説明

脱穀装置

【課題】緊急停止時に速やかに供給搬送装置が停止するコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀クラッチ(84)が接続された場合に、フィードチェン(10b)の駆動輪(51)を正回転させる状態に切換え、緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記脱穀クラッチ(84)を遮断すると共に、前記切換機構(88)を、前記駆動輪(51)を逆転状態となる側に切換えて前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等に搭載する脱穀装置は、コンバインの機体を走行させて自動的に穀稈を供給して脱穀を行なう形態の作業が中心的であるが、定置式の脱穀装置や、コンバインに搭載した脱穀装置に作業者が手刈りした穀稈を手動で供給することがある。この様な手動供給作業においては、作業者が、穀稈の刈取に用いた作業用具等が誤って投入されたり、前述の自動供給作業においては圃場の一部に密生している雑草等が脱穀装置に供給されてしまうことにより、脱穀装置に穀稈を供給する供給搬送装置や、穀稈の脱粒処理を行う扱室に詰まることで機械の故障を招く虞があるため、従来のコンバインにおいては、特許文献1に示す如く異常を察知した作業者が緊急停止手段を操作し、この操作に基づいて脱穀装置の駆動を停止したり、脱穀装置を駆動する原動機を停止したりする構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−60288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術は、脱穀装置、或いはこの脱穀装置の伝動上手側の原動機を停止するのみであるため、供給搬送装置による脱穀装置への異物の供給や搬送を速やかに停止することが困難であった。即ち、脱穀装置に設けられた扱胴をはじめとする回転体や選別棚等の揺動体の慣性力によって供給搬送装置が暫くの間動き続けるために、詰まり等の問題を拡大する虞があった。
そこで本発明は上記問題を解消し、もって脱穀作業の能率を高めることとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(12)を内部に備える扱室(11)の左右一側に、駆動輪(51)と従動輪(50)とに巻き回したフィードチェン(10b)と、該フィードチェン(10b)に向けて付勢された狭扼杆(10a)とで穀稈の株元側を狭持しながら搬送する供給搬送装置(10)を備えた脱穀装置において、エンジン(85)から扱胴(12)を駆動する扱胴軸(12b)に至る脱穀駆動経路に該扱胴軸(12b)への駆動力の伝達を接続及び遮断可能な脱穀クラッチ(84)を設け、前記扱胴軸(12b)から分岐して前記駆動輪(51)に動力を伝達するフィードチェン駆動経路を形成し、該フィードチェン駆動経路には、前記駆動輪(51)を前記脱穀駆動経路からの動力により正回転させる脱穀作業状態と、該駆動輪(51)を前記脱穀駆動経路からの動力により逆回転させる逆転状態とに切換可能な切換機構(88)を設け、前記脱穀クラッチ(84)が接続された場合に、前記切換機構(88)を脱穀作業状態となる側に切換え、緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記脱穀クラッチ(84)を遮断すると共に、前記切換機構(88)を逆転状態となる側に切換えて前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする脱穀装置とした。
