脱穀機の排塵処理装置
【課題】従来から、排塵処理装置は、扱室の排塵物を円滑に受け継ぐことと、その排塵物の脱粒処理を適確に行い、併せて排塵選別室において、排塵物中の混入穀粒を如何に適確に選別して回収するかが問題で、穀粒の三番飛散をなくして機外損失を解消することが課題となっている。
【解決手段】この発明は、排塵処理胴1を、外径と軸芯とを同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとの二つから構成した。排塵処理室2の排塵口4を、脱穀機体3後部の排塵選別室5を隔てた吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けた。該吸引排塵室6には片側吸引式排塵機8を装備した。前記排塵口4には、後部処理胴1bを臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置としている。
【解決手段】この発明は、排塵処理胴1を、外径と軸芯とを同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとの二つから構成した。排塵処理室2の排塵口4を、脱穀機体3後部の排塵選別室5を隔てた吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けた。該吸引排塵室6には片側吸引式排塵機8を装備した。前記排塵口4には、後部処理胴1bを臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外径を略同一に形成した前部処理胴と後部処理胴との二つの処理胴を、排塵処理室内に軸芯を同じくして軸架し、相互に逆転駆動する構成とした脱穀機の排塵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の脱穀機は、穀稈挟持搬送装置で株元を挟持し、先端の穂部側を扱室に挿入して横送りしながら扱室内で回転している扱胴によって脱穀処理する構成となっている。そして、該脱穀機は、脱穀後の排塵物を排塵処理室に受け継がせて排塵処理し、混入している穀粒を排塵選別した後、吸引排塵機によって機外に排塵する構成としている。このような一連の排塵処理工程において、排塵物は、排塵処理室で充分な処理が行われた後、排塵選別室に放出されて適確に排塵選別が行われ、機外への穀粒の三番飛散を極力少なくすることが肝要で、機外損失を未然に防止することが望まれている。
【0003】
そして、本件出願人は、出願人自身の出願に係る本件出願の先行技術として特開平8−37900号公報(特許文献1参照)を提示するが、該公報には、排塵処理胴から検出した負荷に応じて回転制御を行って、排塵処理作用の向上を図る技術が開示されている。該出願前公知の技術は、穀稈量が少ないときには、排塵処理胴の回転を適正に落して、脱っぷを防止し、騒音や振動を低く抑えることが可能であり、穀稈量が多いときには、回転を適正に増速制御して詰まり等を未然に防止しながら、排塵物の処理を効果的に行って、機外損失を防止できるものとなっている。
【特許文献1】特開平8−37900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、この種の脱穀機における排塵処理装置は、排塵処理室内で排塵物の脱粒処理(排塵物を充分にこなすこと)を適確に行うことと、併せて、排塵選別室において、排塵物中から穀粒を選別しながら回収した後、可能な限り藁屑のみを排塵物として吸引排塵機に吸引させて機外に排出することが大切で、これが従来から脱穀機の排塵処理に関する大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴(1)を内装軸架した排塵処理室(2)を、脱穀機体(3)の一側に前後方向に沿わせて設け、前記排塵処理胴(1)は、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの胴から構成し、前記排塵処理室(2)の後部に開口した排塵口(4)は、脱穀機体(3)後部の排塵選別室(5)を隔てた他側の吸引排塵室(6)の吸塵口(7)に対向して設け、該吸引排塵室(6)には片側吸引式排塵機(8)を装備すると共に、前記排塵口(4)には、後部処理胴(1b)を臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置であって、脱穀後の排塵物は、扱室(13)から排塵処理室(2)に受け継がれて排塵処理作用を受け、排塵選別室(5)に放出される。この発明は、排塵処理胴(1)を外径と軸芯とを略同一にする前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの処理胴を連続状に構成しているから、始端部側の前部処理胴(1a)では、前工程の扱室(13)(扱胴)に合わせて排塵物の受け継ぎを適確に行いながら排塵処理を効果的に行える構成に主眼を置いて設計、製作することが可能であり、後部処理胴(1b)は、排塵選別室(5),及び吸引排塵室(6)(片側吸引式排塵機(8))との関係を良好にするための条件に合わせて設計、製作することができる。
【0006】
つぎに、請求項2に記載した発明は、 前記前部処理胴(1a)は、正面視において、扱胴(9)と同じ時計回りに回転駆動する伝動構成とし、前記後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)と逆の反時計回りに駆動する構成とした請求項1に記載した脱穀機の排塵処理装置であって、扱室から排出される排塵物は、連通口を通って排塵処理室(2)に受け継がれるとき、扱胴と前部処理胴(1a)とが同一方向に回転しているから、両者間の排塵物の受け継ぎが適確に行われる。そして、排塵処理室(2)の排塵物は、排塵口(4)から後部処理胴(1b)によって排塵選別室(5)に放出されるとき、排塵選別室(5)内に、高く遠くに放り出されるように放出されて圧風唐箕(26)から送られてくる選別風を受けて、空中で藁屑と穀粒とが選別分離され、片側吸引式排塵機(8)による吸引風を受けて藁屑が吸塵口(7)から吸引されて排塵物として機外に排塵される。
【0007】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記後部処理胴(1b)は、前記前部処理胴(1a)に比較して、同速か、又は高速で回転駆動する構成とした請求項1、又は2に記載した脱穀機の排塵処理装置であって、排塵処理室(2)内において、後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)から円滑に排塵物を受け継ぐことが可能であって、室(2)内での排塵物の停滞、詰まりの発生を未然に防止できるものとなっている。
【0008】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記後部処理胴(1b)は、その外周面に、排塵物を排塵口(4)から排塵選別室(5)方向に排出する排出羽根(10)を取り付けて構成した請求項1、乃至3のいずれかに記載した脱穀機の排塵処理装置であって、排塵処理室(2)から排塵物を排塵選別室(5)側に放出するとき、排出羽根の回転作用を受けながら、跳ね飛ばされて排塵選別室(5)内の空中に放り上げられて、選別風による風選作用を受けて穀粒が下方の揺動選別棚(ストローラック)上に落下し、軽い藁屑は、吸塵口(7)に吸引されて機外に排塵される。
【発明の効果】
【0009】
まず、請求項1に記載した発明は、排塵処理室(2)内に軸架した排塵処理胴(1)を二つの処理胴から構成しているから、始端部側の前部処理胴(1a)は、前工程の扱室(扱胴)に合わせて排塵物の受け継ぎを適確に行いながら排塵処理を効果的に行える優れた特徴がある。そして、後部処理胴(1b)は、次工程の排塵選別室(5),及び吸引排塵室(6)(片側吸引式排塵機(8))との関係を良好にするための条件に合わせて構成することが可能であるから、排塵処理と、排塵選別とを適確に行って穀粒の三番飛散を減らして、機外損失を減らすことができる特徴を有するものである。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、扱室から排出される排塵物は、連通口を通って排塵処理室(2)に受け継がれるとき、扱胴と前部処理胴(1a)とが同一方向に回転しているから、脱穀後の排塵物の受け継ぎがきわめて円滑に行われ、停滞等がほとんど発生しない特徴がある。そして、排塵処理室(2)の排塵物は、排塵口(4)から後部処理胴(1b)によって排塵選別室(5)に放出されるとき、排塵選別室(5)内に高く遠くに放り上げられるように放出されて選別風を空中で受けて適確に選別される特徴がある。そして、排塵物は、高く、遠くに飛ぶ藁屑類と、下方に落下する穀粒とに選別分離され、一方は片側吸引式排塵機(8)による吸引風を受けて吸塵口(7)に吸引され、他方が揺動選別棚上に落下して回収され、選別精度が高くなった特徴がある。
