説明

耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびその製造方法、エーロゲルバインダー組成物およびその製造方法

【課題】改良された耐久性および耐熱性を有するエーロゲル絶縁品を提供する。
【解決手段】疎水性エーロゲル粒子と水性バインダーを含む絶縁ベース層および、保護バインダーと赤外線反射剤を含む熱反射性トップ層を含む耐熱エーロゲル絶縁複合材料。本発明は、また、耐熱エーロゲル絶縁複合材料の製造方法、ならびにエーロゲルバインダー組成物の製造方法、および製造されたエーロゲルバインダー組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性エーロゲル絶縁複合材料、エーロゲルバインダー組成物およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エーロゲルは優れた熱的および音響的絶縁性質を与えることで知られている。エーロゲル絶縁材料は、乾燥粒子状エーロゲル組成物の圧縮により、またはエーロゲル粒子とバインダーを一緒にして、凝集性粒状マスを生成させることにより製造されてきた。しかしながら、乾燥粒子組成物およびエーロゲル−バインダー組成物は、良好な熱絶縁および音響絶縁を提供するが、磨耗および高温条件下での熱劣化に余り抵抗性を与えない傾向がある。
【0003】
したがって、良好な熱および/または音響の絶縁を提供し、改良された耐久性および耐熱性を有するエーロゲル絶縁品が得られれば有利であろう。本発明は、このような品ならびにその製造方法を提供する。本発明のこれらのならびにその他の利点は、ここに述べる本発明の説明から明らかとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記(a),(b)を含む、本質的に両者を含む、または両者を含む耐熱性エーロゲル絶縁複合材料を提供する。(a)疎水性エーロゲル粒子、水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、または、これらを含む絶縁ベース層、および(b)保護バインダーと赤外線反射剤を含む、本質的に両者を含む、または、両者を含む熱反射性トップ層。本発明はまた、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の製造方法を提供する。この方法は、下記(a),(b)を含む、本質的に両者を含む、または両者を含む。
【0005】
(a)疎水性エーロゲル粒子、水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、または、これらを含む絶縁ベース層を基材上に供給すること、および(b)保護バインダーと赤外線反射剤を含む、本質的に両者を含む、または、両者を含む熱反射性トップ層を絶縁ベース層の表面に塗布すること。
【0006】
関連する側面において、本発明はエーロゲルバインダー組成物の製造方法を提供する。この方法は、下記(a),(b),(c)を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含む。(a)水性バインダーと発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、または、これらを含むバインダー組成物を供給すること、(b)バインダー組成物を攪拌して発泡バインダー組成物を生成すること、および(c)発泡バインダー組成物と疎水性エーロゲル粒子を一緒にしてエーロゲルバインダー組成物を生成すること。
【0007】
本発明はまたエーロゲルバインダー組成物の製造方法を提供する。この方法は、下記(a),(b),(c)を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含む。(a)水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含むバインダー組成物を供給すること、(b)疎水性エーロゲル粒子を含む、本質的にこれを含む、またはこれを含むエーロゲル組成物を供給すること、および(c)バインダー組成物とエーロゲル組成物を基材に同時に塗布すること、ここにバインダー組成物はエーロゲル組成物と混合されエーロゲルバインダー組成物を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料
本発明の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、下記(a),(b)を含む、本質的に両者を含む、または両者を含む。(a)疎水性エーロゲル粒子、水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、または、これらを含む絶縁ベース層、および(b)保護バインダーと赤外線反射剤を含む、本質的に両者を含む、または両者を含む熱反射性トップ層。
【0009】
本発明との関連で、任意の適当な疎水性エーロゲル粒子を使用できる。適当な疎水性エーロゲル粒子には、レゾルシノール−フォルムアルデヒドまたはメラミン−フォルムアルデヒドエーロゲル粒子等の有機エーロゲル粒子および金属酸化物エーロゲル粒子(例えば、シリカ、チタニアおよびアルミナエーロゲル)等の無機エーロゲル粒子が含まれる。金属酸化物エーロゲル粒子、殊に、シリカエーロゲル粒子が好ましい。適当な疎水性エーロゲル粒子は市販品から得られ、適当な疎水性エーロゲルの製造方法は知られている(例えば、WO 99/36355A2; WO99/36356A2; WO 99/36479A1; WO 98/45210A2; WO 98/45035A1; WO 98/45032A1; WO 96/18456A2を参照)。
【0010】
疎水性エーロゲル粒子は、望ましくは、不透明剤を含有し、不透明剤は疎水性エーロゲル粒子の熱伝道率を減少させる。例えば、WO 96/18456A2に記載されているように、カーボンブラック、炭素ファイバ、チタニアまたは改質炭素質成分を含む(しかしこれらに限られない)任意の適当な不透明剤を使用できる。疎水性エーロゲル粒子はファイバを含むこともできる。適当なファイバは、以下の項で論じられる任意のファイバを含む。
【0011】
疎水性エーロゲル粒子の大きさは、ある程度、耐熱エーロゲル絶縁複合材料の望ましい厚さに依存する。本発明の目的のために、“粒子の大きさ”と“粒径”なる語は同意に用いられる。一般に大きなエーロゲル粒子は大きな熱絶縁を提供する。しかしながら、エーロゲル粒子は、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料(例えば、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層)の厚さと比較して、水性バインダーが疎水性エーロゲル粒子を囲みマトリックスを形成できるように相対的に小であるべきである。
【0012】
大抵の応用においては、約5mm以下(例えば、約0.01〜5mm)の平均粒径(重量による)を有する疎水性エーロゲル粒子を用いるのが適当である。好ましくは、約3mm以下(例えば、約0.1〜3mm)の平均粒径(重量による)または約2mm以下(例えば、約0.5〜2mmまたは約1〜1.5mm)の平均粒径(重量による)を有する疎水性エーロゲル粒子を用いるのが適当である。好ましくは、本発明の関連で使用する疎水性エーロゲル粒子は狭い粒子大きさの分布を有する。したがって、例えば、以下のような疎水性エーロゲル粒子を使用するのが好ましい。約95%以上の疎水性エーロゲル粒子(重量による)が約5mm以下(例えば、約0.01〜5mm)、好ましくは約3mm以下(例えば、約0.01〜3mm)、または更に好ましくは約2mm以下(例えば、約0.5〜2mmまたは約1〜1.5mm)の粒径を有する。望ましくは、疎水性エーロゲル粒子は、形状が略球状である。
