説明

能動型赤外線検知装置

【課題】 屋外に設置した場合などに霧や雨のような赤外線ビームを減衰させる要因が存在するか否かに関わらず誤報を極力回避でき、高い信頼性を備えた能動型赤外線検知装置を提供する。
【解決手段】 赤外線ビームIRを出射する投光器11と、投光器11をパルス駆動する投光器駆動部12と、受信器14とを有する投光装置10と、投光器11からの赤外線ビームIRを受光する受光器21と、受光器21から所定数以上のパルスが連続して出力されないことにより赤外線ビームIRが遮断されていると判別する遮光判別部25と、赤外線ビームIRの受光状態を検出する受光状態検出部28と、受光状態の情報を受信器14へ送信する送信器29とを有する受光装置20とが備えられ、受信器14で受信される情報に基づいて投光器駆動部12におけるパルス駆動信号の周期が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティシステムなどに使用される能動型赤外線検知装置に関し、特に屋外などに設置された場合などに周囲環境が悪化しても動作の信頼性を維持可能な能動型赤外線検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セキュリティシステムに適用され、警戒区域内への人の侵入を検知するための能動型赤外線検知装置が知られている。
【0003】
この種の能動型赤外線検知装置は、一般には投光器を有する投光装置と、受光器を有する受光装置とから構成されている。これらの投光装置と受光装置とは直線的な警戒区域の両端部に設置され、投光装置の投光器からの赤外線ビームが受光装置の受光器に向けて投光される。そして、この赤外線ビームが侵入者などによって遮断されて受光器の受光量が変化すると、例えば防犯カメラの作動を開始させたり、警備会社への通報が行われたりするようになっている。
【0004】
また、上記赤外線ビームは、一般には任意の変調周波数のパルス光が用いられる。このようなパルス光を使用する理由は、太陽光や自動車のヘッドライトなどの直流光と、投光装置からの赤外線ビームとを識別するためである。このようにすることで、直流光の影響によるセンサの誤動作を軽減することができる。
【0005】
ところが、蛍光灯等の変調光や交流無線機などによる高周波の影響によって能動型赤外線検知装置が正常に作動しないことがある。例えば、投光装置からの赤外線ビームのパルス光に対しておよそ2倍の周波数をもった蛍光灯の変調光(ノイズ信号)を受光装置が受光する状態となっている場合を挙げる。この場合、警戒区域内に人が侵入して、赤外線ビームが遮断されたとしても、蛍光灯の光が遮断されなければ、受光装置は蛍光灯の変調光を受光し続けることになる。
【0006】
このような状況では、本来検知すべき赤外線ビームのパルス光を受光している状態と、ノイズ信号を受光している状態との識別ができなくなってしまう。その結果、警戒区域内に人が侵入しているにも関わらず、それを認識することができず、能動型赤外線検知装置がいわゆる「失報」状態に陥ってしまう。このような失報状態は、ノイズ信号が赤外線ビームのパルス光に対して2倍の周波数である場合に限らず、およそ整数倍もしくは赤外線ビームのパルス光より高い周波数であるときに発生する可能性がある。
【0007】
そこで、ノイズ信号の存在する環境下に設置された場合に、悪環境下であることを認識し、失報状態に陥る可能性があることを確認できるようにした能動型赤外線センサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
一方、このような能動型赤外線検知装置が屋外に設置される場合、季節や天候によってはカバーの赤外線透過窓部分に霜や露などが付着することがある。このとき、赤外線ビームが減衰することで受光素子の受光量が大きく減少し、侵入者が存在しないにも関わらず侵入者があったかのように判断される「誤報」が生じる可能性がある。
【0009】
このような問題に対しては、カバーの赤外線透過窓部分の上部にフードを設けたり、さらにはこの赤外線透過窓部分に面状ヒータを設けて霜や露などの付着を防止できる赤外線ビームセンサも提案されている(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2001−235367号公報
【特許文献2】特開平8−171679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献2のような従来技術は、霧や雨などのように能動型赤外線検知装置から離れたところに赤外線ビームを減衰させる要因が存在する場合には有効ではない。
【0011】
また、このような赤外線ビームを減衰させる要因を考慮し、そのような場合でも十分な強度の赤外線ビームが受光素子に達するように、赤外線ビームを予め強く設定しておくことも考えられる。しかし、赤外線ビームを減衰させる要因が存在しないときには逆に赤外線ビームが強すぎるため、能動型赤外線センサ付近の非検知対象物体などによる反射光の影響で失報状態に陥る可能性がある。