【0011】
そして、請求項3に記載した発明は、排塵処理室(2)内において、後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)による処理工程で処理されながら、脱粒して穀粒が下方の選別室に漏下、取り除かれた残りの排塵物を、受け継ぐが、そのとき、前部処理胴(1a)に比較して同速か、又は高速で回転しているから、受継位置で排塵物が停滞することはほとんどなく、円滑に受け継がれる特徴がある。
【0012】
このように、この発明は、排塵物を排塵処理室(2)内で前部から逆転の後部処理胴(1b)に受け継ぐときの詰まりや停滞が起きない特徴がある。
そして、請求項4に記載した発明は、排塵処理室(2)の後部に達した排塵物を、排塵口(4)から排塵選別室(5)側に放出するとき、排出羽根(10)の回転跳上げ作用によって跳ね飛ばし、排塵選別室(5)内の空中に高く、遠くに放出する特徴がある。したがって、排塵物は、排塵選別室の空中で選別風による風選作用を受けて効果的に選別され、混入していた穀粒が下方の揺動選別棚(ストローラック)上に落下し、軽い藁屑は、吸塵口(7)から排塵機(8)に吸引されて機外に排塵され、三番飛散を防止して、機外損失を未然に防止できる優れた特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の主要部は、排塵処理装置であって、脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴1を、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとの二つの胴から構成して排塵処理室2に内装軸架した。そして、排塵処理室2は、後部の排塵口4を、脱穀機体3後部にある排塵選別室5を隔てた他側の吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けている。そして、吸引排塵室6は、片側吸引式排塵機8を内装して装備すると共に、前記排塵口4には、前記した後部処理胴1bを臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置としている。
【0014】
このように、排塵処理装置は、排塵処理室2内に前部処理胴1aと後部処理胴1bの二つの処理胴をあたかも一個の如く軸架して構成し、排塵物の受け取り側を、扱胴9の回転に合わせて扱室13からの排塵物の受け継ぎ作用が円滑にできるように構成し、排塵物の排出側を、排塵物の選別作用が良好にできるように排塵選別室5、及び吸引排塵室6側に合わせて構成したものであって、扱室13からの排塵物の受け継ぎが円滑にできると共に、排塵選別を適確に行って穀粒の三番飛散をなくして機外損失を未然に防止する特徴がある。
【0015】
以下、実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、脱穀機体3(以下、本件明細書では「脱穀機」全体を指すものとする。)は、図1、乃至図3に示すように、上側に扱室13、及び二番処理室14と排塵処理室2とを設け、下側に選別室12を配置して構成している。そして、扱室13は、図面に示すように、長手方向に軸架した扱胴軸15に扱胴9を軸架して設け、扱胴9の前側には、穀稈の穂部側を扱室13に挿入する扱口16を長手方向に沿わせて開口した構成としている。そして、前記扱胴9は、従来から周知のとおり、外周に多数の扱歯17,17を設けるが、その場合、扱歯17,17に回転に伴って脱穀作用と脱穀物を扱室13の下手側に送る送塵作用との機能を持たせるように配列した構成としている。
【0016】
そして、穀稈挟持搬送装置18は、図1、乃至図3に示すように、前記扱口16の外側において、穀稈の搬送方向に沿わせて、上側に挟持杆18aと下側にフィードチエン18bとを設け、穀稈の株元側を上下から挟持して穂先側を前記扱口16から扱室13内に挿入した状態で脱穀しながら搬送する構成としている。そして、排藁装置19は、図1、及び図2に示すように、上記穀稈挟持搬送装置18の搬送終端部から排藁を受け継いで後部の排藁カッター20まで搬送して供給する構成としている。
【0017】
そして、前記二番処理室14と排塵処理室2とは、扱室13の背後に長手方向に沿わせて設け、それぞれ二番処理胴21と排塵処理胴1とを内装して軸架し、二番処理作用、及び排塵処理作用を行う構成としている。そして、前記選別室12は、図2、及び図4に示すように、上側に揺動選別棚22を脱穀機体3の前部、扱室13の下方から後部の排塵選別室5にかけて吊持ち状態(案内レールとコロとによる摺動支持構成)に支持して揺動自由に構成している。そして、前記揺動選別棚22は、図面に示すように、選別方向の上手側から移送棚23、シーブ24、ストローラック25の順に設け、上側から落下してきた被選別物を揺動選別する構成としている。
【0018】
そして、選別室12は、図面に示すように、上記揺動選別棚22の下方位置には、選別方向の上手側から圧風唐箕26、一番移送螺旋27、二番移送螺旋28の順に軸架して設け、上記揺動選別棚22と、圧風等箕26から吹き込む選別風によって一番穀粒、二番物、排塵物とに選別分離して回収する構成としている。そして、一番穀粒は、図4に示すように、一番移送螺旋27に流下した穀粒が、一側に収集されて一番揚穀装置30によって、図示省略しているグレンタンクに貯留される構成としている。そして、二番物は、図5に示すように、二番移送螺旋28で一側に集められて二番揚穀装置31によって揚穀され、前記した二番処理室14の始端部側(実施例では排塵処理室2に近い側)に還元される構成としている。
【0019】
そして、前記排塵処理室2は、図1、図4、図5に示すように、脱穀機体3の一側で、前述のとおり扱室13の背後に前後方向(長手方向)に沿わせて設けた構成としている。そして、前記排塵処理胴1は、図7、及び図8に示すように、前部処理胴1aと後部処理胴1bとの外径をほとんど同径に形成した二つの胴から構成するが、前部処理胴1aは、前部に小径の二番処理胴21を一体に形成し、後部には連結支持軸35を延長して、この連結支持軸35に後部処理胴1bを、ベアリング36を内装した軸受支持機構37と連結具38とによって回転自由に連結して支持し、外観上一個の如く構成している。
【0020】
この場合、前部処理胴1aは、図8に示すように、後縁部39をパルジ加工によって膨らませて大径とし、その内側に後部処理胴1bの前縁部40を差し込んで重合して連結状態に構成している。したがって、排塵処理胴1は、室2内を流動する排塵物が前部処理胴1aから後部処理胴1bに円滑に受け継がれ、藁屑等が後縁部39と前縁部40との重合した接合部分から胴内に浸入することはほとんどない特徴がある。
【0021】
そして、排塵処理胴1は、図1、図7、及び図8に示すように、前部処理胴1aへの動力が、前側に一体とした前記二番処理胴21に伝動ギヤケース41の前部伝動軸42を介して入力され、後部処理胴1bへの動力が、後部に固着した後部伝動軸43にスプライン筒(カップリング部)45を介して伝動される構成としている。なお、46は後部入力プーリを示している。
【0022】
そして、実施例の構成は、図8に示すように、前部処理胴1a側から後方に長く延長した前記連結支持軸35を、後部処理胴1b内に挿入させて、2箇所の軸受支持機構37と連結具38とによってその後部処理胴1bを軸受け支持した構成とし、更に、その連結支持軸35を、前記後部伝動軸43に接近する位置まで延長した構成としている。
【0023】
そして、上記スプライン筒45は、図8から解るように、分解、組み立て時には、後側から着脱する構成とし、スプラインの磨耗時等の部品交換が容易にできる構成を採用している。
【0024】
以上のように、排塵処理胴1は、前部処理胴1aの後部から延長した連結支持軸35を利用して、軸受支持機構37や連結具38で強固に連結、支持したから、回転駆動中に両方の胴の振れが少なく、安定した回転ができる優れた利点がある。
【0025】
更には、連結具38は、既に説明したように、前後2箇所で軸受支持機構37と後部処理胴1bの胴体とを連結しているから、軸芯と外径とが狂うことがなく、芯振れを防止し、安定した回転は勿論、耐久性も大幅に向上した効果がある。
【0026】
このように構成した後部処理胴1bは、図5、図7、及び図8に示すように、後部から胴の前後幅の中央位置まで至る排出羽根10を放射状に取り付けて排塵物を排塵口4から排塵選別室5内に跳ね上げながら飛ばす構成としている。
【0027】
そして、前記排塵処理室2は、図面に示すように、その後部に開口した排塵口4を、脱穀機体3後部の排塵選別室5を隔てた他側の吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けた構成としている。そして、吸引排塵室6は、図2、及び図5から解るように、片側吸引式排塵機8を装備し、前記吸塵口7から吸引した排塵物を、排塵筒48によって機外に排塵する構成としている。