【0013】
疎水性エーロゲル粒子の大きさおよび/または形状は、この粒子を高温エーロゲル絶縁複合材料の他の成分と一緒にした時に、混合プロセスまたは他の因子(例えば、疎水性エーロゲル粒子が破壊されることがある)により、変化することがある。したがって、上記すべての粒子の大きさおよび形状は、高温エーロゲル絶縁複合材料の他の成分と一緒にする前の疎水性エーロゲルの粒子の大きさおよび形状を指す。望ましくは、疎水性エーロゲル粒子は、高温エーロゲル絶縁複合材料の他の成分を一緒にした後もこのように一緒にする前(すなわち、上記のような)の疎水性エーロゲル絶縁粒子の大きさとほぼ同じ大きさである。
【0014】
任意の量の疎水性エーロゲル粒子を耐熱性エーロゲル絶縁複合材料中に使用できる。例えば、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料(例えば、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層)は、絶縁ベース層の全液体/固体体積に対して約5〜99体積%の疎水性エーロゲル粒子を含有できる。絶縁ベース層の全液体/固体体積は、絶縁ベース層(例えば、疎水性エーロゲル粒子、バインダー、発泡剤、等)の液体および固体の成分を合わせた体積を測定することにより決定できる。絶縁ベース層(例えば、絶縁ベース層のバインダー)を発泡させるときには、絶縁ベース層の全液体/固体体積は、発泡前の絶縁ベース層の液体成分および固体成分を合わせた体積である。もちろん、疎水性エーロゲル粒子の割合が増加するにつれ、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の熱伝導率は減少し、これにより熱絶縁性能を高める。しかしながら、絶縁材ベース層の機械強度と完全性は、使用した水性バインダーの相対量の減少故に、疎水性エーロゲル粒子の割合の増加と共に減少する。したがって、約50〜95体積%、好ましくは約75〜90体積%のエーロゲル粒子を絶縁ベース層に使用するのが望ましい。
【0015】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層は、任意の適当な水性バインダーを含有できる。ここに用いている水性バインダーなる語は、バインダーを指し、これは絶縁ベース層を調製するのに用いる前は、水分散性または水溶性である。したがって、水性バインダーなる語は、湿潤または乾燥状態(例えば、水性バインダーが乾燥または硬化させる前または後、この状態では、バインダーはもはや水を含有しないこともある)での水性バインダーを指すと理解すべきである。乾燥または硬化させた後では水性バインダーは水中に分散性または可溶性ではないかもしれないが。選ばれた特定の水性バインダーは、有意な程度には疎水性エーロゲル粒子の表面を浸透しないものであるべきである。好ましい水性バインダーは、乾燥後、耐水性バインダー組成物を提供するものである。
【0016】
適当な水性バインダーには、例えば、アクリル樹脂系バインダー、シリコーン含有バインダー、フェノール系バインダー、酢酸ビニール樹脂バインダー、エチレン−酢酸ビニール樹脂バインダー、スチレン−アクリル酸エステル樹脂バインダー、スチレン−ブタジエン樹脂バインダー、ポリビニールアルコールバインダーおよびポリ塩化ビニールバインダーおよびアクリルアミドバインダー、ならびにこれらの混合物および共重合体が含まれる。このバインダーは単独で使用、または適当な架橋剤と一緒に使用できる。好ましいバインダーは水性アクリル樹脂系バインダーである。
【0017】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層は、任意の量の水性バインダーを含有できる。例えば、絶縁ベース層は、絶縁ベース層の全液体/固体体積に対して、1〜95体積%の水性バインダーを含有できる。もちろん、水性バインダーの割合が増加するにつれて、エーロゲルの割合が必然的に減少し、その結果、絶縁ベース層の熱伝導率は増加する。したがって、望ましい量の機械的強度を得るためには、必要最小量の水性バインダーを使用するのが望ましい。大部分の応用においては、絶縁ベース層は、約1〜50体積%の水性バインダー、または約5〜25体積%の水性バインダー、または更に約5〜10体積%の水性バインダーを含有する。
【0018】
絶縁ベース層は、好ましくは水性バインダーおよび疎水性エーロゲル粒子の他に発泡剤を含有する。特定の理論に束縛されるのを望むこと無しに、発泡剤は疎水性エーロゲル粒子間の附着を強めると信じられている。また、発泡剤は、バインダーを発泡させることなしに使用することができるが、発泡剤は水性バインダー(例えば、吹付けできる塗布)のレオロジー(例えば、吹付けできる塗布)を改良すると信じられ、殊に疎水性エーロゲル粒子の組入れ前または後で、一緒にしたバインダーおよび発泡剤の攪拌または混合(例えば、泡立て)によりバインダーを発泡させる。なお、発泡バインダーを、非発泡ベース層よりも低密度を有する発泡絶縁ベース層を生成させるのに具合良く使用できる。
【0019】
発泡剤を使用すると、攪拌または混合によりバインダーを発泡させるが、他方、バインダーは、もちろん、発泡剤を使用してまたは使用せずして、他の方法で発泡できる。例えば、圧縮ガスまたは噴射剤を用いて、バインダーを発泡できる、またはバインダーをノズル(例えば、高いせん断または乱流を作り出すノズル)を通過させることにより、バインダーを発泡させることができる。
【0020】
任意の適当な発泡剤を絶縁ベース層中に使用できる。適当な発泡剤には、泡強化表面活性剤(例えば、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および双極性イオン性表面活性剤)、ならびに他の市販の泡強化剤、またはこれらの混合物が含まれる(制限はされないが)。発泡剤は、発泡を望むならば、水性バインダーを発泡させるのに十分な量が存在するべきである。好ましくは、約0.1〜5重量%、例えば、約0.5〜2重量%、の発泡剤が使用される。
【0021】
絶縁ベース層は、任意の望ましい厚さとすることができる。より厚い絶縁ベース層を含む耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、より大きな熱および/または音響の絶縁性質を持つ。しかしながら、本発明の耐熱エーロゲル複合材料は、なお優れた熱および/または音響の絶縁性質を提供しながら、比較的薄い絶縁ベース層の使用に備える。大部分の応用に対しては、約1〜15mm厚さ、例えば約2〜6mm厚さ、の絶縁ベース層は、十分な絶縁を提供する。
【0022】
絶縁ベース層の熱伝導率は、ある程度、絶縁ベース層を生成するために使用される特定の配合に依存する。好ましくは、絶縁ベース層は、熱伝導率が約40mW/(m・K)以下、より好ましくは約35mW/(m・K)以下、または更に好ましくは約30mW/(m・K)以下になるように配合される。絶縁ベース層の熱伝導率は、絶縁ベース層を乾燥後に測定するものと理解されている。
【0023】
同様に、絶縁ベース層の密度は、絶縁ベース層を生成するために使用される特定の配合にある程度依存する。好ましくは、絶縁ベース層は、密度が約0.5g/cm3以下、好ましくは約0.3g/cm3以下、例えば約0.2g/cm3以下、または更に好ましくは約0.1g/cm3以下(例えば、約0.05g/cm3以下)になるように配合される。絶縁ベース層の密度は、絶縁ベース層を乾燥後に測定するものと理解されている。
【0024】
