CMC)等の一つ又はそれ以上の複合材料から形成されていてもよい。ゴルフクラブへッドのクラウン、ソール、及びスカートを一体の本体として形成し、打撃プレートを、プラズマ溶接、レーザー溶接、又は接着剤結合等の様々な手段によって一体の本体に取り付けてもよい。
【0087】
幾つかの実施例では、クラウンは、クラウンの約60%乃至100%の厚さが約0.65mmであり、クラウンの表面積が約8000mm2 乃至約11000mm2 であり、等価のクラウンのスパンが約90mm乃至約120mmであり、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)が約60mm乃至約120mmであり、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)が約60mm乃至約120mmであり、クラウンを形成する材料の弾性率が約13Msi乃至約20Msiである。更に好ましくは、クラウンは、クラウンの約70%乃
至約90%の厚さが約0.62mmよりも小さく、クラウンの表面積が約8600mm2 乃至約10000mm2 であり、等価のクラウンのスパンが約95mm乃至約110mmであり、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)が約70mm乃至約110mmであり、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)が約70mm乃至約110mmであり、クラウンを形成する材料の弾性率が約14Msi乃至約18Msiであるように形成されていてもよい。最も好ましくは、クラウンは、クラウンの約80%乃至約85%の厚さが約0.60mmよりも小さく、クラウンの表面積が約8800mm2 乃至約9200mm2 であり、等価のクラウンのスパンが約100mm乃至約105mmであり、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)が約80mm乃至約100mmであり、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)が約80mm乃至約100mmであり、クラウンを形成する材料の弾性率が約15Msi乃至約16Msiであるように形成されていてもよい。
【0088】
幾つかの実施例では、クラブへッドは、スカートの少なくとも約50%の厚さが、約0.65mm乃至約0.8mmであり、ソールの少なくとも約50%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmであるように形成されていてもよい。更に好ましくは、クラブへッドは、スカートの少なくとも約60%の厚さが、約0.65mm乃至約0.8mmであり、ソールの少なくとも約55%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmであるように形成されていてもよい。最も好ましくは、クラブへッドは、スカートの少なくとも約70%の厚さが、約0.65mm乃至約0.8mmであり、ソールの少なくとも約60%の厚さが、約0.85mm乃至約1.1mmであるように形成されていてもよい。
【0089】
幾つかの実施例では、クラブへッドの総質量は、約150g乃至約300gであり、クラブへッドの容積は、約300cm3 乃至約500cm3 であり、CGx−軸を中心とした慣性モーメント(ICGx) は、約300kg・mm2 乃至約450kg・mm2 であり、CGz−軸を中心とした慣性モーメント(ICGz) は、約400kg・mm2 乃至約700kg・mm2 であり、Δ1は約10mm乃至約30mmであり、クラブへッドの重心は、へッド原点x軸70及びへッド原点y軸75が形成する平面の下方約0mm乃至約10mmのところに配置されており、へッド深さ(D)は約70mm乃至120mmであり、へッド高さ(H)は約50mm乃至80mmであり、へッド幅(W)は約80mm乃至130mmである。更に好ましくは、クラブへッドの総質量は、約170g乃至約250gであり、クラブへッドの容積は、約320cm3 乃至約480cm3 であり、CGx−軸を中心とした慣性モーメント(ICGx) は、約325kg・mm2 乃至約425kg・mm2 であり、CGz−軸を中心とした慣性モーメント(ICGz) は、約500kg・mm2 乃至約600kg・mm2 であり、Δ1は、約15mm乃至約26mmであり、クラブへッドの重心は、へッド原点x軸70及びへッド原点y軸75が形成する平面の下方約2mm乃至約8mmのところに配置されており、へッド深さ(D)は約80mm乃至110mmであり、へッド高さ(H)は約55mm乃至75mmであり、へッド幅(W)は約90mm乃至120mmである。最も好ましくは、クラブへッドの総質量は、約190g乃至約210gであり、クラブへッドの容積は、約350cm3 乃至約460cm3 であり、CGx−軸を中心とした慣性モーメント(ICGx) は、約350kg・mm2 乃至約400kg・mm2 であり、CGz−軸を中心とした慣性モーメント(ICGz) は、約550kg・mm2 乃至約600kg・mm2 であり、Δ1は、約18mm乃至約22mmであり、クラブへッドの重心は、へッド原点x軸70及びへッド原点y軸75が形成する平面の下方約5mm乃至約7mmのところに配置されており、へッド深さ(D)は約90mm乃至100mmであり、へッド高さ(H)は約60mm乃至70mmであり、へッド幅(W)は約100mm乃至110mmである。
