説明

育毛施術方法及び育毛装置

【課題】育毛効果を一段と高めようとする。
【解決手段】育毛プローブ8から、被施術対象52に存在する軟毛化した毛50の毛孔51及びその周辺に対して育毛液剤53を噴射させると共に、イオン浸透電流Iを通電させることにより、軟毛化した毛50それぞれに対して育毛液剤53を浸透させることができ、これにより軟毛化した毛50の育毛効果を一段と高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は育毛施術方法及び育毛装置に関し、特に被施術対象に効率よく育毛剤の有効成分を浸透させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の育毛施術手法として、育毛剤を毛根に浸透させる手法として、例えば特許文献1に記載のように、ヘアキャップ型の育毛剤供給機構において、気圧を利用してヘアキャップ内に育毛剤を導入すると共に、毛孔の毛細管現象を利用してその奥まで育毛剤を浸透させようとする手法のものを初めとして、櫛型のものやグローブ型のものなど種々のものが提案されている。
【特許文献1】特開2006−167215公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが従来の手法のものは、育毛施術対象となる体の部位、例えば頭部にある毛孔全体を対象として育毛剤を浸透させようとするもので、実際上1本1本の毛の毛孔に対する育毛剤の浸透の点において、有効性が十分であるとはいい得ない。
【0004】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、育毛しようとする毛の毛孔個々について、育毛剤の有効成分を確実に浸透させ得るようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するため本発明においては、育毛プローブ8の先端から、育毛液剤53を被施術対象52に噴射すると共に、当該噴射した育毛液剤53にイオン浸透電流Iを通電することにより、被施術対象52上に存在する軟毛化した毛50の毛孔51及びその周辺に噴射した育毛液剤53の有効成分を、毛孔51及びその周辺の皮膚組織にイオン浸透させるようにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、育毛プローブから、被施術対象に存在する軟毛化した毛の毛孔及びその周辺に対して育毛液剤を噴射させると共に、イオン浸透電流を通電させることにより、軟毛化した毛それぞれに対して育毛液剤の有効成分を浸透させることができ、これにより軟毛化した毛の育毛効果を一段と高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面について、本発明による育毛施術方法及び育毛装置の一実施の形態を詳述する。
【0008】
(1)育毛装置の構成
図1において、1は全体として育毛装置を示し、育毛装置本体2の育毛プローブ部接続端子3に対して可撓性接続管4を介して育毛プローブ部5が接続されている。
【0009】
育毛装置本体2は液剤搬送ポンプ11を有し、液剤タンク接続端子12に接続された液剤タンク13から導入した液剤を液剤送出チューブ13を介して可撓性接続管4に送出する。
【0010】
可撓性接続管4は図2(A)に示すように、育毛プローブ部5を構成するプローブホルダ6から導出された液剤搬送チューブ4A及びケーブル4Bを有し、液剤搬送チューブ4Aの先端に設けられたチューブコネクタ4Cが育毛プローブ部接続端子3のチューブ接続端子3Aに接続されていることにより、液剤搬送ポンプ11から液剤送出チューブ13を介して送出された液剤が液剤搬送チューブ4Aを介して育毛プローブ部5に搬送される。
【0011】
この実施の形態の場合、液剤搬送ポンプ11は、液剤タンク13から液剤を吸引し所定量(例えば0.1〔ml〕)ずつ噴射し、これにより生成された噴射状液剤を間欠的又は連続的に液剤送出チューブ13に送出する。
【0012】
育毛プローブ部5はプローブホルダ6及びキャップ部材7を有し、プローブホルダ6の先端に形成されたキャップ部材7に、図3に示す育毛プローブ8が差込保持される。
【0013】
