説明

脱硫用の高圧ガス洗浄器

本発明は、硫化水素含有のガス、殊にコークス炉ガスから硫化水素を分離する高圧ガス洗浄器であって、該高圧ガス洗浄器は、少なくとも1つの反応区域(2)を有するほぼ筒状の容器(1)から成っており、この場合に各反応区域(2)には、洗浄媒体としての苛性ソーダ溶液が種々の濃度でかつ、下方から煙道底部(3)を介して供給される前記ガスに対して向流で側方から導入されて上側から噴射されるようになっており、洗浄されたガスは前記容器の上側の部分の出口室を介して排出されるようになっており、富化された洗浄媒体は前記煙道底部(3)を介して排出されるようになっており、最下位の煙道底部(3)の下側でかつスプレー部材と1つの煙道底部(1)との間に濡れやすいエキスパンドメタル構成部材を設けてある形式のものに関する。煙道底部通過の前及び後での分配を改善するために、煙道底部(3)は勾配を有していて、容器壁(4)に溶接結合された平鋼リング(5)に取り外し可能に固定されており、拡大された横断面によって小さい圧力損失を保証している煙道(6)は、煙道底部(3)の上側に配置された安全用溢流部(14)を越えた高さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化水素含有のガス、殊にコークス炉ガスから硫化水素を分離する高圧ガス洗浄器であって、該高圧ガス洗浄器は、少なくとも1つの反応区域を有する筒状(シリンダー状)の容器(コンテナ)から成っており、各反応区域には、洗浄媒体としての苛性ソーダ溶液が所定の濃度でかつ、下方から煙道底部を介して供給される前記ガスに対して向流で側方から導入されて上方から噴射若しくは噴霧されるようになっており、洗浄されたガスは前記容器の上側の部分の出口室を介して排出されるようになっており、硫化水素を含む、つまり富化された洗浄媒体は前記煙道底部を介して排出されるようになっており、最下位の煙道底部の下方でかつスプレー部材と1つの煙道底部との間に濡れやすいエキスパンドメタル構成部材を設けてある形式のものに関する。
【0002】
前記形式の高圧ガス洗浄器はヨーロッパ特許出願公告第0956140B1号明細書に記載してある。この種のH2S-洗浄器若しくはH2S-分離器は単数の反応区域若しくは互いに上下に重ねて配置された反応区域(反応セクション)を有しているものの、構造及び効率に関し、つまりガス洗浄の質及び経済性に関して多くの欠点を有している。煙道の煙道底部の構造に起因して、底部横断面で異なるガス速度及び高い圧力損失のほかに、ガス渦流及び壁面接触流を生ぜしめている。さらに煙道の構造は洗浄媒体とガスとの接触及び滞留時間を減少させて、効率を低下させている。煙道底部は大きな圧力変動に関連して十分な安定性を有しておらず、汚れ若しくは堆積物に起因する故障の際の修繕作業に際して長い停止時間若しくは操業中断時間を必要としている。富化された洗浄媒体は、底部近傍へ導かれ、殊に煙道底部上に不必要な汚れや堆積物を生ぜしめている。
【0003】
本発明の課題は、公知技術の欠点に鑑みて、例えばコークス炉ガスから硫化水素を分離する高圧ガス洗浄器若しくは高圧ガス分離器を提供して、該高圧ガス洗浄器若しくは高圧ガス分離器によって反応区域内でのガス流及びガス流分布を改善し、圧力損失、渦流発生及び壁面接触流を減少させ、洗浄媒体とガスとの接触及び滞留時間を改善して、洗浄効率を高め、さらに一般的な修繕を容易にしかつ洗浄液の緩衝若しくはバッファを保証することにある。
【0004】
前記課題を解決するために本発明の構成では、煙道底部は勾配を有していて、容器壁に溶接結合された平鋼リングに取り外し可能に固定されており、拡大された横断面によって小さい圧力損失を保証している煙道は、煙道底部の上側に配置された安全用溢流部を越えた高さを有している。
【0005】
高圧ガス洗浄器の前記構成により利点として、煙道底部は洗浄器の与えられた内径で安定性を考慮してガス流過横断面を著しく増大させており、これによって種々の条件及びガス分配は改善されている。液体若しくは洗浄媒体は必要に応じて煙道底部の勾配に基づき所定の方向に流出させられ、その結果、洗浄器の停止時に洗浄液が煙道底部上に留まったままになることを防止してある。煙道底部の必要な安定性は、洗浄器内を横方向に、つまり垂直軸線に対して交差する方向でかつ煙道底部の勾配の方向に延びていて容器壁に溶接結合されたアングル若しくは山形材によって行われており、該アングル若しくは山形材上に、底部若しくはフロアを形成する部分薄板がねじによって取り外し可能に固定されている。
【0006】
