説明

耐震棚板

【課題】地震などによる強い振動が発生しても外れにくい耐震棚板を提供する。
【解決手段】棚板1は、受け具20に対して前後方向にスライドさせることにより棚本体10に取り付けられる。棚板1を取り付ける過程で、棚板1の外れ防止部20が受け具20の下面に重なる。これにより受け具20に対する棚板1の上方への移動が阻止された状態になる。したがって、この棚板1は、上下方向の強い振動が発生しても受け具20から外れにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などによる上下方向の強い振動が発生しても外れにくい耐震棚板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書架等における多くの棚板は、棚本体を構成する前後左右の4本の支柱に形成された互いに同じ高さに位置する4つの係合孔に受け具(棚ダボ、ブラケット、等)を各々取り付け、これら合計4個の受け具によってその左右両端前後部が下から受け支えられた状態で棚本体に取り付けられる。4本の支柱の代わりに前後部に係合孔を有して相対向する左右一対の側板を有する棚の場合も同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、従来の多くの棚板は、受け具によって下から受け支えられた状態すなわち、受け具の上に単に載せ置かれた状態で棚本体に取り付けられているため、地震などにより上下方向に大きく振動すると、受け具から外れてしまうおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、上下方向の強い振動が発生しても外れにくい耐震棚板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の耐震棚板は、棚本体に取り付けられた受け具にその左右両端の前後部が載せ置かれた状態で当該棚本体に取り付けられる棚板であって、
前記受け具に対して前後方向にスライドさせて前記棚本体への取り付けを行うことにより前記受け具の下面に重なり上方への移動が前記受け具により阻止された状態になる外れ防止部を有することを特徴とする。
この耐震棚板は、受け具に対して前後方向にスライドさせることにより棚本体に簡単に取り付けることができ、取り付けた後は外れ防止部が受け具の下面に重なることにより、受け具に対する上方への移動が阻止された状態になるので、上下方向の強い振動が発生しても受け具から外れにくい。
【0005】
本発明の耐震棚板において、前記受け具は、前後方向に揺動可能に前記棚本体に引っ掛けて取り付けられ、
前記受け具には、前記棚板と係合して前記棚板の前後方向への移動を阻止する係合爪部が形成され、
前記棚板の左右両端前後部には、前記係合爪部と係合する係合部が形成され、
前記係合部のうち前記棚板の前後部いずれか一方の係合部は、前記棚本体への取り付け時における前記受け具に対する前記棚板の前後方向へのスライドを許容し得る形状・寸法に形成され、
前記外れ防止部は、前記一方の係合部の少なくとも一部と重なる位置に設けられていることが望ましい。
この耐震棚板は、その前後一端が他端よりも下になるように傾けた姿勢で、当該下になっている方の左右両端部を左右の受け具に載せ置き、この状態で斜め下向きにスライドさせることにより、左右の外れ防止部をそれぞれ左右の受け具の下面に重なるように配置することができる。その後、他端を下げていくことにより、他端側の左右両端部も左右の受け具に載せ置かれる。このとき、受け具の係合爪部が棚板の係合部に係合し、前後方向の振動が発生しても受け具から外れにくい状態になる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地震などによる上下方向の強い振動が発生しても外れにくい耐震棚板を簡単な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】耐震棚板を備えたスチール書棚の全体構造を例示する部分破断斜視図
【図2】耐震棚板が棚本体に取り付けられている状態を例示する要部斜視図
【図3】耐震棚板が棚本体に取り付けられている状態を例示する要部断面図
【図4】(a):受け具の正面図 (b):受け具の右側面図 (c):受け具の左側面図 (d):受け具の平面図
【図5】(a):耐震棚板の部分正面図 (b):耐震棚板の部分底面図 (c):耐震棚板のC−C断面図 (d):耐震棚板の右側面図
【図6】(a):耐震棚板の取り付け方法を示す要部平面図 (b):耐震棚板の取り付け方法を示す要部断面図
