説明

脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法

【課題】酸素吸収能力が向上した脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を提供する。
【解決手段】係る脱酸素剤は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、酸素欠陥を有する無機酸化物(酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等)に、該無機酸化物の酸素吸収量を増大する添加元素(イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr))が添加されてなるものであり、この添加元素の添加により酸素吸収量が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の安全性や品質維持への強い要求に対して、食品を包装する食品用包装体の内部を無酸素状態にすることにより、食品の酸化劣化を抑制することが行われている。
具体的には、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤を食品と共に食品用包装体の内部に入れて、食品用包装体の内部の残留酸素を除去して食品用包装体の内部を無酸素状態とすることが行われている。また、酸素を含まない不活性ガス中において、食品を前記脱酸素剤と共に食品用包装体で包装し、前記食品用包装体の内部に酸素を入れないようにすると共に、前記食品用包装体を透過して内部に侵入する僅かな酸素も内包された脱酸素剤により除去すること等が行われている。
【0003】
このように、雰囲気中の酸素を除去する脱酸素剤としては、有機系材料からなるものと無機系材料からなるものとがあるが、コスト的な観点から、無機系材料である鉄系脱酸素剤が主に利用されている。この鉄系脱酸素剤は、下記の化学式(1)に示すように、鉄を雰囲気中の僅かな水分と共に、雰囲気中の酸素と反応させることにより、雰囲気中から酸素を除去するようになっている。
【0004】
Fe+1/2H2O+3/4O2→FeOOH ・・・(1)
【0005】
しかしながら、前述したような従来の鉄系の脱酸素剤を用いた場合には、以下のような問題がある。
(1)酸素との反応の際に水分を僅かながらも必要とするため、乾燥食品や電子部品や半田粉等のように水分を嫌うものを保存する場合には、従来の脱酸素剤の性能を十分に発揮することができないという問題がある。
(2)包装体で不活性ガスと共に、従来の脱酸素剤を包装した食品中に金属等の異物が混入しているか否かの検査を行う場合には、鉄系脱酸素剤に金属探知機が反応し、簡便な審査を行うことができない、という問題がある。
(3)電子レンジ等のマイクロ波によって急加熱されて発火する、という問題がある。
【0006】
このため、鉄系の脱酸素剤の代わりに、酸化チタン等の無機酸化物を用いた脱酸素剤が提案されている(特許文献1〜5)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−104064号公報
【特許文献2】特開2005−105194号公報
【特許文献3】特開2005−105195号公報
【特許文献4】特開2005−105199号公報
【特許文献5】特開2005−105200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、酸化チタン等の無機酸化物のみを用いた脱酸素剤では酸素吸収能力が十分ではない、という問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、酸素吸収能力が向上した脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、酸素欠陥を有する無機酸化物に、該無機酸化物の酸素吸収量を増大する添加元素が添加されてなることを特徴とする脱酸素剤にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記無機酸化物が酸化セリウムであると共に、前記添加元素がイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又は二種以上を固溶させたものであることを特徴とする脱酸素剤にある。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記添加元素の添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤にある。
【0013】
第4の発明は、第1の発明の脱酸素剤の製造方法であって、前記無機酸化物に、酸素吸収量を増大する添加元素を添加してなる複合無機酸化物を、1000℃以上の温度で焼成し、その後還元焼成することを特徴とする脱酸素剤の製造方法にある。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記1000℃以上で焼成する前に加圧成形して成形体とすることを特徴とする脱酸素剤の製造方法にある。
【0015】
第6の発明は、第4又は5の発明において、前記無機酸化物が酸化セリウムであると共に、前記添加元素がイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又は二種以上を固溶させたものであることを特徴とする脱酸素剤の製造方法にある。
【0016】
第7の発明は、第1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤がガス易透過性を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体にある。
【0017】
第8の発明は、第1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルムにある。
【0018】
