説明

耐引き裂きガイドワイヤシャフト付き迅速交換カテーテル

血管から塞栓性デブリを吸引するための迅速交換型カテーテルは、長尺の吸引チューブと、吸引チューブの最遠位部の横に取り付けられた比較的短いガイドワイヤチューブとを備える。ガイドワイヤチューブの近位部が、引張解放部を画成している。一実施形態において、引張解放部は、吸引チューブから分離した状態に形成される。別の実施形態において、引張解放部は、吸引チューブに最小限に付着されており、ガイドワイヤチューブを吸引チューブから引き離すのに十分な横方向の力が加わったときに、吸引チューブから外れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管から血栓性、アテローム動脈硬化性、またはその他の粒状塞栓性デブリを吸引するための吸引カテーテルに関し、当該装置は、伏在静脈グラフト、心臓、頭部並びに頚部内の動脈、およびそれらに類似した血管内における吸引に特に適しているものである。
【背景技術】
【0002】
人の血管は、血管の血液輸送容量を減少させるプラークや血栓やその他の沈着物、塞栓またはその他の物質によって、しばしば閉塞されたり完全にブロックされる。循環系の重要な箇所で血流遮断が起こると、重篤で永久的な損傷が生じたり、或いは死に至ることさえあり得る。これを防止するため、大きな閉塞が検出されたときは、通常、何らかの形の医学的介入が行われる。
【0003】
血管の閉塞の重大な例が冠動脈症であり、それは先進国に共通な疾患であるとともに合衆国における主要な死因でもある。心臓へのダメージ或いは心臓の機能不全は、心臓に血液を輸送する冠動脈の狭窄または閉塞によって引き起こされる。冠動脈は最初に狭窄を起こし、やがてプラークによって完全に閉塞されることがあるが(アテローム動脈硬化症)、その状態は、プラークの粗くなった表面への、或いはプラークにより引き起こされる渦流中での血栓(血餅)形成によって一層複雑になることがある。冠動脈のアテローム動脈硬化症、特にアテローム斑を覆うかまたはそれに接する閉塞性または近閉塞性血栓は、心筋梗塞を引き起こすことがあり、心筋の一部の虚血および/または壊死をもらたすことがある。血栓およびその他の粒状物は、動脈狭窄部から剥がれることもあり、このデブリが下流側に移動して末梢塞栓の原因になることがある。
【0004】
血管内の閉塞の低減または除去を容易にし、それにより血管中の血流の増加を可能にするための様々な介入技術が開発されてきた。血管の狭窄または閉塞を処置する1つの技術がバルーン血管形成術であり、バルーンカテーテルを狭窄部または血流遮断部に挿入してバルーンを膨らまし、狭窄部分を拡張するというものである。他のタイプの介入法に含まれるものとしては、アテレクトミ、ステントの配設、所定の薬物の局部注入、およびバイパス手術がある。これらの方法のいずれもが、排除した閉塞物が下流側に移動することがあるため、それにより塞栓が生ずる危険を伴っている。
【0005】
屡々、使用中のバルーンのサイズを変えるため、或いは処置を補助するためにシステム内に追加装置を導入するために、ステント配設カテーテルや吸引カテーテルを含む複数の介入的カテーテルが処置の最中に用いられる。このような状況において、カテーテルは、一般的にガイドワイヤの助けを借りて患者の心血管系内に挿入される。例えば、ガイドワイヤは、患者に導入され、心血管系の蛇行経路を通され、所望の治療部位に亘って設置される。これにより、ガイドワイヤ挿入用管路を有する種々のカテーテルを、ガイドワイヤに沿って患者に導入したり患者から引き抜いたりすることができ、それにより、処置を完了するのに要する時間が短縮される。
【0006】
このような処置中に血栓性または塞栓性粒状物が血流中に放出されるのを防止するための多くの技術が存在する。これらの技術の中で一般的なものは、閉塞装置またはフィルタを治療領域の下流側に導入して、これらの塞栓性または血栓性の粒状物を捕捉するというものである。そのようにすると、閉塞装置またはフィルタ装置を引き抜くことにより粒状物を血管から除去することができる。もう1つの一般的な技術において、これらの装置を引き抜く前に、吸引カテーテルによって粒状物を除去することもある。吸引カテーテルは、下層のアテローム斑にガイドワイヤおよび/または治療用カテーテルを通す前に血栓を除去するのに役立つことも分かっている。このような血栓の予備的除去により、狭窄部を通過し易くなるとともに、処置中に血栓性・塞栓性粒状物が血流中に放出され難くなる。
【0007】
吸引カテーテルは、当該カテーテルがガイドワイヤを渡って前進するにつれて、ガイドワイヤが吸引用管路内に挿入されるように設計されるか、または、吸引カテーテル内に、実質的に当該カテーテルの全長に亘って延在する専用のガイドワイヤ用管路が設けられていて、それにより、カテーテルを体内管路内に通し入れるにつれガイドワイヤが当該専用の管路に挿入されるようになっている。吸引用管路とガイドワイヤ用管路を有するこのようなデュアルルーメンカテーテルは、比較的単純な異形押出、異なった管状部品のより複雑な組立、およびこれら2つの方法の組合せを含む多様なやり方で構成することができる。
【0008】
デュアルルーメン型異形押出品は、比較的均等な壁に囲まれた平行な丸い管路を有し、その結果、丸形でない、ほぼ8の字形の横断面になる場合がある。あるいは、丸形の外形輪郭が望ましい場合は、心血管系カテーテル分野の当業者であれば理解できることであるが、デュアルルーメン型異形押出品は、壁厚が不均一な平行な丸い管路、またはその他の、等しくないサイズとD字形や三日月形状のように丸形でない断面形状を有する管路の多様な組合せを有するものとすることができる。
【0009】
吸引カテーテルの重要な特徴の1つは、例え大きな塞栓性粒状物であっても、最初にそれらをより小さな副粒状物に破砕することを必要とすることなく、迅速且つ効率的に吸引する能力である。この効果は、少なくとも部分的には、カテーテルのデザインの全体サイズの制約の下で、カテーテルにできるだけ大きな断面積を持つ吸引管路を設けることによって達成される。三日月形またはその他の丸形でない吸引管路を備える実施形態において、迅速且つ効率的な吸引を達成するため、比較的大きな断面積を維持することが好ましい。