育毛プローブ8は、図3(B)に示すように、円筒状導電性材料によって構成され、その中心線上に液剤搬送通路21が形成され、これにより育毛プローブ8の根元側がプローブホルダ6のキャップ部材7に差込まれたとき、図4(A)に示すように、液剤搬送チューブ4Aと連通する接続部材42に連結され、これにより液剤搬送チューブ4Aを通って搬送されて来る液剤が育毛プローブ8に供給される。
【0014】
育毛プローブ8の先端には外径及び内径が細く絞られた噴射口部材22が形成されており、これにより液剤搬送通路21に搬送されてきた液剤を、当該噴射口部材22から被施術対象の比較的狭い範囲(すなわち、毛孔及びその周辺)に、間欠的又は連続的に、放出できるようになされている。
【0015】
これと共に、導電性材料でなる細く絞られた噴射口部材22によって、毛孔及びその周辺程度の狭い範囲に、育毛プローブ8が電気的に接触できるようになされている。
【0016】
以上の構成に加えて育毛装置本体2には直流電源でなるイオン浸透用電源25が設けられ、その接地側配線26が育毛装置本体2の対極導子接続端子27に導出され、当該対極導子接続端子27に対極導子28のケーブル29が接続されたとき、対極導子28を手で握った被施術者の電位が接地側配線26を介してイオン浸透用電源25に接続されるようになっている。
【0017】
イオン浸透用電源25の非接地側配線31は、育毛プローブ部接続端子3のケーブル接続端子3Bに導出され、この育毛プローブ部接続端子3に可撓性接続管4が接続されたとき、図2(A)に示すように、プローブホルダ6から延長するケーブル4Bの先端に設けられた接続クリップ4Dを介してプローブホルダ6にイオン浸透電流を供給するようになされている。
【0018】
かくして、育毛プローブ8(図3(B))の液剤搬送通路21の周囲の部材は導電性材料で構成されていることにより、その先端部に形成された噴射口部材22がイオン浸透電流を流す通電子を形成している。
【0019】
これにより、イオン浸透用電源25は、被施術者が対極導子28を手で握った状態において、育毛プローブ8の噴射口部材22が被施術者の毛孔及びその周辺の液剤に接触したとき、当該被施術者の体を通ってイオン浸透電流を流す電気的回路が形成される。
【0020】
施術者がフットスイッチでなる動作スイッチ36を踏込み操作することにより制御信号端子34から動作制御信号が与えられたとき、中央制御ユニット35は、育毛施術条件入力部37によって設定された設定条件に応じて育毛装置本体2の液剤搬送ポンプ11及びイオン浸透用電源25を駆動制御し、これにより図5及び図6に示す育毛施術処理手順RT0を実行できるようになされている。
【0021】
この実施の形態の場合、育毛プローブ部5のプローブホルダ6は、図4(A)に示すように、絶縁性合成樹脂材料でなるホルダ本体41の内部空間41Xの先端に、導電性接続部材42をそのねじ部43によってねじ込み保持した構成を有する。
【0022】
ホルダ本体41の内部空間41Xには、根元側から液剤搬送チューブ4A及びケーブル4Bが引込まれ、ケーブル4Bの先端が接続部材42に電気的に接続されていると共に、液剤搬送チューブ4Aの先端部が接続部材42の後端部44に差込み保持されている。
【0023】
接続部材42には、その中心線に沿うように液剤通路45が先後端部を貫通するよう穿設されており、これにより液剤搬送チューブ4Aを通って搬送されてきた液剤を液剤通路45を通って接続部材42の先端側に導出するようになされている。
【0024】
接続部材42の先端側位置にはキャップ締付ねじ46が形成され、当該キャップ締付ねじ46に対して先端側からキャップ部材7を締付保持できるようになされている。
【0025】
接続部材42の先端部には円筒板状プローブ取付筒体部47が形成され、図4(B)に示すように、接続部材42のキャップ締付ねじ46に対するキャップ部材7の締付を緩めた状態において、キャップ部材7の先端側に設けられた透孔7Aを通して育毛プローブ8を差込むことができるようになされている。
【0026】
プローブ取付筒体部47には先端側から割り溝48が形成され、これによりプローブ取付筒体部47に対する育毛プローブ8の差込を容易にできるようにすると共に、図4(C)に示すように、キャップ部材7を接続部材42のキャップ締付ねじ46に十分に締付けたとき、プローブ取付筒体部47がキャップ部材7の締付動作によって割り溝48を狭めるようにプローブ取付筒体部47を育毛プローブ8の方向に内側に押圧することにより、育毛プローブ8をプローブ取付筒体部47に機械的かつ電気的に一体に締付保持するようになされている。