【0012】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、屋外に設置した場合などに霧や雨のような赤外線ビームを減衰させる要因が存在するか否かに関わらず誤報を極力回避でき、高い信頼性を備えた能動型赤外線検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の能動型赤外線検知装置は、赤外線ビームを出射する投光器と、この投光器を所定周期のパルス駆動信号に基づいてパルス駆動する投光器駆動部と、受信する情報に基づいて前記パルス駆動信号の周期を設定する受信器とを有する投光装置と、前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応するパルス信号を出力する受光器と、この受光器から所定数以上のパルスが連続して出力されないことにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部と、この受光状態検出部によって検出された受光状態情報を前記受信器へ送信する送信器とを有する受光装置とを備え、前記受信器で受信される前記受光状態情報に基づいて前記投光器駆動部における前記パルス駆動信号の周期が変更されることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記受光状態検出部によって検出される前記赤外線ビームの受光状態としては、例えば、前記赤外線ビームの受光レベルや信号対雑音比が挙げられ、これらの低下が検出されたときは、前記投光器駆動部における前記パルス駆動信号の周期が長くされることが好ましい。また、前記遮光判別部による判別は、前記受光器からの所定レベル以上のパルス信号に基づいて行うようにしてもよい。この場合に前記赤外線ビームの受光レベルや信号対雑音比の低下が検出されたときは、前記遮光判別部における前記所定レベルが低くされることが好ましい。
【0015】
この発明の能動型赤外線検知装置によれば、前記受光装置において、霧や雨のような赤外線ビームを減衰させる要因などによって環境が悪化していることが前記赤外線ビームの受光状態に基づいて検出されると、その情報が前記投光装置に伝達され、前記投光器の駆動パルスの周期が変更される。それに応じて前記受光器が出力するパルス信号の周期も変化するので、このパルス信号の所定数のパルスに対応する時間の長さも変化する。これにより、前記赤外線ビームが遮断されている遮光時間の長さに基づく侵入者などの有無の検知を環境に応じて適切に行うことが可能となり、霧や雨などによる環境悪化時の誤報などを極力回避することが可能となる。なお、前記投光器の駆動パルスの周期が長くなるように変更する場合には、単位時間当たりのパルス駆動時間が減少するので、消費電流の削減も可能となる。
【0016】
あるいは、本発明の能動型赤外線検知装置は、赤外線ビームを出射する投光器と、この投光器を所定周期のパルス駆動信号に基づいてパルス駆動する投光器駆動部とを有する投光装置と、前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応するパルス信号を出力する受光器と、この受光器から所定数以上のパルスが連続して出力されないことにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部とを有する受光装置とを備え、前記受光状態検出部の検出結果に基づいて前記遮光判別部における判別のための前記所定数が変更されることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明の能動型赤外線検知装置によれば、前記受光装置において、霧や雨のような赤外線ビームを減衰させる要因などによって環境が悪化していることが前記赤外線ビームの受光状態に基づいて検出されると、前記遮光判別部における判別のための前記所定数が変更され、この所定数のパルスに対応する時間の長さも変化する。これにより、前記赤外線ビームが遮断されている遮光時間の長さに基づく侵入者などの有無の検知を環境に応じて適切に行うことが可能となり、霧や雨などによる環境悪化時の誤報を極力回避することが可能となる。また、前記受光装置から前記投光装置への環境情報の送信などは必要としないので、これらの装置それぞれの構成が簡単となり、小型化やコストダウンを図ることも可能となる。
【0018】
あるいは、本発明の能動型赤外線検知装置は、赤外線ビームを出射する投光器を有する投光装置と、前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応する信号を出力する受光器と、この受光器の出力レベルの低下が所定時間以上継続することにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部とを有する受光装置とを備え、前記受光状態検出部の検出結果に基づいて前記遮光判別部における判別のための前記所定時間が変更されることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明の能動型赤外線検知装置によれば、前記受光装置において、霧や雨のような赤外線ビームを減衰させる要因などによって環境が悪化していることが前記赤外線ビームの受光状態に基づいて検出されると、前記遮光判別部における判別のための前記所定時間が変更される。これにより、前記赤外線ビームが遮断されている遮光時間の長さに基づく侵入者などの有無の検知を環境に応じて適切に行うことが可能となり、霧や雨などによる環境悪化時の誤報を極力回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の能動型赤外線検知装置によれば、赤外線ビームが遮断されている遮光時間の長さに基づく侵入者などの有無の検知を環境に応じて適切に行うことが可能となり、霧や雨などによる環境悪化時の誤報を極力回避することが可能となる。
