説明

脱硫剤及びこれを用いた脱硫方法

【課題】硫黄化合物を除去する性能(脱硫性能)に優れ、かつ耐久性を有する脱硫剤を提供する。炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる微量の硫黄化合物を除去する方法を提供する。
【解決手段】レーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径が80〜300μmであり、かつBET法により測定した比表面積が65〜200m/gであるスポンジニッケルからなる脱硫剤。この脱硫剤と、微量の硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物から硫黄化合物を除去する脱硫剤、該脱硫剤を用いた脱硫方法に関する。詳しくは、比較的温和な条件、簡便な方法により、硫黄化合物を低濃度まで効率的に除去することができ、かつ寿命が長い脱硫剤、及び該脱硫剤を用いて炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用、小規模業務用、自動車用などの分散型燃料電池としては、固体高分子型燃料電池が使用、検討されている。固体高分子型燃料電池の場合、LPG、灯油などの電池用燃料に含まれる硫黄分を数十ppb(好ましくは10ppb)以下にする必要がある。
また、自動車排ガス規制の強化に伴い、ガソリン、軽油に含まれる硫黄分の更なる低減も求められている。
【0003】
石油系炭化水素油に含まれる硫黄化合物を除去する方法としては、アルミナなどの多孔質担体に、コバルト、ニッケルなどのVIII族遷移金属及びモリブデン、バナジウムなどを担持した触媒の存在下に水素化脱硫する方法が、古くから実施されている。しかし、この脱硫方法は、通常、200〜400℃、常圧〜5MPaという条件で実施するため、安全・環境上の配慮、法規上の関係から、使用できる場所や装置が制約されてしまうという問題があった。例えば、小規模の分散型燃料電池用燃料の脱硫方法としては不適当な方法であった。
【0004】
また、脱硫剤として、各種の吸着剤が検討、使用されている。ゼオライト類(X型、Y型、モルデナイト、フォージャサイト、フェリエライトなど)、アルミナ、シリカゲル、活性炭などからなる物理吸着剤、亜鉛、銅、ニッケル、鉄などの金属及び/又は金属酸化物(金属(酸化物)系吸着剤)などからなる化学吸着剤が知られている。
【0005】
灯油、軽油に含まれる硫黄化合物は、大部分がベンゾチオフェン類、及びジベンゾチオフェン類である。ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類に対する吸着容量が大きく、満足できる耐久性を有する物理吸着剤は見出されていない。さらに、灯油、軽油には、物理吸着剤に対して硫黄化合物と競争的に吸着する芳香族化合物、特に多環芳香族化合物が含まれている。そのため、ゼオライト類、アルミナ、シリカゲル、活性炭など室温付近で使用される物理吸着剤では、炭化水素油中のベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類の除去性能が低く、硫黄含有量を極微量まで低減するためには、多量の吸着剤を必要とすることから実用的ではなかった。
【0006】
金属(酸化物)系吸着剤としては、硫黄化合物の除去性能が高いニッケルを含有するものが好ましい。ニッケルを担体に40wt%を超える量担持させたニッケル系吸着剤が開示されている(特許文献1)。さらに銅を含有する吸着剤も知られている(特許文献2)。しかし、灯油の脱硫剤として使用した場合、250〜300℃に加熱しなければならず、液化状態を保つために耐圧容器を必要とし、常圧、150℃で脱硫した場合は、工業的に満足できる耐久性が得られなかった。
【0007】
ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンが、常圧、100℃以下の温度で、スポンジニッケルにより脱硫されることが開示されている(非特許文献1)。炭化水素燃料中の硫黄成分を除去するために、スポンジ金属触媒を使用する方法が開示されている(特許文献3)。また、脱硫に使用したスポンジニッケルを過酸化水素、アルカリ金属次亜塩素酸塩などの酸化剤水溶液と処理することにより、使用済みスポンジニッケルを再生する工程を含む炭化水素液体の脱硫方法が開示されている(特許文献4)。いずれも、常圧、150℃以下の温度で、灯油、ガソリン中の硫黄分を所望の含量まで低減することは可能であるが、記載されている脱硫剤の耐久性は、いまだ、満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−188405号公報
【特許文献2】特開平6−315628号公報
【特許文献3】特開2005−015543号公報
【特許文献4】特表2005−509043号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Bull.Chem.Soc.Jpn.,62,557(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
硫黄化合物を除去する性能(脱硫性能)に優れ、かつ耐久性を有する脱硫剤を提供する。炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる微量の硫黄化合物を除去する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、脱硫剤として、特定範囲の体積平均粒子径、及び特定範囲の比表面積を有するスポンジニッケルを選択した場合、従来のニッケル系吸着剤と比較して、高い脱硫性能を、より長期に渡って保持し、耐久性が優れることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物から硫黄化合物を除去する脱硫剤であって、レーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径が80〜300μmであり、かつBET法により測定した比表面積が65〜200m/gであるスポンジニッケルからなることを特徴とする脱硫剤、
(2)前記体積平均粒子径が120〜170μmであることを特徴とする前記(1)に記載の脱硫剤、