【0027】
かくして図4(C)に示すように、プローブホルダ6の先端に育毛プローブ8を取付保持した状態において、育毛プローブ部5は液剤搬送チューブ4Aによって搬送されてくる液剤を育毛プローブ8の液剤搬送通路21(図3(B))を通って噴射口部材22から先端方向に噴射すると共に、当該施術部位に噴射した液剤に育毛プローブ8の噴射口部材22を接触させることにより、ケーブル4Bを通じて流れるイオン浸透電流を接続部材42、育毛プローブ8の噴射口部材22を通じて流すことができるようになされている。
【0028】
(2)育毛施術処理手順
育毛施術は、図5に示す育毛施術処理手順RT0に従って行われる。
【0029】
まずステップSP1において、施術者はプローブホルダ6に育毛プローブ8を装着する。
【0030】
このとき被施術者は、図4(A)に示すようにプローブホルダ6に対するキャップ部材7の締付を緩めた状態において、図4(B)に示すようにキャップ部材7の透孔7Aから育毛プローブ7を差込んだ後、図4(C)に示すように育毛プローブ8をプローブホルダ6にしっかりと締付ける。
【0031】
続いて施術者は、ステップSP2において、液剤タンク13に頭皮の状態に合わせて選択した液剤を注入する。
【0032】
続いて施術者は、ステップSP3において育毛施術条件入力部37から制御ユニット35に対して育毛施術条件を入力する。
【0033】
この実施の形態の場合、施術者は、通電電流値手段37Aによって、イオン浸透電流値として、0.1〜0.5〔mA〕の間の電流値のうちから、例えば0.2〔mA〕を設定する。
【0034】
また通電極性手段37Bによって、育毛プローブ部5から供給できる直流極性を、使用する液剤のイオン化極性に応じて「+」又は「−」のうちから、例えば「+」に設定する。
【0035】
また通電時間手段37Cによって、イオン浸透電流の通電電流時間として、3〜10〔秒〕のうちから、例えば5〔秒〕を設定する。
【0036】
また液剤ショット数手段37Dによって、1回のスイッチ操作によって育毛プローブ4の噴射口部材22から噴射する液剤の噴射回数として1〜99〔発〕又は連続のうちから、例えば10〔発〕を設定する。
【0037】
かくして施術者は、フットスイッチでなる動作スイッチ36を1回操作したとき、育毛プローブ8の噴射口部材22から1〔発〕約0.1〔ml〕の液剤を10〔発〕分噴射させると共に、当該育毛プローブ8の噴射口部材22から0.2〔mA〕の「+」のイオン浸透電流を5〔秒〕間通電させるような育毛施術条件を、中央制御ユニット35に設定したことになる。
【0038】
その後施術者は、ステップSP4に移って、被施術者の前頭部から頭頂部にかけて軟毛化した部位を確認し、当該確認した部位に対してステップSP5においてタオルを当ててスチーミングする。
【0039】
かくして、育毛施術をすべき部位における皮膚の血行が促進されると共に、軟毛化した毛の毛孔の育毛施術準備が整うことになる。
【0040】
続いて施術者は、ステップSP6において、被施術者に対して対極導子28を握らせた後、ステップSP7において、育毛施術すべき部位について、前頭部から頭頂部にかけて確認した被施術部位について、櫛で髪の毛を分けることにより、縦1列分の髪の毛の毛孔を露出させる。
【0041】
この実施の形態の場合、施術者は、図9に示すように、被施術者の頭皮から育毛施術すべき被施術部位61を確認したとき、育毛施術順序として、所定間隔(例えば5〔mm〕間隔)で横列62A、62B……62Xを決めると共に、これと交差する縦列63A、63B……63Yを所定間隔(例えば5〔mm〕間隔)で決めておき、縦1列分ずつ育毛処理することにより、全ての縦列についての育毛処理が終った後、横1列分ずつ育毛処理をする。又は、全ての縦列のみもしくは全ての横列のみ育毛処理をする。
【0042】
この状態において、施術者は、次のステップSP8において動作スイッチ36をオン操作すると共にターゲットとする軟毛化した毛の毛孔部及び周辺部に液剤を噴射させることにより施術対象となる1本の毛孔及びその周辺を湿らせる。
【0043】
実際上このとき、施術者は図7(A)に示すように、育毛プローブ部5の育毛プローブ8を軟毛化した毛50の毛孔51が存在する頭皮52から1〔mm〕程度上方に育毛プローブ8を構えて、フットスイッチでなる動作スイッチ36を踏むことにより、当該軟毛化した毛の毛孔51を目掛けて液剤を噴射する。
