説明

脱穀装置

【課題】排塵処理物を排塵処理胴の外周方向に連れ回し、排塵処理物の脱粒分離処理を充分に行ない、穀粒の回収効率を高める。
【解決手段】扱室(3)終端からの排塵処理物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴(12)の外周に送り螺旋体(10)を巻回し、該送り螺旋体(10)の螺旋ピッチ間には処理物を排塵処理胴(12)の外周方向に連れ回す処理板体(16)を設ける。また、処理板体(16)は、扱室(3)との連通口(14)よりも後方位置において複数個設置する。また、理板体(16)は、送り螺旋体(10)の外周縁部の高さよりも低く設定する。また、処理板体(16)は、処理物の搬送に抵抗を付与する方向に傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扱室内で発生する排塵処理物を受け入れて処理する排塵処理胴を備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室終端からの排塵処理物を受け入れて処理する排塵処理胴は、外周に送り螺旋体を巻回して受け入れた排塵処理物を後方に搬送しながら処理網との間で処理する構成のものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−273628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の排塵処理胴では、送り作用が優先されて充分な処理が行なえず、藁屑内から穀粒が回収されないまま機外に排出されてしまい、ロスが多量に発生する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(3)終端からの排塵処理物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴(12)の外周に送り螺旋体(10)を巻回し、該送り螺旋体(10)の螺旋ピッチ間には処理物を排塵処理胴(12)の外周方向に連れ回す処理板体(16)を設けてある脱穀装置する。
【0006】
扱室(3)内では扱胴の回転によって挿入された穀稈の穂先側部に作用して脱穀処理される。
扱室(3)終端からの排塵処理物は、連通口から排塵処理室(13)内の始端部に取り込まれ、回転する排塵処理胴(12)外周の送り螺旋体(10)によって後方に搬送されながら処理網との間で脱粒処理される。
【0007】
この際、処理板体(16)の作用によって処理物が円周方向に積極的に持ち回りされるので、排塵処理物の処理が充分に行なえ、穀粒の回収効率を高めることができる。
請求項2記載の発明は、前記処理板体(16)は、扱室(3)との連通口(14)よりも後方位置において複数個設置してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0008】
扱室(3)との連通口(14)では、排塵処理胴(12)始端の送り螺旋体(10)の作用によって速やかに後方に送られるので、扱室(3)からの排塵処理物の取り込みがスムーズに行え、排塵処理胴(12)の後方側では複数の処理板体(16)によって排塵処理物を排塵処理胴(12)の外周方向に連れ回すことができるので、穀粒の漏下を促進することができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記処理板体(16)は、送り螺旋体(10)の外周縁部の高さよりも低く設定してある請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
排塵処理物の送り量を制限しながら連れ回すことができるので、処理作用が充分に行え、穀粒の回収効率が向上する。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記処理板体(16)は、処理物の搬送に抵抗を付与する方向に傾斜させてある請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とする。
処理板体(16)の作用により適度の搬送抵抗が付与されるので、処理効果が高まり、処理性能が向上する。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記処理板体(16)の先端には、櫛歯状の凹凸突起(17)を設けてある請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置とする。
凹凸突起(17)が排塵処理物を引っ掛けて連れ回すことができるので、藁屑と穀粒との分離が促進され、穀粒の回収効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、送り螺旋体(10)の螺旋ピッチ間の処理板体(16)によって排塵処理物が円周方向に連れ回されるので、排塵処理物の脱粒分離処理が充分に行なえ、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、処理板体(16)が扱室(3)との連通口(14)よりも後方位置に配置されているので、連通口(14)では処理物の詰まりがなく、送り螺旋体(10)の作用によって速やかに後方に送るので、扱室(3)からの排塵処理物の取り込みがスムーズに行える。また、排塵処理胴(12)の後方側では複数の処理板体(16)によって排塵処理物を円周方向に連れ回すことができるので、藁屑との分離が良好となり穀粒の漏下を促進することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、処理板体(16)は送り螺旋体(10)の外周縁部の高さよりも低く設定してあるので、排塵処理物の送り量を適度に制限しながら連れ回すことができて、処理作用が充分に行え、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加えて、処理板体(16)の作用により適度の搬送抵抗が付与されるので、処理効果が高まり、処理性能が一段と向上する。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果に加えて、処理板体(16)の先端の凹凸突起(17)が排塵処理物を引っ掛けて連れ回すことができるので、藁屑と穀粒との分離が促進され、穀粒の回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】脱穀装置の要部の平面図