【0010】
吸引カテーテルは、所謂単独オペレータ型または迅速交換型であってもよい。迅速交換型吸引カテーテルは、典型的には、その全長に亘って延在する吸引管路と、当該カテーテルの遠位部に沿って延在する、それよりかなり短いガイドワイヤ用管路とを備えた管状カテーテル軸を含む。そのため、ガイドワイヤは、ガイドワイヤ用管路内に延在する短いガイドワイヤ部分を除いて、吸引カテーテルの外部に位置することになる。好都合なことに、臨床医は、吸引カテーテルを、予め患者の体内に配置しておくことのできるガイドワイヤに装着または交換するときに、ガイドワイヤの両端を制御することができる。それから、吸引カテーテルが、当該カテーテルの遠位部のみがガイドワイヤに乗った状態で、患者の血管系に挿入される。
【0011】
幾つかの種類の吸引カテーテルが、Provost−Tine等の出願による米国特許出願公報第2007/0106211号明細書に開示されており、その開示全体がこの引用により本明細書に組み込まれる。前記公報第2007/0106211号明細書の吸引カテーテルの1つが、本出願の図1に示すような迅速交換構造である。図1は、血管における閉塞の治療と除去に用いるのに適した吸引カテーテル20を示す。カテーテル20は、その近位端に取り付けられ、近位吸引ポート23と流体連通するフィッティング27を有している。カテーテル20は、遠位先端部26を有する長尺な管状体21を含む。遠位先端部26は、患者に挿入する際、蛍光透視法的方法で先端部26の位置を特定できるようにするため、放射線不透過性マーカ(不図示)を含むこともできるが、患者の血管系へのダメージを防止するため、先端部26は、好ましくは、柔軟なものである。長尺の管状体21は、フィッティング27から管状体21の遠位端位置またはそれに隣接する位置まで延びる吸引チューブ31を含む。吸引チューブ31は、開放的吸引管路12(図2に示す)を画定する管状壁を含み、当該吸引管路12がチューブ31の全長に亘って延在している。吸引管路12は、管状体21の近位端の位置またはそれに隣接する位置に配置された吸引ポート23を、管状体21の遠位端の位置またはそれに隣接する位置に配置された遠位流体ポート24と流体的に接続する。部分真空、即ち「負圧」の供給源(不図示)は、カテーテル20の吸引管路12を通して血液と粒状物を吸引するため、フィッティング27のルアーアダプタに接続してもよい。
【0012】
カテーテル20は、更に、カテーテル20の全長よりかなり短いデュアルルーメン部41を含む。デュアルルーメン部41は、それを通って医療用ガイドワイヤが摺動できるようなサイズと形状を有する開放的ガイドワイヤ用管路15(図2に示す)を画定するガイドワイヤチューブ51を含む。ガイドワイヤチューブ51は、近位開口端290から遠位開口端29まで、吸引管路12とガイドワイヤ用管路15が平行または並列構成になるように、吸引チューブ31の遠位部に沿って延在している。デュアルルーメン部41は、このように、吸引チューブ31の遠位端に配置された第2の流体ポート24から近位側に、ガイドワイヤチューブ51の近位開口端290まで延在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図2は、ガイドワイヤチューブ51の近位開口端290の拡大断面図であり、ガイドワイヤ用管路15を通って延在するガイドワイヤ50を示している。図2に示すように、ガイドワイヤチューブ51の近位のガイドワイヤポートともいえる近位開口端290は、吸引チューブ31の外表面に固着されている。近位ガイドワイヤポートがこのようにカテーテル軸に固着されている場合、ガイドワイヤをカテーテルから離すよう横方向に加わる力によって、ガイドワイヤが、近位開口端290を開始点として、ガイドワイヤチューブ51の壁を引き裂くように働くことがある。従って、ガイドワイヤがガイドワイヤシャフトを引き裂くという上記の問題を防止する改善された吸引カテーテルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態は、血管から粒状物を取り除くための長尺吸引カテーテルに関する。カテーテルは、吸引チューブの内表面により画定される吸引管路を有する長尺な吸引チューブを備える。吸引チューブは、吸引管路を介して流体的に接続された近位ポートと遠位ポートを有する。カテーテルは、また、吸引チューブに沿って配置されるが吸引チューブの遠位部より近位側には延在しないガイドワイヤチューブを備える。ガイドワイヤチューブは、ガイドワイヤチューブの内表面により画定されるガイドワイヤ用管路を有し、且つ、ガイドワイヤ用管路を介して接続された近位端開口と遠位端開口とを有する。ガイドワイヤチューブは、吸引チューブの遠位部に固定された遠位部と、引張解放部を画成する近位部とを含む。横方向の力が加わってガイドワイヤチューブを吸引チューブから引き離そうとすると、引張解放部が吸引チューブから離れる。
【0015】
本発明の実施形態は、更に、吸引カテーテルの製造方法に関する。長尺で可撓性の第1のチューブが提供され、その第1のチューブは、その全長に亘って延在する単一の管路を有する。可撓性の第2のチューブが提供され、その第2のチューブは、その全長に亘って延在する単一の管路を有し、その近位端および遠位端が開放されている。第2のチューブは、第1のチューブよりかなり短い。第2のチューブは、第2のチューブの全長の0.5〜10%の長さの第2チューブ近位部が引張解放部を形成するように、第1のチューブの最遠位部の横に固定される。
【0016】
本発明の上記並びにその他の特徴と効果は、添付図面に示された以下の発明の説明から明らかであろう。ここに組み込まれた本明細書の一部を構成する添付図面は、更に、当該発明の原理を説明するのに有用であるとともに、当業者が当該発明を為し、用いることを可能にする。尚、図面は縮尺を合わせていない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術の吸引カテーテルの側面図である。