第9の発明は、第8の発明において、前記脱酸素層の外層側に設けられた、ガスバリア性を有するガスバリア層および更にその外層側の該ガスバリア層保護のための外層と、前記脱酸素層の内層側に設けられた、ガス易透過性を有するガス易透過層とをことを特徴とする脱酸素機能フィルムにある。
【0019】
第10の発明は、第8又は9の発明において、前記ガスバリア層と前記外層との間に高度ガスバリア層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルムにある。
【0020】
第11の発明は、第9又は10の発明において、前記脱酸素層と前記ガスバリア層との間に、緩衝層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルムにある。
【0021】
第12の発明は、第1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物にある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、酸素吸収量が増大する添加元素を添加してなるので、無機酸化物のみを用いた脱酸素剤に較べて酸素吸収効果が高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0024】
本実施の形態に係る脱酸素剤は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、酸素欠陥を有する無機酸化物に、該無機酸化物の酸素吸収量を増大する添加元素が添加されてなるものである。
ここで、本発明で無機酸化物としては、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のいずれか一種又はこれらの混合物である。
特に単独での酸素吸収能力が大きい、酸化セリウムを無機酸化物として用いるのが好ましい。この無機酸化物に添加される添加元素としては、前記無機酸化物のイオン半径近傍の元素を添加することが好ましいが、添加により酸素吸収量が増大するものであれば、これに限定されるものではない。
【0025】
ここで、本実施の形態では、無機酸化物として酸化セリウムを用いる場合について以下に説明する。
前記酸素欠陥を有する高温還元処理した酸化セリウム(CeOx:但し、xは2未満の正数である。)は、還元処理により結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となり、雰囲気中の酸素と下記の化学式(2)に示すようにして反応するので脱酸素剤としての効果が発揮される。
CeOx+((2−X)/2)O2→CeO2 ・・・(2)
【0026】
さらに、本発明では、前記酸素欠陥を有する酸化セリウムに対して、酸化物を調整する際に、特定の添加元素を添加して置換固溶させて複合酸化物とし、酸素吸収量を大幅に増大させるようにしている。
この特定の添加元素としては、例えばイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又はこれらの混合物とするのが望ましい。
これらの添加元素を酸化セリウム粉末製造の際に、添加して酸化セリウムと共に複合酸化物を形成するようにしている。
【0027】
ここで、脱酸素剤は一般に食品包装体中で使用する用途が多いので、食品用途の安全性が要求されており、例えばチタン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、カルシウム、プラセオジム、ランタニウム又はストロンチウム等を用いることができるが、これらの内で、イオン半径がセリウム(3価)の1.143Åよりも僅かに小さいイオン半径を有するイットリウム、カルシウム及びプラセオジムを添加する場合に、後述する実施例に示すように、酸素吸収量の増強効果が発現されるものとなる。
【0028】
ここで、下記表1及び図1に金属元素とイオン半径との関係を示す。
【0029】



【表1】

【0030】
この特定の添加元素を添加することで酸素吸収量が増大するのは次の通りである。
先ず、酸化セリウムは通常は4+であるが、高温で還元処理すると3+へと価数が変化する。この価数の変化に伴い、酸化セリウムのイオン半径が膨張し、結晶格子自体は膨張するが、前記イットリウム、カルシウム及びプラセオジムは、膨張した3+のセリウムイオンよりもイオン半径が小さく、これらのいずれかを添加したことで格子の膨張を抑制できることとなる。この結果、より多くの酸素欠陥を保持することができるものとなる。
【0031】
なお、添加量としては、1〜20mol%とするのが好ましい。これは、1mol%未満ではその添加効果の発現量が小さいからである。
【0032】
また、一般に価数変化が無い又は少ないものを酸化セリウムに添加する場合には、酸素の吸収量の増大効果は発現されないが、特定のイオン半径を有する前記添加元素(Y、Ca、Pr)の添加量として20mol%程度迄の添加であれば、酸化セリウムの蛍石型の格子の膨張抑制機能が十分に発揮され、この結果、酸素吸収量の増加を図ることができるからである。
【0033】
ここで、図2を参照して特定の添加元素が無機酸化物と固溶して複合酸化物を形成していることについて説明する。図2は、添加元素の添加量と、格子定数との関係図である。図1に示すように、添加元素の添加量が増大すると、酸化物中への添加元素が固溶し複合酸化物を形成するが、固溶限界までは格子定数はベガード則に従い、単調に直線的に増加(減少する場合もある)する。そして、所定の変極点を超えた以降は、固溶限界を超え、単独酸化物として生成する。
【0034】
図3〜図5は各添加元素について添加量と格子定数との関係を示す。
図3はカルシウム(Ca)、図4はプラセオジム(Pr)及び図5はイットリウム(Y)である。
これらの図面に示すように、カルシウム(Ca)は添加量が約20mol%で変極点が存在し、プラセオジム(Pr)は約50mol%及びイットリウム(Y)は約60mol%近傍が固溶限界であることが確認された。この結果を表2に示す。よって、添加量として1〜20mol%程度迄の添加であれば、いずれの元素も確実に固溶状態となることが確認された。
【0035】