【0044】
このとき育毛プローブ8からは、約0.1〔ml〕の液剤が10〔発〕連続して噴射される。
【0045】
この結果ターゲットとする軟毛化した毛50の毛孔51と、その付近の頭皮52(実験によれば約3〔mm〕程度の範囲)が液剤53によって湿らされることになる。
【0046】
かくして施術対象となる(すなわちターゲットの1本の毛50の毛孔51に対して液剤を湿らせた状態が得られる。
【0047】
続いて施術者は、ステップSP9において、育毛プローブ8の先端を毛孔部に当ててイオン浸透を行った後、動作スイッチ36をオフ操作(フットスイッチの踏込みをやめる操作)をする。
【0048】
このステップSP9の操作時、育毛プローブ8の噴射口部材22が頭皮52上に湿らされた液剤53に電気的に接続されることにより、通電子30として機能し、図7(B)に示すように、液剤53を毛孔51及びその周辺の皮膚組織にイオン浸透されて行き、これにより毛根54及びその周辺の皮膚組織に育毛効果がある液剤が届けられることになる。
【0049】
この実施の形態の場合、ステップSP8及びSP9において施術者が動作スイッチ36をオンオフ操作する際に、中央制御ユニット35は図8に示すような通電処理を実行する。
【0050】
図8において、施術者が時点tONで図8(B1)に示すように動作スイッチ36をオン動作させると、中央制御ユニット35は所定時間(例えば1〔秒〕)の噴射期間TOの間液剤ショット数手段37Dで設定されたショット数(例えば10〔発〕)の液剤を噴射した時点t1において、図8(A1)に示すように、育毛プローブ8から所定の傾斜(例えば立上り時間0.5〔秒〕)で通電電流Iを大きくしていく。
【0051】
やがて当該立上り時間が経過した時点t2において、中央制御ユニット35は通電電流値手段37Aで設定された値(例えば0.2〔mA〕のイオン浸透電流を通電時間手段37Cにおいて設定した通電時間TS(例えば5〔秒〕)の間イオン浸透電流を通電する。
【0052】
やがて通電時間TSが終了した時点t3になると、中央制御ユニット35はイオン浸透電流の通電を止める。
【0053】
かくして1回の通電処理が終了したので、施術者が時点tOFにおいて動作スイッチ36をオフ操作する(図8(B1))。
【0054】
かくして中央制御ユニット35は、時点t1において通電を開始したとき、一挙に設定電流値まで上昇させずに所定の傾斜で上昇させるようにしたことにより、被施術者に対して通電開始時による違和感を与えないようにできる。
【0055】
これに対して、図8(B2)に示すように、通電時間TSが経過する前の時点tOFXにおいて施術者が動作スイッチ36をオフ動作させると、中央制御ユニット35は図8(A2)に示すように、施術者が動作スイッチ36をオフ操作した時点tOFXにおいて直ちにイオン浸透電流Iを通電させない状態に制御する(図8(A2))。
【0056】
かくして施術者が通電処理の状態を見ながら適切に通電処理を中断できる。
【0057】
このようにして1本の毛についての育毛施術が終了し、中央制御ユニット35はステップSP9に続くステップSP10において縦列1列分の処理が終わったか否かの確認をし、否定結果が得られたとき上述のステップSP8に戻って当該縦列内の次の新たな毛に対する液剤の噴射処理(ステップSP8)及びイオン浸透処理(ステップSP9)を繰り返す。
【0058】
ステップSP10において否定結果が得られると、このことは上述のステップSP7において櫛で分けられた1列分の髪の毛の全部についての液剤の噴射及びイオン浸透処理が終了していないことを意味し、このとき施術者は上術のステップSP8に戻って当該縦1列分の軟毛についてステップSP8−SP9−SP10−SP8のループを繰り返すことにより当該縦1列の残る軟毛について液剤の噴射及びイオン浸透の処理を行う。
【0059】
やがてステップSP10において肯定結果が得られると、このことは上述のステップSP7において櫛で分けた縦1列分の髪の毛についての処理が終了したことを意味し、このとき施術者は次のステップSP11に移って全部の縦列の軟毛についての処理が終わったか否かの判断をする。
【0060】