【図2】ガイドワイヤがガイドワイヤ用管路内に延在している状態における図1の吸引カテーテルの近位ガイドワイヤポートの拡大縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態による吸引カテーテルの側面図である。
【図4】ガイドワイヤがガイドワイヤ用管路内に延在している状態における本発明の実施形態による図3の吸引カテーテルの引張解放部の拡大縦断面図である。
【図5】ガイドワイヤがガイドワイヤ用管路に通されていない状態における本発明の実施形態による引張解放部の図示である。
【図6】ガイドワイヤがガイドワイヤ用管路内に延在している状態における図5に示す引張解放部の図示である。
【図7】本発明による吸引カテーテルの、図3の線7−7に沿って切断した横断面図である。
【図8】本発明による吸引カテーテルの、図3の線8−8に沿って切断した横断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態による引張解放部の拡大縦断面図である。
【図10】本発明のもう一つの実施形態による引張解放部の拡大縦断面図である。
【図11】吸引カテーテルが体内管路から引き出された状態における図5に示す引張解放部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明の具体的な実施形態を図面を参照して説明するが、説明中、同様な参照番号は同一若しくは機能的に類似する要素を示す。以下の説明において、治療を実施する臨床医に対する相対的な位置または方向に関して、「遠位」および「近位」という用語を用いる。「遠位」または「遠位で」は、臨床医から遠い位置、または臨床医から離れる方向になる。「近位」または「近位で」は、臨床医に近い位置、または臨床医に向かう方向になる。
【0019】
以下の詳細な説明は、本来、例示的なものに過ぎず、本発明または当該発明の応用並びに利用を制限するものではない。本発明の説明は、吸引カテーテルの文脈に於けるものであるが、当該発明は、有用と考えられるあらゆるタイプの、近位ガイドワイヤポートを有する迅速交換型または単独オペレータ型のカテーテル装置に利用できる。加えて、本発明の説明は、血管の治療の文脈に於けるものであるが、当該発明は、冠動脈、頚動脈および腎臓動脈など、有用と考えられるその他如何なる身体通路にも利用できる。更に、先行する技術分野、背景説明、概要、または以下の詳細な説明において明示または黙示される如何なる理論によっても限定されることを意図していない。
【0020】
本発明の実施形態は、内部を貫通して延在する吸引管路を有する吸引チューブと、これよりかなり短い、内部を貫通して延在するガイドワイヤ用管路を有するガイドワイヤチューブとを備えた迅速交換型吸引カテーテルを対象とし、ガイドワイヤチューブは、吸引チューブの遠位部に取り付けられる。ガイドワイヤチューブの短い近位部は、ガイドワイヤがガイドワイヤシャフトの壁を引き裂くという上記の問題を防止するため、分離されたまたは分離可能な引張解放部を画成している。本発明の実施形態においては、ガイドワイヤをカテーテルから離すように横方向に加わる力は引張解放部によって方向が変えられるので、ガイドワイヤがガイドワイヤチューブの壁を引き裂く結果にはならず、ガイドワイヤチューブを吸引チューブから引き剥がそうとする力になる。従って、ガイドワイヤチューブを吸引チューブから引き剥がすのに必要な力はガイドワイヤチューブの壁を引き裂くのに要する力の何倍もあるということが分かっているので、ガイドワイヤチューブの近位端に引張解放部を一体的に設けることで、カテーテルの壁引き裂きに対する抵抗性が改善される。ここで、更なる説明並びに詳細を、図3から図11を参照して記載する。
【0021】
介入的カテーテル処置を実施し、狭窄を除去または拡張し終える前および/またはその後で、流体並びに潜在的塞栓性デブリを除去するため、治療部位を吸引してもよい。図3は、血管中の閉塞の治療および除去に用いるのに特に適した迅速交換型または単独オペレータ型吸引カテーテル320を示す。カテーテル320は、カテーテル320の遠位部に沿った吸引チューブ331と、これよりかなり短いガイドワイヤチューブ351を含む長尺な管状体321を備える。ガイドワイヤチューブ351は、その近位端に引張解放部352を含む。本実施形態においては、引張解放部352は、ガイドワイヤチューブ351の、吸引チューブ331から分離された短い部分である。この分離された引張解放部352が、ガイドワイヤがガイドワイヤシャフトを引き裂くという上記の問題を防止する。一実施形態において、引張解放部352は、長さが0.50mmから1cmの間とすることができる。
【0022】
フィッティング327は、カテーテル320の近位端に取り付けられており、近位吸引ポート323と流体連通している。カテーテル320の吸引管路412(図4に示す)を通して血液と粒状物を吸引するため、部分真空、即ち「負圧」の供給源(不図示)を、フィッティング327のルアーアダプタに接続することができる。吸引管路412には遮るものがないので、効率的な吸入が提供される。遠位先端部326は、管状体321の遠位端に配置されている。遠位先端部326は、患者に挿入する際に蛍光透視法的方法で先端部326の位置を特定できるようにするため、放射線不透過性マーカ(不図示)を備えるようにすることができ、また、患者の血管系へのダメージを防止するため、先端部326は、柔軟なものであることが好ましい。
【0023】
吸引チューブ331は、フィッティング327から管状体321の遠位端の位置またはそれに隣接する位置まで延びている。図4を更に参照すると、吸引チューブ331は、開放的吸引管路412を画定する管状壁を含み、当該吸引管路412が吸引チューブ331の全長に亘って延在している。吸引管路412は、管状体321の近位端位置またはそれに隣接する位置に配置された第1の吸引ポート323を、管状体321の遠位端位置またはそれに隣接する位置に配置された第2の流体ポート324に流体的に接続する。図3に示す実施形態では、第2の流体ポート324は、ガイドワイヤチューブ351から逸れる方向を向いた斜めの開口を成している。場合により、流体ポート324が、吸引チューブ331に直交する(不図示)開口を成すようにしてもよい。見易くするため図4には示していないが、吸引カテーテル320は、図7および図8に関連して本明細書に記載するように積層構造である。しかしながら、本発明の別の実施形態では、吸引チューブ331および/またはガイドワイヤチューブ351は、例えば単層管状構造のような別の構成を有していてもよい。
