説明

脱臭装置

【課題】 悪臭成分の分解・脱臭をより効果的に行うことが可能な脱臭装置を提供する。
【解決手段】 光触媒の担持体が、通風路中の前記空気の流れの主方向に対して略直行する面に沿って延在すると共に前記空気の流れの主方向に沿って或る程度の幅を有し、しかも前記空気の流れの主方向に沿う空気流路を確保してなるハニカム構造をなし、励起光源がこの空気の流れの主方向に沿って延在する円柱状をなすような構成とすることで、光触媒への励起光の照射効率が向上すると共に悪臭成分を含む空気と光触媒との接触効率が向上して触媒反応が促進され、脱臭効率が向上する。特に、励起光源を前記担持体の中央を貫通するように配置したり、担持体が空気の流れの主方向に沿って複数多重配列され、かつ各担持体毎に異なる種類の光触媒を担持するようにしたり、担持体に多数の通孔を設けると一層良い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気の脱臭装置に関し、特に一般家庭の室内、自動車の車内等に使用するのに好適な光触媒を用いた空気の脱臭装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、家屋内や車室内の空気を脱臭するために活性炭、シリカゲル等の吸着材による吸着、オゾンによる脱臭、芳香剤によるマスキングなどが行われていたが、吸着材を用いる場合、短寿命であり頻繁にその交換が必要であることからメンテナンスが厄介になり、オゾンを用いる場合、このオゾン自体が人体に影響を与えることからその取り扱いが厄介であり、芳香剤を用いる場合、根本的に臭いを除去できず、しかも寿命が短かいと云う問題があった。
【0003】そこで、フィルタを介して装置内に取り込んだ空気を、励起光源で励起させた光触媒に接触させて脱臭する脱臭装置が、例えば特開平3−157125号公報や特開平5−293165号公報に開示されている。この光触媒は、活性炭などの通常の吸着剤に比較して寿命が長いことから脱臭装置のメンテナンスが容易になる。このような光触媒を用いた脱臭装置にあっては、光触媒をハニカム等に担持させ、離れた場所に設置した紫外線ランプ等からなる励起光源により光触媒を励起し、悪臭成分を脱臭していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したような光触媒作用を用いた脱臭装置に於ては、紫外線ランプ等の光源から光触媒へ十分に紫外線が照射されること及び悪臭成分が光触媒層と十分に接触し、吸着することが脱臭効果を高めるために重要となる。
【0005】しかしながら、従来の光触媒による脱臭装置では、光触媒に紫外線が十分照射されるようにすると、ハニカム等の目が大きくなってしまい、悪臭成分と光触媒との接触が不十分となり、吸着及び分解・脱臭能力が低下し、しかも装置全体が大型化する。逆にハニカムの目を小さくすると、紫外線の照射を受けない部分が増えて、十分に触媒が活性化されないと云う問題があった。また、悪臭成分によって分解能が異なることから、特に悪臭成分が特定できない場合には用意した光触媒で所望の除去効率が得られないことがあった。
【0006】本発明は上記したような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その主な目的は、悪臭成分の分解・脱臭をより効果的に行うことが可能な脱臭装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した目的は本発明によれば、通風路と、空気を前記通風路に送る送風手段と、励起光源からの光により励起される光触媒とを有し、前記通風路を通過する空気を励起させた光触媒をもって脱臭する脱臭装置であって、前記光触媒の担持体が、前記通風路中の前記空気の流れの主方向に対して略直行する面に沿って延在すると共に前記空気の流れの主方向に沿って或る程度の幅を有し、しかも前記空気の流れの主方向に沿う空気流路を確保してなるハニカム構造をなし、前記励起光源が前記空気の流れの主方向に沿って延在する円柱状をなすことを特徴とする脱臭装置を提供することにより達成される。特に、前記励起光源が前記担持体の中央を貫通するように配置されていると良い。また、前記担持体が前記空気の流れの主方向に沿って複数多重配列され、かつ各担持体毎に異なる種類の光触媒を担持するようにしたり、担持体に多数の通孔を設けると一層良い。このように構成することで、脱臭すべき成分を含む空気が光触媒に接する確率が高くなり、しかも光触媒への励起光の照射効率も高くなる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面について詳しく説明する。
【0009】図1は本発明が適用された脱臭装置の構造を示す側断面図であり、図2はそのII−II線について見た断面図である。ケーシング1の一端には吸気口2が設けられ、他端側近傍には排気口3が設けられている。吸気口2には防塵フィルタ4が設けられている。また、ケーシング1の中心軸に沿って筒状の励起光源としての紫外線ランプ5が貫通している。ここで、紫外線ランプ5は、ガラスからなる内管(図示せず)に覆われ、空気の流路から隔離されている。尚、紫外線ランプ5の波長は、200〜400nmで、光触媒を励起させる能力を有するものであれば良く、オゾンの発生などを考慮してブラックライトにすると良い。
【0010】ケーシング1の内部には、図2に示すような後記する光触媒の円環状担持体12が所定の間隔をもって多重配置され、脱臭室11をなしている。また、脱臭室11の内周面には反射フィルム13が帖着され、紫外線ランプ5からの紫外線が外部に漏れることを防止すると共に脱臭室11内に反射して効率的に光触媒を励起させるようになっている。