ここで否定結果が得られると、このことは、被施術部位61(図9)について予定した縦列63A、63B……63Yに未だ処理が済んでいない縦列があることを意味し、このとき施術者は上述のステップSP7に戻って被施術部位61について櫛で新たな(例えば隣の)1列分の髪の毛を分ける操作をした後、当該新たな縦1列分の軟毛についてステップSP8−SP9−SP10−SP8のループに従って液剤の噴射及びイオン浸透の処理を繰り返すと共に、ステップSP10において肯定結果が得られたとき、ステップSP11において肯定結果が得られるまで当該処理を繰り返す。
【0061】
やがて全部の縦列の軟毛についての処理が終了すると、施術者はステップSP11においてこれを確認することにより次のステップSP12(図6)に移る。
【0062】
このステップSP12において施術者は、被施術部位61(図9)について、櫛で横1列分の髪の毛を分ける処理をした後、ステップSP13の処理に移る。
【0063】
このステップSP13の処理は、ステップSP8について上述したと同様に動作スイッチ36をオン操作して軟毛化した毛の毛孔部及びその周辺部に液剤を10〔発〕噴射させることにより当該噴射した頭皮部分を湿らせる。
【0064】
続いて施術者はステップSP14の処理に移る。
【0065】
このステップSP14の処理はステップSP9について図7を用いて上述したと同様に、育毛プローブ8の先端を液剤53によって浸らされた毛孔51に当ててイオン浸透を行った後、オフ操作をする。
【0066】
かくしてこのステップSP13及びSP14の処理をすることにより、横列に含まれる軟毛化した1本の毛に対する育毛施術をすることになる。
【0067】
この処理に続いて施術者は、ステップSP15に移って横1列分の処理が終わったか否かの確認をし、終わってないとき上述のステップSP13に戻って当該横1列に含まれる他の毛(例えば隣の毛)についての処理をする。
【0068】
以下同様にしてステップSP13−SP14−SP15−SP13のループを通って当該横1列に含まれる軟毛化した毛についての液剤の噴射及びイオン浸透処理を繰り返す。
【0069】
やがて施術者がステップSP15において当該横1列分の処理が終了したことを確認すると、次のステップSP16に移って全部の横列の処理が終わったか否かの確認をし、未だ処理をしていない毛が横列残っていることを確認すると上述のステップSP12の処理に戻る。
【0070】
かくして施術者は未だ処理をしていない新たな横1列(例えば隣の横1列)分の髪の毛を分けて当該新たな横1列についてステップSP13−SP14−SP15−SP13の処理を繰り返し、当該横1列分の処理が終わったとき、再度ステップSP16における全部の横列が終わったか否かの確認をする。
【0071】
かくしてステップSP16において全部の横列の処理が終わったことを確認すると、施術者はステップSP17において当該育毛施術処理手順RT0を終了する。
【0072】
図5及び図6の育毛施術処理手順RT0によれば、施術者が被施術者の頭部に軟毛化した毛が存在する被施術部位61(図9)を確認した後、当該被施術部位61をスチーミングすることによって汚れを取ると共に血行を促進させた後、各軟毛化した毛について1本ずつ液剤の噴射及びイオン浸透処理を行うことにより、各軟毛化した毛についての毛孔及びその周囲の組織に液剤に含まれる育毛成分を効率よく浸透させることができる。
【0073】
これによりターゲットとなった軟毛化した毛について実効性の良い育毛施術を行うことができる。
【0074】
(3)第2の実施の形態
図10は他の実施の形態による育毛施術処理手順RT1を示す。
【0075】
育毛施術処理手順RT1に入ると、施術者は、図5及び図6について上述したと同様に、プローブホルダ6に育毛プローブ8を装着し(ステップSP1)、液剤タンク13に頭皮の状態に合わせて選択した液剤を注入し(ステップSP2)た後、育毛施術条件入力部37から中央制御ユニット35に育毛施術条件を入力する(ステップSP3X)。
【0076】
この実施の形態の場合、図5及び図6の場合と同様に、通電電流値手段37Aによって通電電流値を0.2〔mA〕に設定すると共に、通電極性手段37Bによって通電電流の極性を「+」に設定する。
【0077】
しかしながらこの実施の形態の場合は、図5及び図6の場合とは相違して、通電時間手段37Cによって通電時間を10〔秒〕に設定すると共に、液剤ショット手段37Dによって噴射ショット回数を90〜99〔発〕(例えば90〔発〕)又は連続に設定する。
