説明

育苗箱用播種機の補助送り箱

【課題】 最後の育苗箱まで均一な質で播種でき、播種機から簡単に取出可能にする。
【解決手段】 本補助送り箱Bは、所定の育苗箱Aに対し、土入れ、播種及び覆土を連続して行う播種機1であって、育苗箱Aは、苗室10が碁盤目状に配設されるとともに、一対の側縁部11に該苗室10と同ピッチで送り穴12が列設されており、前記播種を行う播種装置5の搬送路長方向における前後には、育苗箱Aの全長よりも長い間隔をおいて一対の鎮圧ローラ15,16が配設されており、該一対の鎮圧ローラが回転駆動されることにより、育苗箱Aが搬送されるように構成されており、播種装置5は、送り穴12に係合する爪22aを有するギヤ22が、育苗箱Aの搬送に伴って従動回転することにより駆動されるように構成された播種機1において、最後の育苗箱Aを取り出すためのものであり、所定の育苗箱Aにおける送り穴12が形成された側縁部11が省かれてなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の育苗箱を搬送路に沿って一方向に搬送しながら、該育苗箱に対し、土入れ、播種及び覆土を連続して行うように構成された育苗箱用播種機の補助送り箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の育苗箱用播種機としては、特許文献1に記載されたものを例示する。この育苗箱用播種機は、図7に示すように、育苗箱送り出し装置102から送り出された多数の苗室が配列した育苗箱Aを一方向に搬送しながら、該育苗箱Aに対し、土入れ装置103,104による土入れ、播種装置105による播種及び覆土装置106による覆土を連続して行うように構成されている。この育苗箱用播種機においては、鎮圧ローラ111による鎮圧が行われ、続いて播種装置105による播種が行われる。播種装置105の播種輪105aの左右には育苗箱Aの両側に形成された送り穴に係合する爪105bを有する位置決めギヤが取り付けられ、連続的に搬送される育苗箱Aの送り穴に係合して回転し、同時に播種輪105aを回転させるようになっている。播種装置105から出た育苗箱Aは種子押えローラ112による鎮圧を受け、最後に覆土装置106により培土の供給を受け、各苗室は覆土される。
【0003】
ここで、播種装置105の前後の鎮圧ローラ111,112の間隔は、育苗箱Aの搬送路長方向における全長よりも長く設定されている。こうすると、鎮圧ローラ111,112の間の育苗箱Aは、後続の育苗箱Aに押されるまで、両鎮圧ローラ111,112の間で停止するようになる。これにより、連続的に送られてくる育苗箱Aは、互いに隙間無く接触した状態になってから播種装置105の下方を通過するようになり、播種輪105aから落下する種が育苗箱A同士の隙間からこぼれ落ちることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−201543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、播種装置105の前後の鎮圧ローラ111,112の間隔が育苗箱Aの搬送路長方向における全長よりも長く設定されていると、最後の育苗箱Aには後続の育苗箱Aが来ないため、最後の育苗箱Aが両鎮圧ローラ111,112の間で停止したままの状態となってしまう。このため、従来は、播種装置105のクラッチを解除することにより駆動を停止させた上で、育苗箱Aを手で搬送するとともに、鎮圧ローラ112を手動で回転させることにより、育苗箱Aを両鎮圧ローラ111,112の間から引き出すという面倒な作業を行わなければならないという課題がある。さらに、この作業を可能にするために、従来の育苗箱用播種機には、鎮圧ローラ112を手動で回転させるための手動操作機構を設ける必要があるという課題もある。また、鎮圧ローラ112を手動で回転させると、育苗箱Aの搬送速度が通常よりも遅くかつ不安定になるので、育苗箱Aの搬送移動に従動する播種装置105の各部の動作も遅くかつ不安定になる。このため、播種輪105aにおける種子の繰出穴に入り込んだ余分な種子を升切りするための回転ブラシ(図示略)の中に種子が入り込んでしまい、想定外の部位から種子が育苗箱Aに溢れ出してしまうことがあり、最後の育苗箱Aに不均一に種が播かれてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の育苗箱用播種機の補助送り箱は、