【0021】
なお、赤外線ビームの発光をパルス駆動で行い、所定数以上のパルスが連続して受光されないことによりこの赤外線ビームが遮断されていると判別する能動型赤外線検知装置において、この赤外線ビームの受光状態の悪化が検出されたときにパルス周期が長くなるように変更する場合には、単位時間当たりのパルス駆動時間が減少するので、消費電流の削減も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置1の概略構成を示すブロック図である。この能動型赤外線検知装置1は、直線的な警戒区域の両端側の壁面などに光軸を一致させて相対向するように設置される投光装置10と受光装置20とからなり、これらはそれぞれユニット化された構成になっている。以下、それぞれの構成と全体としての動作について説明する。
【0024】
(1)投光装置10
投光装置10は、投光器11、投光器駆動回路12、駆動周波数設定回路13、および受信器14を備えている。
【0025】
投光器11は、赤外線を発する赤外線発光ダイオードなどの発光素子と、この発光素子から発せられた赤外線から赤外線ビームを形成するための投光レンズまたは反射ミラーのような送信側光学系とを有しており、これらによって赤外線ビームIRを出射する。
【0026】
投光器駆動回路12は、駆動周波数設定回路13によって設定される所定周波数に応じたパルス駆動信号S12で投光器11の発光素子をパルス駆動し、赤外線ビームIRがこの所定周波数で変調されるようにする。
【0027】
受信器14は、受光装置20から送信される環境情報S29を受信し、能動型赤外線検知装置1が設置されている環境条件が悪化していることを駆動周波数設定回路13に伝達する。
【0028】
駆動周波数設定回路13は、投光器駆動回路12のパルス駆動の周波数を設定する。通常の場合、この駆動周波数は、例えば100Hz(パルス周期としては10ms)に設定されるが、受信器14から環境条件が悪化していることが伝達されると、駆動周波数は下げられ、例えば50Hz(パルス周期としては20ms)に変更される。
【0029】
(2)受光装置20
受光装置20は、受光器21、増幅器22、検波器23、コンパレータ24、判別回路25、警報回路26、基準電圧設定回路27、受光レベル・ノイズ検出回路28、および送信器29を備えている。
【0030】
受光器21は、受光レンズまたは受光ミラーのような受光側光学系と、フォトトランジスタなどの受光素子とを有しており、投光装置10からの赤外線ビームIRを受光してその赤外線受光量に応じた信号レベルの電気信号S21を出力する。この電気信号S21は、増幅器22で増幅された後に、検波器23で外乱光成分などが除去されてパルス変調波のみによる受光信号のレベルに応じたパルス信号S23に変換される。変換されたパルス信号S23は、基準電圧設定回路27で設定される基準電圧Vrefとコンパレータ24において比較され、基準電圧Vrefよりも高いレベルのパルス信号S24のみが判別回路25に出力される。
【0031】
判別回路25は、コンパレータ24から出力されるパルス信号S24を監視しており、コンパレータ24から上述のパルス駆動信号S12の周波数に応じたパルス信号S24のパルスの出力が続いているときは、侵入者は存在しないと判断する。コンパレータ24からのパルス信号S24のパルスが途切れた場合でも、それから所定時間内にパルスが再び出力されたときは侵入者によるものではないと判断する。しかし、パルス信号S24のパルスが途切れてから上記所定時間以上経過したとき、すなわち、赤外線ビームが遮断されている遮光時間が上記所定時間以上であるときは、侵入者によって赤外線ビームが遮断されたと判断して警報回路26へ侵入者検知信号S25を出力する。このようにすることで、実際には侵入者が存在しないのに偶発的な要因によってパルス信号S24のパルスの出力が一時的に途切れた場合などに侵入者検知信号S25が誤って出力されることを回避することができる。
【0032】
なお、この判別回路25では、侵入者の有無を判別するための上記所定時間は、絶対的な時間としてではなくパルス信号の周期に対する相対的な時間として扱うものとする。パルスの駆動周波数が100Hzであればパルス周期は10msであるが、例えばこのときにパルス周期の5倍の時間、すなわち50ms以上に渡ってパルス信号が出力されないときに侵入者が存在すると判断する。したがって、パルス周期が長くなれば、それに応じて上記所定時間も長くなる。
【0033】
警報回路26は、判別回路25から侵入者検知信号S25が出力されると、侵入者が存在することを報知するための警報信号S26を発生する。この警報信号S26は、例えば図示しない警備センターへ出力されるようにしてもよい。
【0034】
