説明

耳垢取り具

【課題】健康被害を引き起こすことなく耳垢を確実に取り除くことができるようにした耳垢取り具を提供する。
【解決手段】燃焼時の上昇気流によって発生させた負圧によって耳垢を吸引するようにした耳垢取り具において、耳掃除を行う人の近くに載置されるホルダー(10)と、ホルダーによって起立した姿勢に保持され、上部における燃焼によって内部に負圧を発生させる負圧発生筒(20)と、負圧発生筒の下部に連通して接続され、先端に耳の穴に気密的に差し込まれる差込み部(40)が設けられて負圧発生筒の負圧によって耳垢を吸引し、少なくとも一部に可撓性が付与されることにより耳掃除を行う人が任意の姿勢をとることを許容する耳垢吸引チューブ(30)と、を備える。ホルダーに代え、負圧発生筒の下端部が嵌入される受け具(80)を用いるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耳垢取り具に関し、特に健康被害を引き起こすことなく耳垢を確実に取り除くことができるようにした耳垢取り具に関する。
【背景技術】
【0002】
耳垢が溜まると、耳がつまって話声などが聞き取り難くなるばかりでなく、頭がぼやけたような感覚を覚えることから、耳掃除をして耳垢を取り除くことが行われる。
【0003】
従来、耳掃除をする場合、竹製、木製、プラスチック製あるいは金属製の耳掻きが用いられているが、耳掻きは誤って外耳や中耳の皮膚を傷つけるおそれがある。
【0004】
これに対し、布製又は不織布製の筒に蝋を含浸させ、筒の先端部を耳の穴に差し込み、筒の他端から燃焼させ、筒内に負圧を発生させて耳垢を中空筒内に吸引するようにした耳垢取り具が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
上述の特許文献1、2記載の耳垢取り具はこれを使用すると、話声が聞き取りやすくなるばかりでなく、耳と鼻の間に空気が流通しやすくなって頭がすっきりしたという感覚を覚え、爽快感や満足感が得られる。
【0006】
【特許文献1】特開平07−8409号公報
【特許文献2】実用新案登録第3074856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上述の特許文献1、2記載の耳垢取り具では燃焼によって発生する上昇気流を利用して筒内に負圧を発生させるようにしているので、筒を横向きにすると、筒内に発生する負圧が小さくなり、耳垢をあまり吸引できない。
【0008】
そのため、耳掃除を行う人は耳の穴を上方に向けた側臥の姿勢をとって耳垢取り具の筒を起立させる必要があったが、溶けた蝋が外耳道に進入し、痛みやかゆみ、さらには外耳炎、内耳炎あるいは鼓膜炎などの健康被害を引き起こすことが懸念され、又そのような健康被害も実際に報告されている(製品評価技術センター発行;事故情報特記ニュース(No.14) 平成9年9月30日号)。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み、健康被害を引き起こすことなく耳垢を確実に取り除くことができるようにした耳垢取り具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明に係る耳垢取り具は、燃焼時の上昇気流によって発生させた負圧によって耳垢を吸引するようにした耳垢取り具において、耳掃除を行う人の近くに載置されるホルダーと、該ホルダーによって起立した姿勢に保持され、上部における燃焼によって内部に負圧を発生させる負圧発生筒と、該負圧発生筒の下部に連通して接続され、先端に耳の穴に気密的に差し込まれる差込み部が設けられて上記負圧発生筒の負圧によって耳垢を吸引し、少なくとも一部に可撓性が付与されることにより耳掃除を行う人が任意の姿勢をとることを許容する耳垢吸引チューブと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つは負圧発生筒を耳の穴に直接差し込むのではなく、可撓性を有する耳垢吸引チューブの差込み部を耳の穴に気密的に差し込み、耳垢吸引チューブを負圧発生筒の下部に接続するようにした点にある。
【0012】
これにより、耳の穴から負圧発生筒を離すことができるので、溶けた蝋が外耳に進入することが少なくなる。しかも、耳垢吸引チューブの少なくとも一部が撓み得るので、耳掃除をする人は溶けた蝋が外耳に進入することのない姿勢をとることができる。その結果、耳の痛みやかゆみ、さらには外耳炎、内耳炎あるいは鼓膜炎などの健康被害を引き起こすおそれを確実に解消できる。