【0028】
つぎに、伝動機構の概略を、図6に基づいて説明する。
まず、エンジン50は、図6に示すように、出力軸51から回転動力を走行側と脱穀側とに分けて伝動するが、走行側は静油圧式無段変速装置52を経由して走行ミッション装置53側に伝動する経路とし、脱穀側は圧風唐箕26を軸着した唐箕軸54を経由して脱穀機体3側に伝動する経路として構成している。そして、既に説明した伝動ギヤケース41は、図6に示すように、上記唐箕軸54からベルトを介して入力され、その回転動力を二番処理胴21と扱胴9とに分配伝動する構成としている。そして、排塵処理胴1は、既に説明し、図6、及び図7にも示すように、上記二番処理胴21と一体構成の前部処理胴1aが、同時に伝動される構成となっている。
【0029】
そして、後部処理胴1bは、図6に示すように、二番移送螺旋(軸)28からカウンタギヤケース55を経由してベルト伝動で後部入力プーリ46に入力される構成としている。
【0030】
このように、排塵処理胴1は、図6、及び図10に示すように、前部処理胴1aを二番処理胴21と一体として前側から入力し、後部処理胴1bを後ろ側の後部入力プーリ46から入力して、両胴間で回転方向を逆回転する構成としている。
【0031】
そして、排塵処理胴1の前部処理胴1aは、回転方向を扱胴9に合わせて同じ方向に回転する構成とし、後部処理胴1bは、前部処理胴1aとは逆回転する構成としている。更に、具体的に説明すると、前記前部処理胴1aは、図9の正面視に矢印で示すように、扱胴9と同じ時計回りに回転駆動する構成としており、前記後部処理胴1bは、図5に矢印で示すように、前部処理胴1aとは逆に、反時計回りに駆動する構成としている。
【0032】
そして、上記後部処理胴1bは、実施例の場合、前部処理胴1aに比較して、高速度で回転駆動する構成としているが、少なくとも同速か、或いはそれより速く回転駆動する構成にすればよい。
【0033】
そして、排塵処理胴1は、図9に示すように、扱室13と排塵処理室2との連通口57に臨む前部処理胴1aの始端部に設けた螺旋状の掻込輪58(図7参照)が排塵物を受け継ぐ構成としている。
【0034】
このように構成された排塵処理胴1は、前部処理胴1aが扱胴9と同方向に回転しているから、扱室13内の排塵物を排塵処理室2に円滑に受け継ぎができる特徴がある。そして、排塵処理胴1は、排塵処理室2の内部において、前部処理胴1aが排塵物をこなしながら送り、停滞させることはないが、特に、前部処理胴1aの終端部分では、後部処理胴1bの方が高速で回転しているから、排塵物の受け継ぎがきわめて円滑に行われ、停滞等の発生はほとんどなく、きわめて適確に排塵物の処理ができる。
【0035】
そして、前記伝動ギヤケース41は、図1(図10参照)に示すように、平面視で脱穀機体3を構成する前板60より機体の内側に入り込んだ構成として、前側への突出部分を短く構成している。したがって、脱穀機体3は、前側の利用空間が拡大できてエンジン関連機器の配置が整然とできる利点があり、エンジン50から発生する熱気などの排気スペースが取り易くなる利点がある。
【0036】
そして、上記伝動ギヤケース41は、図1に示すように、二番処理胴41と扱胴9とに回転動力を分配して伝動する機構について説明したが、この場合、二番処理胴41と扱胴9とは、作業時の回転数の差を大きく設けていないから、減速比を大きくとる必要がなく、分岐する伝動経路としては合理的な構成になっている。更に、後部処理胴1bの伝動機構は、図1に示すように、処理胴1bを脱穀機体3の右側に装置しており、二番移送螺旋28、及び二番揚穀装置31の伝動も右にあるから、両者間の伝動経路が短い経路で伝動可能で安価に製作できる特徴がある。
【0037】
そして、実施例の場合、後部処理胴1bの後部入力プーリ46は、図1(図10参照)に示すように、脱穀機体3の後部位置に配置する構成を採用したから、処理胴1bを長く形成することが可能となる利点がある。そして、後部入力プーリ46は、排藁カッター20の内部まで張り出した構成を避けることにより、切り藁が障害になることのない特徴がある。
【0038】
つぎに、排塵選別室5とそれに関連する周辺構成を説明する。
まず、排塵選別室5は、図11、乃至図13に示すように、脱穀機体3の後部で揺動選別棚22の後部に位置するストローラック25の上方に形成されている。そして、排塵選別室5は、機体一側にある排塵処理室2の後部で、後部処理胴1bに対応させて機体中心側に向けて開口した排塵口4と、これに対向して設けられている機体の他側にある片側吸引式排塵機8を内装軸架した吸引排塵室6の吸塵口7との間に形成されている。
【0039】
そして、排塵選別室5は、上記した実施例の場合、排塵処理室2の排塵口4と、吸引排塵室6の吸塵口7とが側面視(図12参照)において一致した構成としている。そして、排塵選別室5は、上方位置には、全幅に渡って覆うようにケーシング65を設けて構成している。そして、前記片側吸引式排塵機8は、図12において、穀稈挟持搬送装置18側から見て反時計回りに回転する伝動構成とし、排塵物を排塵筒48から機外に排塵できる構成としている。
【0040】
このように構成された排塵選別室5は、図5に示すように、後部処理胴1bが矢印の方向(反時計回り)に回転して排出羽根10によって排塵物を中央に向けて高く跳ね上げ、圧風唐箕26から吹いている選別風を受けて排塵選別が行われている。そのとき、排塵選別室5内には、上記選別風に加えて、片側吸引式排塵機8が、反時計回り(図12参照)に回転して吸塵口7から塵埃を吸塵しているため、反時計方向の渦流が発生している。したがって、排塵物は、排塵選別室5の中空上で風選作用を受けながら比重の重い穀粒が下方のストローラック25上の前寄り(前記渦流作用を受けるため)の位置に落下して選別されて二番側に回収され、一方、軽い藁屑等の排塵物は、渦流状態に吹いている吸塵風を受けて、反対側の吸塵口7から吸塵作用を受け、吸引排塵室6に達することになる。このとき、藁屑等の排塵物は、上方が囲われた状態に全幅に渡って設けられているケーシング65に誘導されて吸塵口7から吸引排塵室6に吸塵され、排塵筒48から機外に排塵される。
【0041】
この実施例は、上述のとおり、比重の重い穀粒は、ストローラック25の前寄りに落下するから、穀粒回収率が高くなり、機外損失が大幅に減少した効果がある。
つぎに、排塵処理室2を構成している格子状受網62、及び排塵ガイド63について、排塵処理胴1との関連で構成と作用・効果を説明する。
【0042】
まず、排塵処理室2は、図14、及び図15に示すように、前部処理胴1aの掻込輪58に対応する部位に、既に説明した扱室13との連通口57が開口し、前部処理胴1aの処理歯64に対応する処理部分には、格子状受網62を張設しており、後部処理胴1bに対応する部位には、上記受網62に連続する排塵ガイド63と排塵口4を開口して構成している。この場合、格子状受網62は、図面に示すように、扱胴9と同方向に回転する前部処理胴1aに対応させて設け、逆回転する後部処理胴1bに対応させて上述のとおり排塵ガイド63と排塵口4とを設け、図15に示すように、回転方向が切換わる境目の部位(前部処理胴1aの後縁部39)には、外側に受網62を設けない構成とした。
【0043】
以上のように構成した排塵処理室2は、前部処理胴1aと後部処理胴1bとの回転方向が切換わる境目の部位には、通常、処理物が停滞し易いと思われるが、この実施例は、上記説明のとおり、境目の部位には外側に受網62がないために排塵物の停滞はほとんどなく、後部処理胴1b側に受け継がれる。そして、排塵ガイド63は、後部処理胴1bの回転に沿わせて下側に半円状に設けているから、処理胴1bによって持ち回られている排塵物を案内して、排出羽根10も関与して排塵口4から排塵選別室5に高く跳ね飛ばすことができる。
【0044】
つぎに、処理歯64は、図16に示すように、回転方向に対して左右対称形状に形成し、正転する前部処理胴1aと逆転する後部処理胴1bとにそれぞれ共用部品として取り付け、回転方向が逆でも同一の処理作用ができる構成としている。そして、該処理歯64は、排塵物の持ち回りが少なくて巻き付きがなくなり、消費馬力が少ない点に特徴がある。
【0045】
そして、図17に示す別実施例は、前部処理胴1aに取り付けた場合(時計回り回転)、後退角を少なくして、持ち回り回転を増加させて排塵処理を促進する構成とし、後部処理胴1bに取り付けると(反時計回り回転)、後退角度をつけて持ち回りを少なくして,早く排塵処理室2排出するようにしている。
【0046】
上述した二つの処理歯64は、それぞれ特徴があり、どちらを使用するも自由であるが、要するに、正・逆転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとに共用部品として両方に使用できる特徴がある。
【0047】
つぎに、二番処理胴21、及び排塵処理胴1の着脱構成について、図18、乃至図20に基づいて説明する。