請求項2記載の発明は、前記フィードチェン駆動経路を、前記扱胴軸(12b)から駆動輪(51)に動力を伝達する第一伝達経路(F)と、前記扱胴軸(12b)から逆転ギア機構(86)を介して駆動輪(51)に伝達する第二伝達経路(R)より構成し、前記切換機構(88)を、第一伝達経路(F)に設けた正転クラッチ(58)と、第二伝達経路(R)に設けた逆転クラッチ(59)とより構成し、前記脱穀クラッチ(84)の接続状態においては、正転クラッチ(58)を接続すると共に逆転クラッチ(59)を切断して、前記エンジン(85)からの駆動力により駆動輪(51)を正回転で駆動し、前記緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記脱穀クラッチ(84)及び正転クラッチ(58)を遮断すると共に、逆転クラッチ(59)を接続して、前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とした。
請求項3記載の発明は、前記フィードチェン駆動経路を、扱胴軸(12b)の後端部から動力を伝達される油圧ポンプ(64)と、該油圧ポンプ(64)からの送油によって駆動する油圧モータ(65)とを設け、前記油圧モータ(65)の出力軸(70)に前記駆動輪(51)を軸装し、前記油圧ポンプ(64)油圧モータ(65)への送油方向を切換えることで前記駆動輪(51)を正回転及び逆回転させる構成とし、前記脱穀クラッチが接続された場合に、油圧モータ(65)の駆動力により駆動輪(51)を正回転させ、前記緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記油圧モータ(65)の出力回転を逆回転させて前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とした。
請求項4記載の発明は、前記扱室(11)の後方に、前記フィードチェン(10b)から脱穀済みの排稈を引継いで搬送する排稈搬送装置(66)を設け、該排稈搬送装置(66)を駆動する駆動軸(71)に扱胴軸(12b)からの動力を伝達する構成とし、前記油圧ポンプ(64)は前記駆動軸(71)の一端より回転動力を入力する構成としたことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、緊急停止手段(83)の操作が行なわれると、脱穀クラッチ(84)によってエンジン(85)からの駆動力を遮断すると共に、フィードチェン駆動経路を介して扱胴(12)と伝動が接続されているフィードチェン(10b)の駆動輪(51)に、脱穀時の駆動力によるフィードチェン(10b)の正回転の慣性力に対して逆回転で扱胴(12)の慣性回転力を入力するので、フィードチェン(10b)が減速又は停止又は逆転し、フィードチェン(10b)と挟持杆(10a)との間で挟持された異物による脱穀装置の破損などの問題の拡大を防ぐことができる。
更に、脱穀クラッチ(84)を接続すると切替機構(88)を駆動輪(51)を正回転させる状態に切換えるので、詰まった異物を除去した後に、速やかに脱穀作業を再開でき、作業能率を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、簡素な構成で駆動輪(51)への伝達動力の回転方向を切り替えることができ、上記効果を奏する脱穀装置を安価に提供できる。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、油圧ポンプ(64)から油圧モータ(65)への送油方向を切換えることで、駆動輪(51)を正回転と逆回転とに切換可能であるので、切換に要する時間を短縮することができ、フィードチェン(10b)と挟持杆(10a)とによって挟持された異物による脱穀装置の破損を効果的に防止できる。また、油圧ポンプ(64)と油圧モータ(65)とを分散して配置できるので、前記フィードチェン駆動経路を簡素な構成とすることができ、フィードチェン(10b)による穀稈や穀粒の移送を妨げない。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明による効果に加えて、扱胴軸(12b)から油圧ポンプ(64)及び排稈搬送装置(66)への伝動経路を兼用させることにより伝動構成を簡単化して、扱室(11)後方での穀稈の搬送を妨げず供給搬送装置(10)の詰まりを更に効果的に防止できる。