【0090】
[クラブへッドの第2例]
別の実施例では、ゴルフクラブへッドのクラウン、ソール、及びスカートは、遠心式インベストメント鋳造法によって、Ti−6Al−4V合金から、一体の本体として形成さ
れる。打撃プレートは、常温圧延によって形成されたTi−6Al−4V合金プレートであり、一体の本体にプラズマ溶接によって取り付けられる。クラウンは、クラウンの約81%の厚さが約0.6mm又はそれ以下であり、クラウンの約19%の厚さが約0.8mmと等しいか或いはそれ以上であるように形成される。スカートは、スカートの厚さが約0.6mm乃至約1.1mmであるように形成される。ソールは、ソールの厚さが約0.8mm乃至約1.2mmであるように形成される。クラウンは、クラウンの表面積(A)が約9650mm2 であり、等価のクラウンのスパン(Seq)が約111mmであり、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)が約85mm乃至約90mmであり、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)が約100mm乃至約120mmである。ゴルフクラブへッドの総質量は、約206gであり、約411cm3 のへッド容積を形成する。ゴルフクラブへッドのCGx−軸を中心とした慣性モーメント(ICGx) は、約219kg・mm2 乃至約255kg・mm2 であり、CGz−軸を中心とした慣性モーメント(ICGz) は、約384kg・mm2 乃至約391kg・mm2 であり、Δ1は、約14.9mm乃至約16.8mmであり、ゴルフクラブへッドの重心は、へッド原点x軸70及びへッド原点y軸75が形成する平面の下方に配置されている。ゴルフクラブへッドのへッド深さ(D)は約102mmであり、へッド高さ(H)は約65.5mmであり、へッド幅(W)は約116mmである。
【0091】
[クラブへッドの第3例]
別の実施例では、ゴルフクラブへッドのクラウン、ソール、及びスカートは、遠心式インベストメント鋳造法によって、Ti−6Al−4V合金から、一体の本体として形成される。打撃プレートは、常温圧延によって形成されたTi−6Al−4V合金プレートであり、一体の本体にプラズマ溶接によって取り付けられる。クラウンは、クラウンの約82%の厚さが約0.6mm又はそれ以下であり、クラウンの約18%の厚さが約0.8mmと等しいか或いはそれ以上であるように形成される。スカートは、スカートの厚さが約0.6mm乃至約0.9mmであるように形成される。ソールは、ソールの厚さが約0.8mm乃至約1.1mmであるように形成される。クラウンは、クラウンの表面積(A)が約10285mm2 であり、等価のクラウンのスパン(Seq)が約114mmであり、クラウンの前後方向曲率半径(RFB)が約85mm乃至約90mmであり、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径(RTH)が約110mm乃至約120mmである。ゴルフクラブへッドの総質量は、約204gであり、約455cm3 のへッド容積を形成する。ゴルフクラブへッドのCGx−軸を中心とした慣性モーメント(ICGx) は、約259kg・mm2 であり、CGz−軸を中心とした慣性モーメント(ICGz) は、約416kg・mm2 乃至約421kg・mm2 であり、Δ1は、約18.5mmであり、ゴルフクラブへッドの重心は、へッド原点x軸70及びへッド原点y軸75が形成する平面の下方に配置されている。ゴルフクラブへッドのへッド深さ(D)は約109mmであり、へッド高さ(H)は約65.7mmであり、へッド幅(W)は約115mmである。
【0092】
開示の原理を適用できる多くの可能な実施例に鑑みると、例示の実施例は単なる例であって、開示の発明の範囲を限定するものと考えられてはならないということは理解されるべきである。特許請求の範囲及びその精神内の全ての事項を特許請求する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、ウッド型ゴルフクラブへッドを側方から見た斜視図である。
【図2】図2は、ウッド型ゴルフクラブへッドを前方から見た斜視図である。
【図3】図3は、ウッド型ゴルフクラブへッドを上方から見た斜視図である。
【図4】図4は、ウッド型ゴルフクラブへッドを後方から見た斜視図である。
【図5】図5は、ゴルフクラブへッドの重心座標系を示す、ウッド型ゴルフクラブへッドを前方から見た斜視図である。
【図6】図6は、ゴルフクラブへッドの重心座標系を示す、ウッド型ゴルフクラブへッドを上方から見た斜視図である。
【図7】図7は、ゴルフクラブへッドの座標系の原点を示す、ウッド型ゴルフクラブへッドを前方から見た斜視図である。
【図8】図8は、ゴルフクラブへッドの座標系の原点を示す、ウッド型ゴルフクラブへッドを上方から見た斜視図である。
【図9】図9は、ウッド型ゴルフクラブへッド及び先が丸い圧子を側方から見た斜視図である。