既に説明したとおり、排塵処理胴1は、前部処理胴1aと後部処理胴1bとが相互に逆転可能でありながら一体に構成しており、更に、前部に二番処理胴21を一体に連結した構成にしている。そして、排塵処理胴1は、図18、及び図19から解るように、前部の二番処理胴21を、伝動ギヤケース41から突出した前部伝動軸42に、伝動連結具66を介してスプライン嵌合して着脱可能に設け、後部を、後部伝動軸43とスプライン筒45とによって着脱自由に構成している。
【0048】
そして、排塵処理胴1は、図20に示すように、脱穀機体3の後部に装着している排藁カッター20を、側部の枢着部を回動支点にして後方へ開放した後、後方に引き出すことができる構成としている。この場合、後部伝動軸43は、図19に示すように、機体側に残しても、又は図20に示すように、取付板67(後部伝動軸43と後部入力プーリー46と供に)と供に取り外すことができる構成にしている。
【0049】
このように、排塵処理室2、及び二番処理室14は、内部に装備している排塵処理胴1と二番処理胴21とを一体として脱穀機体3から後方へ引き出しながら取り外しができるから、室内に処理物等の詰まりが発生したときや、その他清掃、メンテナンスを比較的楽に行うことができる特徴がある。
【0050】
つぎに、実施例における後部処理胴1bの伝動機構に関して、具体的な構成を説明する。
既に、本件脱穀機体3の伝動機構については、図6に基づいて概略の説明をし、後部処理胴1bは、二番移送螺旋(軸)28から動力を取り出してベルト伝動でカウンタギヤケース55に伝動し、更に、該カウンタギヤケース55からベベルギヤによって伝動方向を変更し、ベルト伝動で後部入力プーリ46に入力して伝動する構成を説明した。
【0051】
そして、上記実施例のカウンタギヤケース55は、図21、乃至図23に示すように、機体上部の機枠間に左右横方向に連結した支持フレーム70から取付フレーム71を下側に延長して固定具72にねじにより吊り下げて支持した構成としている。したがって、カウンタギヤケース55は、強固に支持されており、安定した伝動を行うことができると供に、耐久性に優れた装置となっている。
【0052】
そして、処理胴後方側板73は、図23、及び図24に示すように、排塵処理室2の後方において、前記後部入力プーリ46を上側、横側、後ろ側をカバーしており、更に、その背後に、図23と図24に示すように、リヤカバー75を設けて構成している。
【0053】
このように、処理胴後方側板73は、後部入力プーリ46への藁屑等の侵入を防ぎ障害なく安全に伝動できるように保護している。そして、リヤカバー75は、排藁カッター20が切断した藁が前側に移動するのを防止して、上述の伝動経路中に侵入するのを阻止できるものとしている。
【0054】
つぎに、後部処理胴1bの変速機構について図面に基づき具体的に説明する。
まず、変速装置76は、図24、及び図25に示すように、二番移送螺旋(軸)28のプーリー77からベルト78で伝動される前記カウンタギヤケース55に軸架した変速割りプーリ79との間に構成されている。そして、該変速割りプーリー79は、図面に示すように、制御モータ80からピニオンギヤ81、ラックギヤ82、アーム83、操作ロット84を介してカム85に沿って拡縮され変速制御される構成としている。86はテンションプーリを示している。
【0055】
そして、上記制御モータ80は、図26に示すように、運転操作位置に設けている主変速レバー88(既に説明した「静油圧式無段変速装置52」の操作レバーでニュトラル位置を基準にして、図26で左に傾け操作すれば後進走行、右に操作すれば前進走行になり、傾倒度が大きくなるに従って高速走行に変速する。)の基部にホテンショメータ89に作動アーム90と受動アーム91とを介して操作力を伝達可能に構成している。この場合、上記ポテンショメータ89は、図示しない制御手段(CPU)に接続し、該制御手段から出力される制御信号に基づいて前記制御モータ80が変速制御される構成としている。
【0056】
このように構成すると、後部処理胴1bは、コンバインの走行速度にシンクロした速度に変速され、コンバインの作業能率(刈取穀稈量)に対応した適正な処理能力(回転速度)になって、排塵物を適確に処理する特徴がある。そのため、後部処理胴1bは、回転不足で処理不充分で排塵したり、逆に詰まったり、或いは、回転過多で損傷粒が出たり、振動が増大する等の弊害がおきる事はない。
【0057】
実施例は、図27のグラフに示すように、前記主変速レバー88を前進走行ゾーンで変速操作するときのみに制御モータ80が変速され、ニュトラル位置・後進走行時には、予め設定された一定速度を保つ構成となっている。なお、脱穀機体3は、図27のグラフから解るように、走行速度にシンクロさせて変速する構成は取らず、走行変速に関わらず一定の回転速度で駆動されている。
【0058】
通常、脱穀作業中、後部処理胴1bは、悪条件(濡れ扱ぎで湿材が多いとき、実入りが悪く藁屑が極端に多く発生する稲等)や、処理量が急激に増加したりすると、排塵処理室2の後部に負担がかかり、詰まりの発生や処理不充分で排塵選別室5に排塵することが多い。したがって、後部処理胴1bは、上記の如く排塵物が多く発生すると、変速装置76によって増速側に制御して処理能力を増大しながら解消することが効果的である。
【0059】
上記変速装置76は、変速割りプーリー79と制御機構とを組み合わせているから、無段階の変速が可能であり、安価でコンパクトに製作できる利点もある。
そして、後部処理胴1bの変速制御装置は、更に、圃場の実態に合わせた変速制御にするためには、雨等に濡れた湿材に対応する超高速域までの変速が必要になる。そのために、実施例は、標準的変速幅と、その上に高速域まで変速できる変速幅との二段階に分けてモードの切換で選択可能に構成にすることが有効である。
【0060】
すなわち、後部処理胴1bの変速制御装置は、標準変速モードと高速変速(又は湿材変速)モードとの二つの変速モードを構成し、予め、モード設定をして作業を開始する構成にする。例えば、標準的条件の揃った圃場は、標準変速モードを設定して収穫作業を行うと、後部処理胴1bは、圃場条件に合った回転速度が選択できるから効果的に脱穀作業ができる。そして、後部処理胴1bは、例えば雨で濡れた圃場の収穫作業時には、予め、高速変速モードを設定して作業を開始すると、圃場の濡れ具合に応じて変速範囲が高速側で選択ができるから、最適の高速側に変速が行われて湿材を処理することができる。
【0061】
なお、モード切替スイッチは、操縦位置に設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】脱穀機の内部平面図
【図2】脱穀機の内部側面図
【図3】脱穀機の正面図
【図4】図2のS1−S1の断面図
【図5】図2のS2−S2の断面図
【図6】伝動機構図
【図7】一部破断した処理胴の平面図
【図8】一部破断した処理胴の側面図
【図9】図2のS3−S3の断面図
【図10】脱穀機の内部側面図
【図11】脱穀機の内部平面図
【図12】脱穀機の内部側面図
【図13】脱穀機の内部背面図
【図14】脱穀機の内部平面図
【図15】脱穀機の内部側面図
【図16】排塵処理胴の側面図
【図17】排塵処理胴の側面図
【図18】処理胴の一部破断した平面図
【図19】処理胴の一部破断した側面図
【図20】作用平面図
【図21】脱穀機の内部平面図
【図22】脱穀機の切断正面図
【図23】脱穀機の切断背面図
【図24】脱穀機の内部側面図
【図25】脱穀機の切断正面図
【図26】主変速レバーの側面図
【図27】車速と排塵処理胴との回転数を示すグラフ。
【符号の説明】
【0063】
1 排塵処理胴 1a 前部処理胴
1b 後部処理胴 2 排塵処理室
3 脱穀機体 4 排塵口
5 排塵選別室 6 吸引排塵室
6 吸塵口 8 片側吸引式排塵着
9 扱胴 10 排出羽根。
【技術分野】
【0001】
この発明は、外径を略同一に形成した前部処理胴と後部処理胴との二つの処理胴を、排塵処理室内に軸芯を同じくして軸架し、相互に逆転駆動する構成とした脱穀機の排塵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の脱穀機は、穀稈挟持搬送装置で株元を挟持し、先端の穂部側を扱室に挿入して横送りしながら扱室内で回転している扱胴によって脱穀処理する構成となっている。そして、該脱穀機は、脱穀後の排塵物を排塵処理室に受け継がせて排塵処理し、混入している穀粒を排塵選別した後、吸引排塵機によって機外に排塵する構成としている。このような一連の排塵処理工程において、排塵物は、排塵処理室で充分な処理が行われた後、排塵選別室に放出されて適確に排塵選別が行われ、機外への穀粒の三番飛散を極力少なくすることが肝要で、機外損失を未然に防止することが望まれている。
【0003】