(3)前記比表面積が80〜130m/gであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の脱硫剤、
(4)さらに、金属換算で4〜18質量%のアルミニウムを含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の脱硫剤、
(5)ニッケル表面積が25〜65m/gであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の脱硫剤。
(6)モリブデン、ビスマス、タングステン、バナジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の脱硫剤、
(7)硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物と、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の脱硫剤を接触させることを特徴とする、硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の脱硫方法、
(8)前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の硫黄含有量が20質量ppm以下であることを特徴とする前記(7)に記載の脱硫方法、
(9)前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物が灯油、軽油、ジェット燃料、ナフサ、ガソリン、バイオフューエル、LNG、LPG、天然ガス、都市ガス、ジメチルエーテル、メタノール、及びエタノールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(7)又は(8)に記載の脱硫方法、
(10)前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物が、常温、常圧で液体であることを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれかに記載の脱硫方法、
(11)前記炭化水素が10質量ppm未満の硫黄分を含有する灯油であり、該灯油と、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の脱硫剤を、常温〜250℃で、圧力1MPa以下にて接触させることを特徴とする前記(7)〜(10)のいずれかに記載の脱硫方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の脱硫剤は高い脱硫性能を有し、さらに室温〜250℃という比較的低温で使用した場合には、従来のニッケル系吸着剤と比較して耐久性に優れる。また、本発明の脱硫剤は簡便な方法により、かつ比較的安価に製造することができる。本発明の脱硫方法によれば、脱硫剤の交換、再生などを頻繁に行なわなくとも、例えば、燃料電池用燃料として要求される極めて低濃度の硫黄分しか含有しない炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を長時間に渡って供給することが可能である。炭化水素及び/又は含酸素有機化合物が、常温、常圧で液体である場合には、常圧でも実施できるため、耐圧容器などが不要である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の脱硫剤について説明する。
本発明に記載のスポンジニッケルとは、従来よりラネー(登録商標)ニッケルと呼ばれている、活性表面を有する多孔質の金属ニッケルを主体とするものである。より詳しくは、“ラネー触媒”(共立出版、1971)に詳しく記載されているものである。
【0015】
本発明の炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫剤は、主としてスポンジニッケルからなる脱硫剤であって、レーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径が80〜300μmであり、かつBET法により測定した比表面積が65〜200m/gであることを特徴としている。好ましくは、体積平均粒子径は120〜170μmであり、比表面積は80〜130m/gである。本発明の脱硫剤を管型反応器に充填し固定床とし、処理対象である硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物と連続的に接触させる脱硫方法においては、脱硫剤の体積平均粒子径が80μmより小さい場合には、接触直後から、管型反応器の出口側から少しずつ硫黄化合物が流出することがあるため好ましくなく、300μmを超える場合には反応器への充填率が低下し脱硫効率が低下するため好ましくない。また、比表面積が65m/gより小さい場合には脱硫剤の寿命が短くなるために好ましくなく、200m/gを超える場合には脱硫剤の強度が低下し崩壊し易くなるために好ましくない。
【0016】
本発明の脱硫剤としては、金属換算で4〜18質量%のアルミニウムを含有することが好ましい。さらに好ましくは8〜18質量%である。アルミニウム含量が4質量%未満である場合には脱硫剤の寿命が短くなるため好ましくなく、18質量%を超える場合には表面積が小さくなるため好ましくない。
【0017】
本発明の脱硫剤としては、Ni表面積が25〜65m/gであることが好ましい。さらに好ましくは40〜55m/gである。Ni表面積が25m/g未満である場合には脱硫剤の寿命が短くなるため好ましくなく、65m/gを超える場合には脱硫剤の安定性が損なわれるため好ましくない。
【0018】
本発明の脱硫剤には、ニッケル、アルミニウム以外に、モリブデン、ビスマス、タングステン、バナジウムから選ばれる少なくとも1種の第3金属が含まれていてもよい。特にモリブデン、バナジウムについては、高温で脱硫する時に、ニッケルのシンタリングや凝集を抑える効果がある。第3金属の含有量は、脱硫性能に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、好ましくは、ニッケルに対して0.5〜5質量%である。
【0019】
本発明の脱硫剤の製造方法について説明する。