絶縁ベース層は、また、強化用ファイバを含有していてもよい。強化用ファイバは、付加的な機械的強度を絶縁ベース層に、したがって、耐熱性絶縁複合材料に与えることができる。ファイバガラス、アルミナ、燐酸カルシウム鉱物ウール、ウオラストナイト、セラミック、セルロース、カーボン、綿、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フエノール樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、PEEK,ポリプロピレンおよび他のタイプのポリオレフィン、またはこれらの混合物等の任意の適当なタイプのファイバが使用できる。好ましいファイバは、耐熱性および耐火性であり、吸入される部分を有しないファイバである。
【0025】
このファイバはまた、炭素ファイバ、金属被覆ファイバまたは他の適当な赤外線反射物質のファイバ等の赤外線輻射を反射するタイプであってもよい。このファイバは任意の適当な長さの分離したストランズの形であってもよく、これは、例えば、絶縁ベース層の他の成分と共に基材に吹付ける(例えば、吹付け前に、ファイバを一つ以上の絶縁ベース層の他の成分と混合することにより、またはファイバを基材に単独で吹付けることにより)ことにより塗布できる。代わりに、ファイバはウエブかネットの形であってもよい。これを、例えば、基材に適用し、ウエブかネット上に絶縁ベース層の他の成分を吹付ける、拡げる、または他の仕方で塗布することができる。ファイバは、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料が使われる特定の応用に対して、望ましい量の機械的強度を与えるのに十分な任意の量で使用できる。典型的には、ファイバは、絶縁ベース層中に絶縁ベース層の重量に対して、約0.1〜50重量%、望ましくは約1〜20重量%、例えば約2〜10重量%、存在する。
【0026】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の熱反射性トップ層は、保護バインダーを含有する。熱反射性トップ層は、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料に高度の機械的強度を与え、および/または絶縁ベース層を一つ以上の環境因子(例えば、熱、湿度、磨耗、衝撃、等)の劣化から守る。したがって、熱反射性トップ層は、好ましくは、実質的にまたは完全に熱反射層の強度を減ずる傾向のあるエーロゲル粒子を含まない。実質的にエーロゲル粒子を含まないとは、熱反射層が約20体積%以下の量、例えば約10体積%以下の量、または更に約5体積%以下(例えば、約1体積%以下)の量のエーロゲル粒子を含有していることを意味する。保護バインダーは、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料が曝される特定の状態(例えば、熱、応力、湿度、等)に抵抗性のある任意の適当なバインダーでよい。
【0027】
したがって、バインダーの選択は、ある程度耐熱性エーロゲル絶縁複合材料に望まれる特定の性質に依存する。保護バインダーは、絶縁ベース層の水性バインダーと同一か異なることができる。適当なバインダーには、水性および非水性の天然および合成のバインダーが含まれる。このようなバインダーの例としては、ここですでに述べたような絶縁ベース層に用いられるに適当な任意の水性バインダー、ならびに非水性バインダーが挙げられる。好ましいバインダーは、水性アクリル樹脂系バインダー等の水性バインダーである。自己架橋性アクリル系樹脂バインダー等の自己架橋性バインダーが殊に好まれる。
【0028】
赤外線反射材は、赤外線輻射を反射するかまたは遮る任意の化合物または組成物でよく、カーボンブラック、炭素ファイバ、チタニア(ルチル)、および金属および非金属粒子等の不透明剤、ファイバ、顔料およびこれらの混合物が含まれる。好ましい赤外線反射剤には、アルミニウム、ステンレス鋼、銅/亜鉛合金、銅/クローム合金等の金属粒子、顔料およびペーストが含まれる。アルミニウム粒子、顔料およびペーストが殊に好ましい。赤外線反射剤が保護バインダー中に沈下するのを防ぐため、熱反射性トップ層が沈降防止剤を含有していると好都合である。適当な沈降防止剤には、市販のヒュームド金属酸化物、粘土および有機懸濁剤が含まれる。好ましい沈降防止剤は、ヒュームドシリカ等のヒュームド金属酸化物、およびヘクトライト等の粘土である。熱反射層は、非発泡性表面活性剤等の湿潤剤も含有できる。
【0029】
熱反射性トップ層の好ましい配合は、強化用ファイバを含有する。強化用ファイバは、付加的な機械的強度を熱反射性トップ層に、したがって耐熱性絶縁複合材料に与えることができる。ファイバガラス、アルミナ、燐酸カルシウム鉱物ウール、ウオラストナイト、セラミック、セルロース、カーボン、綿、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアラミド、アクリル系樹脂、フエノール系樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、PEEK,ポリプロピレンおよび他のタイプのポリオレフィン、またはこれらの混合物等の任意の適当なタイプのファイバが使用できる。好ましいファイバは、耐熱性および耐火性であり、吸入される部分を有しないファイバである。このファイバはまた、赤外線輻射を反射するタイプであってもよく、先に挙げた赤外線反射剤に加えてまたは赤外線反射剤の代わりに使用できる。例えば、強化と赤外線反射性の両方を提供する炭素ファイバまたは金属被覆ファイバを使用できる。このファイバは任意の適当な長さの分離したストランズの形であってもよい。
【0030】
このファイバは、例えば、ファイバを熱反射層の他の成分と共に基材に吹付ける(例えば、吹付け前に、ファイバを熱反射層の一つ以上の他の成分と混合することにより、またはファイバを絶縁ベース層に単独で吹付けることにより)ことにより塗布できる。代わりに、ファイバはウエブかネットの形であってもよい。これを、例えば、絶縁ベース層に適用し、ウエブかネット上に熱反射層の他の成分を吹付ける、拡げる、または他の方法で塗布することができる。ファイバは、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料が使われる特定の応用に対して望ましい量の機械的強度を与えるのに十分な任意の量で使用できる。典型的には、ファイバは、熱反射性トップ層中に熱反射層の重量に対して、約0.1〜50重量%、望ましくは約1〜20重量%、例えば約2〜10重量%、存在する。
【0031】
熱反射性トップ層の厚さは、ある程度、望ましい保護と強度の程度に依存する。一方では、熱反射性トップ層は任意の厚さでよいが、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の厚さを最小に維持し、したがって、熱反射性トップ層の厚さを必要最小量に減らし、特定の応用に十分な量の保護を提供するのが望ましいことが多い。一般に、約1mm以下の厚さの熱反射性トップ層により、十分な保護が提供できる。
【0032】
熱反射被覆の配合は若干の効果を持つことができるが、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の熱伝導率は、主として、絶縁ベース層の特定の配合に依存する。好ましくは、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、熱伝導率が約40mW/(m・K)以下、より好ましくは約35mW/(m・K)以下、または更により好ましくは約30mW/(m・K)以下になるように配合される。
【0033】