【0078】
この実施の形態の場合、ステップSP3Xにおいてかかる育毛施術条件を入力した後、図5及び図6の場合と同様にして、前頭部から頭頂部にかけて軟毛化した部位の確認をし(ステップSP4)、ホットタオルを頭部に当ててスチーミングをし(ステップSP5)、被施術者に対極導子28を握らせる(ステップSP6)。
【0079】
かかる処理の後、この実施の形態の場合は、図5及び図6の場合と異なる以下に述べる手法によって液剤の噴射及びイオン浸透処理を行う。
【0080】
すなわち、図10の実施の形態の場合、ステップSP6に続いて施術者はステップSP21において、図11に示すように、被施術部位71について、櫛で1ブロック分の髪の毛を分ける。
【0081】
この実施の形態の場合、施術者は、被施術部位71について、これを複数の施術ブロック(64A1、64A2……64AN)、(64B1、64B2……64BN)、……、(64M1、64M2……64MN)の施術ブロックに分ける。
【0082】
この各施術ブロック64A1〜64MNは、1回の液剤の噴射及びイオン浸透処理を行う範囲を特定するもので、施術者はステップSP21において当該1ブロック分の髪の毛を櫛によって分ける処理を行う。
【0083】
続いて施術者は、ステップSP22において、育毛プローブ部5の育毛プローブ8の先端を、当該1ブロック分の領域の頭皮に軽く当てる状態に構えて、ステップSP23において動作スイッチ36をオン操作する。
【0084】
このとき中央制御ユニット35は、図12(B1)に示すように、動作スイッチ36が時点TONにおいてオン動作したとき、噴射・通電期間TOSに入り、液剤搬送ポンプ11から液剤搬送チューブ4Aを介して90〔発〕分の液剤を育毛プローブ部5に供給することにより、育毛プローブ8から液剤を頭皮に対して噴射し続ける。
【0085】
これと同時に、中央制御ユニット35は、イオン浸透用電源25からケーブル4Bを介して育毛プローブ部5にイオン浸透電流を通電することにより、育毛プローブ8の噴射口部材22から噴射された液剤を介してイオン浸透電流を通電し始める。
【0086】
このとき施術者は、次のステップSP24において育毛プローブ8を前後左右に移動させることにより、当該ブロック内の軟毛化した毛について次々と毛孔部及び周辺部に当てて行くことにより、当該毛孔部及び周辺部に液剤を噴射させると同時にイオン浸透処理を行う。
【0087】
この液剤の噴射及びイオン浸透処理は、1ブロック分の毛について1本ずつ育毛プローブ8を移動させるような処理の仕方によって行う。
【0088】
この噴射・通電期間TOS(図12)における液剤の噴射及びイオン浸透処理は、噴射・通電期間TOSの間、中央制御ユニット35が液剤の噴射及びイオン浸透電流の通電を続けることにより噴射・通電期間TOSの間続けられる。
【0089】
やがて時点t12において噴射・通電期間TOSが終了すると、育毛プローブ8による液剤の噴射及びイオン導入動作が終了することにより、施術者はステップSP25において動作スイッチ36をオフ操作することによって当該1ブロック分の液剤の噴射及びイオン浸透処理を終了する。
【0090】
続いて施術者は、ステップSP26において、全部のブロックについての処理が終わったか否かを確認し、終わっていないとき上述のステップSP21に戻って新たなブロック(例えば隣接するブロック)について櫛で1ブロック分の髪の毛を分ける操作をする処理に戻る。
【0091】
このとき施術者は、ステップSP21−SP22−SP23−SP24−SP25−SP26のループに従って当該新たなブロックについての液剤の噴射及びイオン浸透処理を繰り返す。
【0092】
このような液剤の噴射及びイオン導入処理は、施術者がステップSP26において全てのブロックについての処理が終わったことを確認するまで繰り返される。
【0093】
やがてステップSP26において施術者が全部のブロックが終わったことを確認すると、ステップSP27において当該育毛施術処理手順RT1を終了する。
【0094】
図10の育毛施術処理手順によれば、育毛施術をすべき軟毛化した毛について、被施術部位71を所定の複数のブロックに分けて液剤の噴射と同時にイオン浸透のための通電処理をするようにしたことにより、一段と短い施術時間によって軟毛化した毛に対する育毛施術を行うことができる。
