説明

脱穀装置

【課題】扱室に内装の扱胴の下方に配設した円弧型の受け網を外側受け網と内側受け網とにし、内側受け網をこれに係合するストッパー片にて所定の装着位置に保持する一方、外側受け網を着脱可能に装着して成る脱穀装置において、各受け網の掃除や交換等の作業性の向上を図る。
【解決手段】ストッパー片26を可動式にして、外側受け網22を所定の装着位置に取り付けたとき、及び外側受け網22を所定の装着位置から取り外すときに、内側受け網23に対する係合が外れる構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コンバイン等に搭載される脱穀装置に関するもである。
【背景技術】
【0002】
一般に,コンバインに搭載される脱穀装置においては,扱室に内装した扱胴の下側に円弧型にした受け網を装着して,扱胴にて脱穀した穀粒を,この受け網より下方に漏下するように構成している。
【0003】
先行技術としての特許文献1及び2等には,
「前記円弧型の受け網を,前記扱胴の軸線方向から見て外側受け網と内側受け網とにして,この各受け網を,前記扱室の側面の開口から円弧に沿って出し入れ可能に構成し,前記内側受け網を,ストッパー片への係合によって所定の装着位置に保持する一方,前記外側受け網を扱室側に着脱可能に装着し,この外側受け網を,扱室外に取り外することに続いて,その奥に位置する前記内側受け網を,所定の装着位置から引き出して扱室外に取り外すことができるように構成する。」
ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−067463号公報
【特許文献2】特開平07−203752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,これら先行技術は,そのいずれも,前記内側受け網に対するストッパー片が固定式であることにより,前記内側受け網を,所定の装着位置から引き出して扱室外に取り外すに際しては,作業者は,外側受け網を取り外したのち,手を扱室の中に入れて,前記内側受け網を持ち上げて,前記ストッパー片に対する係合を外したのち引き出するようにしなければならないから,この取り外し作業が面倒であり,作業性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「扱室に内装した扱胴の下方に配設した円弧型の受け網を,前記扱室の開口から円弧に沿って出し入れ可能な外側受け網と内側受け網とにし,前記内側受け網を,これに係合するストッパー片にて所定の装着位置に保持する一方,前記外側受け網を着脱可能に装着して成る脱穀装置において,
前記ストッパー片を,可動式にして,前記外側受け網を所定の装着位置に取り付けたとき,及び前記外側受け網を所定の装着位置から取り外すときに,前記内側受け網に対する係合が外れる構成にした。」
ことを特徴としている。
【0008】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記ストッパー片を,前記内側受け網を所定の装着位置にしたとき,この内側受け網における重量を当該ストッパー片への係合にて支持するようにした部位に位置する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0009】
更にまた,請求項3は,
「前記請求項1の記載において,前記外側受け網と前記内側受け網との間に,着脱可能に連結させるフックバネを設ける構成にした。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によると,内側受け網を所定の装着位置に装着すると,この内側受け網は,これにストッパー片が係合することにより,前記した所定の装着位置に保持される。
【0011】
次いで,外側受け網を所定の装着位置に装着することにより,前記ストッパー片は,前記内側受け網に対する係合が外れた状態になる。
【0012】
そして,この係合が外れた状態は,前記外側受け網を所定の装着位置から取り外すときにおいて維持される。
【0013】
そこで,前記外側受け網を,所定の装着位置から取り外すことにより,これに続いて,その奥の内側受け網を,ストッパー片にかかわらず,所定の装着位置から引き出して扱室外に取り外すことができる。
【0014】
これにより,前記内側受け網と前記外側受け網とを,その順番で所定の装着位置に装着することができるものでありながら,奥に位置する前記内側受け網を,前記先行技術のように,ストッパー片に対する係合を手で解除する操作を必要とすることなく,所定の装着位置から容易に引き出して,扱室外に取り外すことができるから,各受け網の掃除や交換等の作業性を大幅に向上できる。
【0015】
また,請求項2によると,前記外側受け網を取り外すと,これに次いで,前記内側受け網が,当該内側受け網における重量によって,所定の装着位置から取り出し方向に引き出されることになるから,奥に位置する前記内側受け網を所定の装着から引き出することがより容易になり,作業性をより向上できる。