本発明のスポンジニッケルからなる脱硫剤は、ニッケル及びアルミニウムからなる母合金インゴットを所定の粒度になるように粉砕し、水酸化アルカリ金属水溶液と、所定温度で所定時間、接触させることによりアルミニウムの少なくとも一部分を溶出させ(展開と称する)、水洗することにより製造することができる。
【0020】
母合金中のニッケルとアルミニウムの質量比としては、50:50〜58:42が好ましい。ニッケルの質量比が50を下回る場合には、レーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径が80μmより小さくなる、もしくはBET法により測定した比表面積が65m/gより小さくなるために好ましくない。ニッケルの質量比が58を超える場合には、比表面積が65m/gより小さくなり、かつアルミニウム含量が金属換算で18質量%を超え易くなり、脱硫剤の寿命が短くなるため好ましくない。
【0021】
母合金の粒度としては、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が100μm以上であることが好ましい。これにより、展開後のスポンジニッケルの体積平均粒子径を80μm以上にできる。
【0022】
ニッケル、アルミニウムを含有する母合金と接触させる水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。母合金中のアルミニウムの質量に対して10〜35倍である水酸化アルカリ金属を含む濃度10〜35質量%の水酸化アルカリ金属水溶液と接触させることが好ましい。水酸化アルカリ金属の添加量がアルミニウムに対して10倍未満であったり、水溶液の濃度が10質量%未満である場合は、得られるスポンジニッケル中のアルミニウム含量が金属換算で4質量%未満となり、脱硫剤の寿命が短くなるため好ましくなく、水酸化アルカリ金属の添加量が35倍を超えたり、濃度が35質量%を超える場合は、展開が不十分あるいは実質的に不可能となり、得られるスポンジニッケル中のアルミニウム残量が金属換算で18質量%を超え、表面積が小さくなるため好ましくない。
【0023】
展開温度及び時間としては、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5時間、脱硫剤中のアルミニウム含量を前記した4〜18質量%の範囲とする点から、さらに好ましくは50〜80℃で0.5〜5時間である。展開温度が40℃未満の場合は展開に長時間を要するので好ましくなく、100℃を超えると、比表面積が低下するため好ましくない。
その他の条件は、前記した“ラネー触媒”(共立出版、1971)に記載されている一般的な方法に従って製造することができる。
【0024】
ニッケル、アルミニウム以外に、モリブデン、ビスマス、タングステン、バナジウムから選ばれる少なくとも1種の第3金属を含有する脱硫剤を製造する場合には、合金調製時にこれらの金属を添加し調製された母合金を展開する方法、第3金属の化合物を共沈法、含浸法、吸着法等により前記に従って得られたスポンジニッケルに担持させる。第3金属の化合物としては、モリブデン酸ナトリウムなどのモリブデン酸塩、ビスマス酸ナトリウムなどのビスマス酸塩、タングステン酸ナトリウムなどのタングステン酸塩、バナジン酸ナトリウムなどのバナジン酸塩などが例示できる。脱硫剤において、ニッケルに対して第3金属が1〜5質量%になるように、第3金属もしくは第3金属の化合物を添加する。
【0025】
製造した本発明のスポンジニッケルからなる脱硫剤は、できるだけ酸素に触れないように液体中に浸漬し、密閉して保存する。浸漬保存する液体としては、イオン交換水などの水も使用できるが、灯油、軽油など炭化水素液体が好ましい。炭化水素液体に浸漬保存する場合は、前記した方法で製造された水で湿っている脱硫剤を、低級アルコールなどの親水性有機溶媒に浸漬置換後、炭化水素液体に置換する。
【0026】
本発明の脱硫方法について説明する。
本発明の脱硫剤と、硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を接触させる。
前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物中の硫黄含有量としては、20質量ppm以下が好ましい。硫黄含有量が20質量ppmを超える場合は、脱硫剤の寿命が短くなり、脱硫剤を頻繁に交換する必要があるため好ましくない。本発明の脱硫剤と接触させる炭化水素及び/又は含酸素有機化合物中の硫黄含有量が20質量ppmを超える場合は、予め水素化脱硫など公知の方法により、硫黄含有量を20質量ppm以下にすることが好ましい。
【0027】
前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物としては、灯油、軽油、ジェット燃料、ナフサ、ガソリン、バイオフューエル、LNG、LPG、天然ガス、都市ガス、ジメチルエーテル、メタノール、及びエタノールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、常温、常圧で液体であるものがより好ましく、硫黄含有量が10質量%未満である灯油であることが特に好ましい。前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる硫黄化合物としては、硫化水素、硫化カルボニル、メルカプタン類、スルフィド類、チオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類などが挙げられる。
【0028】
本発明の脱硫剤を用いて、炭化水素及び/又は含酸素有機化合物に含まれる硫黄化合物を除去する条件としては、該原料の性状に応じて適宜選択することができるが、温度は−40〜300℃、圧力は常圧〜1MPa、液空間速度(LHSV)は0.1〜10hr−1の範囲であることが好ましい。該原料として炭化水素、例えば灯油を用い、液相で本発明の脱硫剤を充填した脱硫塔中を上向き又は下向きの流れで通過させて脱硫する場合には、温度は常温〜250℃、好ましくは常温〜180℃程度、圧力は1MPa以下、LHSVが3hr−1以下で脱硫処理することが好ましい。この際、必要により少量の水素を共存させてもよい。脱硫条件を前記範囲で適宜選択することにより、硫黄含有量が0.2質量ppm以下の炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を得ることができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の脱硫剤の製造例、及びその脱硫剤を使用した実施例を示し、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔体積平均粒子径〕
