説明

脱臭殺菌板

【目的】 臭気が発生する室内での壁材、天井材、床材等に用いられ、臭気の吸着を完全に防止することができる脱臭殺菌板を提供する。
【構成】 本発明に係る脱臭殺菌板1は、一端が閉止され表面部に無数の微細孔6を有する中空糸5で室内等に臨むシート2を形成し、このシート2を構成する上記中空糸5の開放端にそれぞれの上記中空糸5内にオゾンを導入するためのオゾン供給手段7を接続すると共に、上記シート2の裏面側に所定の中空室13を形成する裏板4を取り付け、且つ上記中空室13に上記シート2より排出されるオゾンを系外に排出するためのオゾン吸引手段16を接続してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、臭気が発生する室内での壁材、天井材、床材等に用いられる脱臭殺菌板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷蔵・冷凍室やコンテナ等にあっては、その内部の貯蔵物から常に臭気が発生しており、この臭気濃度を低下させるため、強制的に臭気を追い出す方法や、活性炭等の脱臭剤を用いる方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらによっても室内やコンテナ内の壁、天井、床等への臭気の吸着は防ぐことができず、一度吸着した臭気は内部空気中の臭気濃度が低くなると再揮発してくるため、室内には絶えず臭気が残存してしまう問題があった。
【0004】そこで、上記課題を解決すべく創案された本発明の目的は、臭気が発生する室内での壁材、天井材、床材等に用いられ、臭気の吸着を完全に防止することができる脱臭殺菌板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明に係る脱臭殺菌板は、一端が閉止され表面部に無数の微細孔を有する中空糸で室内等に臨むシートを形成し、このシートを構成する上記中空糸の開放端にそれぞれの上記中空糸内にオゾンを導入するためのオゾン供給手段を接続すると共に、上記シートの裏面側に所定の中空室を形成する裏板を取り付け、且つ上記中空室に上記シートより排出されるオゾンを系外に排出するためのオゾン吸引手段を接続してなるものである。
【0006】
【作用】上記構成によれば、オゾン供給手段から供給されたオゾンは中空糸の微細孔からシートの両面側に滲み出るよう排出される。そしてその直後、滲み出たオゾンは裏板の中空室からオゾン吸引手段により吸引排出され、特にその室内側に滲み出たオゾンは拡散する前にシートを通過して吸引される。これにより、シートを室内に臨ませて壁材として用いれば、そのシート表面即ち壁面に所定厚さのオゾン膜を常に形成することができる。そしてオゾンの脱臭作用により、臭気の壁面への吸着を完全に防止することができる。
【0007】
【実施例】以下本発明の好適実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0008】図1は、本発明に係る脱臭殺菌板を示す断面斜視図である。この脱臭殺菌板1にあっては、表面側が室内に臨まされるシート2の裏面側に、通気性を有する通気板3を介して裏板4が取り付けられている。シート2は、図2及び図3に示すように、熱融着、接着、挟み付け等の方法により一端が閉止された中空糸5を格子状に織って形成されている。中空糸5はその表面部全体に無数の微細孔6を有し、またその開放端はシート2の上端部及び左端部(室内から見て)に揃えられている。
【0009】ここで特に中空糸5は、内部が空洞になっているいわばストロー状の繊維である。ここで適用する中空糸5は、分離膜としての機能を持っている高分子で作られているもので、その高分子材料としては、均一多孔膜を持つものでは、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリステル,ポリカーボネート等があり、非対称膜を持つものではポリアミド,ポリイミド,ポリスルフォン,酢酸セルロース等がある。尚、これら高分子で数mm以下の径の中空の糸状に成形したもので中空糸膜と呼ぶこともある。これら微多孔質中空糸は、純水製造,酸素富化,水素分離,人工透析,更に、モジュール化したものと活性炭との組合せで家庭用浄水器としても使われている。
【0010】さて、中空糸5の開放端には、中空糸5内に所定圧力のオゾンO3 を導入するためのオゾン供給手段7が接続される。オゾン供給手段7はオゾン発生器8とブロワ9とからなり、これから送られた所定圧力のオゾンO3 は導入管10を通じて中空糸5内に導入される。
【0011】図4は中空糸5の開放端部分を詳細に示し、図示するように全ての開放端は透明または不透明な供給管11によって連通されている。よってシート2の左上端部において供給管11は直角且つ下方に曲がっている。(図示せず)供給管11は中空糸5にシール剤12によって気密に取り付けられ、また右上端に位置する供給管11の一端に導入管10が接続されると共に、左下端に位置する供給管11の他端は閉止されている。
【0012】図1に戻って、裏板4は、通気板3に臨んで大きく開放された断面コ字状の中空室13を有する。この中空室13には、吸引ポンプ14とオゾン分解フィルタ15とから構成されるオゾン吸引手段16が導出管17を介して接続される。オゾン分解フィルタ15は吸引ポンプ14の吸込側に接続されており、吸引ポンプ14はその吐出側が外部に向けて開放されている。尚、シート2、通気板3、裏板4の取り付けは、接着剤或いはボルト止め等により強固に重ね合わせて行われる。
【0013】次に実施例の作用について説明する。