【0013】
また、耳の穴に負圧による吸引力を作用させているので、特許文献1、2記載の耳垢取り具と同様に耳垢を確実に吸い出すことができ、耳掻きを用いる場合のように誤って外耳や中耳の皮膚を傷つけるおそれもない。本件発明者らの試作によれば耳掃除の爽快感や満足感が得られることが確認された。
【0014】
本発明に係る耳垢取り具はこれを使用して耳掃除をしているときにその心地よさに起因して眠ってしまう場合があることが分かった。このように、耳垢取り具の使用中に眠ってしまうと、寝返りをして負圧発生筒を倒して火事を引き起こすおそれがある。特に、高齢者の場合には眠り込むことが懸念される。
【0015】
そこで、耳垢取り具の使用中には耳掃除をする人の近くの人が常に手で把持して負圧発生筒を起立した姿勢に保持し、耳掃除を行っている時に眠ってしまっても負圧発生筒を倒すことのないようにするのがよい。勿論、耳掃除をする人自身が手で把持して負圧発生筒を起立した姿勢に保持してもよい。
【0016】
本発明に係る耳垢取り具は、燃焼時の上昇気流によって発生させた負圧によって耳垢を吸引するようにした耳垢取り具において、耳掃除を行う人又はその近くの人によって起立した姿勢に保持され、上部における燃焼によって内部に負圧を発生させる負圧発生筒と、該負圧発生筒の下部が嵌入される受け具と、該受け具内部と連通して上記受け具に接続され、先端に耳の穴に気密的に差し込まれる差込み部が設けられて上記負圧発生筒の負圧によって耳垢を吸引し、少なくとも一部に可撓性が付与されることにより耳掃除を行う人が任意の姿勢をとることを許容する耳垢吸引チューブと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
負圧発生筒は紙製、布製又は不織布製の筒に蝋、アルコール、オイルなどの燃料を含浸させて構成されることができる。なお、特許文献1、2では負圧発生筒の先端部を耳の穴に差し込む関係上、外径5mm〜10mm、長さ200mm〜300mm程度の大きさに製作することが求められるが、本発明の場合には負圧発生筒を耳の穴に差し込む必要がないので、負圧発生筒の大きさは特に限定されない。
【0018】
また、負圧発生筒は上昇気流を発生できればよいので、セラミック製又は金属製の筒の先端面に1又は複数の嵌入孔を軸線方向に延びて穿設し、嵌入孔に燃焼材を嵌入して構成されることもできる。この場合、蝋などの固形燃料を筒先端面の嵌入穴に嵌入し、あるいはアルコールやオイルなどを嵌入穴に充填し、必要に応じて芯を埋設して燃焼材とすることができ、又芯に蝋、アルコール、オイルなどの燃料を含浸させて燃焼材とすることもできる。
【0019】
耳垢取り具を使用する上で、耳を傷つけないのが大切である。そこで、差込み口部は、耳垢吸引チューブの先端部に軟質のシール部材を取付けて構成されるのがよい。また、差込み部は、金属製又は合成樹脂製の管の先端部に軟質のシール部材を取付け該管を耳垢吸引チューブの先端部に接続して構成されることもできる。この場合、シール部材は後述の実施形態に示されるように、軟質の天然ゴムや合成ゴム、あるいは軟質プラスチックなどで構成されることができる。
【0020】
ホルダーは負圧発生筒を起立した姿勢に保持できればどのような形状や構造でもよい。例えば、ホルダーはベースプレートに負圧発生筒を差し込んで取付ける凹部を形成して構成することができる。
【0021】
耳垢吸引チューブは少なくとも一部に可撓性を有して撓み変形できるものであれば特に材質は限定されず、例えば全体を金属材料又は硬質合成樹脂材料で製作し、途中に軟質の樹脂部分を介在させて構成してもよく、又全体を軟質の合成樹脂材料、例えば塩化ビニルなどで製作されることができる。
【0022】
受け具は負圧発生筒の下部が嵌入できれば形状は特に限定されず、例えば下記の実施形態に示されるように筒状の底壁面に耳垢吸引チューブを接続する小径の取付け部を有する形態を採用することができる。また、受け具の材質は特に限定されず、金属材料や硬質合成樹脂材料を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係る耳垢取り具の好ましい実施形態を示す。本例の耳垢取り具はホルダー10、負圧発生筒20、耳垢吸引チューブ30及び差込み部40から構成されている。
【0024】
ホルダー10では円盤状ベースに筒取付け部10Aが一体的に形成され、該筒取付け部10A内壁面にはOリング10Cが装着され、又筒取付け部10Aの底部には負圧発生筒20の下端を位置決めする段部10Eが形成されている。