【図10】図10は、ゴルフクラブへッドクラウンの一部及び丸い圧子の断面図である。
【図11】図11は、クラウンの厚さの関数としての弾性散逸のパーセンテージのプロットを示すグラフである。
【図12A】図12Aは、先が丸い圧子との接触後4ms後の厚さが0.57mmのクラウンの一部の図である。
【図12B】図12Bは、先が丸い圧子との接触後4ms後の厚さが0.58mmのクラウンの一部の図である。
【図13A】図13Aは、先が丸い圧子との接触後7ms後の厚さが0.57mmのクラウンの一部の図である。
【図13B】図13Bは、先が丸い圧子との接触後7ms後の厚さが0.58mmのクラウンの一部の図である。
【図14A】図14Aは、先が丸い圧子との接触後8ms後の厚さが0.57mmのクラウンの一部の図である。
【図14B】図14Bは、先が丸い圧子との接触後8ms後の厚さが0.58mmのクラウンの一部の図である。
【図15A】図15Aは、先が丸い圧子との接触後10ms後の厚さが0.57mmのクラウンの一部の図である。
【図15B】図15Bは、先が丸い圧子との接触後10ms後の厚さが0.58mmのクラウンの一部の図である。
【図16】図16は、厚さが0.57mmのクラウンの一部の永久変形の図である。
【図17】図17は、四つの異なる値のクラウンの厚さについての、衝突の中心でのクラウンの撓みの、衝突後の時間に対するグラフである。
【図18】図18は、クラウン衝突位置が六個ある、ウッド型ゴルフクラブへッドを上方から見た斜視図である。
【図19】図19は、クラウンの前後方向曲率半径を示す、ウッド型ゴルフクラブへッド本体の断面図である。
【図20】図20は、クラウンのトウ−ヒール方向曲率半径を示す、ウッド型ゴルフクラブへッド本体の断面図である。
【符号の説明】
【0094】
5 ウッド型ゴルフクラブへッド
10 中空本体
15 クラウン
20 ソール
25 スカート
30 打撃プレート
35 ホーゼル
37 ホーゼルボア
40 打撃面
45 ヒール部分
50 トウ部分
55 後部分
57 周囲輪郭
80 重心
100 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記ゴルフクラブへッドの前部分に位置決めされた打撃プレートと、前記ゴルフクラブへッドの底部分に位置決めされたソールと、前記打撃プレートに固定され、耐衝突性で自己支持性のクラウンであって、前記ゴルフクラブへッドの上部分に位置決めされたクラウンと、前記ゴルフクラブへッドの周囲に前記ソールと前記クラウンとの間の位置決めされたスカートとを含む本体を有し、
前記本体は、内部キャビティを形成し、
前記へッドは、前記打撃プレートのほぼ幾何学的中心に位置決めされたゴルフクラブへッド原点を前記打撃プレートに有し、前記へッド原点は、前記打撃プレートに対して接線方向であり且つ前記へッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なx軸と、該x軸に対してほぼ垂直であり且つ前記へッドがアドレス位置にあるときに地面とほぼ平行なy軸と、前記x軸及び前記y軸と実質的に垂直なz軸とを含み、
前記耐衝突性で自己支持性のクラウンの少なくとも約60%の厚さが約0.65mm以下であり、
ゴルフクラブへッドの重心は、前記打撃プレートのほぼ幾何学的中心に位置決めされたゴルフクラブへッドの原点を通過し且つ前記へッドがアドレス位置にある場合に地面とほぼ平行な平面よりも下に配置されている、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項2】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記耐衝突性で自己支持性のクラウンの少なくとも約70%の厚さが約0.62mmよりも小さい、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項3】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記耐衝突性クラウンの少なくとも約80%の厚さが約0.62mmよりも小さい、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項4】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記耐衝突性クラウンの少なくとも約80%の厚さが約0.60mmよりも小さい、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項5】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記ゴルフクラブへッドは、更に、
前記ゴルフクラブへッドの底部分に位置決めされたソールと、
前記ゴルフクラブへッドの周囲に前記ソールと前記耐衝突性で自己支持性のクラウンとの間に位置決めされたスカートとを含み、
前記クラウン、前記スカート、前記衝突プレート、及び前記ソールがクラブへッド容積を形成し、
前記ゴルフクラブへッドの総質量は、約190g乃至約210gであり、前記クラブへッド容積は、約350cm3 乃至460cm3であり、
