説明

脱穀装置

【課題】分解組立容易で強度の高い脱穀機の処理室を提供する。
【解決手段】この発明は、室内に扱胴3を回転自在に支持した扱室4と、室内に処理胴27を回転自在に支持した処理室24と、前記扱胴3による処理物及び処理胴27による処理物の選別処理を行う選別室7とを備え、処理室24を扱室4の側方に配置し、扱室4と処理室24とを連通口26を介して連通させ、扱室4から遠い側の処理室24の側壁を着脱可能なカバー体31によって構成した脱穀装置の改良に関する。上記カバー体31を下側カバー体37と上側カバー体36とに上下分割形成し、下側カバー体37と上側カバー体36とを各別に取り外し可能に構成している。そして上側カバー体36と下側カバー体37とを板厚が異なるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコンバイン等の脱穀装置に関し、特に扱室に隣接して設けられる処理室の外側カバーの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にコンバイン等の脱穀装置には、特許文献1に示されるように扱室より未処理状態で排出される処理物を導入して再処理する処理室が扱室後部側方に連通して設けられており、この処理室には処理胴が前後方向に軸支され、処理胴の扱室側は半円筒形の受網が、外側には同じく半円筒形の一体物の処理室カバーが設けられている(特許文献1、図5〜6)。
【特許文献1】特開2002−176837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記処理室カバーは単に全体が一体であるだけでなく、大量の未処理物の導入にも耐え、さらに処理胴の回転時の振動を防止するために一定の強度(剛性)が求められ全体の重量も大きいので処理室内部のメンテナンス作業時等のカバーの取り外しや取付作業に多大な労力を要する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の脱穀装置は、第1に、室内に扱胴3を回転自在に支持した扱室4と、室内に処理胴27を回転自在に支持した処理室24と、前記扱胴3による処理物及び処理胴27による処理物の選別処理を行う選別室7とを備え、処理室24を扱室4の側方に配置し、扱室4と処理室24とを連通口26を介して連通させ、扱室4から遠い側の処理室24の側壁を着脱可能なカバー体31によって構成した脱穀装置において、カバー体31を下側カバー体37と上側カバー体36とに上下分割形成し、下側カバー体37と上側カバー体36とを各別に取り外し可能に構成したことを特徴としている。
【0005】
第2に、上側カバー体36と下側カバー体37とを板厚が異なるように形成したことを特徴としている。
【0006】
第3に、上側カバー体36の板厚に対して下側カバー体37の板厚が厚くなるように形成し、下側カバー体37に処理網38を設け、処理網38から漏下する処理物を選別室7に案内する案内カバー41を下側カバー体37に着脱可能に取付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の脱穀装置によれば、カバー体を下側カバー体と上側カバー体とに上下分割形成し、下側カバー体と上側カバー体とを各別に取り外し可能に構成することにより、処理室内のメンテナンスを行うためにカバー体全てを取り外す必要がなくなるため、処理室メンテナンス時の作業負担が軽減するという効果がある。
【0008】
また、上側カバー体と下側カバー体とを板厚が異なるように形成することにより、脱穀装置の処理室内のメンテナンスを行う際に板厚が薄い側のカバー体を取り外すようにすることにより、処理室メンテナンス時の作業負担がより一層軽減するという効果がある。
【0009】
さらに、上側カバー体の板厚に対して下側カバー体の板厚が厚くなるように形成し、下側カバー体に処理網を設け、処理網から漏下する処理物を選別室に案内する案内カバーを下側カバー体に着脱可能に取付けた脱穀装置の案内カバーを取り外すことにより、選別室内のメンテナンスも可能になるため、メンテナンス性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図示する実施形態につき詳述すると、図1はコンバインの脱穀機1(脱穀装置)の進行方向左側の側面図を表わしており、その前方には図示しない穀稈刈取・搬送部(前処理部)が連結され、脱穀機1は機体フレーム2上に組付けられており、コンバインでは機体フレーム2がクローラ(図示しない)に支持されている。
【0011】
機体フレーム2の前部上方には内部に扱胴3を前後方向に軸支した扱室4と、その下方に受網6を介して脱穀された穀粒を芥類等と選別して回収する選別室7とが設けられている。扱室4の左側方には前処理部より送られた穀稈を把持して扱室4に挿入して脱穀させるフィードチェン8が、選別室7内下部には前方から唐箕9,1番らせん11,シロッコファン12,2番らせん13が左右方向に軸支され、これらにより扱室4及び後述する処理室24より落下(漏下)する処理物を穀類と芥類に風選する。さらに選別室7内には各らせん11,13の右端より、機体右側のグレンタンク14と再処理部へ搬送する上下方向の揚穀らせん16,2番還元オーガ17が設けられるほか、扱室4と処理室24との下方に揺動選別部18等が設けられている。
【0012】
選別室7の後方上部には、吸引ファン19を備えて芥類を後方に排出する排塵室21が連通開口して設けられ、フィードチェン8の後方には排藁搬送部22,カッター部23等が順次設置されている。
【0013】
筒状に形成される処理室24は図2に示すように扱室4の後方外側(右側)位置で連通口26を介して連通して前後方向に設けられ、その中心部には処理胴27が前後方向に軸支されている。そして扱室4で未処理状態の処理物が連通口26を介して処理室24に送られ処理胴27の回転によって処理されながら後方に送られる。
【0014】
処理室24は連通口26の後方の内側(扱室4側,右側)周壁が半円筒状の処理網(クリンプ網)28で構成され、その後端部底部側には排塵口29が開口して設けられている。扱室4から送られた芥類を含む未処理の穀類は回転する処理胴27外周に突設された移送らせん27a及び処理歯27bによって後方に搬送されながら処理される。