【0024】
カテーテル320は、更に、カテーテル320の全長よりかなり短く、ガイドワイヤチューブ351が吸引チューブ331の遠位部に隣接して配設されたデュアルルーメン部341を含む。更に図4に示すように、ガイドワイヤチューブ351は、ガイドワイヤ用管路415を画定する管状壁を含み、当該ガイドワイヤ用管路415が、カテーテル遠位先端部326の遠位開口端329からガイドワイヤチューブ351の近位開口端390までのガイドワイヤチューブ351の全長に亘って延在している。ガイドワイヤ用管路415は、医療用ガイドワイヤ450を差し通すことができるようなサイズと形状を持つ。ガイドワイヤチューブ351は、吸引管路412とガイドワイヤ用管路415とが平行または並列な構成になるように、吸引チューブ331の遠位部に沿って延在している。デュアルルーメン部341は、吸引チューブ331の遠位端に配置された第2の流体ポート324からガイドワイヤチューブ351の近位開口端390まで、このように近位側に延在している。様々な実施形態において、デュアルルーメン部341は、長さが10cm未満である場合や、遠位先端部326から30cm以上近位側へ延在する場合がありうる。
【0025】
吸引カテーテル320を送り込むときは、医療用ガイドワイヤ450の近位端をガイドワイヤ用管路415の遠位開口端329に挿入し、それからガイドワイヤチューブ351をガイドワイヤ450に被せるように摺動させつつ前進させる。カテーテル320のうち、短い部分、即ち、デュアルルーメン部341のみが、ガイドワイヤ450上に乗っており、そのガイドワイヤ部分はガイドワイヤ用管路415内に保持され、吸引カテーテル320の吸引管路412内には侵入しない。従って、単独オペレータ型吸引カテーテル320は、特別に長いガイドワイヤやガイドワイヤ延長部材を必要とせず、1人の臨床医だけで取り扱うことができる。吸引カテーテル320は、約185cmの標準長の医療用ガイドワイヤと一緒に使用することができる。吸引カテーテル320は、長さを約160cmとするとよいが、この長さは必要に応じて変更可能である。
【0026】
図3および図4に示すように、近位開口端390を含むガイドワイヤチューブ351の比較的短い近位部は、吸引チューブ331の外表面から分離され、当該外表面とは独立している。この分離された近位部が、引張解放部352を画成する。様々な実施形態において、ガイドワイヤチューブ351は、凡そ10〜30cmの長さとすることができる。一実施形態において、引張解放部352は、長さが0.50mmと1cmの間とすることができる。別の実施形態で、引張解放部352は、ガイドワイヤチューブ351の全長の0.5〜10%の長さを有するものとしてもよい。
【0027】
図3および図4では、引張解放部352が吸引チューブ331から切り離されていることを示すため、引張解放部352は吸引チューブ331から離反する方向に曲げられた状態で示されている。しかしながら、図5および図6を参照して更に詳細に説明するように、何ら力が加わっていないときは、引張解放部352は吸引チューブ331と概ね平行になっており、吸引チューブ331に隣接している。ガイドワイヤチューブ351の遠位部354は、吸引チューブ331の外表面に付設されている。図3に示す実施形態では、遠位開口端329を含むガイドワイヤチューブ351の比較的短い遠位端部356が、吸引チューブ331の第2の流体ポート324を越えて延在することでカテーテル320の遠位先端部326を画成している。しかしながら、当業者には理解できるであろうことであるが、吸引チューブ331は、吸引チューブ331の遠位端が吸引カテーテルの遠位先端部を画成するべく、ガイドワイヤチューブ351の遠位開口329を越えて延在してもよい。更に、吸引チューブ331とガイドワイヤチューブ351は、両チューブの遠位端が吸引カテーテルの遠位先端部を画成するべく、同一の遠位ポイントまで延在してもよい。
【0028】
図5は、力が加えられておらず、ガイドワイヤがガイドワイヤ用管路415に通されていないときの、分離された引張解放部352を示す図である。図5に示すように、引張解放部352は吸引チューブ331と概ね平行になっており、吸引チューブ331に隣接している。しかしながら、引張解放部352は吸引チューブ331に固着されていない。分離された引張解放部352は、例えば図11に示すように、吸引チューブ331に固着されているガイドワイヤチューブ351の遠位部354に重なるよう遠位側に折り曲げることができるように、柔軟な材料から形成される。折り曲げられた引張解放部352は、吸引カテーテル320がガイドワイヤなしで身体管路1159の血管を通して引き抜かれても、組織にダメージを与えることなくその血管壁1158に沿って引っ張ることができる。
【0029】
図6は、ガイドワイヤ450がガイドワイヤ用管路415を通って延在している状態における分離された引張解放部352を示す図である。図6から分かるように、ガイドワイヤ450からガイドワイヤチューブ351に、引張解放部352を吸引チューブ331の外表面から離反する方向に向ける力が加わることがある。図示のように、そのような横方向の力が加わってガイドワイヤ450がカテーテルから離れると、引張解放部352はもはや吸引チューブ331と概ね平行または隣接する状態ではなくなる。ガイドワイヤ450により加えられる横方向の力は、ガイドワイヤチューブ351の引張解放部352を吸引チューブ331から分離ないし引き裂く方向に働く。しかし、ガイドワイヤチューブ351の遠位部354と吸引チューブ331との間の固着強度は、想定される医療的状況の下でガイドワイヤ450により加えられる引剥力に十分抵抗できる程強い。
【0030】