そして、本件出願人は、出願人自身の出願に係る本件出願の先行技術として特開平8−37900号公報(特許文献1参照)を提示するが、該公報には、排塵処理胴から検出した負荷に応じて回転制御を行って、排塵処理作用の向上を図る技術が開示されている。該出願前公知の技術は、穀稈量が少ないときには、排塵処理胴の回転を適正に落して、脱っぷを防止し、騒音や振動を低く抑えることが可能であり、穀稈量が多いときには、回転を適正に増速制御して詰まり等を未然に防止しながら、排塵物の処理を効果的に行って、機外損失を防止できるものとなっている。
【特許文献1】特開平8−37900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、この種の脱穀機における排塵処理装置は、排塵処理室内で排塵物の脱粒処理(排塵物を充分にこなすこと)を適確に行うことと、併せて、排塵選別室において、排塵物中から穀粒を選別しながら回収した後、可能な限り藁屑のみを排塵物として吸引排塵機に吸引させて機外に排出することが大切で、これが従来から脱穀機の排塵処理に関する大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴(1)を内装軸架した排塵処理室(2)を、脱穀機体(3)の一側に前後方向に沿わせて設け、前記排塵処理胴(1)は、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの胴から構成し、前記排塵処理室(2)の後部に開口した排塵口(4)は、脱穀機体(3)後部の排塵選別室(5)を隔てた他側の吸引排塵室(6)の吸塵口(7)に対向して設け、該吸引排塵室(6)には片側吸引式排塵機(8)を装備すると共に、前記排塵口(4)には、後部処理胴(1b)を臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置であって、脱穀後の排塵物は、扱室(13)から排塵処理室(2)に受け継がれて排塵処理作用を受け、排塵選別室(5)に放出される。この発明は、排塵処理胴(1)を外径と軸芯とを略同一にする前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの処理胴を連続状に構成しているから、始端部側の前部処理胴(1a)では、前工程の扱室(13)(扱胴)に合わせて排塵物の受け継ぎを適確に行いながら排塵処理を効果的に行える構成に主眼を置いて設計、製作することが可能であり、後部処理胴(1b)は、排塵選別室(5),及び吸引排塵室(6)(片側吸引式排塵機(8))との関係を良好にするための条件に合わせて設計、製作することができる。
【0006】
つぎに、請求項2に記載した発明は、 前記前部処理胴(1a)は、正面視において、扱胴(9)と同じ時計回りに回転駆動する伝動構成とし、前記後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)と逆の反時計回りに駆動する構成とした請求項1に記載した脱穀機の排塵処理装置であって、扱室から排出される排塵物は、連通口を通って排塵処理室(2)に受け継がれるとき、扱胴と前部処理胴(1a)とが同一方向に回転しているから、両者間の排塵物の受け継ぎが適確に行われる。そして、排塵処理室(2)の排塵物は、排塵口(4)から後部処理胴(1b)によって排塵選別室(5)に放出されるとき、排塵選別室(5)内に、高く遠くに放り出されるように放出されて圧風唐箕(26)から送られてくる選別風を受けて、空中で藁屑と穀粒とが選別分離され、片側吸引式排塵機(8)による吸引風を受けて藁屑が吸塵口(7)から吸引されて排塵物として機外に排塵される。
【0007】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記後部処理胴(1b)は、前記前部処理胴(1a)に比較して、同速か、又は高速で回転駆動する構成とした請求項1、又は2に記載した脱穀機の排塵処理装置であって、排塵処理室(2)内において、後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)から円滑に排塵物を受け継ぐことが可能であって、室(2)内での排塵物の停滞、詰まりの発生を未然に防止できるものとなっている。
【0008】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記後部処理胴(1b)は、その外周面に、排塵物を排塵口(4)から排塵選別室(5)方向に排出する排出羽根(10)を取り付けて構成した請求項1、乃至3のいずれかに記載した脱穀機の排塵処理装置であって、排塵処理室(2)から排塵物を排塵選別室(5)側に放出するとき、排出羽根の回転作用を受けながら、跳ね飛ばされて排塵選別室(5)内の空中に放り上げられて、選別風による風選作用を受けて穀粒が下方の揺動選別棚(ストローラック)上に落下し、軽い藁屑は、吸塵口(7)に吸引されて機外に排塵される。
【発明の効果】
【0009】
まず、請求項1に記載した発明は、排塵処理室(2)内に軸架した排塵処理胴(1)を二つの処理胴から構成しているから、始端部側の前部処理胴(1a)は、前工程の扱室(扱胴)に合わせて排塵物の受け継ぎを適確に行いながら排塵処理を効果的に行える優れた特徴がある。そして、後部処理胴(1b)は、次工程の排塵選別室(5),及び吸引排塵室(6)(片側吸引式排塵機(8))との関係を良好にするための条件に合わせて構成することが可能であるから、排塵処理と、排塵選別とを適確に行って穀粒の三番飛散を減らして、機外損失を減らすことができる特徴を有するものである。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、扱室から排出される排塵物は、連通口を通って排塵処理室(2)に受け継がれるとき、扱胴と前部処理胴(1a)とが同一方向に回転しているから、脱穀後の排塵物の受け継ぎがきわめて円滑に行われ、停滞等がほとんど発生しない特徴がある。そして、排塵処理室(2)の排塵物は、排塵口(4)から後部処理胴(1b)によって排塵選別室(5)に放出されるとき、排塵選別室(5)内に高く遠くに放り上げられるように放出されて選別風を空中で受けて適確に選別される特徴がある。そして、排塵物は、高く、遠くに飛ぶ藁屑類と、下方に落下する穀粒とに選別分離され、一方は片側吸引式排塵機(8)による吸引風を受けて吸塵口(7)に吸引され、他方が揺動選別棚上に落下して回収され、選別精度が高くなった特徴がある。
【0011】
そして、請求項3に記載した発明は、排塵処理室(2)内において、後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)による処理工程で処理されながら、脱粒して穀粒が下方の選別室に漏下、取り除かれた残りの排塵物を、受け継ぐが、そのとき、前部処理胴(1a)に比較して同速か、又は高速で回転しているから、受継位置で排塵物が停滞することはほとんどなく、円滑に受け継がれる特徴がある。
【0012】
このように、この発明は、排塵物を排塵処理室(2)内で前部から逆転の後部処理胴(1b)に受け継ぐときの詰まりや停滞が起きない特徴がある。
そして、請求項4に記載した発明は、排塵処理室(2)の後部に達した排塵物を、排塵口(4)から排塵選別室(5)側に放出するとき、排出羽根(10)の回転跳上げ作用によって跳ね飛ばし、排塵選別室(5)内の空中に高く、遠くに放出する特徴がある。したがって、排塵物は、排塵選別室の空中で選別風による風選作用を受けて効果的に選別され、混入していた穀粒が下方の揺動選別棚(ストローラック)上に落下し、軽い藁屑は、吸塵口(7)から排塵機(8)に吸引されて機外に排塵され、三番飛散を防止して、機外損失を未然に防止できる優れた特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の主要部は、排塵処理装置であって、脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴1を、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとの二つの胴から構成して排塵処理室2に内装軸架した。そして、排塵処理室2は、後部の排塵口4を、脱穀機体3後部にある排塵選別室5を隔てた他側の吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けている。そして、吸引排塵室6は、片側吸引式排塵機8を内装して装備すると共に、前記排塵口4には、前記した後部処理胴1bを臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置としている。
【0014】
このように、排塵処理装置は、排塵処理室2内に前部処理胴1aと後部処理胴1bの二つの処理胴をあたかも一個の如く軸架して構成し、排塵物の受け取り側を、扱胴9の回転に合わせて扱室13からの排塵物の受け継ぎ作用が円滑にできるように構成し、排塵物の排出側を、排塵物の選別作用が良好にできるように排塵選別室5、及び吸引排塵室6側に合わせて構成したものであって、扱室13からの排塵物の受け継ぎが円滑にできると共に、排塵選別を適確に行って穀粒の三番飛散をなくして機外損失を未然に防止する特徴がある。