【図7】(a):耐震棚板が棚本体に取り付けられている状態を例示する断面図 (b):耐震棚板が棚本体に取り付けられている状態を例示する別の位置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明の耐震棚板を、図書館等に設置されるスチール書棚の棚板に適用した場合を例にとり説明する。
【0009】
図1に示すように、耐震棚板(以下、単に棚板という。)1は、書棚の棚本体10を構成する左右一対の側板11間に架け渡して設けられている。棚本体10の後部には背板12が設けられ、最下部には底板13が設けられている。側板11の前端近傍と後端近傍には、受け具20を取り付けるための円形の係合孔14f、14rが形成されている。棚板1は、左右の側板11に形成された互いに同じ高さに位置する4つの係合孔14f、14rに受け具20を各々取り付け、これら合計4個の受け具20によってその左右両端前後部が下から受け支えられた状態で棚本体10に取り付けられる。係合孔14f、14rは、受け金具20を取り付ける高さを変更できるように、各側板11に上下方向に等間隔に複数対設けられている。
【0010】
図2乃至図4に示すように、受け具20は、側板11の端部下面に係合してその荷重を支える支持部(水平部)20aと、側板11に連結される連結部(垂直部)20bとを有する断面略L字形の金具である。支持部20aの先端の前後方向中央部には、棚板1と係合して棚板1の前後方向への移動を阻止する係合爪部20cが設けられている。係合爪部20cは支持部20aから上方に直角に折曲して突出している。連結部20bには、側板11の係合孔14f、14rに係合するフック部20dが設けられている。フック部20dは連結部20bの上端近傍中央部から側板11側に突出し斜め下向きに折曲している。受け具20は、このフック部20dを係合孔14f、14rに挿入して引っ掛けることにより側板11に前後方向に揺動可能に垂下された状態で取り付けられる。
【0011】
図2及び図5に示すように、棚板1は、直角四辺形の平板部2と、平板部2の周縁4辺部をそれぞれ直角に複数回折り曲げ加工することにより形成された断面矩形状の箱形のフレーム部(リブ構造部)3R、3L、3f、3rとを有している。平板部2の下面には、その長手方向に沿って補強部材4が設けられている。この補強部材4とフレーム部3R、3L、3f、3rとによって、棚板1の耐荷重性を十分なものとしている。左側のフレーム部3Lは図示されていないが、その構造は右側のフレーム部3Rと対称構造である。
【0012】
棚板1の後端部の左右両端には、耐震金具(左側の耐震金具5Lは不図示)5(5R)が設けられている。耐震金具5(5R、5L)は、平板部2の下面に溶接により強固に固定されている。右側の耐震金具5Rは、平板部2の下面の後部右端部に接して固定されている平板状の基部5aと、基部5aから下方に直角に折曲して延びる垂直部5bと、垂直部5bの下端中央部から直角に折曲して棚板1の右端のフレーム部3R側に突出した外れ防止部5cとを有している。図示されていないが、左側の耐震金具5Lは、平板部2の下面の後部左端部に接して固定されている平板状の基部5aと、基部5aから下方に直角に折曲して延びる垂直部5bと、垂直部5bの下端中央部から直角に折曲して棚板1の左端のフレーム部3L(不図示)側に突出した外れ防止部5cとを有している。両耐震金具5R、5Lの外れ防止部5cは、それぞれ受け具20の支持部20aの下面に重なるように位置している。右側の耐震金具5Rの垂直部5bと右端のフレーム部3Rとの間及び左側の耐震金具5Lの垂直部5bと左端のフレーム部3L(不図示)との間には、受け具20の係合爪部20cが前後方向にスライドして出入り可能な隙間が形成されている。
【0013】
棚板1の左右のフレーム部3R、3L(不図示)の前端近傍及び後端近傍には、受け具20の係合爪部20cと係合する切欠部(係合部)6f、6rが形成されている。フレーム部3R、3L(不図示)の前端近傍の切欠部6fは、係合爪部20cが丁度嵌るように寸法設定されている。一方、後端近傍の切欠部6rは、棚本体10への取り付け時における受け具20に対する棚板1の前後方向へのスライドを許容し得るように、後端側が開いた長寸の切欠部である。
【0014】
上記のように構成された棚板1の取り付け方法について説明する。
図6(a)、図6(b)は棚板1の取り付け方法を示している。
棚板1を取り付けるに際し、左右の側板11に形成された互いに同じ高さに位置する4つの係合孔14f、14rに受け具20を各々取り付けておく。