図7は、図3の線7−7に沿って切断した吸引チューブ331の横断面図である。吸引チューブ331の環状壁は、裏張部733の周囲に接着された外套部734と、これらの間に設けられた補強層735とを含む。吸引チューブ331は、上記のように、その長さ方向に沿って開放的吸引管路412を画定している。図7に示すように、吸引チューブ331の横断面は、概ね円形である。一実施形態において、吸引管路412の直径は約1.143mm(0.045インチ)とすることができる。
【0031】
裏張部733と外套部734は、裏張部733と外套部734とを補強層735の間隙ないし編目を介して熱接合(融着)または溶剤接合できるよう、同じか少なくとも化学的に相溶性の熱可塑性樹脂から作るとよい。好適な熱可塑性樹脂の例には、アミド、ポリアミド、ポリエチレンブロックアミドコポリマー(PEBA)、ポリウレタン、および、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィンが含まれる。あるいは、裏張部733と外套部734を、熱接合には適さないが補強層735の間隙ないし編目を介して接着接合できるものとしてもよい。
【0032】
補強層735は、ステンレス鋼、加工硬化ニッケルコバルト基超合金、白金合金、タングステンまたはタンタラムのような超硬合金、あるいはそれらの組み合わせの編組されたまたはコイル状のフィラメントから形成することができる。補強層735のフィラメントは、円形、楕円形、扁平形、または矩形の横断面を有しうる。長尺な管状体321の遠位部は、近位部より可撓性が高いことが好ましく、これは、遠位部での編組密度またはコイル密度を、近位部での編組密度またはコイル密度より大きくすることにより達成できる。補強層735の編組またはコイルは、補強層を通して裏張部733と外套部734を結合できるよう十分大きなコイル間隔または編目を有する。一実施形態では、補強層735は、幅0.038mm(0.0015インチ)、厚み0.013mm(0.0005インチ)の扁平ステンレス鋼ワイヤの編組から成り、その編組の打ち数は、カテーテルの近位部での長手方向の1インチ当たり約45ピックから、遠位部での長手方向の1インチ当たり約70ピックまで変化する。ピックとは、カテーテルの技術分野における当業者にとって周知の用語であり、編まれた管状編組における2つのフィラメントの交差点を指す。
【0033】
図8は、吸引カテーテル320のデュアルルーメン部341を図3の線8−8に沿って切断した横断面図である。吸引チューブ331により画定される吸引管路412と、ガイドワイヤチューブ351により画定されるガイドワイヤ用管路415は、平行または並列に構成されている。図8ではガイドワイヤ450がガイドワイヤ用管路415内に在る状態が示されているが、図3ではガイドワイヤは挿通されていない。様々な実施形態において、ガイドワイヤ用管路415の直径は、医療用ガイドワイヤ450を挿入するために、約0.381mm(0.015インチ)から約0.508mm(0.020インチ)の範囲とするとよい。デュアルルーメン部341内で、外装スリーブ844がガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331の周囲を囲み、これらを束ねている。外装スリープ844も、アミド、ポリアミド、PEBA、ポリウレタン、および、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン等の適当な熱可塑性樹脂から形成するとよい。外装スリープ844の材料は、吸引チューブ331の外套部734に熱接合または溶剤接合できるよう、外套部734と同じか少なくとも化学的に相溶性のものとするとよい。一実施形態では、外套部734はポリアミドから作られ、外装スリープ844は40D型デュロメータPEBAから作られる。
【0034】
別の実施形態(不図示)において、吸引チューブ331の外套部734は、吸引チューブ331の、デュアルルーメン部341内にある部分から取り外すことができる。外套部734は、米国特許第6,059,769号明細書に開示されるレーザー焼灼処理により吸引チューブ331から適宜取り外すことができ、その開示全体がこの引用により、本明細書に組み込まれる。外装スリープ844は、上記特許第6,059,769号明細書に記載の技術と同様にして、取り外し可能な収縮チューブを使って成形収縮により、ガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331の改造部の周囲に装着することができる。さらに別の実施形態(不図示)では、外套部734は、吸引チューブ331のデュアルルーメン部341より手前の部分から取り外されている。上記特許第6,059,769号明細書に記載のように、外套部734の取り外された部分には、代わりに、長尺な管状体321に沿って剛性を有利に変化させるように、異なる可撓性の充填材を設けることができる。外装スリープ844の付加的部分または別のポリマー樹脂をその充填材として用いることができる。
【0035】
長尺のカテーテル軸は、カテーテルを血管系に差し込んで、カテーテル本体に座屈や望まない屈曲が生ずることなく、離れた動脈部位まで導通させることができるよう、十分な構造的保全性、つまり「剛性」を有していなければならない。しかしまた、カテーテルは、蛇行する血管を通り抜けることができるよう、その遠位先端部付近がかなり柔軟性であることが望まれる。医療用ガイドワイヤ上を自由に摺動できるようにするためには、ガイドワイヤチューブ351を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリオレフィンのような可撓性低摩擦ポリマーから製造するとよい。あるいは、ガイドワイヤチューブ351を、摩擦特性を考慮せずに選択したポリマーから形成し、管路415に平滑化被膜(不図示)を施してガイドワイヤとの摩擦を低減させてもよい。
【0036】