【0015】
以下、実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、脱穀機体3(以下、本件明細書では「脱穀機」全体を指すものとする。)は、図1、乃至図3に示すように、上側に扱室13、及び二番処理室14と排塵処理室2とを設け、下側に選別室12を配置して構成している。そして、扱室13は、図面に示すように、長手方向に軸架した扱胴軸15に扱胴9を軸架して設け、扱胴9の前側には、穀稈の穂部側を扱室13に挿入する扱口16を長手方向に沿わせて開口した構成としている。そして、前記扱胴9は、従来から周知のとおり、外周に多数の扱歯17,17を設けるが、その場合、扱歯17,17に回転に伴って脱穀作用と脱穀物を扱室13の下手側に送る送塵作用との機能を持たせるように配列した構成としている。
【0016】
そして、穀稈挟持搬送装置18は、図1、乃至図3に示すように、前記扱口16の外側において、穀稈の搬送方向に沿わせて、上側に挟持杆18aと下側にフィードチエン18bとを設け、穀稈の株元側を上下から挟持して穂先側を前記扱口16から扱室13内に挿入した状態で脱穀しながら搬送する構成としている。そして、排藁装置19は、図1、及び図2に示すように、上記穀稈挟持搬送装置18の搬送終端部から排藁を受け継いで後部の排藁カッター20まで搬送して供給する構成としている。
【0017】
そして、前記二番処理室14と排塵処理室2とは、扱室13の背後に長手方向に沿わせて設け、それぞれ二番処理胴21と排塵処理胴1とを内装して軸架し、二番処理作用、及び排塵処理作用を行う構成としている。そして、前記選別室12は、図2、及び図4に示すように、上側に揺動選別棚22を脱穀機体3の前部、扱室13の下方から後部の排塵選別室5にかけて吊持ち状態(案内レールとコロとによる摺動支持構成)に支持して揺動自由に構成している。そして、前記揺動選別棚22は、図面に示すように、選別方向の上手側から移送棚23、シーブ24、ストローラック25の順に設け、上側から落下してきた被選別物を揺動選別する構成としている。
【0018】
そして、選別室12は、図面に示すように、上記揺動選別棚22の下方位置には、選別方向の上手側から圧風唐箕26、一番移送螺旋27、二番移送螺旋28の順に軸架して設け、上記揺動選別棚22と、圧風等箕26から吹き込む選別風によって一番穀粒、二番物、排塵物とに選別分離して回収する構成としている。そして、一番穀粒は、図4に示すように、一番移送螺旋27に流下した穀粒が、一側に収集されて一番揚穀装置30によって、図示省略しているグレンタンクに貯留される構成としている。そして、二番物は、図5に示すように、二番移送螺旋28で一側に集められて二番揚穀装置31によって揚穀され、前記した二番処理室14の始端部側(実施例では排塵処理室2に近い側)に還元される構成としている。
【0019】
そして、前記排塵処理室2は、図1、図4、図5に示すように、脱穀機体3の一側で、前述のとおり扱室13の背後に前後方向(長手方向)に沿わせて設けた構成としている。そして、前記排塵処理胴1は、図7、及び図8に示すように、前部処理胴1aと後部処理胴1bとの外径をほとんど同径に形成した二つの胴から構成するが、前部処理胴1aは、前部に小径の二番処理胴21を一体に形成し、後部には連結支持軸35を延長して、この連結支持軸35に後部処理胴1bを、ベアリング36を内装した軸受支持機構37と連結具38とによって回転自由に連結して支持し、外観上一個の如く構成している。
【0020】
この場合、前部処理胴1aは、図8に示すように、後縁部39をパルジ加工によって膨らませて大径とし、その内側に後部処理胴1bの前縁部40を差し込んで重合して連結状態に構成している。したがって、排塵処理胴1は、室2内を流動する排塵物が前部処理胴1aから後部処理胴1bに円滑に受け継がれ、藁屑等が後縁部39と前縁部40との重合した接合部分から胴内に浸入することはほとんどない特徴がある。
【0021】
そして、排塵処理胴1は、図1、図7、及び図8に示すように、前部処理胴1aへの動力が、前側に一体とした前記二番処理胴21に伝動ギヤケース41の前部伝動軸42を介して入力され、後部処理胴1bへの動力が、後部に固着した後部伝動軸43にスプライン筒(カップリング部)45を介して伝動される構成としている。なお、46は後部入力プーリを示している。
【0022】
そして、実施例の構成は、図8に示すように、前部処理胴1a側から後方に長く延長した前記連結支持軸35を、後部処理胴1b内に挿入させて、2箇所の軸受支持機構37と連結具38とによってその後部処理胴1bを軸受け支持した構成とし、更に、その連結支持軸35を、前記後部伝動軸43に接近する位置まで延長した構成としている。
【0023】
そして、上記スプライン筒45は、図8から解るように、分解、組み立て時には、後側から着脱する構成とし、スプラインの磨耗時等の部品交換が容易にできる構成を採用している。
【0024】
以上のように、排塵処理胴1は、前部処理胴1aの後部から延長した連結支持軸35を利用して、軸受支持機構37や連結具38で強固に連結、支持したから、回転駆動中に両方の胴の振れが少なく、安定した回転ができる優れた利点がある。
【0025】
更には、連結具38は、既に説明したように、前後2箇所で軸受支持機構37と後部処理胴1bの胴体とを連結しているから、軸芯と外径とが狂うことがなく、芯振れを防止し、安定した回転は勿論、耐久性も大幅に向上した効果がある。
【0026】
このように構成した後部処理胴1bは、図5、図7、及び図8に示すように、後部から胴の前後幅の中央位置まで至る排出羽根10を放射状に取り付けて排塵物を排塵口4から排塵選別室5内に跳ね上げながら飛ばす構成としている。
【0027】
そして、前記排塵処理室2は、図面に示すように、その後部に開口した排塵口4を、脱穀機体3後部の排塵選別室5を隔てた他側の吸引排塵室6の吸塵口7に対向して設けた構成としている。そして、吸引排塵室6は、図2、及び図5から解るように、片側吸引式排塵機8を装備し、前記吸塵口7から吸引した排塵物を、排塵筒48によって機外に排塵する構成としている。
【0028】
つぎに、伝動機構の概略を、図6に基づいて説明する。
まず、エンジン50は、図6に示すように、出力軸51から回転動力を走行側と脱穀側とに分けて伝動するが、走行側は静油圧式無段変速装置52を経由して走行ミッション装置53側に伝動する経路とし、脱穀側は圧風唐箕26を軸着した唐箕軸54を経由して脱穀機体3側に伝動する経路として構成している。そして、既に説明した伝動ギヤケース41は、図6に示すように、上記唐箕軸54からベルトを介して入力され、その回転動力を二番処理胴21と扱胴9とに分配伝動する構成としている。そして、排塵処理胴1は、既に説明し、図6、及び図7にも示すように、上記二番処理胴21と一体構成の前部処理胴1aが、同時に伝動される構成となっている。
【0029】
そして、後部処理胴1bは、図6に示すように、二番移送螺旋(軸)28からカウンタギヤケース55を経由してベルト伝動で後部入力プーリ46に入力される構成としている。
【0030】
このように、排塵処理胴1は、図6、及び図10に示すように、前部処理胴1aを二番処理胴21と一体として前側から入力し、後部処理胴1bを後ろ側の後部入力プーリ46から入力して、両胴間で回転方向を逆回転する構成としている。
【0031】
そして、排塵処理胴1の前部処理胴1aは、回転方向を扱胴9に合わせて同じ方向に回転する構成とし、後部処理胴1bは、前部処理胴1aとは逆回転する構成としている。更に、具体的に説明すると、前記前部処理胴1aは、図9の正面視に矢印で示すように、扱胴9と同じ時計回りに回転駆動する構成としており、前記後部処理胴1bは、図5に矢印で示すように、前部処理胴1aとは逆に、反時計回りに駆動する構成としている。
【0032】
そして、上記後部処理胴1bは、実施例の場合、前部処理胴1aに比較して、高速度で回転駆動する構成としているが、少なくとも同速か、或いはそれより速く回転駆動する構成にすればよい。
【0033】
そして、排塵処理胴1は、図9に示すように、扱室13と排塵処理室2との連通口57に臨む前部処理胴1aの始端部に設けた螺旋状の掻込輪58(図7参照)が排塵物を受け継ぐ構成としている。
【0034】
このように構成された排塵処理胴1は、前部処理胴1aが扱胴9と同方向に回転しているから、扱室13内の排塵物を排塵処理室2に円滑に受け継ぎができる特徴がある。そして、排塵処理胴1は、排塵処理室2の内部において、前部処理胴1aが排塵物をこなしながら送り、停滞させることはないが、特に、前部処理胴1aの終端部分では、後部処理胴1bの方が高速で回転しているから、排塵物の受け継ぎがきわめて円滑に行われ、停滞等の発生はほとんどなく、きわめて適確に排塵物の処理ができる。