また、受光レベル・ノイズ検出回路28は、増幅器22の出力に基づいて受光器21の受光レベルおよびその変化度合い、S/N比などを検出する。そして、これらの検出結果から、能動型赤外線検知装置1が設置されている環境条件が霧や雨などのために悪化していると判断すると、環境悪化信号S28を基準電圧設定回路27および送信器29へ出力する。
【0035】
基準電圧設定回路27は、コンパレータ24の基準電圧Vrefを出力する。受光レベル・ノイズ検出回路28から環境悪化信号S28が出力されている場合は、基準電圧Vrefを通常時の電圧よりも下げることで霧や雨などによる受光器21の受光レベルの低下に対応させる。
【0036】
送信器29は、受光レベル・ノイズ検出回路28から環境悪化信号S28が出力されると、投光装置10に対して環境条件が悪化していることを環境情報S29として無線などで送信する。
【0037】
(3)能動型赤外線検知装置1の動作について
図2は、本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置1の通常時における投光器11のパルス駆動信号S12のタイムチャートの例である。図3は、このときの受光装置20の判別回路25に入力されるパルス信号S24のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20が影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【0038】
能動型赤外線検知装置1が設置されている環境条件が通常の場合は、図2に示すように、投光器11は第1の駆動周波数(パルス周期としてはT1)のパルス駆動信号S12で駆動される。
【0039】
能動型赤外線検知装置1の警戒領域内に侵入者が存在していなければ、受光装置20の判別回路25に入力されるパルス信号S24は、図3(a)に示すように、パルス駆動信号S12と同様の波形となる。
【0040】
警戒領域内に侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20が影響を受けた場合は、例えば、図3(b)に示すように、受光装置20のパルス信号S24において本来は出現するはずのパルスの一部が消失してしまう。しかし、侵入者の有無を判別するための所定時間を、例えばパルス周期T1の5倍としておけば、この所定時間内にパルスが再度出現することにより、侵入者検知信号S25が誤って出力されることが回避される。
【0041】
警戒領域内に実際に侵入者が存在する場合、受光装置20のパルス信号S24は、例えば図3(c)に示すようになり、パルスが消失してから上記所定時間経過後に、判別回路25から侵入者検知信号S25が出力される。
【0042】
図4は、本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置1の環境悪化時における投光器11のパルス駆動信号S12のタイムチャートの例である。図5は、このときの受光装置20の判別回路25に入力されるパルス信号S24のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20が影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【0043】
能動型赤外線検知装置1が設置されている環境条件が悪化した場合は、図4に示すように、投光器11は通常時よりも低い第2の駆動周波数(パルス周期としてはT2)のパルス駆動信号S12で駆動される。
【0044】
能動型赤外線検知装置1の警戒領域内に侵入者が存在していなければ、受光装置20の判別回路25に入力されるパルス信号S24は、図5(a)に示すように、パルス駆動信号S12と同様の波形となる。
【0045】
警戒領域内に侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20が影響を受けた場合は、例えば、図5(b)に示すように、受光装置20のパルス信号S24において本来は出現するはずのパルスの一部が消失してしまう。しかし、侵入者の有無を判別するための所定時間をパルス周期T2の5倍としていれば、この所定時間内にパルスが再度出現することにより、侵入者検知信号S25が誤って出力されることが回避される。
【0046】
警戒領域内に実際に侵入者が存在する場合、受光装置20のパルス信号S24は、例えば図5(c)に示すようになり、パルスが消失してから上記所定時間経過後に、判別回路25から侵入者検知信号S25が出力される。
【0047】
能動型赤外線検知装置1の環境が悪化しているときは赤外線ビームが減衰することにより、本来は出現するはずのパルスの一部の消失が発生しやすくなるが、上述のように侵入者の存在の有無を判別する所定時間を長くすることにより、誤報の発生を減少させることが可能となる。
【0048】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る能動型赤外線検知装置1aの概略構成を示すブロック図である。この能動型赤外線検知装置1aは、投光装置10aと受光装置20aとからなっている。なお、第2実施形態は、次に述べる点を除いては第1実施形態と同一であるので、同じ構成部材には同じ参照符号を付すこととし、相違点のみについて説明する。
【0049】
(1)投光装置10a