吸引カテーテル320は、吸引チューブ331のような、補強層735が管壁内に封入された第1の長尺可撓性チューブを提供することにより構成される。吸引チューブ331では、単に1つの管路、例えば吸引管路412が内部を貫通して延在している。吸引チューブ331は、裏張部733を押出加工し、補強層735を裏張部733の周囲に編み組み、それから外套部734を補強層735に被せるように押出加工するといった、上記米国特許第6,059,769号明細書に開示されているオープンリール式プロセスで構成することができる。その他の周知の方法を、吸引チューブ331の積層構造を構成するのに用いてもよい。第1の長尺可撓性チューブよりかなり短い第2の可撓性チューブ、例えばガイドワイヤチューブ351は、その長手方向に貫通して延在する管路415を有するよう提供される。ガイドワイヤチューブ351は、ペースト押出されたPTEF樹脂または上記のような熱押出された熱可塑性樹脂から形成することができる。
【0037】
第2のチューブ、例えばガイドワイヤチューブ351、の比較的短い近位部を、引張解放部352を画成するよう第1のチューブ、例えば吸引チューブ331、から離したままにして、第2のチューブの残りの長さ部分が、第1のチューブに並列に固定される。固定には、接着剤、溶剤接合、熱接合、および/またはガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331を取り囲む外装スリーブ844、のうちから選択した手段が用いられる。任意に、第2の長尺可撓性チューブを第1のチューブに並列に固定する前に、第1のチューブの、少なくとも第2のチューブに固着すべき長手方向部分から外套部734を取り外してもよい。外套部734を選択的に取り外すことで、積層される層が1つ減るため、吸引カテーテル320の外径が小さくなる。外套部734を取り外した場合、ガイドワイヤチューブ351が補強層735に直接固定され、且つ、層735の間隙を介して裏張部733に固定される。柔軟なカテーテル先端部326は、ガイドワイヤチューブ351の遠位端部であってもよいし、吸引カテーテル320の遠位端に、製造工程の任意の望ましい段階でモールドまたは別の方法で固定される別個の構成部材であってもよい。
【0038】
熱接合を固定手段として用いる場合、ガイドワイヤチューブ351は、ガイドワイヤチューブ遠位部354と吸引チューブ331との間を強固に熱接合するために、高い熱接合性を有する材料から形成される。例えば、ガイドワイヤチューブ351は、アミド、ポリアミド、PEBA、ポリウレタン、および、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン等の適当な熱可塑性樹脂から形成するとよい。必要に応じて、管路415に平滑化被膜を施してガイドワイヤとの摩擦を低減させてもよい。ガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331との間の熱接合を、上記特許第6,059,769号明細書に記載の技術と同様に、取り外し可能な熱収縮チューブを手段として用いて形成してもよい。熱収縮チューブは、ガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331が接合された後に取り外される。同様にして、外装スリーブ844を固定手段として用いる場合、上記特許第6,059,769号明細書に記載の技術と同様に、取り外し可能な熱収縮チューブを手段として用いて、成形収縮により外装スリープ844をガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331の周囲に装着してもよい。
【0039】
単独オペレータ型吸引カテーテル320の別の実施形態において、ガイドワイヤチューブ遠位部354と吸引チューブ331との間を固定する手段は、ガイドワイヤチューブ351と吸引チューブ331を同時かつ連続的に一体的な二管路押出品に成形することである。二管路シャフト予備押出成形品は、上記のような適当な熱可塑性樹脂から連続的熱可塑性押出加工を用いて作ることができ、吸引カテーテルに相応しい長さに切断された複数本のチューブを作り出すことができる。あるいは、二管路シャフト予備押出成形品を、PTFEのような非熱可塑性樹脂から、冷間ペースト押出加工を用いて作ってもよい。図3に示す吸引カテーテルの実施形態を作製するには、ガイドワイヤチューブ351を、ガイドワイヤチューブ351と同一線上でデュアルルーメン部341より近位側の材料を取り除くことにより形成すればよい。同様に、先端部326も、吸引チューブ331と同一線上で第2の流体ポート324より遠位側にある材料を取り除くことにより形成することができる。引張解放部352は、吸引管路412とガイドワイヤ用管路415の間を切断して、吸引チューブ331から分離独立した比較的短い近位部をガイドワイヤチューブ351に形成することにより造ることができる。単独オペレータ型吸引カテーテル320を二管路シャフト予備押出成形品から形成するための材料の切断および/または除去は、周知の道具、例えば鋭利な刃、加熱線、レーザービームまたはその他の適当な手段を用いて行うことができる。
【0040】
本発明の別の実施形態において、分離可能な引張解放部を、吸引チューブに「貼付」または最小限に付着させるようにしてもよい。ここで「最小限に付着」とは、引張解放部が吸引チューブに、吸引チューブとの隣接状態を保つのに十分なだけの接合力または接着力で付着されており、それにより、横方向の剥離力が加わったときに引張解放特性が発揮されるようになっていることを言い表そうとするものである。所定量以上の横方向剥離力が加わると、引張解放部は、吸引チューブから離れ、つまり剥離ないし分裂して、ガイドワイヤがガイドワイヤシャフトを引き裂くという上記の問題を防止するようになっている。そのような横方向の剥離力が加わらなければ、引張解放部は吸引チューブに付着した状態に保たれる。
【0041】