【0015】
未処理物は穂先穀稈等の芥類から分離された穀粒を処理網28を介して下部の選別室7に落下させ、処理胴27後部外周の排出羽根27cによって後方の排塵口29より芥類が排塵室21に吸引放出される。
【0016】
処理室24の機体中心より外側外周は角筒形又は円筒形のカバー体31が前後壁32,33及び脱穀機1のフレーム側に対してボルト締め等により着脱可能に取付けられて周壁を形成している。そしてカバー体31は図4,図6,図7に示すように上下に筒片状に2分割されて上側カバー36(上側カバー体)と下側カバー37(下側カバー体)とが、上側カバー36と下側カバー37から外側にそれぞれ突出するフランジ部36a,37a同士を複数のノブ付ボルト34により締着固定させることにより、上下各別に組付け及び分解可能な構造になっている。上記ノブ付ボルト34により、下側カバー37と上側カバー36の着脱作業を容易に行うことができる。
【0017】
36b,37bは上下各側カバー36,37の上端又は下端に突設された取付用のフランジ部であり、これらの部分が脱穀機1のフレーム側にボルト固定される。この際、下側カバー37を上側カバー36と比較して板厚が厚くなるように形成してフレーム部材も兼ねるようにさせるため、下側カバー37のフランジ部37bは、通常のボルト35により脱穀機1のフレーム側に強固に固定される。一方、上側カバー36は、着脱時の作業性を考慮し、上記フランジ部36bがノブ付ボルト34によって脱穀機1のフレーム側に取付固定される。
【0018】
さらに下側カバー37の後半部には、排塵口29及び排出羽根27cの位置と重ならない前後長で網目状に打抜かれたパンチングメタル等からなる処理網38が処理室24の周壁の一部を構成するように設けられている。該処理網38の前後の下側カバー37の外周には、フランジ状の前後壁39,39が上下方向に突設され、この前後壁39,39間には案内カバー41が所定の間隔よりなる案内間隙42を介して処理網38外周を覆い且つ選別室7に開口部43を介して連通開放されるようにボルト固定されている。なお、このボルト固定には、着脱作業の効率化を考慮し、前述のノブ付ボルト34を用いる。
【0019】
上記案内カバー41の下端部(又は下部周縁)は、上記選別室7への開口部43の周縁外側面に設けられたひだ状の差込部44に挿脱可能に差込まれ、組付け時の外部との密閉を図っている。また、差込部44に案内カバー41の下端部を差込むことにより、案内カバー41を下側カバー37にボルト固定することなく、脱穀機1のフレーム側に単独で取り付けることができる。
【0020】
以上により、処理室24内で脱粒された穀粒は2つの処理網28,38を介して選別室7に落下排出され、最終的にグレンタンク14内に回収される。
【0021】
既述のようにカバー体31は一定の強度(剛性)が求められる反面、着脱時の取扱いの容易性が求められるため、上側カバー36と下側カバー37のいずれか一方を薄い板材を用いて軽量化し、他方を比較的厚みのある板材を用いて剛性を与える(強度アップを図る)等の工夫が望ましい。図示する例では前述したように下側カバー37の板材の板厚を大きくして受止め側のカバーの強化を図り、下側カバー37にフレーム部材の機能をもたせている。
【0022】
以上のように構成される脱穀機1によれば、上側カバー36を取り外すことにより、処理室24内の藁屑除去等のメンテナンスを容易に行うことが可能になる他、案内カバー41を取り外すことにより、開口部43を介して選別室7内の掃除等のメンテナンスを簡単に行うことができる。また、下側カバー37を取り外して処理室24を大きく開放させることにより、処理網28の着脱作業等のメンテナンスをより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】脱穀機の内部構造を示す側面図である。
【図2】扱室と処理室の配置構造を示す平面図である。
【図3】脱穀機の処理室外観を示す左側斜視図である。
【図4】脱穀機の処理室の構造を示す分解斜視図である。
【図5】下側カバーを取り外した脱穀機の処理室の構造を示す分解斜視図である。
【図6】処理室の上下カバーの構造を示す断面図である。
【図7】処理室の案内カバー及び処理網部の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 脱穀機(脱穀装置)
3 扱胴
4 扱室
7 選別室
24 処理室
27 処理胴
31 カバー体
36 上側カバー(上側カバー体)
37 下側カバー(下側カバー体)
38 処理網
41 案内カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に扱胴(3)を回転自在に支持した扱室(4)と、室内に処理胴(27)を回転自在に支持した処理室(24)と、前記扱胴(3)による処理物及び処理胴(27)による処理物の選別処理を行う選別室(7)とを備え、処理室(24)を扱室(4)の側方に配置し、扱室(4)と処理室(24)とを連通口(26)を介して連通させ、扱室(4)から遠い側の処理室(24)の側壁を着脱可能なカバー体(31)によって構成した脱穀装置において、カバー体(31)を下側カバー体(37)と上側カバー体(36)とに上下分割形成し、下側カバー体(37)と上側カバー体(36)とを各別に取り外し可能に構成した脱穀装置。
【請求項2】
上側カバー体(36)と下側カバー体(37)とを板厚が異なるように形成した請求項1の脱穀装置。
【請求項3】
上側カバー体(36)の板厚に対して下側カバー体(37)の板厚が厚くなるように形成し、下側カバー体(37)に処理網(38)を設け、処理網(38)から漏下する処理物を選別室(7)に案内する案内カバー(41)を下側カバー体(37)に着脱可能に取付けた請求項1又は2の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−125059(P2009−125059A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307029(P2007−307029)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】