【0016】
更にまた,請求項3によると,前記外側受け網を取り外すことにより,これにフックバネにて連結されている内側受け網を,奥における所定の装着位置から引き出すことができるとともに,前記外側受け網と一緒に取り外すことができるから,奥に位置する前記内側受け網を引き出して取り外すことが一層容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインに搭載した脱穀装置の縦断正面図である。
【図4】図1のIV−IV視断面図である。
【図5】脱穀装置における受け網の要部拡大図で分解した状態を示している。
【図6】脱穀装置における受け網の要部拡大図で取付けた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図6の図面について説明する。
【0019】
図1及び図2は,自走自脱型のコンバインを示しており,このコンバイン1は,従来から良く知られているように,走行クローラ2等の走行装置にトラックフレーム2aを介して支持された車体3に,脱穀装置4を搭載し,この車体3の前部における刈取装置40にて刈り取った穀稈を,前記脱穀装置4におけるフィードチエン5に送り,前記脱穀装置4において脱穀するという構成である。
【0020】
なお,前記脱穀装置4において脱穀され,選別された穀粒は,前記車体3に搭載の穀粒タンク6に一旦蓄えられ,この穀粒タンク6から搬出オーガー7より搬出されるものであり,また,前記車体3には,前記脱穀装置4及び穀粒タンク6のほかに,動力源としてのエンジン8及び運転席キャビン9等が設けられている。
【0021】
前記脱穀装置4は,図3及び図4に示すように,前記コンバイン1の前後方向に延びる軸線を有する扱胴11を内装した扱室10を備え,この扱室10の外側の側面には,前記フィードチエン5が配設され,このフィードチエン5にて後方に搬送される穀稈を,前記扱室10内において前記扱胴11にて脱穀するという構成であり,前記扱室10の下部には,前記扱胴11の略下半分を囲うように円弧型にした受け網12が設けられている。
【0022】
前記扱室10内の扱胴11にて脱穀された穀粒は,前記受け網12より漏下し,その下方に配設した揺動選別機構13において,唐箕フアン14から吹き出されたのち排塵フアン15にて吸引される唐箕風により,藁屑等を除くように風選別され,受け樋16に集められ,そして,揚穀塔17にて搬送されて前記穀粒タンク6に蓄えられる。
【0023】
また,脱穀の終わった空の穀稈は,フィードチエン5から排出コンベア18に受け継がれ,更に後方に送られ,カッター機構19にて細かく切断されたのち排出される。
【0024】
前記扱室10のうち前記フィードチエン5側の側面には,蓋板21にて開閉される開口20を備えている。
【0025】
一方,前記受け網12は,前記開口20に隣接する外側受け網22と,これよりも奥に位置する内側受け網23とで構成され,これら外側受け網22及び内側受け網23の両方は,前記開口20から出し入れできるように,図示しない円弧状レールにて支持されるという構成になっている。
【0026】
前記扱室10内のうち,前記外側受け網22と前記内側受け網23とが接合する部分には,前記扱胴11の軸線方向に延びる支持部材24が固着されていて,この支持部材24に固着した受け板25の上面に,前記外側受け網22の終端におけるフランジ22aと,前記内側受け網23の始端におけるフランジ23aとの両方を載せることによって,前記内外の両受け網22,23を前記支持部材24にて支持するように構成している。
【0027】
前記支持部材24における受け板25には,図5及び図6に示すように,ストッパー片26が設けられている。
【0028】
このストッパー片26は,ピン27を中心して自在に回転する可動式であり,前記内側受け網23が所定の装着位置にあるとき,その始端におけるフランジ23aに係合することにより,前記内側受け網23を所定の装着位置に保持するという構成である。
【0029】
このストッパー片26には,当該ストッパー片26が前記内側受け網23に対して係合する状態に付勢するばね28が設けられている。
【0030】
更に,前記ストッパー片26には,前記外側受け網22の終端におけるフランジ22aが接当するガイド面29を備えており,前記ストッパー片26は,そのガイド面29に前記外側受け網22におけるフランジ22aが接当することにより,前記内側受け網23に対する係合が外れるように構成されている。
【0031】
つまり,前記ストッパー片26は,そのガイド面29に,前記外側受け網22の終端におけるフランジ22aが接当することにより,前記外側受け網22を所定の装着位置に取り付けたとき,及び前記外側受け網22を所定の装着位置から取り外すときに,前記内側受け網23に対する係合が外れるという構成になっている。