【0095】
(4)実施例
上述の育毛施術について、以下の育毛剤及び育毛料を適用することにより、育毛効果を実現できる。
【0096】
(4−1)育毛剤の成分
(A)多価アルコール
(B)血行促進剤
(C)毛包賦活剤
(D)抗炎症剤
(E)その他(殺菌剤など)
【0097】
<多価アルコール>
グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等
【0098】
<血行促進剤>
塩化カルプロニウム、センブリエキス、ニコチン酸類、ミノキシジル、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、トウヒエキス、イチョウエキス、ニンジンエキス、エンメイソウエキス、クジンエキス等
【0099】
<毛包賦活剤>
ペンタデカン酸グリセリド、アデノシン類、感光素301、ビオチン、N−アセチル−L−メチオニン、アスパラギン酸カリウム、フラバノノール類、6−ベンジルアミノプリン、パントテン酸類、ヒノキチオール、トコフェロール類、D−パントテニルアルコール、ジアルキルモノアミン誘導体、エストラジオール、プラセンタエキス、ビワ葉エキス、マイカイ花エキス等
【0100】
<抗炎症剤>
β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその誘導体、アズレン、グアイアズレン、塩酸ピリドキシン、アラントイン、甘草エキス、カミツレエキス等
【0101】
<殺菌剤>
イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン、塩化ベンザルコニウム、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、レゾルシン、サリチル酸等
更に低級アルコールを含有させることが好ましい。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられ、特にエタノールが好ましい。低級アルコールの含有量は、全組成中の30重量%以上が好ましい。
以上の成分のほかに、通常の育毛剤や毛髪化粧料に用いられる種々の添加成分を、目的に応じて含有させることができる。例えば、保湿剤、可溶化剤、酸化防止剤、キレート剤、清涼剤、抗脂漏剤、防腐剤、塩類、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤を配合することができる。
【0102】
(4−2)育毛料組成
β−グリチルレチン酸、D−パントテニルアルコール、センブリエキス、ビワ葉エキス、エイジツエキス、ジオウエキス、無水エタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、1、2−ペンタンジオール、1、3−ブチレングリコール、精製水
【0103】
(5)他の実施の形態
上述の図5及び図6並びに図10の育毛施術処理手順RT0並びにRT1の処理ステップについては、これに限らず、当該育毛処理の前にシャンプー処理によって毛孔、頭皮、毛質の汚れの除去を行ったり、トリートメント処理により毛髪の保護や修繕をしたりするような処理を、前処理として行うことが有効である。
【0104】
また当該育毛処理に続いてクールダウン処理をすることにより、育毛施術を受けた頭部の沈静化を図ると共に、頭部マッサージによって仕上げ処理を行うことは、当該育毛処理の実効を高めるために有効である。
【0105】
上述の実施の形態においては、通電電流の極性を「+」にした場合について述べたが、当該通電電流の極性は使用する液剤の成分のイオン化極性に応じて、これを「−」極性にしても、上述の場合と全く同様の効果を得ることができる。
【0106】
また図5及び図6の実施の形態においては、縦全列分のイオン浸透処理に続いて横全列分のイオン浸透処理を行うようにした(図9)が、これに代え、縦列分又は横列分だけのイオン浸透処理を行うことにより処理時間の短縮を図るようにしても良い。
【0107】
さらに、縦全列分又は横全列分のイオン浸透処理を行った後に、図11について上述したように、毛を施術ブロックに分けて、各施術ブロックについてイオン浸透処理を行うことにより、比較的短い処理時間の間に十分なイオン浸透効果を得るようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は軟毛化した毛を育毛する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施の形態を示す育毛装置を示すブロック図である。