【表2】

【0036】
ここで、添加元素としてカルシウム(Ca)、プラセオジム(Pr)及びイットリウム(Y)を用いて、酸素吸収性能についての確認を行なった。その結果を図6、図8及び図10において酸素吸収の経過時間と酸素吸収量との関係図として示す。
図6、図8及び図10に示すように、添加量を1mol%、5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%として、経過時間と酸素吸収量との関係を求めた。
無添加の場合を▲印で示す。
【0037】
図6、図8及び図10に示すように、各々の添加量が1mol%、5mol%、10mol%、20mol%と増大するにつれて、無添加の場合に較べて、酸素吸収量が徐々に増大することが確認された。
一方、20mol%以上添加しても酸素吸収の増大機能は発揮されなかった。
【0038】
また、96時間経過時における添加量と酸素吸収量との関係を図7、図9及び図11に示す。
図7、図11に各々示すように、カルシウムとイットリウムの場合には、添加量が20mol%で変極点となり、それ以上の添加は酸素吸収に寄与しないことが判明された。また、図9に示すように、プラセオジムの場合には、添加量が15mol%で変極点となり、それ以上の添加は酸素吸収に寄与しないことが判明された。
カルシウムの場合には、固溶状態の複合酸化物以外の単独酸化物の存在量が増大する結果、かえって酸素吸収機能を阻害すると考えられる。イットリウムとプラセオジムの場合には、十分固溶限界内であるが、格子の膨張抑制効果を超えて、格子が小さくなり過ぎたことが原因と考えられる。
【0039】
このような脱酸素剤は、粉体の場合、添加元素を添加した酸化セリウムとの複合酸化物の粉体を1400℃以上の温度で焼成(約1時間程度)した後に、例えば水素等の還元性ガス気流中で1000℃1時間還元焼成することにより、容易に製造することができる。
【0040】
他方、タブレットやフレーク等の成形体の場合には、添加元素を添加した酸化セリウムとの複合酸化物の粉体を、所定圧力(例えば0.5t/cm2以上)で加圧して成形体を製造し、これを1000℃以上の温度で焼結した後に、例えば水素等の還元性ガス気流中で1000℃1時間還元焼結することにより、容易に製造することができる。
【0041】
このように製造された脱酸素剤は、酸素を必要十分に透過させ得る公知の多孔性フィルム等の脱酸素用包装体でラミネート等の処理により封入されることにより、利用される。
【0042】
このような本実施の形態に係る脱酸素剤においては、前記化学式(2)に示したように雰囲気中の酸素と反応することにより、雰囲気中から酸素を大幅に吸収・除去することができる。
【0043】
このため、本実施の形態に係る酸化セリウムを主体とした複合酸化物からなる脱酸素剤では、(1)水分を全く必要とすることなく、酸素と反応することができるので、例えば乾燥食品、電子部品、半田粉等のような水分を嫌うものの場合の保存に利用することができる。また、(2)添加物を添加した酸化セリウムは非金属であるので、金属探知機には検知されることがなく、金属探知機を用いて食品中の異物を発見することができる。また、(3)耐マイクロ波の特性も優れているので、酸素吸収量を増大する添加元素を添加してなる酸化セリウムからなる脱酸素剤はマイクロ波調理における加熱を防ぐことができる。さらに、(4)酸化セリウムに添加物を添加することにより、酸素吸収量が増大するので、酸化セリウム単独の場合に較べて単位重量当りの酸素吸収量の大幅な増大を図ることができる。
【0044】
よって、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウム単独の場合に較べて酸素吸収量が増大する脱酸素剤を提供することができる。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウムを用いて脱酸素機能を発揮する脱酸素剤及び密封雰囲気中の脱酸素方法を提供することができる。
よって、例えば医薬品やサプリメント、化学薬品(例えば色素、香料、脂質、酵素、ビタミン、脂肪酸)又は酸化され易い食品素材並びに食品、精密機械及びその部品、半導体基板等を安定保存できるようにすることが可能となる。
【0046】
また、図12に示すように、脱酸素機能フィルム20Aとしてもよい。この脱酸素機能フィルム20Aは、図12に示すように、前記酸化セリウムに添加元素を固溶させた脱酸素剤からなる脱酸素層21と、該脱酸素層21の外層側に設けられ、ガスバリア性を有するガスバリア層22と、前記脱酸素層21の内層側に設けられ、ガス易透過性を有してなるガス易透過層23とから構成されており、脱酸素機能フィルムを提供するようにしてもよい。ここで、図12中、符号25は酸素を図示する。
なお、図12においては、前記ガスバリア層22の外側に外層24を設け、前記ガスバリア層22を保護するようにしている。
【0047】
ここで、前記脱酸素層21としては、前記酸化セリウムに添加元素を固溶させた脱酸素剤を含有するポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エラストマー、ポリエチレンテレフタレート、シリコン樹脂エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレンランダム重合体、・エチレン−αオレフィン共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
ここで、前記ガスバリア層22としては、アルミ箔ポリエチレンテレフタレート(PET) ポリエチレン(PE)、延伸ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(商品名)、テレフタル酸-トリメチルヘキサメチレンジアミン縮重合体、2,2−ビス(P−アミノシクロヘキシル)プロパン−アジピン酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロンMXD(商品名)、ナイロン6(商品名)、ナイロン6,6(商品名)等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