所定の育苗箱を搬送路に沿って一方向に搬送しながら、該育苗箱に対し、土入れ、播種及び覆土を連続して行うように構成された育苗箱用播種機であって、
前記育苗箱は、苗室が碁盤目状に配設されるとともに、前記搬送路長方向に延びる一対の側縁部に該苗室と同ピッチで送り穴が列設されており、
前記播種を行う播種装置の搬送路長方向における前後には、育苗箱の搬送路長方向の全長よりも長い間隔をおいて一対の鎮圧ローラが配設されており、該一対の鎮圧ローラが回転駆動されることにより、該各鎮圧ローラの外周に列設された各突起によって各苗室内の培土が鎮圧されるとともに育苗箱が搬送されるように構成されており、
前記播種装置は、育苗箱の前記送り穴に係合する爪を有するギヤが、育苗箱の搬送に伴って従動回転することにより駆動されるように構成された育苗箱用播種機において、最後の育苗箱を取り出すための育苗箱用播種機の補助送り箱であって、
前記所定の育苗箱における前記側縁部が省かれてなっている。
【0007】
この構成によれば、本発明の補助送り箱を最後の育苗箱の後から搬送させることにより、前記最後の育苗箱も、それ以前の育苗箱と同様に搬送され播種される。このため、従来とは異なり、最後の育苗箱を取り出すための面倒な作業を行う必要がなく、また、最後の育苗箱もそれ以前の育苗箱と同様に均一な質で種が播かれる。また、本発明の補助送り箱は、前記側縁部が省かれているので、前記播種装置のところを通過するときに該播種装置が駆動されることがないため、前記一対の鎮圧ローラの間で停止しても、前記播種装置とその後方の鎮圧ローラとの間から大きな抵抗なく抜き取ることができるし、このときに前記播種装置から無駄な種子が播かれることもない。
【0008】
前記育苗箱用播種機は、前記播種装置とその後方の前記鎮圧ローラとの間に、育苗箱の反り返りを防止する、搬送路長方向に延びる一対のガイド部材が搬送路幅方向に間隔をおいて配設されており、
前記育苗箱用播種機の補助送り箱としては、
搬送路幅方向におけるサイズが前記一対のガイド部材の間隔よりも短くなるように、前記所定の育苗箱における搬送路幅方向の両側が切り詰められてなる態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記育苗箱用播種機が前記一対のガイド部材が設けられている場合に、該一対のガイド部材の間から前記補助送り箱を抜き取ることができる。
【0010】
前記育苗箱用播種機の補助送り箱としては、
搬送路長方向におけるサイズが前記所定の育苗箱における搬送路長方向のサイズよりも短くなるように、前記所定の育苗箱における搬送路長方向の後側が切り詰められてなる態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、本発明の補助送り箱が前記一対の鎮圧ローラの間で停止したときに、該補助送り箱の前端部と前記播種装置の前方の前記鎮圧ローラとの間のスペースが大きくなり、該補助送り箱の取り出しが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る育苗箱用播種機の補助送り箱によれば、最後の育苗箱まで均一な質で播種することができるとともに、育苗箱用播種機から簡単に取り出すことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る補助送り箱が使用される育苗箱用播種機の全体構成を模式的に示す側面図である。
【図2】育苗箱用播種機における播種装置が育苗箱に対して播種している状態を示す側断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】同補助送り箱の平面図である。
【図5】育苗箱用播種機における播種装置に同補助送り箱を使用している状態を示す側断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】従来の育苗箱用播種機の全体構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図6は本発明を具体化した一実施形態の育苗箱用播種機1の補助送り箱Bを示している。図1に示す育苗箱用播種機1は、架台2上に育苗箱送り出し装置3、土入れ装置4、播種装置5、覆土装置6が所定の育苗箱Aの搬送方向に沿って順に設置されており、所定の育苗箱Aを搬送路に沿って一方向に搬送しながら、該育苗箱Aに対し、土入れ、播種及び覆土を連続して行うように構成されている。なお、各図において、矢印Fは育苗箱用播種機の搬送方向を指し示している。
【0015】
