説明

肌色見本板

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化粧品販売店等において、化粧品の販売促進に用いられる肌色見本板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、化粧品販売では、専門の販売員が、店頭あるいは訪問販売先で、顧客の肌の状態や要望を聞きながらカウンセリングを行ったのち、適宜の化粧品を選んで推奨し販売することが行われている(カウンセリング方式)。これに対し、最近、商品に関する情報が氾濫し、顧客側が商品に関する知識をある程度備えるようになってきたことを背景に、自ら商品を主体的に選択したい、という顧客からの要望が高まっている。また、販売員との問答やカウンセリングを疎ましく感じる顧客もある。そこで、化粧品販売の新しい形式として、顧客自身が、自ら棚から化粧品を選択して購入する方式(セルフ方式)が提案され、コンビニエンスストア等で実施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記セルフ方式の売り場では、顧客自身が自分に合った化粧品を選択できるよう試供品が豊富に取り揃えられているが、ファンデーションや口紅等のメイクアップ化粧料は、実際に顔に塗布したり拭き取ったりする作業が煩わしいため、通常は、顧客が自分の手の甲に試供品を塗ってその色味を確かめているにすぎない。ところが、手の色は顔の色と異なるため、その試供品の色が本当に自分に適した色であるかどうかを判断することがむずかしい。したがって、顧客自身にとって、充分に納得してその色を選択することがむずかしい。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、化粧品売り場、特にセルフ方式の売り場において、顧客が自分の顔の色を客観的に把握することができ、その色に適したメイクアップ化粧料を選択することのできる肌色見本板の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、化粧品の販売促進に用いられる肌色見本板であって、表面が複数の小領域に分割されたショアA硬度40〜20の弾性シート材で形成されており、各小領域が、表面に形成された微妙なしぼにより反射率が40〜80%に設定され、かつ互いに異なる肌色に着色されている肌色見本板を第1の要旨とする。
【0006】また、本発明は、上記肌色見本板のなかでも、特に、上記弾性シート材が、RTVシリコーンゴム、塩化ビニルゾルおよび軟質ポリウレタンのいずれかである肌色見本板を第2の要旨とする。
【0007】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0008】図1は本発明の肌色見本板の一実施の形態を示している。
【0009】上記肌色見本板9は、主としてファンデーション購入を希望する顧客のために用意されているもので、平面視長方形状の弾性シート板(RTVシリコーンゴム製)からなり、やや柔軟性があり、表面に微妙なしぼが形成されていて、肌そっくりな質感および感触が与えられている。そして、上記弾性シート板は、上下方向に7つの小領域に分割されており、各小領域が、互いに異なる7色の肌色の色見本(見本No. A〜G)になっている。これらの色見本のうち、中心に配置されるNo. Dの色は日本人女性の標準的肌色を示しており、その上のNo. Cの色は上記標準色よりも若干赤味が強い肌色を示している。そして、その上のNo. Bの色は上記No. Cの色よりも明るい肌色、No. Aの色は上記No. Bの色よりもさらに明るい肌色を示している。また、No. Eの色は上記No. Dの標準色よりも若干黄身が強い肌色を示しており、その下のNo. Fの色よりも暗い肌色を示している。そして、その下のNo. Gの色は上記No. Fの色よりもさらに暗い肌色を示している。
【0010】なお、このNo. A〜Gで示される7色は、つぎのような方法で特定されたものである。すなわち、まず、10代後半〜60代の女性約3000人の肌色を測定して平均値となる色を標準色(No. D)とした。そして、測定値の分布(密度,ばらつき等)から、No. A〜C、No. E〜Gの各色を決定した。
【0011】上記肌色見本板9は、例えば図2に示すような、化粧品のセルフ販売方式のコーナーに設置され、顧客自身が自分の肌色を客観的に特定し、これに合うファンデーション等を選択するのに利用される。
【0012】図2において、3は円形テーブルで、その上に上記肌色見本板9が置かれている。また、4はパーソナルコンピュータ本体(以下「PC」と略す)で、これに、テーブル3上のタッチパネル4aと、プリンタ5が接続されている。