より具体的には、図9に示す実施形態において、ガイドワイヤチューブ951は、その近位端部に、最小限に付着された引張解放部952を含む。ガイドワイヤチューブ951は、その引張解放部952が、ガイドワイヤチューブ951の、吸引チューブ331外表面に最小限に付着されている短い近位端部である点を除けば、上記ガイドワイヤチューブ351と同様である。一実施形態において、引張解放部952は長さが0.50ミリメータから1センチメータの間とすることができ、または、ガイドワイヤチューブ951の全長の0.5〜10%の長さを有するものとしてもよい。ガイドワイヤチューブ951の残りの遠位部954は、吸引チューブ331の外表面にしっかり固着される。ガイドワイヤがガイドワイヤチューブ951を通って延在するとき、引張解放部952を吸引チューブ331の外表面から切り離し、続いてそこから引き離すのに十分な横方向の剥離力がガイドワイヤからガイドワイヤチューブ951に加わることがある。ガイドワイヤにより加えられる横方向の力は、ガイドワイヤチューブ951の遠位部954を吸引チューブ331から分離または分裂させることはない。なぜなら、ガイドワイヤチューブ951の遠位部954と吸引チューブ331との間の固着力は、想定される医療的状況のもとでガイドワイヤにより加えられる剥離力に抵抗できる程十分強いからである。
【0042】
引張解放部952を吸引チューブ331に最小限に付着させるために、引張解放領域の壁厚を減らした外装スリーブ944を用いることができる。外装スリーブ944は、ガイドワイヤチューブ951と吸引チューブ331を取り囲み束ねる。外装スリーブ944には近位部960と遠位部962がある。外装スリーブ近位部960は第1の厚みを有し、外装スリーブ遠位部962は、第1の厚みより大きい第2の厚みを有する。近位部960は、引張解放部952を覆っており、遠位部962はガイドワイヤチューブ951の遠位部954を覆っている。力が加わっていないとき、外装スリーブ944の比較的薄い近位部960は、引張解放部952を吸引チューブ331に対して保持している。しかし、ガイドワイヤにより横方向の力がガイドワイヤチューブ951に加えられると、近位部960は裂けて、引張解放部952を吸引チューブ331から切り離すようになっている。他方、外装スリーブ944の比較的厚い遠位部962は変化せず、ガイドワイヤチューブ遠位部954を吸引チューブ330に固定した状態に保つ。
【0043】
外装スリーブ近位部960は、カテーテル部材の組立中に外装スリーブ944の材料を取り除くことにより形成することができる。外装スリーブ944は、上記特許第6,059,769号明細書に記載の技術と同様にして、取り外し可能な熱収縮チューブを使って成形収縮により、ガイドワイヤチューブ951と吸引チューブ331の周囲に装着することができる。外装スリーブ944は、アミド、ポリアミド、PEBA、ポリウレタン、および、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン等の適当な熱可塑性樹脂から形成することができる。熱収縮作業の間、外装スリーブ944の材料は、熱パラメータと熱源に対する動きとに応じて流動する。このため、熱源を制御することで、引張解放領域における材料の厚みを熱的に低減させることができる。
【0044】
ガイドワイヤチューブの引張解放部を吸引チューブに最小限に付着させるための別の実施形態を図10に示す。PTFEのガイドワイヤチューブ1051は、その近位端に引張解放部1052が設けられており、引張解放部1052は、ガイドワイヤチューブ1051の短い近位部であり、吸引チューブ331の外表面に熱接合を用いて最小限に付着されている。PTFEの熱接合性は比較的弱く、その結果、引張解放部1052と吸引チューブ331との間の接合力も最小または微弱となる。力が加わっていないとき、熱接合部は引張解放部1052を吸引チューブ331に対して保持している。しかし、ガイドワイヤにより横方向の力がガイドワイヤチューブ1051に加えられると、熱接合が外れて、引張解放部1052は吸引チューブ331から離れることができるようになる。ガイドワイヤチューブ1051の残りの遠位部1054は、それに対して、上記実施形態にて説明したように接着剤、溶剤接合、および/または外装スリーブにより吸引チューブ331の外表面にしっかり固着されており、そのため、遠位部1054は、吸引チューブ330と横並びに固定された状態を保つ。
【0045】
以上、本発明による多様な実施形態を説明してきたが、これらは図解と例示のためにのみ提示したのであって、限定のためではないことは理解されるべきである。関連する技術の当業者にとって、本発明の主旨および範囲を逸脱することなく形状および細部において様々な変形が可能であることは明白であろう。つまり、本発明の範囲は、上記の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、添付の請求項とそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。さらに、本明細書で述べた各実施形態の各特徴および本明細書で言及した引例の各特徴は、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせて用いることができることも理解されよう。本明細書で取り上げたすべての特許および公報は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管から粒状物を取り除くための吸引カテーテルであって、
長尺の吸引チューブであって、前記吸引チューブの内表面により画定される吸引管路を有し、前記吸引管路を介して流体的に接続された近位ポートおよび遠位ポートを有する吸引チューブと、
前記吸引チューブに沿って設けられるが前記吸引チューブの遠位部より近位側には延在しないガイドワイヤチューブであって、前記ガイドワイヤチューブの内表面により画定されるガイドワイヤ用管路を有すると共に、前記ガイドワイヤ用管路を介して接続された近位端開口および遠位端開口を有するガイドワイヤチューブとを備え、
前記ガイドワイヤチューブは、前記吸引チューブの前記遠位部に固定された遠位部と、引張解放部を画成する近位部とを含み、横方向の力が加わって前記ガイドワイヤチューブを前記吸引チューブから引き離そうとすると、前記引張解放部が吸引チューブから離れるようになっている、