投光装置10aは、投光器11、投光器駆動回路12、および駆動周波数設定回路13を備えている。第1実施形態とは異なって受信器14は備えておらず、駆動周波数設定回路13が設定するパルス駆動の周波数は固定されている。
【0050】
(2)受光装置20a
受光装置20aは、受光器21、増幅器22、検波器23、コンパレータ24、判別回路25a、警報回路26、基準電圧設定回路27、および受光レベル・ノイズ検出回路28を備えている。
【0051】
受光レベル・ノイズ検出回路28は、能動型赤外線検知装置1が設置されている環境条件が霧や雨などのために悪化していると判断すると、環境悪化信号S28を基準電圧設定回路27および判別回路25aへ出力する。
【0052】
判別回路25aは、コンパレータ24から出力されるパルス信号S24を監視しているのは第1実施形態の判別回路25と同様であるが、侵入者の有無を判別するための所定時間を環境悪化信号S28に応じて変更するようにしている。すなわち、受光レベル・ノイズ検出回路28から環境悪化信号S28が出力されているとき、侵入者の有無を判別するための所定時間を通常時よりも長くする。例えば、通常時に50msで判別しているのであれば、環境悪化時には通常時の2倍の100msで判別を行うようにする。
【0053】
なお、この判別回路25aでは、パルス信号が途切れてからの経過時間は、絶対的な時間として扱うものとするが、回路の簡単化のためにパルス信号の周期の整数倍の時間を設定する。パルスの駆動周波数が100Hzであれば、パルス周期は10msであるので、通常時はこのパルス周期の5倍の時間に設定し、環境悪化時にはこのパルス周期の10倍の時間に設定する。ただし、このような方法に限らず、タイマーなどを使用して経過時間を測定するようにしてもよい。
【0054】
(3)能動型赤外線検知装置1aの動作について
図7は、本発明の第2実施形態に係る能動型赤外線検知装置1aの投光器11のパルス駆動信号S12のタイムチャートの例である。図8は、このときの受光装置20aの判別回路25に入力されるパルス信号S24のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20aが影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【0055】
能動型赤外線検知装置1aが設置されている環境条件に関わらず、図7に示すように、投光器11は第1の駆動周波数(パルス周期としてはT1)のパルス駆動信号S12で駆動される。
【0056】
能動型赤外線検知装置1aの警戒領域内に侵入者が存在していなければ、受光装置20aの判別回路25に入力されるパルス信号S24は、図8(a)に示すように、パルス駆動信号S12と同様の波形となる。
【0057】
警戒領域内に侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置20aが影響を受けた場合は、例えば、図8(b)に示すように、受光装置20aのパルス信号S24において本来は出現するはずのパルスの一部が消失してしまう。しかし、侵入者の有無を判別するための所定時間(例えば、通常時はパルス周期T1の5倍、環境悪化時はパルス周期T1の10倍)内にパルスが再度出現することにより、侵入者検知信号S25が誤って出力されることが回避される。
【0058】
警戒領域内に実際に侵入者が存在する場合、受光装置20のパルス信号S24は、例えば図8(c)に示すようになり、パルスが消失してから上記所定時間経過後に、判別回路25から侵入者検知信号S25が出力される。
【0059】
能動型赤外線検知装置1aの環境が悪化しているときは赤外線ビームが減衰することにより、本来は出現するはずのパルスの一部の消失が発生しやすくなるが、上述のように侵入者の存在の有無を判別する所定時間を長くすることにより、誤報の発生を減少させることが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置の通常時における投光器のパルス駆動信号のタイムチャートの例である。
【図3】図2のときに、受光装置の判別回路に入力されるパルス信号のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置が影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に係る能動型赤外線検知装置の環境悪化時における投光器のパルス駆動信号2のタイムチャートの例である。
【図5】図4のときに、受光装置の判別回路に入力されるパルス信号のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置が影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係る能動型赤外線検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る能動型赤外線検知装置の投光器のパルス駆動信号のタイムチャートの例である。
【図8】図7のときに、受光装置の判別回路に入力されるパルス信号のタイムチャートの例であり、(a)は侵入者が存在しない場合を示し、(b)は侵入者が実際には存在しないものの偶発的要因などで受光装置が影響を受けた場合を示し、(c)は侵入者が実際に存在する場合を示す。