また、扱胴軸(12b)からフィードチェン(10b)及び排稈搬送装置(66)を駆動する構成であるため、脱穀負荷によって扱胴(12)の回転速度が低下した場合、それに伴いフィードチェン(10b)及び排稈搬送装置(66)の回転速度も低下するので、フィードチェン(10b)と排稈搬送装置(66)との意図しない駆動速度差の発生を防止し、穀稈搬送を円滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの平面図
【図2】コンバインの側面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の背断面図
【図5】脱穀装置の背断面図
【図6】脱穀装置の平断面図
【図7】脱穀装置の側面図
【図8】脱穀装置の平面図
【図9】脱穀装置の背断面図
【図10】脱穀装置の側面図
【図11】排出装置の換装機構を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面を参照し、説明する。
図1及び図2に示すように本発明を実施するコンバインは、機体フレーム1の下側には左右一対のクローラ2、機体の上側に脱穀装置3を設け、該脱穀装置3の右側に貯留装置5とその前側の操作席6を設け、機体前方には刈取装置4を設ける。貯留装置5の後側には、該貯留装置5に一時貯留した穀粒を外部に排出する排出装置7を設けている。
【0009】

(脱穀装置)
前記脱穀装置3は扱室11などを含む上部の脱穀部3aと、下部の揺動選別棚21等から成る選別部3bとで構成される。脱穀装置3の左右一側には供給搬送装置10を備えている。
この供給搬送装置10は、フィードチェン10bとこのフィードチェン10bに向けて付勢した狭扼杆10aとからなり、これらの間で穀稈の株元側を挟み込んで搬送する。フィードチェン10bは駆動スプロケット51と従動スプロケットに巻き掛けた無端チェンであり、狭扼杆10aは、互いに屈折可能に連結した複数の狭扼レール52bを脱穀装置3の機枠に取り付けた固定部52cに対してスプリング52aで下向き付勢する構成である。
供給搬送装置10の側部に対応する脱穀装置3の側面には緊急停止操作手段83が設けられている。図2においては緊急停止操作手段83は円形のスイッチを示しているが、前後方向に長い形状としたり、複数設けたりすることもできる。
(脱穀部)
複数の扱歯12aを植設した扱胴12を有する扱室11は、下半周部に扱網13を張設し、上半周部は脱穀装置3の前記供給搬送装置10と反対側を支点に上方回動し、扱室11の上側を開放可能に構成している。前記扱胴12は前側板11aと後側板11cとのに軸架している。扱室11における排塵処理室20との連通口20aの直前には扱歯12aの先端よりも扱胴12の外周に接近する高さの仕切板11bを設けている。
後側板11cにはフィードチェン10bで後方へ移送される脱穀済み穀稈が通過する排稈口11dを開口している。
扱室11の供給搬送装置10との反対側には二番処理室18と排塵処理室20を設けて、夫々二番処理胴19と排塵処理胴21を軸架している。二番処理室18は選別部3bからの二番物を後端部で受け入れて、前側へ移送しながら穀粒の単粒化と、処理物中の來雑物の分離を行い、選別部3bの前端に還元する。排塵処理室20は前記扱網13から漏下せず扱室11内を後方に移送されてきた藁屑などを中心とする処理物を取込み、藁屑の細断等を行った後、選別部3bの後側部へ落下させる。
(選別部)
選別部3bは前記脱穀部3aの下側に、前後の往復運動によって穀粒を篩い選別する揺動選別棚30を設けて、この揺動選別棚30は穀稈の搬送方向上手側から移送棚31、選別シーブ32、ストローラック34を順に設け、選別シーブ32の下側位置には精選別網42を設けて構成する。揺動クランク軸35には脱穀装置3の供給搬送装置10側より回転駆動力を入力され、揺動選別棚を駆動する。
移送棚31は前後方向複数の左右方向に一様な移送突起31aを設け、前記扱網13より漏下した穀粒と前記二番処理胴19の前端から放出される二番還元物を後方に移送する。選別シーブ32は、移送棚31より引き継いだ被処理物を篩い選別し、下方の精選別網42へ穀粒のみを落下させる。選別シーブ32は前後方向に対する後上がりの傾斜角度を調節自在な角度可変シーブであり、漏下隙間を自在に調節できる。扱室終端に開口した排塵口(脱穀後の穀稈出口)の下方には、傾斜姿勢の異なる2種類のラックを交互に左右方向複数配置した第一ストローラック44が設けている。ストローラック34は上縁を凹凸形状とし、左右方向に複数設けており、基端を選別シーブ32の後方で、揺動選別棚30の左右両側板に固定して、先端は自由端としている。