【0025】
また、筒取付け部10Aの外壁面にはチューブ取付け管10Bが一体的に形成され、チューブ取付け管10Bの先端部には小径部10Dが形成され、該小径部には可撓性の耳垢吸引チューブ30の後端部が外嵌されている。なお、小径部10DにはOリングを外嵌して気密性をアップさせるようにしてもよい。
【0026】
負圧発生筒20は布を筒状に巻回しこれにパラフィンを含浸させて製作され、外径は筒取付け部10Aの内面にぴったりと嵌まり合う寸法に設定されている。なお、厚みや長さは任意に設定されることができる。
【0027】
耳垢吸引チューブ30は例えば全体が軟質の塩化ビニル樹脂を用いて製作され、内径はチューブ取付け管10Bの小径部10Dに外嵌し得る寸法に設定されている。
【0028】
差込み部40は例えばアルミニウム系金属などの軽金属材料を用いて製造され、先端部には軟質ゴム性のシール部材40Aが外嵌され、差込み部40の後端部には小径部40Cが形成されてチューブ30の先端部が外嵌されるようになっている。また、差込み部40の本体と小径部40Cとの間には大径のストッパー部40Cが形成されてチューブ30の先端を位置決めできるようになっている。
【0029】
耳掃除をする場合、ホルダー10を近くに置き、ホルダー10の筒取付け部10Aに負圧発生筒20の一端を段部10Eに当たるまで差し込む一方、差込み部40の先端を耳掃除する耳50の穴に差し込むと、シール部材40Aによって差込み部40と耳50の穴との間がシールされる。
【0030】
そこで、負圧発生筒20の上端部に着火し、燃焼を起こさせると、上昇気流Aが発生して負圧発生筒20内の空気を吸い出し、負圧発生筒20内には負圧が発生し、耳50内の空気が差込み部40及び耳垢吸引チューブ30を経て負圧発生筒20内に吸い出され、そのとき耳垢も空気とともに差込み部40から耳垢吸引チューブ30内に吸引される。
【0031】
適当な時間が経過すると、耳50の穴内の耳垢の大部分を吸引によって耳50の穴から取り除くことができる。
【0032】
このとき、負圧発生筒20は差込み部40との間には耳垢吸引チューブ30が存在しているので、耳掃除を行う人は必ずしも側臥の姿勢をとる必要はなく、仰臥や着座など、快適な姿勢をとることができ、しかもどのような姿勢であっても負圧発生筒20の燃焼中に溶けたパラフィンが耳50の穴内に進入することはなく、痛みやかゆみ、外耳炎、内耳炎、鼓膜炎などの健康障害を引き起こすことはない。
【0033】
図4は第2の実施形態を示す。本例では2本の差込み部40’がU字状の板ばね40D’によって連結され、両差込み部40’の先端部は内方に折り曲げられ、折り曲げ部分の先端にはシール部材40A’が取付けられ、又両差込み部40’の後端には可撓性の耳垢吸引チューブ30の先端が外嵌され、両耳垢吸引チューブ30には第1の実施形態と同様のホルダー及び負圧発生筒が設けられている。
【0034】
本例の耳垢取り具では差込み部40’を左右の耳に各々差込み、左右を同時に耳掃除することができる。なお、本例では差込み部を両耳に差し込む聴診器タイプに構成したが、一方の耳に引っかけるジグに差込み部40を支持してイヤホーンタイプに構成することもできる。
【0035】
図5は第3の実施形態を示す。本例では負圧発生筒60が例えばセラミック材料(金属材料でもよい)を用いて円筒状に製作され、円筒の先端面には複数の嵌入孔60Aが軸線方向に延びて穿設され、嵌入孔60A内にはオイル、例えばアロマオイル70が充填されるとともに、芯70Aが差し込まれている。
【0036】
本例では芯70Aに着火すると、アロマオイル70が燃焼し、周囲に芳香を発するとともに、負圧発生筒60に上昇気流が発生し、これによって負圧発生筒50内に負圧を発生させることができる。
【0037】
そこで、負圧発生筒60の下部に第1の実施形態と同様に耳垢吸引チューブを連通して接続すると、耳垢の掃除に用いることができる。
【0038】
図6及び図7は第4の実施形態を示し、図において図1ないし図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例において、受け具80は円筒状をなし、内部にはOリング80Aが設けられ、受け具80内には負圧発生筒20の下端部が嵌入されている。
【0039】