【0014】オゾン発生器8から発生したオゾンO3 はブロワ9によって所定圧力とされ、導入管10及び供給管11を通じて中空糸5内に供給される。そのオゾンO3 は、非常に小さな孔である微細孔6から図2に示す如く外部に微量ずつ滲み出る。よって図5に示す如く、シート2の表面側(室内側)及び裏面側(裏板4側)からオゾンO3 が滲み出ることとなるが、この直後にそれらオゾンO3 は裏面側から吸引ポンプ14によって速やかに吸引排出される。つまり、裏面側に滲み出たオゾンO3 は、通気板3を通過した後、中空室13、導出管17を経てオゾン分解フィルタ15にて分解処理され、最終的に吸引ポンプ14から外部に排出される。また表面側のオゾンO3 は滲み出た後の拡散しようとする部分が吸引され、それはシート2の織り目を通過して裏面側に回り込み、上記同様のルートを経て外部に排出される。
【0015】このように、シート2の表面側においては、常にオゾンO3 が滲み出て且つそのうちの拡散しようとする余剰分が吸引される状態となっており、これによりシート2の表面側全面に、膜厚が非常に薄いオゾン膜Fを形成することができる。
【0016】上記の如く構成された脱臭殺菌板1を、その表面側即ちシート2側を臭気が発生する或いは残存する室内に臨ませて、壁材や天井材、床材等に用いると次のような利点が生じる。
【0017】即ち、シート2の室内側全面は薄いオゾン膜Fで完全に覆われており、よってこれに触れた臭気がオゾンO3 の脱臭作用により脱臭されると共に、臭気物質のシート2への直接接触が完全に妨げられる。よって臭気の壁面への吸着を完全に防止することができ、その再揮発も防止して室内を完全に無臭状態とすることができる。特に通常の臭気濃度の場合は係る脱臭殺菌板1のみで、比較的臭気濃度が高い場合には強制拡散装置と併用してもそれが可能となる。
【0018】またオゾンO3 は殺菌効果もあるので、この脱臭殺菌板1を病院等の雑菌を嫌う場所で用いても非常に有効である。例えば廊下の壁等に用いることにより壁面を常に無菌状態とすることができ、同時に壁面への菌の付着を防止して院内感染等を完全に防ぐことができる。
【0019】さらにオゾンO3 は人体に対し有毒であり、よって高濃度となると室内作業者にとっては有害であるが、壁面を覆うオゾン膜Fが非常に薄くまた拡散しないので、これによりオゾンO3 の害を心配することなく安全に作業を行うことができる。
【0020】また他の利点として、供給管11を透明とした場合にはその内部状態を外から確認できる。
【0021】この脱臭殺菌板1にあっては、オゾンO3 の供給圧力と吸引圧力とを適当にバランスさせることによりオゾン膜Fの膜厚を自在にコントロールすることができる。よってオゾン供給手段7とオゾン吸引手段16との圧力制御を行うための制御回路をさらに設ければ、オゾン膜Fの膜厚さらにはオゾンO3 拡散量を最適に調節することができる。
【0022】次に、図6に示す変形実施例にあっては、シート2と裏板4との間に上記通気板3に代わるネット18が介設されている。上記通気板3は室内壁面の剛性を高め、また吸引によるネット18の変形を防いで平坦な壁面を達成するが、例えば壁面が完全に平坦である必要がない場合にはこのようなネット18を用いてもよい。尚、このネット18は金属製の強固なものでも、プラスチック製の比較的柔らかいものでも構わない。さらにこれらの介在物をなくして、シート2と裏板4とを直接取り付けることも可能である。
【0023】また変形は他にも様々考えられ、例えば裏板4を枠体としてその両面部にシート2を取り付け、それを間仕切り板として用いることも可能である。
【0024】
【発明の効果】本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0025】(1)壁面等への臭気の吸着を完全に防止することができる。
【0026】(2)室内を無臭・無菌状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱臭殺菌板の一実施例を示す断面斜視図である。
【図2】中空糸を示す側断面図である。
【図3】シートを示す正面図である。
【図4】中空糸の開放端部分を示す拡大斜視図である。
【図5】オゾンがシートから排出される様子を示す側面図である。
【図6】脱臭殺菌板の変形実施例を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 脱臭殺菌板
2 シート
3 通気板
4 裏板
5 中空糸
6 微細孔
7 オゾン供給手段
13 中空室
16 オゾン吸引手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端が閉止され表面部に無数の微細孔を有する中空糸で室内等に臨むシートを形成し、該シートを構成する上記中空糸の開放端にそれぞれの上記中空糸内にオゾンを導入するためのオゾン供給手段を接続すると共に、該シートの裏面側に所定の中空室を形成する裏板を取り付け、且つ上記中空室に上記シートより排出されるオゾンを系外に排出するためのオゾン吸引手段を接続してなることを特徴とする脱臭殺菌板。
【請求項2】 上記シートが、その裏面側に重ね合わされて且つ通気性を有する通気板を備えた請求項1記載の脱臭殺菌板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平8−717
【公開日】平成8年(1996)1月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−136054
【出願日】平成6年(1994)6月17日
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)