選別部3bの下部は選別風を起風する唐箕35を設け、選別風送風方向の下手側へ順に、唐箕35を包囲する唐箕ケーシング36の後方に開口した送風口近傍の風向板41、主に単粒化した穀粒を回収する第一集穀樋37と後上がり傾斜面によって落下してきた被処理物を一番集穀樋37に案内する一番棚板38、枝梗付着粒や來雑物を多く含む被処理物を前記二番処理室18に還元する二番集穀樋39と二番棚板40を設けている。
前記揺動選別棚30の後部上側には、唐箕35の選別風送風方向略延長線上の位置に排塵ファンケーシング46の吸塵口46aを開口した排塵ファン45を設けており、唐箕35の選別風によって巻き上げられた藁屑や塵埃を機外後方へと排出する。
(フィードチェンの第一実施例)
前記フィードチェン10bの駆動形態について、図5から図7に基づいて説明する。
フィードチェン10bは扱胴12からの駆動経路によって駆動される構成であり、扱胴12の回転軸である扱胴軸12bから中継軸55へと伝達する2つの経路を形成している。一方は、フィードチェン10bを図7における(H)方向に移動させる方向で駆動する第一伝達経路Fであり、他方はフィードチェン10bを図7における(E)方向に移動させる方向で駆動する第二伝達経路Rである。
第一伝達経路Fは、前記扱胴軸12bの後端部に設けた出力プーリ53と、中継軸55に軸支した第一中継プーリ55aに掛け回した第一伝動ベルト54によって構成している。
第二伝動経路Rは、扱胴軸12bに設けた駆動側ギア53gに従動側ギア54gに噛み合わせ、この従動側ギア56gと一体の逆転入力プーリ56と、前記中継軸55の第二中継プーリ55bとに、第二伝動ベルト57を掛け回している。
なお、第一伝動ベルト54には正転クラッチ58を、第二伝動ベルト57には逆転クラッチ59を設けている。
なお、中継軸55からは、第一ギアボックス60、駆動軸61、第二ギアボックス62、駆動軸63と、駆動軸63の端部に設けたプーリ63aとプーリ51pに巻き掛けたベルト64を介して駆動スプロケット51へと駆動力が伝達され、フィードチェン10bが駆動される。
(フィードチェンの第二実施例)
第二実施例は、図8から図10に示すように、扱胴軸12bからの駆動力により駆動される油圧ポンプ64と、フィードチェン10bを駆動する油圧モータ65とを閉油圧回路Cで接続し、公知の静油圧式無段変速装置としたものである。
油圧ポンプ64は、前記扱胴軸12bに設けた出力プーリ53と、ポンプ駆動軸(駆動軸)71に固着した入力プーリ69との間にベルト67を掛け回して常時張りのテンショナー68によって張り状態に維持している。そしてポンプ駆動軸71の一端から前記油圧ポンプ64に駆動力を入力している。なお、ポンプ駆動軸71の他端側は、排稈駆動ギアボックス74に入力し、該排稈駆動ギアボックス74から排稈駆動軸72を延出し、この排稈駆動軸72の先端に設けた排稈株元スプロケット72aで排稈株元搬送チェン66aを駆動し、当該チェンによって排稈穂先軸73の排稈従動スプロケット73aが駆動されることで、排稈穂先軸73に設けた排稈穂先スプロケット73aで、排稈穂先チェン66bが駆動される。
油圧モータ65は、前記駆動スプロケット51と一体の出力軸70に回転駆動力を出力する構成である。
油圧ポンプ64及び油圧モータ65は前述したように、第一ライン87aと第二ライン87bとからなる接続油路87によって接続され、これらによって閉油圧回路Cを形成している。
接続油路87は前記扱室11の後側板11cにおける排稈口11dを迂回して配策しており、揺動選別棚30上を後方へ移送される被処理物や、フィードチェン11dにより後方へ移送される穀稈の流れを阻害しない。
また、油圧ポンプ64は排稈口11dや排塵処理室20の下方を避けて11cに取りつけている。また、油圧モータ65も排稈口11dを避けて配置している。