【図2】排塵処理胴の側面図
【図3】同上要部の背面図
【図4】排塵処理胴の側面図
【図5】同上要部の背面図
【図6】排塵処理胴要部の側面図
【図7】排塵処理胴要部の側面図
【図8】送り螺旋体の形状変形例を示す排塵処理胴の側面図
【図9】送り螺旋体の他の形状変形例を示す排塵処理胴の側面図
【図10】送り螺旋体の他の形状変形例を示す排塵処理胴の側面図
【図11】脱穀装置の要部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の要部の平面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチェン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴4により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網5が張設されている。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口6が設けられている。
【0019】
前記扱室3のフィードチェン2側とは反対側一側には、扱室3からの2番物を受け入れて脱粒処理し外周に処理歯7を備えた2番処理胴8を内装軸架した2番処理室9を並設している。また、前記2番処理胴8の後方にはこれと同一軸心上において外周に巻回して設けた連続状の送り螺旋体10と該螺旋体の外周に突設した排塵処理歯11を備えた排塵処理胴12を排塵処理室13に内装軸架している。
【0020】
排塵処理室13の始端側は扱室3終端の連通口14に連通してあり、扱室3内で発生する排塵処理物は、その連通口14を通じて排塵処理室13内に取り込み排塵処理胴12の回転によって後方に送りながら処理網(コンケーブ)15との間で脱粒処理するようになっている。
【0021】
送り螺旋体10には、側面視において隣り合う螺旋体と螺旋体との間、即ち螺旋ピッチ間に位置して処理物を外周方向へ積極的に連れ回す処理板体16を設けている。
処理板体16は、扱室3との連通口14部に対応する部分を除く後方位置において複数設置してあり、円周方向には軸心方向視で各板体を等角度間隔に配置している。
【0022】
処理板体16の高さは螺旋体10の外周端縁よりも低く設定するが、送り螺旋体10の半分程度の高さが適当である。また、処理板体16は回転軸心(排塵処理胴12の回転軸心)に対して直交する放射方向か、若しくは前進角又は後進角を保持する構成であってもよい。
【0023】
更に、処理板体16は、図2に示すように、排塵処理胴12の回転軸心方向前後方向に平行に設けることもできるが、図4に示すように、排塵処理物の搬送方向に対して搬送抵抗を付与する方向に適宜傾斜(θ角)させておくと、処理効果をより高めることができる。なお、図4例では、処理板体16の外周端は円弧状に形成している。
【0024】
処理板体16の先端に櫛歯状の凹凸突起17図6参照を設けておくと、この凹凸突起が処理物を引っ掛けて持ち回すことができ、藁屑と穀粒との分離を促進し、穀粒の回収効果を高めることができる。
【0025】
図7に示すように、処理板体16を前側より後側ほど高くなるように構成しておくと、後側の高い部分で処理し、前側の低い部分で藁屑の詰まりを防止することができる。なお、この板体16は、図7例の仮想線で示すように、後側より前側ほど高くなるように構成するものであっても同等の効果を発揮できる。
【0026】
図8例は、送り螺旋体10の構成例として、螺旋ピッチの大きいもの(長ピッチ)10Lと小さいもの(短ピッチ)10Sを交互に設けることで、短ピッチにて送りを主として行い、長ピッチにて処理作用が主として行なえるように構成している。図例では半周ピッチごとに交互に配置構成している。なお、処理螺旋10Lは送り螺旋10Sの2倍以上のピッチとすることが望ましい。
【0027】
図9及び図10例は、螺旋形状の変形例を示す。図9例では、処理螺旋10Lと送り螺旋10Sとの前後長さを変えた構成としている。また、図10例では、処理螺旋10Lは送りの角度を設けずに外周のケーシング18に送りガイド19を設けるようにしている。長ピッチの処理螺旋10Lの外周に切刃を設けておくと、長藁を切断処理でき、藁屑との分離が良好に行える
処理板体16に対応する部分の外周上のコンケーブ(処理網)は、その他の部分よりも目合いを小さくしておくことで、藁屑が下方の揺動選別棚24上に落下するのを防ぐことができる。また、別例として、処理板体16の側方の棚上に篩い線を設けておくことによっても藁屑の選別棚への落下を防ぐことができる。
【0028】
排塵処理胴12の終端側には排塵物を機外に排出する排出羽根20が設けられている。
図11例において、排塵処理室13を構成するコンケーブ15とケーシング18との下側境目は、排塵処理胴12の軸心よりも機体外側方とし、その境目には抵抗板21を設けている。
【符号の説明】
【0029】
3 扱室
5 扱胴
12 排塵処理胴
13 排塵処理室
14 連通口
15 処理網
16 処理板体
17 凹凸突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)終端からの排塵処理物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴(12)の外周に送り螺旋体(10)を巻回し、該送り螺旋体(10)の螺旋ピッチ間には処理物を排塵処理胴(12)の外周方向に連れ回す処理板体(16)を設けてある脱穀装置。
【請求項2】
前記処理板体(16)は、扱室(3)との連通口(14)よりも後方位置において複数個設置してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記処理板体(16)は、送り螺旋体(10)の外周縁部の高さよりも低く設定してある請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記処理板体(16)は、処理物の搬送に抵抗を付与する方向に傾斜させてある請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記処理板体(16)の先端には、櫛歯状の凹凸突起(17)を設けてある請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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