【0013】上記PC4のタッチパネル4aは、このテーブル3の中央に立設される照明灯20支受用の4本の柱7のうちの隣合う2本を利用して、テーブル3の上面から一定の高さの位置に取り付けられており、顧客自身が、そのタッチパネル4aを操作することにより、画面上で肌診断を受けることができるようになっている。また、上記柱7の他の隣合う2本の間に、鏡10が設けられている。
【0014】PC4は、データ入力装置50と接続されており、このデータ入力装置50には、水分センサ8および皮膚温度センサ(図示せず)が接続されている。そして、タッチパネル4aの指示に従って水分センサ8および皮膚温度センサを用いることにより、肌の水分量および皮膚温度を測定することができるようになっている。そして、画面上での問診の結果と、上記水分量および皮膚温度(環境温度を含む)の測定結果とから、顧客の肌診断がなされるようになっている。
【0015】このようなセルフ販売方式のコーナーにおいて、顧客は例えばつぎのようにして自分に合ったファンデーションを選定することができる。すなわち、まず、顧客は鏡10の前に立ち、テーブル3の上に置かれた肌色見本板9を手に取って頬に近づけ、自分の顔の肌色が、上記肌色見本板9のどの色見本と近いかを見比べ、最も近い色を特定したのち、PC4のタッチパネル4aを操作して、ファンデーション選定のための画面を選び、その画面に、上記最も近い色の色見本No. を入力する。すると、画面上に、下記の表1に示すようなファンデーション色決定テーブルが表示される。これにより、顧客自身が選択した色見本No. の色に最適なファンデーション色と、そのつぎに最適なファンデーション色がわかる。なお、このデータには、先に行われた肌診断結果も加味されるようになっている。
【0016】そこで、顧客は、上記画面で推奨される第1候補,第2候補のファンデーション色を参考にしながら最も自分に合ったファンデーション色を選択することができる。なお、各ファンデーション色は、商品にも付される所定の呼称で表示されるようになっている。
【0017】
【表1】


【0018】このように、上記肌色見本板9によれば、上記セルフ販売コーナーにおいて、顧客が自分自身の顔の色を客観的に把握することができ、それに適した色のファンデーションを即座に選択することができる。
【0019】しかも、上記肌色見本板9は、すでに述べたように肌そっくりの質感と感触を備えているため、顧客は、自分に最も適したファンデーションのサンプルを、上記肌色見本板9の該当する色見本部分に塗布することにより、実際にファンデーションを自分の肌に塗布した状態を、ある程度実感することができるようになっている。そして、上記肌色見本板9にはファンデーションが浸透しないため、塗布後は、拭き取り用化粧水等を用いてこれを簡単に拭き取ることができる。洗剤をつけて洗い流すこともできる。したがって、店頭において、繰り返し使用しても、その表面を清浄な状態に保つことができる。
【0020】なお、上記の例では、肌色見本板9の弾性シート材を、RTVシリコーンゴムで形成しているが、これに限らず、各種の非粘着性の弾性シートを用いることができる。そして、人間の肌と同様の柔軟性を与えるために、ショアAの硬度が40〜20のものを用いることが必要である。このような素材としては、上記RTVシリコーンゴムの外に、塩化ビニルゾル,軟質ポリウレタン等があげられる。また、上記弾性シート材の厚みは、何ら限定されるものではないが、通常、3〜10mm、なかでも5mm前後に設定することが好適である。
【0021】なお、上記弾性シート材の表面には、肌を模した微妙なしぼ模様が付与されるが、そのしぼ模様の凹凸差およびしぼ密度は、その表面の反射率が、顔の表面の反射率と近似する値となるよう設定されることが好ましい。すなわち、肌色見本板9の表面状態を、より実際の肌に近づけるためである。したがって、本発明では、上記反射率、40〜80%の範囲に設定することが必要である。
【0022】また、上記の例では、肌色見本板9を、互いに色の異なる7色の色見本で構成しているが、色見本の数は、7色に限らず、複数であれば何色であっても差し支えはない。
【0023】そして、上記の例では、肌色見本板9を、色見本となる7色の分割された弾性シート材を端面同士で接合することにより1枚の長方形状に形成しているが、より強度を高めるために、例えば図3(a)に示すように、弾性シート材からなる色見本部分9aを、剛性プラスチック体からなる基台30に接合して用いるようにしてもよい。なお、31は肌色見本板9を手に持つための把持部で、この部分に穴32が形成されており、肌色見本板9を使用しない場合、店舗内の適宜の場所(例えば図2に示すコーナーであれば、柱7)に掛けておくことができるようになっている。