本発明のエーロゲル絶縁複合材料を記述するのに使われている耐熱性(“heat resistant”)なる語は、エーロゲル絶縁複合材料は高熱条件下で実質的に劣化しないことを意味する。エーロゲル絶縁複合材料は、以下の場合に本発明における意味で耐熱性と考えられる。もし、この複合材料を実施例1に記載された高熱条件下に1時間曝した後で、エーロゲル絶縁複合材料は85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは約98%以上の最初の質量、または最初の質量の全部を保持する。具体的には、熱風送風機(HG3002 LCD, ドイツ国Steinel社により製造)に接続された250W加熱体(IRB、ドイツ国Edmund Buehler社により製造)(装置の周りに配置した薄いアルミニウムパネルでトンネルを形成されている)を使用して、高熱条件が提供される。加熱体から約20mmの距離で、エーロゲル絶縁複合材料を高熱条件(加熱体に向合う熱反射層)に曝し、熱風送風機(送風機を最高の設定にし、最低の加熱設定とする)は、加熱体とエーロゲル絶縁複合材料の間に連続空気流を提供する。望ましくは、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、このような条件下で目に見えて劣化しない。
【0034】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料をある種の引火性分類の条件下で使用される場合、例えば、この複合材料が裸火または極度に高温な条件に曝される場合は、エーロゲル絶縁は望ましくは、適当な難燃剤を含有する。難燃材を耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層および/または熱反射性トップ層中に含有させることができる。適当な難燃剤には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ポリ燐酸アンモニウム、および種々の燐含有物質、および他の市販の難燃剤と発泡性防炎剤が含まれる。
【0035】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料(例えば、エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層および/または熱反射層)は、当該技術において知られる任意の種々の添加剤等の他の成分を付加的に含有できる。このような添加剤の例としては、ヒュームドシリカ、ポリアクリル酸エステル、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、ならびに天然ガム、澱粉およびデキストリン等のレオロジー制御剤および増粘剤が挙げられる。他の添加剤には、溶媒および共溶媒、ワックス、表面活性化剤、および硬化剤および架橋剤(必要ならば)が含まれる。ただし、これらは、バインダーシステムが疎水性エーロゲル粒子を有意な程度には浸透しないような量用いられる。
【0036】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物の製造方法
【0037】
本発明は、更に、下記(a),(b)を含む、本質的に両者を含む、または両者を含む耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の製造方法を提供する。(a)疎水性エーロゲル粒子、水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、または、これらを含む絶縁ベース層を基材上に供給すること、および(b)保護バインダーと赤外線反射剤を含む熱反射性トップ層を絶縁ベース層の表面に塗布すること。本方法により製造された耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の種々の要素は前に述べた通りである。
【0038】
絶縁ベース層は、任意の適当な方法により提供される。例えば、疎水性エーロゲル粒子と水性バインダーを任意の適当な方法で一緒にして、エーロゲルバインダー組成物を形成させ、この組成物をついで、例えば、基材上に拡げるまたは吹付けることにより基材に塗布して絶縁ベース層を形成できる。
【0039】
しかしながら、好ましくは、絶縁ベース層は、本発明の別の方法により提供される。特に、絶縁ベース層は下記(a),(b),(c),(d)により与えられる。(a)水性バインダーと発泡剤を含む、本質的に両者を含む、または両者を含むバインダー組成物を供給すること、(b)バインダー組成物を攪拌して発泡バインダー組成物を生成させること、(c)発泡バインダー組成物と疎水性エーロゲル粒子を一緒にしてエーロゲルバインダー組成物を生成させること、および(d)エーロゲルバインダー組成物を基材に塗布して絶縁ベース層を生成させること。
【0040】
または、絶縁ベース層が下記(a),(b),(c)により与えられる。(a)水性バインダーと必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含むバインダー組成物を供給すること、(b)疎水性エーロゲル粒子を含む、本質的にこれを含む、またはこれを含むエーロゲル組成物を供給すること、および(c)バインダー組成物とエーロゲル組成物を基材に同時に塗布すること、ここにバインダー組成物はエーロゲル組成物と混合され絶縁ベース層を生成する。
【0041】
エーロゲル組成物は、以下のものを含む、本質的に以下のものを含む、または以下のものを含む:ここに前に述べたように疎水性エーロゲル粒子、および必要ならば適当なビヒクル。バインダー組成物および/またはエーロゲル組成物は、本発明にしたがい(例えば、一緒にまたは別々に)、エーロゲルバインダー組成物または組成物の成分を基材上に拡げる、または好ましくは吹付ける等の任意の適当な方法により基材に塗布できる。
【0042】
“同時に塗布する”とは、エーロゲル組成物およびバインダー組成物が別々に基材に同時に供給されることを意味する。ここにエーロゲル組成物およびバインダー組成物は供給プロセスの際に混合される(例えば、流路中でまたは基材表面上で混合される)。これは、例えば、エーロゲル組成物とバインダー組成物を同時に基材上に吹付けることにより達成される。これによりエーロゲル組成物およびバインダー組成物は別々の流路で供給される。これらの流路は、吹付け装置内で合流させ、一緒にしたエーロゲル−バインダー組成物を基材に供給する、またはこれらの流路は完全に別々であり、エーロゲル組成物とバインダー組成物がそれぞれ基材に到達するまで両者は一緒にされない。
【0043】
この点において、本発明は、エーロゲルバインダー組成物の製造方法ならびにこの方法により製造された組成物を提供し、本組成物は、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層を提供するのに使用でき、または他の目的に使用できる。特に、エーロゲルバインダー組成物の製造方法は、下記(a),(b),(c)を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含む。(a)水性バインダーと発泡剤を含む、本質的に両者を含む、または、両者を含むバインダー組成物を供給すること、(b)バインダー組成物を攪拌して発泡バインダー組成物を生成すること、および(c)発泡バインダー組成物と疎水性エーロゲル粒子を一緒にしてエーロゲルバインダー組成物を生成すること。
【0044】
または、エーロゲルバインダー組成物は本発明にしたがい、下記(a),(b),(c)を含む方法により製造される。(a)水性バインダーおよび必要に応じて発泡剤を含む、本質的にこれらを含む、またはこれらを含むバインダー組成物を供給すること、(b)疎水性エーロゲル粒子を含む、本質的にこれを含む、またはこれを含むエーロゲル組成物を供給すること、および(c)バインダー組成物とエーロゲル組成物を基材に同時に塗布すること、ここにバインダー組成物はエーロゲル組成物と混合されエーロゲルバインダー組成物を生成する。
【0045】