その為、フィードチェン10bや排稈搬送装置66により搬送される穀稈と干渉せず、円滑に穀稈を搬送することができる。
油圧ポンプ64内には、図示は省略するが、ポンプ駆動軸71の入力回転速度に対する出力軸70の出力回転速度を変速するためにトラニオン軸で軸支した斜板が設けられこの斜板の傾斜角度を変更することで、出力軸70の出力回転速度が変速される。
コンバインの通常収穫作業時は、クローラ2の駆動速度に応じた駆動速度となるよう出力軸70の出力回転を正回転の範囲内で変速し、後述の緊急停止スイッチ83の操作を検出した場合は、出力回転が逆回転となるよう変速する。
(フィードチェンの正逆転切替)
通常の刈取収穫作業においては、フィードチェン10bを前記(H)方向に移動させるべく駆動し、前記脱穀装置3におけるフィードチェン10bの搬送始端部近傍に設けた緊急停止スイッチ83の操作を検出した場合、フィードチェン10bを(E)方向に移動させるべく駆動する。
緊急停止手段(83)の操作が行なわれると、脱穀クラッチ(84)によってエンジン(85)からの駆動力を遮断して、フィードチェン駆動経路を介して扱胴(12)と伝動が接続されているフィードチェン(10b)の駆動輪(51)に、脱穀時の駆動力によるフィードチェン(10b)の正回転の慣性力に対して逆回転で扱胴(12)の慣性回転力を入力するので、フィードチェン(10b)が減速又は停止又は逆転し、フィードチェン(10b)と挟持杆(10a)との間で挟持された異物による脱穀装置の破損などの問題の拡大を防ぐことができる。
また、駆動輪(51)が逆回転の動力が伝動されると、フィードチェン(10b)と挟持杆(10a)との間の部位はチェンの緩み側となる構成であるので、フィードチェン(10b)と挟持杆(10a)とによる挟持力が弱くなり、フィードチェン(10b)が停止する前に作業者が異物を引き抜きやすくなり、脱穀装置の破損を効果的に防止できる
(穀粒横移送筒換装機構)
図11には前記排出装置7を示す。排出装置7は前記貯留装置5の内部に貯留された穀粒を揚上する縦螺旋(図示省略)を内装する縦移送筒75と、該縦移送筒75の上端に設けた中間筒76、基部を中間筒76に支持した横移送筒77より成る。
横移送筒77は、穀粒の移送距離が長いため、収穫作物の種類によっては、横移送筒77の内部に設けた横移送螺旋77aによる移送作用が適当でないことがある。移送作用が強すぎると、穀粒が損傷して品質の低下を招くし、移送作用が弱すぎると、横移送筒77の内部で穀粒の詰まりを生じて、排出装置7の故障等の問題を招く。しかしながら、横移送筒77の換装にあたっては、重量物であることから、特別な設備無しに交換作業を行うことを困難であった。こうした現状を鑑み、換装の容易な排出装置7の構成としたものである。
中間筒76の中間螺旋76aの接合部82bと横移送筒77の横移送螺旋77aの接合部82bとは、分離可能である。
中間筒76には、横移送筒77の先端まで延在する支持梁78を設けている。中間筒76は縦移送筒75に回転自在であり、縦移送筒75と支持梁78との間に設けた油圧シリンダ81が伸縮することで支持梁78が先端側を上下回動する。横移送筒77はこの支持梁78に設けた支持ステー78a,78bにボルト等の固定具で連結されることで、支持梁と一体的に上下回動自在である。
支持梁78の先端側には保持フック79を設け、基端側にはフック80aを設け、フック80aは巻取リール80cに巻き付けたワイヤ80bの先端に取り付けてあり、巻取リール80cを電動モータ(図示省略)によって回転させてワイヤ80bを繰り出す。
しかして、横移送筒77を支持ステー78a,78bに取り付けている固定具を外し、電動モータを作動させることで、横移送筒77を安全に地面に下ろすことができ、取り外しが容易となる。取付時にも重量物である横移送筒77をフック80aと保持フック79に掛け、ワイヤ80bの巻き取りを行って取付ることができ、交換作業が効率的に行える。
【符号の説明】
【0010】
10 供給搬送装置
10a 挟扼杆
10b フィードチェン
11 扱室
12 扱胴
12b 扱胴軸
50 従動輪
51 駆動輪
58 正転クラッチ
59 逆転クラッチ
64 油圧ポンプ
65 油圧モータ
66 排稈搬送装置