山形薄板(アングル)は、部分薄板のための支持構造体としてだけではなく、煙道底部がガス圧に基づき変形させられ、若しくは持ち上げられることを防止するためにも機能している。ガスは拡大された煙道内を大きな圧力損失なしに流過して、煙道上の各覆い薄板に沿って所定の方向に向けて反応区域内へ導入される。覆い薄板の配置及び形状は、洗浄器の自由な横断面内でのガスの均一な分布及び均質な流れを可能にしている。煙道からの出口でのガス速度及びガス分布は、煙道内での圧力損失が最小にされかつ煙道底部の上側に配置されたエキスパンドメタル群が迅速に濡らされるように、覆い薄板の勾配若しくは覆い薄板の山形角度を適切に選択して規定されている。容器壁の近傍に配置された煙道の覆い薄板の特別な形状、つまり屋根形の勾配は、ガスが洗浄プロセスにとって不都合に縁部若しくは容器壁へ向かって流れることを防止している。
【0007】
洗浄媒体としての苛性ソーダ溶液は対向流として噴射ノズルを介して洗浄器内に分配される。硫化水素を吸収した、つまり富化された液体はエキスパンドメタル群を通過した後に、一部分は樋状の覆い薄板上に達し、一部分は直接に部分薄板に到達し、ガス流及びガス分布に不都合な影響を及ぼさないようになっている。
富化された液体は、薄板から成形されて側方に接続された排出ポケット内に流入して、傾斜した煙道底部上に規定された充填高さ15まで捕集される。排出ポケットはポンプの構成部分として形成されている。捕集された液体は排出接続管片を介してポンプの吸引管路に供給され、ひいては再び洗浄過程に戻される。液体は、規定された充填高さを越えると、煙道底部の上側に配置された安全用溢流部(逃がし部)を介して洗浄媒体用の受容部若しくはパンに排出される。このような構成は、安全装置を形成していて、運転支障に際して若しくはポンプの故障に際して、煙道底部上の洗浄媒体が煙道の出口を乗り越えてガス通路内へ流入してしまうことを防止している。煙道底部は、該煙道底部に所属の装置若しくは構成部材と関連して保守を容易にできるように構成されており、煙道底部全体、若しくは個別の部分薄板は、溶接結合部を分離することなしに分解できるようになっている。
【0008】
本発明の実施例を図面に示して、以下に詳細に説明する。図面において、
図1は、高圧ガス洗浄器の1つの反応区域の部分断面図であり、
図2は、図1に示す高圧ガス洗浄器の異なる位置での部分断面図(側方断面図)である。
【0009】
図1及び図2に断面を部分的に図示してある実施例は、高圧ガス洗浄器の主要な構成部分として、1つの煙道底部3及び1つの反応区域2を示している。このような高圧ガス洗浄器は単数の反応区域2若しくは上下に重ねて配置された複数の反応区域(反応セクション)から成っていてよい。高圧ガス洗浄器は実施例では筒状(シリンダー状)の1つの容器(コンテナ[container])1を備えており、該容器は単数若しくは複数の反応区域2を含んでいてよい。容器1内には内周にわたって平鋼リング5を溶接結合してあり、該平鋼リング(フラットスチールリング)上に、複数の部分薄板(セグメント薄板)10から成る1つの煙道底部3をねじによって取り外し可能に固定してある。図2に示してあるように、矢印16の方向に勾配を有し、つまり傾斜していて、洗浄液を意図的に、すなわち所定の方向に流過させるようになっている。煙道底部3の形状安定化のために、容器1の垂直軸線に対して横方向で傾斜の方向に延びていて容器壁4に溶接結合された山形薄板11を設けてあり、該山形薄板(断面山形の薄板条片)上には、煙道底部3を形成する複数の部分薄板10が配置されていて取り外し可能にねじ固定されている。
【0010】
洗浄すべきガスは下方から反応区域2内に導入される。ガス圧力は6乃至8バールである。ガスは複数層のエキスパンドメタル(expanded metal)を通過した後に所定の底部貫通部を経て煙道6内へ流入するようになっており、該煙道(垂直通路)は薄板によって製造され方形に形成されている。煙道出口には、支柱若しくは支持部材9に固定された覆い薄板7,8を設けてあり、該覆い薄板は互いに異なる形状で形成されている。覆い薄板7,8はガスを所定の方向で別の反応区域2内へ導く若しくは案内するようになっている。覆い薄板7は樋状に形成されていて、上方に開いた山形(アングル若しくは断面V字形)を成しており、該山形の角度は煙道6からのガスの流出の際の最小の圧力損失で、該覆い薄板によって反応区域2内のできるだけ広い横断面を占めるように選ばれている。容器1の縁部領域に配置された煙道6は、ガスが洗浄過程にとって不都合に縁部へ向かって流れるのを避けるために、容器1の中央に向かって上り勾配に向けられた覆い薄板8を有している。
【0011】