これらのプロセス工程により疎水性エーロゲル粒子をバインダー組成物と一緒にすることにより、望ましい、ユニークではないにしても、性質を持つエーロゲルバインダー組成物が得られ、この組成物は本発明のもう一つの側面である。殊に、特定の説に束縛されるのを望むことなしに、本発明にしたがって製造したエーロゲルバインダー組成物はエーロゲル粒子を水に浸す(“wet−out”)傾向が減少していることを示し、これにより、エーロゲルバインダー組成物の熱伝導率を増加させる。本発明の方法はまた、高エーロゲル/バインダー比の使用を可能にし、この高い比の使用は、エーロゲルバインダー組成物の熱的性能を高め、その密度を減少させる。更に、本発明の方法は、吹付け可能なエーロゲルバインダー組成物を提供し、エーロゲルバインダー組成物の応用と使用を柔軟にする。疎水性エーロゲル粒子、バインダー組成物および発泡剤は、エーロゲル絶縁組成物との関連で先にここで述べた通りである。
【0046】
バインダーのみまたはこれと発泡剤を一緒にして攪拌または混合により発泡させるのが好ましいが、他の発泡方法を使用できる。例えば、圧縮ガスまたは推進薬を使ってバインダーを発泡できる、またはバインダーをノズル(例えば、高いせん断応力または乱流を生じるノズル)を通過させることによって発泡させることができる。
【0047】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の熱反射性トップ層は、任意の適当な方法で、絶縁ベース層の表面に塗布できる。熱反射性トップ層の成分は、ここで前に述べた通りである。好ましくは、熱反射性トップ層の成分を混合により一緒にし、熱反射被覆組成物を生成させ、ついで、これを適当な方法、例えば、拡げるまたは吹付けることにより絶縁ベース層の表面に塗布する。
【0048】
熱反射性トップ層を絶縁ベース層と接合するためには接着剤またはカップリング剤が使われるが、絶縁ベース層または熱反射性トップ層のバインダーが望ましい接合を提供できる限り、本発明に従へば、このような接着剤は必要でない。熱反射性トップ層は、好ましくは、絶縁ベース層が湿潤な間に、ベース層に塗布されるが、しかし、絶縁ベース層を乾燥した後で塗布できる。エーロゲル絶縁複合材料(例えば、エーロゲル絶縁複合材料の絶縁ベース層および/または熱反射性トップ層)またはエーロゲルバインダー組成物は、環境条件下に置くこと、または、例えば、オブン中での加熱により乾燥できる。
【0049】
応用および最終用途
本発明の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲル基材組成物ならびにこれらの製造方法は、もちろん任意の適当な目的に使用できる。しかしながら、本発明の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物は、応用の形態(モード)において熱安定性、機械的強度、および/または柔軟性を提供する絶縁を要求する応用に殊に適している。例えば、好ましい配合、殊に吹付け可能な配合にしたがう耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、表面を高温から絶縁するのに有用であり、通常の方法では保護するのが困難なまたは費用がかかる表面に容易に適用できる。
【0050】
このような応用の例としては、エンジンコンパートメント、ファイアーウオール、燃料タンク、ステアリングコラム、オイルパン、トランクおよびスペアタイヤ等の動力化したビークルおよび装置の種々の構成部分、または動力化したビークルまたは装置の任意の他の構成部分が挙げられる。耐熱性エーロゲル絶縁複合材料は、動力化したビークルの下部を絶縁するのに殊によく適しており、殊に排気ガスシステムに近い構成部分に対する遮蔽として殊に適している。もちろん、本発明の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物を使用して、多くの他の応用において絶縁を提供することができる。例えば、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物を使用して、パイプ、壁および加熱または冷却のダクト絶縁することができる。
【0051】
耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物の好ましい配合は、吹付け可能な配合であるが、耐熱性エーロゲル絶縁複合材料およびエーロゲルバインダー組成物はまた、押出しまたは成形してタイル、パネルまたは種々の造形品等の絶縁品を提供できる。この点において、本発明は、また、本発明の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料またはエーロゲルバインダー組成物を含む、前に挙げた任意の基材等の基材を提供し、また任意の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料またはエーロゲルバインダー組成物の使用を含む基材を絶縁する方法を提供し、またはこれらの製造方法または使用方法を提供する。
【0052】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、もちろん、これらの実施例を、何れにしても本発明の範囲を制限するものと解するべきではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
本実施例では、本発明にしたがう耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の調製と性能について説明する。
【0054】
200gの水性アクリル樹脂系バインダー(Leafsol(商品名)168/1、ドイツ国 Leafatex Chemie社製)、1.7gの発泡剤(Hostapur(商品名)OSB、ドイツ国 Clariant社製)および30gのポリ燐酸アンモニウム難燃剤(Exploit(商品名)AP420、ドイツ国 Clariant有限責任会社製)を通常のミキサー中で混ぜてエーロゲルバインダー組成物を調製した。3 dm3の発泡バインダー組成物が得られるまでエーロゲルバインダー組成物を混合した。ついで、攪拌しながら、100gの乳白化疎水性エーロゲルビーズ(Nanogel(商品名)ビーズ、ドイツ国Cabot Nanogel社製)をゆっくり添加して、3 dm3の体積は維持し、エーロゲルバインダー組成物を得た。
【0055】
58gの水性アクリル樹脂系バインダー(WorleeCryl(商品名)1218、ドイツ国 Worlee Chemie社製)と22.6gのヒュームドシリカ沈降防止剤(CAB−O−SPERSE(商品名)、マサチューセッツ州キャボット(Cabot)社製)および19.4gの赤外線反射剤としてのアルミニウム顔料ペースト(Stapa(商品名)Hydroxal WH 24 n.l.、ドイツ国Eckart社製)を一緒にして熱反射被覆組成物を製作した。この組成物を電磁攪拌器で穏やかに攪拌した。
【0056】
自動車の下部の成形部品から熱可塑性成形の四つの正方形(10cm×10cm)試験パネルを切り出した。第一の試験パネル(パネル1A)には被覆が無い。第二の試験パネル(パネル1B)は、排気システムの熱から自動車下部を保護するために使われるタイプの通常のアルミニウム熱遮蔽で覆った。第三の試験パネル(パネル1C)は、エーロゲルバインダー組成物で被覆した。第四の試験パネル(パネル1D)は、エーロゲルバインダー組成物で被覆し基材絶縁層を形成し、熱反射組成物で被覆し熱反射性トップ層を形成し、耐熱性エーロゲル絶縁複合体を調製した。通常の吹付け技術により、エーロゲルバインダー組成物と熱反射組成物を試験パネルに塗布した。パネルを塗料乾燥オブン中、130℃で2時間乾燥させた。
【0057】