育苗箱Aは、可撓性の樹脂からなり、図4に二点鎖線で示すように略矩形に形成された平面視外周形状内に、該外周形状の長さ方向及び幅方向に沿ってポット状の苗室10が碁盤目状に多数配設されるとともに、長さ方向に延びる側縁部11に、該長さ方向における苗室10の配列に合わせて苗箱移送用の送り穴12が列設されている。
【0016】
播種装置5の搬送路長方向における前後には、図2及び図3に示すように、育苗箱Aの搬送路長方向の全長よりも長い間隔をおいて一対の鎮圧ローラ15,16が配設されており、該一対の鎮圧ローラ15,16が駆動機構(図示略)によって回転駆動されることにより、該各鎮圧ローラ15,16の外周に列設された各突起15a,16aによって各苗室10内の培土が鎮圧されるとともに育苗箱Aが搬送されるように構成されている。また、播種装置5と、その後方の鎮圧ローラ15との間には、培土の表面にすり鉢状の凹みを形成するための鎮圧ローラ17が回転自在に設けられているが、この鎮圧ローラ17は、その各突起17aが連続的に搬送される育苗箱Aの各苗室10に係合して回転するようになっているものである。また、播種装置5とその前方の鎮圧ローラ16との間には、後続の育苗箱Aに押されたときの育苗箱Aの反り返りを防止する、搬送路長方向に延びる一対のガイド部材19,19が搬送路幅方向に間隔をおいて配設されている。
【0017】
播種装置5は、図2及び図3に示すように、その種子ホッパ20から種子Sを繰り出すための播種輪21を備え、該播種輪21の左右には育苗箱Aの両側に形成された送り穴12に係合する爪22aを有する位置決めギヤ22が取り付けられ、連続的に搬送される育苗箱Aの送り穴12に係合して回転し、同時に播種輪21を回転させるようになっている。播種輪21は、種子ホッパ20から種子を繰り出すための多数の繰出穴21aが周面に形成されており、搬送路幅方向に延びる軸を中心に回転自在に支持されている。また、播種装置5には、播種輪21における種子Sの繰出穴21aに入り込んだ余分な種子Sを升切りするための回転ブラシ25が設けられており、図2における回転ブラシ25の左側に矢印で示す方向へ強制回転されるようになっている。回転ブラシ25の後方には、回転ブラシ25の間に入り込んだ種子Sを回収するための回収容器26が設けられている。
【0018】
補助送り箱Bは、図4に実線で示すものであり、最後の育苗箱Aを育苗箱用播種機1から取り出すために使用される。この補助送り箱Bの搬送路幅方向は、所定の育苗箱Aにおける送り穴12が形成された側縁部11が省かれてなり、さらに、搬送路幅方向におけるサイズが一対のガイド部材19,19の間隔よりも短くなるように、所定の育苗箱Aにおける搬送路幅方向の両側が切り詰められてなっている。また、補助送り箱Bの搬送路長方向は、該搬送路長方向におけるサイズが所定の育苗箱Aにおける搬送路長方向のサイズよりも短くなるように、所定の育苗箱Aにおける搬送路長方向の後側が切り詰められてなっている。
【0019】
次に、本例の補助送り箱Bの使用方法について説明する。まず、最後の育苗箱Aが、播種装置5の後方の鎮圧ローラ15を通過した後で、該鎮圧ローラ15の後方から補助送り箱Bを送り込む(図1参照)。このとき、搬送路における搬送路幅方向の中央と、補助送り箱Bにおける搬送路幅方向の中央とを互いに一致させておく。すると、該鎮圧ローラ15の各突起15aが補助送り箱Bの各苗室10に嵌合し、補助送り箱Bが最後の育苗箱Aに引き続いて搬送され、一対の鎮圧ローラ15,16の間で停止している最後の育苗箱Aを前方に押し進める。これにより、最後の育苗箱Aは、播種装置5の前方の鎮圧ローラ16の下方に送り込まれ、該鎮圧ローラ16の各突起16aが最後の育苗箱Aの各苗室10に嵌合し、最後の育苗箱Aが覆土装置6へと送り込まれる。これとともに、補助送り箱Bが一対の鎮圧ローラ15,16の間で停止する(図5及び図6参照)。次いで、図5に二点鎖線で示すように、播種装置5の前方における一対のガイド部材19,19の間から補助送り箱Bの前端部を手で持って、搬送方向前方における斜め上方に引っ張ると、補助送り箱Bを取り出すことができる。このとき、補助送り箱Bは育苗箱Aにおける送り穴12が設けられた側縁部11が省かれてなっているので、播種装置5が駆動されることがなく、補助送り箱Bの取り出し時に大きな抵抗が加わることがない。
【0020】