そして先ず、棚板1の後端の左右両端部を、左右の側板11の後端側の係合孔14rに取り付けられている両受け具20に載せ置く。このとき、図6(b)に示すように、棚板1を後傾させておく。両受け具20は前後方向に揺動可能であるので棚板1に倣って後傾する。
つぎに、図6(a)、図6(b)に矢印Aで示すように、棚板1を両受け具20に載せ置いた状態で後方すなわち棚本体10の奥側にスライドさせる。すると、棚板1の後端近傍の両切欠部6rの前端部6aが両受け具20の係合爪部20cに当接し、棚板1の後方への位置決めがなされると同時に、棚板1の左右の耐震金具5L、5Rの外れ防止部5cがそれぞれ左右の受け具20の支持部20aの下面に重なるように配置される。
その後、矢印Bで示すように、棚板1の手前側を下げていく。このとき、棚板1の動きに倣って両受け具20も回動する。そして、棚板1が水平姿勢になると同時に、左右の側板11の前端側の係合孔14fに取り付けられている両受け具20に棚板1の後端左右両端部が載せ置かれる。また同時に、両受け具20の係合爪部20cが棚板1の前端近傍の両切欠部6fに係合する。図7(a)、図7(b)はこのときの状態を示している。
以上の手順により、棚本体10への棚板1の取り付けが完了する。
【0015】
このように、この棚板1は、受け具20に対して前後方向にスライドさせることにより棚本体10に簡単に取り付けることができる。そして、取り付けた後は耐震金具5L、5Rの外れ防止部5cがそれぞれ左右の受け具20の支持部20aの下面に重なることにより、受け具20に対する棚板1の上方への移動が阻止された状態になる。したがって、この棚板1は、地震などによる上下方向の強い振動が発生しても受け具20から外れにくい。また、4個の受け具20の係合爪部20cが棚板1の前後左右四箇所の切欠部6f、6rに係合するため、前後方向の振動が発生しても外れにくい。
【0016】
なお、上記の実施形態の例では、受け具20が係合爪部20cを有し、棚板1が係合爪部20cと係合する切欠部6f、6rを有しているが、前後方向の振動に対する耐震性を問題にしないならば、係合爪部20c及び切欠部6f、6rは省略してもよい。
【0017】
また、上記の例では、棚板1の左右のフレーム部3R、3Lに、受け具20の係合爪部20cを受け入れて係合する切欠部6f、6rが設けられているが、切欠部6f、6rの代わりに、係合爪部20cと当接して係合する突起部などを設けてもよい。
【0018】
また、上記の例では、外れ防止部5cを有する耐震金具5を棚板1の平板部2の下面に固定することにより、棚板1に外れ防止部5cが設けられているが、棚板1の左右のフレーム部3R、3Lを折り曲げ加工などにより形成する際、その一部分に外れ防止部5cを形成してもよい。この場合、耐震金具5を省略できるので、上記の例よりも棚板1の部品数を削減し、軽量化を実現できる。
【符号の説明】
【0019】
1 耐震棚板
5(5L、5R) 耐震金具
5c 外れ防止部
6f、6r 切欠部(係合部)
10 棚本体
11 側板
14f、14r 係合孔
20 受け具
20a 支持部
20c 係合爪部
20d フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚本体に取り付けられた受け具にその左右両端の前後部が載せ置かれた状態で当該棚本体に取り付けられる棚板であって、
前記受け具に対して前後方向にスライドさせて前記棚本体への取り付けを行うことにより前記受け具の下面に重なり上方への移動が前記受け具により阻止された状態になる外れ防止部を有することを特徴とする耐震棚板。
【請求項2】
前記受け具は、前後に揺動可能に前記棚本体に引っ掛けて取り付けられ、
前記受け具には、前記棚板と係合して前記棚板の前後方向への移動を阻止する係合爪部が形成され、
前記棚板の左右両端前後部には、前記係合爪部と係合する係合部が形成され、
前記係合部のうち前記棚板の前後部いずれか一方の係合部は、前記棚本体への取り付け時における前記受け具に対する前記棚板の前後方向へのスライドを許容し得る形状・寸法に形成され、
前記外れ防止部は、前記一方の係合部の少なくとも一部と重なる位置に設けられている、請求項1の耐震棚板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94398(P2013−94398A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239667(P2011−239667)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)