また、受け具80の底壁面には小径の取付け部80Bが形成され、取付け部80Bには耳垢吸引チューブ30の後端部が外嵌され、耳垢吸引チューブ30の先端には差込み部40が接続され、差込み部40の先端部にはシール部材40Aが取付けられている。
【0040】
耳掃除をする場合、図7に示されるように、例えば耳掃除をする人の近くの人が受け具80及び負圧発生筒20の下部を手で握り、負圧発生筒20を起立した姿勢に保持する一方、差込み部40の先端を耳50の穴に差し込んだ後、負圧発生筒20の上端に着火すると、第1の実施形態と同様にして耳垢を吸引することができる。
【0041】
このとき、耳掃除をする人の近くの人が受け具80及び負圧発生筒20を下部を手で握っているので、耳掃除をする人が心地よさに眠ってしまっても、寝返りなどによって負圧発生筒20を倒すことはない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る耳垢取り具の好ましい実施形態を示す構成図である。
【図2】上記実施形態の使用方法を示す図である。
【図3】上記実施形態の作用を模式的に示す図である。
【図4】第2の実施形態を示す図である。
【図5】第3の実施形態を示す図である。
【図6】第4の実施形態を示す図である。
【図7】上記実施形態の使用状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ホルダー
10A 筒取付け部
10B チューブ取付け管
20 負圧発生筒
30 耳垢吸引チューブ
40 差込み部
40A シール部材
50 耳
60 負圧発生筒
60A 嵌入孔
70 アロマオイル
70A 芯
80 受け具
80B 小径の取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼時の上昇気流によって発生させた負圧によって耳垢を吸引するようにした耳垢取り具において、
耳掃除を行う人の近くに載置されるホルダーと、
該ホルダーによって起立した姿勢に保持され、上部における燃焼によって内部に負圧を発生させる負圧発生筒と、
該負圧発生筒の下部に連通され、先端に耳の穴に気密的に差し込まれる差込み部が設けられて上記負圧発生筒の負圧によって耳垢を吸引し、少なくとも一部に可撓性が付与されることにより耳掃除を行う人が任意の姿勢をとることを許容する耳垢吸引チューブと、
を備えたことを特徴とする耳垢取り具。
【請求項2】
燃焼時の上昇気流によって発生させた負圧によって耳垢を吸引するようにした耳垢取り具において、
耳掃除を行う人又はその近くの人によって起立した姿勢に保持され、上部における燃焼によって内部に負圧を発生させる負圧発生筒と、
該負圧発生筒の下部が嵌入される受け具と、
上記負圧発生筒に連通するように上記受け具に接続され、先端に耳の穴に気密的に差し込まれる差込み部が設けられて上記負圧発生筒の負圧によって耳垢を吸引し、少なくとも一部に可撓性が付与されることにより耳掃除を行う人が任意の姿勢をとることを許容する耳垢吸引チューブと、
を備えたことを特徴とする耳垢取り具。
【請求項3】
上記負圧発生筒は、紙製、布製又は不織布製の筒に燃料を含浸させて構成されている請求項1又は2記載の耳垢取り具。
【請求項4】
上記負圧発生筒は、セラミック製又は金属製の筒の先端面に嵌入孔を軸線方向に延びて穿設し該嵌入孔に燃焼材を嵌入し又は燃料を充填して構成されている請求項1又は2記載の耳垢取り具。
【請求項5】
上記燃焼材は、芯に燃料を含浸させ又は固形燃料に芯を埋設させ、上記芯の上端部を燃料から突出させたものである請求項4記載の耳垢取り具。
【請求項6】
上記耳垢吸引チューブは軟質の合成樹脂材料で製作されて全体が撓み得るようになっている請求項1記載の耳垢取り具。
【請求項7】
上記差込み口部は、上記耳垢吸引チューブの先端部に軟質のシール部材を取付けて構成されている請求項1又は2記載の耳垢取り具。
【請求項8】
上記差込み部は、金属製又は合成樹脂製の管の先端部に軟質のシール部材を取付け該管を上記耳垢吸引チューブの先端部に接続して構成されている請求項1又は2記載の耳垢取り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−111232(P2007−111232A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305529(P2005−305529)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505392086)
【Fターム(参考)】