【0024】また、肌色見本板9として、図3(b)に示すように、長手方向の片側が円弧状にカーブしているものを用いることもできる。この肌色見本板9によれば、丸みのある頬の輪郭に沿って上記肌色見本板9を当てることができるため、頬と肌色見本板9との間に隙間が生じず、全ての色見本と頬の肌の色とを直接対比することができる。
【0025】さらに、肌色見本板9として、図4に示すような、ドーナツ状のものを用いることもできる。この肌色見本板9によれば、中央の穴33から頬の肌が覗くようにして頬に肌色見本板9を当てることができるため、上記のものと同様、全ての色見本と頬の肌の色とを直接対比することができる。
【0026】また、上記の例では、本発明の肌色見本板9を、図2に示すような、セルフ販売方式のコーナーに設置して、PC4のタッチパネル4aを操作することにより、画面上で自分に合うファンデーションを選択するようにしたが、必ずしもPC4およびタッチパネル4aを用いる必要はない。例えば、肌色見本板9で自分の肌に近い色の色見本を特定し、その色見本に、自分で好ましいと思われるファンデーションの試供品を塗布して、肌の色とファンデーションの色の相性を確認した上で、ファンデーションを購入するようにしてもよい。もちろん、セルフ販売方式のコーナーのみならず、販売員による対面販売を行うコーナーにおいて、販売員が肌色見本板9を顧客に示しながらカウンセリングを行うようにしてもよい。その場合も、顧客の肌の色の判定が、販売員の一方的な評価ではなく、肌色見本板9の色見本と対比して得られる結果として示されるため、顧客が納得しやすいという利点を有する。
【0027】そして、本発明の肌色見本板9は、ファンデーションに限らず、口紅,アイシャドウ,チーク等、各種のメイクアップ化粧料の選択,購入に役立てることができる。
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1記載の肌色見本板によれば、これを顧客自身もしくは販売員が顧客の顔に近づけて、顔の色と色見本とを対比することにより、顧客の顔の色を、顧客自身が客観的に把握することができる。したがって、顧客自身が納得した上で、その色に適した化粧料を選択することができるという効果を奏する。しかも、肌色見本板の弾性シート材表面が、特定のショアA硬度と特定の反射率を備え、より人間の顔の肌に近い感触となっているため、顧客の顔に代えて、上記肌色見本板の表面に化粧料を塗布するだけ、実際に顔に塗った場合と近似する印象を得ることができる。したがって、肌の色と化粧料の相性が一目でわかり、化粧料の選択をより的確に行うことができるという利点を有する。
【0029】また、本発明の請求項2記載の肌色見本板表面のショアA硬度が40〜20の範囲内となる、好適な材質の弾性シート材を用いたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の肌色見本板の一実施例を示す構成図である。
【図2】上記実施例の使用態様の説明図である。
【図3】(a)は本発明の他の実施例を示す構成図、(b)は本発明のさらに他の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
9 肌色見本板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 化粧品の販売促進に用いられる肌色見本板であって、表面が複数の小領域に分割されたショアA硬度40〜20の弾性シート材で形成されており、各小領域が、表面に形成された微妙なしぼにより反射率が40〜80%に設定され、かつ互いに異なる肌色に着色されていることを特徴とする肌色見本板。
【請求項2】 上記弾性シート材が、RTVシリコーンゴム、塩化ビニルゾルおよび軟質ポリウレタンのいずれかである請求項1記載の肌色見本板。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3487746号(P3487746)
【登録日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【発行日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−311716
【出願日】平成9年11月13日(1997.11.13)
【公開番号】特開平10−137034
【公開日】平成10年5月26日(1998.5.26)
【審査請求日】平成11年3月9日(1999.3.9)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【参考文献】
【文献】特開 平3−296627(JP,A)
【文献】特開 平6−117932(JP,A)
【文献】実開 平6−51839(JP,U)