【図2】(A)及び(B)は図1のプローブホルダ6を示す側面図及び先端の端面図である。
【図3】(A)及び(B)は図1の育毛プローブ8を示す側面図及び縦断面図である。
【図4】(A)はプローブホルダ6を示す縦断面図、(B)はキャップ部材7を介して接続部材42に育毛プローブ8を挿入した状態の縦断面図、(C)はキャップ部材7を接続部材42に締め込んだ状態を示す縦断面図である。
【図5】育毛施術処理手順を示すフローチャートである。
【図6】育毛施術処理手順を示すフローチャートである。
【図7】(A)及び(B)は育毛プローブ8からの液剤の噴射処理及びイオン浸透処理の説明に供する略線図である。
【図8】(A1)及び(A2)並びに(B1)及び(B2)はイオン浸透電流の通電並びに動作スイッチ36の動作の説明に供する信号波形図である。
【図9】被施術部位の説明に供する略線図である。
【図10】育毛施術処理手順の第2の実施の形態を示すフローチャートである。
【図11】被施術部位の説明に供する略線図である
【図12】(A1)及び(A2)並びに(B1)及び(B2)はイオン浸透電流の通電並びに動作スイッチ36の動作の説明に供する信号波形図である。
【符号の説明】
【0110】
1……育毛装置、2……育毛装置本体、3……育毛プローブ部接続端子、4……可撓性接続管、4A……液剤搬送チューブ、4B……ケーブル、11……液剤搬送ポンプ、12……液剤タンク接続端子、13……液剤タンク、5……育毛プローブ部、6……プローブホルダ、7……キャップ部材、8……育毛プローブ、21……液剤搬送通路、22……噴射口部材、25……イオン浸透用電源、27……対極導子接続端子、28……対極導子、29……ケーブル、34……制御信号端子、35……中央制御ユニット、36……動作スイッチ、37……育毛施術条件入力部、37A……通電電流値手段、37B……通電極性手段、37C……通電時間手段、37D……液剤ショット数手段、41……ホルダ本体、41X……内部空間、42……接続部材、43……ねじ部、44……後端部、45……液剤通路、46……キャップ締付ねじ、47……プローブ取付筒体部、48……割り溝、50……毛、51……毛孔、52……頭皮、53……液剤、54……毛根。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育毛プローブの先端から、育毛液剤を被施術対象に噴射すると共に、育毛プローブにイオン浸透電流を流すことで、上記被施術対象上に存在する軟毛化した毛の毛孔及びその周辺に噴射した上記育毛液剤の有効成分を、上記毛孔及びその周辺の皮膚組織にイオン浸透させる
ことを特徴とする育毛施術方法。
【請求項2】
上記育毛プローブの先端から、上記被施術対象上に存在する上記軟毛化した毛の毛孔及びその周辺に上記育毛液剤を噴射した後、当該育毛液剤に上記イオン浸透電流を通電する
ことを特徴とする請求項1に記載の育毛施術方法。
【請求項3】
上記育毛プローブの先端から、上記被施術対象上に存在する上記軟毛化した毛の毛孔及びその周辺に上記育毛施術液剤を噴射すると同時に、上記イオン浸透電流を通電する
ことを特徴とする請求項1に記載の育毛施術方法。
【請求項4】
先端に、育毛液剤を噴射する噴射口及びイオン浸透電流を通電する通電子を有する育毛プローブと、
上記噴射口に上記育毛液剤を供給する育毛液剤供給手段と、
上記通電子にイオン浸透電流を供給するイオン浸透電流供給手段と、
施術者の操作に応じて、上記育毛液剤供給手段及び上記イオン浸透電流供給手段を動作させる制御手段と
を具えることを特徴とする育毛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−233109(P2009−233109A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83212(P2008−83212)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000105707)TBCグループ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】