その後、四つの試験パネルの各々は、熱風送風機(HG3002 LCD、ドイツ国Steinel社により製造)に接続した250W加熱体(IRB、ドイツ国Edmund Buehler社により製造)に曝した。加熱体は垂直に置かれてあり、試験パネルは熱面から約20mm離して垂直に保持された。コルクをスペーサーとして用いた。熱風送風機の出口は、加熱体から12cm離して置き、ヒーター表面と試験パネルの間(完全なセット後)に空気の連続流を供給するように配置した。三つの薄い矩形のアルミニウムパネル(40×20cm)を装置の周りにトンネルが形成されるように配置した。良好な熱接触が確保されるように冷却用放熱器グリースを用い、温度プロ−ベを試験パネルの裏側に接触させて置いた。試験パネルの温度をディジタル温度計に表示した。温度が安定するまで、または深刻な熱的損傷が見られるまで、試験パネルを加熱体に曝した。結果を下の表1に示す。
【0058】
表1
【表1】

*:プラスチック試片が非常に著しく分解し始めるので、安定した温度に到達する前に実験を終わった
【0059】
結果は以下のことを示す。遮蔽または被覆無しでは、熱可塑性試料(パネル 1A)は熱により急速に損傷を受けた。パネルの裏側の到達温度は66℃に過ぎないにも関わらず、単一エーロゲル含有層(熱反射表面被覆無し)(パネル1C)は、高加熱条件下で分解した。通常のアルミニウム熱遮蔽(試料1B)および本発明のエーロゲル複合材料システム(試料1D)は熱可塑性試料への熱損傷を防ぎ、温度を比較的低く保った。
【0060】
実施例2
以下の実施例により、本発明による耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の調製と熱伝導率が説明される。
【0061】
エーロゲルバインダー組成物を次のようにして調製した。200gの水性アクリル樹脂系バインダー(Leafsol(商品名)、ドイツ国 Leafatex Chemie 社製)、30gの燐酸アンモニウム難燃剤(Exploit(商品名)AP420、ドイツ国 Clariant 社製)および1.5gの発泡剤(Hostapur(商品名)OSB、ドイツ国 Clariant 社製)を一緒にし、通常のミキサーで中程度の速さで完全に発泡するまで混合した。100gの乳白化エーロゲル粒子(Nanogel(商品名)ビーズ、ドイツ国 Cabot Nanogel 社製)を発泡バインダー組成物にゆっくり添加してエーロゲルバインダー組成物を得た。
【0062】
13.0gのアルミニウム顔料(Chromal X(商品名)、ドイツ国Eckart社により製造)、27.3gの脱イオン水および55.6gのアクリル樹脂系バインダー(組成物2Aの場合:WorleeCryl(商品名)1218、ドイツ国 Worlee Chemie社製;組成物2Bの場合:Leafsol(商品名)、ドイツ国 Leafatex Chemie社製)を一緒にして、二つの熱反射被覆組成物(被覆組成物2Aおよび2B)を調製した。
【0063】
試料調製のため、20×20cm成形品を試料調製用アルミニウム箔で覆った。エーロゲルバインダー組成物をスプレイガンを用い4バールの圧力で成形品に吹付けて、第一試料(試料2A)を調製した。その直後に、被覆組成物2Aをスプレイガンを用い2バールの圧力でエーロゲルバインダー組成物の表面に吹付けた。被覆組成物2Bを用いる以外は同じ手順で第二の試料(試料2B)を調製した。これらの試料は約12mmの厚さであった。130℃で90分を越える時間、試料を乾燥させ、Lamda Control(商品名)A50熱伝導率装置(ドイツ国Hesto Electronik社により製造)を用い、各試料の熱伝導率を測定した。最初の熱伝導率測定の後で、試料2Aに被覆組成物2Aの第二の被覆を塗布し、熱伝導率を再度測定した。結果を表2に示す。
【0064】
表2
【表2】

【0065】
これらの結果は、低熱伝導率を有するエーロゲル複合材料は本発明にしたがって調製できることを示している。
【0066】
刊行物、ここに挙げた出願特許および特許を含むすべての参考文献は、本明細書に参考として、同じ程度に組入れた。各参考文献はそれぞれに具体的に参考として組入れられるように、また、ここに十分にそのまま記載されるように。
【0067】
本発明を述べる文脈における(特に、下記の特許請求項の文脈における)、“a”,“an”および“the”ならびに類似の指示語の使用は、別に本明細書で指示されるかまたは文脈で矛盾するのでなければ、単数と複数の両方を包含すると解釈するべきである。用語“comprising”,“having”,“including”および“containing”は、別に言及がなければ、制限の無い用語(open-ended terms)(すなわち、“含むが制限されない”ことを意味する)と解釈するべきである。ここでの数値の範囲の列挙は、別にここで示すのでなければ、その範囲に入る各分離した数値を別々に示す簡略な伝達法として役立てようと単に意図しているだけであり、各分離した数値は、独立して挙げられているかのごとくに明細書に書込まれている。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書に別に示されているか、または文脈上明瞭に否定されるのでなければ、任意の適当な順序で行うことができる。ここで提供される任意のならびにすべての例(examples)または典型的な言葉(例えば、等(“such as”)の使用は、単に本発明をよりよく明確にしようとするためであり、別に要求するのでなければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉は、本発明の実施に必須な任意の非請求の要素(non-claimed element)と解すべきでない。
【0068】
本発明を実施するのに最良と発明者に知られている形態(モード)を含んだ本発明の好ましい実施態様は、ここに記載されている。これらの好ましい実施態様を変化させたものは、当該分野で通常の技術を持つ者であれば、これまでの記述を読めば、明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者(skilled artisans)がこのような変化させたものを適切として使用することを期待し、また、具体的にここに記載された以外の仕方で本発明が実施されることを意図している.したがって、本発明は、関連して付加された請求項で挙げられる要旨の修正項と同等項を適用可能な法律により認められるものとして含む。更に、すべての可能な要旨の変形における上述の要素の組合わせは、ここで指示されるかまたは文脈上明瞭に否定されない限り、包括的に本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a),(b)を含む耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
(a) 疎水性エーロゲル粒子と水性バインダーを含む絶縁ベース層
(b) 保護バインダーと赤外線反射剤を含む熱反射性トップ層
【請求項2】
疎水性エーロゲル粒子が約0.1〜3mmの平均粒径(重量による)を有する請求項1記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項3】
疎水性エーロゲル粒子が約0.5〜2mmの平均粒径(重量による)を有する請求項2記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項4】
約95%以上の疎水性エーロゲル粒子(重量による)が約0.5〜2mmの粒径を有する請求項2記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項5】
疎水性エーロゲル粒子が不透明(opacifying)剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項6】
不透明剤がチタニア、カーボンブラックまたはこれらの混合物である請求項5記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項7】