ことを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記引張解放部は、前記横方向の力が加わる前から、前記吸引チューブから分離されている、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記分離された引張解放部は、前記横方向の力が加わる前には、前記吸引チューブに概ね平行でかつ隣接している、
請求項2の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記分離された引張解放部は、血管壁を傷つけることなく前記吸引カテーテルを血管壁に沿って引っ張ることができるように、前記分離された引張解放部を前記ガイドワイヤチューブの前記遠位部に重ねて折り畳むことができる程十分可撓性のある材料から形成される、
請求項2の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記引張解放部は、前記横方向の力が加わる前には、前記吸引チューブに最小限に付着されている、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記ガイドワイヤチューブは、前記ガイドワイヤチューブと前記吸引チューブとを取り囲む外装スリーブによって前記吸引チューブに固定されており、前記外装スリーブは、前記引張解放部を覆う第1の厚みの近位部と、前記ガイドワイヤチューブの前記遠位部を覆う第2の厚みの遠位部とを有し、前記第2の厚みは前記第1の厚みより大きい、
請求項5の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記ガイドワイヤチューブは、PTFEから作られ、前記引張解放部は、前記吸引チューブに熱接合により最小限に付着されており、前記熱接合は、前記横方向の力が加わったときに破壊される、
請求項5の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記ガイドワイヤチューブは、10〜30cmの長さを有する、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記引張解放部の長さは、前記ガイドワイヤチューブの長さの0.5〜10%である、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記ガイドワイヤチューブの前記遠位部は、接着剤、溶剤接合、熱接合、および前記ガイドワイヤチューブの前記遠位部と前記吸引チューブとを取り囲む外装スリーブから成る群から選択される固定手段により、前記吸引チューブに固定される、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記吸引チューブは更に、前記吸引チューブの壁内部に封入された補強層を備える、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記吸引チューブは更に、
前記吸引管路を画定する内表面を有する裏張部と、
前記裏張部の周囲に設けられ前記裏張部に接着された外套部とを備え、前記補強層は、前記外套部と前記裏張部との間に設けられる、
請求項11の吸引カテーテル。
【請求項13】
前記補強層は、管状編組を含む、
請求項11の吸引カテーテル。
【請求項14】
前記吸引チューブの前記遠位ポートは、前記ガイドワイヤチューブから逸れる方向に向いた斜めの開口を形成している、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項15】
前記近位ポートと流体連通するよう前記吸引チューブの近位端に取り付けられたフィッティングを更に備える、
請求項1の吸引カテーテル。
【請求項16】
吸引カテーテルの製造方法であって、
単一の管路が全長に亘って延在する長尺で可撓性の第1のチューブを提供するステップと、
単一の管路が全長に亘って延在し、近位端および遠位端が開放されている、前記第1のチューブよりかなり短い可撓性の第2のチューブを提供するステップと、
前記第2のチューブの全長の0.5〜10%の長さの第2チューブ近位部が引張解放部を形成するように、前記第2のチューブを前記第1のチューブの最遠位部の横に固定するステップと、を備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記引張解放部は、前記吸引チューブから分離されている、
請求項16の方法。
【請求項18】
前記引張解放部は、前記吸引チューブに最小限に付着されている、
請求項16の方法。
【請求項19】
前記第2のチューブを前記第1のチューブの最遠位部の横に固定することは更に、前記第1および第2のチューブを外装スリーブで取り囲むことを含み、前記外装スリーブは、前記引張解放部を覆う第1の厚みの近位部と、前記第1のチューブの前記最遠位部の横にある前記第2のチューブの残りの部分を覆う、第2の厚みの遠位部とを有し、前記第2の厚みは前記第1の厚みより大きい、
請求項18の方法。
【請求項20】
前記ガイドワイヤチューブは、PTFEから作られ、前記引張解放部は、前記吸引チューブに熱接合により最小限に付着されており、前記熱接合は、横方向の力が加わって前記ガイドワイヤチューブを前記吸引チューブから引き離そうとするときに破壊される、
請求項18の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−515150(P2011−515150A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500849(P2011−500849)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/035808
【国際公開番号】WO2009/117240
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(502129357)メドトロニック カルディオ ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】