また、前記ガス易透過層23としては、例えば不織布、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、延伸ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(商品名)、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンプロピレンゴム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば紙、不織布等の繊維類からなる層も用いることもできる。
また、前記ガス易透過層23はシーラント層(例えばPP又はPE等のポリオレフィン)の機能を併用するようにしてもよい。
【0050】
また前記外層24としては、例えばポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(商品名)等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
また、図13の脱酸素機能フィルム20Bに示すように、前記脱酸素層21とガスバリア層22との間に、緩衝層27を設け、接着性及び緩衝性をフィルムに付与するようにしてもよい。
また、ガスバリア層22と外層24との間に高度ガスバリア層28を設け、外部からのガスの侵入を防止の確実性を向上させるようにしてもよい。
【0052】
ここで、緩衝層27としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の緩衝作用及び接着作用を備えた樹脂を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
また、高度ガスバリア層28としては、例えばアルミ箔をはじめとする各種金属箔、アルミ蒸着フィルム、各種酸化物(シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ)蒸着フィルム等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
この図13に示すような6層構造の脱酸素機能フィルム20Bとすることで、緩衝作用が向上すると共に外部からのガスの侵入が強固となり、より付加価値の高いフィルムを提供することができる。
【0055】
また、図14に示すように、前記酸化セリウムに添加元素を固溶させた脱酸素剤30と、該脱酸素剤30を包装すると共に、ガス易透過性を有してなる包装体31とから脱酸素包装体32を構成するようにしてもよい。
【0056】
また、図15に示すように、前記酸化セリウムに添加元素を固溶させた脱酸素剤40を樹脂層41内に分散又は練込んで脱酸素樹脂組成物42を構成するようにしてもよい。
【0057】
前記樹脂層41を構成する材料としては、酸素を透過することができる素材であればよく、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、これらのブレンド物などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂などを例示することができる。また、これらの樹脂は単独でもまたはブレンド物としても使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の効果を確認するための一実施例について説明するが、本発明はこれの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<原料の調整>
炭酸水素アンモニウムとアンモニアと炭酸アンモニウムとシュウ酸とを水に溶解した水溶液を攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を滴下し逆中和し、生成した沈殿物をイオン交換水で洗浄(本実施例では2回)してろ過した。その後、ろ過物を乾燥(300℃で2時間)することにより、酸化セリウム(CeO2)の粉末(平均粒径:約0.5μm)を得た(酸化セリウム単体の場合の調整)。
【0060】
<添加元素の種類>
前記酸化セリウム単体の粉末を製造するための硝酸セリウム水溶液滴下の過程において、添加元素としてチタン(Ti)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、プラセオジム(Pr)、ランタニウム(La)及びイットリウム(Y)を用い、各10mol%硝酸塩となるように添加した。
【0061】
本実施例では、直径20mmの成形体とした。その成型条件は、複合酸化物粉末を用いて、1t/cm2プレス条件で錠剤状にプレスした。また、成形体の焼結条件は1100℃で1時間とした。さらに、還元条件は1000℃で1時間、水素100%ガスで400SCCMフローとした。なお、包装体はワンダーキープ社製の内袋(ピンホール多数あり)を用いた。
【0062】
前述した種々の元素を添加した場合の酸素吸収能について図16に示す。
図16に示すように、添加物としてイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、プラセオジム(Pr)を添加した場合に、酸化セリウム単独の場合に比較して酸素吸収量の大幅な増大が認められた。
【0063】
また、添加元素としてイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、プラセオジム(Pr)について、1mol%、5mol%、10mol%、20mol%を添加した場合の酸素吸収量を計測した。
その結果を図17〜19に示す。
【0064】
図17及び図19に示すように、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)については、いずれの添加量においても、無添加の場合と較べると酸素吸収量の増大が確認された。
また、図18に示すように、カルシウム(Ca)については、1mol%以外においては、無添加の場合と較べると酸素吸収量の増大が確認された。