疎水性エーロゲル粒子がファイバを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項8】
疎水性エーロゲル粒子がほぼ球状である請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項9】
絶縁ベース層が5〜99体積%の疎水性エーロゲル粒子を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項10】
絶縁ベース層が発泡剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項11】
絶縁ベース層が1〜95体積%の水性バインダーを含有する請求項1〜10のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項12】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダー、シリコーン含有バインダー、フェノール系バインダーまたはこれらの混合物である請求項1〜11のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項13】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダーである請求項12に記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項14】
水性バインダーが発泡バインダーある請求項1〜13のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項15】
絶縁ベース層が更に難燃剤を含有する請求項1〜14のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項16】
絶縁ベース層が約1〜10mm厚である請求項1〜15のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項17】
絶縁ベース層が約40mW/(m・K)の熱伝導率を有する請求項1〜16のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項18】
絶縁ベース層が約0.5g/cm3以下の密度を有する請求項1〜17のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項19】
保護バインダーがアクリル樹脂系バインダー、シリコーン含有バインダー、フェノール系バインダーまたはこれらの混合物である請求項1〜18のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項20】
保護バインダーがアクリル樹脂系バインダーである請求項19記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項21】
保護バインダーが架橋されたバインダーである請求項1〜20のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項22】
熱反射性トップ層が更に沈降防止剤を含有する請求項1〜21のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項23】
赤外線反射剤が金属粒子を含有する請求項1〜22のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項24】
金属粒子がアルミニウム粒子である請求項23に記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項25】
熱反射性トップ層が更に難燃剤を含有する請求項1〜24のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項26】
熱反射性トップ層が更に強化用ファイバを含有する請求項1〜25のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項27】
熱反射性トップ層が更に炭素ファイバを含有する請求項1〜26のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項28】
熱反射性トップ層が約1mm以下の厚さである請求項1〜27のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれかに記載の耐熱性エーロゲル絶縁複合材料を含有する基材(substrate)。
【請求項30】
基材が動力化した(motorized)ビークルまたは装置の構成部分である請求項29記載の基材。
【請求項31】
基材が動力化したビークルの下部またはその部分である請求項30の基材。
【請求項32】
下記(a)、(b)を含む耐熱性エーロゲル絶縁複合材料の製造方法。
(a) 疎水性エーロゲル粒子と水性バインダーを含む絶縁ベース層を基材上に供給すること、および
(b) 保護バインダーと赤外線反射剤を含む熱反射性トップ層を絶縁ベース層の表面に塗布すること
【請求項33】
絶縁ベース層が下記(a),(b),(c),(d)により与えられる請求項32記載の方法。
(a) 水性バインダーと発泡剤を含むバインダー組成物を供給すること
(b) バインダー組成物を攪拌して発泡バインダー組成物を生成させること
(c) 発泡バインダー組成物と疎水性エーロゲル粒子を一緒にしてエーロゲルバインダー組成物を生成させること、および
(d) エーロゲルバインダー組成物を基材に塗布して絶縁ベース層を生成させること
【請求項34】
絶縁ベース層が下記(a),(b),(c)により与えられる請求項32記載の方法。
(a) 水性バインダーを含有するバインダー組成物を供給すること
(b) 疎水性エーロゲル粒子を含有するエーロゲル組成物を供給すること、および
(c) バインダー組成物とエーロゲル組成物を基材に同時に塗布すること、ここにバインダー組成物はエーロゲル組成物と混合され絶縁ベース層を生成する
【請求項35】
吹付けにより絶縁ベース層を基材に塗布する請求項32〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
吹付けによりトップ層を絶縁ベース層の表面に塗布する請求項32〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
絶縁ベース層が湿潤な間に、トップ層を絶縁ベース層に塗布する請求項32〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
疎水性エーロゲル粒子が約0.1〜3mmの平均粒径(重量による)を有する請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
疎水性エーロゲル粒子が約0.5〜2mmの平均粒径(重量による)を有する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
約95%以上の疎水性エーロゲル粒子(重量による)が約0.5〜2mmの粒径を有する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
疎水性エーロゲル粒子が不透明剤を含有する請求項32〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
不透明剤がチタニアまたはカーボンブラックである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
疎水性エーロゲル粒子がファイバを含有する請求項32〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