レーザー回折散乱式粒子径・粒度分布測定装置(商標“マイクロトラック HRA9320−X100”、日機装(株))により測定した。
〔比表面積〕
流動式比表面積自動測定装置(商標“フローソーブII2300”、Micrometrics Instrument Co.)により測定した。
〔Ni表面積〕
金属分散度測定装置(商標“BEL−METAL−3”、日本ベル株式会社)により、水素で前処理した後にCOパルス吸着法により測定した。
尚、NiとCOは1:1で吸着するとして計算した。
〔硫黄含有量〕
紫外蛍光式微量硫黄分析装置(商標“TS−100型”、(株)三菱化学アナリテック)により測定した。この測定の結果、硫黄含有量が0.2質量ppm未満の試料については、さらに紫外蛍光式微量硫黄分析装置(商標“TS−100V型”、(株)三菱化学アナリテック)により測定した。
【0030】
製造例1 脱硫剤1
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が154μmであるニッケルアルミニウム合金(Ni:Al=55:45、質量比)粉末100gを、20質量%水酸化ナトリウム水溶液720gに添加し、58〜62℃で2時間処理した。水洗液のpHが9〜10になるまで数回水洗することにより、スポンジニッケルからなる脱硫剤1を得た。脱硫剤1の組成は、Ni 85.7質量%、Al 14.3質量%であり、BET法による比表面積は112m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は153μmであり、Ni表面積は52m/gであった。
【0031】
製造例2 脱硫剤2
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が150μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=50:50、質量比)に、展開温度を98〜100℃に変更した以外は製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤2を得た。脱硫剤2の組成は、Ni 94.5質量%、Al 5.3質量%であり、BET法による比表面積は69m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は117μmであり、Ni表面積は39m/gであった。
【0032】
製造例3 脱硫剤3
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が145μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=52.5:47.5、質量比)に、展開温度を98〜100℃に変更した以外は、製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤3を得た。脱硫剤3の組成は、Ni 93.9質量%、Al 6.0質量%であり、BET法による比表面積は85m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は133μmであり、Ni表面積は43m/gであった。
【0033】
製造例4 脱硫剤4
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が141μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=55:45、質量比)に、展開温度を98〜100℃に変更した以外は、製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤4を得た。脱硫剤4の組成は、Ni 91.5質量%、Al 8.4質量%であり、BET法による比表面積は90m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は144μmであり、Ni表面積は41m/gであった。
【0034】
製造例5 脱硫剤5
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が148μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=57.5:42.5、質量比)に、展開温度を98〜100℃に変更した以外は、製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤5を得た。脱硫剤5の組成は、Ni 86.3質量%、Al 13.6質量%であり、BET法による比表面積は77m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は148μmであり、Ni表面積は30m/gであった。
【0035】
製造例6 脱硫剤6
製造例2と同様にして得られたスポンジニッケルからなる脱硫剤2を、30〜40℃のビスマス酸ナトリウム水溶液(0.08質量%)で3時間処理した。製造例2と同様に水洗することにより、ビスマス含有スポンジニッケルからなる脱硫剤6を得た。脱硫剤6の組成はNi 94.2質量%、Al 4.8質量%、Bi 0.7質量%であり、BET法による比表面積は74m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は140μmであり、Ni表面積は36m/gであった。
【0036】
比較製造例1 脱硫剤7
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が241μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=40:60、質量比) 150gを、20質量%水酸化ナトリウム水溶液1080gに添加し、98〜100℃で2時間処理した。水洗液のpHが9〜10になるまで数回水洗し、スポンジニッケルからなる脱硫剤7を得た。脱硫剤7の組成は、Ni 95.5質量%、Al 4.4質量%であり、BET法による比表面積は62m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は59μmであり、Ni表面積は11m/gであった。