【符号の説明】
【0062】
1、1a 能動型赤外線検知装置
10、10a 投光装置
11 投光器
12 投光器駆動回路
13 駆動周波数設定回路
14 受信器
20、20a 受光装置
21 受光器
22 増幅器
23 検波器
24 コンパレータ
24 パルス信号S
25、25a 判別回路
26 警報回路
27 基準電圧設定回路
28 受光レベル・ノイズ検出回路
29 送信器
IR 赤外線ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線ビームを出射する投光器と、この投光器を所定周期のパルス駆動信号に基づいてパルス駆動する投光器駆動部と、受信する情報に基づいて前記パルス駆動信号の周期を設定する受信器とを有する投光装置と、
前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応するパルス信号を出力する受光器と、この受光器から所定数以上のパルスが連続して出力されないことにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部と、この受光状態検出部によって検出された受光状態情報を前記受信器へ送信する送信器とを有する受光装置とを備え、
前記受信器で受信される前記受光状態情報に基づいて前記投光器駆動部における前記パルス駆動信号の周期が変更されることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記受光状態検出部によって前記赤外線ビームの受光レベルの低下または信号対雑音比の低下が検出されると、前記投光器駆動部における前記パルス駆動信号の周期が長くされることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記遮光判別部は、前記受光器からの所定レベル以上のパルス信号に基づいて判別を行うことを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記受光状態検出部によって前記赤外線ビームの受光レベルの低下または信号対雑音比の低下が検出されると、前記遮光判別部における前記所定レベルが低くされることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項5】
赤外線ビームを出射する投光器と、この投光器を所定周期のパルス駆動信号に基づいてパルス駆動する投光器駆動部とを有する投光装置と、
前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応するパルス信号を出力する受光器と、この受光器から所定数以上のパルスが連続して出力されないことにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部とを有する受光装置とを備え、
前記受光状態検出部の検出結果に基づいて前記遮光判別部における判別のための前記所定数が変更されることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記受光状態検出部によって前記赤外線ビームの受光レベルの低下または信号対雑音比の低下が検出されると、前記遮光判別部における判別のための前記所定数が大きくされることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記遮光判別部は、前記受光器からの所定レベル以上のパルス信号に基づいて判別を行うことを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記受光状態検出部によって前記赤外線ビームの受光レベルの低下または信号対雑音比の低下が検出されると、前記遮光判別部における前記所定レベルが低くされることを特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項9】
赤外線ビームを出射する投光器を有する投光装置と、
前記投光器から出射される前記赤外線ビームを受光して対応する信号を出力する受光器と、この受光器の出力レベルの低下が所定時間以上継続することにより前記赤外線ビームが遮断されていると判別する遮光判別部と、前記受光器の出力に基づいて前記赤外線ビームの受光状態を検出する受光状態検出部とを有する受光装置とを備え、
前記受光状態検出部の検出結果に基づいて前記遮光判別部における判別のための前記所定時間が変更されること特徴とする能動型赤外線検知装置。
【請求項10】
請求項9に記載の能動型赤外線検知装置において、
前記受光状態検出部によって前記赤外線ビームの受光レベルの低下または信号対雑音比の低下が検出されると、前記遮光判別部における判別のための前記所定時間が大きくされることを特徴とする能動型赤外線検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−146417(P2006−146417A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333226(P2004−333226)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】