【0032】
この構成において,前記内側受け網23を所定の装着位置に装着すると,この内側受け網23は,図5に示すように,これにストッパー片26が係合することにより,前記内側受け網23は,前記した所定の装着位置に保持される。
【0033】
なお,前記ストッパー片26の内側受け網23への係合は,これに設けたばね28にて自動的に行なわれる。つまり,前記内側受け網23は,これを押し込むことで,所定の装着位置に取り付け(保持)できる。
【0034】
次いで,前記外側受け網22を所定の装着位置に装着するように取付ける。これにより,前記ストッパー片26は,図6に示すように,そのガイド面29に前記外側受け網22におけるフランジ22aが接当することによって,前記内側受け網23に対する係合が外れた状態になる。
【0035】
前記ストッパー片26の前記外側受け網22による係合解除の状態は,そのガイド面29の存在によって,前記外側受け網22を所定の装着位置から取り外したときにおいても維持されるから,前記外側受け網22を所定の装着位置から取り外すことにより,これに続いて,前記内側受け網23を,ストッパー片26にかかわらず,所定の装着位置から引き出して,扱室外に取り外すことができる。
【0036】
これにより,前記内側受け網23と前記外側受け網22とをその順番に装着することができるものでありながら,奥に位置する前記内側受け網23を,ストッパー片26に対する係合を解除する操作を必要とすることなく,所定の装着位置から引き出して,扱室10の外に取り外すことができる。
【0037】
この場合,別の実施の形態においては,前記内側受け網23の終端におけるフランジ23a及びこれに係合する前記ストッパー片26を,例えば,図4に示すように,前記扱胴11の中心を通る鉛直線30よりも適宜寸法eだけ内側に偏芯した位置にするというように,前記ストッパー片26には,前記内側受け網23を所定の装着位置したときにこの内側受け網23における重量が当該ストッパー片26に作用するという構成にする。
【0038】
この構成にすることにより,前記外側受け網22を取り外すと,これに次いで,前記内側受け網23が,前記ストッパー片26の係合から外れた状態で,当該内側受け網23における重量によって,所定の装着位置から取り出し方向に自動的に引き出されることになるから,前記内側受け網23を所定の装着位置から引き出することが簡単にできる。
【0039】
更に,別の実施の形態においては,図5及び図6に示すように,前記外側受け網22の終端におけるフランジ22aに,板ばね製のフックバネ31を設けて,このフックバネ31を,前記内側受け網23の始端におけるフランジ23aに着脱可能に係合することにより,前記外側受け網22と,前記内側受け網23とを着脱可能に連結するという構成にする。
【0040】
この構成によると,前記外側受け網22を取り外すことにより,これにフックバネ31にて連結されている奥の内側受け網23を,所定の装着位置から引き出すことができるとともに,前記外側受け網22と一緒に取り外すことができるから,奥に位置する前記内側受け網を引き出して取り外すことが一層容易にできる。
【符号の説明】
【0041】
1 コンバイン
4 脱穀装置
10 扱室
11 扱胴
12 受け網
20 扱室の開口
21 蓋板
22 外側受け網
23 内側受け網
24 支持部材
25 受け板
26 ストッパー片
27 ピン
28 ばね
29 ストッパー片のガイド面
31 フックバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に内装した扱胴の下方に配設した円弧型の受け網を,前記扱室の開口から円弧に沿って出し入れ可能な外側受け網と内側受け網とにし,前記内側受け網を,これに係合するストッパー片にて所定の装着位置に保持する一方,前記外側受け網を着脱可能に装着して成る脱穀装置において,
前記ストッパー片を,可動式にして,前記外側受け網を所定の装着位置に取り付けたとき,及び前記外側受け網を所定の装着位置から取り外すときに,前記内側受け網に対する係合が外れる構成にしたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記ストッパー片を,前記内側受け網を所定の装着位置にしたとき,この内側受け網における重量を当該ストッパー片への係合にて支持するようにした部位に位置する構成にしたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
前記請求項1の記載において,前記外側受け網と前記内側受け網との間に,着脱可能に連結させるフックバネを設ける構成にしたことを特徴とする脱穀装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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