【0011】尚、排気口3側にはフィルタ4及び担持体12による圧力損失に負けず、しかも悪臭を除去するために十分な風速を発生させることができるクロスフローファンからなる送風ファン6が設けられている。
【0012】担持体12は、径の異なる多数の短寸筒状体12aを紫外線ランプ5を中心として半径方向に積層してなり、各筒状体12a間にはスペーサにより略半円状の間隙が形成された簡易ハニカム構造をなす。この間隙を空気が流れることとなる。また、図3に示すように、各筒状体12aには多数の孔12bが穿設され、励起光が満遍なく行き届くようになっている。尚、担持体の構造はこれに限定されず、例えば断面が六角形をなす所謂ハニカム構造や、断面が三角形、四角形などの他の多角形をなすものであっても良く、本明細書ではこれらを総称してハニカム構造と記す。
【0012】光触媒としてはTiO2を主成分にした金属酸化物光触媒が用いられている。本例では、石原産業株式会社製、酸化チタンをエタノールに分散させた顕濁液(10wt%)を用いて、ディップコーティング法により上記担持体12に塗布、担持した。
【0013】尚、実際には別の光触媒として例えばFe23−NiO複合微粉を用いることもできる。これを得るには、まず27.5gの鉄トリブトキシド(日本曹達製)を2−メトキシエタトルに溶解し、17.7gの酢酸ニッケルを加え、700mlの溶液を作る。この溶液を120℃で5時間〜10時間加熱し、鉄トリブトキシドと酢酸ニッケルとのエステル交換反応を行い、放冷する。次に水37.5gとpH調整剤として25%アンモニア水70g(合計の水90g、鉄トリブトキシドの50倍mol)を2−メトキシエタノールに加え、300mlの溶液を作る。この2つの溶液を常温で混ぜ、鉄トリブトキシドを加水分解・脱水縮重合させ、Fe23−NiO複合微粉のゾルを作る。このゾル中の水、2−メトキシエタノール及びアンモニアをエバポレータで除去し、150℃〜180℃、1Torrで3時間〜5時間真空乾燥すれば良い。上記同様にこのFe23−NiOのゾルを高分子基板に塗布して、上記同様な乾燥を行えば膜状のものとしても得られる。
【0014】一方、上記構成では各担持体12にTiO2を主成分にした金属酸化物光触媒を塗布し、担持させたが、上記したようなFe23−NiO複合微粉などの光触媒を併用しても良い。その場合、例えば各担持体12に各々異なる光触媒を塗布し、担持させることとなる。また、担持体としてはパンチングメタルや樹脂材、プラスチック、セラミックス、ガラス等孔に多数の孔を設けたものなどを用いることができる。更にその形状も本例では円形断面としたが、矩形断面や多角形断面など、任意の形状で良い。
【0015】
【発明の効果】上記した説明により明らかなように、本発明による脱臭装置によれば、光触媒の担持体が、通風路中の空気の流れの主方向に対して略直行する面に沿って延在すると共に空気の流れの主方向に沿って或る程度の幅を有し、しかも空気の流れの主方向に沿う空気流路を確保してなるハニカム構造をなし、励起光源がこの空気の流れの主方向に沿って延在する円柱状をなすような構成とすることで、光触媒への励起光の照射効率が向上すると共に悪臭成分を含む空気と光触媒との接触効率が向上して触媒反応が促進され、脱臭効率が向上する。特に、励起光源を前記担持体の中央を貫通するように配置したり、担持体が空気の流れの主方向に沿って複数多重配列され、かつ各担持体毎に異なる種類の光触媒を担持するようにしたり、担持体に多数の通孔を設けると一層良い。このように構成することにより、光触媒への励起光の照射効率が向上すると共に悪臭成分を含む空気と光触媒との接触効率が向上して触媒反応が促進され、脱臭効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された脱臭装置の構成を示す側断面図。
【図2】図1のII−II線について見た図。
【図3】図2の部分拡大斜視図。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 吸気口
3 排気口
4 フィルタ
5 紫外線ランプ
6 送風ファン
11 脱臭室
12 担持体
13 反射フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 通風路と、空気を前記通風路に送る送風手段と、励起光源からの光により励起される光触媒とを有し、前記通風路を通過する空気を励起した光触媒をもって脱臭する脱臭装置であって、前記光触媒の担持体が、前記通風路中の前記空気の流れの主方向に対して略直行する面に沿って延在すると共に前記空気の流れの主方向に沿って或る程度の幅を有し、しかも前記空気の流れの主方向に沿う空気流路を確保してなるハニカム構造をなし、前記励起光源が前記空気の流れの主方向に沿って延在する円柱状をなすことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】 前記励起光源が前記担持体の中央を貫通するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】 前記担持体が前記空気の流れの主方向に沿って複数多重配列され、かつ各担持体毎に異なる種類の光触媒を担持していることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の脱臭装置。
【請求項4】 前記担持体が多数の通孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の脱臭装置。
【請求項5】 脱臭すべき空気に含まれる悪臭成分を吸着材をもって吸着した後に光触媒をもって分解するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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