70 出力軸
71 駆動軸
85 エンジン
83 緊急停止操作手段
84 脱穀クラッチ
85 エンジン
86 逆転ギア機構
88 切換機構
F 第一伝達経路
R 第二伝達経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(12)を内部に備える扱室(11)の左右一側に、駆動輪(51)と従動輪(50)とに巻き回したフィードチェン(10b)と、該フィードチェン(10b)に向けて付勢された狭扼杆(10a)とで穀稈の株元側を狭持しながら搬送する供給搬送装置(10)を備えた脱穀装置において、
エンジン(85)から扱胴(12)を駆動する扱胴軸(12b)に至る脱穀駆動経路に該扱胴軸(12b)への駆動力の伝達を接続及び遮断可能な脱穀クラッチ(84)を設け、
前記扱胴軸(12b)から分岐して前記駆動輪(51)に動力を伝達するフィードチェン駆動経路を形成し、該フィードチェン駆動経路には、前記駆動輪(51)を前記脱穀駆動経路からの動力により正回転させる脱穀作業状態と、該駆動輪(51)を前記脱穀駆動経路からの動力により逆回転させる逆転状態とに切換可能な切換機構(88)を設け、
前記脱穀クラッチ(84)が接続された場合に、前記切換機構(88)を脱穀作業状態となる側に切換え、緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記脱穀クラッチ(84)を遮断すると共に、前記切換機構(88)を逆転状態となる側に切換えて前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記フィードチェン駆動経路を、前記扱胴軸(12b)から駆動輪(51)に動力を伝達する第一伝達経路(F)と、前記扱胴軸(12b)から逆転ギア機構(86)を介して駆動輪(51)に伝達する第二伝達経路(R)より構成し、前記切換機構(88)を、第一伝達経路(F)に設けた正転クラッチ(58)と、第二伝達経路(R)に設けた逆転クラッチ(59)とより構成し、前記脱穀クラッチ(84)の接続状態においては、正転クラッチ(58)を接続すると共に逆転クラッチ(59)を切断して、前記エンジン(85)からの駆動力により駆動輪(51)を正回転で駆動し、前記緊急停止操作手段(83)の操作を検出した場合に、前記脱穀クラッチ(84)及び正転クラッチ(58)を遮断すると共に、逆転クラッチ(59)を接続して、前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記フィードチェン駆動経路を、扱胴軸(12b)の後端部から動力を伝達される油圧ポンプ(64)と、該油圧ポンプ(64)からの送油によって駆動する油圧モータ(65)とを設け、前記油圧モータ(65)の出力軸(70)に前記駆動輪(51)を軸装し、前記油圧ポンプ(64)から油圧モータ(65)への送油方向を切換えることで前記駆動輪(51)を正回転及び逆回転させる構成とし、前記脱穀クラッチが接続された場合に、油圧モータ(65)の駆動力により駆動輪(51)を正回転させ、前記緊急停止手段(83)の操作を検出した場合に、前記油圧モータ(65)の出力回転を逆回転させて前記扱胴(12)の慣性力により駆動輪(51)を減速又は停止又は逆転させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱室(11)の後方に、前記フィードチェン(10b)から脱穀済みの排稈を引継いで搬送する排稈搬送装置(66)を設け、該排稈搬送装置(66)を駆動する駆動軸(71)に扱胴軸(12b)からの動力を伝達する構成とし、前記油圧ポンプ(64)は前記駆動軸(71)の一端より回転動力を入力する構成としたことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157285(P2012−157285A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19108(P2011−19108)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】