以上のように構成された本例の育苗箱用播種機1の補助送り箱Bによれば、この補助送り箱Bを最後の育苗箱Aの後から搬送させることにより、最後の育苗箱Aも、それ以前の育苗箱Aと同様に搬送され播種される。このため、従来とは異なり、最後の育苗箱Aを取り出すための面倒な作業を行う必要がなく、また、最後の育苗箱Aもそれ以前の育苗箱Aと同様に均一な質で種が播かれる。また、本発明の補助送り箱Bは、側縁部11が省かれているので、播種装置5のところを通過するときに該播種装置5が駆動されることがないため、一対の鎮圧ローラ15,16の間で停止しても、播種装置5とその前方の鎮圧ローラ16との間から大きな抵抗なく抜き取ることができるし、このときに播種装置5から無駄な種子Sが播かれることもない。
【0021】
また、搬送路幅方向におけるサイズが一対のガイド部材19,19の間隔よりも短くなるように、所定の育苗箱Aにおける搬送路幅方向の両側が切り詰められてなるので、育苗箱用播種機1が一対のガイド部材19,19に妨害されることなく、該一対のガイド部材の間から補助送り箱Bを抜き取ることができる。
【0022】
また、搬送路長方向におけるサイズが所定の育苗箱Aにおける搬送路長方向のサイズよりも短くなるように、所定の育苗箱Aにおける搬送路長方向の後側が切り詰められてなるので、本発明の補助送り箱Bが一対の鎮圧ローラ15,16の間で停止したときに、該補助送り箱Bの前端部と播種装置5の前方の鎮圧ローラ16との間のスペースが大きくなり、該補助送り箱Bの取り出しが容易になる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)育苗箱用播種機1を、ガイド部材19,19を省いた構成としたり、ガイド部材19,19とその前方の鎮圧ローラ16との間に補助送り箱Bを取り出すための隙間を設けた構成にしたりすること。この場合は、補助送り箱Bを、所定の育苗箱Aにおける前記送り穴12が形成された側縁部11のみが省かれた構成とすることができる。
(2)補助送り箱Bの搬送路長方向の構成(サイズや苗室10の配列数等)を、所定の育苗箱Aの構成と同様にすること。
【符号の説明】
【0024】
1 育苗箱用播種機
2 架台
3 育苗箱送り出し装置
4 土入れ装置
5 播種装置
6 覆土装置
10 苗室
11 側縁部
12 穴
15 鎮圧ローラ
16 鎮圧ローラ
19 ガイド部材
21 播種輪
22 ギヤ
A 育苗箱
B 補助送り箱
F 育苗箱の搬送方向
S 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の育苗箱を搬送路に沿って一方向に搬送しながら、該育苗箱に対し、土入れ、播種及び覆土を連続して行うように構成された育苗箱用播種機であって、
前記育苗箱は、苗室が碁盤目状に配設されるとともに、前記搬送路長方向に延びる一対の側縁部に該苗室と同ピッチで送り穴が列設されており、
前記播種を行う播種装置の搬送路長方向における前後には、育苗箱の搬送路長方向の全長よりも長い間隔をおいて一対の鎮圧ローラが配設されており、該一対の鎮圧ローラが回転駆動されることにより、該各鎮圧ローラの外周に列設された各突起によって各苗室内の培土が鎮圧されるとともに育苗箱が搬送されるように構成されており、
前記播種装置は、育苗箱の前記送り穴に係合する爪を有するギヤが、育苗箱の搬送に伴って従動回転することにより駆動されるように構成された育苗箱用播種機において、最後の育苗箱を取り出すための育苗箱用播種機の補助送り箱であって、
前記所定の育苗箱における前記側縁部が省かれてなる育苗箱用播種機の補助送り箱。
【請求項2】
前記育苗箱用播種機は、前記播種装置とその後方の前記鎮圧ローラとの間に、育苗箱の反り返りを防止する、搬送路長方向に延びる一対のガイド部材が搬送路幅方向に間隔をおいて配設されており、
搬送路幅方向におけるサイズが前記一対のガイド部材の間隔よりも短くなるように、前記所定の育苗箱における搬送路幅方向の両側が切り詰められてなる育苗箱用播種機の補助送り箱。
【請求項3】
搬送路長方向におけるサイズが前記所定の育苗箱における搬送路長方向のサイズよりも短くなるように、前記所定の育苗箱における搬送路長方向の後側が切り詰められてなる育苗箱用播種機の補助送り箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−279309(P2010−279309A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136450(P2009−136450)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】