【0035】
そして、前記伝動ギヤケース41は、図1(図10参照)に示すように、平面視で脱穀機体3を構成する前板60より機体の内側に入り込んだ構成として、前側への突出部分を短く構成している。したがって、脱穀機体3は、前側の利用空間が拡大できてエンジン関連機器の配置が整然とできる利点があり、エンジン50から発生する熱気などの排気スペースが取り易くなる利点がある。
【0036】
そして、上記伝動ギヤケース41は、図1に示すように、二番処理胴41と扱胴9とに回転動力を分配して伝動する機構について説明したが、この場合、二番処理胴41と扱胴9とは、作業時の回転数の差を大きく設けていないから、減速比を大きくとる必要がなく、分岐する伝動経路としては合理的な構成になっている。更に、後部処理胴1bの伝動機構は、図1に示すように、処理胴1bを脱穀機体3の右側に装置しており、二番移送螺旋28、及び二番揚穀装置31の伝動も右にあるから、両者間の伝動経路が短い経路で伝動可能で安価に製作できる特徴がある。
【0037】
そして、実施例の場合、後部処理胴1bの後部入力プーリ46は、図1(図10参照)に示すように、脱穀機体3の後部位置に配置する構成を採用したから、処理胴1bを長く形成することが可能となる利点がある。そして、後部入力プーリ46は、排藁カッター20の内部まで張り出した構成を避けることにより、切り藁が障害になることのない特徴がある。
【0038】
つぎに、排塵選別室5とそれに関連する周辺構成を説明する。
まず、排塵選別室5は、図11、乃至図13に示すように、脱穀機体3の後部で揺動選別棚22の後部に位置するストローラック25の上方に形成されている。そして、排塵選別室5は、機体一側にある排塵処理室2の後部で、後部処理胴1bに対応させて機体中心側に向けて開口した排塵口4と、これに対向して設けられている機体の他側にある片側吸引式排塵機8を内装軸架した吸引排塵室6の吸塵口7との間に形成されている。
【0039】
そして、排塵選別室5は、上記した実施例の場合、排塵処理室2の排塵口4と、吸引排塵室6の吸塵口7とが側面視(図12参照)において一致した構成としている。そして、排塵選別室5は、上方位置には、全幅に渡って覆うようにケーシング65を設けて構成している。そして、前記片側吸引式排塵機8は、図12において、穀稈挟持搬送装置18側から見て反時計回りに回転する伝動構成とし、排塵物を排塵筒48から機外に排塵できる構成としている。
【0040】
このように構成された排塵選別室5は、図5に示すように、後部処理胴1bが矢印の方向(反時計回り)に回転して排出羽根10によって排塵物を中央に向けて高く跳ね上げ、圧風唐箕26から吹いている選別風を受けて排塵選別が行われている。そのとき、排塵選別室5内には、上記選別風に加えて、片側吸引式排塵機8が、反時計回り(図12参照)に回転して吸塵口7から塵埃を吸塵しているため、反時計方向の渦流が発生している。したがって、排塵物は、排塵選別室5の中空上で風選作用を受けながら比重の重い穀粒が下方のストローラック25上の前寄り(前記渦流作用を受けるため)の位置に落下して選別されて二番側に回収され、一方、軽い藁屑等の排塵物は、渦流状態に吹いている吸塵風を受けて、反対側の吸塵口7から吸塵作用を受け、吸引排塵室6に達することになる。このとき、藁屑等の排塵物は、上方が囲われた状態に全幅に渡って設けられているケーシング65に誘導されて吸塵口7から吸引排塵室6に吸塵され、排塵筒48から機外に排塵される。
【0041】
この実施例は、上述のとおり、比重の重い穀粒は、ストローラック25の前寄りに落下するから、穀粒回収率が高くなり、機外損失が大幅に減少した効果がある。
つぎに、排塵処理室2を構成している格子状受網62、及び排塵ガイド63について、排塵処理胴1との関連で構成と作用・効果を説明する。
【0042】
まず、排塵処理室2は、図14、及び図15に示すように、前部処理胴1aの掻込輪58に対応する部位に、既に説明した扱室13との連通口57が開口し、前部処理胴1aの処理歯64に対応する処理部分には、格子状受網62を張設しており、後部処理胴1bに対応する部位には、上記受網62に連続する排塵ガイド63と排塵口4を開口して構成している。この場合、格子状受網62は、図面に示すように、扱胴9と同方向に回転する前部処理胴1aに対応させて設け、逆回転する後部処理胴1bに対応させて上述のとおり排塵ガイド63と排塵口4とを設け、図15に示すように、回転方向が切換わる境目の部位(前部処理胴1aの後縁部39)には、外側に受網62を設けない構成とした。
【0043】
以上のように構成した排塵処理室2は、前部処理胴1aと後部処理胴1bとの回転方向が切換わる境目の部位には、通常、処理物が停滞し易いと思われるが、この実施例は、上記説明のとおり、境目の部位には外側に受網62がないために排塵物の停滞はほとんどなく、後部処理胴1b側に受け継がれる。そして、排塵ガイド63は、後部処理胴1bの回転に沿わせて下側に半円状に設けているから、処理胴1bによって持ち回られている排塵物を案内して、排出羽根10も関与して排塵口4から排塵選別室5に高く跳ね飛ばすことができる。
【0044】
つぎに、処理歯64は、図16に示すように、回転方向に対して左右対称形状に形成し、正転する前部処理胴1aと逆転する後部処理胴1bとにそれぞれ共用部品として取り付け、回転方向が逆でも同一の処理作用ができる構成としている。そして、該処理歯64は、排塵物の持ち回りが少なくて巻き付きがなくなり、消費馬力が少ない点に特徴がある。
【0045】
そして、図17に示す別実施例は、前部処理胴1aに取り付けた場合(時計回り回転)、後退角を少なくして、持ち回り回転を増加させて排塵処理を促進する構成とし、後部処理胴1bに取り付けると(反時計回り回転)、後退角度をつけて持ち回りを少なくして,早く排塵処理室2排出するようにしている。
【0046】
上述した二つの処理歯64は、それぞれ特徴があり、どちらを使用するも自由であるが、要するに、正・逆転する前部処理胴1aと後部処理胴1bとに共用部品として両方に使用できる特徴がある。
【0047】
つぎに、二番処理胴21、及び排塵処理胴1の着脱構成について、図18、乃至図20に基づいて説明する。
既に説明したとおり、排塵処理胴1は、前部処理胴1aと後部処理胴1bとが相互に逆転可能でありながら一体に構成しており、更に、前部に二番処理胴21を一体に連結した構成にしている。そして、排塵処理胴1は、図18、及び図19から解るように、前部の二番処理胴21を、伝動ギヤケース41から突出した前部伝動軸42に、伝動連結具66を介してスプライン嵌合して着脱可能に設け、後部を、後部伝動軸43とスプライン筒45とによって着脱自由に構成している。
【0048】
そして、排塵処理胴1は、図20に示すように、脱穀機体3の後部に装着している排藁カッター20を、側部の枢着部を回動支点にして後方へ開放した後、後方に引き出すことができる構成としている。この場合、後部伝動軸43は、図19に示すように、機体側に残しても、又は図20に示すように、取付板67(後部伝動軸43と後部入力プーリー46と供に)と供に取り外すことができる構成にしている。
【0049】
このように、排塵処理室2、及び二番処理室14は、内部に装備している排塵処理胴1と二番処理胴21とを一体として脱穀機体3から後方へ引き出しながら取り外しができるから、室内に処理物等の詰まりが発生したときや、その他清掃、メンテナンスを比較的楽に行うことができる特徴がある。
【0050】
つぎに、実施例における後部処理胴1bの伝動機構に関して、具体的な構成を説明する。
既に、本件脱穀機体3の伝動機構については、図6に基づいて概略の説明をし、後部処理胴1bは、二番移送螺旋(軸)28から動力を取り出してベルト伝動でカウンタギヤケース55に伝動し、更に、該カウンタギヤケース55からベベルギヤによって伝動方向を変更し、ベルト伝動で後部入力プーリ46に入力して伝動する構成を説明した。
【0051】
そして、上記実施例のカウンタギヤケース55は、図21、乃至図23に示すように、機体上部の機枠間に左右横方向に連結した支持フレーム70から取付フレーム71を下側に延長して固定具72にねじにより吊り下げて支持した構成としている。したがって、カウンタギヤケース55は、強固に支持されており、安定した伝動を行うことができると供に、耐久性に優れた装置となっている。
【0052】
そして、処理胴後方側板73は、図23、及び図24に示すように、排塵処理室2の後方において、前記後部入力プーリ46を上側、横側、後ろ側をカバーしており、更に、その背後に、図23と図24に示すように、リヤカバー75を設けて構成している。
【0053】
このように、処理胴後方側板73は、後部入力プーリ46への藁屑等の侵入を防ぎ障害なく安全に伝動できるように保護している。そして、リヤカバー75は、排藁カッター20が切断した藁が前側に移動するのを防止して、上述の伝動経路中に侵入するのを阻止できるものとしている。
【0054】