液状の洗浄媒体は上方から噴射ノズルによって向流で分配して供給される。硫化水素を吸収した、つまり富化された洗浄媒体(液体)は一部分は覆い薄板7,8上に達し、一部分は直接に部分薄板10に到達し、ガス流及びガス分布に不都合な影響は生じないようになっている。富化された液体は図2に示してあるように、側方に接続された排出ポケット12内に流入して、規定された充填高さ15まで捕集される。排出ポケット12はポンプ装置の構成部分としても用いられており、この場合に液体、つまり洗浄媒体は排出接続管片13を介してポンプの吸引管路(図示省略)に供給され、ひいては再び洗浄過程に戻される。液体は、規定された充填高さ15を越えると、煙道底部3の上側に配置された安全用溢流部14を介して洗浄媒体用の受容部若しくはパンに排出される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】高圧ガス洗浄器の1つの反応区域の部分断面図
【図2】図1に示す高圧ガス洗浄器の異なる位置での部分断面図
【符号の説明】
【0013】
1 容器、 2 反応区域、 3 煙道底部、 4 容器壁、 5 平鋼リング、 6 煙道、 7,8 覆い薄板、 9 支持部材、 10 部分薄板、 11 山形薄板、 12 排出ポケット、 13 排出接続管片、 14 安全用溢流部、 15 充填高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素含有のガス、殊にコークス炉ガスから硫化水素を分離する高圧ガス洗浄器であって、該高圧ガス洗浄器は、少なくとも1つの反応区域を有する筒状の容器から成っており、各反応区域には、洗浄媒体としての苛性ソーダ溶液が所定の濃度でかつ、下方から煙道底部及び覆い薄板を備えた煙道を介して供給される前記ガスに対して向流で側方から導入されて上方から噴射されるようになっており、洗浄されたガスは前記容器の上側の部分の出口室を介して排出されるようになっており、富化された洗浄媒体は前記煙道底部を介して排出されるようになっており、最下位の煙道底部の下側でかつスプレー部材と1つの煙道底部との間に濡れやすいエキスパンドメタル構成部材を設けてある形式のものにおいて、煙道底部(3)は勾配を有していて、容器壁(4)に溶接結合された平鋼リング(5)に取り外し可能に固定されており、拡大された横断面によって小さい圧力損失を保証している煙道(6)は、煙道底部(3)の上側に配置された安全用溢流部(14)を越えた高さを有しており、煙道(6)の上側にかつ該煙道の長さにわたって、ガス流の案内のための覆い薄板(7,8)を設けてあり、該覆い薄板は支持部材(9)を用いて煙道(6)に取り付けられており、複数の部分薄板(10)から成る煙道底部(3)の安定化のために、煙道底部(3)の下側に、煙道(6)に対して所定の距離を置いて位置しかつ平行に延びていて容器壁(4)と溶接結合された山形薄板(11)を設けてあり、該山形薄板上に前記部分薄板(10)をねじによって取り外し可能に固定してあることを特徴とする、脱硫用の高圧ガス洗浄器。
【請求項2】
覆い薄板(7)は、上方に向かって開いた山形を成す樋状の形状を有している請求項1記載の高圧ガス洗浄器。
【請求項3】
容器壁(4)に隣接して配置された外側の煙道(6)は、屋根状に傾斜した覆い薄板(8)を有しており、該煙道の、反応区域(2)の中央に向けられたガス出口は、容器壁(4)に向けられたガス出口よりも大きくなっている請求項1記載の高圧ガス洗浄器。
【請求項4】
富化された洗浄媒体の受容のために、煙道底部(3)上に充填高さ(15)を設けてあり、この場合に煙道底部(3)の下側で該煙道底部の最も低い箇所に、ポンプ装置の構成部分として形成された排出ポケット(12)を設けてあり、かつ前記充填高さ(15)の上側に安全用溢流部(14)を設けてある請求項1記載の高圧ガス洗浄器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532726(P2007−532726A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507700(P2007−507700)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003583
【国際公開番号】WO2005/102502
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(300083169)ドイチェ モンタン テヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Deutsche Montan Technologie GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Technologiepark 1,D−45307 Essen,Germany
【Fターム(参考)】