疎水性エーロゲル粒子がほぼ球状である請求項32〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
絶縁ベース層が5〜99体積%の疎水性エーロゲル粒子を含有する請求項32〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
絶縁ベース層が発泡剤を含有する請求項32または請求項34〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
絶縁ベース層が1〜95体積%の水性バインダーを含有する請求項32〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダー、シリコーン含有バインダー、フェノール系バインダーまたはこれらの混合物である請求項32〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダーである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
水性バインダーが発泡バインダーである請求項32または請求項34〜49に記載の方法。
【請求項51】
絶縁ベース層が更に難燃剤を含有する請求項32〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
絶縁ベース層が約1〜15mm厚である請求項32〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
絶縁ベース層が約40mW/(m・K)以下の熱伝導率を有する請求項32〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
絶縁ベース層が約0.5g/cm3以下の密度を有する請求項32〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
保護バインダーがアクリル樹脂系バインダー、シリコーン含有バインダー、フェノール系バインダーまたはこれらの混合物である請求項32〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
保護バインダーがアクリル樹脂系バインダーである請求項55記載の方法。
【請求項57】
保護バインダーが架橋されたバインダーである請求項32〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
熱反射性トップ層が更に沈降防止剤を含有する請求項32〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
赤外線反射剤が金属粒子を含有する請求項32〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
金属粒子がアルミニウム粒子である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
熱反射性トップ層が更に難燃剤を含有する請求項32〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
熱反射性トップ層が約1mm以下の厚さである請求項32〜61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
熱反射性トップ層が更に強化用ファイバを含有する請求項32〜62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
熱反射性トップ層が更に炭素ファイバを含有する請求項32〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
下記(a),(b),(c)を含むエーロゲルバインダー組成物を製造する方法。
(a) 水性バインダーと発泡剤を含むバインダー組成物を供給すること
(b) バインダー組成物を攪拌して発泡バインダー組成物を生成すること、および
(c) 発泡バインダー組成物と疎水性エーロゲル粒子を一緒にしてエーロゲルバインダー組成物を生成すること
【請求項66】
下記(a),(b),(c)を含むエーロゲルバインダー組成物の製造方法。
(a) 水性バインダーを含有するバインダー組成物を供給すること
(b) 疎水性エーロゲル粒子を含有するエーロゲル組成物を供給すること、および
(c) バインダー組成物とエーロゲル組成物を基材に同時に塗布すること、ここにバインダー組成物はエーロゲル組成物と混合されエーロゲルバインダー組成物を生成する。
【請求項67】
疎水性エーロゲル粒子が約0.1〜3mmの平均粒径(重量による)を有する請求項65〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
疎水性エーロゲル粒子が約0.5〜2mmの平均粒径(重量による)を有する請求項67に記載の方法。
【請求項69】
約95%以上の疎水性エーロゲル粒子(重量による)が約0.5〜2mmの粒径を有する請求項68に記載の方法。
【請求項70】
疎水性エーロゲル粒子がほぼ球状である請求項65〜69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
エーロゲルバインダー組成物が5〜99体積%の疎水性エーロゲル粒子を含有する請求項65〜70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
エーロゲルバインダー組成物が0.1〜5重量%の発泡剤を含有する請求項65〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
エーロゲルバインダー組成物が1〜95体積%の水性バインダーを含有する請求項65〜72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
疎水性エーロゲル粒子が不透明剤を含有する請求項65〜73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
不透明剤がチタニアまたはカーボンブラックである請求項74に記載の方法。
【請求項76】
疎水性エーロゲル粒子がファイバを含有する請求項65〜75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダー、シリコーンバインダー、尿素−フォルムアルデヒド樹脂バインダーまたはこれらの混合物である請求項65〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
水性バインダーがアクリル樹脂系バインダーである請求項77に記載の方法。
【請求項79】
エーロゲルバインダー組成物が約40mW/(m・K)以下の熱伝導率を有する請求項65〜78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
エーロゲルバインダー組成物が約0.5g/cm3以下の密度を有する請求項65〜79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
請求項65〜80のいずれかに記載の方法により製造されたエーロゲルバインダー組成物。

【公開番号】特開2010−12465(P2010−12465A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−160235(P2009−160235)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【分割の表示】特願2003−563706(P2003−563706)の分割
【原出願日】平成15年1月29日(2003.1.29)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】