前記ゴルフクラブへッドの重心は、前記ゴルフクラブへッド原点を通る平面の約2mm乃至約8mm下方に配置されており、
クラブへッドをアドレスしたときに地面に対してほぼ垂直なクラブへッド重心z軸を中心とした慣性モーメントは、約500kg・mm2 よりも大きい、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項6】
請求項5に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記スカートの少なくとも約50%の厚さが約0.65mm乃至約0.8mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項7】
請求項5に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記ソールの少なくとも約60%の厚さが約0.85mm乃至約1.1mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項8】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記クラウンの表面積は、約8000mm2 乃至約11000mm2 である、ウッド型
ゴルフクラブへッド。
【請求項9】
請求項2に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記クラウンの表面積は、約8800mm2 乃至約10000mm2 である、ウッド型
ゴルフクラブへッド。
【請求項10】
請求項4に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、
前記クラウンの表面積は、約8800mm2 乃至約9200mm2 である、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項11】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前記クラウンの等価のクラウンスパンは、約90mm乃至約120mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項12】
請求項2に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前記クラウンの等価のクラウンスパンは、約95mm乃至約110mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項13】
請求項4に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前記クラウンの等価のクラウンスパンは、約100mm乃至約105mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項14】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前後方向曲率半径は約60m乃至約120mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約60mm乃至約120mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項15】
請求項2に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前後方向曲率半径は約70m乃至約110mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約70mm乃至約110mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項16】
請求項4に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前後方向曲率半径は約80m乃至約110mmであり、ヒール−トウ曲率半径は、約80mm乃至約110mmである、ウッド型ゴルフクラブへッド。
【請求項17】
請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブへッドにおいて、前記ゴルフクラブへッドの前記ソール及び前記スカートは、チタニウム合金から一体の本体として形成されている、ウッド型ゴルフクラブへッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−259826(P2010−259826A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−163681(P2010−163681)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【分割の表示】特願2007−310356(P2007−310356)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(502330377)テイラー メイド ゴルフ カンパニー, インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】