【0065】
これらの結果より、1〜20mol%の範囲で酸素吸収量が良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る脱酸素剤は、酸化セリウム等の無機酸化物に特定の添加元素を添加してなるので、酸素吸収量が大幅に増大し、例えば食品の包装体の酸素の除去に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】添加元素のイオン半径を示す図である。
【図2】添加元素の添加量と、格子定数との関係図である。
【図3】添加元素(Ca)の添加量と、格子定数との関係図である。
【図4】添加元素(Pr)の添加量と、格子定数との関係図である。
【図5】添加元素(Y)の添加量と、格子定数との関係図である。
【図6】添加元素(Ca)の場合の酸素吸収の経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図7】図6の96時間経過時における添加量と酸素吸収量との関係図である。
【図8】添加元素(Pr)の場合の酸素吸収の経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図9】図8の96時間経過時における添加量と酸素吸収量との関係図である。
【図10】添加元素(Y)の場合の酸素吸収の経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図11】図10の96時間経過時における添加量と酸素吸収量との関係図である。
【図12】脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図13】他の脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図14】脱酸素包装体の模式図である。
【図15】脱酸素樹脂組成物の模式図である。
【図16】添加元素の添加による経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図17】添加元素のイットリウム(Y)添加による経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図18】添加元素のカルシウム(Ca)添加による経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図19】添加元素のプラセオジム(Pr)添加による経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【符号の説明】
【0068】
20A、20B 脱酸素機能フィルム
32 脱酸素包装体
42 脱酸素樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
酸素欠陥を有する無機酸化物に、該無機酸化物の酸素吸収量を増大する添加元素が添加されてなることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項2】
請求項1において、
前記無機酸化物が酸化セリウムであると共に、前記添加元素がイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又は二種以上を固溶させたものであることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項3】
請求項2において、
前記添加元素の添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項4】
請求項1の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物に、酸素吸収量を増大する添加元素を添加してなる複合無機酸化物を、1000℃以上の温度で焼成し、その後還元焼成することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記1000℃以上で焼成する前に加圧成形して成形体とすることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記無機酸化物が酸化セリウムであると共に、前記添加元素がイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又は二種以上を固溶させたものであることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤がガス易透過性を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項9】
請求項8において、
前記脱酸素層の外層側に設けられた、ガスバリア性を有するガスバリア層および更にその外層側の該ガスバリア層保護のための外層と、
前記脱酸素層の内層側に設けられた、ガス易透過性を有するガス易透過層とを有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記ガスバリア層と前記外層との間に高度ガスバリア層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記脱酸素層と前記ガスバリア層との間に、緩衝層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか一つの脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−173636(P2008−173636A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14374(P2008−14374)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【分割の表示】特願2007−15531(P2007−15531)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】