【0037】
比較製造例2 脱硫剤8
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が148μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=60:40、質量比) に変更した以外は、比較製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤8を得た。脱硫剤8の組成は、Ni 78.7質量%、Al 21.2質量%であり、BET法による比表面積は52m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は147μmであり、Ni表面積は14m/gであった。
【0038】
比較製造例3 脱硫剤9
レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径が38μmであるニッケルアルミニウム合金粉末(Ni:Al=50:50、質量比)100gを30質量%水酸化ナトリウム水溶液720gに添加し、比較製造例1と同様にしてスポンジニッケルからなる脱硫剤9を得た。脱硫剤9の組成は、Ni 92.1質量%、Al 7.8質量%であり、BET法による比表面積は97m/gであり、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径は33μmであり、Ni表面積は20m/gであった。
製造した脱硫剤の物性を〔表1〕に示す。
【0039】
実施例1〜6及び比較例1〜3
灯油(硫黄分含有量が10質量ppm以下の灯油にベンゾチオフェンを溶解し、硫黄含有量を500質量ppmとしたモデル灯油)の脱硫試験によって、製造例1〜6及び比較製造例1〜3で製造された脱硫剤の脱硫性能を評価した。
各製造例及び比較製造例で製造された脱硫剤5mLを内径9.4mmのSUS製反応管に充填した。上記モデル灯油を常圧下、150℃、液空間速度(LHSV)3hr−1で反応管に流通させた。脱硫試験の結果を〔表2〕に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の脱硫剤を使用した脱硫装置には高度な耐圧容器が不要であるため、装置をコンパクトにすることが可能であり、長時間にわたって脱硫性能が保持されるため、脱硫ユニットの交換、再生などを頻繁に行なわなくともよい。家庭用、小規模業務用、自動車用などの分散型燃料電池システムを構成する脱硫装置、脱硫ユニット、脱硫剤として有用である。
また、ガソリン、軽油など炭化水素系自動車燃料の脱硫剤としても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物から硫黄化合物を除去する脱硫剤であって、レーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径が80〜300μmであり、かつBET法により測定した比表面積が65〜200m/gであるスポンジニッケルからなることを特徴とする脱硫剤。
【請求項2】
前記体積平均粒子径が120〜170μmであることを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項3】
前記比表面積が80〜130m/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硫剤。
【請求項4】
さらに、金属換算で4〜18質量%のアルミニウムを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱硫剤。
【請求項5】
ニッケル表面積が25〜65m/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱硫剤。
【請求項6】
モリブデン、ビスマス、タングステン、バナジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の脱硫剤。
【請求項7】
硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物と、請求項1〜6のいずれかに記載の脱硫剤を接触させることを特徴とする、硫黄化合物を含有する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の脱硫方法。
【請求項8】
前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の硫黄含有量が20質量ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載の脱硫方法。
【請求項9】
前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物が灯油、軽油、ジェット燃料、ナフサ、ガソリン、バイオフューエル、LNG、LPG、天然ガス、都市ガス、ジメチルエーテル、メタノール、及びエタノールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7又は8に記載の脱硫方法。
【請求項10】
前記炭化水素及び/又は含酸素有機化合物が、常温、常圧で液体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の脱硫方法。
【請求項11】
前記炭化水素が、その硫黄含有量が10質量ppm未満である灯油であり、該灯油と、請求項1〜6のいずれかに記載の脱硫剤を、常温〜250℃で、圧力1MPa以下にて接触させることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の脱硫方法。

【公開番号】特開2011−246686(P2011−246686A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172505(P2010−172505)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】