つぎに、後部処理胴1bの変速機構について図面に基づき具体的に説明する。
まず、変速装置76は、図24、及び図25に示すように、二番移送螺旋(軸)28のプーリー77からベルト78で伝動される前記カウンタギヤケース55に軸架した変速割りプーリ79との間に構成されている。そして、該変速割りプーリー79は、図面に示すように、制御モータ80からピニオンギヤ81、ラックギヤ82、アーム83、操作ロット84を介してカム85に沿って拡縮され変速制御される構成としている。86はテンションプーリを示している。
【0055】
そして、上記制御モータ80は、図26に示すように、運転操作位置に設けている主変速レバー88(既に説明した「静油圧式無段変速装置52」の操作レバーでニュトラル位置を基準にして、図26で左に傾け操作すれば後進走行、右に操作すれば前進走行になり、傾倒度が大きくなるに従って高速走行に変速する。)の基部にホテンショメータ89に作動アーム90と受動アーム91とを介して操作力を伝達可能に構成している。この場合、上記ポテンショメータ89は、図示しない制御手段(CPU)に接続し、該制御手段から出力される制御信号に基づいて前記制御モータ80が変速制御される構成としている。
【0056】
このように構成すると、後部処理胴1bは、コンバインの走行速度にシンクロした速度に変速され、コンバインの作業能率(刈取穀稈量)に対応した適正な処理能力(回転速度)になって、排塵物を適確に処理する特徴がある。そのため、後部処理胴1bは、回転不足で処理不充分で排塵したり、逆に詰まったり、或いは、回転過多で損傷粒が出たり、振動が増大する等の弊害がおきる事はない。
【0057】
実施例は、図27のグラフに示すように、前記主変速レバー88を前進走行ゾーンで変速操作するときのみに制御モータ80が変速され、ニュトラル位置・後進走行時には、予め設定された一定速度を保つ構成となっている。なお、脱穀機体3は、図27のグラフから解るように、走行速度にシンクロさせて変速する構成は取らず、走行変速に関わらず一定の回転速度で駆動されている。
【0058】
通常、脱穀作業中、後部処理胴1bは、悪条件(濡れ扱ぎで湿材が多いとき、実入りが悪く藁屑が極端に多く発生する稲等)や、処理量が急激に増加したりすると、排塵処理室2の後部に負担がかかり、詰まりの発生や処理不充分で排塵選別室5に排塵することが多い。したがって、後部処理胴1bは、上記の如く排塵物が多く発生すると、変速装置76によって増速側に制御して処理能力を増大しながら解消することが効果的である。
【0059】
上記変速装置76は、変速割りプーリー79と制御機構とを組み合わせているから、無段階の変速が可能であり、安価でコンパクトに製作できる利点もある。
そして、後部処理胴1bの変速制御装置は、更に、圃場の実態に合わせた変速制御にするためには、雨等に濡れた湿材に対応する超高速域までの変速が必要になる。そのために、実施例は、標準的変速幅と、その上に高速域まで変速できる変速幅との二段階に分けてモードの切換で選択可能に構成にすることが有効である。
【0060】
すなわち、後部処理胴1bの変速制御装置は、標準変速モードと高速変速(又は湿材変速)モードとの二つの変速モードを構成し、予め、モード設定をして作業を開始する構成にする。例えば、標準的条件の揃った圃場は、標準変速モードを設定して収穫作業を行うと、後部処理胴1bは、圃場条件に合った回転速度が選択できるから効果的に脱穀作業ができる。そして、後部処理胴1bは、例えば雨で濡れた圃場の収穫作業時には、予め、高速変速モードを設定して作業を開始すると、圃場の濡れ具合に応じて変速範囲が高速側で選択ができるから、最適の高速側に変速が行われて湿材を処理することができる。
【0061】
なお、モード切替スイッチは、操縦位置に設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】脱穀機の内部平面図
【図2】脱穀機の内部側面図
【図3】脱穀機の正面図
【図4】図2のS1−S1の断面図
【図5】図2のS2−S2の断面図
【図6】伝動機構図
【図7】一部破断した処理胴の平面図
【図8】一部破断した処理胴の側面図
【図9】図2のS3−S3の断面図
【図10】脱穀機の内部側面図
【図11】脱穀機の内部平面図
【図12】脱穀機の内部側面図
【図13】脱穀機の内部背面図
【図14】脱穀機の内部平面図
【図15】脱穀機の内部側面図
【図16】排塵処理胴の側面図
【図17】排塵処理胴の側面図
【図18】処理胴の一部破断した平面図
【図19】処理胴の一部破断した側面図
【図20】作用平面図
【図21】脱穀機の内部平面図
【図22】脱穀機の切断正面図
【図23】脱穀機の切断背面図
【図24】脱穀機の内部側面図
【図25】脱穀機の切断正面図
【図26】主変速レバーの側面図
【図27】車速と排塵処理胴との回転数を示すグラフ。
【符号の説明】
【0063】
1 排塵処理胴 1a 前部処理胴
1b 後部処理胴 2 排塵処理室
3 脱穀機体 4 排塵口
5 排塵選別室 6 吸引排塵室
6 吸塵口 8 片側吸引式排塵着
9 扱胴 10 排出羽根。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴(1)を内装軸架した排塵処理室(2)を、脱穀機体(3)の一側に前後方向に沿わせて設け、前記排塵処理胴(1)は、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの胴から構成し、前記排塵処理室(2)の後部に開口した排塵口(4)は、脱穀機体(3)後部の排塵選別室(5)を隔てた他側の吸引排塵室(6)の吸塵口(7)に対向して設け、該吸引排塵室(6)には片側吸引式排塵機(8)を装備すると共に、前記排塵口(4)には、後部処理胴(1b)を臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項2】
前記前部処理胴(1a)は、正面視において、扱胴(9)と同方向の時計回りに回転駆動する伝動構成とし、前記後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)とは逆に、反時計回りに駆動する構成とした請求項1に記載した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項3】
前記後部処理胴(1b)は、前記前部処理胴(1a)に比較して、同速か、又は高速で回転駆動する伝動構成とした請求項1、又は2に記載した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項4】
前記後部処理胴(1b)は、その外周面に、排塵物を排塵口(4)から排塵選別室(5)方向に排出する排出羽根(10)を取り付けて構成した請求項1、乃至3のいずれかに記載した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項1】
脱穀後の排塵物を処理する排塵処理胴(1)を内装軸架した排塵処理室(2)を、脱穀機体(3)の一側に前後方向に沿わせて設け、前記排塵処理胴(1)は、外径と軸芯とを略同一にして、相互に逆方向に回転する前部処理胴(1a)と後部処理胴(1b)との二つの胴から構成し、前記排塵処理室(2)の後部に開口した排塵口(4)は、脱穀機体(3)後部の排塵選別室(5)を隔てた他側の吸引排塵室(6)の吸塵口(7)に対向して設け、該吸引排塵室(6)には片側吸引式排塵機(8)を装備すると共に、前記排塵口(4)には、後部処理胴(1b)を臨ませて構成した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項2】
前記前部処理胴(1a)は、正面視において、扱胴(9)と同方向の時計回りに回転駆動する伝動構成とし、前記後部処理胴(1b)は、前部処理胴(1a)とは逆に、反時計回りに駆動する構成とした請求項1に記載した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項3】
前記後部処理胴(1b)は、前記前部処理胴(1a)に比較して、同速か、又は高速で回転駆動する伝動構成とした請求項1、又は2に記載した脱穀機の排塵処理装置。
【請求項4】
前記後部処理胴(1b)は、その外周面に、排塵物を排塵口(4)から排塵選別室(5)方向に排出する排出羽根(10)を取り付けて構成した請求項1、乃至3のいずれかに記載した脱穀機の排塵処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2006−230245(P2006−230245A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47471(P2005−47471)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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